(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】伝熱二重管、伝熱二重管用内管及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 7/10 20060101AFI20240418BHJP
F28F 1/06 20060101ALI20240418BHJP
F28F 9/013 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
F28D7/10 A
F28F1/06
F28F9/013 E
(21)【出願番号】P 2019192827
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(73)【特許権者】
【識別番号】510132510
【氏名又は名称】株式会社UACJ押出加工
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片平 史郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓郎
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-037690(JP,A)
【文献】特開2004-190923(JP,A)
【文献】特開平10-078268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/10
F28F 1/06,1/42
B21D 15/00-15/12
B21H 3/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管の内部に配置された内管の内側を流れる流体と、上記内管と上記外管の間を流れる流体との間の熱交換を行うための伝熱二重管に用いる上記内管であって、
該内管は、
長手方向に直交する断面である横断面の断面形状が異なる第1領域及び第2領域を有しており、
上記第1領域は、
当該第1領域の全長にわたり上記横断面の断面形状が実質的に同じであり、上記横断面において外方に突出する第1凸部を複数箇所有し、かつ、上記第1凸部の位置が長手方向において螺旋状に変位し
て連続的に螺旋状に上記第1凸部が連なる第1凹凸形状を有し、
上記第2領域は、
当該第2領域の全長にわたり上記横断面の断面形状が実質的に同じであり、上記横断面において外方に突出する第2凸部を複数箇所有すると共に該第2凸部の数が上記第1凸部の数よりも多く、かつ、上記第2凸部の位置が長手方向において螺旋状に変位し
て連続的に螺旋状に上記第2凸部が連なる第2凹凸形状を有している、
伝熱二重管用内管。
【請求項2】
上記内管の長手方向における少なくとも一部には、断面形状が円形状の平滑管形状である第3領域をさらに有している、請求項1に記載の伝熱二重管用内管。
【請求項3】
上記第1凸部の数は、
上記横断面において2~10個である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の伝熱二重管用内管。
【請求項4】
上記第1凸部の数は、
上記横断面において上記第2凸部の数の半分以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の伝熱二重管用内管。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の伝熱二重管用内管と、その外方に配設された外管とからなる、伝熱二重管。
【請求項6】
上記外管は、断面形状が円形状の平滑管形状である、請求項5項に記載の伝熱二重管。
【請求項7】
上記伝熱二重管は、曲げ加工により曲げられた曲げ予定部と、曲げ加工を施されることなく直線状で使用される直線部とを有しており、上記曲げ予定部には上記第1領域が配置され、上記直線部には上記第2領域が配置されている、請求項5又は6に記載の伝熱二重管。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の伝熱二重管用内管を製造する方法であって、
断面形状が円形状の平滑管形状を有する内管素管を準備し、
上記内管素管の外周面に対向して周方向に間隙をあけて配置された複数の押圧ディスクを有し、該押圧ディスクは、円盤形状を有すると共にその外周に押圧面を有し、該押圧面を上記内管素管の外周面に当接させた状態で上記内管素管の移動に伴って回転可能に設けられており、上記押圧面の幅方向中心位置の回転軌跡を含む回転平面が、当該回転平面と平行な方向から見て、上記内管素管の軸心から傾いた斜め方向に配置された、内管成形装置を用い、
上記各押圧ディスクの上記押圧面を上記内管素管の外周面に押し当てた状態で、上記押圧ディスクに対して上記内管素管を軸方向に相対的に前進させることにより、上記内管素管の断面形状を変形させ、
上記各押圧ディスクの押し当て状態を変化させることにより、上記第1凹凸形状と上記第2凹凸形状とを得る、
伝熱二重管用内管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用空調装置などの熱交換サイクルに適用可能な伝熱二重管に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置などの熱交換サイクル(冷凍サイクルともいう)は、凝縮器、蒸発器、圧縮機及び膨張弁を備え、これらを連結する循環経路に、フロン、CO2、アンモニア、その他の冷媒を循環させるシステムである。かかる熱交換サイクルにおいて、循環経路中に二重管を配置し、当該二重管によって構成される二層の空間に、凝縮器から出てくる高温冷媒と、蒸発器から出てくる低温冷媒とを対向して流して熱交換することにより、熱交換性能を向上させることが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
一方、熱交換サイクルにおいて使用される冷媒としては、環境問題に対応するために、より地球温暖化係数の低い冷媒が検討されている。これらの環境問題を考慮した冷媒は、現行の冷媒に比べ熱交換性能が低下することが懸念されている。このため、熱交換サイクル全体の性能劣化を抑制するためには、上記の二重管を組み込むことにより熱交換性能をより向上させた構成を積極的に採用することが有効である。
【0004】
蒸発器から排出された気体冷媒を圧縮機で圧縮するシステムにおいては、冷媒が十分に気化しきれない状態、つまり、気体に液体が混入している状態で圧縮機に流入した場合、十分な熱交換ができないという不具合が生じうる。しかし、この不具合は、上記二重管を組み込むことによって解消することができる。上記二重管において、圧縮機に流入させる前の冷媒を加熱することができ、冷媒を十分に気化させることができるからである。これまで提案された二重管としては、その内管として、熱交換性能を向上させるためにねじり管がよく用いられる(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-318015号公報
【文献】特開2006-162241号公報
【文献】特開2013-113525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、熱交換サイクルに二重管構造を用いることが示され、かつ、内管の外周面または前記外管の内周面に螺旋状の溝部が形成されていることが示されているものの、それ以上の具体的な二重管の構造に関してはほとんど開示がなされていない。また、特許文献1の二重管は、直線状の直管材の構成が前提とされており、自動車用空調機などにおける曲げ加工が必要な部位での適用は想定されていない。
【0007】
特許文献2は、らせん状に溝部を形成した内管と平滑外管を組み合わせたものであって、内管の外径よりも外管の内径を大きくしたものである。そして、外管と内管とが曲げられた曲げ部では、内管の峰部が外管の内壁に接触して、内管が外管より径方向に締め付けられて保持されている。つまり、この構造では、曲げ部において流路面積の狭小化が生じてしまい、流路の流れが悪くなることにより、圧損が増加すると共に当該流路の熱効率が低下するという問題がある。
【0008】
特許文献3は、曲げ部分における内管を凹凸のない直状の素管とし、曲げ部以外では内管にらせん状の凹凸部を設けた構成が示されている。しかしながら、実際にこの構成を採用した場合、曲げ部においては内管に凹凸がないために適度な乱流を起こしにくいこと、及び曲げ加工によって内管が外管の内部において一方に偏った状態に配置されやすいこと、等により、曲げ部の熱交換性能が直線部に比べて低下するおそれがある。そのため、曲げ部を設けた場合であっても、さらに総合的な熱交換性能を向上させることができる伝熱二重管の開発が望まれていた。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであって、曲げ部を設けた場合であっても、従来よりも総合的な熱交換性能を向上させることができる伝熱二重管、伝熱二重管用内管及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、外管の内部に配置された内管の内側を流れる流体と、上記内管と上記外管の間を流れる流体との間の熱交換を行うための伝熱二重管に用いる上記内管であって、
該内管は、長手方向に直交する断面である横断面の断面形状が異なる第1領域及び第2領域を有しており、
上記第1領域は、当該第1領域の全長にわたり上記横断面の断面形状が実質的に同じであり、上記横断面において外方に突出する第1凸部を複数箇所有し、かつ、上記第1凸部の位置が長手方向において螺旋状に変位して連続的に螺旋状に上記第1凸部が連なる第1凹凸形状を有し、
上記第2領域は、当該第2領域の全長にわたり上記横断面の断面形状が実質的に同じであり、上記横断面において外方に突出する第2凸部を複数箇所有すると共に該第2凸部の数が上記第1凸部の数よりも多く、かつ、上記第2凸部の位置が長手方向において螺旋状に変位して連続的に螺旋状に上記第2凸部が連なる第2凹凸形状を有している、
伝熱二重管用内管にある。
【発明の効果】
【0011】
上記伝熱二重管用内管(以下、適宜、単に「内管」という。)は、凸部の数が異なる領域として第1領域と第2領域とを少なくとも備えている。そして、第1領域に設けられた凸部(第1凸部)の数は、第2領域の設けられた凸部(第2凸部)の数の方よりも少ない。そのため、外管と組み合わせた二重管状態において曲げ加工を行う場合、凸部の数が少ない第1領域の部分の方が、第2領域の部分よりも、曲げ加工に伴う流路面積の狭小化や圧力損失の増加が起こりにくい。
【0012】
また、第1領域には複数の凸部が備わっているので、内管の内部及び内管と外管との間の流路において、適度な乱流を起こすことができる。そのため、平滑管を内管に設ける場合よりも、第1領域の部分を用いた方が熱交換性能の低下は抑制することができる。そのため、たとえば、第1領域の部分を曲げ部の少なくとも一部に適用することにより、その曲げ部における流路面積の狭小化を抑制し、かつ、曲げ部の熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0013】
また、第2領域は、第1領域よりも凸部の数が多い。そのため、たとえば直線部等においては、曲げ加工により変形等を考慮する必要がないため、最適な凸部数を選択して設計上最良の熱交換性能を目指すことができる。
【0014】
このように、上記内管は、凹凸形状の部分を1種類だけでなく、少なくとも2種類の異なる形状の部分である、上記第1領域及び第2領域を長手方向にそれぞれ備えている。そのため、このような構造の内管と、別途準備した外管とを組み合わせた二重管は、最終的に加工される形状に合わせて、第1領域及び第2領域を所望の位置に配置することにより、従来よりも曲げ加工対応性や部分的な熱交換性能の向上を目指すことができ、結果的に総合的な熱交換性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1における、伝熱二重管用内管の第1領域及び第2領域の配置を示す説明図。
【
図2】実施例1における、第1領域の横断面形状を示す説明図(
図1におけるA-A線矢視断面図)。
【
図3】実施例1における、第1領域の外観を示す図面代用写真。
【
図4】実施例1における、第2領域の横断面形状を示す説明図(
図1におけるB-B線矢視断面図)。
【
図5】実施例1における、第2領域の外観を示す図面代用写真。
【
図6】実施例1における、内管と外管とを組み合わせた二重管にける第1領域部分の横断面形状を示す説明図。
【
図7】実施例1における、内管と外管とを組み合わせた二重管にける第2領域部分の横断面形状を示す説明図。
【
図8】実施例2における、伝熱二重管用内管の第1領域、第2領域及び第3領域の配置を示す説明図。
【
図9】実施例2における、第3領域の横断面形状を示す説明図(
図8におけるC-C線矢視断面図)。
【
図10】実施例3における、内管成形装置を含むラインの一部を示す説明図。
【
図11】実施例3における、押圧ディスクの配置を軸方向から見た示す説明図。
【
図12】実施例3における、押圧ディスクの配置を径方向から見た示す説明図。
【
図14】内管の凹凸形状のさらに別例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記伝熱二重管用内管は、上述したごとく、少なくとも、第1領域及び第2領域を有している。上記第1領域は外方に突出する第1凸部を複数有している。第1凸部の形状としては、長手方向に直交する断面で見て、三角形状、円弧状、逆U字状等種々の形状を採用することができる。また、各第1凸部は、外方に行くほど幅寸法が小さい形状となっている方が耐座屈性に優れるので好ましい。
【0017】
上記第1領域の第1凸部の位置は、長手方向において螺旋状に変位している。この変位の状態を、内管の軸心に対する第1凸部の頂点部分の傾斜角度で表すと、10°~70°の範囲内とすることが好ましい。
【0018】
上記第2領域も、第1領域と同様に、外方に突出する第2凸部を複数箇所有している。第2凸部の形状としては、第1凸部と同様に、種々の形状を採用することができ、外方に行くほど幅寸法が小さい形状となっている方が好ましい。なお、第2凸部は、第1凸部と同じ形状としてもよいが、異なる形状であってもよい。
【0019】
上記第2領域の第2凸部の位置も、長手方向において螺旋状に変位している。この変位の状態を、内管の軸心に対する第2凸部の頂点部分の傾斜角度の好ましい範囲及びより好ましい範囲は、第1凸部の場合と同様である。そして、第2凸部の螺旋の傾斜角度は、第1凸部と同じ向きで同じ角度であることが好ましい。この場合には、製造が容易となる。
【0020】
上記内管の長手方向における少なくとも一部には、断面形状が円形状の平滑管形状である第3領域をさらに有していてもよい。たとえば、内管の両端部分は、他の部材との接続を行うために、断面形状が円形状の平滑管形状であることがむしろ好ましい。
【0021】
上記内管は、上述したごとく、第1領域及び第2領域を有しているが、さらに、これらと断面形状が異なる1又は複数の領域を設けることができる。たとえば、第1領域及び第2領域と異なる形態の凹凸形状を有する第4領域等を設けることもできる。また、第1領域と第2領域とを連続して設けることもできるが、第3領域や上述した第4領域等を挟んで設けることも可能である。
【0022】
上記第1領域の上記第1凸部の数は、2~10個の範囲内であることが好ましい。なお、第2凸部の数よりも少なくするため、第1凸部の数は、8個以下、6個以下、あるいは4個以下としてもよい。また第2凸部の数は、3~12個の範囲内とすることが好ましい。製造のし易さから見て、第2凸部の数は、10個以下、8個以下、6個以下としてもよい。
【0023】
また、上記第1凸部の数は、上記第2凸部の数の半分以下であることが好ましい。この場合には、第1領域と第2領域の特徴差をより明確化することができる。特に、上記第2凸部の数が偶数であり、上記第1凸部の数が上記第2凸部の数の半分であることが好ましい。この場合には、後述するごとく、製造が容易である。
【0024】
次に、上記伝熱二重管用内管と、その外方に配設された外管とからなる伝熱二重管において、上記外管は、断面形状が円形状の平滑管形状であることが好ましい。外管の形状としては、内管の第1領域や第2領域との組合せに支障がなければ、外管自体にも凹凸形状を採用してもよい。しかし、外管は、平滑管形状の方が製造上有利であり、かつ、熱交換性能は内管形状によって制御できるので、外管まで凹凸形状を設ける意味はあまりない。なお、構造安定性を高めるために、二重管形態において外管を外方から圧縮するための直線又は螺旋状の筋状の加工を施すことも可能である。
【0025】
そして、上記二重管は、曲げ加工により曲げられた曲げ予定部と、曲げ加工を施されることなく直線状で使用される直線部とを有している場合に特に有効である。この場合には、上記曲げ予定部には上記第1領域が配置され、上記直線部には上記第2領域が配置されていることが好ましい。これにより、直線部では、第2領域によって最良の熱交換性能を発揮させ、曲げ部では、第1領域の特性を生かして、流路面積の狭小化の抑制、及び圧損増加の抑制を図ることができる。それ故、総合的な熱交換性能の向上を図ることができる。
【0026】
次に、上記の伝熱二重管用内管を製造する方法としては、次の方法がある。
上記伝熱二重管用内管を製造する方法であって、
断面形状が円形状の平滑管形状を有する内管素管を準備し、
上記内管素管の外周面に対向して周方向に間隙をあけて配置された複数の押圧ディスクを有し、該押圧ディスクは、円盤形状を有すると共にその外周に押圧面を有し、該押圧面を上記内管素管の外周面に当接させた状態で上記内管素管の移動に伴って回転可能に設けられており、上記押圧面の幅方向中心位置の回転軌跡を含む回転平面が、当該回転平面と平行な方向から見て、上記内管素管の軸心から傾いた斜め方向に配置された、内管成形装置を用い、
上記各押圧ディスクの上記押圧面を上記内管素管の外周面に押し当てた状態で、上記押圧ディスクに対して上記内管素管を軸方向に相対的に前進させ、上記各押圧ディスクを回転させることにより、上記内管素管の断面形状を変形させ、
上記各押圧ディスクの押し当て状態を変化させることにより、上記第1凹凸形状と上記第2凹凸形状とを得る、
伝熱二重管用内管の製造方法がある。
【0027】
この方法においては、上記特殊な構成の内管成形装置を用いて平滑管形状の内管素管を成形する。上記内管成形装置は、上述したように、複数の押圧ディスクを有しており、その押圧面が内管の外表面において螺旋状に相対移動できるよう、内管の軸線に対して斜めに回転方向が向くよう配置されている。この構成において、押圧ディスクの押圧状態を変化させることによって、押圧ディスクによって成形される凸部の数や形態を変化させることができる。そのため、たとえば、内管素管の長手方向において、押圧ディスクの押圧状態に変化を与えることによって、長手方向において異なる凹凸形状を有する領域を複数設けることができる。押圧状態の変化は、たとえば、複数の押圧ディスクのすべての位置を同心円状態で変化させる場合と、たとえば一部の押圧ディスクのみで押圧するようにするなど、種々の方法を選択できる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
上記伝熱二重管及び伝熱二重管用内管の実施例につき、
図1~
図7を用いて説明する。
図6及び
図7に示すように、本例の伝熱二重管1用内管2は、外管10の内部に配置された内管2の内側を流れる流体と、内管2と外管10の間を流れる流体との間の熱交換を行うための伝熱二重管1に用いる内管2である。
【0029】
図1に示すように、内管2は、断面形状が異なる第1領域21及び第2領域22を有している。
図2及び
図3に示すように、第1領域21は、外方に突出する第1凸部211を複数箇所有し、かつ、第1凸部211の位置が長手方向において螺旋状に変位した第1凹凸形状を有している。
図4及び
図5に示すように、第2領域22は、外方に突出する第2凸部221を複数箇所有すると共に第2凸部221の数が第1凸部211の数よりも多く、かつ、第2凸部221の位置が長手方向において螺旋状に変位した第2凹凸形状を有している。以下、さらに詳説する。
【0030】
本例の内管2は、
図1に示すごとく、長手方向において、3カ所に第2領域22を有し、各第2領域22の間である2カ所に第1領域21を有している。そして、これらは、一本の管体から継ぎ目なく構成されている。
【0031】
図2及び
図3に示すごとく、第1領域21は、周方向に略等間隔で配置された4つの第1凸部211を有している。各第1凸部211は、円弧状の頂部を有する比較的狭い幅のものである。そして、隣り合う第1凸部211同士の間隔が比較的広く設定されている。隣り合う第1凸部211同士の間には、緩やかに外方側に膨らんだ曲面からなり、第1凸部211と同様に長手方向に螺旋状に変位した帯状側面部215が設けられている。第1凸部211の変位の状態を、内管の軸心に対する第1凸部211の頂点部分の傾斜角度αで表すと、α=20°に設定されている。
【0032】
図4及び
図5に示すごとく、第2領域22は、周方向に略等間隔で配置された8つの第2凸部221を有し、隣り合う第2凸部221の間には、それぞれ谷部225が存在する。各第2凸部221は円弧状の頂部を有し、各谷部225は内側に窪んだ円弧状形状を有し、これらは滑らかに連なっている。第2凸部221の変位の状態を、内管の軸心に対する第2凸部221の頂点部分の傾斜角度βで表すと、第1凸部211の場合と同様にβ=20°に設定されている。
【0033】
上記の第1領域21及び第2領域22は、いずれも外径(外接円の直径)が15mm~25mmの範囲にあるが、寸法については、用途に合わせて適宜変更可能である。
【0034】
図6及び
図7に示すごとく、上記構成の内管2の外方に、外管10を被せることにより、伝熱二重管1を構成することができる。本例では、外管10としては、断面形状が円形状の平滑管を用いる。なお、外管10としては、平滑管以外の形状のものも採用可能である。また、たとえば、平滑管の外管10を内管2の外方に装着した後、外管10の外方から直線状あるいは螺旋状の溝を設ける加工を行うこともできる。
【0035】
本例の伝熱二重管1は、上記特殊な形状の内管2を備えているので、従来の伝熱二重管に比べて以下のような優れた作用効果を得ることができる。すなわち、内管2は、2種類の異なる凹凸形状を有する部分として、第1領域21と第2領域22とを有している。そして、第2領域22の方が凹凸形状が多く、内面及び外面の表面積は、第2領域22の方が大きく、かつ、形状も複雑化している。そのため、外管10と組み合わせて二重管を構成した場合、直線状態のままで考えると、第2領域22の部分の熱交換性能が、第1領域21の部分の熱交換性能より高くなる。一方、二重管状態で曲げ加工を加えた場合、複雑な形状の第2領域22の部分は、外管10と内管2との間の流路の狭小化や圧力損失の増大化の可能性が、第1領域21の部分よりも高くなる。
【0036】
そのため、曲げ加工を施す曲げ部については、第1領域21を採用した方が、流路の狭小化や圧力損失の増大化をより抑制しやすくなり、総合的な熱交換性能が高まると考えられる。また、内管として平滑管を採用する場合に比べて凹凸形状を備えた第1領域21の方が熱交換性能が高いことは容易に理解できる。このような理由により、本例の伝熱二重管1は、曲げ加工により曲げられる曲げ予定部と、曲げ加工を施されることなく直線状で使用される直線部とを設けることを想定した場合、曲げ予定部には第1領域21を配置し、直線部には第2領域22を配置した構成を採用することができる。そしてこの場合には、第1領域21の利点と第2領域22の利点を生かして、従来よりも優れた熱交換性能を得ることが可能となる。
【0037】
(実施例2)
本例では、実施例1に記載した伝熱二重管用内管2の変形例を示す。
図8及び
図9に示すごとく、本例の伝熱二重管用内管202は、第1領域21と第2領域22とを長手方向に複数箇所備えた上に、両端に断面形状が円形状の平滑管形状である第3領域23を有している。
【0038】
本例の内管202を用いて二重管を構成する場合、両端の第3領域23が平滑管形状であるので、他の部位と連結する継ぎ目部として容易に利用できる。そのため、実用性をさらに高めることができる。なお、上記第3領域23は、例えば、第1領域21と第2領域22の間等に適宜挟んでもよい。
【0039】
(実施例3)
本例は、実施例1の伝熱二重管用内管2の製造方法に関するものである。
本例では、断面形状が円形状の平滑管形状を有する内管素管20を準備し、
図10~
図12に示す内管成形装置5を用いて内管を成形する。内管成形装置5は、
図10に示すごとく、その前後の入側キャタピラ71及び出側キャタピラ72の間に配置されている。そして、入側キャタピラ71及び出側キャタピラ72は、内管成形装置5に捜通される内管素管20及び成形後の内管2に、適度な張力を付与しながら内管成形装置5の内部を軸方向に移動させる機能を有している。なお、入側キャタピラ71の上流には、内管素管の供給装置、矯正機、洗浄機等を配置することができ、出側キャタピラ72の下流側には、成形後の内管の矯正機、洗浄機、切断機等を配置することができ、これらで内管素管の供給から成形済みの内管の回収までの連続ラインを構成することが可能である。
【0040】
図12に示すごとく、押圧ディスク61における押圧面610の幅方向中心位置の回転軌跡を含む回転平面Pが、当該回転平面Pと平行な方向から見て、内管素管2の軸心Cから傾いた斜め方向に配置されている。
【0041】
上記構成の内管成形装置5を用い、各押圧ディスク61の押圧面610を内管素管20の外周面に押し当てた状態で、入側キャタピラ71及び出側キャタピラ72を駆動して、押圧ディスク61に対して内管素管20を軸方向に相対的に前進させる。これにより、内管素管20の断面形状を変形させる。そして、各押圧ディスク61の押し当て状態を変化させることにより、第1凹凸形状と第2凹凸形状とを得ることができる。
【0042】
実施例1における第2領域22の第2凹凸形状は、上記の8枚の押圧ディスク61を均等に適度に押圧することによって、
図4に示すごとく、8つの第2凸部221を有する第2凹凸形状を成形することができる。また、実施例1における第1領域21の第1凹凸形状は、8枚の押圧ディスク61の押圧量をさらに大きく(深く)することによって、
図2に示すごとく、4つの凸部(第1凸部)211のみが目立って突出する第1凹凸形状が得られた。これらの形状変化は、押圧ディスク61の押し込み量を変更しながら成形を行うことにより、その適切な条件を得ることができる。
【0043】
なお、8枚の押圧ディスク61の押圧量を第2領域22を成形する場合よりも小さくした場合には、
図13に示すように、第2凸部221と若干形状の異なる低い凸部41を8つ有する凹凸形状が成形された。また、8枚の押圧ディスク61のうち、4枚の押圧ディスク61を内管素管20に接触しない位置まで後退させ、残りの4枚の押圧ディスク61のみで軽い押圧を行った場合には、
図14に示すごとく、緩やかな曲面状の凸部42を4つ有する凹凸形状が形成された。
【0044】
上記成形装置5においては、8枚の押圧ディスク61を設けたが、この数を変更することも当然可能であり、また、各押圧ディスクの押圧量を制御することによって、種々の凹凸形状を成形することができる。そして、内管の長手方向において成形条件を変更することによって、断面形状の異なる凹凸形状を長手方向に並べて成形することができ、所望の特性を有する伝熱二重管用内管を容易に得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 伝熱二重管
10 外管
2 伝熱二重管用内管
21 第1領域
211 第1凸部
22 第2領域
221 第2凸部
23 第3領域
5 内管成形装置
6 成形機構部
61 押圧ディスク
610 押圧面