(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】予測システムおよび予測方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240418BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/16
(21)【出願番号】P 2019202213
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】信濃 耀介
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06525810(US,B1)
【文献】特開2019-172901(JP,A)
【文献】特開2005-349635(JP,A)
【文献】特開平11-320853(JP,A)
【文献】特開2012-183517(JP,A)
【文献】特開2013-063371(JP,A)
【文献】特開2019-053626(JP,A)
【文献】特開2019-057111(JP,A)
【文献】特開2019-177659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0257967(US,A1)
【文献】特開2020-093468(JP,A)
【文献】特開2018-094744(JP,A)
【文献】特開2021-054007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の予測用噴射孔から液滴を噴射する予測用液体噴射ヘッドの前記予測用噴射孔ごとの吐出結果を予測する予測システムであって、
前記予測用噴射孔のそれぞれに対応する、前記予測用噴射孔の周辺部分を含む予測用外観画像を取得する外観画像取得部と、
複数の学習用噴射孔から液滴を噴射する学習用液体噴射ヘッドの前記学習用噴射孔のそれぞれに対応する、前記学習用噴射孔の周辺部分を含む学習用外観画像を説明変数とするとともに、前記学習用液体噴射ヘッドの吐出結果を目的変数として機械学習を行うことにより得られた学習モデルに対して前記予測用外観画像を入力することにより、前記学習モデルから、前記予測用液体噴射ヘッドの吐出結果の予測データを取得する予測データ取得部と
を備え、
前記外観画像取得部は、前記予測用外観画像として、前記予測用噴射孔に対する液体の供給を制御するアクチュエータプレートにおける、前記予測用噴射孔およびその周辺部分のうち、少なくとも前記周辺部分に対応する部分を含む領域の画像を取得する
予測システム。
【請求項2】
前記外観画像取得部は、前記予測用外観画像として、前記予測用液体噴射ヘッドに対して組み込まれる前の、前
記アクチュエータプレートにおける、組み込み時
の画像を取得する
請求項1に記載の予測システム。
【請求項3】
前記外観画像取得部は、前記予測用外観画像として、グレースケールもしくは色彩付の画像を取得する
請求項1
または請求項
2に記載の予測システム。
【請求項4】
前記目的変数としての吐出結果は、前記学習用液体噴射ヘッドに対して吐出検査を行うことにより得られる、液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つの実測データであり、
前記学習モデルから取得する予測データは、前記予測用液体噴射ヘッドに対して吐出検査を行ったとしたら得られるであろう、液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つに対する予測データである
請求項1ないし請求項
3のいずれか一項に記載の予測システム。
【請求項5】
前記説明変数としての学習用外観画像には、前記学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の、前記学習用噴射孔が形成された噴射孔プレート、前記学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の、前記学習用噴射孔に対する液体の供給を制御するアクチュエータプレート、および、互いに貼り合わされている、前記噴射孔プレートおよび前記アクチュエータプレートのいずれかを所定の角度、回転させたものの画像が含まれる
請求項1ないし請求項
4のいずれか一項に記載の予測システム。
【請求項6】
前記説明変数としての学習用外観画像には、前記学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の、前記学習用噴射孔が形成された噴射孔プレート、前記学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の、前記学習用噴射孔に対する液体の供給を制御するアクチュエータプレート、および、互いに貼り合わされている、前記噴射孔プレートおよび前記アクチュエータプレートのいずれかの画像を所定の角度、回転させることにより得られる画像が含まれる
請求項1ないし請求項
4のいずれか一項に記載の予測システム。
【請求項7】
複数の予測用噴射孔から液滴を噴射する予測用液体噴射ヘッドの前記予測用噴射孔ごとの吐出結果を予測する予測方法であって、
前記予測用噴射孔のそれぞれに対応する、前記予測用噴射孔の周辺部分を含む予測用外観画像を取得することと、
複数の学習用噴射孔から液滴を噴射する学習用液体噴射ヘッドの前記学習用噴射孔のそれぞれに対応する、前記学習用噴射孔の周辺部分を含む学習用外観画像を説明変数とするとともに、前記学習用液体噴射ヘッドの吐出結果を目的変数として機械学習を行うことにより得られた学習モデルに対して前記予測用外観画像を入力することにより、前記学習モデルから、前記予測用液体噴射ヘッドの吐出結果の予測データを取得することと
を含
み、
さらに、前記予測用外観画像として、前記予測用噴射孔に対する液体の供給を制御するアクチュエータプレートにおける、前記予測用噴射孔およびその周辺部分のうち、少なくとも前記周辺部分に対応する部分を含む領域の画像を取得すること
を含む
予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射記録装置における液体噴射ヘッドの吐出結果を予測する予測システムおよび予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射記録装置において、液体噴射ヘッドは、多数の噴射孔が形成された噴射孔プレートを含む複数のプレートの積層体を備えており、各噴射孔から被記録媒体に対して液滴を吐出するように構成されている。このような液体噴射記録装置では、液体噴射ヘッドから液滴を吐出させ、液滴の吐出角度や液滴量などを計測し、その計測結果に基づいて液体噴射ヘッドを検査する吐出検査が行われている。液滴量の計測方法については、例えば、特許文献1などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吐出検査において、計測結果が一定の基準を満たさない液体噴射ヘッドは、不具合品として廃棄される。そのため、廃棄に伴って、組み立て費のロスが発生する。また、吐出検査には、時間や人件費などもかかる。従って、吐出検査の前の段階で、液体噴射ヘッドの吐出結果を予測することの可能な予測システムおよび予測方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る予測システムは、複数の予測用噴射孔から液滴を噴射する予測用液体噴射ヘッドの予測用噴射孔ごとの吐出結果を予測するシステムである。この予測システムは、外観画像取得部および予測データ取得部を備えている。外観画像取得部は、予測用噴射孔のそれぞれに対応する、予測用噴射孔の周辺部分を含む予測用外観画像を取得する。予測データ取得部は、学習モデルに対して予測用外観画像を入力することにより、学習モデルから、予測用液体噴射ヘッドの吐出結果の予測データを取得する。外観画像取得部は、予測用外観画像として、予測用噴射孔に対する液体の供給を制御するアクチュエータプレートにおける、予測用噴射孔およびその周辺部分のうち、少なくとも周辺部分に対応する部分を含む領域の画像を取得する。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る予測方法は、複数の予測用噴射孔から液滴を噴射する予測用液体噴射ヘッドの予測用噴射孔ごとの吐出結果を予測する方法である。この予測方法は、以下の2つを含んでいる。
・予測用噴射孔のそれぞれに対応する、予測用噴射孔の周辺部分を含む予測用外観画像を取得すること
・学習モデルに対して予測用外観画像を入力することにより、学習モデルから、予測用液体噴射ヘッドの吐出結果の予測データを取得することと
この予測方法は、さらに以下の1つを含んでいる。
・予測用外観画像として、予測用噴射孔に対する液体の供給を制御するアクチュエータプレートにおける、予測用噴射孔およびその周辺部分のうち、少なくとも周辺部分に対応する部分を含む領域の画像を取得する
【0007】
本開示の一実施の形態に係る予測システムおよび予測方法において、学習モデルは、複数の学習用噴射孔から液滴を噴射する学習用液体噴射ヘッドの学習用噴射孔のそれぞれに対応する、学習用噴射孔の周辺部分を含む学習用外観画像を説明変数とするとともに、学習用液体噴射ヘッドの吐出結果を目的変数として機械学習を行うことにより得られたモデルである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施の形態に係る予測システムおよび予測方法によれば、吐出検査の前の段階で、液体噴射ヘッドの吐出結果を予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】液体噴射記録装置における液体噴射ヘッドの構成例を表す分解斜視図である。
【
図2】
図1の液体噴射ヘッドを噴射孔プレート側から見たときの平面構成例を表す図である。
【
図3】
図2に示したV-V線に沿った断面の一部の構成例を表す図である。
【
図4】本開示の一実施の形態に係る予測システムの概略構成例を表す図である。
【
図5】
図4の予測システムの機能ブロック例を表す図である。
【
図7】
図5の画像データおよび吐出結果の一例を表す図である。
【
図8】
図4の予測システムにおいて、液体噴射ヘッドの吐出性能を予測し評価する手順の一例を表す図である。
【
図9】
図4の予測システムの概略構成の一変形例を表す図である。
【
図10】
図9の予測システムにおいて、液体噴射ヘッドの吐出性能を予測し評価する手順の一例を表す図である。
【
図11】
図4の予測システムの概略構成の一変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.予測対象物
2.実施の形態
3.変形例
【0011】
<1.予測対象物>
まず、本開示の一実施の形態に係る予測システムにおける予測対象物について説明する。予測対象物は、例えば、
図1に示したような、液体噴射記録装置に用いられる液体噴射ヘッド100である。液体噴射記録装置には、1または複数の液体噴射ヘッド100が設けられる。本開示の一実施の形態に係る予測システムにおける予測対象は、液体噴射ヘッド100の吐出性能であり、例えば、液体噴射ヘッド100から吐出される液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つである。
【0012】
液体噴射記録装置は、後述するインク150を利用して、被記録媒体としての記録紙に対して、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。この液体噴射記録装置は、インク150を所定の流路に循環させて利用する、インク循環式のインクジェットプリンタである。液体噴射ヘッド100は、後述する複数の噴射孔(噴射孔H1,H2)から記録紙に対して液滴状のインク150を噴射(吐出)して、画像や文字等の記録を行うヘッドである。
【0013】
次に、
図1、
図2、
図3を参照して、予測対象物である液体噴射ヘッド100の構成例について説明する。
図1は、液体噴射ヘッド100の構成例を、分解斜視図で表したものである。
図2は、液体噴射ヘッド100を噴射孔プレート側から見たときの平面構成例を表したものである。
図3は、液体噴射ヘッド100の、
図2に示したV-V線に対応する箇所での断面(Z-X断面)の一部を表したものである。
【0014】
液体噴射ヘッド100は、後述する複数のチャネル(チャネルC1,C2)における延在方向(Y軸方向)の中央部からインク150を吐出する。液体噴射ヘッド100は、噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120およびカバープレート130を主に備えている。液体噴射ヘッド100は、これらの噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120およびカバープレート130を、例えば接着剤等を用いて互いに貼り合わせた積層体を備えている。これらの噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120およびカバープレート130は、Z軸方向に沿ってこの順に積層されている。なお、以下では、Z軸方向に沿ってカバープレート130側を上方と称すると共に、噴射孔プレート110側を下方と称して説明する。
【0015】
(噴射孔プレート110)
噴射孔プレート110は、例えば、金属基板もしくは樹脂基板を含んで構成されており、接着剤によって、アクチュエータプレート120の下面に接着される。噴射孔プレート110として用いられる金属基板の材料としては、SUS316LやSUS304をはじめとするステンレス鋼が挙げられる。噴射孔プレート110として用いられる樹脂基板の材料としては、ポリイミドなどが挙げられる。
【0016】
また、
図1および
図2に示したように、噴射孔プレート110には、X軸方向に沿ってそれぞれ延在する、2列の噴射孔列(噴射孔列111,112)が設けられている。これらの噴射孔列111,112同士は、Y軸方向に沿って所定の間隔をおいて配置されている。このように、液体噴射ヘッド100は、2列タイプの液体噴射ヘッドとなっている。なお、液体噴射ヘッド100は、1列タイプ(1列の噴射孔列を有する)液体噴射ヘッドや、3列以上の複数例タイプ(3列以上の噴射孔列を有する)液体噴射ヘッドとなっていてもよい。
【0017】
噴射孔列111は、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて一直線上に並んで形成された、複数の噴射孔H1を有している。これらの噴射孔H1はそれぞれ、噴射孔プレート110をその厚み方向(Z軸方向)に沿って貫通しており、例えば
図3に示したように、後述するアクチュエータプレート120における吐出チャネルC1e内に連通している。具体的には
図2に示したように、各噴射孔H1は、列状に形成されており、かつ、吐出チャネルC1e上においてY軸方向に沿った中央部に位置するように形成されている。また、噴射孔H1におけるX軸方向に沿った形成ピッチは、吐出チャネルC1eにおけるX軸方向に沿った形成ピッチと同一(同一ピッチ)となっている。このような噴射孔列111内の噴射孔H1からは、詳細は後述するが、吐出チャネルC1e内から供給されるインク150が吐出(噴射)される。
【0018】
噴射孔列112も同様に、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて一直線上に並んで形成された、複数の噴射孔H2を有している。これらの噴射孔H2もそれぞれ、噴射孔プレート110をその厚み方向に沿って貫通しており、後述するアクチュエータプレート120における吐出チャネルC2e内に連通している。具体的には
図2に示したように、各噴射孔H2は、列状に形成されており、かつ、吐出チャネルC2e上においてY軸方向に沿った中央部に位置するように形成されている。また、噴射孔H2におけるX軸方向に沿った形成ピッチは、吐出チャネルC2eにおけるX軸方向に沿った形成ピッチと同一となっている。このような噴射孔列112内の噴射孔H2からも、詳細は後述するが、吐出チャネルC2e内から供給されるインク150が吐出される。
【0019】
噴射孔プレート110は、複数の噴射孔H1および複数の噴射孔H2が設けられた金属基板もしくは樹脂基板を有している。金属基板もしくは樹脂基板は、各噴射孔H1,H2の噴出口Haが設けられた噴出側主面110Bと、噴出口Haよりも大きな、各噴射孔H1,H2の流入口Hbが設けられた流入側主面110Aとを有している。これらの噴射孔H1,H2はそれぞれ、下方に向かうに従って漸次縮径するテーパー状の貫通孔となっている。
【0020】
ここで、金属基板もしくは樹脂基板において、各噴射孔H1,H2の流入口Hbの周囲(噴出口端縁領域Ea)は、少なくとも、金属基板もしくは樹脂基板のうち、金属基板もしくは樹脂基板の厚さ方向において流入口Hbと対向する領域を含んでいる。噴出口端縁領域Eaは、例えば、円環形状となっている。なお、噴出口端縁領域Eaの形状は、円環形状に限られない。噴出口端縁領域Eaは、例えば、楕円環形状、または方形環形状となっていてもよい。噴出口端縁領域Eaが円環形状となっている場合に、噴出口端縁領域Eaの外径は、噴射孔H1,H2の配列ピッチよりも小さくなっている。そのため、各噴出口端縁領域Eaは、噴出側主面110Bにおいて、互いに分離して設けられている。
【0021】
噴出口端縁領域Eaは、例えば、機械研磨によって形成された研磨面となっている。噴出口端縁領域Eaは、例えば、テープ研磨によって研磨された領域である。噴出口端縁領域Eaの周囲は、全く研磨されていないか、または、噴出口端縁領域Eaよりも粗い研磨がなされている領域である。
【0022】
(アクチュエータプレート120)
アクチュエータプレート120は、噴射孔プレート110における各噴射孔H1,H2に対するインク150の供給を制御するプレートである。アクチュエータプレート120は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。このアクチュエータプレート120は、分極方向がZ方向で異なる2つの圧電基板を積層して形成された、いわゆるシェブロンタイプのアクチュエータである。なお、アクチュエータプレート120は、分極方向が厚み方向(Z軸方向)に沿って一方向に設定されている1つの圧電基板から形成された、いわゆるカンチレバータイプのアクチュエータであってもよい。また、
図1および
図2に示したように、アクチュエータプレート120には、X軸方向に沿ってそれぞれ延在する、2列のチャネル列(チャネル列121,122)が設けられている。これらのチャネル列121,122同士は、Y軸方向に沿って所定の間隔をおいて配置されている。
【0023】
上記したチャネル列121は、
図1および
図2に示したように、Y軸方向に沿って延在する複数のチャネルC1を有している。これらのチャネルC1は、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルC1は、圧電体(アクチュエータプレート120)からなる駆動壁Wdによってそれぞれ画成されており、断面視にて凹状の溝部となっている(
図1参照)。
【0024】
チャネル列122も同様に、Y軸方向に沿って延在する複数のチャネルC2を有している。これらのチャネルC2は、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルC2もまた、上記した駆動壁Wdによってそれぞれ画成されており、断面視にて凹状の溝部となっている。
【0025】
ここで、
図1および
図2に示したように、チャネルC1には、インク150を吐出させるための吐出チャネルC1eと、インク150を吐出させないダミーチャネルC1dとが存在している。チャネル列121において、これらの吐出チャネルC1eとダミーチャネルC1dとは、X軸方向に沿って交互に配置されている。各吐出チャネルC1eは、噴射孔プレート110における噴射孔H1と連通している一方、各ダミーチャネルC1dは噴射孔H1には連通しておらず、噴射孔プレート110の上面によって下方から覆われている。
【0026】
同様に、チャネルC2には、インク150を吐出させるための吐出チャネルC2eと、インク150を吐出させないダミーチャネルC2dとが存在している。チャネル列122において、これらの吐出チャネルC2eとダミーチャネルC2dとは、X軸方向に沿って交互に配置されている。各吐出チャネルC2eは、噴射孔プレート110における噴射孔H2と連通している一方、各ダミーチャネルC2dは噴射孔H2には連通しておらず、噴射孔プレート110の上面によって下方から覆われている。
【0027】
また、
図2に示したように、チャネルC1における吐出チャネルC1eおよびダミーチャネルC1dは、チャネルC2における吐出チャネルC2eおよびダミーチャネルC2dに対し、互い違いとなるように配置されている。したがって、液体噴射ヘッド100では、チャネルC1における吐出チャネルC1eと、チャネルC2における吐出チャネルC2eとが、千鳥状に配置されている。
図1に示したように、アクチュエータプレート120において、ダミーチャネルC1d,C2dに対応する部分には、ダミーチャネルC1d,C2dにおけるY軸方向に沿った外側端部に連通する、浅溝部Ddが形成されている。
【0028】
ここで、
図1および
図3に示したように、上記した駆動壁Wdにおける対向する内側面にはそれぞれ、Y軸方向に沿って延在する駆動電極Edが設けられている。この駆動電極Edには、吐出チャネルC1e,C2eに面する内側面に設けられたコモン電極Edcと、ダミーチャネルC1d,C2dに面する内側面に設けられたアクティブ電極Edaとが存在している。このような駆動電極Ed(コモン電極Edcおよびアクティブ電極Eda)は、
図3に示したように、駆動壁Wdの内側面上において、駆動壁Wdと同じ深さ(Z軸方向において同じ深さ)まで形成されている。また、アクチュエータプレート120において、噴射孔プレート110側の面には、駆動電極Edと噴射孔プレート110とが互いに電気的に短絡するのを防止する絶縁膜120Aが形成されている。なお、アクチュエータプレート120が上述のカンチレバータイプとなっている場合には、駆動電極Ed(コモン電極Edcおよびアクティブ電極Eda)は、駆動壁Wdの内側面内において、深さ方向(Z軸方向)の中間位置までしか形成されていない。
【0029】
同一の吐出チャネルC1e(または吐出チャネルC2e)内で対向する一対のコモン電極Edc同士は、コモン端子(不図示)において互いに電気的に接続されている。また、同一のダミーチャネルC1d(またはダミーチャネルC2d)内で対向する一対のアクティブ電極Eda同士は、互いに電気的に分離されている。一方、吐出チャネルC1e(または吐出チャネルC2e)を介して対向する一対のアクティブ電極Eda同士は、アクティブ端子(不図示)において互いに電気的に接続されている。
【0030】
液体噴射ヘッド100では、
図1に示したように、駆動電極Edと、液体噴射ヘッド100を制御する制御部との間を電気的に接続する、フレキシブルプリント基板140が実装されている。このフレキシブルプリント基板140に形成された配線パターン(不図示)は、上記したコモン端子およびアクティブ端子に対して電気的に接続されている。これにより、フレキシブルプリント基板140を介して、液体噴射ヘッド100を制御する制御部から各駆動電極Edに対して、駆動電圧が印加されるようになっている。
【0031】
(カバープレート130)
カバープレート130は、
図1に示したように、アクチュエータプレート120における各チャネルC1,C2(各チャネル列121,122)を閉塞するように配置されている。具体的には、このカバープレート130は、アクチュエータプレート120の上面に接着されており、板状構造となっている。
【0032】
カバープレート130には、
図1に示したように、一対の入口側共通インク室131a,132aと、一対の出口側共通インク室131b,132bとが、それぞれ形成されている。具体的には、入口側共通インク室131aおよび出口側共通インク室131bはそれぞれ、アクチュエータプレート120におけるチャネル列121(複数のチャネルC1)に対応する領域に形成されている。また、入口側共通インク室132aおよび出口側共通インク室132bはそれぞれ、アクチュエータプレート120におけるチャネル列122(複数のチャネルC2)に対応する領域に形成されている。
【0033】
入口側共通インク室131aは、各チャネルC1におけるY軸方向に沿った内側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている。この入口側共通インク室131aにおいて、各吐出チャネルC1eに対応する領域には、カバープレート130をその厚み方向(Z軸方向)に沿って貫通する、供給スリットSaが形成されている。同様に、入口側共通インク室132aは、各チャネルC2におけるY軸方向に沿った内側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている。この入口側共通インク室132aにおいて、各吐出チャネルC2eに対応する領域にも、上記した供給スリットSaが形成されている。
【0034】
出口側共通インク室131bは、
図1に示したように、各チャネルC1におけるY軸方向に沿った外側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている。この出口側共通インク室131bにおいて、各吐出チャネルC1eに対応する領域には、カバープレート130をその厚み方向に沿って貫通する、排出スリットSbが形成されている。同様に、出口側共通インク室132bは、各チャネルC2におけるY軸方向に沿った外側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている。この出口側共通インク室132bにおいて、各吐出チャネルC2eに対応する領域にも、上記した排出スリットSbが形成されている。
【0035】
このようにして、入口側共通インク室131aおよび出口側共通インク室131bはそれぞれ、供給スリットSaおよび排出スリットSbを介して各吐出チャネルC1eに連通する一方、各ダミーチャネルC1dには連通していない。すなわち、各ダミーチャネルC1dは、これら入口側共通インク室131aおよび出口側共通インク室131bにおける底部によって、閉塞されている。
【0036】
同様に、入口側共通インク室132aおよび出口側共通インク室132bはそれぞれ、供給スリットSaおよび排出スリットSbを介して各吐出チャネルC2eに連通する一方、各ダミーチャネルC2dには連通していない。すなわち、各ダミーチャネルC2dは、これら入口側共通インク室132aおよび出口側共通インク室132bにおける底部によって、閉塞されている。
【0037】
<2.実施の形態>
[構成]
図4は、本発明の一実施の形態に係る予測システム1の概略構成の一例を表したものである。
図5は、
図4の予測システム1の機能ブロックの一例を表したものである。予測システム1は、液体噴射ヘッド100の噴射孔H1,H2ごとの吐出結果を予測するシステムである。予測システム1において、予測対象物は液体噴射ヘッド100であり、予測対象は、液体噴射ヘッド100の吐出性能であり、例えば、液体噴射ヘッド100から吐出される液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つである。
【0038】
予測システム1は、例えば、情報処理装置10と、撮像システム20と、サーバ装置30とを備えている。情報処理装置10、撮像システム20およびサーバ装置30は、ネットワーク40を介して接続されている。情報処理装置10は、ネットワーク40を介して情報処理装置10およびサーバ装置30と通信することができるように構成されている。撮像システム20は、ネットワーク40を介して情報処理装置10およびサーバ装置30と通信することができるように構成されている。サーバ装置30は、ネットワーク40を介して情報処理装置10および撮像システム20と通信することができるように構成されている。
【0039】
ネットワーク40は、例えば、インターネットで標準的に利用されている通信プロトコル(TCP/IP)を用いて通信を行うネットワークである。ネットワーク40は、例えば、そのネットワーク独自の通信プロトコルを用いて通信を行うセキュアなネットワークであってもよい。ネットワーク40は、例えば、インターネット、イントラネット、または、ローカルエリアネットワークである。ネットワーク40と、情報処理装置10、撮像システム20またはサーバ装置30との接続は、例えば、イーサネット(登録商標)等の有線LAN(Local Area Network)であってもよいし、Wi-Fi等の無線LANや、携帯電話回線などであってもよい。
【0040】
情報処理装置10は、例えば、制御部11、メモリ12、表示部13、入力部14およびネットワークIF(Interface)15を含んで構成されている。制御部11が、本開示の「外観画像取得部」「予測データ取得部」の一具体例に相当する。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)などを含んで構成され、例えば、メモリ12に記憶されたプログラムなどを実行する。制御部11は、例えば、メモリ12に記憶されたプログラム12Aを実行する。プログラム12Aは、液体噴射ヘッド100の吐出性能(例えば、液体噴射ヘッド100から吐出される液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つ)を予測し、その予測結果に基づいて液体噴射ヘッド100を評価するための一連の手順を制御部11に実行させる。
【0041】
制御部11は、例えば、撮像指示を、ネットワークIF15を介して撮像システム20に送信する。制御部11は、例えば、撮像指示に対する応答として、画像データ(例えば、画像データ32Aまたは画像データIa)を、ネットワークIF15を介して撮像システム20から受信する。制御部11は、例えば、撮像指示に対する応答として、噴射孔H1,H2のそれぞれに対応する、噴射孔H1,H2の周辺部分を含む画像データを取得する。
【0042】
制御部11は、例えば、取得した画像データ32Aを、ネットワークIF15を介してサーバ装置30に送信する。制御部11は、例えば、取得した画像データIaを含む予測データ生成指示を、ネットワークIF15を介してサーバ装置30に送信する。制御部11は、例えば、予測データ生成指示に対する応答として、液体噴射ヘッド100の吐出結果の予測データDaを、ネットワークIF15を介してサーバ装置30から受信する。つまり、制御部11は、例えば、サーバ装置30内の学習モデル33に対して画像データIaを入力することにより、学習モデル33から、液体噴射ヘッド100の吐出結果の予測データDaを取得する。
【0043】
制御部11は、例えば、受信した予測データDaに基づいて、液体噴射ヘッド100の吐出性能(例えば、液体噴射ヘッド100から吐出される液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つ)を評価する。制御部11は、例えば、評価結果を表示部13に表示させる。
【0044】
メモリ12は、制御部11によって実行されるプログラムなどを記憶している。メモリ12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)等によって構成される。メモリ12は、プログラム12Aを記憶している。
【0045】
表示部13は、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示装置からなる。表示部13は、制御部11からの映像信号に基づく画像を表示面10Aに表示する。入力部14は、外部(例えば、ユーザ)からの指示を受け付け、受け付けた指示を制御部11に出力する。入力部14は、例えば、キーボードやマウスによって構成されている。なお、入力部14は、情報処理装置10の表示面10Aに設けられたタッチパネルによって構成されていてもよい。ネットワークIF15は、ネットワーク40を介して撮像システム20またはサーバ装置30と通信するための通信インターフェースである。
【0046】
サーバ装置30は、例えば、制御部31、メモリ32、学習モデル33およびネットワークIF34などを含んで構成されている。制御部31は、CPUおよびGPUなどを含んで構成され、例えば、メモリ32に記憶されたプログラムなどを実行する。制御部31は、例えば、撮像システム20で得られた画像データIaを含む予測データDa生成指示を、ネットワークIF34を介して撮像システム20から受信し、受信した画像データIaを学習モデル33に入力する。制御部31は、例えば、画像データIaの入力に対する応答として、学習モデル33から吐出結果の予測データDaを取得し、取得した予測データDaを、ネットワークIF34を介して情報処理装置10に送信する。
【0047】
ネットワークIF34は、ネットワーク40を介して情報処理装置10または撮像システム20と通信するための通信インターフェースである。メモリ32は、制御部31によって実行されるプログラムなどを記憶する。メモリ32は、例えば、RAM、ROM、補助記憶装置(ハードディスク等)等によって構成される。メモリ32には、さらに、複数の画像データ32Aおよび複数の吐出結果32Bが記憶されている。複数の画像データ32Aおよび複数の吐出結果32Bは、後述の学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の噴射孔プレート、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前のアクチュエータプレート、もしくは学習用液体噴射ヘッドから得られたデータである。複数の画像データ32Aおよび複数の吐出結果32Bは、学習モデル33の学習の際に使用される。
【0048】
画像データ32Aは、例えば、
図6に示したような画像のピクセルごとの階調データによって構成されている。画像データ32Aは、例えば、
図7に示したように、画像のピクセルごとの階調データによって構成されている。
図7には、画像データ32Aと、吐出結果32Bとが撮像対象(噴射孔)ごとに互いに対応付けて、メモリ32に格納されている様子が概念的に示されている。画像データ32Aは、2値化されたデータではなく、グレースケールのデータである。従って、画像データ32Aにおいて、噴射孔に対応する箇所は略黒色に相当する低階調のデータとなっており、噴射孔の周辺部分(例えば、噴出口端縁領域Ea)は、噴射孔に対応する箇所よりも高い階調のデータとなっている。画像データ32Aは色彩付のデータであってもよい。なお、画像データIaも、画像データ32Aと同様のデータであり、2値化されたデータではなく、グレースケールのデータ、または、色彩付のデータである。従って、画像データIaにおいて、噴射孔に対応する箇所は略黒色に相当する低階調のデータとなっており、噴射孔の周辺部分(例えば、噴出口端縁領域Ea)は、噴射孔に対応する箇所よりも高い階調のデータとなっている。
図7では、吐出結果32Bは、液滴の吐出角度となっている。なお、吐出結果32Bは、液滴の吐出速度や、液滴の液滴量であってもよい。
【0049】
学習モデル33は、画像データ32A(学習用外観画像)を説明変数とするとともに、吐出結果32B(学習用液体噴射ヘッドの吐出結果)を目的変数として機械学習を行うことにより得られたモデルである。学習用液体噴射ヘッドは、上述の液体噴射ヘッド100と共通の構成となっている。学習用液体噴射ヘッドは、上述の液体噴射ヘッド100と同様に、噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120およびカバープレート130を主に備えており、これらの噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120およびカバープレート130は、例えば接着剤等を用いて互いに貼り合わされた積層体を備えている。
【0050】
画像データ32A(学習用外観画像)は、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の噴射孔プレート、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前のアクチュエータプレート、互いに貼り合わされている、学習用噴射孔が形成された噴射孔プレートおよび学習用噴射孔に対する液体の供給を制御するアクチュエータプレート、もしくは学習用液体噴射ヘッドの撮像領域αを、撮像システム20を用いて撮像することにより得られたデータである。吐出結果32B(学習用液体噴射ヘッドの吐出結果)は、組み立て済みの学習用液体噴射ヘッドに対して、吐出検査を行うことにより得られた実測データである。吐出検査とは、組み立て済みの学習用液体噴射ヘッドから吐出される液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つを計測することを指している。
【0051】
学習モデル33は、画像データIa(予測用外観画像)が入力されると、学習結果に基づいて、液体噴射ヘッド100(予測用液体噴射ヘッド)の吐出結果の予測データDaを生成(予測)し、生成(予測)した予測データDaを出力する。
【0052】
画像データIa(予測用外観画像)は、液体噴射ヘッド100に組み込まれる前の噴射孔プレート110、液体噴射ヘッド100に組み込まれる前のアクチュエータプレート120、互いに貼り合わされている、噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120、もしくは液体噴射ヘッド100の撮像領域αを、撮像システム20を用いて撮像することにより得られたデータである。予測データDa(予測用液体噴射ヘッドの吐出結果の予測データ)は、組み立て済みの液体噴射ヘッド100に対して吐出検査を行ったとしたら得られるであろう吐出結果に対する予測データである。吐出検査とは、組み立て済みの液体噴射ヘッド100から吐出される液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つを計測することを指している。なお、予測データDaは、液体噴射ヘッド100自体の組み立て前、もしくは、液体噴射記録装置への液体噴射ヘッド100の組み込み前に、学習モデル33によって得られるデータである。
【0053】
撮像システム20は、例えば、カメラ21、光源部22、ハーフミラー23、XYステージ24および制御部25を有している。
【0054】
カメラ21は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサもしくはCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)イメージセンサを含んで構成されている。カメラ21は、例えば、制御部25による制御に従って撮像を行い、それにより得られた画像(画像データ)を制御部25に出力する。カメラ21は、撮像領域αを撮像し、それにより得られた画像データ(例えば、画像データ32Aまたは画像データIa)を制御部25に出力する。
【0055】
撮像領域αは、例えば、
図2に示したように、噴射孔プレート110の噴出側主面110Bにおける、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haおよびその周辺部分(噴出口端縁領域Ea)のうち、少なくとも周辺部分(噴出口端縁領域Ea)を含む領域である。撮像領域αは、例えば、
図2に示したように、噴射孔プレート110の噴出側主面110Bにおける、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと、噴出口Haの周辺部分(噴出口端縁領域Ea)とを含む領域である。このとき、画像データ(画像データ32Aまたは画像データIa)は、噴射孔プレート110の噴出側主面110Bにおける、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと、噴出口Haの周辺部分(噴出口端縁領域Ea)と含む領域の画像データである。ただし、撮像領域αは、例えば、
図2に示したように、隣接する噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haおよび噴出口端縁領域Eaを含まない。撮像システム20において、噴射孔プレート110の撮像領域αを撮像する際には、液体噴射ヘッド100に組み込まれる前の噴射孔プレート110が撮像される。
【0056】
撮像領域αは、例えば、アクチュエータプレート120の、噴射孔プレート110側の面における、組み込み時の噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haおよびその周辺部分のうち、少なくとも周辺部分を含む領域であってもよい。撮像領域αは、例えば、アクチュエータプレート120の、噴射孔プレート110側の面における、組み込み時の噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの噴出口端縁領域Eaと対向する領域を含むとともに、組み込み時の噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域を含む領域である。このとき、画像データ(画像データ32Aまたは画像データIa)は、アクチュエータプレート120の、噴射孔プレート110側の面における、組み込み時の噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの噴出口端縁領域Eaと対向する領域を含むとともに、組み込み時の噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域を含む領域の画像データである。ただし、アクチュエータプレート120の撮像領域αには、吐出チャネルC1e(溝部)もしくは吐出チャネルC2e(溝部)の一部が含まれ、ダミーチャネルC1d(溝部)もしくはダミーチャネルC2d(溝部)は含まれない。撮像システム20において、アクチュエータプレート120の撮像領域αを撮像する際には、液体噴射ヘッド100に組み込まれる前のアクチュエータプレート120が撮像される。
【0057】
噴射孔プレート110が光透過性の樹脂基板を含んで構成されている場合には、撮像領域αは、例えば、互いに貼り合わされている、噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分と対向する領域と、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域とを含む領域であってもよい。このとき、画像データ(画像データ32Aまたは画像データIa)は、互いに貼り合わされている、噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分と対向する領域と、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域とを含む領域の画像データである。ただし、互いに貼り合わされている、噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における撮像領域αには、吐出チャネルC1e(溝部)もしくは吐出チャネルC2e(溝部)の一部と対向する領域が含まれる。互いに貼り合わされている、噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における撮像領域αには、ダミーチャネルC1d(溝部)もしくはダミーチャネルC2d(溝部)と対向する領域が含まれなくてもよいし、含まれてもよい。撮像システム20において、互いに貼り合わされている、噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における撮像領域αを撮像する際には、液体噴射記録装置に組み込まれる前の、互いに貼り合わされている、噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120が撮像される。
【0058】
噴射孔プレート110が光透過性の樹脂基板を含んで構成されている場合には、撮像領域αは、例えば、
図3に示したように、液体噴射ヘッド100に組み込まれた噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分と対向する領域と、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域とを含む領域であってもよい。このとき、画像データ(画像データ32Aまたは画像データIa)は、液体噴射ヘッド100に組み込まれた噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分と対向する領域と、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域とを含む領域の画像データである。ただし、液体噴射ヘッド100の撮像領域αには、吐出チャネルC1e(溝部)もしくは吐出チャネルC2e(溝部)の一部と対向する領域が含まれる。液体噴射ヘッド100の撮像領域αには、ダミーチャネルC1d(溝部)もしくはダミーチャネルC2d(溝部)と対向する領域が含まれなくてもよいし、含まれてもよい。撮像システム20において、液体噴射ヘッド100の撮像領域αを撮像する際には、液体噴射記録装置に組み込まれる前の液体噴射ヘッド100が撮像される。
【0059】
光源部22は、撮像領域αを照明するための光を出射する。光源部22は、例えば、水銀ランプや、LEDなどを含んで構成されている。ハーフミラー23は、光源部22からの光を反射するとともに、撮像領域αでの反射光を透過する光学部品である。ハーフミラー23は、例えば、ガラス基板の表面に誘電体多層膜が積層された光学部品である。XYステージ24は、例えば、制御部25による制御に従って、噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120、または液体噴射ヘッド100をXY面内(カメラ21の光軸と平行な法線を有する面内)において移動させることにより、噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120、または液体噴射ヘッド100における撮像領域αを移動させる。制御部25は、情報処理装置10による制御に従って、カメラ21に対して撮像を指示したり、XYステージ24に対して撮像対象領域の移動を指示したりする。制御部25は、カメラ21から出力された画像データ(例えば、画像データ32Aまたは画像データIa)を、ネットワーク40を介して情報処理装置10に送信する。
【0060】
[動作]
次に、本開示の一実施の形態に係る予測システム1の動作について説明する。
【0061】
図8は、予測システム1において、液体噴射ヘッド100の吐出性能を予測し評価する手順の一例を表したものである。まず、情報処理装置10が撮像システム20に対して、撮像を指示する。すると、撮像システム20は、XYステージ24上の、噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120、互いに貼り合わされている噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120、または液体噴射ヘッド100における多数の撮像対象領域の内の1つの撮像対象領域が撮像領域αに移動するように、XYステージ24を制御する。続いて、撮像システム20は、撮像領域αを撮像し、それにより得られた画像データIaを、ネットワーク40を介して情報処理装置10に送信する。
【0062】
撮像システム20は、XYステージ24上の、噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120、互いに貼り合わされている噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120、または液体噴射ヘッド100における多数の撮像対象領域の内の残りの撮像対象領域が撮像の度に、順次、撮像領域αに移動するように、XYステージ24を制御する。撮像システム20は、撮像対象領域を移動させる度に、撮像領域αの撮像を実行し、それにより得られた画像データIaを、ネットワーク40を介して情報処理装置10に送信する。
【0063】
情報処理装置10は、全ての撮像対象領域に対応する複数の画像データIaを取得すると、取得した画像データIaごとに、画像データIaを含む予測データ生成指示を生成し、生成した予測データ生成指示を、ネットワーク40を介してサーバ装置30に送信する。サーバ装置30は、予測データ生成指示を取得すると、取得した予測データ生成指示に含まれる画像データIaを学習モデル33に入力する。学習モデル33は、画像データIaが入力されると、学習結果に基づいて、XYステージ24上の、噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120、もしくは、互いに貼り合わされている噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120が組み込まれた液体噴射ヘッド100、または、XYステージ24上の液体噴射ヘッド100の吐出結果の予測データDaを生成(予測)し、生成(予測)した予測データDaを制御部31に出力する。
【0064】
サーバ装置30は、取得した予測データDaを、ネットワーク40を介して情報処理装置10に送信する。情報処理装置10は、予測データDaを受信すると、受信した予測データDaを評価する。具体的には、情報処理装置10は、受信した予測データDaが一定の基準を満たすか否か判定する。その結果、予測データDaが一定の基準を満たす場合には、情報処理装置10は、「基準合格」という文字列(評価結果)を含む画像を、表示部13に表示させる。一方、予測データDaが一定の基準を満たさない場合には、情報処理装置10は、「基準不合格」という文字列(評価結果)を含む画像を、表示部13に表示させる。このようにして、予測システム1における、液体噴射ヘッド100の吐出性能の予測および評価が行われる。
【0065】
[効果]
次に、本開示の一実施の形態に係る予測システム1の効果について説明する。
【0066】
本実施の形態では、学習モデル33に対して、噴射孔H1,H2のそれぞれに対応する、噴射孔H1,H2の周辺部分を含む画像データIaが入力されることにより、学習モデル33から、液体噴射ヘッド100の吐出結果の予測データDaが取得される。これにより、吐出性能に大きな影響を与え得る、噴射孔H1,H2の周辺部分の情報に基づく予測データDaを得ることができる。その結果、液体噴射ヘッド100の吐出性能を的確に評価することができる。従って、廃棄に伴う組み立て費のロスや、吐出検査のための時間や人件費などをなくすことができる。
【0067】
本実施の形態では、画像データIaとして、液体噴射ヘッド100に対して組み込まれる前の噴射孔プレート110における噴射孔H1,H2の周辺部分を含む画像が撮像システム20から取得される。これにより、予測システム1において基準不合格となった場合でも、液体噴射ヘッド100に対する吐出検査を行っていた場合に発生していた、液体噴射ヘッド100自体の組み立て費や、液体噴射記録装置への液体噴射ヘッド100の組み立て費のロスを抑制することができる。また、吐出検査のための時間や人件費などをなくすことができる。
【0068】
本実施の形態では、画像データIaとして、液体噴射ヘッド100に対して組み込まれる前のアクチュエータプレート120における、噴射孔H1,H2の周辺部分を含む画像が撮像システム20から取得される。これにより、予測システム1において基準不合格となった場合でも、液体噴射ヘッド100に対する吐出検査を行っていた場合に発生していた、液体噴射ヘッド100自体の組み立て費や、液体噴射記録装置への液体噴射ヘッド100の組み立て費のロスを抑制することができる。また、吐出検査のための時間や人件費などをなくすことができる。
【0069】
本実施の形態では、画像データIaとして、互いに貼り合わされている噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における噴射孔H1,H2の周辺部分を含む画像が撮像システム20から取得される。これにより、噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120の両方から画像を取得することができるので、より入力情報を増やして、評価をより正確に行うことができる。また、予測システム1において基準不合格となった場合でも、液体噴射ヘッド100に対する吐出検査を行っていた場合に発生していた、液体噴射記録装置への液体噴射ヘッド100の組み立て費のロスを抑制することができる。
【0070】
本実施の形態では、画像データIaとして、液体噴射ヘッド100に組み込まれた噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における噴射孔H1,H2の周辺部分を含む画像が撮像システム20から取得される。これにより、噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120の両方から画像を取得することができるので、より入力情報を増やして、評価をより正確に行うことができる。また、予測システム1において基準不合格となった場合でも、液体噴射ヘッド100に対する吐出検査を行っていた場合に発生していた、液体噴射記録装置への液体噴射ヘッド100の組み立て費のロスを抑制することができる。
【0071】
本実施の形態では、画像データIaとして、グレースケールまたは色彩付の画像が撮像システム20により取得される。これにより、画像の濃淡や色彩に現れる微細な表面形状の違いを含む画像データIaを学習モデル33の入力データとすることができる。その結果、液体噴射ヘッド100の吐出性能を的確に予測し、評価することができる。
【0072】
本実施の形態では、目的変数としての吐出結果32Bは、学習用液体噴射ヘッドに対して吐出検査を行うことにより得られる、液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つの実測データである。また、学習モデル33から取得する予測データDaは、液体噴射ヘッド100に対して吐出検査を行ったとしたら得られるであろう、液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つに対する予測データである。これにより、液体噴射ヘッド100に対する吐出検査を行わなくても、液体噴射ヘッド100の吐出性能を的確に評価することができる。
【0073】
本実施の形態において、情報処理装置10が、予測データDaを、表示部13に表示させてもよい。また、本実施の形態において、情報処理装置10が、予測データDaおよび評価結果のうち少なくとも一方を外部の装置に出力してもよい。
【0074】
<3.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0075】
[変形例A]
図9は、上記実施の形態に係る予測システム1の機能ブロックの一変形例を表したものである。上記実施の形態において、例えば、
図9に示したように、サーバ装置30が省略されてもよい。この場合、情報処理装置10は、例えば、
図9に示したように、複数の画像データ32Aおよび複数の吐出結果32Bを記憶するメモリ32と、学習モデル33を有していてもよい。
【0076】
図10は、本変形例に係る予測システム1において、液体噴射ヘッド100の吐出性能を予測し評価する手順の一例を表したものである。まず、情報処理装置10が撮像システム20に対して、撮像を指示する。すると、撮像システム20は、XYステージ24上の、噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120、または液体噴射ヘッド100における多数の撮像対象領域の内の1つの撮像対象領域が、撮像領域αに移動するように、XYステージ24を制御する。続いて、撮像システム20は、撮像領域αを撮像し、それにより得られた画像データIaを、ネットワーク40を介して情報処理装置10に送信する。
【0077】
撮像システム20は、XYステージ24上の、噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120、または液体噴射ヘッド100における多数の撮像対象領域の内の残りの撮像対象領域が撮像の度に、順次、撮像領域αに移動するように、XYステージ24を制御する。撮像システム20は、撮像対象領域を移動させる度に、撮像領域αの撮像を実行し、それにより得られた画像データIaを、ネットワーク40を介して情報処理装置10に送信する。
【0078】
情報処理装置10は、全ての撮像対象領域に対応する複数の画像データIaを取得すると、取得した画像データIaを学習モデル33に入力する。学習モデル33は、画像データIaが入力されると、学習結果に基づいて、XYステージ24上の、噴射孔プレート110、アクチュエータプレート120、もしくは互いに貼り合わされている噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120が組み込まれた液体噴射ヘッド100、または、XYステージ24上の液体噴射ヘッド100の吐出結果の予測データDaを生成(予測)し、生成(予測)した予測データDaを制御部11に出力する。
【0079】
情報処理装置10は、取得した予測データDaを評価する。具体的には、情報処理装置10は、取得した予測データDaが一定の基準を満たすか否か判定する。その結果、予測データDaが一定の基準を満たす場合には、情報処理装置10は、「基準合格」という文字列(評価結果)を含む画像を、表示部13に表示させる。一方、予測データDaが一定の基準を満たさない場合には、情報処理装置10は、「基準不合格」という文字列(評価結果)を含む画像を、表示部13に表示させる。このようにして、本変形例に係る予測システム1における、液体噴射ヘッド100の吐出性能の予測および評価が行われる。
【0080】
本変形例に係る予測システム1では、上記実施の形態と同様に、学習モデル33に対して、噴射孔H1,H2のそれぞれに対応する、噴射孔H1,H2の周辺部分を含む画像データIaが入力されることにより、学習モデル33から、液体噴射ヘッド100の吐出結果の予測データDaが取得される。これにより、吐出性能に大きな影響を与え得る、噴射孔H1,H2の周辺部分の情報に基づく予測データDaを得ることができる。その結果、液体噴射ヘッド100の吐出性能を的確に評価することができる。
【0081】
本変形例において、情報処理装置10が、予測データDaを、表示部13に表示させてもよい。また、本変形例において、情報処理装置10が、予測データDaおよび評価結果のうち少なくとも一方を外部の装置に出力してもよい。
【0082】
[変形例B]
上記実施の形態およびその変形例において、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の噴射孔プレート、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前のアクチュエータプレート、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の、互いに貼り合わされている噴射孔プレートおよびアクチュエータプレート、および学習用液体噴射ヘッドのいずれかをXY面内(カメラ21の光軸と平行な法線を有する面内)で所定の角度θ、回転させたものの撮像領域αを、撮像システム20を用いて撮像することにより得られた画像データが、複数の画像データ32A(学習用外観画像)に含まれていてもよい。
【0083】
吐出結果32B(学習用液体噴射ヘッドの吐出結果)が、液滴の吐出角度φであるとする。このとき、液滴の吐出ベクトルvは、以下の式(1)で表すことができる。
|v|(cosφ,sinφ)…(1)
【0084】
ここで、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の噴射孔プレート、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前のアクチュエータプレート、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の、互いに貼り合わされている噴射孔プレートおよびアクチュエータプレート、もしくは学習用液体噴射ヘッドを、XY面内(カメラ21の光軸と平行な法線を有する面内)で角度θ、回転させたとする。このとき、液滴の吐出ベクトルR(v)は、以下の式(2)で表すことができる。
R(v)=|v|(cos(φ+θ),sin(φ+θ))…(2)
【0085】
このように、撮像対象物を所定の角度θ、回転させて画像データ32Aを生成することで、撮像対象物を回転させる前の画像データ32Aとは学習データとしては異なる画像データ32Aを取得することができる。これにより、学習用の噴射孔の数が少ない場合であっても、多くの学習データを生成することができる。
【0086】
また、上記実施の形態およびその変形例において、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の噴射孔プレート、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前のアクチュエータプレート、学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の、互いに貼り合わされている噴射孔プレートおよびアクチュエータプレート、および学習用液体噴射ヘッドのいずれかの画像を所定の角度θ、回転させることにより得られる画像が、複数の画像データ32A(学習用外観画像)に含まれていてもよい。
【0087】
このように、取得した画像を所定の角度θ、回転させることにより、新たな画像データ32Aを生成することで、回転させる前の画像データ32Aとは学習データとしては異なる画像データ32Aを取得することができる。これにより、学習用の噴射孔プレートの数が少ない場合であっても、多くの学習データを生成することができる。その結果、撮像時間を増やすことなく、学習用の画像データ32Aの数を増やすことができる。
【0088】
本変形例において、制御部11は、学習モデル33に学習させる際に、回転させる前の画像データ32Aと、回転させた後の画像データ32Aとが学習データとしては互いに異なるデータとして扱われるように、画像データ32Aに対して所定の処理を行う。制御部11は、例えば、学習モデル33に学習させる際に、画像データ32Aを、
図7に示したように、画像データ32Aに含まれる全てのピクセルデータを一行に整形したシリーズデータに変換し、それにより得られたシリーズデータを学習モデル33に入力する。制御部11は、例えば、学習モデル33に学習させる際に、画像データ32Aを、互いに隣接する複数のピクセルデータごとに所定の処理を行い、それにより得られた畳み込みデータを学習モデル33に入力する。このように、本変形例では、学習モデル33に学習させる際に、画像データ32Aに対して上述したような処理を行うことにより、1つの画像データ32Aから、学習データとしては異なる複数の画像データ32Aを生成することができる。従って、学習用の噴射孔プレートの数が少ない場合であっても、多くの学習データを生成することができる。
【0089】
[変形例C]
上記実施の形態およびその変形例に係る撮像システム20において、ハーフミラー23が省略されていてもよい。ただし、その場合には、光源部22がカメラ21の光軸を中心軸とする環状の光源で構成されていてもよい。このようにすることで、撮像領域αに対して、より均一な光強度分布を持つ光を照射することができるので、画像データ(画像データ32A,画像データIa)における、光源部22の光強度分布の不均一性に起因するコントラストへの影響を低減することができる。
【0090】
[変形例D]
図11は、上記変形例Aに係る予測システム1の一変形例を表したものである。上記変形例Aにおいて、例えば、
図11に示したように、撮像システム20に含まれるカメラ21やXYステージ24を制御する制御部25が情報処理装置10に設けられていてもよい。この場合、ネットワーク40を介さずに、情報処理装置10内の制御部25が撮像システム20を制御する。このようにした場合であっても、上記変形例と同様の効果が得られる。
【0091】
[変形例E]
上記実施の形態およびその変形例において、撮像領域αは、噴射孔プレート110の噴出側主面110Bにおける、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分(噴出口端縁領域Ea)を含み、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haを含まない領域であってもよい。この場合、画像データ(画像データ32Aまたは画像データIa)は、噴射孔プレート110の噴出側主面110Bにおける、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分(噴出口端縁領域Ea)を含み、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haを含まない領域の画像データである。
【0092】
このようにした場合であっても、吐出性能に大きな影響を与え得る、噴射孔H1,H2の周辺部分の情報に基づく予測データDaを得ることができる。その結果、液体噴射ヘッド100の吐出性能を的確に評価することができる。従って、廃棄に伴う組み立て費のロスや、吐出検査のための時間や人件費などをなくすことができる。
【0093】
また、上記実施の形態およびその変形例において、撮像領域αは、アクチュエータプレート120の、噴射孔プレート110側の面における、組み込み時の噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分と対向する領域を含むとともに、組み込み時の噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域を含まない領域であってもよい。この場合、画像データ(画像データ32Aまたは画像データIa)は、アクチュエータプレート120の、噴射孔プレート110側の面における、組み込み時の噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分と対向する領域を含むとともに、組み込み時の噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域を含まない領域の画像データである。
【0094】
このようにした場合であっても、吐出性能に大きな影響を与え得る、噴射孔H1,H2の周辺部分と対向する領域の情報に基づく予測データDaを得ることができる。その結果、液体噴射ヘッド100の吐出性能を的確に評価することができる。従って、廃棄に伴う組み立て費のロスや、吐出検査のための時間や人件費などをなくすことができる。
【0095】
また、上記実施の形態およびその変形例において、噴射孔プレート110が光透過性の樹脂基板を含んで構成されている場合には、撮像領域αは、互いに貼り合わされている噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分と対向する領域を含むとともに、互いに貼り合わされている噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域を含まない領域であってもよい。この場合、画像データ(画像データ32Aまたは画像データIa)は、互いに貼り合わされている噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分と対向する領域を含むとともに、互いに貼り合わされている噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域を含まない領域の画像データである。
【0096】
このようにした場合であっても、吐出性能に大きな影響を与え得る、噴射孔H1,H2の周辺部分と対向する領域の情報に基づく予測データDaを得ることができる。その結果、液体噴射ヘッド100の吐出性能を的確に評価することができる。従って、廃棄に伴う組み立て費のロスや、吐出検査のための時間や人件費などをなくすことができる。
【0097】
また、上記実施の形態およびその変形例において、噴射孔プレート110が光透過性の樹脂基板を含んで構成されている場合には、撮像領域αは、液体噴射ヘッド100に組み込まれた噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分と対向する領域を含むとともに、液体噴射ヘッド100に組み込まれた噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域を含まない領域であってもよい。この場合、画像データ(画像データ32Aまたは画像データIa)は、液体噴射ヘッド100に組み込まれた噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haの周辺部分と対向する領域を含むとともに、液体噴射ヘッド100に組み込まれた噴射孔プレート110およびアクチュエータプレート120における、噴射孔H1もしくは噴射孔H2の噴出口Haと対向する領域を含まない領域の画像データである。
【0098】
このようにした場合であっても、吐出性能に大きな影響を与え得る、噴射孔H1,H2の周辺部分と対向する領域の情報に基づく予測データDaを得ることができる。その結果、液体噴射ヘッド100の吐出性能を的確に評価することができる。従って、廃棄に伴う組み立て費のロスや、吐出検査のための時間や人件費などをなくすことができる。
【0099】
[その他の変形例]
また、例えば、上記実施の形態およびその変形例では、液体噴射ヘッド100における各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態およびその変形例で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0100】
例えば、上記実施の形態およびその変形例では、噴射孔列111,112がそれぞれX軸方向に沿って直線状に延在している場合について説明したが、この例には限らず、例えば、噴射孔列111,112がそれぞれ、斜め方向に延在していてもよい。更に、噴射孔H1,H2の形状についても、上記実施の形態およびその変形例で説明したような円形状には限られず、例えば、三角形状等の多角形状や、楕円形状や星型形状などであってもよい。
【0101】
また、例えば、上記実施の形態およびその変形例では、液体噴射ヘッド100がサイドシュートタイプとなっていたが、この例には限らず、例えば、液体噴射ヘッド100が他のタイプとなっていてもよい。また、例えば、上記実施の形態およびその変形例では、液体噴射ヘッド100が循環式となっている場合について説明したが、この例には限らず、例えば、液体噴射ヘッド100が循環しない他の方式となっていてもよい。
【0102】
また、例えば、上記実施の形態およびその変形例で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0103】
また、上記実施の形態およびその変形例では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、インクジェットプリンタを挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「液体噴射ヘッド」や「噴射孔プレート」を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「液体噴射ヘッド」や「噴射孔プレート」を適用するようにしてもよい。
【0104】
また、上記実施の形態およびその変形例では、液体噴射記録装置の記録対象物は記録紙であったが、本開示の「液体噴射記録装置」の記録対象物はこれに限られない。例えば、ボール紙、布、プラスチック、金属など、様々な材料にインクを噴射することによって、文字や模様を形成することができる。また、記録対象物は平面形状である必要もなく、食品、タイル等の建材、家具、自動車など様々な立体物の塗装や装飾を行うこともできる。さらに、本開示の「液体噴射記録装置」によって、繊維を捺染することができ、あるいは噴射後にインクを固化させることによって立体造形を行うこともできる(いわゆる3Dプリンタ)。
【0105】
更に、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0106】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0107】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
複数の予測用噴射孔から液滴を噴射する予測用液体噴射ヘッドの前記予測用噴射孔ごとの吐出結果を予測する予測システムであって、
前記予測用噴射孔のそれぞれに対応する、前記予測用噴射孔の周辺部分を含む予測用外観画像を取得する外観画像取得部と、
複数の学習用噴射孔から液滴を噴射する学習用液体噴射ヘッドの前記学習用噴射孔のそれぞれに対応する、前記学習用噴射孔の周辺部分を含む学習用外観画像を説明変数とするとともに、前記学習用液体噴射ヘッドの吐出結果を目的変数として機械学習を行うことにより得られた学習モデルに対して前記予測用外観画像を入力することにより、前記学習モデルから、前記予測用液体噴射ヘッドの吐出結果の予測データを取得する予測データ取得部と
を備えた
予測システム。
(2)
前記外観画像取得部は、前記予測用外観画像として、前記予測用液体噴射ヘッドに対して組み込まれる前の、前記予測用噴射孔が形成された噴射孔プレートにおける前記予測用噴射孔およびその周辺部分のうち、少なくとも周辺部分を含む画像を取得する
(1)に記載の予測システム。
(3)
前記外観画像取得部は、前記予測用外観画像として、前記予測用液体噴射ヘッドに対して組み込まれる前の、前記予測用噴射孔に対する液体の供給を制御するアクチュエータプレートにおける、組み込み時の前記予測用噴射孔およびその周辺部分のうち、少なくとも周辺部分に対応する部分を含む領域の画像を取得する
(1)に記載の予測システム。
(4)
前記外観画像取得部は、前記予測用外観画像として、互いに貼り合わされている、前記予測用噴射孔が形成された噴射孔プレートおよび前記予測用噴射孔に対する液体の供給を制御するアクチュエータプレートにおける前記予測用噴射孔およびその周辺部分のうち、少なくとも周辺部分を含む画像を取得する
(1)に記載の予測システム。
(5)
前記外観画像取得部は、前記予測用外観画像として、前記予測用液体噴射ヘッドにおける前記予測用噴射孔の周辺部分を含む画像を取得する
(1)に記載の予測システム。
(6)
前記外観画像取得部は、前記予測用外観画像として、グレースケールもしくは色彩付の画像を取得する
(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の予測システム。
(7)
前記目的変数としての吐出結果は、前記学習用液体噴射ヘッドに対して吐出検査を行うことにより得られる、液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つの実測データであり、
前記学習モデルから取得する予測データは、前記予測用液体噴射ヘッドに対して吐出検査を行ったとしたら得られるであろう、液滴の吐出角度、吐出速度および液滴量の少なくとも1つに対する予測データである
(1)ないし(6)のいずれか1つに記載の予測システム。
(8)
前記説明変数としての学習用外観画像には、前記学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の、前記学習用噴射孔が形成された噴射孔プレート、前記学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の、前記学習用噴射孔に対する液体の供給を制御するアクチュエータプレート、および、互いに貼り合わされている、前記噴射孔プレートおよび前記アクチュエータプレートのいずれかを所定の角度、回転させたものの画像が含まれる
(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の予測システム。
(9)
前記説明変数としての学習用外観画像には、前記学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の、前記学習用噴射孔が形成された噴射孔プレート、前記学習用液体噴射ヘッドに組み込まれる前の、前記学習用噴射孔に対する液体の供給を制御するアクチュエータプレート、および、互いに貼り合わされている、前記噴射孔プレートおよび前記アクチュエータプレートのいずれかの画像を所定の角度、回転させることにより得られる画像が含まれる
(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の予測システム。
(10)
複数の予測用噴射孔から液滴を噴射する予測用液体噴射ヘッドの前記予測用噴射孔ごとの吐出結果を予測する予測方法であって、
前記予測用噴射孔のそれぞれに対応する、前記予測用噴射孔の周辺部分を含む予測用外観画像を取得することと、
複数の学習用噴射孔から液滴を噴射する学習用液体噴射ヘッドの前記学習用噴射孔のそれぞれに対応する、前記学習用噴射孔の周辺部分を含む学習用外観画像を説明変数とするとともに、前記学習用液体噴射ヘッドの吐出結果を目的変数として機械学習を行うことにより得られた学習モデルに対して前記予測用外観画像を入力することにより、前記学習モデルから、前記予測用液体噴射ヘッドの吐出結果の予測データを取得することと
を含む
予測方法。
【符号の説明】
【0108】
1…予測システム1…情報処理装置、10A…表示面、11…制御部、12…メモリ、13…表示部、14…入力部、15…ネットワークIF、20…撮像システム、21…カメラ、22…光源部、23…ハーフミラー、24…XYステージ、25…制御部、30…サーバ装置、31…制御部、32…メモリ、32A,Ia…画像データ、33…学習モデル、34…ネットワークIF、40…ネットワーク、100…液体噴射ヘッド、110A…流入側主面、110B…噴出側主面、110…噴射孔プレート、120…アクチュエータプレート、120A…絶縁膜、121,122…チャネル列、130…カバープレート、131a,132a…入口側共通インク室、131b,132b…出口側共通インク室、140…フレキシブルプリント基板、150…インク、C1,C2…チャネル、C1d,C2d…ダミーチャネル、C1e,C2e…吐出チャネル、Da…予測データ、Ea…噴出口端縁領域、Ed…駆動電極、Eda…アクティブ電極、Edc…コモン電極、Wd…駆動壁、H1,H2…噴射孔、Hb…流入口、Sa…供給スリット、Sb…排出スリット、α…撮像領域。