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特許7474565粒子状安定化発泡体で基材をコーティングする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】粒子状安定化発泡体で基材をコーティングする方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20240418BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20240418BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240418BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20240418BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240418BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240418BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240418BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B01J37/02 301C
B01J37/02 301D
B01D53/92 250
B01D53/92 352
B01D53/94 222
B01J29/76 A ZAB
B01J35/60 F
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2018553084
(86)(22)【出願日】2017-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 GB2017050990
(87)【国際公開番号】W WO2017178801
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-01-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】1606133.5
(32)【優先日】2016-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルディーニ, セシリア
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー, ガイ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ダリー, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ハードストーン, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ホチキス, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】トンプセット, デーヴィッド
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】土屋 知久
【審判官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-253968(JP,A)
【文献】特表2002-506720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体で基材をコーティングする方法であって、
(a)基材の第1の端部におけるチャネルの開放端を通じて、複数のチャネルを含む基材に発泡体を導入すること、及び
(b)(i)基材の第2の端部におけるチャネルの開放端に真空を適用して基材に発泡体を引き入れること、及び/又は(ii)基材の第1の端部におけるチャネルの開放端に圧力を適用して基材に発泡体を押し込むか若しくは吹き込むこと
を含み、
発泡体が、微粒子状材料と(i)C-Cカルボン酸及びそのエステル、(ii)C-Cガレートエステル並びに(iii)アミノ酸からなる群から選択される両親媒性物質とを含み、且つ発泡体が粒子状安定化発泡体である、方法。
【請求項2】
工程(a)が、基材を実質的に垂直に保持する工程(i)、及び第1の端部におけるチャネルの開放端を通じて、基材に発泡体を押し込むか又は吹き込む工程(ii)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基材に発泡体を押し込むか又は吹き込む工程(ii)が、ピストンを使用する発泡体の押し込み又は吹き込み(ii)でありうる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)が、発泡体を所定の量で導入することをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
粒子状安定化発泡体を含有する基材を、基材上に配置又は担持される固体発泡体層を得るために、乾燥及び/又は焼成する工程(c)をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
固体発泡体層が連続気泡構造を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
固体発泡体層がセル容積を有し、セル容積の20%超が相互接続している、請求項又はに記載の方法。
【請求項8】
発泡体が、水性媒体中で微粒子状材料の懸濁液を調製する工程(i)と;気体を懸濁液に導入することによって懸濁液を発泡させて、粒子状安定化発泡体を生成する工程(ii)とを含む方法によって得られる、又は得ることができる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(i)が、両親媒性物質を含有する水性媒体中で微粒子状材料の懸濁液を調製する工程である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
微粒子状材料が1nmから50μmのメジアン粒子サイズを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
発泡体が1μmから1mmの直径を有する気泡を含有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
内燃機関により生成される排気ガスによる汚染物質を処理又は除去するための排出制御装置を製造するための方法であって、基材上に配置される固体発泡体層を含み、基材上に配置される固体発泡体層が、
(i)請求項から11のいずれか一項に記載の方法から得られる、又は得ることができる;又は
(ii)請求項から11のいずれか一項に記載の方法から得られる、又は得ることができ、且つ連続気泡構造を有する、
排出制御装置を製造するための方法。
【請求項13】
固体発泡体層がセル容積を有し、セル容積の20%超が相互接続している、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
固体発泡体層が1~100μmのメジアン細孔直径を有する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
固体発泡体層が、5μm~500μmの範囲のサイズ分布を有する気泡様構造を含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
固体発泡体層が部分的に崩壊した構造を含む、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
固体発泡体層の厚さが500μm以下である、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
固体発泡体層がチャネル壁上に実質的に局在している、請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
基材が多孔質モノリスである、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
固体発泡体層が微粒子状材料を含む、請求項12から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
微粒子状材料がセラミック材料、触媒材料又は収着剤材料である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
微粒子状材料が、担体材料上に担持される触媒活性金属を含む触媒材料である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
触媒活性金属が、鉄、銅、ニッケル、金、白金、パラジウム、ロジウム及びルテニウムより選択される少なくとも一の遷移金属である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
担体材料が耐火性酸化物、金属アルミネート又はゼオライトである、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
担体材料が、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、セリア、ランタナ及びそれら二つ以上の混合又は複合酸化物からなる群より選択される耐火性酸化物である、請求項22又は24に記載の方法。
【請求項26】
微粒子状材料が、金属酸化物系SCR触媒配合物、モレキュラーシーブ系SCR触媒配合物又はそれらの混合物である、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
微粒子状材料がモレキュラーシーブ系SCR触媒配合物であり、モレキュラーシーブ系SCR触媒配合物が遷移金属交換モレキュラーシーブを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
遷移金属交換モレキュラーシーブの遷移金属が銅であり、モレキュラーシーブが、骨格タイプコードCHAにより表される骨格構造を有するゼオライトである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
微粒子状材料が、耐火性酸化物の粒子及び/又はPt合金金属の粒子を含む揮発性Ptのための捕獲材料である、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
排出制御装置が触媒材料をさらに含み、触媒材料が白金(Pt)を含み、且つ固体発泡体層が、排気ガスが白金(Pt)を含む触媒材料と接触した後に、排気ガスと接触するよう配置されている、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状安定化発泡体で基材をコーティングする方法に関する。コーティングされた基材は、内燃機関により生成される排気ガスによる汚染物質を処理又は除去するための排出制御装置において用いられる。本発明は、基材及び固体発泡体層を備える排出制御装置と、該排出制御装置の使用とにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
可動及び静止の用途における、内燃機関の排ガスを処理するための排出制御デバイス(例えば、三元触媒やディーゼル用酸化触媒などの触媒)は、触媒成分を含む液体でコーティングされた基材(例えば、ハニカムモノリス基材)を含むのが典型的である。コーティングプロセス中に、コーティングされる基材の特性(例えば、チャネルサイズ、基材が作製されている材料とその多孔度)及び、コーティングに用いられる液体の特性(例えばレオロジー)に依存しうる問題が発生することがある。これらの問題に対処するために、排出制御デバイスの製造者により様々な方法や装置が開発されてきた。
【0003】
国際公開第2007/068127号は、長期的な安定性を呈する湿潤発泡体を調製する方法であって、ここで部分的疎液コロイド粒子が発泡体の気液界面を安定化させるために使用される方法を記載している。一態様では、最初に親水性の粒子を懸濁液の液相中の特定の溶解性を有する両親媒性分子で処理することにより、粒子はin-situで部分的に疎液化される。しかしながら、国際公開第2007/068127号は、いかなるコーティング塗布についても開示又は教示していない。
【0004】
「a novel method of coating a particle stabilized alumina foam on a porous alumina substrate」, Materials Letters, 88, 40-42, 2012では、Ha等は、発泡体を適用するための外力を使用せずに、多孔質アルミナ基材上の粒子状安定化アルミナ発泡体をコーティングする方法を記載している。多孔質アルミナ基材上に発泡体を引き出すために毛細管力に依存するディップコーティングプロセスを使用した。
【0005】
Al(OH)粒子を使用した連続気泡粒子状安定化Al発泡体の合成が記載されている(Scripta Materialia, 76, 85-88, 2014を参照のこと)。生成された液体発泡体は、制御乾燥前にPerspexTM金型を使用して成形された。外力は適用されなかった。
【0006】
DE102007002903は、基材に触媒ウォッシュコートを塗布するための方法を記載している。ウォッシュコートは、塗布前に気化又は脱気される。所望のガス含有量を達成するために、特定の添加剤(界面活性剤/消泡剤)の添加を通じて、気泡は安定化又は不安定化される。
【発明の概要】
【0007】
発明者は驚くべきことに、粒子状安定化発泡体で基材をコーティングすることは、排出制御装置を製造するための一般的なコーティング法においてウォッシュコートを使用することの欠点を克服する特定の利点を達成しうることを発見した。そのような方法における粒子状安定化発泡体の使用は、浅い用量のコーティングに対して優れた制御を提供し、さらに、コーティング層は基材に塗布することができる。必要以上のウォッシュコートの使用を避けることもできる。
【0008】
本発明は、発泡体で基材をコーティングする方法に関する。本方法は、
(a)基材の第1の端部におけるチャネルの開放端を通じて、複数のチャネルを含む基材に発泡体を導入すること、及び
(b)任意選択的に、(i)基材の第2の端部におけるチャネルの開放端に真空を、及び/又は(ii)基材の第1の端部におけるチャネルの開放端に圧力を適用すること
を含み、ここで、発泡体は微粒子状材料を含み、且つ発泡体は安定化粒子である。
【0009】
本発明は、多孔質の固体発泡体層を有するコーティングされた基材の製造を可能にする。このようなコーティングされた基材は、従来のウォッシュコート法を使用してコーティングされているコーティングされた基材と比較して、一又は複数の利点を有する。コーティングされた基材は、排出制御装置として使用されうるか、又はその一部を形成する。
【0010】
基材上に配置される多孔質固体発泡体層を有する排出制御装置は、ウォッシュコートから製造された同一に定式化された排出制御装置と比較して、排気システム中で減少した背圧を示しうる。背圧の減少は、フィルタリング基材、例えばフィルタリングハニカムモノリス基材を含む排出制御装置に特に有利である。固体発泡体層の連続気泡構造は、排気ガスが層を通過するのを容易にすることができ、細孔はスートの回収を助けうる。
【0011】
多孔質固体発泡体層は、典型的には、従来のウォッシュコーティング法によって製造された同じ組成を有する層と比較して、高い比表面積を有する。高い比表面積は、排出制御装置の活性の改善をもたらすことができる。
【0012】
多孔質固体発泡体層は、固体発泡体層(例えば触媒材料)の成分と、固体発泡体層上の排気ガスから捕捉されたスートとの間の優れた接触を提供しうる粗い表面を有する。この表面粗さは、NO又はOが酸化剤として使用されるときのように、スートの酸化を促進しうる。
【0013】
本発明は、固体発泡体層にさらに関する。固体発泡体層は、本発明の方法によって得られる、又は、得ることができる。
【0014】
本発明は、内燃機関により生成される排気ガスによる汚染物質を処理又は除去するための、排出制御装置を提供する。排出制御装置は、基材上に配置又は担持される固体発泡体層を含み、それは本発明の発泡体で基材をコーティングするための方法から得られる、又は、得ることができる。追加的に又は代替的に、排出制御装置は、基材と連続気泡構造を有する固体発泡体層とを含み、ここで、固体発泡体層は基材上に配置又は担持される。基材は典型的には複数のチャネルを含む。
【0015】
本発明は、内燃機関により生成される排気ガスによる汚染物質を処理又は除去するための排気システムにも関する。この排気システムは、本発明の排出制御装置を備える。
【0016】
本発明のさらなる態様は、排出制御装置の方法及び使用に関する。
【0017】
本発明の第1の方法態様は、内燃機関により生成される排気ガスによる汚染物質を処理又は除去するための方法である。該方法は、内燃機関により生成される排気ガスを、本発明による排出制御装置に通す工程を含む。該方法はまた、内燃機関の排気システム内の背圧の蓄積を回避する方法でありうる。
【0018】
本発明の第1の使用態様は、排気システム内の背圧の蓄積を回避するための内燃機関の排気システムにおける排出制御装置の使用に関する。
【0019】
第1の方法態様及び使用態様では、基材(すなわち、固体発泡体層を含む排出制御装置の基材)は、フィルター基材、例えばフィルタリングハニカムモノリス基材である。
【0020】
背圧は自動車触媒の重要な特性である。背圧の増加は、エンジンに追加の機械的作業をさせることができ、且つ/又は排気タービンが使用されるときに抽出されるエネルギーをより少なくさせることができる。これは、燃料消費量、粒子状物質及びCO排出量の増加と、より高い排気温度をもたらす可能性がある。排出基準、すなわち車両から排出することが許容される汚染物質の量として、例えばユーロ5及びユーロ6は、より厳しいものになっており、継続的な触媒有効性の使用中の自己診断機能(OBD)検証のための法的要件も含んでいる。OBD要件は、車両製造業者が、典型的には効率的なエンジン性能を維持するために、その車両設計においてフィルターに保持された粒子状物質の定期的な能動的除去を含むため、触媒化フィルターに特に関連し、そこでは、排気ガス温度は、例えば燃料噴射のエンジン管理を使用して増加され、且つ/又は燃料はエンジン下流の排気ガスに注入され、適切な触媒上で燃焼される。車両製造業者が全(車両)寿命耐久性のある触媒製品を要求しているため、触媒化フィルターの製造業者は、できるだけ多くの触媒をフィルターにロードすることによって、触媒の失活を時間の経過とともに妨害しようとする。
【0021】
エンジン排気背圧は、現代のエンジン、特に複雑な後処理システムを装備したディーゼルエンジン、特にディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)を有するディーゼルエンジンに多くの問題を引き起こす可能性がある。増加した背圧の主な原因は、ディーゼルパティキュレートフィルターのスート蓄積にある。ディーゼルパティキュレートフィルターが定期的に再生されない場合、上述したように背圧の上昇が起こり、多数の問題を引き起こす。
【0022】
背圧の増加に伴う問題による懸念も、ウォッシュコートのローディングが背圧に及ぼす可能性のある影響を考慮する必要がある排出制御装置の設計に影響を及ぼす。ウォッシュコートのローディングが増加すると、排気ガスが壁に到達する前に抵抗を増加させることによって、フィルターの壁を通る排気ガスの流れに影響を及ぼす可能性がある。さらに、ウォッシュコートは、フィルター細孔内に位置し、排気ガスの流れをさらに減少させることができる。再生の間にフィルター壁内にスートが蓄積することもまた、背圧の増加に大きな影響を及ぼす。
【0023】
本発明の第2の方法態様は、排気ガスから揮発性白金(Pt)を捕獲する方法である。該方法は、排気ガスを白金(Pt)を含む触媒材料と接触させ、その後排気ガスを固体発泡体層と接触させて揮発性白金(Pt)を捕獲又は捕捉する工程を含む。
【0024】
本発明の第2の使用態様は、内燃機関により生成される排気ガスを処理するための排気システムにおける揮発性白金(Pt)を捕獲するための固体発泡体層の使用に関する。典型的には、排気システムは、白金(Pt)を含む触媒材料を含み、ここで、固体発泡体層は、排気ガスが白金(Pt)を含む触媒材料と接触又はそれを通過した後で、排気ガスと接触するように配置される。
【0025】
白金(Pt)を含む触媒材料が排気ガス中で比較的高い温度に十分な時間にわたって曝露されるとき、低レベルの白金(Pt)が触媒材料から揮発しうる。この揮発性白金(Pt)は、下流の選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒上で捕捉されることになりうる。そのような比較的高い温度は、通常使用中、特に大型車両用ディーゼル用途において、又は微粒子フィルターの再生中に生じうる。SCR触媒又はSCRFTM触媒上に捕捉されるPtは、アンモニア(NH)を酸化させうるため、触媒性能に非常に有害な影響を及ぼしうる。捕捉されたPtは、NOの選択的触媒還元(それによりNO変換の減少)を目的とするNHを消費することができ、所望の二次排出が生成されうる。Ptの揮発の問題点は、国際公開第2013/088133号、同第2013/088132号、同第2013/088128号及び同第2013/050784号に記載されている。
【0026】
上記の本発明の方法態様又は使用態様における「固体発泡体層」へのあらゆる言及は、一般的に、発泡体で基材をコーティングするための本発明の方法によって得られる、又は得ることができるような固体発泡体層を指す。
【0027】
本発明の第2の方法態様及び使用態様では、白金(Pt)を含む触媒材料が≧700℃の温度に曝露されているとき、排気ガスは揮発性白金(Pt)を含みうる。
【0028】
一般的に、排気ガスの温度が、≧700℃、例えば≧800℃、好ましくは≧900℃であるとき、揮発性白金は排気ガス中(すなわち排気システム中)に存在しうる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1a】実施例2の試料Iのフレッシュな発泡体の光学顕微鏡からの画像を示す(倍率5倍、スケールバー0.20mm)。
図1b】実施例2の試料Iのフレッシュな発泡体の光学顕微鏡からの画像を示す(倍率5倍、スケールバー0.25mm)。
図2】実施例3の走査電子顕微鏡法(SEM)画像を示す。
図3】縦方向に切断後の、基材の一セグメント上の実施例4a中の懸濁液のコーティングの画像を示す。
図4】実施例4aにおけるコーティングされたフィルターのSEM画像を示し、4aはコーティング表面、4bはその断面図を示す。
図5】実施例4bにおけるコーティングされたフィルターのSEM画像を示し、5bはコーティング表面、5a及び5cはその断面図を示す。
図6】実施例4cにおけるコーティングされたフィルターのSEM画像を示し、6aはコーティング表面、6bは断面図を示す。
図7】実施例5a中のコーティングされたフィルターの光学顕微鏡画像を示す。
図8】実施例5b中のコーティングされた触媒の光学顕微鏡画像を示す。
図9】基材チャネルに垂直な方向から見た、実施例7のDOC配合物に投与された揮発性Ptのための発泡体捕獲領域の顕微鏡画像を示し、図9aは発泡体コーティングを示し、図9bは非発泡の従来のコーティングを示す。
図10】基材チャネルに平行な方向から見た、図9に示されるモノリスの出口ゾーンの切片のSEM画像を示す。図10aは発泡体コーティングを示し、図10bは、非発泡の従来のコーティングを示す。
図11】SCR SCAT試験で実行されたときに、揮発性Ptの発泡した捕獲領域がある場合と無い場合のDOCコアの背後の経時されたSCRコアのNO変換活性を示すチャートである。この図は、実施例7の背後の経時されたSCRコア(発泡体コーティング対策あり)は、発泡体コーティングを有しない実施例7の背後の経時されたSCRコアよりも高いNO変換活性を維持することを示している。
図12】揮発したPtのための発泡体捕獲領域を含む実施例6のDOCコーティングを含む、実施例7からのコーティングされたモノリスのX線画像を示す。この図では、出口が画像の頂部にあり、短い(6~10mm)発泡体コーティングが出口上に直接暗帯として見える。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、発泡体で基材をコーティングする方法を提供する。発泡体は、安定化粒子(本明細書では「粒子状安定化発泡体」という)である。
【0031】
該方法は、(a)基材の第1の端部におけるチャネルの開放端を通じて、基材(例えば複数のチャネルを含む基材)に発泡体を導入することを含む。この工程は、基材の内部に及びチャネル壁上に発泡体を塗布する工程である。国際公開第99/47260号、同第2011/080525号、同第2014/195685号及び同第2015/145122(これらはすべて本明細書中に参照として援用される)のいずれかに記載される基材に液体を導入するための方法は、基材に発泡体を導入するために使用することができる。これらの方法において、発泡体は液体(例えばウォッシュコート)の代わりに使用される。
【0032】
(a)基材の第1の端部におけるチャネルの開放端を通じて、基材に発泡体を導入する工程は、以下の工程:(i)基材の第1の端部の頂部に抑制手段を配置すること、(ii)抑制手段に、発泡体、好ましくは所定の量の発泡体を投与すること、及び(iii)[1]基材の第2の端部におけるチャネルの開放端に真空を(すなわち、第1の端部におけるチャネルの開放端を通じて基材に発泡体を引き入れるために)適用すること及び/又は[2]基材の第1の端部のチャネルにおける開放端に圧力を(すなわち、第1の端部におけるチャネルの開放端を通じて基材に発泡体を押し込む若しくは吹き込むために)適用することを含みうる。基材の第1の端部は基材の上部端であり、基材の第2の端部は基材の下部端である。工程(a)が、基材の第1の端部の頂部の抑制手段に発泡体を投与することを含むとき、該方法は、(b)(i)基材の第2の端部におけるチャネルの開放端に真空を、及び/又は(ii)基材の第1の端部のチャネルにおける開放端に圧力を適用する追加の工程を含んでも含まなくてもよく、好ましくは含まない。
【0033】
あるいは、(a)基材の第1の端部におけるチャネルの開放端を通じて、基材に発泡体を導入する工程は、(i)基材を実質的に垂直に保持する工程及び(ii)基材に(例えば第1の端部におけるチャネルの開放端を通じて)発泡体、好ましくは所定の量の発泡体を押し込む又は注入する工程を含んでもよい。典型的には、基材の第1の端部は基材の下部端である(さらに基材の第2の端部は基材の上部端である)。
【0034】
一般に、発泡体は、発泡体を基材内に押し込む又は注入すること等により、基材の下部端(すなわち第1の端部)におけるチャネルの開放端を通じて、重力に反して基材内に導入されることが好ましい。
【0035】
発泡体は、ステップ形式で又は連続的な方式で(例えば、休止なしに)基材に導入されうる。典型的には基材がある用量(即ち、単一用量)の発泡体でコーティングされるまで、発泡体が基材に連続的に導入されることが好ましい。
【0036】
一般に、工程(a)は、所定の量で発泡体を導入することを含む。
【0037】
本明細書で使用する「所定の量」という語は、特定の製品特性、例えば所望のコーティング仕様を得るために十分な、基材に導入するための発泡体の全量を表す。この量は、所望の製品特性を達成するために必要となる発泡体の全量を見出すための定期的な実験においてオフラインで決定されるという意味で、「所定である」。このような所定の量は容易に決定可能であり、当技術分野における、基材をコーティングするための他の方法又は装置(例えば、国際公開第99/47260号、同第2011/080525号、同第2014/19568号及び同第2011/145122号を参照されたい)を用いて知ることができる。
【0038】
所定の量は1~300グラムの範囲でありうる。
【0039】
所定の量は、所定の体積及び/又は所定の質量の発泡体でありうる。所定の量は所定の体積であることが好ましい。所定の体積は、既知の密度の所定の質量を使用することによって達成されうる。典型的には、所定の体積は、コーティングされる基材の体積に基づく。
【0040】
所定の量は、500mLでありうる。所定の量は、150mL以下、100mL以下、75mL以下、又は50mL以下でありうる。
【0041】
所定の体積は、コーティングされるチャネルの1~200%の体積、例えばコーティングされるチャネルの体積の1~150%、好ましくは1~100%(例えば1~80%)でありうる。
【0042】
典型的には、所定の量は、発泡体の単一用量である。
【0043】
本明細書で使用する「単一用量」という語は、単一の基材をコーティングするための、典型的には所望の製品仕様を満たすための、発泡体の量を表す。
【0044】
工程(a)が(ii)基材に発泡体を押し込む又は注入する工程を含むとき、これは、(ii)ピストンを使用して、発泡体、好ましくは所定の量の発泡体を押し込む又は注入することでありうる。ピストンは、ハウジング内に位置しうる。ピストンは、ハウジング内の往復式ピストンであることが好ましい。ハウジングが送達チャンバを有することが好ましい。
【0045】
プロセス中のある時点で、ウォッシュコートの予め測定された用量が基材の顔面領域を覆うように広がらなければならないため、ウォッシュコートのコーティングを基板上の短いコーティング深さに制御することは困難でありうる。この広がりは、基板の表面上又は別の表面上にある可能性がある。したがって、投与量が少ないほど、その広がりを達成することは困難である。
【0046】
より具体的には、比較的少量のウォッシュコートを特定のコート深さに、特に任意の精度で正確に送達するために、ウォッシュコートで基材をコーティングする現在の方法では困難でありうる。これは、ウォッシュコートが、底部層の上に頂部層として部分的に塗布され、頂部層が底部層のわずかな部分のみを覆うように設計されている場合に特に当てはまる。これは、特に、頂部層が底部層よりも比較的薄いコーティングであるように設計されている場合に当てはまる。頂部層が底部層の上に置かれるとき、頂部層の厚さは重要であり、排気ガスの頂部層を通る拡散が重要であるときに、システムにおける所望の変換を得る上で重要でさえある。例えば、アンモニアスリップ触媒において、アンモニア酸化触媒を含む層を、SCR触媒を含有する層の上又は下に置くことができる。アンモニア酸化層のコーティング深さは、本明細書に記載の発泡体コーティングを使用して、より正確に制御することができる。
【0047】
本発明の排出制御装置及びその製造のための方法は、触媒又は触媒材料が連続した構造又はゾーン化された構造中に存在する場合、異なる触媒材料又は異なる量の触媒材料を含有する排出制御装置の様々なゾーン中への、且つ該ゾーンを通じた、気体の連続的な通過の改善を可能にする。
【0048】
発泡体は、チャネル壁上に導入及びコーティングされて、所定の長さの固体発泡体層が提供される。所定の長さは、チャネルの長さの0.1~100%、例えば0.2~100%(例えば1~100%)でありうる。所定の長さは、チャネルの長さの1~60%(例えば0.1~50%)、例えばチャネルの長さの1~20%であることが好ましく、特にチャネルの長さの0.5から15%、より好ましくはチャネルの長さの1から10%であることが好ましい。疑義を避けるために、所定の長さとは、乾燥及び/又は焼成後の固体発泡体層の長さを指す。基材上に当初コーティングされた粒子状安定化発泡体の長さは、固体発泡体層の所定の長さより長くても、短くても、それと同じであってもよい。
【0049】
所定の長さは100mm以下である。所定の長さは、80mm以下、70mm以下、50mm以下(例えば30mm以下)、25mm以下、20mm以下、15mm以下(例えば12mm以下)、10mm以下(例えば8mm以下)、又は5mm以下であることが好ましい。所定の長さは、基材の長さによるものであり、その長さによって制限されうる。
【0050】
典型的には、発泡体はチャネル壁上にコーティングされて、均一の所定の長さが提供されうる。表現「均一な所定の長さ」とは、20mm以下、典型的には5mm以下(例えば2mm以下)、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下、特に0.8mm以下のチャネルの壁上の各固体発泡体層間の差異を指す。
【0051】
本発明の方法では、基材は、(例えば、基材に発泡体を導入する工程(a)の前に)コーティングされた基材であるか又はコーティングされていない基材である。基材がコーティングされた基材であるとき、発泡体は、コーティングされた基材中へ、且つ基材のコーティング上へ、導入されうる。一般に、基材は、(すなわち、発泡体の導入前に)コーティングされていない基材であることが好ましい。
【0052】
本発明の方法は、(i)基材の第2の端部におけるチャネルの開放端に真空を、及び/又は(ii)基材の第1の端部におけるチャネルの開放端に圧力を適用する工程(b)を含みうる。
【0053】
第1の実施態様では、工程(b)は、工程(a)中又は工程(a)後に、基材の第2の端部におけるチャネルの開放端に真空を適用することを含みうる。好ましくは、基材は、真空の適用前(すなわち、工程(a)中又は工程(a)後)に、反転されていない。
【0054】
第2の実施態様では、工程(b)は、(i)発泡体を基材内に密閉して保持すること;(ii)保持された発泡体を含有する基材を反転させること;(iii)基材の第2の端部のチャネルにおける開放端に真空を適用することを含みうる。第2の実施態様では、工程(b)は工程(a)の後に実施される。典型的には、基材の第1の端部は基材の下部端であり、さらに基材の第2の端部は基材の上部端である。反転後、基材の第2の端部は、基材の第1の端部よりも低くなる。
【0055】
一般に、本発明の方法は、粒子状安定化発泡体を含有する基材を(すなわち、基材上に配置又は担持される固体発泡体層を得るために)乾燥及び/又は焼成する工程(c)をさらに含む。工程(c)は、工程(a)の後、又は工程(a)及び(b)の後に実施される。
【0056】
基材は、75から150℃、例えば80℃から150℃、好ましくは85℃から125℃で(例えば、5から60分間、特に10から30分間)乾燥されうる。乾燥工程は、発泡体を基材上に固定するために実施されうる。
【0057】
基材は、最高750℃の温度、例えば150から750℃(例えば、150℃超且つ最高750℃)、例えば300から600℃、より好ましくは400から550℃で焼成されうる。
【0058】
本発明の方法は、第2の微粒子状材料を含む第2の粒子状安定化発泡体を用いて、(a)若しくは(c)を繰り返すか、又は(a)、(b)及び(c)を繰り返す工程(d)を含む。第2の粒子状安定化発泡体は、第1の粒子状安定化発泡体と同一であっても異なっていてもよい。差異は、発泡体の組成、発泡体の投与量、発泡体の固体含有量及び/又は発泡体の粘度に基づきうる。コーティングは、異なる量及び/又は異なるコーティング長さを使用して、異なる位置で実施されうる。例えば、第1の発泡体コーティング又はその後の任意の追加的なコーティングは、先の発泡体コーティングのように、チャネルの同一又は他の開放端から出発しうる。
【0059】
本発明の方法は、基材に粒子状安定化発泡体を導入する工程を含む。本明細書で使用される場合の「粒子状安定化発泡体」への言及は、一般的に、反対の指示がない限り、湿潤粒子状安定化発泡体を指す。用語「粒子状安定化発泡体」は当該技術分野でよく知られており、ピカリング発泡体を指す。粒子状安定化発泡体は、基本的に、界面安定化発泡体とは異なる。
【0060】
粒子状安定化発泡体は直接発泡法から得られうる。直接発泡法は、水性媒体(例えば水のような液体)中で微粒子状材料の懸濁液を調製する工程(i)と;例えば気体を懸濁液に導入することによって懸濁液を発泡させて、粒子安定化発泡体を生成する工程(ii)とを含む。加熱して液体を除去することにより、固体発泡体材料が生成されうる。
【0061】
微粒子状材料が、セラミック材料(以下に規定する)を含むか又はそれからなるとき、本発明の方法は、固体発泡体層を、触媒活性金属、収着剤又はそれらの前駆体を含むか又は本質的にそれらからなる溶液、好ましくは水溶液で含浸させる工程をさらに含む。この工程は、好ましくは、粒子状安定化発泡体を含有する基材を乾燥及び/又は焼成した(c)後に実施される。溶液は、典型的には、以下に記載されるようにセラミック材料を含まない。
【0062】
該方法は、溶液で固体発泡体層を含浸させる工程の後に、基材を乾燥及び/又は焼成するさらなる工程を含んでもよい。触媒活性金属(例えばPt、Pd、Cu若しくはFe)の前駆体又は収着剤(例えばアルカリ土類金属、例えばMg、Ba若しくはSr)の前駆体は、典型的には焼成後に触媒活性金属又は収着剤を形成する。
【0063】
典型的には、微粒子状材料は、1nmから50μm(例えば20nmから50μm)、好ましくは2nmから20μm(例えば20nmから20μm)、例えば2nmから10μm(例えば20nmから10μm)、より好ましくは2nmから7μm(例えば20nmから7μm)のメジアン粒子サイズ(例えばd50)を有する。d50は、Malvern Mastersizer 2000光散乱法によって測定することができる。
【0064】
微粒子状材料は、好ましくは、1μmから10μm、好ましくは2μmから7μmのメジアン粒子サイズを有しうる。
【0065】
一般に、微粒子状材料は、1nmから50μm(例えば20nmから50μm、好ましくは10μmから20μm)、好ましくは2nmから18μm(例えば20nmから18μm、好ましくは15μmから18μm)のd90粒子サイズを有する。d90粒子サイズは、d50粒子サイズよりも大きい。d90は、Malvern Mastersizer 2000光散乱法によって測定することができる。
【0066】
排出制御装置が揮発性白金(Pt)を捕獲するための固体発泡体層を含むとき、微粒子状材料は10μmから20μm、好ましくは15μmから18μmのd90粒子サイズを有することが好ましい。
【0067】
微粒子状材料は、より大きなメジアン粒子サイズを有するとき、所望のメジアン粒子サイズを得られるように粉砕されうる。良好な発泡体は、狭い又は広い粒子サイズ分布で得ることができる。
【0068】
表面改質剤を用いた予備処理を施された微粒子状材料(両親媒性物質を用いた予備処理を施された微粒子状材料を含む)が使用されうる。
【0069】
上記の直接発泡法では、工程(i)は、両親媒性物質を含有する水性媒体(例えば液体)中で微粒子状材料の懸濁液を調製することを含みうる。
【0070】
両親媒性物質は、頭部基に連結された尾部を含む化合物である。尾部は、一般的に、非極性として記載され、脂肪族(直鎖状アルキル若しくはシクロアルキル)又は芳香族(フェニル若しくはナフチル)であり得、一又は複数の置換基を有しうる。そのような置換基は、アルキル基、例えば、n<8である-C2n+1、アリール基(フェニル若しくは置換フェニルなど)、-OH又は-NHである。好ましい尾部は、2から8個の炭素原子を含む任意に置換された直鎖状炭素鎖である。尾部に連結されている頭部基は、好ましくは、イオン基又は極性基であり、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、サルフェート、サルホネート、カルボキシレート(すなわちCOOH)、カルボキシレートエステル、ガレートエステル、アミド、環状アミンを含むアミン及び-OHから選択されうる。
【0071】
適切な両親媒性物質は、限定されないが、カルボン酸、フェノール類誘導体、例えばアルキル-置換フェノール、没食子酸のエステル誘導体(3,4,5-トリヒドロキシベンゾエート)、カテコール誘導体(例えばアルキル-カテコール)、アミン類(例えばアルキル-置換アミン及びカテコールアミン)並びにアミノ酸を含む。
【0072】
特に好ましい両親媒性物質は、C-Cカルボン酸及びそのエステル、例えば吉草酸、酪酸及びプロピオン酸、並びにC-Cガレートエステル、例えばプロピルガレートである。さらに、出願人は、特に安定した発泡体は、アミノ酸、特にアルファ-アミノ酸を使用して調製することができ、ここで、アミノ基はカルボキシレート頭部基に隣接する炭素原子に結合している。好ましいアルファ-アミノ酸には、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン及びトリプトファンの一又は複数が含まれる。メチオニンは、得られる発泡体の硫黄含有量が許容される場合、使用することができる。あまり好ましくないアルファ-アミノ酸には、アラニン及びチロシンが含まれる。特に好ましいアルファ-アミノ酸両親媒性物質には、ロイシン、イソロイシン及びフェニルアラニンの一又は複数が含まれる。それぞれのD、L又はDL型が使用されうる。特に適切なアミノ酸は、フェニルアラニンである。DL-フェニルアラニンが使用されうる。
【0073】
懸濁液のpHは両親媒性物質が含まれる前に調整されうるが、調整は必要ないこともある。例えば、pHは、微粒子状材料の表面電荷が静電安定化のために十分に高いpH、又は両親媒性物質の溶解度が増加するpHに調整されてもよい。
【0074】
コーティングすべき表面の電荷に応じて、負に荷電した又は正に荷電した頭部基が選択されうる。Alに関して、負に荷電した頭部基は、低いpH条件、つまり、等電点を下回るpH、ここではpH<9、特にpH4~5で適している。上記の頭部基及びさらなる同様の基は、広範なセラミック粒子、特に金属酸化物を改質するために使用することができる。
【0075】
表面改質は、疎水性尾部を水性相と接触させたままにしておく、適切な、好ましくは反対に荷電した表面への、負又は正に荷電した両親媒性分子の物理的又は化学的吸着を通じて達成されうる。正に荷電したアルミナ粒子に関して、吸着はpH4.75で水中のカルボン酸を用いて行われうる。両親媒性物質の固着極性頭部基を変化させることによって、アルミナ表面は、中性pH条件下で、例えばアルキルガレートを吸着分子として使用して改質することもできる。この両親媒性物質は、様々な他の両性及び塩基性酸化物の表面を疎液化するためにも使用することができる。あるいは、シリカ、炭化ケイ素及び窒化ケイ素のような酸性の酸化物の表面は、アミン含有頭部基の両親媒性物質を用いて疎液化することができる。
【0076】
粒子のin-situ疎液化に関して、両親媒性物質は、粒子の15重量%未満、好ましくは<5重量%の量で適用されうる。存在すべき最小量の両親媒性物質は、約0.1重量%、好ましくは約1重量%である。両親媒性物質の固体1gあたり0.02~2mmolの範囲の量が使用されうる。懸濁液の他の成分のほかに、両親媒性物質もまた発泡体の粘度に影響を及ぼすため、使用される改質剤の実際の量は、所望の最終粘度に応じて選択される。
【0077】
微粒子状材料は、典型的には、発泡体安定剤として作用する。
【0078】
粒子サイズが適切な寸法内であれば、形状が異なる微粒子状材料を発泡体安定剤として使用することができ、すなわちセラミック粒子は球状、多角形板状、針状、繊維状、棒状、単結晶などであることが判明した。粒子自体は、緻密、つまり非多孔質、又は多孔質でありうるか、又は、緻密及び多孔質粒子の混合物が使用されうる。
【0079】
典型的には、粒子状安定化発泡体は、1μmから1mm、好ましくは10μmから300μmの直径、好ましくは平均直径を有する気泡を含有する。気泡の直径及び平均直径は、光学顕微鏡によって決定されうる。
【0080】
該方法の工程(c)の後、粒子状安定化発泡体中の気泡のいくつかは、崩壊又は部分的に崩壊しうる。
【0081】
典型的には、工程(c)の後、粒子状安定化発泡体の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%又は50%の気泡が崩壊する。追加的に又は代替的には、工程(c)の後、粒子状安定化発泡体の少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の気泡が崩壊する。
【0082】
発泡体の密度は、典型的には0.1から1.2g/mlである。
【0083】
発泡体は微粒子状材料を含む。微粒子状材料はセラミック材料、触媒材料又は収着剤材料でありうる。この文脈における用語「収着剤」とは、(例えばNO又は炭化水素のための)貯蔵の「吸着剤」及び「吸収剤」機構を含む。収着剤は、例えば、(i)アルカリ土類金属(例えばCa、Mg、Ba、Sr)又はそれらの酸化物、水酸化物、若しくは炭酸塩、又は(ii)炭化水素吸収剤、例えばゼオライト、好ましくは非遷移金属交換ゼオライトでありうる。
【0084】
粒子安定化発泡体は、セラミック材料、触媒材料、収着剤材料又はそれらの前駆体を含むか又はそれらから本質的になる粉末の懸濁液を使用して調製されうる。発泡体はまた、金属粉末を使用して調製されうる。
【0085】
微粒子状材料はセラミック材料及び/又は触媒材料、好ましくは触媒材料でありうる。
【0086】
セラミック材料は、耐火性酸化物、セラミック化合物(例えばSiC)、金属アルミネート、モレキュラーシーブ(例えばゼオライト)又はそれら二つ以上の混合物を含みうるか、又は本質的にそれらからなりうる。セラミック材料は、典型的には、触媒活性金属又は収着剤などの担体材料としての使用に適している。セラミック材料を含む固体発泡体層は、後続のプロセス工程において、(例えば含浸工程によって)触媒活性金属又は収着剤で処理されうる。
【0087】
耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、セリア、ランタナ及びそれらの2つ以上の混合又は複合酸化物からなる群より選択されうる。例えば、耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ-アルミナ、チタニア-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、セリア-アルミナ、チタニア-シリカ、ジルコニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、セリア-ジルコニア、セリア-ジルコニア-アルミナ及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群より選択されうる。
【0088】
触媒材料は、典型的には、担持材料上に担持される触媒活性金属を含む。担持材料がモレキュラーシーブ、例えばゼオライトを含むとき、触媒活性金属は、金属交換モレキュラーシーブ又はゼオライトのようにモレキュラーシーブ又はゼオライト上に担持されうる。
【0089】
一般に、触媒活性金属は、鉄、銅、ニッケル、金、白金、パラジウム、ロジウム及びルテニウムより選択される少なくとも一の遷移金属である。
【0090】
典型的には、担持材料は、上に規定されるような耐火性酸化物、金属アルミネート又はモレキュラーシーブ(例えばゼオライト)である。そのような触媒中の遷移金属及び貴金属含有量は、最大85重量%でありうるが、好ましくは0.1~35重量%の範囲である。
【0091】
微粒子状材料が触媒材料を含むとき、触媒活性金属、好ましくは遷移金属のローディングは、好ましくは0.1~300g.ft-3、好ましくは0.5~300g.ft-3である。
【0092】
典型的には、収着剤材料は、NO貯蔵材料又は炭化水素吸収剤を含む。炭化水素吸収剤は、典型的には、ゼオライト、好ましくは非遷移金属交換ゼオライトである。
【0093】
一般に、NO貯蔵材料は、担持材料状に担持されるNO貯蔵成分を含むか、又は本質的にそれから成る。典型的には、NO貯蔵成分は、アルカリ金属(例えばカリウム(K)、ナトリウム(Na)又はリチウム(Li)、好ましくはカリウム(K))、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)又はバリウム(Ba)、好ましくはバリウム(Ba))、希土類金属(例えばセリウム(Ce)、ランタン(La)又はイットリウム(Y)、好ましくはセリウム(Ce))又は、それらの酸化物、炭酸塩若しくは水酸化物である。担持材料は、上に規定されるような耐火性酸化物又は金属アルミネートでありうる。
【0094】
セラミック材料及び/又は触媒材料は、三元触媒(TWC)、ディーゼル酸化触媒(DOC)、NO吸収体触媒(NAC)、アンモニアスリップ触媒(ASC)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化パティキュレートフィルター(ガソリン及びディーゼル)又はフィルター上SCR触媒(SCRFTM)である排出制御装置における使用に適していることがある。
【0095】
粒子状安定化発泡体は、重量で、1~50%、2~45%、3~45%、3~35%又は5~30%、より好ましくは重量で10~25%の固体含有量を有しうる。発泡体の固体含有量は、液体中に懸濁される微粒子状材料と発泡プロセス前の懸濁液(液体+固体)の総重量との間の重量比として規定される。
【0096】
本発明の方法の工程(c)の実施後、基材に配置又は担持される固体発泡体層が得られる。本発明は、基材上に配置又は担持される固体発泡体層を含む排出制御装置にも関する。典型的には、固体発泡体層は微粒子状材料を含む。微粒子状材料は触媒材料を含みうる。固体発泡体層は以下でさらに記載される。
【0097】
固体発泡体層は基材上に直接配置又は担持されてもよく(すなわち、固体発泡体層は基材の表面と直接接触している)、且つ/又は固体発泡体層は、層、例えばウォッシュコートから得られる層上に配置されてもよい。
【0098】
固体発泡体層が基材上に直接配置又は担持されるとき、固体発泡体層はチャネル壁上に実質的に局在する。「チャネル壁上に実質的に局在する」という表現は、<50%、好ましくは<75%(例えば<90%)の固体発泡体層が、チャネル壁中(すなわち、チャネル壁の細孔内)ではなく、チャネル壁上に局在していることを意味する。しかしながら、微量の発泡体は壁内に移動又は拡散しうることが認識される。
【0099】
一般に、固体発泡体層は連続気泡構造を含む。本明細書中で使用される場合の用語「連続気泡構造」とは、セル容積のある部分が相互接続されていることを意味する。典型的には、20%超のセル容積、好ましくは30%、40%又は50%超のセル容積が相互接続されている。固体発泡体層の連続気泡構造を通る開放流路が存在しうる。連続気泡構造において、気孔は互いに接続する。
【0100】
固体発泡体層は、1~100μm、好ましくは5~80μmのメジアン細孔直径を有しうる。
【0101】
固体発泡体層は、一般的に、5μm~500μm、50μm~250μm、50μm~200μm又は5μm~140μmの範囲のサイズ分布を有する気泡又は気泡様構造を含む。サイズ分布はSEMを使用して測定することができる。
【0102】
固体発泡体層は部分的に崩壊した構造を含みうる。少なくとも5%、10%、20%、30%、40%又は50%の固体発泡体層は崩壊した構造を有しうる。固体発泡体層は実質的に崩壊した構造を有しうる。よって、少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の固体発泡体層は崩壊した構造を有する。
【0103】
典型的には、固体発泡体層の厚さは、500μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、200μm以下、160μm以下又は150μm以下である。
【0104】
固体発泡体層が部分的に崩壊した構造を含むとき、緻密層(例えば固体発泡体層の崩壊した部分)の厚さは、2μm~400μm、5μm~300μm、10μm~200μm又は20μm~150μmの間である。
【0105】
排出制御装置は、各層又は二つ以上の層の組み合わせのための基材上及び/又は基材内の(例えば触媒活性材料又は収着剤の)ウォッシュコートローディング又は含浸ローディングを有してもよく、それらは、約0.1g/inから約8g/in、より好ましくは約0.5g/inから約6g/in、さらにより好ましくは約1g/inから約4g/inである。
【0106】
各層又は二つ以上の層の組み合わせのための基材上及び/基材内のウォッシュコートローディング又は含浸ローディングは、≧1.00g/in、例えば≧1.2g/in、≧1.5g/in、≧1.7g/in又は≧2.00g/in(例えば約1.5g/inから約2.5g/in)であることが好ましい。
【0107】
用語「ウォッシュコート」とは、当該技術分野で広く認識される用語であり、セラミック材料、触媒材料又は収着剤材料、及び任意選択的に他の材料、例えば結合剤、促進剤又は安定剤の一又は複数の混合物を指す。
【0108】
一般に、ウォッシュコートローディングは約0.1から約5.0g.in-3(例えば0.6~2.5g.in-3又は0.1から約1.0g.in-3、好ましくは0.1~0.6g.in-3)である。
【0109】
典型的には、ウォッシュコートは、0.1~300g.ft-3の触媒活性金属又はNO貯蔵成分のローディングを含む。別のさらなる実施態様では、触媒活性金属又はNO貯蔵成分は、0.5~300g.ft-3のローディングを有する。触媒活性金属は、典型的には、白金族金属(PGM)、例えば白金、パラジウム及び/又はロジウムである。
【0110】
本発明の方法における使用のため及び排出制御装置のための基材は、当該技術分野でよく知られている。
【0111】
一般的に、基材はハニカムモノリス基材であることが好ましい。本明細書で使用する「ハニカムモノリス基材」という用語は、基材の長さに沿って長手方向に伸びる複数のチャネルを有する基材を表し、各チャネルは少なくとも1つの開放端(即ち、排ガスが通流するため)を有する。典型的には、チャネルは、複数の壁の間に形成される。チャネルは、不規則な断面及び/又は規則的な断面を有し得る。チャネルが規則的な断面を有する場合、断面は六角形断面に限定されず、例えば、長方形又は正方形であり得る。
【0112】
ハニカムモノリス基材は、フロースルー式ハニカムモノリス基材であってもよい。従って、ハニカムモノリス基材は、典型的には内部を貫通して伸びる複数のチャネルを備え、各チャネルは両端が開放されている(即ち、入口の開放端及び出口の開放端)。一般的に、フロースルー式ハニカムモノリス基材はパーシャルフィルターハニカムモノリス基材とは異なる。典型的には、フロースルー式ハニカムモノリス基材は、複数の壁における複数の偏向部などの捕集素子を備えない。
【0113】
ハニカムモノリス基板は、ウォールフローハニカムモノリス基材などのハニカムモノリスフィルター基材であり得る。そのようなハニカムモノリスフィルター基材は、内燃機関、具体的には圧縮点火エンジン(例えば、ディーゼルエンジン)が生み出す排ガスにおける、スート粒子などのパティキュレートマター(PM)を、捕捉又は除去することが可能である。
【0114】
ウォールフローハニカムモノリス基材において、ハニカムモノリス基材は、複数のチャネルを備え、各チャネルは開放端及び閉鎖端(例えば、閉塞された端部)を有する。典型的には、各チャネルは、多孔質構造(例えば、多孔質壁)によって、隣接するチャネルから分離される。一般的に、基材の第1の端部で開放端を有し、基材の第2の(即ち、反対側の)端部で閉鎖(例えば、閉塞)端を有する各チャネルは、典型的には、基材の第1の端部で閉鎖(例えば、閉塞)端を有し、基材の第2の(即ち、反対側の)端部で開放端を有するチャネルに、隣接している。基材の第1の端部が上流端に配置される場合、(i)基材の第1の端部で開放端を有し、基材の第2の端部で閉鎖端を有する各チャネルは、入口チャネルであり、(ii)基材の第1の端部で閉塞端を有し、基材の第2の端部で開放端を有する各チャネルは、出口チャネルである。好ましくは、各入口チャネルが多孔質構造(例えば、多孔質壁)によって出口チャネルから交互に分離され、またその逆でもある。従って、出口チャネルが垂直に且つ横方向に入口チャネルと隣接し、またその逆でもある。入口チャネルと出口チャネルとの間の流体連通は、基材の多孔質構造(例えば、多孔質壁)を介する。何れの端部から見ても、チャネルの交互に閉塞された(例えば、閉鎖された)端及び開放端は、チェス盤の外観を呈する。
【0115】
基材はパーシャルフィルター基材でありうる(例えば、国際公開第01/80978号又はEP1057519に開示されるパーシャルフィルター基材を参照されたい)。典型的には、パーシャルフィルター基材は、(例えば、スート粒子などのパティキュレートマター用の)捕集素子、及び、複数のチャネル(即ち、通流する排ガス用)を有し、各チャネルは、少なくとも1つの開放端を有する(各チャネルが2つの開放端を有する(即ち、各チャネルの両端が開放されている)のが好ましい)。一般的に、パーシャルフィルター基材は、チャネルの境界を画定する複数の壁を有する。典型的には、捕集素子は、複数の壁における複数の偏向部(deflections)である。各壁は、偏向部がなくてもよく、一又は複数の偏向部を有してもよい。各偏向部は、基材を通流する排ガスにおける任意のパティキュレートマターに対する、障害物として作用する。各偏向部は、フラップ又は翼状の形状を有し得、典型的には、各偏向部は壁の平面から(例えば、ある角度で)外側に突出する。好ましくは、各偏向部は、基材の壁における開口と組み合わされる。壁における各開口は、排ガスが1つのチャネルから隣接するチャネルに流れることを可能にする。
【0116】
一般に、基材は、セラミック材料又は金属材料である。基材がセラミック材料である場合、典型的には、セラミック材料は、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、アルミナ、コーディエライト(SiO-Al-MgO)、ムライト、ポルサイト及びサーメット(thermet)(例えば、Al/Fe、Al/NiもしくはBC/Fe、又はこれら2つもしくはそれ以上のセグメントを含む複合物)で構成されるグループから、選択され得る。基材が金属材料である場合、典型的には、金属材料は、Fe-Cr-Al合金、Ni-Cr-Al合金及びステンレス鋼合金で構成されるグループから選択される。
【0117】
発明者は、固体発泡体層を含む本発明の排出制御装置の二つの有利な実施態様を発展させた。
【0118】
第1の排出制御装置の実施態様では、排出制御装置はSCR触媒である。固体発泡体層は、微粒子状材料を含み、これは金属酸化物系SCR触媒配合物、モレキュラーシーブ系SCR触媒配合物又はそれらの混合物である。かかるSCR触媒配合物は、当該技術分野で知られている。
【0119】
金属酸化物ベースのSCR触媒配合物は、典型的には、耐火性酸化物上に担持されるバナジウム若しくはタングステン又はそれらの混合物を含む。耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア及びそれらの組み合わせからなる群より選択されうる。
【0120】
金属酸化物系のSCR触媒配合物は、チタニア(例えばTiO)、セリア(例えばCeO)、及びセリウムとジルコニウムの混合又は複合酸化物(例えばCeZr(1-x)、式中、x=0.1から0.9、好ましくはx=0.2から0.5)からなる群より選択される耐火性酸化物上に担持される、バナジウムの酸化物(例えばV)及び/又はタングステンの酸化物(例えばWO)を含むか、又は本質的にそれらからなることが好ましい。
【0121】
耐火性酸化物がチタニア(例えばTiO)であるとき、好ましくは、バナジウムの酸化物の濃度は(例えば金属酸化物系SCR配合物の)0.5から6重量%であり、且つ/又はタングステンの酸化物(例えばWO)の濃度は5から20重量%である。より好ましくは、バナジウムの酸化物(例えばV)及びタングステンの酸化物(例えばWO)は、チタニア(例えばTiO)上に担持される。
【0122】
耐火性酸化物がチタニア(例えばCeO)であるとき、好ましくは、バナジウムの酸化物の濃度は(例えば金属酸化物系SCR配合物の)0.1から9重量%であり、且つ/又はタングステンの酸化物(例えばWO)の濃度は0.1から9重量%である。
【0123】
一般に、金属酸化物系SCR触媒配合物は、チタニア(例えばTiO)上に担持される、バナジウムの酸化物(例えばV)及び任意選択的にタングステンの酸化物(例えばWO)を含むか、又は本質的にそれらかなることが好ましい。
【0124】
第1の選択的触媒還元組成物は、モレキュラーシーブ系SCR触媒配合物を含みうるか、又は本質的にそれからなりうる。モレキュラーシーブ系SCR触媒配合物は、任意選択的に遷移金属交換モレキュラーシーブであるモレキュラーシーブを含む。SCR触媒配合物は、遷移金属交換モレキュラーシーブを含むことが好ましい。
【0125】
一般に、モレキュラーシーブ系SCR触媒配合物は、アルミノシリケート骨格(例えばゼオライト)、アルミノホスフェート骨格(例えばAlPO)、シリコアルミノホスフェート骨格(例えばSAPO)、ヘテロ原子含有アルミノシリケート骨格、ヘテロ原子含有アルミノホスフェート骨格(例えばMeAlPO、ここでMeは金属である)又はヘテロ原子含有シリコアルミノホスフェート骨格(例えばMeAPSO、ここでMeは金属である)を有するモレキュラーシーブを含みうる。ヘテロ原子(すなわち、ヘテロ原子含有骨格中のもの)は、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)及びそれら二つ以上の組み合わせからなる群より選択されうる。ヘテロ原子は金属であることが好ましい(例えば、上記ヘテロ原子含有骨格のそれぞれは、金属含有骨格でありうる)。
【0126】
モレキュラーシーブ系SCR触媒配合物は、アルミノシリケート骨格(例えばゼオライト)又はシリコアルミノホスフェート骨格(例えばSAPO)を有するモレキュラーシーブを含むか、又は本質的にそれからなることが好ましい。より好ましくは、モレキュラーシーブは、アルミノシリケート骨格(例えばゼオライト)を有する。
【0127】
モレキュラーシーブがアルミノシリケート骨格を有する(例えばモレキュラーシーブがゼオライトである)場合、モレキュラーシーブは典型的に、5から200(例えば10から200)、好ましくは10から100(例えば10から30又は20から80)、例えば12から40、より好ましくは15から30のシリカ対アルミナモル比(SAR)を有する。
【0128】
典型的には、モレキュラーシーブは微孔質である。微孔質モレキュラーシーブは、2nm以下の直径を有する細孔を有する(例えば、「microporous」のIUPAC定義に従う。[Pure & Appl. Chem., 66(8),(1994), 1739-1758を参照のこと])。
【0129】
モレキュラーシーブ系SCR触媒配合物は、小細孔モレキュラーシーブ(例えば最大環サイズが8つの四面体原子を有するモレキュラーシーブ)、中細孔モレキュラーシーブ(例えば最大環サイズが10の四面体原子を有するモレキュラーシーブ)、又は大細孔モレキュラーシーブ(例えば最大環サイズが12の四面体原子を有するモレキュラーシーブ)、又はそれら二つ以上の組み合わせを含みうる。
【0130】
モレキュラーシーブが小細孔モレキュラーシーブであるとき、小細孔モレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、又はそれらの二つ以上の混合及び/又は連晶からなる群より選択される骨格タイプコード(FTC)により表される骨格構造を有しうる。好ましくは、小細孔モレキュラーシーブは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、SFW、KFI、DDR及びITEからなる群より選択されるFTCにより表される骨格構造を有する。より好ましくは、小細孔モレキュラーシーブは、CHA及びAEIからなる群より選択されるFTCにより表される骨格構造を有する。小細孔モレキュラーシーブはFTC CHAにより表される骨格構造を有しうる。小細孔モレキュラーシーブはFTC AEIにより表される骨格構造を有しうる。小細孔モレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC CHAにより表される骨格を有するとき、ゼオライトはチャバザイトでありうる。
【0131】
モレキュラーシーブが中細孔モレキュラーシーブであるとき、中細孔モレキュラーシーブは、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、-PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、-SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI及びWEN、又はそれら二つ以上の混合及び/又は連晶からなる群より選択される骨格タイプコード(FTC)により表される骨格構造を有しうる。好ましくは、中細孔モレキュラーシーブは、FER、MEL、MFI及びSTTからなる群より選択されるFTCにより表される骨格構造を有する。より好ましくは、中細孔モレキュラーシーブは、FER及びMFIからなる群より選択されるFTCにより表される骨格構造を有する。中細孔モレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC FER又はMFIにより表される骨格を有するとき、ゼオライトはフェリエライト、シリカライト又はZSM-5でありうる。
【0132】
モレキュラーシーブが大細孔モレキュラーシーブであるとき、大細孔モレキュラーシーブは、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、-RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY及びVET、又はそれら二つ以上の混合及び/又は連晶からなる群より選択される骨格タイプコード(FTC)により表される骨格構造を有しうる。好ましくは、大細孔モレキュラーシーブは、AFI、BEA、MAZ、MOR及びOFFからなる群より選択されるFTCにより表される骨格構造を有する。より好ましくは、大細孔モレキュラーシーブは、BEA、MOR及びMFIからなる群より選択されるFTCにより表される骨格構造を有する。大細孔モレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC BEA、FAU又はMORにより表される骨格を有するとき、ゼオライトはベータゼオライト、フォージャサイト、ゼオライトY、ゼオライトX又はノルデナイトでありうる。
【0133】
一般に、モレキュラーシーブは小細孔モレキュラーシーブであることが好ましい。
【0134】
モレキュラーシーブ系SCR触媒配合物は、好ましくは遷移金属交換モレキュラーシーブを含む。遷移金属は、コバルト、銅、鉄、マンガン、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム及びレニウムからなる群より選択されうる。遷移金属は、銅及び鉄からなる群より選択されることが好ましい。
【0135】
遷移金属は鉄であってもよい。鉄交換モレキュラーシーブを含有するSCR触媒配合物の利点は、そのような配合物が、例えば銅交換モレキュラーシーブよりも、より高い温度で優れたNO還元活性を有することである。鉄交換モレキュラーシーブは、(他の種類のSCR触媒配合物と比較して)最小量のNOも生成しうる。
【0136】
遷移金属は銅であってもよい。銅交換モレキュラーシーブを含有するSCR触媒配合物の利点は、そのような配合物は優れた低温NO還元活性を有する(例えば、鉄交換モレキュラーシーブの低温NO還元活性より優れうる)ことである。
【0137】
遷移金属は、モレキュラーシーブのチャネル、空洞又はケージ内に、又はモレキュラーシーブの外部表面上の骨格外部位に存在しうる。
【0138】
上記のように、触媒材料のローディングの増加は、フィルター背圧の望ましくない増加をもたらすことがある。例えば、選択的触媒還元(SCR)触媒は、V/WO/TiO及び遷移金属交換ゼオライト、例えばFe/ベータゼオライト又はCu/CHAを含みうる。そのような生成物を作製することに伴う困難は、許容できる背圧での触媒活性の保持の競合する要件のバランスをとることである。より高い多孔度のフィルター基材を使用することに伴う付随する困難の一部に対抗することは可能であるが、そのような基材はより脆弱で取り扱いがより困難である。許容できない背圧を回避する別の手段は、触媒材料の量を制限することである。しかしながら、SCR触媒の量の減少は、より低いNO変換及びNH貯蔵容量をもたらし、これは、低温NO変換にとって重要である。
【0139】
さらに、DOC及びNACのような非常に複雑な多層触媒構成をフロースルー基板モノリス上にコーティングすることができる。フィルターモノリスの表面、例えばウォールフロー型フィルターの入口チャネル表面を、触媒組成物の一以上の層でコーティングすることは可能であるが、フィルターリングモノリスをコーティングすることに関する問題は、フィルターモノリスを触媒ウォッシュコートでオーバーロードし、それによってそこを気体が通過することを制限することによって、使用時の背圧の不要な増加を回避することである。したがって、フィルター基材モノリスの表面を一又は複数の異なる触媒層で順次コーティングすることは不可能ではないが、異なる触媒組成物を、ゾーン内で、例えばフィルターモノリスの前半分のゾーン及び後半分のゾーンを軸方向に分離する、又は、第1の触媒組成物でウォールフロー型フィルター基材モノリスの入り口チャネルを、及び、第2の触媒組成物でウォールフロー型フィルター基材モノリスの出口チャネルをコーティングすることによって分離することがより一般的である。
【0140】
粒子状安定化発泡体で基材をコーティングすることにより、同様の組成を有するウォッシュコートを用いてコーティングされた同じ基材に通常付随する背圧を低減することができることが分かった。本明細書に記載の発泡体コーティングは、浸透性ウォッシュコート層の形成を可能にし、ウォッシュコートローディングを増加させることによる背圧の影響を最小限にし、それにより許容される背圧でより多くの触媒コーティングを可能にする。この発泡体層はまた、スートがフィルター又は他の基材の壁に入るのを防止し、スートが背圧に及ぼす影響を最小にする。
【0141】
排気制御装置がSCR触媒である場合、基材は、典型的には、ハニカムモノリス基材であり、好ましくは、フロースルーハニカムモノリス基材又はウォールフローハニカムモノリス基材、より好ましくはウォールフローハニカムモノリス基材である。
【0142】
基材は、コーディエライトフロースルーモノリス、金属フロースルーモノリス、コーディエライトパティキュレートフィルター、炭化ケイ素パティキュレートフィルター又はチタン酸アルミニウムパティキュレートフィルターでありうる。
【0143】
基材がウォールフローハニカムモノリス基材、例えばパティキュレートフィルターであるとき、典型的には、基材は、40から70%、好ましくは45から65%、例えば50から65%(例えば55から65%)の多孔度を有する。追加的に又は代替的に、基材は、8から45μm、好ましくは10から30μm(例えば10から25μm)、特に15から25μmの平均細孔サイズを有しうる。平均細孔サイズは水銀ポロシメトリーによって決定されうる。
【0144】
第2の排出制御装置の実施態様では、排出制御装置は、揮発性白金(Pt)を捕獲するための基材及び固体発泡体層を含む。固体発泡体層は、好ましくは連続気泡構造を有する。
【0145】
揮発性白金(Pt)を捕獲するための固体発泡体層は、捕獲材料を含むか、又は本質的にそれからなる。微粒子状材料は、典型的には捕獲材料である。適切な捕獲材料は、国際公開第2013/088133号、同第2013/088132号、同第2013/088128号、同第2013/050784号及び同第2016/128720号に記載されている(これら全ては参照により本明細書中に援用される)。
【0146】
捕獲材料は、
(a)耐火性酸化物の粒子、好ましくは≦約50m/gの平均比表面積を有する耐火性酸化物の粒子、及び/又は
(b)Pt合金金属の粒子、好ましくは≧約10nmの平均粒子サイズ及び/又は≦約10%の分散を有するPt合金金属の粒子
を含むか、又は本質的にそれらからなる。
【0147】
典型的には、揮発性白金(Pt)を捕獲するための固体発泡体層又はその捕獲材料は、0.1から3.5g in-3、好ましくは0.2から2.5g in-3、より好ましくは0.3から2.0g in-3、さらにより好ましくは0.5から1.75g in-3(例えば0.75から1.5g in-3)の耐火性酸化物の粒子のローディングを含む。
【0148】
捕獲材料は、≦約50m/g(<約50m/g)、例えば≦約40m/g(<約40m/g)、好ましくは≦約30m/g(<約30m/g)、より好ましくは≦約20m/g(<約20m/g)、さらにより好ましくは≦約10m/g(<約10m/g)の平均比表面積を有する耐火性酸化物の粒子を含みうるか、又は本質的にそれらからなりうる。耐火性酸化物の粒子の平均比表面積(SSA)は、容積法を使用して-196℃での窒素物理吸着により決定することができる。平均SSAは、BET吸着等温式を使用して決定される。
【0149】
耐火性酸化物は<100ミクロンのd90を有しうる。耐火性酸化物は、好ましくは、<75ミクロン、例えば<50ミクロン(例えば<30ミクロン)、より好ましくは<20ミクロンのd90を有しうる。
【0150】
典型的には、耐火性酸化物は>0.1ミクロンのd90を有しうる。耐火性酸化物は>1.0ミクロン、例えば>5.0ミクロンのd90を有することが好ましい。
【0151】
本発明の第2の排出制御装置の実施態様による使用のための耐火性酸化物の粒子は、先行技術の排出制御装置(例えばDOC、CSF又はNSC)における(例えば、白金族金属のような触媒活性金属のための)担体材料として使用される同じ耐火性酸化物の粒子の平均比表面積と比較して、比較的低い平均比表面積を有する。一般に、大きな平均比表面積を有する小さな耐火性酸化物の粒子は、触媒活性を最大化するために使用される。反対に、本発明による使用のための耐火性酸化物の粒子は、比較的大きい(すなわち、一般的に、先行技術の排出制御装置における担体材料として使用されるときよりもはるかに大きい)。
【0152】
≦約50m/gの平均比表面積を有する耐火性酸化物は当該技術分野で知られており、市販されている。
【0153】
耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア及びこれらの混合又は複合酸化物、例えばこれらの2つ以上の混合又は複合酸化物など、から成る群より選択されうる。例えば、耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ-アルミナ、チタニア-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、セリア-アルミナ、チタニア-シリカ、ジルコニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、セリア-ジルコニア及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群より選択されうる。
【0154】
耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、セリア、シリカ-アルミナ、セリア-アルミナ、セリア-ジルコニア及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群より選択されることが好ましい。より好ましくは、耐火性酸化物は、アルミナ、セリア、シリカ-アルミナ及びセリア-ジルコニアからなる群より選択される。耐火性酸化物はアルミナ又はシリカ-アルミナでありうる。
【0155】
捕獲材料は、特にPt合金材料がパラジウムを含むとき、Pt合金材料(PAM)を含まないことが好ましいことがある。この実施態様は、本明細書中では「PAMを含まない実施態様」と表す。より好ましくは、捕獲材料はパラジウム及び白金を含まない。捕獲材料は、一又は複数の白金族金属(PGM)及び/又は一又は複数の貨幣金属金(Au)及び/又は銀(Ag)を含まないことがさらに好ましい。さらにより好ましくは、捕獲材料は、一又は複数の遷移金属(すなわち、ジルコニアのような耐火性酸化物の一部でありうる遷移金属を除くもの)を含まない。そのような状況では、≦50m/gの平均比表面積を有する耐火性酸化物の粒子は、捕獲材料として主に又は単独で使用されうる。
【0156】
PAMを含まない実施態様では、耐火性酸化物は好ましくはセリア、セリア-アルミナ又はセリア-ジルコニアである。より好ましくは、耐火性酸化物はセリアを含むか、又は本質的にそれからなる。さらにより好ましくは、耐火性酸化物は本質的にセリアからなる。
【0157】
追加的に又は代替的に、捕獲材料は、Pt合金材料、例えばパラジウム(Pd)の粒子を含みうるか、又は本質的にそれらかからなりうる。Pt合金材料が捕獲材料に含まれる本発明の実施態様は、本明細書中では「PAM含有実施態様」と表す。
【0158】
捕獲材料中へのPt合金材料(PAM)の包含は、それが揮発性Ptを用いて合金を容易に形成することができるため、有利であることが分かった。捕獲材料中のPtとPt合金材料との間の合金(例えばPt-Pd合金)の形成は、合金の安定性のため、揮発性Ptを効果的に捕捉する。
【0159】
典型的には、Pt合金材料は、金属及び/又はその酸化物を含むか、又は本質的にそれからなる。金属は、好ましくは、パラジウム(Pd);金(Au);銅(Cu);PdとAuの混合物;PdとCuの混合物;AuとCuの混合物;Pd、AuとCuの混合物;PdとAuの二元金属合金;PdとCuの二元金属合金;AuとCuの二元金属合金;及びPd、AuとCuの三元金属合金からなる群より選択される。金属は、パラジウム(Pd)、PdとAuの混合物、及びPdとAuの二元金属合金からなる群より選択されることが好ましい。より好ましくは、金属はパラジウム(Pd)である。
【0160】
疑義を避けるために、Pt合金材料は白金を含まない(例えば、新規又は未使用時)。
【0161】
Pt合金材料の粒子は、約10nm以上の平均粒子サイズ、例えば約10nm超の平均粒子サイズを有することが好ましい。より好ましくは、Pt合金材料の粒子は、約15nm以上、例えば約20nm以上、より好ましくは約50nm以上、例えば約75nm以上の平均粒子サイズを有する。
【0162】
一般的に、Pt合金材料として機能しうる金属は、その触媒活性のために酸化触媒中に含まれる。従来の排出制御装置におけるそのような金属(例えばパラジウム)の平均粒子サイズは、10nmよりはるかに小さい。本発明による捕獲材料における使用のためのPt合金材料の粒子は、比較的大きい。Pt合金材料のそのような大きな粒子は、比較的触媒的に不活性であるが、揮発性Ptを捕捉又は捕獲できることが驚くべきことに判明した。
【0163】
典型的には、Pt合金材料は、10nmから1000ミクロンの平均粒子サイズを有する。Pt合金材料は、15nmから100ミクロンの平均粒子サイズを有することが好ましく、より好ましくは20nmから20ミクロン、特に50nmから5ミクロン、例えば75nmから3ミクロンの平均粒子サイズを有することが好ましい。
【0164】
Pt合金材料の粒子は、典型的には、≦約10%(例えば<約10%)、好ましくは≦約7.5%、例えば≦約5%、より好ましくは≦約2.5%の分散を有する。分散の測定は、未使用のPt合金材料粒子(すなわち、繰り返し又は延長して使用されなかったフレッシュな粒子)を指す。
【0165】
Pt合金材料に関して本明細書中で使用される「平均粒子サイズ」及び「分散」は、従来の方法を使用して、又は国際公開第2016/128720号に記載されるように、決定することができる。
【0166】
一般的に、捕獲材料は、1g ft-3から50g ft-3、好ましくは4g ft-3から40g ft-3、さらにより好ましくは8g ft-3から30g ft-3のPt合金材料の総ローディング(例えばPt合金材料の金属含有量)を有する。
【0167】
Pt合金材料、例えばパラジウムは、基材上に配置又は担持されうる(例えばPt合金材料は、基材上に直接コーティングされる)。
【0168】
Pt合金材料は担体材料(例えば微粒子状担体材料)上に配置又は担持されることが好ましい。Pt合金材料は、担体材料上に直接配置されうる、又は担体材料に直接担持されうる(例えば、Pt合金材料と担体材料の間に介在する担体材料は存在しない)。例えば、Pt合金材料、例えばパラジウムは、担体材料の表面上に分散させる、且つ/又は担体材料中に含浸させることができる。
【0169】
一般的に、担体材料は、耐火性酸化物、例えば上に規定される耐火性酸化物を含むか、又は本質的にそれからなる。耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、セリア、シリカ-アルミナ、セリア-アルミナ、セリア-ジルコニア及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群より選択されることが好ましい。より好ましくは、耐火性酸化物は、アルミナ、セリア、シリカ-アルミナ及びセリア-ジルコニアからなる群より選択される。さらに一層好ましくは、耐火性金属酸化物は、アルミナ又はシリカ-アルミナ、特にシリカ-アルミナから選択される。
【0170】
耐火性酸化物は、比較的低い平均比表面積を有し、比較的大きな粒子を有する上記のタイプのものでありうる。
【0171】
本発明は、(Pt)を含む触媒材料に関して、捕獲材料の様々な構成を含む。
【0172】
第1の構成は、揮発性白金(Pt)を捕獲するための固体発泡体層を含む排出制御装置に関し、排出制御装置は、白金(Pt)を含む触媒材料をさらに含みうる。典型的には、固体発泡体層は、排気ガスが白金(Pt)を含む触媒材料と接触又はそれを通過した後で、排気ガスと接触するように配置される。
【0173】
第2の構成は、第2の排出制御装置の上流、好ましくは直接上流の第1の排出制御装置を含む排気システムに関する(すなわち、第1の排出制御装置の出口は、第2の排出制御装置の入口に接続、好ましくは直接接続している)。第1の排出制御装置は、基材上に配置又は担持される触媒材料を含む。第2の排出制御装置は、基材上に配置又は担持される揮発性白金(Pt)を捕獲するための固体発泡体層を含む。
【0174】
疑義を避けるために、捕獲材料と触媒材料とは異なる組成を有する。
【0175】
一般に、触媒材料は、担体材料(本明細書中では触媒材料の担体材料又は「CM担体材料」と表す)上に配置又は担持された白金(Pt)を含む。CM担体材料は、耐火性酸化物(本明細書中では触媒材料の耐火性酸化物と表される)を含むか、又は本質的にそれからなる。耐火性酸化物の粒子は、典型的には、≧75m/g、例えば≧100m/g、好ましくは≧100m/gの平均比表面積を有する。
【0176】
CM担体材料の耐火性酸化物は、典型的には、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア及びこれらの混合又は複合酸化物、例えばこれらの2つ以上の混合又は複合酸化物など、から成る群より選択される。例えば、耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ-アルミナ、チタニア-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、セリア-アルミナ、チタニア-シリカ、ジルコニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、セリア-ジルコニア及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群より選択されうる。
【0177】
触媒材料は、単一の白金族金属(PGM)、白金を含みうる(例えば、触媒材料は、唯一の白金族金属として白金を含む)。
【0178】
あるいは、触媒材料は、(i)白金(Pt)、及び(ii)パラジウム(Pd)及び/又はロジウム(Rh)を含みうる。
【0179】
触媒材料がパラジウム(Pd)を含むとき、触媒材料は、典型的には、<10nm、好ましくは≦8nmの平均粒子サイズを有するパラジウム(Pd)の粒子を含む。
【0180】
触媒材料がパラジウム(Pd)を含むとき、触媒材料は、典型的には、>10%、好ましくは≧15%(例えば15から35%)、例えば≧20%(例えば20から30%)の分散を有するパラジウム(Pd)の粒子を含む。
【0181】
一般に、触媒領域又はその触媒材料がPt及びPd(及び任意選択的にRh)を含むとき、典型的には、Pt対Pdの質量比は≧1:1である。触媒材料は、Pt対Pdの質量比が1:0から1:1であるように、Pt及び任意選択的にPdを含みうる。触媒材料がPt及びPd(及び任意選択的にRh)を含むとき、Pt対Pdの質量比は≧1.5:1、より好ましくは≧2:1(例えば≧3:1)、さらにより好ましくは≧4:1、例えば≧10:1である。Pt対Pdの質量比は、好ましくは、50:1から1:1、より好ましくは30:1から2:1(例えば25:1から4:1)、さらにより好ましくは20:1から5:1、例えば15:1から7.5:1である。
【0182】
一般的に、触媒材料がPt及びRh(及び任意選択的にPd)を含むとき、典型的にはPt対Rhの質量比は≧1:1である。触媒材料は、Pt対Rhの質量比が1:0から1:1であるように、Pt及び任意選択的にRhを含みうる。触媒材料がPt及びRh(及び任意選択的にPd)を含むとき、Pt対Rhの質量比は≧1.5:1、より好ましくは≧2:1(例えば≧3:1)、さらにより好ましくは≧4:1、例えば≧10:1である。Pt対Rhの質量比は、好ましくは、50:1から1:1、より好ましくは30:1から2:1(例えば25:1から4:1)、さらにより好ましくは20:1から5:1、例えば15:1から7.5:1である。
【0183】
第1の構成では、揮発性白金(Pt)を捕獲するための固体発泡体層は、捕獲材料を含みうるか、又は本質的にそれからなりうる。
(a)触媒材料上に配置又は担持されうる;及び/又は
(b)基材上に直接配置されうる[すなわち捕獲材料は基材の表面と接触する];及び/又は
(c)触媒材料と接触しうる[すなわち捕獲材料は触媒材料に隣接又は当接する]。
【0184】
揮発性白金(Pt)を捕獲するための固体発泡体層は、排気ガスが触媒材料と接触及び/又はそれを通過した後で、排気ガスと接触するように配置される。
【0185】
一般的に、固体発泡体層領域は、それが排出制御装置を出るように排気ガスと接触するよう構成される。触媒材料は、固体発泡体層の前に、排気ガスと接触するよう構成又は配向されうる。
【0186】
固体発泡体層は、基材の出口端又はその近くに配置又は担持されることが好ましい。
【0187】
触媒材料は、固体発泡体層の上流に配置又は担持されうる。追加的に又は代替的に、固体発泡体層は触媒材料と重なりうる。固体発泡体層の端部又は一部は触媒材料上に配置又は担持されうる。固体発泡体層は触媒材料と完全に又は部分的に重なりうる。
【0188】
一般に、固体発泡体層のローディングは、0.1~4.0g.in-3、好ましくは0.5~2.0g.in-3である。
【0189】
第3の排出制御装置の実施態様では、排出制御装置は、スート(及び任意選択的に一酸化炭素及び炭化水素)を酸化するための基材及び固体発泡体層を含む。排出制御装置は触媒化スートフィルター(CSF)である。
【0190】
固体発泡体層は、好ましくは連続気泡構造を有する。
【0191】
基材は、好ましくは、フィルタリング基材、例えばウォールフローハニカムモノリス基材(例えばパティキュレートフィルター)である。
【0192】
スートを酸化するための固体発泡体層は、フィルタリング基材の入口チャネル及び/又は出口チャネル上に配置又は担持されうる。固体発泡体層はフィルタリング基材の少なくとも入口チャネル上に配置又は担持されることが好ましい。
【0193】
スートを酸化するための固体発泡体層は、上記のような触媒材料を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0194】
典型的には、スートを酸化するための触媒材料は、担体材料上に配置される白金族金属を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0195】
白金族金属は、好ましくは白金及び/又はパラジウムである。
【0196】
担体材料は、耐火性酸化物を含むか又は本質的にそれからなる。耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア及びこれらの混合又は複合酸化物、例えばこれらの2つ以上の混合又は複合酸化物など、から成る群より選択されうる。例えば、耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ-アルミナ、チタニア-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、セリア-アルミナ、チタニア-シリカ、ジルコニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、セリア-ジルコニア及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群より選択されうる。
【0197】
耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、セリア、シリカ-アルミナ、セリア-アルミナ、セリア-ジルコニア及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群より選択されることが好ましい。より好ましくは、耐火性酸化物は、アルミナ、セリア、シリカ-アルミナ及びセリア-ジルコニアからなる群より選択される。耐火性酸化物はアルミナ又はシリカ-アルミナでありうる。
【0198】
第4の排出制御装置の実施態様では、排出制御装置は、微粒子を酸化するため(並びに任意選択的に(i)一酸化炭素及び炭化水素を酸化するため、及び(ii)窒素酸化物(NO)を還元するため)の、基材及び固体発泡体層を含む。排出制御装置はガソリンパティキュレートフィルター(GPF)である。
【0199】
固体発泡体層は、好ましくは連続気泡構造を有する。
【0200】
基材は、典型的には、フィルタリング基材、例えばウォールフローハニカムモノリス基材(例えばパティキュレートフィルター)である。基材は、コーディエライトフロースルーモノリス、金属フロースルーモノリス、コーディエライトパティキュレートフィルター、炭化ケイ素パティキュレートフィルター又はチタン酸アルミニウムパティキュレートフィルターでありうる。
【0201】
基材がウォールフローハニカムモノリス基材、例えばパティキュレートフィルターであるとき、典型的には、基材は、40から70%、好ましくは45から65%、例えば50から65%(例えば55から65%)の多孔度を有する。追加的に又は代替的に、基材は、8から45μm、好ましくは10から30μm(例えば10から25μm)、特に15から25μmの平均細孔サイズを有しうる。平均細孔サイズは水銀ポロシメトリーによって決定されうる。
【0202】
第4の排出制御装置の実施態様では、固体発泡体層は、フィルタリング基材の入口チャネル及び/又は出口チャネル上に配置又は担持されうる。固体発泡体層はフィルタリング基材の少なくとも入口チャネル上に配置又は担持されることが好ましい。
【0203】
スートを酸化するための固体発泡体層は、上記のような触媒材料を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0204】
典型的には、触媒材料は、白金族金属、担体材料及び酸素貯蔵成分を含むか、又は本質的にこれらからなる。
【0205】
白金族金属は、好ましくはロジウム及び/又はパラジウムである。
【0206】
担体材料は、耐火性酸化物を含むか又は本質的にそれからなる。耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア及びこれらの混合又は複合酸化物、例えばこれらの2つ以上の混合又は複合酸化物など、から成る群より選択されうる。例えば、耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ-アルミナ、チタニア-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、セリア-アルミナ、チタニア-シリカ、ジルコニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、セリア-ジルコニア及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群より選択されうる。
【0207】
耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、セリア、シリカ-アルミナ、セリア-アルミナ、セリア-ジルコニア及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群より選択されることが好ましい。より好ましくは、耐火性酸化物は、アルミナ、セリア、シリカ-アルミナ及びセリア-ジルコニアからなる群より選択される。耐火性酸化物はアルミナ又はシリカ-アルミナであり、より好ましくは、耐火性酸化物はアルミナである。
【0208】
酸素貯蔵成分は、典型的にはセリアを含むか、又は本質的にそれからなる。
【0209】
内燃エンジンは、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジンであってもよい。内燃機関は、特に本発明の第1、第2及び第3の排出制御装置の実施態様のためのディーゼルエンジンであることが好ましい。本発明の第4の排出制御装置の態様に関しては、内燃機関はガソリンエンジンであることが好ましい。
【0210】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が相反することを明記しないかぎり、複数の言及を含む。したがって、例えば、「微粒子状材料」への言及は、二以上の微粒子状材料の混合物等を含む。
【0211】
本明細書で用いられる「混合酸化物」という用語は通常、当該技術分野で従来から知られているような、単一相の酸化物の混合物を指す。本明細書で用いられる「複合酸化物」という用語は通常、当該技術分野で従来から知られているような、二相以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0212】
数値範囲の終点に関して本明細書で使用される「約」という表現は、特定した数値範囲の正確な終点を含む。したがって、例えば、「約0.2」までのパラメーターを定義する表現は、0.2までで0.2を含めたパラメーターを含む。
【0213】
基材を保持することに関して本明細書で使用する、「実質的に垂直に」という用語は、基材の中心軸が垂直から±5°、好ましくは垂直から±3°、例えば垂直から±0°(即ち、測定誤差内で完全に垂直)である配置を指す。
【0214】
本明細書で使用する「真空」に関する語は、大気圧未満の圧力を表す。「真空」は、物質が全く存在しない空間という文字通りの意味で解釈されるべきでない。基材に適用される真空の強度は、使用される液体の組成及び基材のタイプに依存する。真空は、閉塞が起こらないように、基材のセルを浄化するのに十分な強度を有する必要がある。そのような真空強度又は減圧は、当技術分野ではよく知られている。
【0215】
本明細書で用いられる「本質的になる」という表現は、特定した材料及び、発明の特徴の基本的特性に実質的に影響を及ぼさない任意の他の材料又は工程(例えば少量の不純物など)を含むように発明特徴の範囲を限定する。表現「本質的に~からなる」は、表現「~からなる」を包含する。
【実施例
【0216】
ここで、本発明を、非限定的な下記の実施例で示す。
【0217】
一般的な手順及び方法
確立されたコーティング法は、国際公開第99/47260号、同第2011/080525号及び同第2014/19568号の開示及び教示によるものである。
【0218】
実施例1
適切な量の粉末と水を混合することによってガンマ-アルミナ懸濁液を調製pHをHNOを用いて5.5に調整し、懸濁液を均質になるまで撹拌した。懸濁液を粉砕し、d50を<6ミクロンにした。
【0219】
この懸濁液の一部に、吉草酸(アルミナの質量の1.6%)を添加し、NHを用いてpHを4.8に調整した。泡立て器を備えたKenwood Chef ClassicTMフードミキサーを使用して懸濁液に空気を導入し、最大速度で10分間撹拌して出発懸濁液の5.9倍の容積を有する発泡体を生成した。
【0220】
発泡体を3日間(その間液体排出はない)エイジングし、気泡構造の乾燥及び粗大化を観察した。
【0221】
実施例2
ベーマイト粉末(Sasolにより供給されるアルミナ)を脱塩水に添加した。この懸濁液を3時間撹拌した。CHA構造を有し、SARが25であるCu交換小細孔ゼオライト(3.0重量%Cu)をゆっくりと添加した(ゼオライト:ベーマイト比9:1)。この懸濁液の総固体含有量は31重量%であった。
【0222】
この懸濁液の一部に、吉草酸(表1に記載される様々な量)を添加し、NHを用いてpHを4.8に調整した。泡立て器を備えたKenwood Chef ClassicTMフードミキサーを使用して懸濁液の各部分に空気を導入し、最大速度で10分間撹拌して発泡体を生成した。
【0223】
図1aは、試料Iのフレッシュな発泡体の光学顕微鏡評価を示す(倍率5倍及びスケールバー0.20mm)。図1bは、試料Iのフレッシュな発泡体の光学顕微鏡評価を示す(倍率5倍及びスケールバー0.25mm)。
【0224】
実施例3-SCR発泡体コーティング試験
実施例2のものと同様の組成の懸濁液を希釈し、その後均質になるまで撹拌して、懸濁液を調製した。
【0225】
この懸濁液の一部に、吉草酸(固体成分の質量の2.1%)を添加し、水酸化テトラ-n-プロピル-アンモニウムを用いてpHを4.8に調整した。泡立て器を備えたKenwood Chef ClassicTMフードミキサーを使用して懸濁液に空気を導入し、最大速度で10分間撹拌して発泡体を生成した。
【0226】
入口端から適用された真空を使用して、コーディエライトフロースルー基材から採取された1インチのコアの出口端に発泡体を導入した。コアを乾燥させ、その後500℃で2時間焼成した。
【0227】
図2に示すように、コーティングされたコアの走査電子顕微鏡は、固体発泡体コーティングがセル壁上に均一層を形成することを示した。開放気泡は固体発泡体層の表面で目に見える。画像は以下の条件で撮影した:2a)加速電圧20kV、倍率42倍、作動距離18mm、二次電子検出器、スケールバー0.20mm、2b)加速電圧20kV、倍率28倍、作動距離13mm、二次電子検出器、スケールバー0.20mm。
【0228】
実施例4-SCRF発泡体コーティング試験
実施例2及び3のような三つの懸濁液をそれぞれ調製した。これらの各吉草酸(表2に記載の量)を添加し、水酸化テトラ-n-プロピル-アンモニウム(TPAOH)でpHを4.75の目標に調整した。泡立て器を備えたKenwood Chef ClassicTMフードミキサーを使用して懸濁液に空気を導入し、最大速度で10分間撹拌して発泡体を生成した。
【0229】
実施例4a
国際公開第2011/080525号に記載の方法を使用して、1平方インチ当たり300セルを有するSiCフィルター基材の出口チャネルに196.6gの懸濁液4aを適用した。強制空気流を使用して発泡体コーティングを乾燥させ、500℃で焼成した。コーティングされた基材を縦方向に切断して、コーティング深さを調べ、SEMを使用してコーティングを調べた。
【0230】
図3は、縦方向に切断後の、基材の一セグメント上の懸濁液4aのコーティングを示す。
【0231】
発泡体コーティングの深さは、出口側から測定されたとき、38mmであった。触媒は、コーティングされた部分で1.2g.in-3のコーティングローディングを有した。チャネルへのコーティングの分布は均質であるように見える。コーティング表面は非常に粗い。気泡様特徴は、50μmから200μmの範囲のサイズ分布を有し、気泡壁中の亀裂又は穴のいずれかによってしばしば相互接続されるように見える。図4は、コーティングされたフィルターの画像を示しており、4aはコーティング表面、図4bは断面図を示す。画像は以下の条件で撮影した:4a)加速電圧20kV、倍率45倍、作動距離14mm、二次電子検出器、スケールバー0.10mm、4b)加速電圧20kV、倍率200倍、作動距離13mm、二次電子検出器、スケールバー0.10mm。
【0232】
横断面は、コーティングが緻密で薄い壁上の層を形成し、その上により粗い開放構造が形成されることを示す。コーティングは基材細孔に浸透しない。入口チャネルと出口チャネルの壁内細孔との両方がコーティングされていない。緻密な壁上の層の厚さは可変であり、その上に形成された開放多孔質構造の程度も試料によって変化する。緻密層は、1~5μmの範囲の粒子間多孔度を示す。
【0233】
実施例4b
国際公開第2011/080525号に記載の方法を使用して、1平方インチ当たり300セルを有するSiCフィルター基材の出口チャネルに二部の懸濁液4aを適用した。第1の適用は223.3gの発泡体、第2の適用は143.0gの発泡体であった。各適用後に強制空気流を使用して発泡体コーティングを乾燥させ、500℃で焼成した。SEMを使用してコーティングを調べた。
【0234】
図5は、コーティングされたフィルターの画像を示し、5bはコーティング表面、5a及び5cは断面図を示す。画像は以下の条件で撮影した:5a)加速電圧20kV、倍率88倍、作動距離16mm、二次電子検出器、スケールバー0.20mm、5b)加速電圧20kV、倍率81倍、作動距離18mm、二次電子検出器、スケールバー0.10mm、5c)加速電圧20kV、倍率150倍、作動距離13mm、二次電子検出器、スケールバー0.10mm。
【0235】
コーティングは、基材壁上に厚い均質層を形成している。角の隣の厚さは約350μmであり、壁に沿った厚さは約150μmである。コーティングは、非常に粗い表面を形成し、気泡壁中亀裂又は穴によって相互接続された開放気孔を有する。気泡壁を形成する粒子間にはるかに小さな細孔がみられる。
【0236】
実施例4c
国際公開第2011/080525号に記載の方法を使用して、1平方インチ当たり300セルを有するSiCフィルター基材の出口チャネルに三部の懸濁液4cを適用した。第1の適用は191.1gの発泡体、第2の適用は170.8gの発泡体、第3の適用は193.6gの発泡体であった。各適用後に強制空気流を使用して発泡体コーティングを乾燥させ、500℃で焼成した。SEMを使用してコーティングを調べた。
【0237】
図6は、コーティングされたフィルターの画像を示しており、6aはコーティング表面、図6bは断面図を示す。画像は以下の条件で撮影した:6a)加速電圧20kV、倍率90倍、作動距離14mm、二次電子検出器、スケールバー0.10mm、5b)加速電圧20kV、倍率80倍、作動距離12mm、二次電子検出器、スケールバー0.10mm。
【0238】
コーティングは均質に見える;コーティング表面は非常に粗い。気泡様特徴は、50μmから250μmの範囲の広いサイズ分布を有し、気泡壁中の亀裂又は穴のいずれかによってしばしば相互接続されるように見える。角の周りの層の全体的な厚さは300μmであり、チャネル上はおよそ160μmである。
【0239】
横断面は、コーティングが緻密な壁上の層を形成し、その上により粗い開放構造が形成されることを示す。底部緻密層の平均厚さは、領域中の気泡の存在及び数に応じて、チャネルに沿って20から150μmで非常に変化する。
【0240】
実施例5-短いコーティング深さの試験
実施例5a-フィルターASCストライプ
発泡体コーティング層の適用前に、フィルターのための従来のSCRウォッシュコート層でフィルターをコーティングした。
【0241】
ガンマ-アルミナ粉末を水に添加することにより懸濁液を調製し、4.5ミクロン未満のd50に粉砕した。Ptの可溶性塩及び0.5%のヒドロキシエチルセルロースを添加した。懸濁液を均質化するよう撹拌した。
【0242】
この懸濁液の一部に、プロピル-ガレート(固体成分の質量の2.2%)を添加し、均質になるまで撹拌した。泡立て器を備えたKenwood Chef ClassicTMフードミキサーを使用して懸濁液に空気を導入し、最大速度で10分間撹拌して発泡体を生成した。
【0243】
国際公開第2011/080525号に記載の方法を使用して、1平方インチ当たり300セルを有するSiCフィルター基材の出口チャネルに発泡体を適用した。強制空気流を使用して発泡体コーティングを乾燥させ、500℃で焼成した。発泡体コーティングの深さは、出口側から測定されたとき、5mmであった。得られる触媒は、コーティングされた部分の固体発泡体の14g.ft-3のPtローディング及び0.4g.in-3のコーティングローディングを有した。
【0244】
触媒を二の垂直平面で縦方向に切断した。図7に示すように、光学顕微鏡を用いて固体発泡体層の表面を見ると、固体発泡体は5から140μmの間の気泡を有する連続気泡構造を有すると判定することができた。
【0245】
固体発泡体層のコーティング深さを、2つの切断面を横切って等間隔に配置された10の位置で測定した。測定されたコーティング深さは平均4.8mmで標準偏差は0.4mmであった。
【0246】
実施例5b-フロースルーASCストライプ
ガンマ-アルミナ粉末(SCFa-140、Sasolより供給)を水に添加することにより懸濁液を調製し、4.5ミクロンのd50に粉砕した。Ptの可溶性塩及び0.5%のヒドロキシエチルセルロースを添加した。懸濁液を均質化するよう撹拌した。
【0247】
この懸濁液の一部に、吉草酸(固体含有量の質量の1.65%)を添加し、NHを用いてpHを4.8に調整した。泡立て器を備えたKenwood Chef ClassicTMフードミキサーを使用して懸濁液に空気を導入し、最大速度で10分間撹拌して発泡体を生成した。
【0248】
国際公開第2011/080525号に記載の方法を使用して、1平方インチ当たり300セルを有するコーディエライトフロースルー基材の出口チャネルに発泡体を適用した。強制空気流を使用して発泡体コーティングを乾燥させ、500℃で焼成した。発泡体コーティングの深さは、出口側から測定されたとき、16.1mmであった。得られる触媒は、コーティングされた部分で60g.ft-3のPtローディング及び1.4g.in-3のコーティングローディングを有した。
【0249】
触媒を二の垂直平面で縦方向に切断した。図8に示すように、光学顕微鏡を用いて固体発泡体層の表面を見ると、固体発泡体は20から250μmの間の気泡を有する連続気泡構造を有すると判定することができた。
【0250】
固体発泡体層のコーティング深さを、2つの切断面を横切って等間隔に配置された10の位置で測定した。測定されたコーティング深さは平均15.7mmで標準偏差は0.7mmであった。
【0251】
以下の表3で示すように、多種多様の用量がフロースルー基材に適用されて異なる短いコーティング深さが達成された。
【0252】
実施例6:DOCコーティング(非発泡)
シリカ-アルミナ粉末を水中でスラリー化し、d90<20ミクロンに粉砕する。酢酸バリウムをスラリーに加え、その後、適量の可溶性の白金とパラジウムの塩を加えた。スラリーが質量で77%のシリカ-アルミナ及び23%のゼオライトを含有するように、ベータゼオライトを加えた。スラリーを撹拌して均質化した。国際公開第99/47260号に記載のような確立されたコーティング技術を用いて、得られたウォッシュコートをフロースルーモノリスの入口チャネルに塗布した。その後、これを乾燥させ、500℃で焼成した。
【0253】
水中シリカ-アルミナ粉末の第2のスラリーを、d90<20ミクロンまで破砕した。可溶性白金塩を添加し、その後硝酸マンガンを添加した。混合物を均質化するよう撹拌した。国際公開第99/47260号に記載のような確立されたコーティング技術を用いて、スラリーをコーディエライトフロースルーモノリスの出口端に塗布した。その後、これを乾燥させ、500℃で焼成した。その部分のマンガンローディングは50g ft-3であった。完成触媒は112.5g ft-3のPtローディングと37.5g ft-3のPdローディングとを有した。
【0254】
実施例7:Pt揮発性捕獲領域(発泡)
1.2重量%のPdを含む比表面積(SSA)m/gのアルファアルミナ上の予め形成されたPdを水中でスラリー化し、d90<20ミクロンに粉砕した。活性化ベーマイトスラリーを結合剤として(全固体含有量の10%として)添加し、懸濁液が25%の総固体含有量を有するまで水を加えた。0.6重量%のセルロール系増粘剤を懸濁液に添加した。続いて、水性アンモニア及び吉草酸(0.2%)を添加して、この懸濁液のpHを4.7に調整した。気体誘導羽根車を用いて15分間空気を懸濁液中に導入し、安定な泡を生成させた。
【0255】
その後、国際公開第2011/080525号に記載のような確立されたコーティング技術を使用して、丸い、直径143.8mm、長さ97mmのフロースルーモノリスの出口面に発泡体を投与し、8mmのコーティング深さが得られた。その部分を乾燥させ、500℃で焼成した。図12は、発泡Pt揮発性コーティングを有する実施例6のDOCコーティングを含む、実施例7のコーティングされたモノリスのX線画像を示す。この図では、出口は画像の頂部にあり、短い(6~10mm)発泡コーティングが出口上に直接暗帯として見える。
【0256】
いくつかの実施態様では、同様の技術を適用することにより、コーティング深さは6~10mmである。
【0257】
Pt揮発性煙炉
試験は、コーティングされたCu/CHAゼオライトSCR触媒のエイジングしたコアを実施例6又は7のいずれかのコアの下流の導管に配置した図9に図示する第1の合成触媒活性試験(SCAT)実験反応器で実施した。合成ガス混合物を6リットル/分の速度で導管に通した。炉を用いて、触媒出口温度900℃で2時間にわたり、定常状態の温度でDOC試料を加熱(又は「エイジング」)した。SCR触媒はDOC試料の下流に配置し、炉出口とSCR入口との間の管の長さを調節することによって、エージングプロセス中に300℃の触媒温度に保持したが、水冷式熱交換器ジャケットを必要に応じて使用することができた。温度は、適切に配置された熱電対(T及びT)を用いて決定した。エイジング中に使用したガス混合物は、40%の空気、50%のN、10%のHOであった。
【0258】
パフォーマンス結果-SCR NO試験
合成ガスベンチ反応器を使用して、NOx変換活性に関してSCRコアを試験した。試験は、合成気体混合物(最大利用可能NO変換が65%であるように、O=10%;HO=5%;CO=7.5%;NH=325ppm;NO=500ppm;NO=0ppm;N=残り、すなわち0.65のアルファ値を使用(NH:NOの比))を使用して、500℃で行った。また、得られたNO変換を図11に示す。
【0259】
疑義を避けるために、本明細書で引用したすべての文献の全内容は、参照により本願に援用される。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12