(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 65/18 20060101AFI20240418BHJP
F16D 55/2255 20060101ALI20240418BHJP
B60T 13/38 20060101ALI20240418BHJP
B60T 13/36 20060101ALI20240418BHJP
F16H 21/24 20060101ALI20240418BHJP
F16D 121/04 20120101ALN20240418BHJP
F16D 125/04 20120101ALN20240418BHJP
F16D 125/06 20120101ALN20240418BHJP
F16D 125/68 20120101ALN20240418BHJP
F16D 121/16 20120101ALN20240418BHJP
F16D 125/32 20120101ALN20240418BHJP
【FI】
F16D65/18
F16D55/2255 103F
B60T13/38
B60T13/36
F16H21/24
F16D121:04
F16D125:04
F16D125:06
F16D125:68
F16D121:16
F16D125:32
(21)【出願番号】P 2019204549
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大野 智也
(72)【発明者】
【氏名】内海 崇
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/123316(WO,A1)
【文献】特開2008-213767(JP,A)
【文献】実開昭50-087378(JP,U)
【文献】特開2012-172703(JP,A)
【文献】実開昭54-183582(JP,U)
【文献】特開2008-101766(JP,A)
【文献】特表2004-516431(JP,A)
【文献】特開昭60-044655(JP,A)
【文献】特開2010-065751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/18
F16D 55/2255
B60T 13/38
B60T 13/36
F16H 21/24
F16D 121/04
F16D 125/04
F16D 125/06
F16D 125/68
F16D 121/16
F16D 125/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの軸線方向に沿ってピストンとともに直線運動する出力軸と、
摩擦材と被制動部材との相対位置を変化させる回転アームを前記出力軸の力を受けて駆動する回転レバーとを備え、
前記回転レバーは、前記出力軸が直線運動するときに前記出力軸との接触位置が変わるレバー接触部を備え、
前記出力軸と前記レバー接触部との一方に挿入孔を備え、
前記出力軸と前記レバー接触部との他方に前記挿入孔に挿入されて、前記接触位置が変わる
曲面形状の曲面部を備え、
前記シリンダの軸線方向において、前記出力軸が前記シリンダから突出する方向を突出方向、当該突出方向の反対方向を反突出方向としたとき、
前記出力軸と前記レバー接触部との接触位置が、前記回転レバーの回転中心よりも前記反突出方向側から前記回転レバーの回転中心よりも前記突出方向側の範囲内で変わるように、前記回転レバーが配置されている
ブレーキ装置。
【請求項2】
前記曲面部は、回転する回転体を備える
請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記ピストンは、
前記シリンダの軸線方向において前記シリンダの内部空間を仕切る仕切り板と、
前記仕切り板の外縁から前記シリンダの軸線方向に延びるガイド部とを備えている
請求項1又は請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記シリンダの軸線方向において、前記出力軸が前記シリンダから突出する方向を突出方向、当該突出方向の反対方向を反突出方向としたとき、
前記出力軸が前記突出方向に直線運動するときに前記回転レバーが一方側に回転し、
前記出力軸が前記反突出方向に直線運動するときに前記回転レバーが他方側に回転する
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記出力軸は、
前記回転レバーに対して前記シリンダの軸線方向の前記シリンダ側から接触する第1接触部と、
前記回転レバーに対して前記シリンダの軸線方向の前記シリンダ側とは反対側から接触する第2接触部とを備える
請求項4に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記出力軸は、前記シリンダの内部の流体が給排されることにより前記シリンダの軸線方向に直線運動するものであり、
前記出力軸における前記回転レバーとは反対側において前記出力軸と同軸に配置された駆動軸と、
前記駆動軸を前記シリンダの軸線方向における前記出力軸側へと押し付ける弾性部材とを備え、
前記弾性部材の押し付け力によって前記駆動軸が前記出力軸又は前記ピストンを前記シリンダの軸線方向における前記回転レバー側に移動させたときに、前記シリンダの内部の流体圧に拘らず前記出力軸が前記回転レバー側に直線運動可能である
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両に用いられるディスクブレーキ式のブレーキ装置が記載されている。このブレーキ装置は、筒形状のシリンダを備えている。シリンダの内部には、当該シリンダの内部を移動するピストンが収容されている。ピストンには、出力軸が固定されている。これらピストン及び出力軸は、シリンダの中心軸線に対して傾動可能になっている。出力軸の先端部には、回転可能に支持された回転レバーの一端部が連結されている。また、ブレーキ装置は、車軸に固定されたディスクを挟む一対の回転アームを備えている。この一対の回転アームのうち、一方の回転アームには、回転レバーの他端部が連結されている。さらに、この回転アームにはブレーキパッドが取り付けられている。
【0003】
特許文献1のブレーキ装置では、シリンダの内圧が大きくなると、ピストンが移動して出力軸が突出する。すると、出力軸に連結された回転レバーが回転してそれに伴い回転アームも回転する。また、回転アームが回転することでブレーキパッドがディスクに近づくように移動する。そして、ブレーキパッドがディスクに対して接触して当該ディスクに押し付けられることで、ディスクにブレーキ力が作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のブレーキ装置においては、出力軸が回転レバーを押す力のうち、回転レバーの接線方向に作用する力が回転レバーを回転させようとする力、すなわち回転トルクとして作用する。しかし、特許文献1のブレーキ装置では、回転レバーが回転して当該回転レバーの回転位置が変化するのに従って出力軸が傾動する。そのため、出力軸が回転レバーを押す方向が定まらず、回転レバーの回転トルクが回転レバーの回転位置に応じて変化する。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、出力軸が回転レバーを回転させる回転トルクの変動を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのブレーキ装置は、シリンダの軸線方向に沿ってピストンとともに直線運動する出力軸と、摩擦材と被制動部材との相対位置を変化させる回転アームを前記出力軸の力を受けて駆動する回転レバーとを備え、前記回転レバーは、前記出力軸が直線運動するときに前記出力軸との接触位置が変わるレバー接触部を備える。
【0008】
上記構成によれば、回転レバーの回転位置に応じて、回転レバーのレバー接触部と出力軸との接触位置が変わるため、出力軸の動作方向は、常に同一方向である。そして、上記構成では、回転レバーの接線方向に対する出力軸の傾きが大きくなって出力軸から回転レバーの接線方向に作用する力が減少するほど、回転レバーの回転中心から回転レバー及び出力軸の接触位置までの距離が大きくなる。そのため、出力軸が回転レバーを回転させる回転トルクの変動を抑制できる。
【0009】
上記構成において、前記出力軸及び前記レバー接触部は、線接触又は点接触し、前記出力軸及び前記レバー接触部の少なくとも一方の接触部分は、曲面形状の曲面部を備えていてもよい。上記構成では、例えば回転レバーのレバー接触部が出力軸と面接触する構成に比べて、出力軸と回転レバーのレバー接触部との接触位置が変わる際の抵抗を低減できる。
【0010】
上記構成において、前記出力軸及び前記レバー接触部の少なくとも一方の接触部分は、回転する回転体を備えていてもよい。上記構成によれば、出力軸と回転レバーとの接触位置が変わる際に回転体が回転する。そのため、出力軸と回転レバーとの接触位置が変わる際の抵抗を低減できる。
【0011】
上記ブレーキ装置において、前記シリンダの軸線方向において、前記出力軸が前記シリンダから突出する方向を突出方向、当該突出方向の反対方向を反突出方向としたとき、前記出力軸と前記レバー接触部との接触位置が、前記回転レバーの回転中心よりも前記反突出方向側から前記回転レバーの回転中心よりも前記突出方向側の範囲内で変わるように、前記回転レバーが配置されていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、出力軸と回転レバーとの接触範囲が同一であれば、出力軸と回転レバーとの接触位置が回転レバーの回転中心よりも突出方向側でのみ変わる構成に比べて、回転レバーの回転範囲を大きくできる。
【0013】
上記ブレーキ装置において、前記ピストンは、前記シリンダの軸線方向において前記シリンダの内部空間を仕切る仕切り板と、前記仕切り板の外縁から前記シリンダの軸線方向に延びるガイド部とを備えていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、ピストンが直線運動する際に、シリンダの軸線方向に対してがたつくことを抑制できる。これにより、出力軸がシリンダの軸線方向に沿うように直線運動させやすい。
【0015】
上記ブレーキ装置において、前記シリンダの軸線方向において、前記出力軸が前記シリンダから突出する方向を突出方向、当該突出方向の反対方向を反突出方向としたとき、前記出力軸が前記突出方向に直線運動するときに前記回転レバーが一方側に回転し、前記出力軸が前記反突出方向に直線運動するときに前記回転レバーが他方側に回転してもよい。上記構成では、回転レバーの両方向の回転を出力軸の直線運動により実現できる。
【0016】
上記ブレーキ装置において、前記出力軸は、前記回転レバーに対して前記シリンダの軸線方向の前記シリンダ側から接触する第1接触部と、前記回転レバーに対して前記シリンダの軸線方向の前記シリンダ側とは反対側から接触する第2接触部とを備えていてもよい。
【0017】
上記構成によれば、出力軸が突出するときには、当該出力軸の第1接触部が回転レバーに接触して回転レバーが回転する。そして、出力軸が引っ込むときには、当該出力軸の第2接触部が回転レバーに接触し、回転レバーが先ほどとは反対まわりで回転する。このように出力軸と接触するだけで回転レバーの両方向の回転を実現できるため、出力軸や回転レバーの周りの構成が煩雑になることを抑制できる。
【0018】
上記ブレーキ装置において、前記出力軸は、前記シリンダの内部の流体が給排されることにより前記シリンダの軸線方向に直線運動するものであり、前記出力軸における前記回転レバーとは反対側において前記出力軸と同軸に配置された駆動軸と、前記駆動軸を前記シリンダの軸線方向における前記出力軸側へと押し付ける弾性部材とを備え、前記弾性部材の押し付け力によって前記駆動軸が前記出力軸又は前記ピストンを前記シリンダの軸線方向における前記回転レバー側に移動させたときに、前記シリンダの内部の流体圧に拘らず前記出力軸が前記回転レバー側に直線運動可能であってもよい。
【0019】
上記構成においては、シリンダの内部の流体圧に拘わらず、駆動軸によって出力軸が直線運動する。したがって、上記構成では、例えばシリンダの内部に流体が供給されずに流体圧による出力軸からの駆動力が回転レバーに伝達されないときであっても、駆動軸からの駆動力が出力軸を介して回転レバーに伝達され、駆動軸の駆動力によって回転レバーを回転させる際の回転トルクの変動も抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、出力軸が回転レバーを回転させる回転トルクの変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】ブレーキ装置における非制動時の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、ブレーキ装置の一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。先ず、鉄道車両における複数の車両のうちの1つの車両の概略構成を説明する。
図1に示すように、車両10は、車両前後方向(
図1における左右方向)に離間して配置された2つの台車41を備えている。各台車41には、車幅方向(
図1における紙面手前奥方向)に延びる車軸42が回転可能に取り付けられている。車軸42は、台車41毎に、車両前後方向に離間して2つ配置されている。車軸42の両端部には、略円板形状の車輪43が固定されている。また、車軸42における2つの車輪43の間には、略円板形状のディスク44が固定されている。ディスク44は、車幅方向に離間して2つ配置されている。したがって、1つの台車41につき、4つの車輪43及び4つのディスク44が設けられている。なお、ディスク44が被制動部材である。
【0023】
台車41の上には、圧縮空気の弾性力によって振動を吸収する空気ばね30が取り付けられている。空気ばね30の上には、車室空間を区画する車体20が取り付けられている。車体20は、全体として長方体箱形状であり、車両前後方向に長尺になっている。
【0024】
台車41には、ディスク44の回転を制動するためのブレーキ装置50が取り付けられている。ブレーキ装置50は、ディスク44を、一対のブレーキパッド86によって挟み込むことでディスク44の回転を制動させる、いわゆるディスクブレーキ装置のキャリパーブレーキである。車両10には、合計8つのディスク44に対応して合計8つのブレーキ装置50が取り付けられている。なお、
図1では、車幅方向の一方に位置する4つのディスク44及び4つのブレーキ装置50のみを図示している。
【0025】
車両10には、圧縮空気を供給する空気供給源46が搭載されている。空気供給源46からは、供給通路48が延びている。供給通路48は、途中で8つに分岐しており、分岐した各通路は、8つのブレーキ装置50のそれぞれに接続されている。供給通路48には、当該供給通路48を流通する圧縮空気の量を制御する制御弁47が取り付けられている。制御弁47は、供給通路48における分岐部分よりも空気供給源46寄りに配置されている。したがって、制御弁47は、8つのブレーキ装置50に対して1つ設けられている。なお、上記の制御弁47は、制御装置90によって制御される。また、空気供給源46には、図示しない通路を介して空気ばね30が接続されている。空気ばね30は、空気供給源46からの圧縮空気の供給を受ける。
【0026】
次に、ブレーキ装置50の具体的な構成について説明する。
図2に示すように、ブレーキ装置50は、外観が円柱形状の第1シリンダ51を備えている。第1シリンダ51の中心軸線は、車幅方向に沿っている。第1シリンダ51の内部には円柱状の内部空間が区画されている。第1シリンダ51における軸線方向H側(
図2における下側)の底部においては、貫通孔51Aが貫通している。貫通孔51Aは、第1シリンダ51における軸線方向H側の底部の中央に位置している。また、第1シリンダ51における軸線方向I側(
図2における上側)の底部においては、貫通孔51Bが貫通している。貫通孔51Bは、第1シリンダ51における軸線方向I側の底部の中央に位置している。第1シリンダ51は、当該第1シリンダ51の軸線方向に延びるブラケット70に固定されている。なお、このブラケット70は、台車41に対して揺動可能に支持されている。したがって、第1シリンダ51は、ブラケット70を介して台車41に支持されている。
【0027】
第1シリンダ51の内部には、当該第1シリンダ51の軸線方向に沿って直線運動する第1ピストン52が配置されている。第1ピストン52の仕切り板52Aは、略円板形状になっている。仕切り板52Aの外径は、第1シリンダ51の内径と略同じになっている。仕切り板52Aは、第1シリンダ51の軸線方向において当該第1シリンダ51の内部空間を2つに仕切っている。仕切り板52Aの外縁からは、軸線方向H側に向かってガイド部52Bが延びている。ガイド部52Bは、仕切り板52Aの外縁全周から延びており、全体として円環形状になっている。ガイド部52Bの外周面は、第1シリンダ51の内周面に接触している。
【0028】
第1ピストン52の仕切り板52Aの中央からは、軸線方向H側に向かって円柱状の出力軸53が延びている。第1ピストン52及び出力軸53は一体的に成形されている。出力軸53は、第1ピストン52とともに第1シリンダ51の軸線方向に沿って直線運動する。出力軸53の先端部は、第1シリンダ51の貫通孔51Aを介して第1シリンダ51の外部にまで至っている。出力軸53の先端部においては、当該出力軸53の中心軸線に直交する方向に挿入孔53Aが貫通している。なお、軸線方向H側が、出力軸53が第1シリンダ51から突出する突出方向である。また、軸線方向I側が、突出方向の反対方向の反突出方向である。
【0029】
第1シリンダ51の内部には、当該第1シリンダ51における軸線方向H側から軸線方向I側に第1ピストン52を押し付ける第1バネ54が配置されている。第1バネ54は、第1シリンダ51における軸線方向H側の底部と第1ピストン52の仕切り板52Aとの間に位置している。また、第1シリンダ51の内部空間における第1ピストン52よりも軸線方向I側の空間は、供給通路48の内部空間に連通している。したがって、第1シリンダ51の内部空間における第1ピストン52よりも軸線方向I側の空間には、空気供給源46からの圧縮空気が導入可能になっている。
【0030】
第1シリンダ51における軸線方向I側の底部には、外観が円柱形状の第2シリンダ81が固定されている。第2シリンダ81の中心軸線は、第1シリンダ51の中心軸線と同軸になっている。第2シリンダ81の内部には、円柱状の内部空間が区画されている。第2シリンダ81における軸線方向H側の底部においては、貫通孔81Aが貫通している。貫通孔81Aは、第2シリンダ81における軸線方向H側の底部の中央に位置しており、第1シリンダ51の貫通孔51Bと連通している。
【0031】
第2シリンダ81の内部には、当該第2シリンダ81の軸線方向に沿って直線運動する第2ピストン82が配置されている。第2ピストン82は、略円板形状になっている。第2ピストン82の外径は、第2シリンダ81の内径と略同じになっている。第2ピストン82は、第2シリンダ81の軸線方向において当該第2シリンダ81の内部空間を2つに仕切っている。
【0032】
第2ピストン82の中央からは、軸線方向H側に向かって円柱状の駆動軸83が延びている。第2ピストン82及び駆動軸83は一体的に成形されている。駆動軸83は、第2シリンダ81の貫通孔81A及び第1シリンダ51の貫通孔51Bに挿通されている。また、駆動軸83は、第1シリンダ51の軸線方向における回転レバー55とは反対側において出力軸53と同軸に配置されている。この駆動軸83は、第2ピストン82とともに第2シリンダ81の軸線方向に沿って直線運動可能になっている。
【0033】
第2シリンダ81の内部には、当該第2シリンダ81における軸線方向I側から軸線方向H側へと第2ピストン82を押し付ける第2バネ84が配置されている。第2バネ84は、第2シリンダ81における軸線方向I側の底部と第2ピストン82との間に位置している。この第2バネ84の押し付け力は、第1バネ54の押し付け力よりも大きくなっている。なお、第2バネ84は、駆動軸83を第1シリンダ51の軸線方向における出力軸53側へと押し付ける弾性部材である。また、第2シリンダ81の内部空間における第2ピストン82よりも軸線方向H側の空間は、供給通路48の内部空間に連通している。したがって、第2シリンダ81の内部空間における第2ピストン82よりも軸線方向H側の空間には、空気供給源46からの圧縮空気が導入可能になっている。
【0034】
出力軸53には、出力軸53が直線運動することで当該出力軸53の直線運動を回転運動に変換して回転する回転レバー55が連結されている。回転レバー55の円状部56は、平面視で円形状になっており、その円の中心軸線が
図1の車両上下方向(
図2における紙面手前奥方向)に沿っている。円状部56は、ブラケット70における軸線方向H側の端部に回転可能に支持されている。そして、この円状部56の中心軸線が、回転レバー55の回転中心P1になっている。円状部56の外周面からは、略棒形状のレバー本体57が延びている。また、回転レバー55は、レバー本体57に対して回転するローラ58を備えている。ローラ58は、レバー本体57の先端部に支持されている。ローラ58は、略円柱形状になっており、その中心軸線を中心として回転可能になっている。具体的には、ローラ58は、ベアリングが内蔵されたローラフォロアである。また、ローラ58の中心軸線は、第1シリンダ51の軸線方向に対して直交しており、円状部56の中心軸線と平行になっている。レバー本体57の先端部及びローラ58は、出力軸53の挿入孔53Aに挿入されている。なお、ローラ58は、略円柱形状であるため、曲面形状の曲面部として機能する。また、ローラ58は、回転体として機能する。
【0035】
レバー本体57の先端部及びローラ58が出力軸53の挿入孔53Aに挿入された状態においては、出力軸53が軸線方向H側に直線運動すると、挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向I側がローラ58に接触する。したがって、挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向I側の部分が、回転レバー55の一部であるローラ58に対して軸線方向の第1シリンダ51側から接触する第1接触部として機能する。なお、ローラ58は、挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向I側の部分に対して線接触する。また、レバー本体57の先端部及びローラ58が出力軸53の挿入孔53Aに挿入された状態においては、出力軸53が軸線方向I側に直線運動すると、挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向H側がローラ58に接触する。したがって、挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向H側の部分が、回転レバー55の一部であるローラ58に対して軸線方向の第1シリンダ51とは反対側から接触する第2接触部として機能する。なお、ローラ58は、挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向H側の部分に対して線接触する。このように出力軸53及び回転レバー55は、出力軸53の直線運動と回転レバー55の回転運動とが可能となるように接触されている。すなわち、出力軸53及び回転レバー55は、直進対偶及び回転対偶の自由度2で接触されているといえる。
【0036】
第1ピストン52が最も軸線方向I側に位置したとき、出力軸53と回転レバー55のローラ58との接触位置は、軸線方向において回転レバー55の回転中心P1よりもI側に位置している。また、第1ピストン52が最も軸線方向H側に位置したとき、出力軸53と回転レバー55のローラ58との接触位置は、軸線方向において回転レバー55の回転中心P1よりもH側に位置している。すなわち、回転レバー55は、出力軸53と回転レバー55のローラ58との接触位置が、回転レバー55の回転中心P1よりも軸線方向I側から回転レバー55の回転中心P1よりも軸線方向H側にまでの範囲内で変わるように配置されている。ブレーキ装置50では、回転レバー55のローラ58が出力軸53における挿入孔53Aの内周面との接触位置を変えつつ出力軸53から回転レバー55に力が伝達される。そのため、出力軸53から回転レバー55への力の伝達は、回転レバー55のローラ58と出力軸53における挿入孔53Aの内周面とが接触できる範囲に限られる。なお、ローラ58は、出力軸53が直線運動するときに当該出力軸53における挿入孔53Aの内周面との接触位置が変わるため、回転レバー55のレバー接触部として機能する。
【0037】
回転レバー55における円状部56には、出力軸53からの駆動力を受けて回転することでブレーキパッド86とディスク44との相対位置を変化させる回転アーム60が連結されている。回転アーム60と回転レバー55との連結部分の中心である連結中心P2は、回転レバー55の回転中心P1に対して偏心している。具体的には、連結中心P2は、回転中心P1を挟んでレバー本体57とは反対方向に位置している。なお、このように回転アーム60が円状部56の範囲内において連結されているため、回転レバー55の回転中心P1から回転アーム60と回転レバー55との連結中心P2までの距離L1は、回転レバー55の回転中心P1から出力軸53と回転レバー55のローラ58との接触位置までの最短距離よりも短くなっている。また、上述したように、回転レバー55の円状部56は、ブラケット70における軸線方向H側の端部に回転可能に支持されている。したがって、回転アーム60は、回転レバー55を介してブラケット70における軸線方向H側の端部に連結されている。
【0038】
回転アーム60は、連結中心P2を挟んで、概ね車両前後方向(
図2において左右方向)両側に延びている。回転アーム60の基端は、第1シリンダ51よりも車両前後方向J側にまで至っている。また、回転アーム60の先端は、ブラケット70よりも車両前後方向K側にまで至っている。
【0039】
回転アーム60の先端部には、連結ピン76を介して取付部65が連結されている。取付部65は、回転アーム60に対して第1シリンダ51の軸線方向I側に配置されている。取付部65は、連結ピン76を中心として揺動可能になっている。取付部65は、当該取付部65の揺動軸線方向から平面視すると、第1シリンダ51の軸線方向I側に向かうほど寸法が大きくなる略三角形状になっている。取付部65における軸線方向I側の面には、ブレーキパッド86が固定されている。ブレーキパッド86は、ディスク44の端面に倣うような略平板形状になっている。ブレーキパッド86は、ディスク44に押し当てられて摩擦力による制動力を発生するブレーキ摩擦材である。
【0040】
ブラケット70における軸線方向I側の端部にも、回転アーム60が回転可能に連結されている。また、軸線方向I側に配置された回転アーム60にも取付部65が連結されているとともに、当該取付部65にもブレーキパッド86が固定されている。なお、軸線方向I側に配置された回転アーム60、取付部65、ブレーキパッド86は、軸線方向H側に配置された回転アーム60に対して、線対称に配置されている他は同一構成である。したがって、軸線方向I側に配置された回転アーム60、取付部65、ブレーキパッド86については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。ただし、2つの回転アーム60を区別して説明する際には、軸線方向H側に位置する回転アーム60を回転アーム60A、軸線方向I側に位置する回転アーム60を回転アーム60Bと、符号を変えて説明する。
【0041】
上記2つの回転アーム60の基端部同士は、2つの回転アーム60の先端部同士の隙間を調整するための隙間調整機構75によって連結されている。各回転アーム60の基端部は、隙間調整機構75に対して回転可能に連結されている。詳しい図示は省略するが、隙間調整機構75の内部にはねじが内蔵されていて、このねじが回転することにより、2つの回転アーム60の基端部同士の距離が変化する。これにより、2つの回転アーム60がブラケット70との連結部分を中心として回転し、2つの回転アーム60の先端部同士の隙間が変化する。
【0042】
上述のように構成されたブレーキ装置50は、2つの回転アーム60の先端同士の間に、ディスク44が配置されるように、台車41に固定される。ブレーキ装置50における第1シリンダ51の軸線方向が車幅方向と一致するように配置される。そして、ブレーキ装置50のブレーキパッド86の摩耗の程度に合わせて隙間調整機構75を操作して、2つの回転アーム60の先端部同士の隙間を調整する。
【0043】
上記のように構成したブレーキ装置50の作用について説明する。ここで、車両10が走行している際には、第2シリンダ81の内部空間における第2ピストン82よりも軸線方向H側の空間に圧縮空気が導入される。このように圧縮空気が導入されると、第2バネ84の押し付け力に抗して第2ピストン82及び駆動軸83が軸線方向I側に移動し、第2バネ84の押し付け力による駆動軸83からの駆動力は出力軸53に伝達されない。したがって、以下の説明では、駆動軸83からの駆動力は出力軸53に伝達されないものとしてブレーキ装置50の作用を説明する。
【0044】
第1シリンダ51の内部空間における第1ピストン52よりも軸線方向I側の空間に圧縮空気が導入されると、
図3に示すように、第1バネ54の押し付け力に抗して第1ピストン52及び出力軸53が軸線方向H側に直線運動する。そして、出力軸53の挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向I側の内周面が、回転レバー55のローラ58に接触する。すると、回転レバー55のローラ58が、出力軸53の挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向I側の内周面との接触位置を徐々に変えつつ軸線方向H側に移動する。このようなローラ58の移動に伴って、回転中心P1を中心として回転レバー55が一方向、すなわち
図3における時計回りに回転する。このとき、回転中心P1を中心として軸線方向H側に位置する回転アーム60Aと回転レバー55との連結中心P2も時計回りに回転する。そのため、回転アーム60Aは、連結中心P2において、軸線方向I側へ向かう力を受ける。その結果、回転アーム60Aは、軸線方向I側に移動する。すると、回転アーム60Aに連結された取付部65及びブレーキパッド86がディスク44に近づくように移動して、回転アーム60A側のブレーキパッド86がディスク44の端面に当接する。
【0045】
また、上述したように、回転アーム60Aが軸線方向I側に移動すると、隙間調整機構75も軸線方向I側に移動する。そして、回転アーム60Bの基端部と隙間調整機構75との連結部分が軸線方向I側に移動する。ここで、回転アーム60Bは、その延設方向の略中央部でブラケット70に回転可能に連結されている。そのため、回転アーム60Bは、当該回転アーム60Bとブラケット70との連結部分を回転中心として反時計回りに回転する。すると、回転アーム60Bに連結された取付部65及びブレーキパッド86がディスク44に近づくように移動して、回転アーム60B側のブレーキパッド86がディスク44の端面に当接する。そして、ディスク44は、第1シリンダ51の軸線方向において、回転アーム60A側のブレーキパッド86と回転アーム60B側のブレーキパッド86との間で挟み込まれることで回転が制動される。
【0046】
一方、第1シリンダ51の内部空間における第1ピストン52よりも軸線方向I側の空間に圧縮空気が導入されず、圧力が低下すると、
図2に示すように、第1バネ54の押し付け力によって第1ピストン52及び出力軸53が軸線方向I側に直線運動する。そして、出力軸53の挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向H側の内周面が、回転レバー55のローラ58に接触する。すると、回転レバー55のローラ58が、出力軸53の挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向H側の内周面との接触位置を徐々に変えつつ軸線方向I側に移動する。このようなローラ58の移動に伴って、回転中心P1を中心として回転レバー55が他方向、すなわち
図2における反時計回りに回転する。このとき、回転中心P1を中心として回転アーム60Aと回転レバー55との連結中心P2も反時計回りに回転する。そのため、回転アーム60Aは、連結中心P2において、軸線方向H側へ向かう力を受ける。その結果、回転アーム60Aは、軸線方向H側に移動する。すると、回転アーム60Aに連結された取付部65及びブレーキパッド86がディスク44から離れるように移動して、回転アーム60A側のブレーキパッド86がディスク44の端面から離間する。
【0047】
また、上述したように、回転アーム60Aが軸線方向H側に移動すると、隙間調整機構75も軸線方向H側に移動する。そして、回転アーム60Bの基端部と隙間調整機構75との連結部分が軸線方向H側に移動する。すると、回転アーム60Bは、当該回転アーム60Bとブラケット70との連結部分を回転中心として時計回りに回転する。そして、回転アーム60Bに連結された取付部65及びブレーキパッド86がディスク44から離れるように移動して、回転アーム60B側のブレーキパッド86がディスク44の端面から離間する。
【0048】
ブレーキ装置50がディスク44を制動するときの力の伝わり方について詳述する。なお、以下の説明では、説明の簡略化のために、出力軸53は、出力軸53の中心軸線上の接触点Y1で、回転レバー55のローラ58に接触しているものとする。また、出力軸53が突出方向に移動しようとする力F1は、常に一定であるものとする。
【0049】
図4に示すように、回転レバー55におけるレバー本体57の延設方向が出力軸53の軸線方向と直交している状態を基準としたときの回転レバー55の傾斜角度を「θ」とする。このとき、出力軸53から回転レバー55に作用する接線方向の力F2は、「F1*cosθ」で表される。
【0050】
一方、出力軸53は、その軸線方向には移動できるが、傾斜したり軸線方向に交差する方向に移動したりはできない。そのため、回転レバー55の回転中心P1と出力軸53の中心軸線との距離X1は、常に一定である。そして、回転レバー55の回転中心P1から、回転レバー55と出力軸53との接触点Y1までの距離X2は、「X1/cosθ」で表される。
【0051】
出力軸53が回転レバー55を回転させようとする力、すなわち回転トルクは、接線方向の力F2と距離X2との積で表すことができるので、「F1*cosθ*X1/cosθ=F1*X1」となる。上述のとおり、回転レバー55の回転中心P1と出力軸53の中心軸線との距離X1は、常に一定である。したがって、出力軸53が突出方向に移動しようとする力F1が一定であれば、回転レバー55の回転トルクは、回転レバー55の傾斜角度θに依らない一定の値になる。
【0052】
また、車両10が停止している際には、第1シリンダ51の内部空間における第1ピストン52よりも軸線方向I側の空間に圧縮空気が導入されない。すると、第1バネ54の押し付け力によって第1ピストン52及び出力軸53が軸線方向I側に直線運動しようとする。さらに、車両10が停止している際には、第2シリンダ81の内部空間における第2ピストン82よりも軸線方向H側の空間に圧縮空気が導入されない。すると、第2バネ84の押し付け力によって第2ピストン82及び駆動軸83が軸線方向H側に直線運動しようとする。そして、第1ピストン52と駆動軸83とが当接しているときには、第1ピストン52、出力軸53、第2ピストン82、及び駆動軸83に対して、第1バネ54による軸線方向H側から軸線方向I側へと向かう押し付け力と、第2バネ84による軸線方向I側から軸線方向H側へと向かう押しつけ力とが作用する。ここで、第2バネ84の押し付け力は、第1バネ54の押し付け力よりも大きくなっている。そのため、軸線方向I側から軸線方向H側へと向かう駆動軸83からの駆動力が第1ピストン52及び出力軸53に伝達されて、第1ピストン52及び出力軸53も軸線方向H側に直線運動する。そして、上記と同様に、出力軸53の挿入孔53Aの内周面と回転レバー55のローラ58との接触によって、回転中心P1を中心として回転レバー55が一方向、すなわち
図3における時計回りに回転する。したがって、第2バネ84の押し付け力によって駆動軸83が第1ピストン52を第1シリンダ51の軸線方向における回転レバー55側に移動させたときに、第1シリンダ51の内部の空気圧に拘わらず、出力軸53が回転レバー55側に直線運動する。なお、第1シリンダ51の内部に給排される流体は空気である。
【0053】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ブレーキ装置50では、理論上、出力軸53が突出方向に移動しようとする力F1が一定であれば、回転レバー55の回転トルクは、回転レバー55の傾斜角度θに依らない一定の値になる。実際には、出力軸53は回転レバー55のローラ58に接触しており、ローラ58の外面が曲面であることから、出力軸53の中心軸線上の接触点Y1で接触するとは限らない。とはいえ、回転レバー55の回転にしたがって、出力軸53が接触位置を変えつつ回転レバー55に接触することで、回転レバー55の回転トルクが変動することは抑制できる。そして、回転レバー55の回転トルクが変動することを抑制できれば、回転レバー55によって動作される2つの回転アーム60がディスク44を挟み込もうとする力の変動も抑制できる。したがって、回転レバー55の回転トルクの変動に伴って、ディスク44への制動力が変動することを抑制できる。
【0054】
(2)ブレーキ装置50では、第1ピストン52の仕切り板52Aから第1シリンダ51の軸線方向に向かってガイド部52Bが延びている。そのため、第1シリンダ51の内部空間を第1ピストン52が直線運動する際に、第1シリンダ51の軸線方向に対して第1ピストン52ががたつくことを抑制できる。これにより、第1ピストン52のがたつきに伴って出力軸53ががたつくことがなく、第1シリンダ51の軸線方向に沿うように出力軸53を直線運動させることができる。
【0055】
(3)ブレーキ装置50では、出力軸53の挿入孔53Aに回転レバー55のローラ58が挿入されている。そして、出力軸53が第1シリンダ51の軸線方向に移動する際には、回転レバー55のローラ58が回転することで出力軸53の挿入孔53Aの内周面との接触位置を変える。そのため、出力軸53と回転レバー55とが接触位置を変える際の抵抗を低減できる。
【0056】
(4)ブレーキ装置50では、出力軸53が第1シリンダ51の軸線方向に移動する際に、回転レバー55のローラ58が出力軸53の挿入孔53Aの内周面に線接触する。そのため、ブレーキ装置50では、例えば回転レバー55が出力軸53の挿入孔53Aの内周面と面接触する構成に比べて、回転レバー55と出力軸53の挿入孔53Aの内周面とが接触位置を変える際の抵抗を低減できる。
【0057】
(5)ブレーキ装置50における回転レバー55は、出力軸53における挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向I側の部分と回転レバー55のローラ58との接触位置が、回転レバー55の回転中心P1よりも軸線方向I側から回転レバー55の回転中心P1よりも軸線方向H側にまでの範囲内で変わるように、配置されている。ここで、回転レバー55のローラ58と出力軸53における挿入孔53Aの内周面との接触位置は、回転レバー55の回転位置に応じて車両前後方向において変化する。具体的には、
図2に示すように、回転レバー55のローラ58が、回転レバー55の回転中心P1よりも軸線方向I側に位置している場合、回転レバー55が一方向、すなわち
図2における時計回りに回転するほど、回転レバー55のローラ58と出力軸53における挿入孔53Aの内周面との接触位置は、車両前後方向J側に移動する。また、回転レバー55のローラ58が、回転レバー55の回転中心P1よりも軸線方向H側に位置している場合、回転レバー55が時計回りに回転するほど、回転レバー55のローラ58と出力軸53における挿入孔53Aの内周面との接触位置は、車両前後方向K側に移動する。このように回転レバー55が時計回りに回転しようとする際に、回転レバー55のローラ58と出力軸53における挿入孔53Aの内周面との接触位置は、車両前後方向J側に移動した後、車両前後方向K側に移動する。これにより、回転レバー55のローラ58と出力軸53における挿入孔53Aの内周面との接触範囲が同一であったとしても、例えば回転レバー55のローラ58と出力軸53における挿入孔53Aの内周面との接触位置が回転レバー55の回転中心P1よりも軸線方向H側でのみ変わる構成に比べて、回転レバー55の回転範囲を大きくできる。
【0058】
(6)ブレーキ装置50では、第1ピストン52及び出力軸53が軸線方向H側に移動するときには、出力軸53の挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向I側の内周面が、回転レバー55のローラ58に接触して回転レバー55が時計回りに回転する。また、第1ピストン52及び出力軸53が軸線方向I側に移動するときには、出力軸53の挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向H側の内周面が、回転レバー55のローラ58に接触して回転レバー55が反時計回りに回転する。したがって、回転レバー55における両方向の回転を出力軸53の直線運動により実現できる。
【0059】
(7)回転レバー55の回転中心P1から回転アーム60と回転レバー55との連結中心P2までの距離L1は、回転レバー55の回転中心P1から出力軸53と回転レバー55のローラ58との接触位置までの最短距離よりも短くなっている。そのため、回転アーム60Aの接線方向において回転レバー55から回転アーム60Aに対して作用する力は、回転レバー55の接線方向において出力軸53から回転レバー55に対して作用する力よりも大きくなる。このように出力軸53から回転レバー55に作用する力を増大させた上で回転アーム60Aに入力させることができるため、回転アーム60Aの接線方向において回転アーム60Aの先端部から取付部65及びブレーキパッド86に対して作用する力が大きくなる。これにより、回転アーム60Aに連結された取付部65及びブレーキパッド86をディスク44の端面に相応の力で当接させ、ディスク44に対して一定以上の制動力を確保できる。
【0060】
(8)ブレーキ装置50では、第1シリンダ51の内部空間及び第2シリンダ81の内部空間に空気供給源46から圧縮空気が導入されないときには、空気圧による第1ピストン52及び出力軸53からの駆動力が回転レバー55に伝達されない。このように空気圧による第1ピストン52及び出力軸53からの駆動力が回転レバー55に伝達されないときであっても、第2バネ84の押し付け力によって第2ピストン82及び駆動軸83が軸線方向H側に直線運動する。そして、第2バネ84による第2ピストン82及び駆動軸83からの駆動力が第1ピストン52及び出力軸53を介して回転レバー55に伝達され、第2バネ84による第2ピストン82及び駆動軸83からの駆動力によって回転レバー55が回転する。したがって、ブレーキ装置50では、第2バネ84による第2ピストン82及び駆動軸83からの駆動力によって回転レバー55が回転する際の回転トルクの変動を抑制できる。
【0061】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において、出力軸53と回転レバー55のローラ58との接触位置が変わる範囲は変更できる。例えば、出力軸53における挿入孔53Aの内周面のうち軸線方向I側の部分と回転レバー55のローラ58との接触位置が、回転レバー55の回転中心P1よりも軸線方向I側でのみ変わったり、軸線方向H側でのみ変わったりしてもよい。
【0062】
・上記実施形態において、回転レバー55と出力軸53との接触構成は変更できる。例えば、回転レバー55は、回転体として、略円柱形状のローラ58ではなく、多角形柱状の回転体を備えていてもよい。この構成においても、回転レバー55における多角形柱状の回転体が回転可能になっていれば、回転体が回転することで出力軸53と回転レバー55とが接触位置を変える際の抵抗を低減できる。
【0063】
・また、例えば、回転レバー55は、球形状の回転体を備えていてもよい。この構成においても、回転レバー55における球形状の回転体が回転可能になっていればよい。なお、この球形状の回転体は、出力軸53における挿入孔53Aの内周面に点接触する曲面部としても機能する。
【0064】
・さらに、例えば、回転レバー55におけるローラ58を省略し、回転レバー55のレバー本体57と出力軸53における挿入孔53Aの内周面とが接触してもよい。この構成では、回転レバー55のレバー本体57が出力軸53における挿入孔53Aの内周面に対して摺動することで接触位置を変えつつ回転レバー55が回転できる。なお、この構成においては、回転レバー55のレバー本体57の先端部を曲面形状の曲面部として機能させたり、回転レバー55のレバー本体57及び出力軸53における挿入孔53Aの内周面にコーティングを施して両者の摺動抵抗を低減したりすることが好ましい。
【0065】
・また、回転レバー55におけるローラ58を省略し、出力軸53がローラを備えていてもよい。そして、回転レバー55のレバー本体57と出力軸53の先端部に設けられたローラが接触してもよい。
【0066】
・上記実施形態において、回転レバー55の両方向の回転を出力軸53によって行ったが、回転レバー55の一方向のみの回転を出力軸53によって行ってもよい。例えば、回転レバー55のローラ58が出力軸53の先端面に接触するように、回転レバー55を配置する。そして、回転レバー55のローラ58を出力軸53の先端面側に押し付けるバネを、回転レバー55のローラ58よりも軸線方向H側に取り付ける。この構成においては、出力軸53が軸線方向H側に移動するときには、出力軸53によってバネの押し付け力に抗して回転レバー55のローラ58が軸線方向H側に移動することで回転レバー55が時計回りに回転する。一方、出力軸53が軸線方向I側に移動するときには、バネの押し付け力によって回転レバー55のローラ58が軸線方向I側に移動することで回転レバー55が反時計回りに回転する。なお、この構成では、出力軸53における挿入孔53Aを省略してもよい。
【0067】
・上記実施形態において、回転レバー55の回転中心P1から回転アーム60と回転レバー55との連結中心P2までの距離L1は変更できる。例えば、回転レバー55の回転中心P1から回転アーム60と回転レバー55との連結中心P2までの距離L1は、回転レバー55の回転中心P1から出力軸53と回転レバー55のローラ58との接触位置までの最短距離よりも長くなっていてもよい。この構成においても、出力軸53から回転レバー55のローラ58に作用する力が十分に大きい場合には、ディスク44に対して一定以上の制動力を確保できる。
【0068】
・上記実施形態において、第1ピストン52の構成は変更できる。例えば、ガイド部52Bは、仕切り板52Aの外縁全周から延びている必要はなく、仕切り板52Aの外縁の一部から延びていてもよい。
【0069】
・また、例えば、第1ピストン52におけるガイド部52Bを省略してもよい。この構成においても、第1ピストン52の仕切り板52Aの外縁と第1シリンダ51の内周面との接触によって、第1シリンダ51の内部で第1ピストン52ががたつくことをある程度抑制できる。
【0070】
・上記実施形態において、回転レバー55からブレーキパッド86までの連結構成は変更できる。例えば、回転アーム60Aと取付部65との間に他の部材が介在されていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
θ…傾斜角度、F1…力、F2…力、L1…距離、P1…回転中心、P2…連結中心、X1…距離、X2…距離、Y1…接触点、10…車両、20…車体、30…空気ばね、41…台車、42…車軸、43…車輪、44…ディスク、46…空気供給源、47…制御弁、48…供給通路、50…ブレーキ装置、51…第1シリンダ、51A…貫通孔、51B…貫通孔、52…第1ピストン、52A…仕切り板、52B…ガイド部、53…出力軸、53A…挿入孔、54…第1バネ、55…回転レバー、56…円状部、57…レバー本体、58…ローラ、60…回転アーム、65…取付部、70…ブラケット、75…隙間調整機構、76…連結ピン、81…第2シリンダ、81A…貫通孔、82…第2ピストン、83…駆動軸、84…第2バネ、86…ブレーキパッド、90…制御装置。