(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】設計システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240418BHJP
E04B 2/88 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G06F30/13
E04B2/88 ESW
(21)【出願番号】P 2019180213
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】森井 正人
(72)【発明者】
【氏名】北村 光二
(72)【発明者】
【氏名】浜口 真奈
(72)【発明者】
【氏名】飛延 克秀
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-242203(JP,A)
【文献】特開2005-332281(JP,A)
【文献】特開2016-015083(JP,A)
【文献】特開2014-066088(JP,A)
【文献】特開2002-117095(JP,A)
【文献】特開平08-180082(JP,A)
【文献】特開平09-225780(JP,A)
【文献】特開平11-149495(JP,A)
【文献】特開2003-271675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
E04B 2/00 -2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の一般図に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記一般図に記載された図面情報に基づいて、前記建物の外皮部品を設計する設計部と、
を具備し、
前記取得部は、
建物に関する基本情報を取得し、
前記設計部は、
前記図面情報及び前記基本情報に基づいて、前記外皮部品を設計するものであり、
前記外皮部品の基準となる形状の一部を、前記図面情報及び/又は前記基本情報に基づいて決定された前記外皮部品の部分形状に置換することで、前記外皮部品を設計し、
設計された前記外皮部品の形状に関する3次元データを作成すると共に、前記3次元データに前記図面情報に基づく2次元データを紐付けて保存する、
設計システム。
【請求項2】
前記一般図は、
立面図及び平面図を含む、
請求項
1に記載の設計システム。
【請求項3】
前記外皮部品は、
前記建物の外壁パネルである、
請求項1又は請求項2に記載の設計システム。
【請求項4】
前記外皮部品は、
コーナーパネルである、
請求項3に記載の設計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の設計システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の設計システムに関連する技術として、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、多数の構造部材に関する情報を格納する格納部と、設計者の入力情報に基づいて選択された構造部材を、作業空間における所定の位置に配置するモデリング部と、を具備する設計システムが開示されている。また、当該モデリング部は、一の構造部材と他の構造部材との間の接合可能性を判定し、接合可能と判定した場合には、当該接合部分を三次元画像上で色を分けて表示する。このように、特許文献1に記載の技術では、設計者が構造部材の納まり(接合可能性)を確認しながら、構造部材を配置することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、まず設計者自らが建物を構成する部材(特許文献1に記載の例では、構造部材)を選択する必要があり、当該選択に設計者の専門的な判断が必要になるため、作業効率が悪い点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、建物を構成する部材を効率的に設計することが可能な設計システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、建物の一般図に関する情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記一般図に記載された図面情報に基づいて、前記建物の外皮部品を設計する設計部と、を具備し、前記取得部は、建物に関する基本情報を取得し、前記設計部は、前記図面情報及び前記基本情報に基づいて、前記外皮部品を設計するものであり、前記外皮部品の基準となる形状の一部を、前記図面情報及び/又は前記基本情報に基づいて決定された前記外皮部品の部分形状に置換することで、前記外皮部品を設計し、設計された前記外皮部品の形状に関する3次元データを作成すると共に、前記3次元データに前記図面情報に基づく2次元データを紐付けて保存するものである。
【0011】
また、前記一般図は、立面図及び平面図を含んでもよい。
このような構成により、建物を構成する部材を効率的に設計することができる。
【0012】
また、前記外皮部品は、前記建物の外壁パネルである。
このような構成により、外壁パネルを効率的に設計することができる。
【0013】
また、前記外皮部品は、コーナーパネルである。
このような構成により、コーナーパネルを効率的に設計することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、建物を構成する部材を効率的に設計することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る設計システムの構成を示したブロック図。
【
図2】設計システムによる設計方法を示したフローチャート。
【
図5】建物に関する情報を分類したものの一例を示した図。
【
図6】コーナーパネルの構成の決定方法を示したフローチャート。
【
図8】定尺のコーナーパネルの一例を示した斜視図。
【
図10】定尺の面材の上部・下部を置換する様子を示した図。
【
図11】建物に応じたコーナーパネルの上部形状の一例を示した斜視図。
【
図12】フレーム等と合わせて寸法を表示した例を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、
図1を用いて、本実施形態に係る設計システム100の概要について説明する。
【0017】
設計システム100は、建物を設計するためのものであり、特に、建物の室内空間と外部空間とを仕切る外皮部品を設計するためのものである。なお、外皮部品とは、建物の構造耐力を負担しない部材である。また外皮部品とは、建物の外郭から領域分割が可能な部材である。本実施形態に係る設計システム100は、一例として、外壁パネル(特に、コーナー部分に用いられるコーナーパネル)を設計するものとする。
【0018】
本実施形態に係る設計システム100は、主として入力装置10、表示装置20及び制御装置30を具備する。
【0019】
入力装置10は、種々の情報を制御装置30に入力するためのものである。入力装置10は、作業者(設計者)が操作可能な端末により構成される。例えば、入力装置10として、キーボード、タッチパネル、スキャナ等を用いることができる。
【0020】
表示装置20は、制御装置30から受け取った種々の情報(文字や図面等)を表示するためのものである。例えば、表示装置20として、液晶モニター、タッチパネル等を用いることができる。
【0021】
制御装置30は、種々の情報に基づいて、各種の演算や記憶等を行うものである。制御装置30は、RAM、ROM、HDD等の記憶部、及びCPU等により構成される。例えば、制御装置30として、パソコン等を用いることができる。制御装置30は入力装置10に接続され、当該入力装置10を介して入力される情報を取得することができる。制御装置30は表示装置20に接続され、各種の情報を表示装置20に表示させることができる。
【0022】
以下では、設計システム100の動作(設計システム100を用いたコーナーパネルの設計方法)について説明する。設計システム100は、建物の外郭に関する情報(外郭形状等)から、外皮部品(コーナーパネル)を自動的に設計することができる。以下、具体的に説明する。
【0023】
図2のステップS101において、制御装置30は、事前に行われた企画設計に関する情報を取得する。本実施形態においては、企画設計に関する情報として、設計の対象となる建物の一般図(立面図、平面図(平面プラン図)及び仕様書)に関する情報を用いるものとする。
図3及び
図4には、当該建物の立面図及び平面図の一例をそれぞれ示している。
図4に示す平面図は、
図3に示す建物の3階部分に相当する。なお、
図3及び
図4は建物の立面図及び平面図の一部であり、制御装置30は、その他の方向から見た立面図や、他の階の平面図等に関する情報も取得する。
【0024】
なお、本実施形態に係る設計システム100は、建物の外郭形状等から外皮部品を設計するものであるため、当該設計のために建物の柱や梁等の構造部材(建物の構造耐力を発揮する部材)に関する情報は必ずしも必要ではない。すなわち、ステップS101においては、一般図から得られる情報を取得すればよく、各種の構造をより詳細に記した、いわゆる伏図から得られる詳細な情報までは必ずしも含まれていなくてもよい。
【0025】
ステップS102において、制御装置30は、建物に関する基本情報(建物情報)を取得する。建物情報には、主として建物の工法・商品に関する情報や、防耐火仕様に関する情報が含まれている。建物情報は、設計の対象となる建物の一般図における仕様書等から取得することができる。
【0026】
なお、
図5には、建物(特に、設計の対象となるコーナーパネル)に関する情報を分類したもの(属性分類)の例を示している。当該
図5に示したような情報が、上記ステップS101及びステップS102、並びにその他の方法によって制御装置30に記憶される。
【0027】
例えば
図5に示すように、制御装置30は、ステップS102で取得する建物情報から、建物の工法や商品の分類(商品名等)に関する情報である「工法・商品」、建物の防耐火の仕様に関する情報である「防耐火仕様」等を取得する。
【0028】
また制御装置30は、ステップS101で取得する一般図から、設計の対象となるコーナーパネルの水平断面の形状に関する情報である「水平断面」、コーナーパネルの部位に関する情報である「部位」、コーナーパネルの配置階数に関する情報である「配置階数」、コーナーパネルの高さに関する情報である「高さ」、コーナーパネルの面材仕様に関する情報である「面材仕様」、コーナーパネルの上部及び下部の形状に関する情報である「上部・下部形状」、コーナーパネルの面材の中途部の形状に関する情報である「中間形状」等を取得する。
【0029】
また制御装置30には、各種部材の標準的(原則的)な締結材や取合孔等に関する情報である「締結関連」が、予め記憶されている。
【0030】
図2のステップS103において、制御装置30は、ステップS101及びステップS102において取得した情報から、建物の外郭(外観)の3次元データを作成する。具体的には、制御装置30は、3次元座標上に、ステップS101において取得した建物の外郭に関する位置情報をプロットし、建物の3次元データを作成する。このように建物の3次元データを作成しておくことで、適宜のソフトウェアを用いて建物の3次元イメージを表示させる(閲覧する)ことができ、建物の外郭形状の把握等を容易に行うことができる。
【0031】
ステップS104において、制御装置30は、コーナーパネルの設計を行う。制御装置30は、ステップS101において取得した一般図、及びステップS102において取得した建物情報等に基づいて、コーナーパネルの具体的な構成(形状等)を決定する。以下、具体的に説明する。
【0032】
図6のステップS201において、制御装置30は、ステップS102で取得した仕様書等の情報(建物情報)に基づいて、「防耐火仕様」を決定する。具体的には、制御装置30は、ステップS102で取得した情報である「防耐火仕様」に基づいて、設計の対象となる建物の仕様が、予め想定される複数の仕様(「耐火仕様」、「ロ準耐火仕様」、「イ準耐火仕様」、「防火仕様」等)のうち、どの仕様に該当するかを判断し、「防耐火仕様」を決定する。
【0033】
ステップS202において、制御装置30は、ステップS101で取得した一般図(特に、平面図)に基づいて、コーナーパネルの「水平断面」を決定する。具体的には、制御装置30は、ステップS101で取得した平面図を参酌することにより、設計の対象となるコーナーパネル(例えば、
図3及び
図4のA部分のコーナーパネル)の水平断面形状が、予め想定される複数の形状(2つの辺の長さが等しい(等辺の)L字状、一方の辺の長さが他方の辺の長さより所定値だけ長い(不等辺の)L字状等)のうち、どの形状に該当するかを判断し、「水平断面」を決定する。
【0034】
ステップS203において、制御装置30は、ステップS101で取得した一般図(特に、立面図)に基づいて、コーナーパネルの「部位」・「配置階数」・「高さ」を決定する。具体的には、制御装置30は、ステップS101で取得した立面図を参酌することにより、設計の対象となるコーナーパネル(例えば、
図3及び
図4のA部分のコーナーパネル)の部位が、予め想定される複数の部位(外壁、腰壁、イラカ等)のうち、どの部位に該当するかを判断し、「部位」を決定する。
【0035】
また制御装置30は、ステップS101で取得した立面図を参酌することにより、設計の対象となるコーナーパネルの配置階数(例えば、
図3及び
図4に示すコーナーパネルの場合、3階)を判断し、「配置階数」を決定する。
【0036】
また制御装置30は、ステップS101で取得した立面図を参酌することにより、設計の対象となるコーナーパネルの高さ(例えば、2400mm、2700mm等)を判断し、「高さ」を決定する。
【0037】
ステップS204において、制御装置30は、ステップS101で取得した一般図(特に、平面図)等に基づいて、コーナーパネルの「上部・下部形状」を決定する。具体的には、制御装置30は、ステップS101で取得した一般図(平面図等)や、ステップS102で取得した建物情報(商品等)を参酌することにより、設計の対象となるコーナーパネル(より詳細には、コーナーパネルを構成する面材等の各種部材)の上部及び下部の形状が決定される。
【0038】
コーナーパネルの上部及び下部の形状のパターンは、商品等に応じて予め定められている。例えば、ある商品については、コーナーパネルの上部に適用される可能性がある形状として、予め41パターンの形状が定められている。当該コーナーパネルの上部の形状を決定する場合には、当該41パターンの形状の中から1つの形状が選択されて適用される。また当該商品については、コーナーパネルの下部に適用される可能性がある形状として、予め16パターンの形状が定められている。当該コーナーパネルの下部の形状を決定する場合には、当該16パターンの形状の中から1つの形状が選択されて適用される。
【0039】
コーナーパネルの上部及び下部の形状を選択する際には、当該コーナーパネルと接続する部材が考慮される。例えば、「コーナーパネルに対してランマ(ランマパネル)が接続している」、「コーナーパネルに対してバルコニーの腰壁パネルが接続している」、等の情報を考慮し、当該接続に応じた上部及び下部の形状が選択される。また必要に応じて、その他の情報(例えば、前述の「水平断面」、「部位」、「高さ」等)を考慮して、上部及び下部の形状が選択される。
【0040】
なお、上述のようにコーナーパネルと接続する部材を考慮する場合には、当該接続部分の形状等の属性を示す識別記号(数字やアルファベット等の組合せ)が用いられる。制御装置は、当該識別記号に基づいて接続部分の特徴を把握し、上部及び下部の形状を選択することができる。また、コーナーパネルの上部・下部形状についても、適宜の識別記号を用いて管理することが可能である。
【0041】
ステップS205において、制御装置30は、原則的に定められている「締結関連」の情報に従って、コーナーパネルに用いられる締結材や取合等を決定する。具体的には、制御装置30は、ステップS102で取得した建物情報(商品名等)に基づいて、当該商品に適用される「締結関連」の情報を参酌し、当該情報に従ってコーナーパネルに用いられる締結材等を決定する。
【0042】
なお、
図7には、「締結関連」の情報の例を示している。
図7に示すように、「締結関連」の情報として、用途、仕様(締結材の品番等)、使用部位(互いに固定される部材名)、ピッチ等が、商品ごとに定められている。
【0043】
ステップS206において、制御装置30は、上記ステップS201~ステップS205で決定された事項を融合し、コーナーパネルの形状を決定する。以下、当該処理について具体的に説明する。
【0044】
図8及び
図9には、コーナーパネルの一例(以下、コーナーパネル1とする)を示している。コーナーパネル1は、上下に長い長尺状に形成される。
図9に断面で示すように、コーナーパネル1は複数の部材が層になるように組み合わせられて形成されている。図示したコーナーパネル1は、概ね内側から外側に向かって、フレーム2、グラスウールボード3、ケイカル板4、下地鉄板5及び面材6の順に層となるように組み合わせて形成されている。
【0045】
なお、
図8及び
図9には、設計システム100によって形状が決定される前の、定尺(定型)のコーナーパネル1を示している。定尺(定型)とは、建物に応じた形状が決定される前の形状であり、設計の基準となる形状である。
【0046】
制御装置30は、ステップS201~ステップS205で決定された事項(コーナーパネルの「上部・下部形状」、「高さ」等)に基づいて、定尺のコーナーパネル1(より詳細には、コーナーパネル1を構成する面材6等)の上部と下部の形状を置換する。
【0047】
例えば、
図10には、定尺の面材6(定尺材)から建物に応じた面材6aを決定する様子を示している。
図10に示すように、制御装置30は、ステップS204で決定されたコーナーパネル1(面材6)の「上部・下部形状」等に基づいて、定尺の面材6の上部及び下部を所定の寸法・形状にカットする。さらにカットされた面材6に対して、ステップS204で決定された「上部・下部形状」を配置する。すなわち制御装置30は、面材6の上下両端部の形状を、決定された形状と置換する。これによって、建物に応じた面材6aを決定することができる。また当該面材6aには、「締結関連」の情報や「上部・下部形状」で定められたピッチや寸法に従って、締結用の孔等が設定される。
【0048】
同様に制御装置30は、コーナーパネル1を構成するその他の部材(フレーム2、グラスウールボード3、ケイカル板4及び下地鉄板5)についても、上下両端部の形状を「上部・下部形状」と置換する。このようにして得られた各部材を組み合わせることによって、
図11に示すような建物に応じたコーナーパネル1aの形状が決定される。なお、建物に応じた形状が決定されたコーナーパネル1、フレーム2、グラスウールボード3、ケイカル板4、下地鉄板5及び面材6の符号を、それぞれコーナーパネル1a、フレーム2a、グラスウールボード3a、ケイカル板4a、下地鉄板5a及び面材6aに変更して図示している。
【0049】
図6に示すステップS207において、制御装置30は、ステップS206で決定されたコーナーパネル1aの形状から、当該コーナーパネル1aの3次元データを作成する。具体的には、制御装置30は、3次元座標上に、ステップS206において取得したコーナーパネル1aの形状に関する位置情報をプロットし、コーナーパネル1aの3次元データを作成する。このようにコーナーパネル1aの3次元データを作成しておくことで、適宜のソフトウェアを用いてコーナーパネル1aの3次元イメージを表示させる(閲覧する)ことができ、建物に応じた部材(コーナーパネル1a)の形状の把握等を容易に行うことができる。
【0050】
このようにして、
図2のステップS104における処理(コーナーパネルの構成の決定)が完了する。
【0051】
図2のステップS105において、制御装置30は、ステップS104で決定されたコーナーパネル1aの形状に関するデータ(具体的には、ステップS207で作成したコーナーパネル1aの3次元データ)に、寸法に関するデータを紐付けて保存する。コーナーパネル1aの寸法に関する情報は、ステップS206で決定されたコーナーパネル1aの形状から把握することができる。
【0052】
また本実施形態では、ステップS105において、コーナーパネル1aを構成する各部材(面材6a等)の個々の寸法だけでなく、各部材の相対的な位置関係を示す寸法も保存される。
図12には、コーナーパネル1aを構成するフレーム2a、グラスウールボード3a及びケイカル板4aの個々の寸法(実線)と、各部材の相対的な位置関係を示す寸法(2点鎖線)を表示した例を示している。このように、構成部材間の位置関係を保存することで、工場での各構成部材の組立の際などに、当該寸法を参照しながら組み立てることができる。
【0053】
図2のステップS106において、制御装置30は、ステップS104で決定されたコーナーパネル1aの形状に関するデータ(3次元データ)に、2次元データを紐付けて保存する。具体的には、制御装置30は、詳細な断面寸法等が必要な箇所など、2次元データで把握するほうが好ましい箇所を選定し、3次元データの当該箇所に対して2次元データ(断面図等、2次元の図面データ)を紐付ける。これによって、詳細寸法を確認し易くなり、利便性を向上させることができる。なお、どの部分の2次元データを紐付けて保存するかは、予め設定(指定)しておくことが可能であり、また、制御装置30が部材の配置等を考慮して自動的に選定することも可能である。
【0054】
ステップS107において、制御装置30は、ステップS104で決定されたコーナーパネル1aの形状に関するデータ(3次元データ)に、当該コーナーパネル1aの製作に関する情報(製作要領や手順、単価等)を紐付けて保存する。
【0055】
当該コーナーパネルの製作に関する情報(製作情報)としては、例えば
図13に示すように、面材6a表面のねじの固定に関する仕様(面材表面ねじ固定仕様)、コーナーパネル1aに充填される断熱材の寸法や配置方法(充填断熱材仕様)、裏面固定面材の仮固定の要領(裏面固定面材仮固定要領)、各部に塗布される接着剤の塗布要領(接着剤塗布要領)、シーラーの塗布要領(シーラー塗布要領)、気密性を確保するための気密材の取付要領(気密材取付要領)、アルミ蒸着テープ等の貼り方に関する要領(アルミ蒸着テープ・シート貼り要領)等がある。
【0056】
制御装置30は、例えばステップS205において決定されたコーナーパネル1aの上部・下部形状に応じた製作情報を選択し、当該製作情報をコーナーパネル1aの3次元データに紐付ける。
【0057】
このように、コーナーパネル1aの構造(形状等)に関するデータに、構造だけでなく、製作に関する情報を紐付けることで、コーナーパネル1aを組み立てる際の利便性を向上させることができる。特に、図面では表現できない厚みを有さない(比較的薄い)部材(テープ等)の取付方法や、図面では表現できない製作方法等を、コーナーパネル1aのデータに紐付けられた情報から把握することができるため、利便性を向上させることができる。またこれによって、品質の安定確保、製作作業効率の向上、誤製作の防止等を図ることができる。
【0058】
また、製作に関する情報として、各構成部材やコーナーパネル1a全体の製作単価(コスト)や、各部材の製作単価を紐付けることも可能である。
【0059】
なお、ステップS107においてコーナーパネル1aのデータに紐付けられる種々の情報(製作要領、製作単価等)は、入力装置10等を介して予め制御装置30に入力(保存)されている。但し、コーナーパネル1aの形状を参酌して、制御装置30が製作要領(加工方法等)を推定したり、推定された加工方法等から製作単価を算出したりすることも可能である。制御装置30は、各種の情報から必要な情報を選択し、コーナーパネル1aのデータに紐付けることができる。
【0060】
以上のようにして、設計システム100を用いてコーナーパネル1aを設計することができる。特に本実施形態の設計システム100は、建物の詳細な情報がなくても、建物の外観に関する情報(一般図や3次元データ)からコーナーパネル1aと接続する部材等を考慮して、当該コーナーパネル1aの形状を決定することができる。これによって、設計の初期段階(詳細な情報がない状態)でも、建物の部品の設計を行うことができる。
【0061】
また設計されたコーナーパネル1aは、適宜のソフトウェアを用いて3次元の図面データとして表示装置20等に表示させ、イメージを確認することができる。この際、当該コーナーパネル1aに紐付けられた各種の情報(寸法、2次元データ、製作要領等)を併せて確認することができる。例えば、3次元の図面データの該当箇所をクリックすることで、紐付けられた情報を表示させることができる。これによって、1つのデータ(3次元データ)に各種の情報を集約することができ、図面データの利便性を向上させることができる。
【0062】
特に本実施形態では、各種の情報が紐付けられた3次元データを、各構成部材の外注メーカーや、組立工場に提供することを想定している。このように3次元データに情報を集約してやり取りができるため、構成部材の発注や組立の際の利便性を向上させることができる。さらに本実施形態では、構成部材の形状に関する情報だけでなく、製作に関する情報も集約しているため、さらに利便性を向上させることができる。また、構成部材を階層別に(階毎に)外注メーカーに発注することもできる。
【0063】
以上の如く、本実施形態に係る設計システム100は、
建物の一般図に関する情報を取得する取得部(制御装置30、ステップS101)と、
前記取得部により取得された前記一般図に記載された図面情報に基づいて、前記建物の外皮部品(コーナーパネル1a)を設計する設計部(制御装置30、ステップS104)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、建物を構成する部材を効率的に設計することができる。すなわち、取得部で取得された情報に基づいて外皮部品の設計をすることができるため、設計者自らが部材の選択等をする必要がなく、効率的に設計を行うことができる。
【0064】
また、前記取得部は、
建物に関する基本情報を取得し(ステップS102)、
前記設計部は、
前記図面情報及び前記基本情報に基づいて、前記外皮部品を設計する(ステップS104)ものである。
このように構成することにより、建物を構成する部材をより適切に設計することができる。すなわち、図面情報に加えて基本情報を考慮することにより、より適切な設計が可能となる。
【0065】
また、前記設計部(制御装置30)は、
前記外皮部品の基準となる形状(定尺)の一部を、前記図面情報及び/又は前記基本情報に基づいて決定された前記外皮部品の部分形状(上部・下部形状)に置換することで、前記外皮部品を設計する(ステップS206)ものである。
このように構成することにより、建物を構成する部材を効率的に設計することができる。すなわち、基準となる形状の一部のみを置換することで、設計負担の増大を抑えることができ、ひいては効率的に設計を行うことができる。また、外皮部品全体を1つのモデル(上部と下部の組合せ)として捉えるのではなく、上部、下部をそれぞれモデルとして捉えることで、モデルの総数を削減することができる。例えば、上部形状が41種類、下部形状が16種類として、上部と下部の組合せを1つのモデルとして捉えると、総モデル数は41×16=656種類となる。これに対し、上部と下部をそれぞれモデルとして捉えると、総モデル数は41+16=57種類となり、モデル数を大幅に削減できることが分かる。
【0066】
また、前記一般図は、
立面図及び平面図を含むものである。
このように構成することにより、建物を構成する部材を効率的に設計することができる。すなわち、建物全体の設計の初期段階で入手可能な立面図及び平面図を用いて設計が可能となるため、効率的に設計を行うことができる。
【0067】
また、前記外皮部品は、
前記建物の外壁パネルである。
このように構成することにより、外壁パネルを効率的に設計することができる。特に、外皮部品の中でも、外壁パネルは積層構造となることが多く、構造がより複雑化するため、設計システム100をこのような複雑な構造の部品に適用することで、より設計の効率化を図ることができる。
【0068】
また、前記外皮部品は、
コーナーパネル1aである。
このように構成することにより、コーナーパネル1aを効率的に設計することができる。特に、外壁パネルの中でも、コーナーパネル1aは構造がより複雑化するため、設計システム100をこのような複雑な構造の部品に適用することで、より設計の効率化を図ることができる。
【0069】
以上の如く、本実施形態に係る設計システム100は、
建物に関する建物情報を取得する第一取得部(制御装置30、ステップS101、ステップS102)と、
前記第一取得部により取得された情報に基づいて、前記建物の部品を設計する設計部(制御装置30、ステップS104)と、
前記部品の製作に関する製作情報を取得する第二取得部(制御装置30、ステップS107)と、
前記設計部により設計された前記部品の情報に、前記製作情報を紐付ける紐付け部(制御装置30、ステップS107)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、利便性を向上させることができる。すなわち、設計された部品の情報(特に形状等に関する情報)に、製作情報を紐付けることで、各種の情報を集約することができ、利便性を向上させることができる。
【0070】
また、前記設計部は、
前記部品の基準となる形状の一部を、前記建物情報に基づいて決定された前記部品の部分形状に置換することで、前記部品を設計し(ステップS206)、
前記紐付け部は、
前記部分形状に応じた前記製作情報を紐付ける(ステップS107)ものである。
このように構成することにより、適切な製作情報を紐付けることができる。すなわち、設計した部品に応じた適切な情報を紐付けることができる。
【0071】
また、前記部品は、
前記建物の外皮部品である。
このように構成することにより、外皮部品の情報の利便性を向上させることができる。特に、躯体部品とは異なり、外皮部品は構造がより複雑化するため、設計システム100をこのような複雑な構造の部品に適用することで、より利便性が向上する。
【0072】
また、前記外皮部品は、
前記建物の外壁パネルである。
このように構成することにより、外壁パネルの情報の利便性を向上させることができる。特に、外皮部品の中でも、外壁パネルは積層構造となることが多く、構造がより複雑化するため、設計システム100をこのような複雑な構造の部品に適用することで、より利便性が向上する。
【0073】
また、前記外皮部品は、
コーナーパネル1aである。
このように構成することにより、コーナーパネル1aの情報の利便性を向上させることができる。特に、外壁パネルの中でも、コーナーパネル1aは構造がより複雑化するため、設計システム100をこのような複雑な構造の部品に適用することで、より利便性が向上する。
【0074】
なお、本実施形態に係る制御装置30は、取得部、設計部の実施の一形態である。
なお、本実施形態に係る制御装置30は、第一取得部、第二取得部、設計部、紐付け部の実施の一形態である。
【0075】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0076】
例えば、本実施形態において、設計システム100は建物や設計した部品(コーナーパネル1a)の3次元データを作成したが(ステップS103、ステップS207)、必ずしも3次元データを作成する必要はない。例えば2次元でのデータで建物やコーナーパネル1a等を管理することも可能である。
【0077】
また、本実施形態においては、設計システム100は外皮部品としてコーナーパネルを設計するものとして説明したが、本発明はこれに限るものではなく、建物の種々の外皮部品を設計することが可能である。例えば、軒、屋根、庇等を構成する部材の設計に適用することも可能である。
【0078】
また、設計システム100の設計の対象となる建物は限定するものではなく、戸建住宅、集合住宅、商用施設等、種々の建物を対象とすることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 設計システム
10 入力装置
20 表示装置
30 制御装置