(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】リストバンドを腕時計ケースに固定する装置
(51)【国際特許分類】
G04B 37/16 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
G04B37/16 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019079893
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2022-04-01
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラン, ファビエン
(72)【発明者】
【氏名】クレスマン, フラヴィエン
(72)【発明者】
【氏名】ロビン, ジャン―バプティスト
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-110391(JP,U)
【文献】実開昭63-167291(JP,U)
【文献】特開2006-296544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0180000(US,A1)
【文献】実開昭55-093312(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 37/16
A44C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計ケースに取り外し可能に固定されるよう意図された端部を有するリストバンド(10)のストランドであって、
前記ストランドは前記端部に配置される突起(16)を有し、前記突起(16)は腕時計ケースの溝に収容されることが意図され、前記ストランドは前記リストバンド(10)のストランドに配置される前記突起(16)の厚さ方向に伸びた孔である少なくとも一つの垂直開口部(17)を有し、
または、前記ストランドは前記端部に配置される溝を有し、前記溝は腕時計ケースの突起を収容することが意図され、前記ストランドは前記リストバンド(10)のストランドの前記溝を形成する壁の厚さ方向に伸びた孔である少なくとも一つの垂直開口部(17)を有し、
前記ストランドは前記少なくとも一つの垂直開口部(17)が開口した面に、少なくとも一部面するよう位置された弾性要素(30)を有し、
前記垂直開口部は、前記弾性要素(30)と、前記少なくとも一つの垂直開口部の長さの少なくとも一部とを、ピン(20)が通過することを受け入れることを可能とし、
前記弾性要素(30)は軸A30のまわりに配置される貫通開口を有し、前記弾性要素(30)の軸A30は前記垂直開口部(17)の軸A17からオフセットされる、
リストバンド(10)のストランド。
【請求項2】
前記少なくとも一つの垂直開口部(17)は前記リストバンドのストランドの前記突起または前記溝の面の一つに開口し、およびまたは前記少なくとも一つの垂直開口部はリストバンドのストランドに配置される前記突起または前記溝を形成する壁の厚さ方向を貫通する、
請求項1に記載のリストバンドのストランド。
【請求項3】
前記弾性要素(30)はリストバンドの前記ストランドの下面または上面に配置されるハウジング(18)に
取り外し可能に収容され、リストバンドの前記ストランドの前記下面または上面に平行な面に実質的に延びる、
請求項1または2に記載のリストバンドのストランド。
【請求項4】
前記弾性要素(30)は、ピンを使用して腕時計ケースにリストバンドの前記ストランドを保持することを可能とする要素であり、前記弾性要素は、止め輪、U字またはT字断面を有するポリマーシール、Oリング、四つの丸い突出部を有する輪またはバネ座金から選択される、
請求項3に記載のリストバンドのストランド。
【請求項5】
前記弾性要素(30)の軸A30は前記垂直開口部(17)の軸A17から0.02から0.5mmの範囲でオフセットされる、
請求項4に記載のリストバンドのストランド。
【請求項6】
前記ストランドは、弾性リストバンドによる構成か、または関節式連結リンクによる構成である、
請求項1から5のいずれか
一項に記載のリストバンドのストランド。
【請求項7】
請求項1から6
のいずれか一項に記載のリストバンドのストランドを腕時計ケースに取り外し可能に固定する固定装置であって、
前記腕時計ケースの周りに備える少なくとも一つの溝であって、前記溝の上面(5)および前記溝の下面(4)の間で前記溝の高さが規定され、前記少なくとも一つの溝はリストバンドの前記ストランドの前記端部に配置された突起(16)を受け入れ可能な、溝と、
前記ストランドが固定されたとき、少なくとも一つの開口(7)が前記リストバンド(10)の前記ストランドの少なくとも一つの垂直開口部(17)と実質的に整列されるよう、前記腕時計ケースの少なくとも一つの溝の前記下面(4)または上面(5)を構成する壁のうちの一つを垂直に貫通する少なくとも一つの腕時計ケースの開口(7)と、
前記各開口(7、17)に対応する前記腕時計ケース内またはリストバンドの前記ストランド内に配置された、前記弾性要素(30)を通過して収容可能な少なくとも一つのピン(20)であって、前記腕時計ケースのリストバンドの前記ストランドの保持を保証するため、リストバンドの前記ストランドの前記少なくとも一つの垂直開口部(17)および前記少なくとも一つの腕時計ケースの開口(7)を貫通する、ピン
を有する固定装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つのピン(20)の軸方向の長さL20は前記リストバンド(10)のストランドの前記少なくとも一つの垂直開口部(17)の軸方向の長さL10と同じかそれ以下である、請求項7に記載の固定装置。
【請求項9】
リストバンドのストランドを腕時計ケースに取り外し可能に固定する固定装置であって、
前記ストランドの端部に配置される前記腕時計ケースの溝に収容されることが意図される突起(16)と、
前記ストランドに配置される前記突起(16)の厚さ方向に伸びた孔である少なくとも一つの垂直開口部(17)と、
前記少なくとも一つの垂直開口部(17)が開口した面に、少なくとも一部面するよう位置された弾性要素(30)と、
前記弾性要素(30)と、前記少なくとも一つの垂直開口部の長さの少なくとも一部とを、通過することを受け入れることを可能とする少なくとも一つのピン(20)と
を有し、
前記少なくとも一つのピン(20)の軸方向の長さL20は前記リストバンド(10)のストランドの前記少なくとも一つの垂直開口部(17)の軸方向の長さL10と同じか
それ以下である、固定装置。
【請求項10】
リストバンドのストランドを腕時計ケースに取り外し可能に固定する固定装置であって、
前記ストランドの端部に配置され前記腕時計ケースの突起を収容することが意図される溝と、
前記ストランドの前記溝を形成する壁の厚さ方向に伸びた孔である少なくとも一つの垂直開口部(17)と、
前記少なくとも一つの垂直開口部(17)が開口した面に、少なくとも一部面するよう位置された弾性要素(30)と、
前記弾性要素(30)と、前記少なくとも一つの垂直開口部の長さの少なくとも一部とを、通過することを受け入れることを可能とする少なくとも一つのピン(20)と
を有し、
前記少なくとも一つのピン(20)の軸方向の長さL20は前記リストバンド(10)のストランドの前記少なくとも一つの垂直開口部(17)の軸方向の長さL10と同じかそれ以下である、固定装置。
【請求項11】
前記少なくとも一つのピンは、前記弾性要素に収容されることを意図される当該ピンの他の部分よりも小さな直径を有する中間部分(22)を有する、
請求項7から10のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項12】
リストバンドの前記ストランドに配置された前記突起(16)
の前記腕時計ケースに形成された前記溝に受け入れられる部分の厚さは実質的に前記腕時計ケースに形成された前記溝の高さと等しい、
請求項7から
9のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項13】
前記腕時計ケースに形成された少なくとも一つの溝は、前記腕時計ケースに備える二つの突出部(3)の間においてケース胴(2)に配置される、
請求項7から12のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項14】
請求項1から6
のいずれか一項に記載のリストバンドのストランドを腕時計ケースに取り外し可能に固定する固定装置であって、
腕時計ケースの周りに備える少なくとも一つの突起であって、前記突起の上面(5)および前記突起の下面(4)の間で前記突起の厚さが規定され、前記少なくとも一つの突起はリストバンドの前記ストランドの前記端部に配置された溝に受け入れ可能な、突起と、
前記ストランドが固定されたとき、前記腕時計ケースの少なくとも一つの開口(7)が前記リストバンド(10)の前記ストランドの溝を規定する壁に配置される少なくとも一つの垂直開口部(17)と実質的に整列され、前記腕時計ケースの前記少なくとも一つの突起の厚さ方向に伸びた孔により貫通する少なくとも一つの腕時計ケースの開口(7)と、
前記各開口(7、17)に対応する前記腕時計ケース内またはリストバンドの前記ストランド内に配置された、前記弾性要素(30)を通じて収容可能な少なくとも一つのピン(20)であって、前記腕時計ケースのリストバンドの前記ストランドの保持を保証するため、リストバンドの前記ストランドの前記少なくとも一つの垂直開口部(17)および前記少なくとも一つの腕時計ケースの開口(7)の一部を貫通する、ピン
を有する固定装置。
【請求項15】
請求項1から6
のいずれか一項に記載のリストバンドのストランドを取り外し可能に固定することを意図する腕時計ケースであって、前記腕時計ケースは、
前記腕時計ケースの周りに備える少なくとも一つの溝であって、前記溝の上面(5)および前記溝の下面(4)の間で前記溝の高さが規定され、前記少なくとも一つの溝はリス
トバンドの前記ストランドの端部に配置された突起(16)を受け入れる、溝を有し、
前記少なくとも一つの腕時計ケースの開口(7)は、前記腕時計ケースの前記溝の前記上面または下面を構成する壁のうち一つを垂直に貫通し、リストバンドのストランドを固定するためのピン(20)を受け入れ可能であり、弾性要素(30)が前記少なくとも一つの開口(7)が開口した面に少なくとも一部面するよう配置される、
腕時計ケース。
【請求項16】
請求項1から6
のいずれか一項に記載のリストバンドのストランドを取り外し可能に固定することを意図する腕時計ケースであって、前記腕時計ケースは、
前記腕時計ケースの周りに配置された突起を有し、前記突起はリストバンドのストランドに形成された溝に収容されることを意図され、少なくとも一つの垂直開口部は前記突起の厚さ方向に伸びた孔であり、弾性要素が前記少なくとも一つの垂直開口部が開口した面に、少なくとも一部面するよう配置され、前記弾性要素が、前記腕時計ケースの開口の軸方向の長さの少なくとも一部およびリストバンドのストランドの少なくとも一つの垂直開口部を通る、ピンの挿入を受け入れ可能である、
腕時計ケース。
【請求項17】
請求項1から6
のいずれか一項に記載のストランドを一つまたは二つ有する、リストバンド。
【請求項18】
時計であって、腕時計ケースと、請求項7から14のいずれか一項に記載の固定装置によって前記腕時計ケースに取り外し可能に固定されたリストバンド(10)とを有する、
時計。
【請求項19】
時計であって、前記時計は請求項15または16に記載の腕時計ケースを有する、または前記時計は請求項17に記載のリストバンドを有する、
時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リストバンドのストランドを腕時計ケースに固定するための装置に関する。本発明はまた、リストバンドのストランド、および本発明に係る固定装置を使って腕時計ケースに固定するよう設計されたリストバンドに関する。さらに本発明は、本発明に係る固定装置を使ってリストバンドを固定するよう設計された腕時計ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
リストバンドを腕時計ケースに装着するための伝統的な手段は、ストランドの一端に形成された横断開口内に配置されたばね棒を使用するものであり、ストランドの二つの端部はそれぞれ、腕時計ケースの各突出部の内部面に形成されたハウジングと係合するような形状を有する。リストバンドがこのような伝統的な方法によって取り付け取り外しされる場合、ばね棒の各端部はリストバンドの突出部の間に取り付け可能なように一時的に引っ込められ、開放された後は各突出部に形成されたハウジングにそれぞれ挿入されるよう、設計される。そのような操作は著しい組立時間を必要とし、特別な手際を要する。このことにより腕時計、特に腕時計ケースの突起部下面の表面仕上げに傷をつける結果をもたらすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一般的な目的は、従来技術の有する欠点の全てまたは一部を解消した、リストバンドを腕時計ケースに固定する解決策を提供することにある。
【0004】
より詳細には、本発明の第一の目的は、リストバンドを腕時計ケースに固定する解決策であって、リストバンドの固定およびまたは取り外し作業を容易にする解決策を提供することにある。
【0005】
本発明の第二の目的は、リストバンドを腕時計ケースに固定する解決策であって、リストバンドを信頼性高くかつ遊びのない状態で保持することを可能とする解決策を提供することにある。
【0006】
本発明の第三の目的は、リストバンドを腕時計ケースに固定する解決策であって、リストバンドと腕時計ケースとの間の連結に満足のいく美しい外観を与えることのできる解決策を提供することにある。
【0007】
本発明の第四の目的は、リストバンドを腕時計ケースに固定する解決策であって、取り付けまたは取り外しを行う際、部品に損傷を与える、特に腕時計ケースに傷をつけるリスクを含まない解決策を提供することにある。
【0008】
本発明の第五の目的は、リストバンドを腕時計ケースに固定する解決策であって、細い突出部およびまたは突出部幅(突出部同士の間の幅)を有しまたは突出部を有さないケース胴に固定する解決策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明はリストバンドのストランドに関し、リストバンドは腕時計ケースに対して取り外し可能に固定されることを意図する端部を有し、前記ストランドは前記端部に配置される突起または溝を有し、前記突起または溝は腕時計ケースの溝または突起に収容されることが意図され、前記ストランドは前記突起または前記溝を形成する壁の厚さに配置される少なくとも一つの垂直開口部を有し、前記ストランドは弾性要素を有し、前記弾性要素と前記少なくとも一つの垂直開口部の長さの少なくとも一部とをピンが通過することを受け入れることを可能とする。
【0010】
別の例として、本発明は、上述したリストバンドのストランドの雄固定部品に対応する雌部品を有する腕時計ケースに関する。別の例として、固定装置の雄部品と雌部品とはリストバンドのストランドと腕時計ケースとの間で交換可能である。さらに別の例として、前記弾性要素は雄部品または雌部品に配置されてもよい。
【0011】
本発明はさらにそのような固定装置、リストバンドおよび時計に関する。
【0012】
本発明は特許請求の範囲により詳細に説明する。
本発明の目的、特徴および長所は、本発明を被制限的に示す添付図面を参照する実施形態において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るリストバンドを腕時計ケースに固定する装置を上から示す透視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るリストバンドを腕時計ケースに固定する装置の長手中央垂直面の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る固定装置を介して腕時計ケースと協働するよう意図される端部を有するリストバンドの端部の長手中央垂直面の断面図である。
【
図4】
図4は、リストバンドを取り付ける段階における、本発明の実施形態に係る固定装置の長手中央垂直面の断面図である。
【
図5】
図5は、固定構成にある本発明の実施形態に係る固定装置の長手中央垂直面の断面図である。
【
図6】
図6は、リストバンドを取り外す段階における、本発明の実施形態に係る固定装置の長手中央垂直面の断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る固定装置において使用可能な弾性要素の形態を示す側面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る固定装置において使用可能な弾性要素の別の形態を示す側面図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る固定装置において使用可能な弾性要素の別の形態を示す側面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る固定装置において使用可能な弾性要素の別の形態を示す側面図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る固定装置において使用可能な弾性要素の別の形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明を簡易にするため、腕時計を見る人に向かって腕時計ケースの面に垂直の方向を、垂直方向zと呼ぶ。「下」という表現は、装着者の手首に接触することが意図される、腕時計ケースとリストバンドの面を指す。第一突出部3の中央から反対側の第二突出部3の中央に延びる方向であって、鉛直方向に対して垂直な方向を、横断方向yと呼ぶ。最後に、鉛直および横方向に垂直な、リストバンドの長さ方向に沿う方向を、長手方向xと呼ぶ。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る固定装置1を使用することにより取り外し可能に固定されるリストバンド10の二つのストランドの間に対照的かつ反対同士に形成された二つの突出部3を周辺部に有するケース胴2を含む腕時計ケースを示す。簡易化のため、リストバンドの一つのストランドの端部のみを、さらに詳細にはストランドの端部リンクを示し、それによりストランドは組み立てられたリンクからなるものとして意図される。この端部リンクは、腕時計ケースに固定されるストランドの端部に対応する第一端部と、連結ピンを受けることが意図される横断開口の形状を有するリストバンドのストランドの別のリンクに対応する受け装置11を有する第二端部とを有する。もちろん、本発明の実施形態に係る固定装置1は、関節式連結リンクからなるリストバンド以外の他のタイプのリストバンド、例えば革やまたは複合材料からなる弾性リストバンドのストランドも固定するよう設計される。さらに、リストバンドの二つのストランドは好ましくはそれぞれ、腕時計ケース胴2の二つの突出部3からなる組のそれぞれの間に、同一の固定装置1を使って固定され、その後それぞれの他端部が留め具によって固定される。
【0016】
本発明の実施形態にかかるリストバンド10のストランド用の固定装置1は、リストバンド10を固定する構成を示す
図2においてより詳細に示される。この固定装置1は第一にケース胴2の突出部間に形成された空間の領域に依拠し、リストバンド10のストランドの端部に配置される特別な形状と協働する。
【0017】
突出部同士の間の空間は実際には構成要素を有し、構成要素の断面は、例えば、リストバンドに向かうU形状を有しまたは実質的に有し、それにより横溝を規定する。この溝は第一突出部3から(横軸yに沿って)第二突出部3へ横方向に延び、溝は下面4、上面5および下面と上面とをケース胴2において連結する鉛直面6によってその範囲を規定される。下面4は、横断方向から考慮して突出部間の空間の中央に実質的に垂直に配置される貫通孔7(開口7)を有する。
【0018】
リストバンド10はその端部に、
図3にさらに詳細に示すように、その端部にケース胴の突出部間の空間に配置された溝に収容されることを意図した突起16を有する。この突起16は、横断方向からみて突起の中央部分に実質的に位置される、垂直方向の貫通孔17(開口17)を有する。この構成は、突出部間の空間にある溝にリストバンド10の突起16が収容されたとき、二つの穴7と17が実質的に整列されるよう設計される。リストバンド10はさらに、突起16の下面に、取り外し可能に弾性要素30を収容するよう意図されたハウジング18を有する。このような弾性要素30はリストバンドのストランドの面に平行な面に実質的に延び、以下に詳細に説明するとおり、突起の穴17からオフセットされうる貫通開口を有し、特にこの開口は好ましくは0.02mmから0.5mmの範囲でオフセットされてよい。
【0019】
リストバンド10のストランドを腕時計ケースに固定するための固定装置1はさらにピン20を有し、このピン20の下部23はケース胴2の穴7に収容され、中間部22は弾性要素30の穴に収容され、上部21はリストバンド10の突起16の穴17に収容される。ピン20は、弾性要素30と共に、腕時計ケースに対してリストバンド10を信頼性高くかつ遊びのない状態で保持する。
【0020】
本実施形態に係るリストバンド固定装置の働きについて、
図4および5を参照して詳細に説明する。
【0021】
事前の段階において、弾性要素30は、前に説明したとおり、リストバンドの端部に配置されたハウジング18内に位置される。本発明によると、弾性要素30は実質的に円環形状を有し、ハウジング18は弾性要素の直径より少し小さい直径を有する円形断面を有し、弾性要素はわずかに圧縮されることによりハウジング内に保持される。次に、リストバンドの端部は腕時計ケースの突出部間の空間に配置され、リストバンドの突起16は突出部間に配置された溝に位置される。一つの所見として、この突起16の高さは、高さ方向において、溝の範囲を規定する表面である下面4と上面5の二つの面の間の距離に実質的に対応し、抵抗にあうことなく突起を挿入することを助けるために、わずかな隙間を有する。同様に、長手方向に計測した突起16の長さに実質的に対応する溝の深さは、突起が垂直面12に早期に接触することによりブロックされることのないよう、わずかな隙間を有している。
【0022】
次に、ピンの垂直挿入の途中段階を表す
図4に示す通り、ピン20はケース胴2の穴7に挿入される。ピンの上部21はその中間部22の直径よりも大きな直径を有する。ピンの上部21は、弾性要素30の穴よりも大きな直径を有する。ピン20は弾性要素を介して駆動される:もちろん、上述の直径や弾性要素の弾性特性は、弾性要素を損傷することなくピンが適切な力で挿入されることを可能とするよう、かつこの挿入が完了したときにピンおよびリストバンドが正しく保持されることを保証するよう、選択される。この挿入は、
図2および5に示す最終位置であって、弾性要素30の穴の中にピン20の小直径を有する中間部22が配置される位置に、ピン20が到達するまで継続する。
【0023】
ピン20が最終位置にあるとき、弾性要素30によって軸方向にブロックされているように見うけられ、それによりピンを信頼性高く安定して接続することが可能となる。その結果、リストバンドを信頼性高く固定することができる。さらに、弾性要素30は弾性特性を有することから、遊びを補い、腕時計ケースに対して遊びを有さずにリストバンド10を固定することができる。ピン20の挿入は突起16の上面15を溝の上面5に対して押圧する効果を有し、それにより鉛直方面の遊びなく、リストバンドが位置に固定されることを保証する。
【0024】
本発明の実施形態によると、リストバンド10のハウジング18と穴17との間はオフセットされる。さらに、リストバンドのハウジング18と腕時計ケースの穴7との間もオフセットされる。さらに詳細には、リストバンド10の穴17の軸A
17は、弾性要素30の軸A
30を規定する腕時計ケースのハウジング18の軸に対して長手方向にわずかに後方に位置される。このようにして、弾性要素30の貫通開口は、
図3により詳細に示す通り、リストバンド10の穴17からわずかにオフセットされる。
【0025】
弾性要素30を変形、特に圧縮、することによりピン20を二つの穴7と17に貫通させ、上述のオフセットを補償することができる。その結果、腕時計ケースに向かって長手方向に配置され、突出部間のスロットの上面5端部にある垂直面8に対してしっかりとリストバンドの垂直上面19を押し当てるよう、リストバンドに対して特定の負荷が与えられる。この実施形態は、リストバンドを長手方向に遊びを有さず保持することを奨励する。さらに、この実施形態は腕時計ケースの上面とリストバンドの上面との境界における連続性を補償することにより優れた審美的作用を保証することができる。
【0026】
図6と7は、リストバンドを取り外す段階を図示する。そのためには、ピン20は上述した取付段階と同一の方向に弾性要素によって駆動される。この作業中、ピンの上部21と実質的に同じ直径を有するピンの下部23は、弾性要素30内に収容される。当該作業は、
図6および7に示した位置である、ケース胴の突出部間に形成された穴7からピン20が完全に外れる時点まで継続する。備考として、この作業を可能とするためには、リストバンド10の穴17の長さL10は少なくともピン20の長さL20と同じでなくてはならない。このように、上述の要件が満たされる限り、穴17は盲孔であってもよい。
図6および7に示した位置においては、ピンはもはやリストバンド10をブロックしておらず、リストバンド10は長手方向xに向かって簡単に引っ張ることにより取り外すことができる。ピン20は続く取付作業に対する準備のために、回復されまたは取り換え可能である。
【0027】
弾性要素30は輪または止め輪の形状を有する。弾性要素30はポリマーシールやエラストマーシールであってよい。その断面形状は、
図8に部分的に示し、また
図2から7に示す通り、U字型であってもよく、または
図9に示す通り、T字型であってもよい。代案として、弾性要素30は
図10に示す通り、Oリング形状であってもよく、さらには
図11に示す通り、四つの丸い突出部を有するシーリングリングであってもよい。さらに別の形状の代案として、
図12に示す通り、バネ座金、とりわけ金属箔を使用することもできる。さらには、弾性要素は様々な異なる形状をとることができる。
【0028】
もちろん、本発明は上述の実施形態に限るものではない。ケース胴も、腕時計ケースさえも、リストバンドを受けて垂直ピンを使用して保持することを可能とする別のいかなる形状を有してもよい。例えば、ケース胴内の穴7は、溝の上面5にある穴として形成されてもよく、その場合リストバンドはその上面に配置される弾性要素を有することとなる。ケース胴は突出部を有する必要はなく、突出部とは独立して溝を配置することができる。加えて、リストバンドは別の形状の突起を有することができる。リストバンドの穴17は、貫通孔である必要はなく、ブレスレットのストランドの突起の一面または別の面に開口するものであってもよい。弾性要素はリストバンドの穴に対応するよう異なって配置されてもよい。
【0029】
さらに、ピンは1.5ミリ以下の最大直径を有する。この直径は0.8から1.4ミリの間であることが好ましい。別の例として、ピンは別の形状、例えば円形ではない断面形状を有することができる。別の例として、ピンは、組立状態をよく保持することを保証しつつ、弾性要素を介して取り付けおよび取り外し作業を可能とする、全長を通して一定の断面形状を有する簡易な形状をとることができる。最後に、本実施形態は一つのピンを使用して満足な結果を得ることを可能とすることができる。別の例として、リストバンドの一つの同一ストランドを固定するのに二つ以上のピンを使用することもできる。
【0030】
最後に、上述した連結構造は当然反対の構成であってもよく、突起がケース胴、とりわけ突出部の間に配置され、リストバンドのストランド端部に配置された溝と協働するよう構成されてもよい。さらには、どちらの例においても、弾性要素は、上述したとおりの突起を有する構成要素または他方の溝を有する構成要素である、リストバンドでも腕時計ケースでも、どちらの構成要素に収容されてもよい。最後に、腕時計ケースとリストバンドのストランドとの間の連結は雄部品を形成する一つの突起と、雌部品を形成する一つの溝との間の協働により実施されるとしたが、別の例として、一つまたは複数のピンによって固定されるいくつかの突起といくつかの溝との協働によって実施されてもよい。このようにして、本発明は少なくとも一つの突起と少なくとも一つの溝とを有する実施に適用される。
【符号の説明】
【0031】
4 下面
5 上面
7 穴
10 リストバンド
16 突起
17 穴
18 ハウジング
20 ピン
30 弾性要素