(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】バイオベース複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20240418BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240418BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20240418BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20240418BHJP
C08K 5/5419 20060101ALI20240418BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20240418BHJP
C08L 3/00 20060101ALI20240418BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20240418BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240418BHJP
C08L 31/04 20060101ALI20240418BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C08L23/12
C08J3/12 A CES
C08K5/103
C08K5/13
C08K5/5419
C08L1/00
C08L3/00
C08L23/06
C08L23/26
C08L31/04 S
C08L91/06
(21)【出願番号】P 2023166350
(22)【出願日】2023-09-27
【審査請求日】2023-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519165478
【氏名又は名称】ヴァス ネットワークス (エイチケー) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VASU NETWORKS (HK) LTD.
【住所又は居所原語表記】FLAT/Rm 709, 7/F Office Tower Two Grand Plaza, 625 Nathan Road, Mongkok, Kowloon Hong Kong
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120684
【氏名又は名称】宮城 三次
(72)【発明者】
【氏名】ワン メイ リン
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-022453(JP,A)
【文献】特開2016-210824(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181641(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/12
C08J 3/12
C08K 5/103
C08K 5/13
C08K 5/5419
C08L 1/00
C08L 3/00
C08L 23/06
C08L 23/26
C08L 31/04
C08L 91/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン45ないし75重量部と、バイオマス材料25ないし55重量部とを含んでおり、前記バイオマス材料は、可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム、及び変性セルロースのうちのいずれか、又は2種ないし3種の組み合わせであり、
改質剤としての直鎖状低密度ポリエチレン1ないし3重量部、改質剤としてのエチレン-酢酸ビニル共重合体3ないし5重量部、界面活性剤としてのモノグリセリド2ないし3重量部、改質剤としてのポリエチレンワックス2ないし3重量部、改質剤としてのシランカップリング剤2ないし3重量部、酸化防止剤0.1ないし0.2重量部、改質剤としてのポリプロピレングラフト無水マレイン酸0ないし3重量部をさらに含む、
バイオベース複合材料。
【請求項2】
前記バイオベース複合材料に含まれる前記ポリプロピレンの重量比が40ないし60%であり、前記バイオベース複合材料に含まれる前記バイオマス材料の重量比が40ないし60%である、請求項1に記載のバイオベース複合材料。
【請求項3】
前記バイオベース複合材料は、ペレット状に成形されている、請求項1に記載のバイオベース複合材料。
【請求項4】
前記ポリプロピレンはホモポリマーである、請求項1に記載のバイオベース複合材料。
【請求項5】
前記可塑化デンプンは、デンプン、アルミン酸ナトリウム(Sodium aluminate)、水、グリセリン(glycerin)、及びポリエチレングリコール400(Polyethylene glycol 400)の混合物であり、デンプン、アルミン酸ナトリウム、水、グリセリン、及びポリエチレングリコールの重量比が250:1ないし2:25ないし35:40ないし50:10ないし30である、請求項1に記載のバイオベース複合材料。
【請求項6】
前記変性生物由来カルシウムは、貝殻粉末又は卵殻粉末を含む、請求項1に記載のバイオベース複合材料。
【請求項7】
前記変性セルロースは、木材パルプセルロース、アルミン酸エステルカップリング剤、グリセリン、及びステアリン酸の混合物であり、木材パルプセルロース、アルミン酸エステルカップリング剤、グリセリン、及びステアリン酸の重量比は30:1ないし3:2ないし4:0.3ないし0.5である、請求項1に記載のバイオベース複合材料。
【請求項8】
前記シランカップリング剤はメチルトリメトキシシランである、請求項1に記載のバイオベース複合材料。
【請求項9】
前記酸化防止剤は、テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(tetrakis[3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)である、請求項1に記載のバイオベース複合材料。
【請求項10】
可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム、及び変性セルロースのうちのいずれか、又はそれらのうちの2種又は3種を製造し、
ポリプロピレン45ないし75重量部、改質剤としての直鎖状低密度ポリエチレン1ないし3重量部、改質剤としてのエチレン-酢酸ビニル共重合体3ないし5重量部、界面活性剤としてのモノグリセリド2ないし3重量部、改質剤としてのポリエチレンワックス2ないし3重量部、改質剤としてのシランカップリング剤2ないし3重量部、酸化防止剤0.1ないし0.2重量部、及び改質剤としてのポリプロピレングラフト無水マレイン酸0ないし3重量部を混合した混合物を製造し、
前記混合物に前記可塑化デンプン、前記変性生物由来カルシウム、及び前記変性セルロースのうちのいずれか、又は2種ないし3種の組み合わせを25ないし55重量部加えて混合して混合原料を生成し、
前記混合原料を混練した後に押し出し切断し、ペレット化して乾燥させる、
バイオベース複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記可塑化デンプンが、デンプン、アルミン酸ナトリウム、及び水を混合し、乾燥させた後、グリセリン及びポリエチレングリコール400を加えて、高速混合、乾燥、造粒することにより製造され、得られた前記可塑化デンプンにおいて、デンプン、アルミン酸ナトリウム、水、グリセリン、及びポリエチレングリコールの重量比が、250:1ないし2:25ないし35:40ないし50:10ないし30である、請求項10に記載のバイオベース複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記変性セルロースが、脱水乾燥後の木材パルプセルロースを取得し、アルミン酸エステルカップリング剤とグリセリンとを加えて混合して撹拌した後、さらにステアリン酸を加えて混合し、変性木材パルプセルロースとして得られ、前記木材パルプセルロース、アルミン酸エステルカップリング剤、グリセリン、及びステアリン酸の重量比は30:1ないし3:2ないし4:0.3ないし0.5である、請求項10に記載のバイオベース複合材料の製造方法。
【請求項13】
前記可塑化デンプン、前記変性生物由来カルシウム、及び前記変性セルロースのうちのいずれか、又はそれらのうちの2種又は3種と、前記ポリプロピレン、前記直鎖状低密度ポリエチレン、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体、前記モノグリセリド、前記ポリエチレンワックス、前記シランカップリング剤、前記酸化防止剤、及び前記ポリプロピレングラフト無水マレイン酸とを混合してなる前記混合原料が、混練・加熱工程において混練及び加熱され、前記混練・加熱工程の入口から出口までが第1区画から第8区画までに区分されており、前記第1区画から前記第8区画までの温度がそれぞれ、165ないし175℃、165ないし170℃、170ないし175℃、170ないし175℃、170ないし175℃、165ないし170℃、165ないし170℃、及び165ないし170℃の範囲に設定されており、前記出口の温度は170ないし175℃に設定されている、請求項10に記載のバイオベース複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子化合物材料製品に関し、特にバイオベース複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護性能の向上及び環境保護政策の実行に伴い、使い切りプラスチック製品の分野において、石油系プラスチックの利用はますます厳しく制限されるようになっている。その主要な原因は、原料の価格がますます高くなっていること、プラスチック製品の分解に対する要求もますます厳しくなり、同時に二酸化炭素排出量の低減が求められていること等である。
【0003】
上記のような社会的要請から、種々の生分解可能な原材料と石油系高分子化合物材料とを混合して、所望の性能を備えたプラスチック製品を生産するための技術の開発が進められている。
【0004】
例えば特許文献1には、エタノール由来のポリエチレン、デンプン、及び生分解添加剤を含むバイオプラスチックの製造用組成物、あるいはさらに炭酸カルシウム、ヘンプハード、大豆タンパク質等の植物由来の原材料を含む組成物が提案されている。
【0005】
また、例えば特許文献2には、主成分となるデンプン、又は、主成分となるデンプン及び植物性セルロースと、ポリプロピレンを含む発泡用プラスチックと、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性体を含み、前記主成分と前記発泡用プラスチックを含む混合物に対する改質剤と、を混合して得られる原材料を用いてシート状又は板状の成形体を得ることが記載されている。
【0006】
また、例えば特許文献3には、天然繊維/デンプン熱可塑性プラスチック複合材料の製造方法であって、ある総量の天然繊維を含む湿潤天然繊維、ある総量のデンプン、ある総量の可塑剤を水と混合してペーストを形成し、前記ペーストをある総量の熱可塑性プラスチックと配合して前記複合材料を形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2023-511750号公報
【文献】特開2020-094189号公報
【文献】特開2017-516882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いま、ポリプロピレンにバイオマス材料を加えることによって環境性能に優れたバイオベース複合材料を製造することを考える。バイオマス材料としてデンプン、セルロース及び生物由来カルシウムを用いるとすると、デンプン、セルロース及び生物由来カルシウムは極性材料であるが、ポリプロピレンは非極性材料である。
【0009】
デンプン、セルロース及び生物由来カルシウムを石油系ポリプロピレンと溶融混合した場合、極性の相違から両者は混和性に乏しく、得られた合成物製品には多くの欠陥が発生するおそれがある。例えば合成物中に気泡が発生し、デンプン、セルロース及び生物由来カルシウムの分布が不均一であり、合成物の力学的性能が劣り、材料の脆性が非常に大きい等である。
【0010】
この点、特許文献1には、ヘンプハードを直径約0.25ないし0.75ミクロンの微粉末に粉砕すると、他の基材コポリマーとより均一に配合及び混和が可能となる旨記載されているが、デンプン、生物由来カルシウムと基材コポリマーとの混和性については言及がない。特許文献2では、デンプン及び/又は植物性セルロースを含む混合物の相溶性を改善するための改質剤を加えることが記載されているが、生物由来カルシウムに関しては言及がない。特許文献3においても、デンプン、湿潤天然繊維に可塑剤を加えて熱可塑性プラスチックと混合することは記載されているが、生物由来カルシウムに関しては言及がない。
【0011】
上記の及び他の課題を解決するために、本発明はポリプロピレンと可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム又は変性セルロース等のバイオマス材料とをブレンドし、各種改質剤、界面活性剤をさらに加えることで、ポリプロピレンと同等の力学的性能及び耐熱性を有し、生分解性能を備えるとともに炭素排出量の減少が図られるバイオベース複合材料及びその製造方法を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の及び他の目的を達成するための、本発明の一態様によるバイオベース複合材料は、ポリプロピレン45ないし75重量部と、バイオマス材料25ないし55重量部とを含んでおり、前記バイオマス材料は、可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム、及び変性セルロースのうちのいずれか、又は2種ないし3種の組み合わせであり、改質剤としての直鎖状低密度ポリエチレン1ないし3重量部、改質剤としてのエチレン-酢酸ビニル共重合体3ないし5重量部、界面活性剤としてのモノグリセリド2ないし3重量部、改質剤としてのポリエチレンワックス2ないし3重量部、改質剤としてのシランカップリング剤2ないし3重量部、酸化防止剤0.1ないし0.2重量部、改質剤としてのポリプロピレングラフト無水マレイン酸0ないし3重量部をさらに含む。
【0013】
また、本発明の一態様によるバイオベース複合材料の製造方法は、可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム、及び変性セルロースのうちのいずれか、又はそれらのうちの2種又は3種を製造し、ポリプロピレン45ないし75重量部、改質剤としての直鎖状低密度ポリエチレン1ないし3重量部、改質剤としてのエチレン-酢酸ビニル共重合体3ないし5重量部、界面活性剤としてのモノグリセリド2ないし3重量部、改質剤としてのポリエチレンワックス2ないし3重量部、改質剤としてのシランカップリング剤2ないし3重量部、酸化防止剤0.1ないし0.2重量部、及び改質剤としてのポリプロピレングラフト無水マレイン酸0ないし3重量部を混合した混合物を製造し、前記混合物に前記可塑化デンプン、前記変性生物由来カルシウム、及び前記変性セルロースのうちのいずれか、又は2種ないし3種の組み合わせを25ないし55重量部加えて混合して混合原料を生成し、前記混合原料を混練した後に押し出し切断し、ペレット化して乾燥させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリプロピレンと可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム又は変性セルロース等のバイオマス材料とをブレンドし、各種改質剤、界面活性剤をさらに加えることで、ポリプロピレンと同等の力学的性能及び耐熱性を有し、生分解性能を備えるとともに炭素排出量の減少が図られるバイオベース複合材料及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるバイオベース複合材料の生産工程を例示するフローチャートである。
【
図2】
図2は、本実施形態のバイオベース複合材料の生産に用いる二軸スクリュー押出機の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、その実施形態、実施例に即して図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施形態によるバイオベース複合材料は、ポリプロピレン45ないし75重量部と、バイオマス材料25ないし55重量部とを含んでおり、前記バイオマス材料は、可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム、及び変性セルロースのうちのいずれか、又は2種ないし3種の組み合わせであり、改質剤としての直鎖状低密度ポリエチレン1ないし3重量部、改質剤としてのエチレン-酢酸ビニル共重合体3ないし5重量部、界面活性剤としてのモノグリセリド2ないし3重量部、改質剤としてのポリエチレンワックス2ないし3重量部、改質剤としてのシランカップリング剤2ないし3重量部、酸化防止剤0.1ないし0.2重量部、改質剤としてのポリプロピレングラフト無水マレイン酸0ないし3重量部をさらに含む。
【0018】
ここで、「変性」とは、架橋剤、界面活性剤等の添加剤を用いてセルロース、生物由来カルシウムの表面を変性させ、ポリプロピレンとの相溶性、靭性、強度などを向上させることを意味している。
【0019】
エチレン-酢酸ビニル共重合体は、ポリプロピレンを改質するための可塑剤であり、その弾性、柔軟性、光沢度、通気性を改善する。また、ポリプロピレンの外力による割れに対する耐久性を高め、バイオマス材料との相溶性も改善される。ポリプロピレンの機械的特性の低下を防止、あるいは低減するために、他の充填材を加えて補強してもよい。
【0020】
モノグリセリド、ポリエチレンワックスは、潤滑剤である。酸化防止剤は、製造工程における材料の酸化、分解を防止する。シランカップリング剤、ポリプロピレングラフト無水マレイン酸は、架橋剤であり、ポリプロピレンとバイオマス材料との相溶性を向上させる。
【0021】
前記バイオベース複合材料に含まれる前記ポリプロピレンの重量比を40ないし60%に、前記バイオベース複合材料に含まれる前記バイオマス材料の重量比を40ないし60%にすることができる。
【0022】
前記ポリプロピレンはホモポリマーであってよい。
【0023】
前記可塑化デンプンは、デンプン、アルミン酸ナトリウム(Sodium aluminate)、水、グリセリン(glycerin)、及びポリエチレングリコール400(Polyethylene glycol 400)の混合物であり、デンプン、アルミン酸ナトリウム、水、グリセリン、及びポリエチレングリコールの重量比が250:1ないし2:25ないし35:40ないし50:10ないし30とすることができる。
【0024】
前記変性生物由来カルシウムは、貝殻粉末又は卵殻粉末を含むとすることができる。
【0025】
前記変性セルロースは、木材パルプセルロース、アルミン酸エステルカップリング剤、グリセリン、及びステアリン酸の混合物であり、木材パルプセルロース、アルミン酸エステルカップリング剤、グリセリン、及びステアリン酸の質量比は30:1ないし3:2ないし4:0.3ないし0.5とすることができる。
【0026】
前記シランカップリング剤はメチルトリメトキシシランとすることができる。
【0027】
前記酸化防止剤は、テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(tetrakis[3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)とすることができる。
【0028】
本発明の一実施形態に係るバイオベース複合材料の製造方法では、可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム、及び変性セルロースのうちのいずれか、又はそれらのうちの2種又は3種を製造し、ポリプロピレン45ないし75重量部、改質剤としての直鎖状低密度ポリエチレン1ないし3重量部、改質剤としてのエチレン-酢酸ビニル共重合体3ないし5重量部、界面活性剤としてのモノグリセリド2ないし3重量部、改質剤としてのポリエチレンワックス2ないし3重量部、改質剤としてのシランカップリング剤2ないし3重量部、酸化防止剤0.1ないし0.2重量部、及び改質剤としてのポリプロピレングラフト無水マレイン酸0ないし3重量部を混合した混合物を製造し、前記混合物に前記可塑化デンプン、前記変性生物由来カルシウム、及び前記変性セルロースのうちのいずれか、又は2種ないし3種の組み合わせを25ないし55重量部加えて混合して混合原料を生成し、前記混合原料を混練した後に押し出し切断し、ペレット化して乾燥させる。なお、製造したペレットの水分含有率は1%以下とすることができる。
【0029】
前記可塑化デンプンが、デンプン、アルミン酸ナトリウム、及び水を混合し、乾燥させた後、グリセリン及びポリエチレングリコール400を加えて、高速混合、乾燥、造粒することにより製造され、得られた前記可塑化デンプンにおいて、デンプン、アルミン酸ナトリウム、水、グリセリン、及びポリエチレングリコールの重量比が、250:1ないし2:25ないし35:40ないし50:10ないし30とすることができる。
【0030】
前記変性生物由来カルシウムが、貝殻又は卵殻から不純物を除去して水できれいに洗浄し、100℃で乾燥させ、粉砕してふるいにかけて100メッシュの貝殻粉末又は卵殻粉末を得、1ないし3重量部のカプロラクタムを無水エタノールに10%の濃度で溶解し、100重量部の前記100メッシュの貝殻粉末又は卵殻粉末に加えて冷間混合し、次に100℃で混合してエタノールを除去し、乾燥させることにより製造されるとしてもよい。
【0031】
前記変性セルロースが、脱水乾燥後の木材パルプセルロースを取得し、アルミン酸エステルカップリング剤とグリセリンとを加えて混合して撹拌した後、さらにステアリン酸を加えて混合し、変性木材パルプセルロースとして得られ、前記木材パルプセルロース、アルミン酸エステルカップリング剤、グリセリン、及びステアリン酸の質量比は30:1ないし3:2ないし4:0.3ないし0.5であるとしてもよい。
【0032】
上記のようにして得られる可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム、変性セルロースは、ポリプロピレンとの表面相溶性に優れている。
【0033】
前記可塑化デンプン、前記変性生物由来カルシウム、及び前記変性セルロースのうちのいずれか、又はそれらのうちの2種又は3種と、前記ポリプロピレン、前記直鎖状低密度ポリエチレン、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体、前記モノグリセリド、前記ポリエチレンワックス、前記シランカップリング剤、前記酸化防止剤、及び前記ポリプロピレングラフト無水マレイン酸とを混合してなる混合原料が、混練・加熱工程において混練及び加熱され、前記混練・加熱工程の入口から出口までが第1区画から第8区画までに区分されており、前記第1区画から前記第8区画までの温度がそれぞれ、165ないし175℃、165ないし170℃、170ないし175℃、170ないし175℃、170ないし175℃、165ないし170℃、165ないし170℃、及び165ないし170℃の範囲に設定されており、前記出口の温度は170ないし175℃に設定されているとしてもよい。第1区画から第8区画までについて設定する温度範囲は、実験に基づいて決定することができる。設定温度が前記温度範囲よりも低い場合、混合物の溶融が不十分となり、混合物の融合が十分に行われないという問題がある。設定温度が前記温度範囲よりも高い場合、バイオマス材料が炭化するおそれがあるという問題がある。
【0034】
なお、バイオベース複合材料に含まれるポリプロピレンの重量比は、40ないし60%であることが好ましい。また、バイオベース複合材料に含まれるバイオマス材料の重量比は、40ないし60%であることが好ましい。これは、バイオマス材料としての可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム、及び変性セルロースのそれぞれについて、好ましい重量比は40ないし60%であることを示している。
【0035】
本発明の実施形態に係るバイオベース複合材料によれば、ポリプロピレンと、可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム、及び変性セルロースのいずれか、又はそれらのうちの2種又は3種のバイオマス材料とを混合し、各種の改質剤をさらに混合することにより、プラスチック基材であるポリプロピレンと各種バイオマス材料表面との相溶性を向上させ、その力学的性能をポリプロピレン単体と同等とすることができる。また材料の力学的性能及び耐熱性を保証する条件下で、バイオマス材料の添加量を最大60%まで増加させ、材料の分解効率を最高60%まで向上させることができ、材料コストも低減させることができる。
【0036】
また、本発明の実施形態に係るバイオベース複合材料はペレットとして得られるので、射出成形、ホットプレス、ブロー成形、押出及びブロー等の従来の成形方法に適合し、各種の電気部品、音響部品、容器、製品、食器及び包装物等を製造することができ、応用範囲が広い。
【0037】
さらに、本発明の実施形態に係るバイオベース複合材料は、微生物による分解及び吸収が可能であり、廃棄に伴う炭素排出量をポリプロピレン単体と比較して30%程度低下させることができるので、環境への負荷が小さく、良好な環境効果及び社会的価値を有する。
【0038】
次に、以上の実施形態に係るバイオベース複合材料、及びその製造方法について、実施例をあげて説明する。
【0039】
[実施例]
各種バイオマス材料の製造
本発明に係るバイオベース複合材料を生成するためにポリプロピレンと混合される各種のバイオマス材料について説明する。
【0040】
(1)可塑化デンプンの製造
アルミン酸ナトリウム15gを水300mlに溶解し、さらにデンプン2500gを加え、乾燥させた後にグリセリン450g及びポリエチレングリコール400 200gを加え、30分間、均一となるように混合し、乾燥させ、造粒した。造粒温度は90ないし125℃であり、これにより可塑化デンプン3165gを得た。
【0041】
(2)生物由来カルシウムの製造
(a)変性貝殻粉末の製造
貝殻から不純物を除去して水できれいに洗浄し、100℃で乾燥させ、粉砕してふるいにかけて100メッシュの貝殻粉末を得た。
【0042】
まず20gのカプロラクタムを180mlの無水エタノールに溶解し、100メッシュの貝殻粉末1000gに加え、30分間冷間混合し、次に100℃で30分間混合してエタノールを除去し、乾燥させて1020gの変性生物由来カルシウムを得た。
【0043】
(b)変性卵殻粉末の製造
卵殻から不純物を除去して水できれいに洗浄し、100℃で乾燥させ、粉砕してふるいにかけて100メッシュの卵殻粉末を得た。
【0044】
まず20gのカプロラクタムを180mlの無水エタノールに溶解し、100メッシュの卵殻粉末1000gに加え、30分間冷間混合し、次に100℃で30分間混合してエタノールを除去し、乾燥させて1020gの変性生物由来カルシウムを得た。
【0045】
(4)変性セルロースの製造
脱水乾燥後の木材パルプセルロース3000gに、アルミン酸エステルカップリング剤200g及びグリセリン300gを加えて混合した後に高速混合機に加えて撹拌した後、さらにステアリン酸40gを加えて混合し、変性木材パルプセルロース3540gを得た。
【0046】
バイオベース複合材料の製造
次に、製造、準備した各種バイオマス材料を用いた、バイオベース複合材料の製造について説明する。
図1に、本発明の実施形態によるバイオベース材料の製造工程例をフローチャートとして示している。なお、図中の符号Sはステップを意味する。
【0047】
まず、ステップS10にて可塑化デンプンが、ステップS20にて変性生物由来カルシウムが、ステップS30にて変性セルロースが、それぞれ製造される。
【0048】
ステップS40では、S10ないしS30にて製造された可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム、及び変性セルロースのいずれか、またはそれらのうちの2種又は3種と、ポリプロピレンとが混合される。
【0049】
ステップS50では、ステップS40で生成された混合物に各種添加剤がさらに混合される。
【0050】
ステップS60では、ステップS50で得られた混合物が、混練・加熱工程を構成する二軸スクリュー押出機に入口で装入されて、所定の温度で加熱雰囲気中に出口のダイヘッド(ダイス)から押し出され、ホットカットによりペレット化される。
図2に、本実施例における二軸スクリュー押出機100の模式平面図を示している。
図2に例示する二軸スクリュー押出機100は、一対のスクリュー140、第1区画120-1ないし第8区画120-8、及びダイヘッド130を備える。ステップS50で得られたバイオベース複合材料の混合物は、図示を省略するサイド供給ホッパーによって入口である供給部110を通じてスクリュー140に供給され混練、加熱されながら第1区画120-1に入る。第1区画120-1は、所定の温度T1が保持されている。混練された混合物は第2区画120-2、第3区画120-3と順次送られていく。第2区画120-2ないし第8区画120-8も、それぞれ所定の温度T2ないしT8が保たれている。加熱されながら出口のダイヘッド130に達した混合物は、ステップS70において、複数の細孔から押し出されつつカッターによって造粒され、その後の乾燥を経てバイオベース複合材料のペレットに加工される。
【0051】
なお、ペレット化にはダイヘッド130から押し出された原料をホットカットする方式を採用することができるが、ストランドカット等の他のペレット化方式を採用してもよい。また、上記のように本発明の実施例では、混合原料の混練、加熱に二軸スクリュー押出機100を用いているが、一軸スクリュー押出機等の他の形式の機器を用いてもよい。
【0052】
次に、各種バイオマス材料を用いたバイオベース複合材料の製造について具体的に説明する。
【0053】
実施例1 デンプン系バイオマス材料を用いたバイオベース複合材料の製造
ポリプロピレン315g、直鎖状低密度ポリエチレン20g、エチレン-酢酸ビニル共重合体40g、モノグリセリド20g、ポリエチレンワックス30g、シランカップリング剤20g、酸化防止剤1g、ポリプロピレングラフト無水マレイン酸10gを高速撹拌機に加え、30分間混合した後に可塑化デンプン685gを加え、再び30分間混合した後にサイド供給ホッパーから二軸スクリュー押出機100に加え、混合原料を混練、加熱してダイヘッド130から押し出し、ペレット化して乾燥させ、デンプン系バイオマス材料を用いたバイオベース複合材料を得た。
【0054】
二軸スクリュー押出機100の供給部110からダイヘッド130までを構成している第1区画120-1から第8区画120-8までの各部の温度設定はそれぞれT1=165℃、T2=170℃、T3=170℃、T4=170℃、T5=170℃、T6=170℃、T7=165℃、及びT8=165℃であり、ダイヘッド130の温度は170℃であった。
【0055】
実施例2 生物由来カルシウム系バイオマス材料を用いたバイオベース複合材料の製造
ポリプロピレン550g、直鎖状低密度ポリエチレン15g、エチレン-酢酸ビニル共重合体40g、モノグリセリド30g、ポリエチレンワックス30g、シランカップリング剤25g、酸化防止剤1.5g、ポリプロピレングラフト無水マレイン酸20gを高速撹拌機に加え、30分間混合した後にさらに変性貝殻粉末450gを加え、再び30分間混合した後にサイド供給ホッパーから二軸スクリュー押出機100に加え、混合原料を混練、加熱してダイヘッド130から押し出し、ペレット化して乾燥させ、生物由来カルシウム系バイオマス材料を用いたバイオベース複合材料を得た。
【0056】
二軸スクリュー押出機の供給部110からダイヘッド130までを構成している第1区画120-1から第8区画120-8までの各部の温度設定はそれぞれT1=170℃、T2=175℃、T3=175℃、T4=175℃、T5=175℃、T6=175℃、T7=170℃、及びT8=170℃であり、ダイヘッド130の温度は176℃であった。
【0057】
実施例3 生物由来カルシウム系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料の製造
ポリプロピレン600g、直鎖状低密度ポリエチレン15g、エチレン-酢酸ビニル共重合体30g、モノグリセリド25g、ポリエチレンワックス20g、シランカップリング剤20g、酸化防止剤1g、ポリプロピレングラフト無水マレイン酸20gを高速撹拌機に加え、30分間混合した後にさらに変性卵殻粉末400gを加え、再び30分間混合した後にサイド供給ホッパーから二軸スクリュー押出機100に加え、混合原料を混練、加熱してダイヘッド130から押し出し、ペレット化して乾燥させ、生物由来カルシウム系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料を得た。
【0058】
二軸スクリュー押出機の供給部110からダイヘッド130までを構成している第1区画120-1から第8区画120-8までの各部の温度設定はそれぞれT1=170℃、T2=175℃、T3=175℃、T4=175℃、T5=175℃、T6=175℃、T7=170℃、及びT8=170℃であり、ダイヘッド130の温度は176℃であった。
【0059】
実施例4 セルロース系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料の製造
ポリプロピレン420g、直鎖状低密度ポリエチレン30g、エチレン-酢酸ビニル共重合体50g、モノグリセリド30g、ポリエチレンワックス20g、シランカップリング剤25g、酸化防止剤2g、ポリプロピレングラフト無水マレイン酸20gを、高速撹拌機に加え、30分間混合した後にさらに変性セルロース580gを加え、再び30分間混合した後にサイド供給ホッパーから二軸スクリュー押出機100に加え、混合原料を混練、加熱してダイヘッド130から押し出し、ペレット化して乾燥させ、セルロース系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料を得た。
【0060】
二軸スクリュー押出機100の供給部110からダイヘッド130までを構成している第1区画120-1から第8区画120-8までの各部の温度設定はそれぞれT1=165℃、T2=165℃、T3=170℃、T4=170℃、T5=170℃、T6=170℃、T7=165℃、及びT8=165℃であり、ダイヘッド130の温度は170℃であった。
【0061】
実施例5 デンプン系バイオマス材料及び生物由来カルシウム系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料の製造
ポリプロピレン350g、直鎖状低密度ポリエチレン30g、エチレン-酢酸ビニル共重合体40g、モノグリセリド20g、ポリエチレンワックス20g、シランカップリング剤30g、酸化防止剤1g、ポリプロピレングラフト無水マレイン酸30gを高速撹拌機に加え、30分間混合した後に可塑化デンプン400g及び変性貝殻粉末250gを加え、再び30分間混合した後にサイド供給ホッパーから二軸スクリュー押出機100に加え、混合原料を混練、加熱してダイヘッド130から押し出し、ペレット化して乾燥させ、デンプン系バイオマス材料及び生物由来カルシウム系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料を得た。
【0062】
二軸スクリュー押出機100の供給部110からダイヘッド130までを構成している第1区画120-1から第8区画120-8までの温度設定はそれぞれT1=165℃、T2=170℃、T3=170℃、T4=175℃、T5=175℃、T6=170℃、T7=165℃、及びT8=165℃であり、ダイヘッド130の温度は170℃であった。
【0063】
実施例6 デンプン系バイオマス材料及びセルロース系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料の製造
ポリプロピレン450g、直鎖状低密度ポリエチレン25g、エチレン-酢酸ビニル共重合体50g、モノグリセリド20g、ポリエチレンワックス30g、シランカップリング剤30g、酸化防止剤1.5g、ポリプロピレングラフト無水マレイン酸20gを高速撹拌機に加え、30分間混合した後に可塑化デンプン400g及び変性セルロース150gを加え、再び30分間混合した後にサイド供給ホッパーから二軸スクリュー押出機100に加え、混合原料を混練、加熱してダイヘッド130から押し出し、ペレット化して乾燥させ、デンプン系バイオマス材料及びセルロース系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料を得た。
【0064】
二軸スクリュー押出機100の供給部110からダイヘッド130までを構成している第1区画120-1から第8区画120-8までの各部の温度設定はそれぞれT1=165℃、T2=165℃、T3=165℃、T4=170℃、T5=170℃、T6=170℃、T7=165℃、及びT8=165℃であり、ダイヘッド130の温度は170℃であった。
【0065】
実施例7 セルロース系バイオマス材料及び生物由来カルシウム系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料の製造
ポリプロピレン540g、直鎖状低密度ポリエチレン10g、エチレン-酢酸ビニル共重合体30g、モノグリセリド20g、ポリエチレンワックス30g、シランカップリング剤30g、酸化防止剤1g、ポリプロピレングラフト無水マレイン酸30gを高速撹拌機に加え、30分間混合した後にさらに変性セルロース300g及び変性貝殻粉末160gを加え、再び30分間混合した後にサイド供給ホッパーから二軸スクリュー押出機100に加え、混合原料を混練、加熱してダイヘッド130から押し出し、ペレット化して乾燥させ、セルロース系バイオマス材料及び生物由来カルシウム系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料を得た。
【0066】
二軸スクリュー押出機100の供給部110からダイヘッド130までを構成している第1区画120-1から第8区画120-8までの各部の温度設定はそれぞれT1=170℃、T2=170℃、T3=175℃、T4=175℃、T5=175℃、T6=170℃、T7=165℃、及びT8=165℃であり、ダイヘッド130の温度は175℃であった。
【0067】
実施例8 デンプン系バイオマス材料、変性生物由来カルシウム系バイオマス材料及び変性セルロース系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料の製造
ポリプロピレン400g、直鎖状低密度ポリエチレン20g、エチレン-酢酸ビニル共重合体40g、モノグリセリド20g、ポリエチレンワックス30g、シランカップリング剤30g、酸化防止剤1g、ポリプロピレングラフト無水マレイン酸20gを高速撹拌機に加え、30分間混合した後に可塑化デンプン300g、変性貝殻粉末150g及び変性セルロース150gを加えて再び30分間混合した後にサイド供給ホッパーから二軸スクリュー押出機100に加え、混合原料を混練、加熱してダイヘッド130から押し出し、ペレット化して乾燥させ、デンプン系、生物由来カルシウム系及びセルロース系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料を得た。
【0068】
二軸スクリュー押出機100の供給部110からダイヘッド130までを構成している第1区画120-1から第8区画120-8までの各部の温度設定はそれぞれT1=165℃、T2=170℃、T3=175℃、T4=175℃、T5=175℃、T6=170℃、T7=170℃、及びT8=165℃であり、ダイヘッド130の温度は175℃であった。
【0069】
実施例9 デンプン系バイオマス材料、変性生物由来カルシウム系バイオマス材料及び変性セルロース系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料の製造
ポリプロピレン450g、直鎖状低密度ポリエチレン20g、エチレン-酢酸ビニル共重合体40g、モノグリセリド20g、ポリエチレンワックス30g、シランカップリング剤30g、酸化防止剤1g、ポリプロピレングラフト無水マレイン酸20gを高速撹拌機に加え、30分間混合した後に可塑化デンプン300g、変性卵殻粉末100g及び変性セルロース150gを加えて30分間再混合した後にサイド供給ホッパーから二軸スクリュー押出機100に加え、混合原料を混練、加熱してダイヘッド130から押し出し、ペレット化して乾燥させ、デンプン系、生物由来カルシウム系及びセルロース系バイオマス材料を使用したバイオベース複合材料を得た。
【0070】
二軸スクリュー押出機100の供給部110からダイヘッド130までを構成している第1区画120-1から第8区画120-8までの各部の温度設定はそれぞれT1=165℃、T2=170℃、T3=175℃、T4=175℃、T5=175℃、T6=170℃、T7=170℃、及びT8=165℃であり、ダイヘッド130の温度は175℃であった。
【0071】
前記した実施例1ないし9で製造されたバイオベース複合材料と、石油由来のポリプロピレン(製品名 茂名石化PP040)について、ISO527-1:2019に従ってその破断点伸び率、引張強度及び弾性率を測定した。本発明の各実施例によるバイオベース複合材料及びポリプロピレンの力学的性能指標の測定結果を表1に示す。本発明の各実施例によるバイオベース複合材料の力学的性能指標はポリプロピレンと類似している。本発明の実施例1ないし9のバイオマス材料含有量は35.4%ないし60.0%であるのに対し、ポリプロピレンのバイオマス材料含有量は0である。
表1 本発明各実施例によるバイオベース複合材料とポリプロピレンの特性指数の比較
【表1】
【0072】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、上記実施形態と変形例の各構成を組み合わせることも可能である。更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
100 二軸スクリュー押出機
110 供給部
120-1ないし120-8 区画(押出機100の)
130 ダイヘッド
140 スクリュー
【要約】
【課題】
機械的特性に優れ環境性能も高いバイオベース複合材料の提供。
【解決手段】
ポリプロピレン45ないし75重量部と、バイオマス材料25ないし55重量部とを含んでおり、前記バイオマス材料は、可塑化デンプン、変性生物由来カルシウム、及び変性セルロースのうちのいずれか、又は2種ないし3種の組み合わせであり、改質剤としての直鎖状低密度ポリエチレン1ないし3重量部、改質剤としてのエチレン-酢酸ビニル共重合体3ないし5重量部、界面活性剤としてのモノグリセリド2ないし3重量部、改質剤としてのポリエチレンワックス2ないし3重量部、改質剤としてのシランカップリング剤2ないし3重量部、酸化防止剤0.1ないし0.2重量部、改質剤としてのポリプロピレングラフト無水マレイン酸0ないし3重量部をさらに含むバイオベース複合材料である。
【選択図】
図1