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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】小型時計部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/22 20060101AFI20240418BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20240418BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20240418BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20240418BHJP
   A44C 27/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G04B37/22 B
G04B19/06 A
G04B37/22 V
G04B45/00 V
A44C5/00 C
A44C5/00 502Z
A44C27/00
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019166817
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2020076740
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】18194911.6
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビアンヴェニュ, カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ネージェル, パトリス
(72)【発明者】
【氏名】ニュイェン, クオック-イエン
(72)【発明者】
【氏名】ルーレ, アレクサンドラ
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-136670(JP,A)
【文献】特開2016-183961(JP,A)
【文献】特表2012-502813(JP,A)
【文献】特開2005-181340(JP,A)
【文献】国際公開第2017/102239(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/108433(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0225786(US,A1)
【文献】登録実用新案第3176553(JP,U)
【文献】米国特許第8926169(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
A44C 5/00、27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用の小型時計部品(10)の製造方法であって、
少なくとも1つの凹部(20)、すなわち第1表面(1)から窪んだ表面が配置される、前記第1表面(1)を含む小型時計部品(10)の製造の第1段階と、
前記少なくとも1つの凹部(20)または前記少なくとも1つの凹部(20)の一部分を除く、前記第1表面(1)の表面状態の変更を引き起こす、前記小型時計部品の製造のための第2仕上げ段階と、
を含み、
前記製造の第1段階は、工業用セラミックに基づくパーツを含む前記小型時計部品(10)の製造を含み、前記凹部(20)はセラミックに基づく前記パーツに設置される、
時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項2】
時計用の小型時計部品(10)の製造方法であって、
少なくとも1つの凹部(20)、すなわち第1表面(1)から窪んだ表面が配置される、前記第1表面(1)を含む小型時計部品(10)の製造の第1段階と、
前記少なくとも1つの凹部(20)または前記少なくとも1つの凹部(20)の一部分を除く、前記第1表面(1)の表面状態の変更を引き起こす、前記小型時計部品の製造のための第2仕上げ段階と、
を含み、
前記第2仕上げ段階は、均質且つ等方性のトポグラフィーの第1表面(1)を形成するために、前記第1表面(1)の表面状態を変更する、
時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項3】
時計用の小型時計部品(10)の製造方法であって、
少なくとも1つの凹部(20)、すなわち第1表面(1)から窪んだ表面が配置される、前記第1表面(1)を含む小型時計部品(10)の製造の第1段階と、
前記少なくとも1つの凹部(20)または前記少なくとも1つの凹部(20)の一部分を除く、前記第1表面(1)の表面状態の変更を引き起こす、前記小型時計部品の製造のための第2仕上げ段階と、
を含み、
前記第2仕上げ段階は、媒体による前記凹部(20)の少なくとも一部分との全ての接触を防止するように定義された寸法及びまたは形状を有する媒体を含む研磨剤混合物を用いる、または前記第2仕上げ段階は、前記媒体による所定の距離dよりも遠い距離に位置する前記凹部(20)の部分との全ての接触を防止するように定義された寸法及びまたは形状を有する媒体を含む研磨剤混合物を用いる、
時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項4】
時計用の小型時計部品(10)の製造方法であって、
少なくとも1つの凹部(20)、すなわち第1表面(1)から窪んだ表面が配置される、前記第1表面(1)を含む小型時計部品(10)の製造の第1段階と、
前記少なくとも1つの凹部(20)または前記少なくとも1つの凹部(20)の一部分を除く、前記第1表面(1)の表面状態の変更を引き起こす、前記小型時計部品の製造のための第2仕上げ段階と、
を含み、
前記第2仕上げ段階は、前記第1表面(1)を、衝撃による研磨剤混合物の機械的作用に曝すことで前記第1表面(1)の表面状態を変更する、及びまたは前記第1表面(1)のトライボ仕上げ、及びまたは機械及び化学研磨及びまたはバレル仕上げ、及びまたは
振動バリ取り、及びまたはサンドブラスティング及びまたはマイクロビーズブラスティング及びまたはウェットジェッティングを含む、
時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項5】
前記第2仕上げ段階は、前記凹部(20)の深さより厳密に少ない距離dにわたり、前記凹部(20)の表面状態を変更する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの凹部は、前記第2仕上げ段階の実施時点では被覆されない凹部表面を含み、前記凹部表面は、前記第2仕上げ段階の終わりに変更されない表面状態を維持する、及びまたは前記少なくとも1つの凹部は、接続表面(3)により前記第1表面(1)に接続される底面を形成する第3表面(2)を含み、前記第2仕上げ段階は、前記少なくとも1つの凹部(20)の前記第3表面(2)の表面状態を変更しない
請求項1から5のいずれか一項に記載の時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項7】
前記第2仕上げ段階は、前記第1表面(1)の鏡面反射を低下または最小化することにより、前記第1表面(1)の表面状態を変更する
請求項1から6のいずれか一項に記載の時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項8】
鏡面反射を増大または最大化することにより、主表面(5)の、または前記第1表面(1)の、場合により前記少なくとも1つの凹部(20)の、全部または一部の表面状態の変更を伴う中間段階を含む
請求項1から7のいずれか一項に記載の時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項9】
前記小型時計部品(10)の製造の第1段階は、前記少なくとも1つの凹部(20)内に第2凹部(21)を形成し、前記第2仕上げ段階は、前記第1表面(1)のみの表面状態の変更を引き起こす、及びまたは
前記小型時計部品(10)の製造の第1段階は、前記少なくとも1つの凹部(20)内に第2凹部(21)を形成し、前記第2仕上げ段階は、前記第1表面(1)と、前記少なくとも1つの凹部(20)の少なくとも一部分の表面状態の変更を引き起こすが、前記第2凹部(21)の表面状態の変更は引き起こさない、及びまたは
前記小型時計部品(10)の製造の第1段階は、前記第1表面に異なる形状を有する複数の凹部(20、20’)を形成し、前記第2仕上げ段階は、前記第1表面(1)の表面状態の変更を引き起こすが、前記凹部(20、20’)の表面状態の変更は引き起こさない、及びまたは
前記小型時計部品(10)の製造の第1段階は、前記第1表面(1)に異なる形状を有する第1及び第2凹部(20、20’)を形成し、前記第2仕上げ段階は、前記第1表面(1)と前記第2凹部(20’)の表面状態の変更を引き起こすが、前記第1凹部(20)または前記第1凹部(20)のみの一部分の表面状態の変更は引き起こさない
請求項1から8のいずれか一項に記載の時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項10】
前記小型時計部品(10)の製造の第1段階は、工業用セラミック系均質且つ一体成形部品の前記製造を含む、またはセラミック製の異なるパーツの組み合わせを少なくとも部分的に含む
請求項1から9のいずれか一項に記載の時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項11】
単層または多層方式による前記少なくとも1つの凹部(20)の被覆の段階を伴う、小型時計部品(10)の製造の中間段階を含む
請求項1から10のいずれか一項に記載の時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項12】
前記被覆は、金属(複数の金属)及びまたは酸化物(複数の酸化物)及びまたは窒化物(複数の窒化物)及びまたは炭化物(複数の炭化物)及びまたは炭窒化物(複数の炭窒化物)及びまたは硫化物(複数の硫化物)及びまたは有機素材(複数の有機素材)、及びまたは無機素材(複数の無機素材)、及びまたはハイブリッド素材(複数のハイブリッド素材)、及びまたは塗料、及びまたはラッカー、及びまたはエナメル、及びまたはワニス及びまたはガラスセラミック、及びまたはポリマー系または接着剤系素材からなる層を含む、
請求項11に記載の時計用の小型時計部品(10)の製造方法。
【請求項13】
少なくとも1つの凹部(20)が配置される第1表面(1)を含む、小型時計部品(10)であって、前記第1表面(1)の全部または一部は、トライボ仕上げにより及びまたは機械及び化学研磨により及びまたはバレル仕上げにより及びまたは振動バリ取りにより及びまたはサンドブラスティングにより及びまたはマイクロビーズブラスティングにより及びまたはウェットジェッティングにより製造された第1表面状態であって、前記少なくとも1つの凹部(20)の少なくとも一部分の第2表面状態とは異なる、第1表面状態を示し、
トライボ仕上げにより艶消し化された主表面(5)の全体を表現する第1表面(1)と、少なくとも1つの研磨されたまたは粗い凹部(20)、または
トライボ仕上げにより艶消し化された主表面(5)の部分を示す第1表面(1)と、少なくとも1つの研磨されたまたは粗い凹部(20)、
の特徴のうちの1つを含む、
小型時計部品(10)
【請求項14】
同一または異なる形状の、複数の凹部(20、21;20、20’)を含む、及びまたは
異なる表面状態を有する、複数の凹部(20、21;20、20’)を含む、及びまたは
一体成形である、または同一の化学的または非化学的性質を有する複数のセラミックを含む、及びまたは
前記第1表面(1)は艶消しである、または艶消し及び光沢区域を含む、及びまたは
前記少なくとも1つの凹部(20)は、被覆を含む、及びまたは
前記第1表面(1)の粗度は、前記凹部(20)の少なくとも一部分の粗度よりも低い、または前記第1表面(1)の粗度は、前記凹部(20)の少なくとも一部分の粗度よりも高い、及びまたは
前記第1表面(1)の粗度は、均質且つ等方性のトポグラフィーを有する、
の特徴のうちの全部または一部を含む、
請求項13に記載の小型時計部品(10)。
【請求項15】
少なくとも1つの凹部(20)が配置される第1表面(1)を含む、小型時計部品(10)であって、前記第1表面(1)の全部または一部は、トライボ仕上げにより及びまたは機械及び化学研磨により及びまたはバレル仕上げにより及びまたは振動バリ取りにより及びまたはサンドブラスティングにより及びまたはマイクロビーズブラスティングにより及びまたはウェットジェッティングにより製造された第1表面状態であって、前記少なくとも1つの凹部(20)の少なくとも一部分の第2表面状態とは異なる、第1表面状態を示し、
同一または異なる形状の、複数の凹部(20、21;20、20’)を含む、及びまたは
異なる表面状態を有する、複数の凹部(20、21;20、20’)を含む、及びまたは
一体成形である、または同一の化学的または非化学的性質を有する複数のセラミックを含む、及びまたは
前記第1表面(1)は艶消しである、または艶消し及び光沢区域を含む、及びまたは
前記少なくとも1つの凹部(20)は、被覆を含む、及びまたは
前記第1表面(1)の粗度は、前記凹部(20)の少なくとも一部分の粗度よりも低い、または前記第1表面(1)の粗度は、前記凹部(20)の少なくとも一部分の粗度よりも高い、及びまたは
前記第1表面(1)の粗度は、均質且つ等方性のトポグラフィーを有する、
の特徴のうちの全部または一部を含む、
小型時計部品(10)。
【請求項16】
前記小型時計部品(10)は、仕上げ要素である
請求項13から15のいずれか一項に記載の小型時計部品(10)。
【請求項17】
求項13から16のいずれか一項に記載の小型時計部品(10)を含む、時計
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型時計部品の製造方法に関する。本発明はまた、小型時計部品それ自体に関する。最後に、本発明はまた、当該小型時計部品を含む時計に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な素材から、特に金属、金属合金、及び工業用セラミックから、小型時計部品を製造することが知られている。当該部品の可視表面は、選択される1以上の異なる仕上げ段階に応じて、複数の異なる外観を示してもよい。このように可視表面の表面状態は、特定の、所望の審美的外観の達成を可能にする。当該可視表面は、主表面に対するレリーフを、例えば凹部の形態の、当該主表面に対して窪んでいるレリーフを、または逆に当該主表面に対して突出するレリーフを、示してもよい。
【0003】
特にセラミック製の、小型時計部品を製造する既存の方法は、以下の欠点の全部または一部を示す。
- 仕上げられた小型時計部品の表面状態を形成するために、複雑な段階を含む。
- レリーフを、より具体的には窪みレリーフを示す小型時計部品の場合、既存の方法は、異なるレリーフの異なる表面上に特定の異なる表面状態を形成するために、例えば特定の部分のマスキング段階を必要とするなど、適応が不十分である、または複雑である。
- 窪み表面を含む小型時計部品の場合、既存の方法は、異なるレリーフの異なる表面上に、特定の表面状態の結果が達成されることを不可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の全体的な目的は、窪みレリーフを含む魅力的な審美的外観の小型時計部品を形成するための、また従来技術の欠点の全部または一部を含まない、改善され単純化された解決策を提案することである。
【0005】
より具体的には、本発明の目的は、第1表面から窪んだ態様で位置する第2表面の表面状態と異なる表面状態を示す第1表面を含む小型時計部品を形成するための解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これに関して、本発明は、時計用の小型時計部品の製造方法であって、少なくとも1つの凹部、すなわち第1表面から窪んだ表面が配置された、前記第1表面を含む小型時計部品の製造の第1段階と、前記少なくとも1つの凹部または前記少なくとも1つの凹部のみの一部分を除く、前記第1表面の前記表面状態の、より具体的には前記粗度の、より具体的には前記パラメータRa及びまたはStrで測定される前記粗度の、及びまたは前記光沢の、変更を引き起こす、前記小型時計部品の製造のための第2仕上げ段階と、を含む、時計用の小型時計部品の製造方法に基づく。
【0007】
前記少なくとも1つの凹部は、前記第2仕上げ段階の実施時点では被覆されない、前記第1表面に対して窪んだ凹部表面または第2表面を含み、前記凹部表面は、前記第2仕上げ段階の終わりに、第2仕上げ段階の開始時の表面状態に比べて変更されない表面状態を維持する。
【0008】
本発明はまた、少なくとも1つの凹部が配置される第1表面を含む、小型時計部品であって、前記第1表面の全部または一部は、トライボ仕上げ(振動バレル仕上げ)により及びまたは機械及び化学研磨により及びまたは転動(バレル仕上げ)により及びまたは振動バリ取り(振動仕上げ)により及びまたはサンドブラスティングにより及びまたはマイクロビーズブラスティングにより及びまたはウェットジェッティングにより製造された第1表面状態であって、前記第2表面状態と、より具体的には前記少なくとも第1凹部の少なくとも一部分の前記粗度と、より具体的には前記パラメータRa及びまたはStrで測定される前記粗度、及びまたは前記光沢とは異なる、第1表面状態を示す、小型時計部品に基づく。
【0009】
最後に、本発明は、上述の小型時計部品を含む、時計、より具体的には小型時計に基づく。
【0010】
本発明は、より具体的には請求項により定義される。
【0011】
こうした目的、特徴、及び利点は、添付の図面に関して、非限定的な実施例として与えられる具体的な実施形態の以下の説明において、詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1aから1cは、本発明の実施形態にかかる小型時計部品の厚みの概略的断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態の第1変形例にかかる小型時計部品の厚みの概略的断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態の第2変形例にかかる小型時計部品の厚みの概略的断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に従って製造された小型時計部品の写真である。
図5図5は、図4の小型時計部品の粗度の未加工の線形プロファイルを示す。
図6図6は、本発明の実施形態に従って製造された他の小型時計部品の写真である。
図7図7は、図6の小型時計部品の粗度の未加工の線形プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
説明を単純化するため、様々な実施形態において同一の特徴または同等の特徴を指定するために、同一の参照番号が用いられる。
【0014】
本発明は、あらゆる化学組成の、具体的には金属及びまたは金属合金及びまたは工業用セラミック製の小型時計部品10に関する。このような部品は、例えば、ステンレス鋼、貴金属、チタン、アルミナ、ドープされたまたはドープされていないアルミン酸ストロンチウム、安定化されたまたは安定化されていないジルコニア、有機-無機ハイブリッド素材、または一般的に言えば時計製造分野で使用可能なあらゆる金属合金またはあらゆる工業用セラミックまたはあらゆる複合材料で作成できる。「工業用セラミック」の表現は、酸化アルミニウム、及びまたは酸化ジルコニウム、及びまたは安定化酸化ジルコニウム、及びまたは窒化物、及びまたは炭化物及びまたはアルミン酸ストロンチウム、特にドープされたアルミン酸ストロンチウムに基づく高密度素材を特定するために用いられる。「高濃度」の表現は、密度が、問題となる素材の理論密度の95%から100%の間に含まれる素材を意味する。「特定の複合素材に基づく」の表現は、素材が、重量%で、当該複合素材を少なくとも50%含むことを表す。説明を単純化するため、「セラミック」の表現は、「工業用セラミック」を特定するために用いられる。
【0015】
小型時計部品10は、一体成形であってもよく、互いに組付けられた異なるパーツの組み合わせでもよい。このため、小型時計部品10は、単一の化学的性質のものであってもよく、化学的性質の組み合わせのものであってもよい。このため、小型時計部品10は、同じ素材を含んでもよく、複数の異なる素材を含んでもよい。小型時計部品10は、単色でもよく、複数の色でもよい。
【0016】
本発明は更に、あらゆるタイプの小型時計部品に関する。当該小型時計部品10は、ベゼルまたはベゼルインサートであってもよいが、より一般的にはあらゆる仕上げ要素、ケース、裏蓋、ケース胴、文字盤、装飾プレート、またはブレスレットのリンクであってもよい。同様に、当該部品は、例えばカレンダー日付ディスクといったムーブメントの部品であってもよい。
【0017】
本発明はより具体的には、小型時計部品の主表面5との関連で窪んだ表面で定義される、少なくとも1つの窪みレリーフを示す小型時計部品10に関し、当該窪みレリーフは一般的には凹部と称される。主表面5は、ここでは、小型時計部品の最大の表面を有する、可視表面と見做される。
【0018】
第2窪み表面20または凹部20は、より具体的には、小型時計部品の第1表面1に形成され、第1表面は、主表面5の全部または一部を構成する。当該窪み表面20は、第1表面1へ切り込まれる。縁4が、第1表面1と窪み表面20との間の境界面を形成する。窪み表面20は、平面でも曲面でもよい。例えば、円錐台状でもよい。更に連続でもよく不連続でもよく、すなわち縁で接続される複数の平面または曲面から形成されてもよい。このため、凹部20はあらゆる形状をとってもよい。凹部20は、より具体的には、底を形成し、接続表面3により第1表面に接続可能な少なくとも1つの第3表面2を含む。第3表面2及びまたは接続表面3は、連続であってもよく不連続であってもよい。
【0019】
例えば、第2窪み表面20または凹部20は、底に実質的に垂直な接続表面3の役割を果たす1または複数の側壁により第1表面に接続される、第1表面1に実質的に平行な底面を形成する第3表面2を含んでもよく、図1aの凹部20が示すように、平らな底のニッチを形成する。当該底面は、例えば、時刻表示または時刻から派生する表示または何らかの種類のあらゆる印を表示するために設けられた、記号または英数字の文字を特徴としてもよい。
【0020】
変形例として、第2窪み表面20または凹部20は、図1bの凹部20で示すように、U字を形成する丸い断面を含む、曲面の形状で存在してもよい。この特定の変形例において、底を接続面と区別することは不可能である。当該変形例において、第3表面2が接続表面3を含むと見做される。
【0021】
変形例として、第2窪み表面20または凹部20は、図1cの凹部20で示すように、V字の断面を含む、不連続面の形態であってもよい。
【0022】
(図示しない)変形例として、第2窪み表面20または凹部20は、底を含まなくてもよい。この場合、凹部20は貫通孔である、すなわち、凹部20は、小型時計部品10を、一方から他方へ横断する。
【0023】
本発明は、当該小型時計部品の製造方法に関する。当該方法は、主表面5と、少なくとも1つの凹部20が配置された第1表面とを含む小型時計部品10の準備に関する第1段階を含む。
【0024】
第1段階で製造された当該要素は、小型時計部品の最終形状と寸法を実質的に示すため、完全に完成されていなかったとしても、既に小型時計部品と称される。当該第1段階は、あらゆる最先端の方法により、既知の態様で実施されることを注記する。
【0025】
審美的理由から、主表面5の一部を、その初期の表面状態を保護するように、本発明にかかる処理から除外してもよい。本発明において、第1表面1は、少なくとも1つの凹部が配置される表面であり、方法の残りに関与する、すなわちその表面状態が変更される表面と見做される。当該表面状態は、より具体的には、非限定的態様で、複数の実施例に基づき以下で詳細に説明するように、粗度、具体的には標準粗度パラメータRa及びまたはStrを用いた粗度により、及びまたは光沢により、及びまたは色により、特徴づけられる。
【0026】
例えば、第1段階は、凹部を含む、セラミック製のベゼルインサートまたは金属装飾プレートの製造に関してもよい。
【0027】
本発明のコンセプトは、小型時計部品の表面状態を仕上げる、より具体的には小型時計部品の第1及び第2表面間で異なる表面状態を簡単に形成することを可能にする、第2仕上げ/終了段階の実施を伴う。このため、本発明の第2段階は、より具体的には、少なくとも1つの凹部(すなわち少なくとも1つの窪み表面)を、または追記としてもしあるならば主表面の除外部分を、影響することなくまたは極力影響することなく、第1表面の表面状態の変更を引き起こす、例えば鏡面反射を低下することを意図する、小型時計部品10の仕上げ段階を実施する。
【0028】
窪み表面20は、任意で、第1表面と窪み表面20との境界面を形成する縁4の水準での第2仕上げ段階で影響されてもよい。凹部20の断面の2つの先端を形成する縁4の2つの点p1、p2を通過し、当該断面の断面Pに垂直な、平面P1を考慮すると、第2仕上げ段階は、例えば、図1aから1cに示すように、平面P1と平面P1に平行な平面P2の間であり、平面P1から当該凹部の内部の方向に距離d離れた、凹部20または第2窪み表面20の部分を影響してもよい。換言すれば、凹部の表面状態は、凹部の深さよりも厳密に少ない距離dだけ変更されてもよい。深さは、平面P1とP2に垂直な方向に測定される。
【0029】
好ましくは、距離dは80μmを、または50μmを、または20μmを超えない。もちろん、この距離は0でもよい。
【0030】
図1aに示すような、底を形成する第3表面2は、第2仕上げ段階で影響されない。にもかかわらず、図1aまたは1cに示すような接続表面3、または図1bに示すような接続表面3と併合された底を形成する第3表面2は、負荷さdだけ、第2仕上げ段階により少なくとも部分的に変更されてもよい。
【0031】
最後に、全ての場合において、第2窪み表面の少なくとも一部分は、以下のように、第2仕上げ段階中に、不変の表面状態を維持する。
【0032】
「仕上げ段階」の表現は、介在させる媒体による、第1表面1の表面状態の変更を意味すると理解される。当該仕上げ方法の区別可能な特徴は、「遊離」として知られる媒体と研磨剤を用いて、凹部を保護するあらゆるマスキングなくして当該結果の達成を可能にすることである。研磨剤と仕上げるべき表面との間の接触が、研磨の場合のように摩擦ではなく、衝撃により実施される。当該段階は、例えば、衝撃による、例えば容器内(トライボ仕上げ)での、例えば振動、搖動、または回転運動を起こすことによる、研磨剤混合物の機械的作用を含む。当該段階はまた、例えば非限定的態様で、当該第1表面1の、バレル仕上げ、及びまたは振動バリ取り、及びまたはサンドブラスティング、及びまたはマイクロビーズブラスティング、及びまたはウェットジェッティングを含む。
【0033】
仕上げ段階は、媒体により搬送可能な研磨剤を用いる。トライボ仕上げの場合、媒体の寸法及びまたは形状は、媒体による凹部の少なくとも1つの最深部、すなわち上記で定義したように平面P2の下に配置された部分との全ての接触を防止するように、より具体的には底を形成する第3表面2との全ての接触を防止するように、定義される。媒体は、多面体形状を、より具体的にはピラミッド型または球状形状を有してもよい。媒体は、ガラス、セラミック、磁器、ステアタイト、アルミナ、またはジルコン(ZrSiO)製であってもよい。サンドブラスティング及びまたはマイクロビーズブラスティング及びまたはウェットジェッティングの場合、研磨剤粒子の寸法及びまたは形状は、凹部の少なくとも一部分との、より具体的には底を形成する第3表面2との全ての接触を防止するように、定義される。
【0034】
研磨剤混合物の組成は、少なくとも以下の3つの構成要素の少なくとも一番目を含んでもよい。
- 例えば容器に配置され、容器の動きを研磨剤混合物と処理すべき小型時計部品へ伝える役割を有する媒体であって、小型時計部品に研磨効果を生じさせることを可能にする機械的作用を発生するように伝える、媒体(またはキャリヤまたはチップとも称する)。媒体の化学的性質、形状及び初期寸法は、所望の結果を達成するために選択される。媒体は、研磨剤であってもよい。同様に、公差限界内に維持するために、媒体の経年劣化と摩耗が監視される。
- 摩擦と機械的作用の効果を、すなわち研磨効果を増大する役割を有する、粉またはペースト形状の研磨剤。サンドブラスティング及びまたはマイクロビーズブラスティング及びまたはウェットジェッティングで用いられる研磨剤粒子は、研磨剤媒体と見做される。
- 混合物を薄め、仕上げ作業中の温度上昇を制限する、液体(例えば、添加剤ありまたはなしの水または油、または液体の混合物)。これは、例えばサンドブラスティングの場合、任意でもよい。
【0035】
研磨剤混合物の組成は、以下の特徴を示す媒体を含む。
- 凹部のまたは窪み表面の少なくとも一部との、好ましくは底を形成する第3表面2の完全性との接触を認めない、構造、より具体的には寸法と形状。例えば、媒体は、より具体的には当該凹部の第3表面2と接触しないように、少なくとも1つの凹部の上部において、第1表面1と凹部との境界面にある縁4と接触しやすいように適合された形状と寸法を有する。
- 凹部の縁を削ることなくトライボ仕上げを可能にする、質量と化学組成。
- トライボ仕上げの場合に媒体を均一に摩耗させる(そしてより具体的には破損させない)パラメータに依存する材料組成。この目的のため、上述のように、媒体は、例えば、より具体的にはガラス、セラミック、磁器、ステアタイト、アルミナまたはジルコン(ZrSiO)製であってもよい。
【0036】
時計用の小型時計部品10の製造方法は、上述の2つの段階の間に、鏡面反射を最大化するために、主表面5の、そして場合により第2窪み表面20の、全部または一部の表面状態を変更することを伴う中間段階を含んでもよい。この変更は、均質且つ等方性のトポグラフィーの表面を形成してもよい。例えば、当該段階は、表面を光沢させる意図を持った、表面の研磨に対応してもよい。第2仕上げ段階は、第1表面1へ、鏡面反射が低下された均質且つ等方性のトポグラフィーを与えるように、第1表面1の表面状態を変更する。この場合、仕上げ段階は、既に研磨された第1表面1の艶消し化の段階である。このようなアプローチにより、第1艶消し表面1と、表面状態が少なくとも部分的に不変な第2窪み表面20を含む、小型時計部品10を製造することが可能になる。当該アプローチは、より具体的には、第1艶消し表面1、及び表面状態が不変の底表面を形成する第3表面2を含む、小型時計部品10の製造を可能にする。
【0037】
このように、第2仕上げ段階は、第1表面1に均質且つ等方性のトポグラフィーを与える一方、その鏡面反射を低下または最小化するために、主表面5の全部または一部の表面状態を変更させる。
【0038】
小型時計部品10の製造の第1段階の後、少なくとも1つの凹部または窪み表面、より具体的には第3表面2に、単層または多層被覆として被覆を堆積する段階として、より具体的には、PVD(「物理的気相成長法」)、CVD(「化学蒸着」)、ALD(「原子蒸着」)、LBL(「相互吸着法」)、インクジェット、浸し塗り、ブラシ仕上げ、ディスペンサ、吹付、噴霧、またはゾルゲル法により、堆積する段階としての、中間段階が続いてもよい。この目的のため、例えば部品全体に、最初に堆積が行われ、その後、例えば上述した中間段階中に、第1表面から除去される。このような被覆は、金属(複数の金属)及びまたは酸化物(複数の酸化物)及びまたは窒化物(複数の窒化物)及びまたは炭化物(複数の炭化物)及びまたは炭窒化物(複数の炭窒化物)及びまたは硫化物(複数の硫化物)及びまたは有機素材(複数の有機素材)、及びまたは無機素材(複数の無機素材)、及びまたはハイブリッド素材(複数のハイブリッド素材)、及びまたは塗料、及びまたはラッカー、及びまたはエナメル、及びまたはワニス及びまたはガラスセラミック、及びまたはポリマー系または接着剤系素材の、層を含んでもよい。
【0039】
図4は、以下に詳細に説明する、図1aにかかる凹部を含む実施例に対応する、第1表面1と凹部の第3表面2との間の境界面の水準で撮影された、小型時計部品10の写真である。
【0040】
方法は、第2仕上げ段階後に、例えば主表面の一部に、より具体的には第1表面1の、例えば先端面取り部を形成する一部に、光沢を与えるための、ダイヤモンド切削の段階などの補完的段階を含んでもよい。このため、第2仕上げ段階は必ずしも製造方法の最終段階ではない。
【0041】
図1aから1cに示すような、単一のタイプの凹部のみを含む小型時計部品10の第1実施例の補完として、小型時計部品10は、あらゆる他の寸法の少なくとも1つの第2タイプの凹部を、及びまたは同一または同一でない寸法であって、一方の中に他方が相互配置されまたは配置されない多数の凹部を含んでもよい。これら構造は、異なる実施形態を表す。
【0042】
図2は、例として、変形実施形態にかかる小型時計部品10を示す。当該小型時計部品10は、空洞のレリーフが存在する、第1表面平面1を含む。空洞レリーフは、接続表面3を含む凹部20または第2窪み表面20により構成され、凹部20は、第2凹部21または第4窪み表面21を含み、そのそれぞれは底を形成する第5表面22を含む。第1凹部20は、図1cに図示する実施例のように、V字形状であり、第1凹部20の接続表面に挿入される第2凹部21は、図1aに図示する実施例のように、ニッチ型形状を取る。当該変形実施形態において、第2仕上げ段階は、第1表面1の表面状態のみを変更するために選択される。このため、当該段階は、窪み表面20、21の表面状態を変更しない。
【0043】
変形例として、上記で定義されたように平面P1及びP2の間に含まれる、第2窪み表面20の部分の表面状態も同様に、凹部または第4窪み表面21は影響されることなく、第2仕上げ段階により影響されてもよい。
【0044】
図3は、例として、他の特定の例示的実施形態にかかる小型時計部品10を示す。当該小型時計部品10は、2つの凹部の間に第1の場合によって不連続の表面1を形成する異なる区域に、2つの凹部20、20’が存在する、主表面5を含む。第2凹部20’は第1凹部20よりも幅広いが、深さは浅い。当該変形実施形態に於いて、凹部20’は媒体が接触可能である。凹部20、20’のそれぞれは、図1cを参照して上記で定義されたように構成される。このため仕上げ段階は、第1凹部20に影響することなく、第1表面1と第2凹部20’の表面状態を変更する。
【0045】
本発明は以下に、非限定的態様で、いくつかの実施例に基づき説明される。
【0046】
第1の実施形態において、セラミック製の、より具体的にはイットリア化ジルコニア製の小型時計部品10は、ベゼルインサートである。小型時計部品10は、凹部または窪み表面が、それぞれ底2を形成する第3表面と、それぞれが底を形成する第3表面と第1表面1との間の接続を保証する垂直または実質的に垂直な接続表面3を含む、ニッチの形状で実現された、円錐台状の主表面5を、より具体的には円錐台状の第1表面1を示す。凹部は、長方形の断面、0.69 ± 0.05mmの幅と、0.15±0.05mmの深さを示す。ベゼルインサートは既に、凹部と共に最終形状を示す。
【0047】
製造方法の第1段階後に、中間段階は以下の副段階を含む。
- 任意に、ディスクの全体へサンドブラスティング及びまたはマイクロビーズブラスティング及びまたはウェットジェッティング。
- ディスクの全体へのPVDによる金属被覆の堆積。
- 凹部の被覆は抑制せずに第1表面1の被覆を選択的に抑制し、第1表面1の鏡面反射を最大化する、第1表面1の水準での均質且つ等方性のトポグラフィーの達成を可能にする、研磨。この研磨段階は、上述の中間段階に対応する。
【0048】
製造方法は、その後、第1表面の艶消し化段階に対応する、トライボ仕上げによる第2仕上げ段階を含む。この目的のため、使用された機材は1リットルのボウルを含むサテライトを有する遠心分離機械であり、基材にはトライボ仕上げされる部品が、
- 750gの媒体(キャリヤ)(5mmの直径を有するガラスボール)、
- 20gの洗浄剤、
- 20gの研磨剤(3から5μmの間のグレードの炭化ホウ素粉末)、
- 300gの水、
と共に自由に入れられた。
回転は、異なる継続時間にわたり、300回転/分に調節される。
【0049】
第1説明的実施形態において、トライボ仕上げ(粗度R1)の第2段階前の第1表面1の表面状態は磨かれ、トライボ仕上げ(粗度R2)の段階前の凹部の底を形成する第3表面2の表面状態はサンドブラスティングされる。トライボ仕上げの段階後、第1表面1と凹部の底を形成する第3表面2のそれぞれの粗度は、「R1」と「R2」となる。第1説明的実施形態にかかる粗度値は、以下の表に要約され、表では、ナノメートルで示される、粗度値Raとその差、及びStr、及び光沢計を用いて測定されグロスユニットで表される光沢と、CIELab色空間で表現される色が説明される。
【0050】
第1表面1の「1」の仕上げを行う前の、第1表面1の「1」の仕上げを行った後の第1表面1の特性評価結果、及び第3表面2の「2」の仕上げを行う前の、第3表面2の「2」の仕上げを行った後の、第3表面2の特性評価結果も含まれる。
【0051】
【表1】
【0052】
パレメータS(Sa、Sdr、Sq、・・・)は、ISO標準規格25178から取られ、フィルタがかけられていないことを注記する。パラメータR(Ra、Rp、Rz、・・・)は、ISO標準規格4287から取られ、カットオフが0.25mmに設定されたガウシアンフィルタでフィルタがかけられている。より具体的には、粗度の分析のために選択されたパラメータは、
1)顆粒表面の場合
a. 粗度の平均高さ(算術)を表すパラメータRa(ISO 4287)、
b. 表面の等方性の度合いを表すパラメータStr(ISO 25178)。当該パラメータの値は0から1までの間であり、0に近いほど表面が好ましい方向を含むことを表し、1に近いほど観察された全ての方向が同一であることを表す。
2) 平滑表面の場合、粗度の平均高さ(算術)を表すパラメータRaのみが用いられる。
【0053】
パラメータの技術的定義のため、これらパラメータは、特定の測定条件下で判断される。
1)顆粒表面の場合
a. パラメータRa: 2nmの最低垂直解像度と0.26μmの水平解像度を有する測定装置を用いることが必要である。選択したISO標準規格4287のカットオフ(λc)は、0.25mmであり、これは1.4mm程度の評価長さを意味する。測定は、1000を超えるプロファイル数に対して実施される。もたらされたパラメータの値は、全プロファイルの平均に対応する。
b. パラメータStr: 最低2nmの垂直解像度と0.26μmの水平解像度を有する測定装置を用いることが必要である。測定は同数の行と列(>1000)を有する5つの四角の区域に行われる。多項式形(4ほど)の抑制と閾値化(0.5%から99.5%の間)が測定に実施される。もたらされた値は、5回の測定の平均に対応する。
2)平滑表面の場合、パラメータRaの計算は、最低0.2nmの垂直解像度と0.26μmの水平解像度を有する測定装置を用いることが必要である。選択したISO標準規格4287のカットオフ(λc)は0.25mmであり、これは1.4mm程度の評価長さを意味する。測定は1000を超えるプロファイル数に対して実施される。もたらされたパラメータの値は全プロファイルの平均に対応する。
【0054】
図4は、製造された小型時計部品10の、第1表面と凹部の第3表面2との間の境界面の水準で上から見た写真を示す。上から見ると、第1表面1と第3表面2、及び縁4の位置を観察することが可能である。接続表面は見えない。第1表面1は艶消しセラミックの形状であり、第3表面2は、PVD被覆で被覆されたサンドブラスティングセラミックの形状である。
【0055】
図5は、図4で示す境界線の水準での粗度の線形プロファイルを示す。図5は、第3表面2、または凹部の底と、第1表面1との間の粗度の差を証明することを可能にする。
【0056】
第2説明的実施形態において、セラミック製、より具体的にはイットリア化ジルコニア製の小型時計部品10は、装飾プレートである。部品は、それぞれが底を形成する第3表面2と第1表面1との間の接続を保証する、垂直または実質的に垂直な接続の表面を含む、第1表面1の第2窪み表面を形成するニッチの形状の凹部が設けられる、第1平面表面1を示す。研磨は、第1段階の最後に、第1表面1と第3表面2に適用される。その後、第1実施例で説明したのと同様のトライボ仕上げの第2段階が適用される。
ナノメートルで表される粗度Raの測定とその差は、光沢計を用いて測定され、グロスユニットで表される光沢と、CIELab色空間で表現される色と並び、以下の表でより詳細に説明される。
【0057】
【表2】
【0058】
説明した仕上げ方法を用いた表面状態の変動は色の変化が伴ってもよい。例えば、黒色のセラミックは濃灰色になってもよく、緑色のセラミックは濃緑色になってもよい。
【0059】
図6は、製造された小型時計部品10の、第1表面1と凹部の第3表面2との間の境界面の水準での一部の写真である。上から見ると、第1表面1と凹部の第3表面2、及び縁4の位置を観察することが可能である。接続表面は見えない。第1表面1は艶消しセラミックの形状であり、第3表面2は研磨セラミックの形状である。
【0060】
図7は、図6で示す境界線の水準での粗度の線形プロファイルを示す。図7は、凹部の底を形成する第3研磨表面2と、第1艶消し表面1との間の粗度の差を証明することを可能にする。
【0061】
最後に、本発明は、異なる表面状態を簡単に得ることが可能であることが認識でき、これには第1の均一終了表面1と、凹部の底を形成する研磨されたまたは粗い第3表面2
が含まれる。
【0062】
本発明はまた、上記で説明した方法で製造された小型時計部品10それ自身に関する。当該小型時計部品10は、例えば、ベゼル、ベゼルインサート、仕上げ要素、ケース、裏蓋、ケース胴、文字盤、ブレスレットのリンク、または装飾プレートであってもよい。同様に、当該部品は、例えばカレンダー日付ディスクといったムーブメントの部品であってもよい。
【0063】
このように、小型時計部品10は、第1表面1から窪んで配置される少なくとも1つの第2表面を形成する少なくとも1つの凹部が配置される、第1表面1を含む。当該少なくとも1つの第2表面は、例えば、凹部の底面を形成する第3表面2と、第1表面1と第3表面2との間に位置する接続表面を含む。第1表面1は、媒体及びまたは研磨剤が凹部の方向に発動されるときに凹部を保護する必要がなく、仕上げにより製造された第1表面状態を示し、当該第1表面状態は、少なくとも1つの凹部のすくなくとも一部分の第2表面状態と異なる。
【0064】
小型時計部品10は、トライボ仕上げにより均一に艶消し化された第1表面と、研磨されたまたは粗い凹部を含んでもよい。
加えて、部品は、
- 同一または異なる形状の、複数の凹部、及びまたは
- 異なる表面状態の、複数の凹部、
を含んでもよい。
【0065】
加えて、
- 部品の第1表面1は艶消しでもよく、または艶消しと光沢区域を有してもよい、及びまたは
- 凹部の表面は、被覆を含んでもよい、及びまたは
- 第1表面1の粗度は、凹部の少なくとも一部分の粗度よりも低くてもよい、または第1表面1の粗度は、凹部の粗度よりも高くてもよい、及びまたは
- 第1表面1の粗度は、例えば100nmから10μm(粗度Ra)の間の、または100nmから800nmの間の、均質且つ等方性であってもよい。
【0066】
本発明はまた、時計それ自体、より具体的には小型時計、より具体的には腕時計に関する。
【0067】
もちろん、提案した仕上げプロセスは、粗くても調整されていても、あらゆるタイプの初期表面状態に適用することができる。例として、これら表面状態は、以下の1つを含む、指向性のタイプでもよい。
- サテン仕上げ、ブラシ仕上げ、
- 円形砂目立て、
- スネイル仕上げ、
- 異なる種類の円形砂目立て:ウイユ ド ペリドリ(ヤマウズラの目パターン)、スポッティング、...
- サンレイ仕上げ。
他の実施例によれば、これら表面状態は、他方では等方性タイプであってもよい。これらのいくつかは、研磨のように最大化された鏡面反射を提案し、または以下の1つを含む、最小化された鏡面反射を提案する。
- マイクロビーズブラスティング、
- 砂目立て、
- サンドブラスティング、
- ショットブラスティング。
【0068】
例えば、ベゼルインサートは、本発明の一実施形態に従い製造された小型時計部品10である。当該ベゼルインサートは、例えば少なくとも1つの研磨区域6と少なくとも1つの艶消し区域7を含む、バイカラーの主表面5を含む。当該結果を得るためには、研磨されたディスクは、トライボ仕上げ(この場合、研磨された表面状態からの艶消し化)の第2段階の間、区域6がマスクで(例えば、金属製の堅固なマスクで)保護されてもよい。凹部20は、例えば丸い表示を、ベゼルインサートの周囲の周りに形成する。これら凹部は、所定の、明瞭且つ判読可能な色を示すことを可能にする、被覆を有する。これら凹部の表面状態は、ベゼルインサートの主表面5の少なくとも1つの艶消し区域または少なくとも1つの光沢区域の中の凹部の位置に係らず、同一である。
【0069】
全ての場合において、仕上げ段階は、関連する表面に凹部が存在する中で、すなわち仕上げ段階で処理される第1表面に窪みレリーフが存在する中で、実施されることを注記する。このため、凹部内に製造される被覆の場合においても、当該被覆は厚さが薄く、表面に窪みレリーフを形成する凹部が必ず維持されるように、凹部の高さ全てを占有しない。凹部は、仕上げ段階の開始前から存在し、仕上げ段階後にも存在する。
このため、当該仕上げ段階は、レリーフのない、そして凹部のない、小型時計部品の連続する表面を形成するために、素材の余剰を除去する研磨と比較されてはならないことを注記する。実際、そのような場合には、意図した物体と異なり、最終部品がもはや凹部を有さない、すなわち窪みレリーフを有さないだけでなく、そのような研磨により表面の全部が不可避的に同一の態様で処理されるため、表面状態そのものも連続する。
【0070】
全ての実施形態において、凹部は、第1表面に配置された窪みレリーフ部分からなる。凹部表面、つまり第2表面は、当該第1表面側に向く、上部表面と理解される。第2表面は、凹部が窪みレリーフを形成し、少なくとも第2仕上げ段階の実行時には、部品の外側に向かって他の素材で被覆されないため、当該第1表面より低い水準に位置される。当該第2仕上げ段階中、少なくとも一部、好ましくはより大きな深さの一部は変わらない表面状態を維持する。
【0071】
もちろん、上述したいくつかの実施形態と変形例を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 第1表面
2 第3表面
3 接続表面
10 小型時計部品
20 凹部
21 第2凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7