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特許7474585繰出し式排水パイプ、地盤排水構造、及び繰出し式排水パイプの貫入方法
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  • 特許-繰出し式排水パイプ、地盤排水構造、及び繰出し式排水パイプの貫入方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】繰出し式排水パイプ、地盤排水構造、及び繰出し式排水パイプの貫入方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
E02D3/10 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019213468
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021085183
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】安冨 懸一
(72)【発明者】
【氏名】大高 範寛
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165444(JP,A)
【文献】特開平10-183638(JP,A)
【文献】特開平02-194295(JP,A)
【文献】特開2017-017926(JP,A)
【文献】特開2017-175682(JP,A)
【文献】特開昭60-263906(JP,A)
【文献】特開2011-169469(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123779(WO,A1)
【文献】米国特許第05615976(US,A)
【文献】特開2017-078281(JP,A)
【文献】特開平07-082758(JP,A)
【文献】特開昭59-141619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管径の異なる複数の管体を備え、これらの複数の管体のうち一番管径の大きな外管に他の管体が収納可能な斜面又は鉛直面を有する地盤に貫入される繰出し式排水パイプであって、
前記複数の管体は、延伸したときに互いの管体が嵌合する嵌合部を備え、
前記複数の管体のうち一番管径の小さな内管には、多数の排水孔が設けられているとともに、前記内管の内側にのみ、立体網目状に成形された繊維材又は多孔質材から通水可能な筒状体に形成され、前記排水孔からの土砂の流入を防止する流入防止材が設けられていること
を特徴とする繰出し式排水パイプ。
【請求項2】
前記複数の管体同士の間には、摩擦を低減するシート材が介装されていること
を特徴とする請求項1に記載の繰出し式排水パイプ。
【請求項3】
傾斜した地盤に管体が打ち込まれて前記地盤から前記管体の内側に排水する地盤排水構造であって、
前記管体として、請求項1又は2に記載の繰出し式排水パイプが打ち込まれていること
を特徴とする地盤排水構造。
【請求項4】
管径の異なる複数の管体を備え、これらの複数の管体のうち一番管径の大きな外管に他の管体が収納され、前記複数の管体のうち一番管径の小さな内管に多数の排水孔が穿設された繰出し式排水パイプを、前記内管の内側にのみ、立体網目状に成形された繊維材又は多孔質材から通水可能な筒状体に形成され、前記排水孔からの土砂の流入を防止する流入防止材を挿置した状態で、管径の大きな管体から順次斜面又は鉛直面を有する地盤に貫入していくこと
を特徴とする繰出し式排水パイプの貫入方法。
【請求項5】
摩擦を低減するシート材を前記複数の管体同士の間に介装した状態で管径の大きな管体から順次斜面又は鉛直面を有する地盤に貫入していくこと
を特徴とする請求項に記載の繰出し式排水パイプの貫入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管径の異なる複数の管体を備えた繰出し式排水パイプ、それを備えた地盤排水構造、及び繰出し式排水パイプの貫入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自然斜面のみならず、鉄道や道路の施工に伴う盛土や切土、宅地造成地等の土砂部の斜面や鉛直面は、降水量が土砂部の浸透能力を超えてしまい地下水位が上昇したり土砂の含水比が高くなると崩壊してしまう場合がある。このため、土砂部内の水分を排水することで地下水位及び土砂の含水比を低下させ斜面や鉛直面の崩落を防ぐ技術が従来において提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、地中内の集水部2に直接打込み可能な外部鋼管1と、外部鋼管1内先端部に格納された汲注水部である先端に矢尻6を一体的に有する内部管4の二重構成からなり、内部管4を収納した状態で外部鋼管1を貫入した後、外部鋼管1を上方に引き抜く、井戸用引抜式ストレーナーが開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0011]~[0013]、図面の図1図2等参照)。
【0004】
また、特許文献1には、内部管4に鋼管12を用い、表面全周に汲注水孔13を設け、鋼管12の外側をステンレス鋼線製の平織金網14で囲って、砂や小石の混入を防ぐことも開示されている(特許文献1の明細書の段落[0016]、図面の図4等参照)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の井戸用引抜式ストレーナーは、外部鋼管1の長さに対応する深さまでしか内部管4を貫入させることができないという問題があった。また、外部鋼管1を引き抜かないと内部管4の集水機能を発揮させることができず、外部鋼管1を上方に引き抜く作業が手間である上、二重構成となっている分、打ち込み深さに対する材料費も割高となっているという問題もあった。
【0006】
その上、特許文献1に記載の井戸用引抜式ストレーナーでは、貫入抵抗を下げるために、振動を加えて圧入した場合、外部鋼管1と内部管4である鋼管12との隙間から土砂が流入してしまい、地下深くまで貫入できないという問題もあった。それに加え、鋼管12の外側に平織金網14が取り付けられているので、外部鋼管1を引き抜く際に干渉してしまうという問題もあった。
【0007】
また、特許文献2には、地盤を掘削した後、径の異なる収縮自在な排水管を充分伸ばし切った状態で掘削した孔に挿入し、盛土を行った後に、その後の排水を阻止して管の剛性を増加するために排水管内に砂、セメント又はモルタルを注入する地盤改良工法が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲(1)(2)、第1図~第4図等参照)。
【0008】
しかし、特許文献2に記載の地盤改良工法は、事前の掘削(プレボーリング)を前提とするものであり、径の異なる収縮自在な排水管を充分伸ばし切った状態で地盤に直接打ち込む場合、貫入抵抗が大きすぎて、排水管を損壊せずに打ち込むことはできないという問題があった。また、たとえ、できたとしても貫入抵抗を下げるために、振動を加えて圧入した場合、排水管の内部に土砂が流入してしまうという前記問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平11-256625号公報
【文献】特開昭52-132510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、プレボーリングを行わなくても貫入抵抗が小さく小型の装置で施工が可能であり、振動をかけつつ地盤に貫入させても土砂の流入を防止して地下深くまで貫入可能な繰出し式排水パイプ、地盤排水構造、及び繰出し式排水パイプの貫入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る繰出し式排水パイプは、管径の異なる複数の管体を備え、これらの複数の管体のうち一番管径の大きな外管に他の管体が収納可能な斜面又は鉛直面を有する地盤に貫入される繰出し式排水パイプであって、前記複数の管体は、延伸したときに互いの管体が嵌合する嵌合部を備え、前記複数の管体のうち一番管径の小さな内管には、多数の排水孔が設けられているとともに、前記内管の内側にのみ、立体網目状に成形された繊維材又は多孔質材から通水可能な筒状体に形成され、前記排水孔からの土砂の流入を防止する流入防止材が設けられていることを特徴とする。
第2発明に係る繰出し式排水パイプは、第1発明において、前記複数の管体同士の間には、摩擦を低減するシート材が介装されていることを特徴とする。
【0014】
発明に係る地盤排水構造は、傾斜した地盤に管体が打ち込まれて前記地盤から前記管体の内側に排水する地盤排水構造であって、前記管体として、請求項1又は2に記載の繰出し式排水パイプが打ち込まれていることを特徴とする。
【0015】
発明に係る繰出し式排水パイプの貫入方法は、管径の異なる複数の管体を備え、これらの複数の管体のうち一番管径の大きな外管に他の管体が収納され、前記複数の管体のうち一番管径の小さな内管に多数の排水孔が穿設された繰出し式排水パイプを、前記内管の内側にのみ立体網目状に成形された繊維材又は多孔質材から通水可能な筒状体に形成され、前記排水孔からの土砂の流入を防止する流入防止材を挿置した状態で、管径の大きな管体から順次斜面又は鉛直面を有する地盤に貫入していくことを特徴とする。
【0016】
発明に係る繰出し式排水パイプの貫入方法は、第発明において、摩擦を低減するシート材を前記複数の管体同士の間に介装した状態で管径の大きな管体から順次斜面又は鉛直面を有する地盤に貫入していくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1発明~第発明によれば、所望の地盤深さまで、排水パイプの貫入深さを振り出し式(繰出し式)に分割して貫入することができるため、押し出される管体のうち順次押し出される管体のみに周辺摩擦(最大で最初に押出す外管の周辺摩擦)を生じさせ、それ以外の管体については周辺摩擦を低減できる。このため、各管体の板厚を下げることができるとともに、貫入時の地盤との排水パイプの周面摩擦を低減して貫入抵抗を小さくし、小さな力で排水パイプの貫入作業を行うことができる。このため、手持ちの油圧杭打機や小型のショベルカーで施工が可能となり、専用機械の搬送費や組立費を省いて排水パイプの施工費用を低減することができる。
【0018】
また、第1発明~第発明によれば、内管の内側に土砂の流入を防止する流入防止材が挿置されているので、貫入時に排水パイプに振動(バイブレーション)をかけて貫入しても、排水パイプの排水孔から土砂が流入することを大幅に低減することができる。このため、さらに小さな力で排水パイプの貫入作業を行うことができる。また、内管の内側に流入防止材が挿置されているので、貫入時に流入防止材が他の管体と干渉するおそれがない。その上、流入防止材は、内管にのみ設ければよいので、排水パイプ全長に亘って設ける必要がない。よって、流入防止材の材料コストも低減することができる。
【0019】
さらに、第1発明~第発明によれば、貫入時に排水パイプに振動(バイブレーション)をかける時間が通常の一本の排水パイプと比べて短くて済む。このため、貫入時に排水パイプの排水孔などから流入する土砂をさらに少なくすることができる。
【0020】
それに加え、第1発明~第発明によれば、排水パイプを鋼管とすることができ、高強度のものとすることができる。
【0021】
また、第1発明~第発明によれば、流入防止材を挿置した状態、且つ、外管に他の管体が収納された状態で搬送することができる。よって、搬送効率が良く、その点でも排水パイプの施工費用を低減することができる。
【0023】
特に、第発明及び第発明によれば、管体間に摩擦を低減するシート材が介装されているので、貫入時の管体同士の摩擦抵抗を低減することができる。このため、さらに小さな力で排水パイプの貫入作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る繰出し式排水パイプを中間省略して示す側面図である。
図2】同上の繰出し式排水パイプの収納状態を示す管軸方向に沿って切断した断面図である。
図3】同上の繰出し式排水パイプの外管と内管との嵌合部分を、外管を断面で示し、内管を側面図で示す部分切断断面図である。
図4】同上の繰出し式排水パイプの先端部分を管軸方向に沿って切断した状態を示す部分拡大断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る繰出し式排水パイプの貫入方法の第1貫入工程を示す工程説明図である。
図6】同上の繰出し式排水パイプの貫入方法の第2貫入工程を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る繰出し式排水パイプ、地盤排水構造、及び繰出し式排水パイプの貫入方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
<繰出し式排水パイプ>
先ず、図1図4を用いて、本発明の実施形態に係る繰出し式排水パイプ1について説明する。本発明の実施形態に係る繰出し式排水パイプ1は、堤防を含む護岸工や立坑工及び横坑工における斜面や鉛直面を有する地盤に貫入されて地盤崩壊を防ぐ排水パイプとして用いられる場合を想定している。図1は、本発明の実施形態に係る繰出し式排水パイプ1を中間省略して示す側面図であり、図2は、その繰出し式排水パイプ1の収納状態を示す管軸方向に沿って切断した断面図である。また、図3は、繰出し式排水パイプ1の外管2と内管3との嵌合部分を、外管2を断面で示し、内管3を側面図で示す部分切断断面図であり、図4は、繰出し式排水パイプ1の先端部分を管軸方向に沿って切断した状態を示す部分拡大断面図である。
【0027】
本実施形態に係る繰出し式排水パイプ1は、所定厚さの高耐食性のメッキ鋼管であり、貫入する深さに応じた所定長さの管径の異なる大小2つの管体を備えている。但し、本発明に係る排水パイプは、管径の異なる複数の管体を備え、これらの複数の管体のうち一番管径の大きな外管に他の管体が収納可能な繰出し式排水パイプであればよく、大小2つの管体からなる物に限られない。
【0028】
図1図2に示すように、この繰出し式排水パイプ1は、管径の大きな管体が外管2であり、管径の小さな管体が内管3である。また、内管3の先端には、凸状の先端キャップ4が嵌着されており(図4も参照)、内管3の内部には、土砂の流入を防止する流入防止材5が装填されている。なお、先端とは、図1に示す管体の貫入方向X側の管端を指し、後端とは、反対側の管端を指すものとする(以下、同じ)。
【0029】
(外管)
図1図2に示すように、外管2は、鋼管からなる円筒状の外管本体20から主に構成されている。そして、この外管本体20の先端側の管端付近には、他の部分より縮径された先端部21が形成され、他端側の管端付近には、他の部分と同じ管径でストレートな管端である後端部22が形成されている。また、外管本体20の先端側には、先端部21へ向け他の部位から貫入方向Xに沿って徐々にテーパ状に縮径する先端テーパ部23も形成されている。なお、外管2の先端側の管端付近には先端テーパ部23にかわって、フランジのように、少なくとも外管2に他の管体が収納可能であり、延伸したときに互いの管体が嵌合する構造であればよい。
【0030】
(内管)
内管3は、外管2の内径より外径が小さな円筒状の鋼管からなる内管本体30から主に構成されている。そして、内管本体30の先端側の管端付近には、他の部分より縮径された先端部31が形成され、他端側の管端付近には、他の部分より拡径された後端部32が形成されている。また、内管本体30の先端側には、他の部位から先端部31へ向け貫入方向Xに沿って徐々にテーパ状に縮径する先端テーパ部33が形成されている。そして、内管本体30の後端側には、後端部32へ向け部位から貫入方向X反対方向に沿って徐々にテーパ状に拡径する後端テーパ部34が形成されている。また、内管3の後端側の管端付近には後端テーパ部24にかわって、フランジのように、少なくとも外管2に他の管体が収納可能であり、延伸したときに互いの管体が嵌合する構造であればよい。
【0031】
また、図1に示すように、内管本体30の外周面には、地下水や過剰間隙水を透水する所定径(例えば、直径5mm)の排水孔H1が、所定ピッチ(例えば、10mm)で多数穿設されている。このため、繰出し式排水パイプ1は、地層に傾斜して貫入された場合は、排水孔H1を通じて地下水を内管3の内側に排水することができ、地下水や過剰間隙水圧を地盤から逃がすことができる。
【0032】
前述のように、内管3は、外管2の内径より外径が小さい。このため、図2に示すように、外管2に他の管体である内管3が収納可能となっている。このため、外管2に内管3が収納された状態で搬送することができ、搬送効率が良い。
【0033】
前述のように、外管2の先端部分には、先端部21と先端テーパ部23が形成され、内管3の後端部分には、後端部32と後端テーパ部34が形成されている。このため、繰出し式排水パイプ1は、図3に示すように、延伸したときに、外管2の先端テーパ部23と内管3の後端テーパ部34とが互い嵌合するように構成されている。
【0034】
(先端キャップ)
図4に示すように、内管3の先端部31には、繰出し式排水パイプ1の貫入時の土圧抵抗を低減するため、円錐状の先端キャップ4が嵌着されている。この先端キャップ4は、ポリプロピレンから形成されている。勿論、先端キャップ4は、抵抗の少ない形状であれば、特に素材が限定されるものではなく、ポリプロピレンなどの樹脂に限られず、ダグタイル鋳鉄などの金属製であっても構わない。
【0035】
(流入防止材)
本実施形態に係る流入防止材5は、透水シートを加工した円筒体(柱状体又は筒状体)である。なお、流入防止材5は、排水性能の確保や形状保持のために、円筒体と樹脂等の孔あきの管と一体化させたものであってもよく、透水シートの円筒管を用いず、樹脂等の孔あきの管のみでもよい。図2に示すように、流入防止材5は、内管3の内側に装填されており、後述のように、繰出し式排水パイプ1の地中への貫入時に排水孔H1から内管3の内側への土砂の流入を防止する機能を有している。
【0036】
また、流入防止材5は、透水シートの代わりにステンレスの網やパンチングメタルなどの土圧や水圧に対抗できる剛性を有した孔空きの円筒体(柱状体又は筒状体)であっても構わない。形状については、繰出し式排水パイプ1の内管3に装填できるものであれば、中実な円柱体や角柱体、又は中空の角筒体でもよい。
【0037】
なお、本発明に係る流入防止材は、通水可能な一定程度空隙が形成されて土圧や水圧に対抗できる反発力を有する部材であればよく、ポリプロピレンの立体網目状に成形された繊維材や、発泡泡樹脂などの多孔質材とすることもできる。但し、本実施形態に係る流入防止材5のように、通水可能な柱状体又は筒状体とすれば、内管3内に装填するだけで目的を達成することができ、挿置作業が容易で好ましい。
【0038】
(シート材)
また、図2図3に点線で示すように、繰出し式排水パイプ1には、外管2と内管3との間に、摩擦を低減するシート材6が介装されている。本実施形態に係るシート材6は、ポリテトラフルオロエチレンからなるシート状(フィルム状)の部材である。勿論、本発明に係るシート材は、これに限られず、ポリアセタールやポリアミドなどの低摩耗性・低摩擦係数の樹脂からなるシート材としてもよい。また、摺動性が高く、低摩耗性・低摩擦係数のシート状の部材であればよく、金属製のフィルムなど他の素材から形成されていてもよい。なお、シート材6が外管2と内管3との全長に亘って介装されている場合を図示したが、シート材6は、内管3の後端部32や後端テーパ部34の周り等、部分的にのみ設けてもよい。
【0039】
<繰出し式排水パイプの貫入方法>
次に、図5図6を用いて、本発明の実施形態に係る繰出し式排水パイプの貫入方法について説明する。前述の繰出し式排水パイプ1を地下水脈などがあり崩壊のおそれがある地層G1を有する地盤Gに貫入して地盤排水構造10を構築する場合を例示して説明する。
【0040】
(第1貫入工程)
図5は、本発明の実施形態に係る繰出し式排水パイプの貫入方法の第1貫入工程を示す工程説明図である。本実施形態に係る繰出し式排水パイプの貫入方法では、図5に示すように、先ず、プレボーリングを行わず、外管2に収容された内管3の内側に流入防止材5を装填(挿置)した状態で、繰出し式排水パイプ1を直接地盤Gに貫入する第1貫入工程を行う。
【0041】
具体的には、油圧ショベルの先端にブレーカーを取り付けた0.2m3級の小型の重機や手持ちの杭打機を用いて、振動(バイブレーション)をかけつつ、繰出し式排水パイプ1を押し下げて地盤Gに貫入する。このとき、内管3が外管2に収納され、内管3の先端に先端キャップ4が嵌着された状態で、繰出し式排水パイプ1を地盤に貫入する。
【0042】
本工程では、内管3は、外管2に収納された状態で地中に貫入される。このとき、繰出し式排水パイプ1を地中に貫入する際の貫入抵抗は、先端キャップ4を介して作用する先端部の圧入抵抗と、外管2の地盤との周面摩擦抵抗だけである。このため、従来の貫入方法と比べて、繰出し式排水パイプ1の全長の半分程度しか周面摩擦抵抗がかからないこととなる。よって、貫入時の地盤Gとの繰出し式排水パイプ1の周面摩擦を低減して貫入抵抗を小さくし、小さな力で排水パイプの貫入作業を行うことができる。
【0043】
また、本工程では、図5に示すように、繰出し式排水パイプ1の先端に先端キャップ4が装着された状態で貫入するので、先端キャップ4の凸状の形態により貫入抵抗を低減しつつ貫入することができる。
【0044】
その上、本工程では、図5に示すように、内管3の内側に流入防止材5を挿置した状態で貫入するので、繰出し式排水パイプ1に振動(バイブレーション)をかけて貫入しても、繰出し式排水パイプ1の内側に土砂が流入することを大幅に低減することができる。
【0045】
なお、前述の繰出し式排水パイプ1では、崩壊のおそれがある地層G1の想定される地下水位の深さから外管2の長さを設定しており、図5に示す外管2には、排水孔H1が設けられていないが、多数の排水孔H1を設けてもよい。
【0046】
(第2貫入工程)
次に、本実施形態に係る繰出し式排水パイプの貫入方法では、図6に示すように、前工程で貫入した外管2から、振り出し式(繰出し式)で内側に流入防止材5を挿置した状態で内管3をさらに地中に貫入する第2貫入工程を行う。
【0047】
本工程でも、小型の重機や手持ちの杭打機を用いて、振動(バイブレーション)をかけつつ、繰出し式排水パイプ1の内管3を押し下げて地盤Gに貫入する。
【0048】
なお、図示しないが、前述のように、繰出し式排水パイプ1の外管2と内管3との間には、摩擦を低減するシート材6が介装されている(図2図3参照)。このため、本工程で、内管3を押し下げ貫入させる際に、外管2と内管3との間の摩擦を低減しつつ繰出し式排水パイプ1を延伸して、崩壊のおそれがある地層G1に内管3を貫入させることができる。
【0049】
本工程の完了により、本発明の実施形態に係る地盤排水構造の構築が完了する。これにより、崩壊のおそれがある地層G1に内管3を貫入させることができ、内管3の排水孔H1を介して地層G1から地下水を内管3の内側に流入させることができる。よって、崩壊のおそれがある地層G1の過剰間隙水圧を低減して消散させることができ、地盤崩壊を防止することができる。
【0050】
<地盤排水構造>
次に、図6を用いて、前述の本実施形態に係る繰出し式排水パイプの貫入方法により構築される地盤排水構造10について簡単に説明する。地盤排水構造10は、地下水脈があり斜面の崩壊のおそれがある地層G1を有する地盤Gの排水構造である。そして、この地盤Gに繰出し式排水パイプ1が打ち込まれて地盤Gから繰出し式排水パイプ1の内側に排水する構造となっている。
【0051】
また、地盤排水構造10では、前述のように、内管3には、流入防止材5が挿置された状態で地層G1まで貫入されており、内管3の内側に地下水を流入させて地下水や過剰間隙水圧を逃がすものである。このため、地盤排水構造10では、地下水が流入してくる排水孔H1からの土砂の流入を、流入防止材5により継続的に長期に亘って阻止することができる。このため、地盤排水構造10が耐久性のあるものとなり、崩壊のおそれがある地層G1を長期に亘って崩壊させることなく健全な地盤として維持することができる。
【0052】
以上説明した本実施形態に係る繰出し式排水パイプ1、繰出し式排水パイプ1の貫入方法、及び地盤排水構造10によれば、繰出し式排水パイプ1の貫入深さを、第1貫入工程及び第2貫入工程のように、振り出し式(繰出し式)に2段階に分割して貫入することができる。このため、貫入時の地盤Gとの繰出し式排水パイプ1の周面摩擦を低減して貫入抵抗を小さくし、小さな力で貫入作業を行うことができる。このため、前述のように、手持ちの油圧杭打機や小型のショベルカーで施工が可能となり、専用機械の搬送費や組立費を省いて排水パイプの施工費用を低減することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る繰出し式排水パイプ1、繰出し式排水パイプ1の貫入方法、及び地盤排水構造10によれば、内管3の内側に流入防止材5が挿置されている。このため、貫入時に繰出し式排水パイプ1に振動(バイブレーション)をかけて貫入しても、繰出し式排水パイプ1の排水孔H1から土砂が流入することを大幅に低減することができる。このため、さらに小さな力で繰出し式排水パイプ1の貫入作業を行うことができる。また、内管3の内側に流入防止材5が挿置されているので、貫入時に流入防止材5が外管2などの他の管体と干渉するおそれがない。その上、流入防止材5は、内管3にのみ設ければよいので、繰出し式排水パイプ1の全長に亘って設ける必要がない。よって、流入防止材5の材料コストも低減することができる。なお、予め内管3の内側に流入防止材5を挿置しているが、繰出し式排水パイプ1の設置後、外管2内に流入防止材5を追加装填しても構わない。
【0054】
その上、本実施形態に係る繰出し式排水パイプ1、繰出し式排水パイプ1の貫入方法、及び地盤排水構造10によれば、貫入時に繰出し式排水パイプ1に振動(バイブレーション)をかける時間が通常の一本の排水パイプと比べて短くて済む。このため、貫入時に繰出し式排水パイプ1の排水孔H1などから流入する土砂をさらに少なくすることができる。
【0055】
また、地盤排水構造10によれば、繰出し式排水パイプ1が鋼管であり、高強度のものとすることができる。
【0056】
また、繰出し式排水パイプ1は、流入防止材5を挿置した状態、且つ、外管2に内管3が収納されたコンパクトな状態で搬送することができる(図2参照)。よって、搬送効率が良く、その点でも繰出し式排水パイプ1の施工費用を低減することができる。
【0057】
以上、実施形態に係る繰出し式排水パイプ1、繰出し式排水パイプ1の貫入方法、及び地盤排水構造10について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、例示した実施形態によって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、繰出し式排水パイプ1を斜面を有する地盤に貫入する場合を例示して説明したが、本発明は、斜面に限られず、護岸工や立坑工及び横坑工における鉛直面にも適用できることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1:繰出し式排水パイプ
2:外管(管体)
20:外管本体
21:先端部
22:後端部
23:先端テーパ部
3:内管(管体)
30:内管本体
31:先端部
32:後端部
33:先端テーパ部
34:後端テーパ部
H1:排水孔
4:先端キャップ
5:流入防止材
6:シート材
10:地盤排水構造
G:地盤
G1:崩壊のおそれがある地層
X:貫入方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6