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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ、ガイドワイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
A61M25/09 516
A61M25/09 550
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019224385
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021090683
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 知輝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 乃基
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-000222(JP,A)
【文献】国際公開第2019/211903(WO,A1)
【文献】特開2008-237621(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181427(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、
樹脂により形成され、前記コアシャフトの先端側の外周を覆う管状の樹脂部と
前記コアシャフトの先端側の外周を覆うコイル体と、
を備えるガイドワイヤであって、
前記樹脂部は、前記コアシャフトの外周に接触していない非接触部と、前記非接触部よりも基端側に位置し、前記コアシャフトの外周に接触している接触部と、を備え、
前記接触部の厚さは、前記非接触部の厚さよりも厚く、
前記非接触部は、前記コアシャフトの外周との間に空間が形成された領域において、前記接触部に向けて径方向の厚さが徐々に厚くなっている部分を有し、
前記コイル体は、前記樹脂部の前記非接触部の内周側に位置する第1のコイル部と、前記樹脂部の前記接触部の内部に位置し、前記コイル体を構成する素線間のピッチが前記第1のコイル部を構成する素線間のピッチよりも大きい第2のコイル部と、を有する、
ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記樹脂部の前記非接触部は、基端側において、前記接触部に近づくにつれて前記ガイドワイヤの径方向における前記コアシャフトとの距離が短くなる切替部を有する、
ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記樹脂部の前記非接触部は、前記コアシャフトの先端から50mm以内の長さに形成されている、
ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記ガイドワイヤの長手方向軸上において、前記第1のコイル部と前記第2のコイル部との移行部分は、前記樹脂部の前記切替部に重なっている、
ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガイドワイヤの製造方法であって、
前記コアシャフトと、前記コアシャフトの先端側の外周を覆う前記コイル体と、を備える複合体を準備する第1の工程と、
前記複合体を液状の樹脂材料に入れるディッピング処理を行い、ディッピング処理後の前記複合体に付着した樹脂材料を硬化させる処理を施すことにより、前記樹脂部を形成する第2の工程と、を備え、
前記第1のコイル部を構成する互いに隣り合う各素線の部分は接触している、
ガイドワイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、血管等に挿入されるガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等における狭窄部や閉塞部(以下、「病変部」という。)を治療または検査する方法として、カテーテルを用いた方法が広く行われている。一般に、カテーテルを血管等における病変部に案内するために、ガイドワイヤが用いられる。
【0003】
従来、コアシャフトと、コアシャフトの先端側の外周を覆う管状の樹脂部とを備えるガイドワイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。ガイドワイヤの軸方向に直交する方向(以下、「ガイドワイヤの径方向」という。)における、樹脂部の先端側に位置する部分の厚さは、樹脂部の当該部分の全長にわたって均一である。このガイドワイヤにおいては、コアシャフトの先端側の外周と、樹脂部の先端側に位置する部分との間に空間が形成されており、これにより、ガイドワイヤの先端側の柔軟性が確保される。このようにガイドワイヤの先端側の柔軟性が確保されることにより、ガイドワイヤが湾曲した血管内で屈曲(キンク)することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-233019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガイドワイヤの先端側の柔軟性を確保する観点では、ガイドワイヤの径方向における樹脂部の先端側に位置する部分(厚さが均一である部分)の厚さが薄いほど、好ましい。一方で、ガイドワイヤの径方向における樹脂部の先端側に位置する部分の厚さが薄すぎると、樹脂部の強度を十分確保することができなくなり、これにより、樹脂部が破損する等の不具合が生じやすくなる。そのため、樹脂部の強度を確保する観点では、ガイドワイヤの径方向における樹脂部の先端側に位置する部分の厚さが厚いほど、好ましい。
【0006】
上述した従来のガイドワイヤ(上記特許文献1)では、ガイドワイヤの径方向における樹脂部の先端側に位置する部分の厚さが当該部分の全長にわたって均一であり、このような構成である樹脂部の先端側に位置する部分の厚さを単に薄くしたり厚くしたりするだけでは、ガイドワイヤの先端側の柔軟性を確保することと、樹脂部の強度を確保することとを両立させることは困難である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示されるガイドワイヤは、コアシャフトと、樹脂により形成され、前記コアシャフトの先端側の外周を覆う管状の樹脂部と、を備えるガイドワイヤであって、前記樹脂部は、前記コアシャフトの外周との間に空間(以下、「特定空間」という。)が形成された非接触部と、前記非接触部よりも基端側に位置し、前記コアシャフトの外周に接触している接触部と、を備え、前記接触部の厚さは、前記非接触部の厚さよりも厚い。
【0010】
本ガイドワイヤでは、上述の通り、前記樹脂部は、前記コアシャフトの外周との間に前記特定空間が形成された非接触部を備えている。そのため、前記樹脂部の前記非接触部と前記コアシャフトとの間に前記特定空間が形成されていない構成に比べて、上記ガイドワイヤの先端側の柔軟性を向上させることができる。これにより、上記ガイドワイヤが湾曲した血管内で屈曲(キンク)することが抑制される。また、本ガイドワイヤでは、上述の通り、さらに、前記樹脂部は、前記コアシャフトの外周に接触している接触部を備えている。前記接触部の厚さは、前記非接触部の厚さよりも厚い。そのため、前記樹脂部の先端側に位置する部分の厚さが当該部分の全長にわたって均一である構成に比べて、前記樹脂部の強度が確保され、これにより、前記樹脂部が破損する等の不具合の発生が抑制される。以上のように、本ガイドワイヤによれば、上記ガイドワイヤの先端側の柔軟性を確保することと、前記樹脂部の強度を確保することとを両立させることができる。
【0011】
(2)上記ガイドワイヤにおいて、前記樹脂部の前記非接触部は、基端側において、前記接触部に近づくにつれて前記ガイドワイヤの径方向における前記コアシャフトとの距離が短くなる切替部を有する構成としてもよい。本ガイドワイヤにおいては、前記樹脂部の前記切替部の存在により、外力による応力が前記非接触部と前記接触部との境界部分に集中することが抑制される。そのため、本ガイドワイヤにおいては、前記非接触部と前記接触部との境界部分に応力が集中することに起因して屈曲(キンク)が発生することを抑制することができる。
【0012】
(3)上記ガイドワイヤにおいて、前記樹脂部の前記非接触部は、前記コアシャフトの先端から50mm以内の長さに形成されていてもよい。例えば、ガイドワイヤにおいては、穿孔(血管等に穴が開くこと)を防止するために、血管内で意図的に上記ガイドワイヤの先端側を湾曲した形状(以下、「ナックル形状」と記載する。)とする場合がある。この場合、前記非接触部の曲げ剛性は、前記接触部の曲げ剛性よりも小さいため、血管内においてナックル形状が形成されるとき、前記非接触部がナックル形状となりやすい。つまり、前記非接触部が湾曲しやすく、前記接触部が直線形状を保持しやすい。そのため、(前記非接触部の)設計時において前記非接触部の長さを調節することにより、ナックル形状が生じる長さを調節することができる。本ガイドワイヤによれば、前記樹脂部の前記非接触部が、前記コアシャフトの先端から50mm以内の長さに形成されていることにより、ナックル形状となる長さを50mm以内に収めることができる。
【0013】
(4)上記ガイドワイヤにおいて、さらに、前記コアシャフトの先端側の外周を覆うコイル体を備え、前記コイル体は、前記樹脂部の前記非接触部の内周側に位置する第1のコイル部と、前記樹脂部の前記接触部の内部に位置し、前記コイル体を構成する素線間のピッチが前記第1のコイル部を構成する素線間のピッチよりも大きい第2のコイル部と、を有する構成としてもよい。
【0014】
本ガイドワイヤでは、前記コイル体のうち、前記樹脂部の前記非接触部の内周側に位置する前記第1のコイル部を構成する素線間のピッチは、前記樹脂部の前記接触部の内部に位置する前記第2のコイル部を構成する素線間のピッチよりも小さい。そのため、前記第1のコイル部を構成する素線間のピッチが前記第2のコイル部を構成する素線間のピッチと同等以上である構成に比べて、軸方向の単位長さ当たりの前記コイル体(より具体的には、前記第1のコイル部)と前記樹脂部(より具体的には、前記樹脂部の前記非接触部)との接触面積が大きくなり、これにより、前記コイル体(より具体的には、前記第1のコイル部)と前記樹脂部の前記非接触部との密着性が向上し、これにより前記コイル体からの前記樹脂部の剥離が抑制される。
【0015】
(5)上記ガイドワイヤにおいて、前記ガイドワイヤの長手方向軸上において、前記第1のコイル部と前記第2のコイル部との移行部分は、前記樹脂部の前記切替部に重なっている構成としてもよい。本ガイドワイヤにおいては、前記第1のコイル部と前記第2のコイル部との境界部分に応力が集中することに起因して屈曲(キンク)が発生することを抑制することができる。
【0016】
(6)上記ガイドワイヤの製造方法において、前記コアシャフトと、前記コアシャフトの先端側の外周を覆う前記コイル体と、を備える複合体を準備する第1の工程と、前記複合体を液状の樹脂材料に入れるディッピング処理を行い、ディッピング処理後の前記複合体に付着した樹脂材料を硬化させる処理を施すことにより、前記樹脂部を形成する第2の工程と、を備える構成としてもよい。本ガイドワイヤの製造方法によれば、前記コアシャフトと前記樹脂部と前記コイル体とを備える上記ガイドワイヤを、容易に製造することができる。
【0017】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えばガイドワイヤやその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態におけるガイドワイヤの構成を概略的に示す断面図
図2】第2実施形態におけるガイドワイヤの構成を概略的に示す断面図
図3】第2実施形態におけるガイドワイヤの製造方法を示すフローチャートである。
図4】変形例におけるガイドワイヤを構成する樹脂部の一部(切替部)とその周辺部分の構成を拡大して示す断面図
図5】変形例におけるガイドワイヤを構成する樹脂部の一部(切替部)とその周辺部分の構成を拡大して示す断面図
図6】変形例におけるガイドワイヤを構成する樹脂部の一部(切替部)とその周辺部分の構成を拡大して示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態:
A-1.ガイドワイヤ100の構成:
図1は、第1実施形態におけるガイドワイヤ100の構成を概略的に示す断面図である。図1には、ガイドワイヤ100の側断面(YZ断面)の構成が示されており、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である(図2以降の図においても同様)。また、ガイドワイヤ100及びガイドワイヤ100の各構成部材について、先端側に位置する端部を「先端」と記載し、「先端」を含み先端から後端側に向かって中途まで延びる部位を「先端部」と記載する。同様に、ガイドワイヤ100及びガイドワイヤ100の各構成部材について、基端側に位置する端部を「基端」と記載し、「基端」を含み基端から先端側に向かって中途まで延びる部位を「基端部」と記載する。これらの点は、図2から図6についても同様である。但し、図3は除く。なお、図1では、ガイドワイヤ100が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、ガイドワイヤ100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。なお、以下において、ガイドワイヤ100の軸方向(本実施形態では、X軸方向。以下、単に「軸方向」という。)に直交する方向(図1に示す断面では、Z軸方向)を「径方向」といい、径方向の長さを「径」という。
【0020】
ガイドワイヤ100は、血管等における病変部(狭窄部や閉塞部)にカテーテル(図示しない)を案内するために、血管等に挿入される医療用デバイスである。ガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、樹脂部20と、先端チップ30とを備えている。
【0021】
図1において、コアシャフト10は、先端側が細径であり基端側が太径である棒状の部材である。より具体的には、コアシャフト10は、円形断面の棒状の細径部11と、細径部11に対して基端側に位置し、細径部11より外径の大きい円形断面の棒状の太径部13と、細径部11と太径部13との間に位置するテーパ部12とから構成されている。また、コアシャフト10は、その横断面視において断面形状が三角形や四角形などの矩形形状であってもよい。テーパ部12は、細径部11との境界位置から太径部13との境界位置に向けて外径が徐々に大きくなっている。なお、図1では、太径部13の一部分の図示を省略している。
【0022】
コアシャフト10は、例えば、金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等により構成されている。
【0023】
先端チップ30は、コアシャフト10(の細径部11)の先端に形成された略球状の部材である。先端チップ30の内部に、コアシャフト10(の細径部11)の先端が埋め込まれるようにして固着されている。先端チップ30の先端側の外周面は、滑らかな面(例えば、略球面)となっている。先端チップ30は、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだ等により構成されている。または、コアシャフト10の先端部を溶融、研磨等して球状に形成することで構成してもよい。このような構成とされた先端チップ30によって、コアシャフト10の細径部11が血管壁などの体内組織に当接することを防ぐことができ、それらが損傷等することが抑制される。
【0024】
樹脂部20は、樹脂により形成され、コアシャフト10の先端側(本実施形態では、細径部11の全体およびテーパ部12の先端側の一部)の外周を覆う管状の部材である。樹脂部20は、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、PTFE等のフッ素系樹脂、シリコン樹脂等により構成されている。樹脂部20の詳細構成については後述する。
【0025】
なお、ガイドワイヤ100の一部または全部が、例えば公知のコーティング剤によりコートされていてもよい。コーティングは、ガイドワイヤ100を血管内に挿入したときに、ガイドワイヤ100の表面と血管内壁との間の摩擦抵抗を低減して、滑り性を確保するために設けられている。従って、コーティングは、摩擦抵抗が小さい材料(親水性の樹脂など)で形成することが望ましい。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、無水マレイン酸系共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンまたはその共重合体、(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)―スチレンブロック共重合体、各種合成ポリペプチド、コラーゲン、ヒアルロン酸、セルロース系ポリマー、およびこれらの混合物などによって、コーティングをすることが望ましい。
【0026】
A-2.樹脂部20の詳細構成:
次に、第1実施形態の樹脂部20の詳細構成について説明する。図1に示すように、樹脂部20は、最先端部23と、コアシャフト10の外周との間に空間(以下、「第1の空間」という。)S1が形成された非接触部21と、コアシャフト10の外周に接触している接触部22とを備えている。非接触部21は、最先端部23よりも基端側に位置し、接触部22は、非接触部21よりも基端側に位置している。樹脂部20の外径は、樹脂部20の全長にわたって均一である(接触部22の基端側の一部は除く)。なお、樹脂部20は、円環状である。
【0027】
樹脂部20の最先端部23は、先端側が閉じられた半球状に形成された部分であり、先端チップ30を覆うように形成されている。
【0028】
先端チップ30は、溶融したろう材や樹脂材料によりコアシャフト10の先端を覆うことにより形成されていてもよい。また、先端チップ30は、樹脂部20の最先端部23を形成する樹脂により球状に形成されていてもよい。
【0029】
樹脂部20の非接触部21は、非接触部21の先端側に位置し、コアシャフト10の外周から離隔している先端側非接触部212と、先端側非接触部212よりも基端側に位置し、コアシャフト10の外周から離隔している切替部213とを備えている。なお、先端側非接触部212は、円環状である。
【0030】
樹脂部20の先端側非接触部212および切替部213は、上述したようにコアシャフト10から離隔した位置においてコアシャフト10の細径部11の先端側を覆っており、これにより先端側非接触部212および切替部213と、コアシャフト10との間に、上述した第1の空間S1が形成されている。第1の空間S1は、ガイドワイヤ100の軸周りの全周にわたって形成されている。先端側非接触部212の内径は、先端側非接触部212の全長にわたって均一である。そのため、先端側非接触部212は、径方向の厚さt1が均一である。本実施形態では、軸方向に平行な断面(例えば、図1に示す断面)において、切替部213の内表面(第1の空間S1に面する表面)は、直線状となっている。
【0031】
樹脂部20の切替部213は、後述する先端側接触部221に接続している。切替部213の内径は、先端側非接触部212との境界位置から接触部22(より具体的には、後述する先端側接触部221)との境界位置に向けて内径が徐々に小さくなっている。そのため、切替部213は、先端側非接触部212との境界位置から接触部22(より具体的には、後述する先端側接触部221)との境界位置に向けて径方向の厚さが徐々に厚くなっている。切替部213は、基端側において、接触部22に近づくにつれて、径方向におけるコアシャフト10との距離が短くなる構成とされている。
【0032】
接触部22は、先端側に位置し、コアシャフト10の外周に接触している先端側接触部221と、先端側接触部221よりも基端側に位置し、コアシャフト10の外周に接触している基端側接触部222とを備えている。なお、接触部22は、円環状である。
【0033】
樹脂部20の先端側接触部221および基端側接触部222は、上述したようにコアシャフト10の外周に接触しており、そのため、樹脂部20の接触部22とコアシャフト10との間には空間が形成されていない。
【0034】
先端側接触部221は、コアシャフト10の細径部11の基端側を覆っている。樹脂部20の先端側接触部221の内径は、先端側接触部221の全長にわたって均一である。そのため、先端側接触部221は、径方向の厚さt2が均一である。先端側接触部221の内径は、先端側非接触部212の内径よりも小さい。そのため、先端側接触部221の径方向の厚さt2は、先端側非接触部212の厚さよりも厚い。基端側接触部222の内径は、先端側接触部221との境界位置から基端側に向けて徐々に大きくなっている。基端側接触部222の径方向の厚さは、先端側非接触部212の厚さよりも厚い。
【0035】
基端側接触部222は、コアシャフト10のテーパ部12の先端側を覆っている。これにより、軸方向における(樹脂部20の)基端側接触部222とコアシャフト10のテーパ部12との相対的な位置決めがなされ、ひいては、軸方向における樹脂部20とコアシャフト10との相対的な位置決めがなされる。
【0036】
なお、第1実施形態のガイドワイヤ100は、例えば、以下のように製造することができる。まず、コアシャフト10を準備し、公知の方法により、コアシャフト10の細径部11の先端に先端チップ30を形成する。次に、例えば押出成形により、上述した構成とされた樹脂部チューブを成形し、樹脂部20をコアシャフト10の先端側(より具体的には、細径部11の全体およびテーパ部12の略全体)および先端チップ30の全体を覆うように配置する。次に、樹脂部20の接触部22を形成するために、樹脂チューブの後端側を溶融させてコアシャフト10を覆うように配置する。次に、樹脂チューブの先端部を溶融させて先端チップ30を覆うように配置することにより、上述した構成とされた樹脂部20を形成する。主として以上の方法により、上述した構成のガイドワイヤ100を製造することができる。
【0037】
なお、第1実施形態においては、非接触部21はコアシャフト10の細径部11のみを覆っているが、テーパ部12を覆っていてもよい。その場合、接触部22はテーパ部12のみを覆っていてもよく、テーパ部12及び太径部13を覆っていてもよい。また、接触部22はテーパ部12を覆っていなくてもよい。その場合、接触部22は細径部11のみを非接触部21及び接触部22により覆っていてもよい。
【0038】
A-3.第1実施形態の効果:
第1実施形態のガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、樹脂により形成され、コアシャフト10の先端側(より具体的には、細径部11の全体およびテーパ部12の一部)の外周を覆う管状の樹脂部20とを備える。樹脂部20は、コアシャフト10の外周との間に第1の空間S1が形成された非接触部21と、コアシャフト10の外周に接触している接触部22とを備えている。非接触部21の厚さは、接触部22の厚さよりも厚い。
【0039】
第1実施形態のガイドワイヤ100では、上述の通り、樹脂部20は、コアシャフト10の外周との間に第1の空間S1が形成された非接触部21を備えている。そのため、例えば樹脂部20の非接触部21とコアシャフト10との間に第1の空間S1が形成されていない構成に比べて、ガイドワイヤ100の先端側の柔軟性を向上させることができる。これにより、ガイドワイヤ100が湾曲した血管内で屈曲(キンク)することが抑制される。また、第1実施形態のガイドワイヤ100では、上述の通り、さらに、樹脂部20は、コアシャフト10の外周に接触している接触部22を備えている。接触部22の厚さは、非接触部21の厚さよりも厚い。そのため、樹脂部20の先端側に位置する部分の厚さが当該部分の全長にわたって均一である構成に比べて、樹脂部20の強度が確保され、これにより、樹脂部20が破損する等の不具合の発生が抑制される。以上のように、第1実施形態のガイドワイヤ100によれば、ガイドワイヤ100の先端側の柔軟性を確保することと、樹脂部20の強度を確保することとを両立させることができる。また、コアシャフト10の外周に接触している接触部22を備えていることにより、医師等の手技者がガイドワイヤ100の基端側を回転させた際に、その回転がガイドワイヤ100の先端側に、より確実に伝わるようにする(トルク伝達性を維持する)ことができる。
【0040】
なお、上記のようなガイドワイヤ100の先端側の柔軟性の確保等を考慮すると、樹脂部20の非接触部21の(ガイドワイヤ100の)軸方向の長さが20mm以上(より好ましくは、50mm以上)であることが好ましく、樹脂部20の非接触部21の(ガイドワイヤ100の)径方向の厚さが3mm以下(より好ましくは、1mm以下)であることが好ましい。また、上記のような樹脂部20の強度を確保することや、トルク伝達性を維持すること等を考慮すると、軸方向における樹脂部20の接触部22の長さが20mm以上(より好ましくは、50mm以上)であることが好ましい。また、上記のようなガイドワイヤ100の先端側の柔軟性を確保することと、樹脂部20の強度を確保することとを両立させること等を考慮すると、軸方向における樹脂部20の非接触部21の長さと、接触部22の長さとの比が、1~1.2:1~1.2であることが好ましい。
【0041】
例えば、樹脂部20の非接触部21が上記の切替部213を有していない構成(例えば、非接触部21と接触部22との境界部分が径方向に平行な面である構成)とされたガイドワイヤ100においては、非接触部21と接触部22との境界部分において、外力による応力が集中しやすいため、当該境界部分において屈曲(キンク)が発生しやすくなる。
【0042】
これに対し、第1実施形態のガイドワイヤ100では、樹脂部20の非接触部21は、基端側において、接触部22に近づくにつれて、径方向におけるコアシャフト10との距離が短くなる切替部213を有する。そのため、樹脂部20の切替部213の存在により、外力による応力が非接触部21と接触部22との境界部分に集中することが抑制される。そのため、第1実施形態のガイドワイヤ100においては、非接触部21と接触部22との境界部分に応力が集中することに起因して屈曲(キンク)が発生することを抑制することができる。
【0043】
例えば、ガイドワイヤ100においては、穿孔(血管等に穴が開くこと)を防止するために、血管内で意図的に上記ガイドワイヤ100の先端側を湾曲した形状(以下、「ナックル形状」と記載する。)として上記ガイドワイヤ100を使用する場合がある。この場合、非接触部21の曲げ剛性は、接触部22の曲げ剛性よりも小さいため、血管内においてナックル形状が形成されるとき、非接触部21がナックル形状となりやすい。つまり、非接触部21が湾曲しやすく、接触部22が直線形状を保持しやすい。そのため、(樹脂部20の非接触部21の)設計時において非接触部21の長さを調節することにより、ナックル形状が生じる長さを調節することができる。従って、例えば、樹脂部20の非接触部21がコアシャフト10の先端から50mm以内の長さに形成されている構成においては、ナックル形状となる長さを50mm以内に収めることができる。
【0044】
B.第2実施形態:
B-1.ガイドワイヤ100Aの構成:
図2は、第2実施形態におけるガイドワイヤ100Aの構成を概略的に示す断面図である。図2に示すように、第2実施形態のガイドワイヤ100Aの構成は、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100の構成と比較して、コアシャフト10の先端側(本実施形態では、細径部11の全体およびテーパ部12の先端側の一部)の外周を覆うコイル体40を備える点で異なっており、これに伴ってコイル体40の周辺に位置する部材(樹脂部20A等)の構成(特に、形状)が若干異なっている。以下では、第2実施形態のガイドワイヤ100Aの構成の内、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0045】
第2実施形態の樹脂部20Aの構成は、基本的には、第1実施形態の樹脂部20と同様の構成である。すなわち、第2実施形態の樹脂部20Aは、第1実施形態の最先端部23、非接触部21、および接触部22と同様の構成とされた最先端部23A、非接触部21Aおよび接触部22Aを備えている。非接触部21Aと、コアシャフト10の外周との間に、空間(以下、「第2の空間」という。)S2が形成されている。非接触部21Aは、第1実施形態の先端側非接触部212および切替部213と同様の構成とされた先端側非接触部212Aおよび切替部213Aを備えている。樹脂部20の接触部22Aは、第1実施形態の先端側接触部221および基端側接触部222と同様の構成とされた先端側接触部221Aおよび基端側接触部222Aを備えている。第2実施形態の樹脂部20Aは、コイル体40が埋設されている点で、第1実施形態の樹脂部20の構成と異なっている。
【0046】
第2実施形態の先端チップ30Aは、コアシャフト10(の細径部11)の先端とコイル体40の先端とを接合している。すなわち、コアシャフト10(の細径部11)の先端とコイル体40の先端とが、先端チップ30Aの内部に埋め込まれるようにして固着されている。そのため、第2実施形態の先端チップ30Aの形状は、第1実施形態の先端チップ30の形状とは若干異なっている。具体的には、先端チップ30Aは、略半球に形成されている。
【0047】
コイル体40は、1本の素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材である。コイル体40は、コアシャフト10の先端側(本実施形態では、細径部11の全体およびテーパ部12の先端側の一部)の外周を取り囲むように配置されている。
【0048】
コイル体40は、例えば、金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、またはコバルト合金といった放射線透過性合金や、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)といった放射線不透過性合金により構成されている。コイル体40の少なくとも一部が放射線不透過性の材料で形成されていると、手技者は、放射線透視画像下でコイル体40の位置を把握することができる。
【0049】
コイル体40は、樹脂部20Aの非接触部21Aの内周側に位置する第1のコイル部41と、樹脂部20Aの接触部22Aの内部に位置し、コイル体40を構成する素線間のピッチが第1のコイル部41を構成する素線間のピッチよりも大きい第2のコイル部42とを有している。なお、ここでいう「コイル体40を構成する素線間のピッチ」とは、軸方向において互いに隣り合う(コイル体40の)素線の各中心間の距離である。なお、図2では、第2のコイル部42を構成する素線間のピッチPが示されている。本実施形態では、第1のコイル部41を構成する互いに隣り合う各素線の部分は、接触している。従って、第1のコイル部41を構成する各素線間のピッチはコイル体40を構成する素線の直径とほぼ同一である。
【0050】
第1のコイル部41は、径方向において、樹脂部20Aの先端側非接触部212Aに対向している。第2のコイル部42は、径方向において、樹脂部20Aの切替部213A、接触部22Aの全体(先端側接触部221Aおよび基端側接触部222A)に対向している。ガイドワイヤ100の長手方向軸上において、第1のコイル部41と第2のコイル部42との境界線TPは、樹脂部20Aの切替部213Aに重なっている。言い換えると、第1のコイル部41と第2のコイル部42との境界線TPは、コアシャフト10の長手方向において、切替部213Aの先端と基端の間に配置されている。
【0051】
基端側接合部50Aは、コアシャフト10(のテーパ部12)と樹脂部20A(の基端側接触部222A)の基端側とコイル体40の基端側(より具体的には、第2のコイル部42の基端側)とを接合する部材である。基端側接合部50Aは、第2のコイル部42の基端側において、第2のコイル部42を構成する素線間に配置されている。基端側接合部50Aは第2のコイル部42の基端側に限定されず、コイル部40のどの位置に配置されていても良く、先端側接触部22A内に配置されることがより好ましい。
【0052】
B-2.ガイドワイヤ100Aの製造方法:
図3は、第2実施形態におけるガイドワイヤの製造方法を示すフローチャートである。第2実施形態のガイドワイヤ100Aは、例えば、以下のように製造することができる。
【0053】
まず、コアシャフト10と、コアシャフト10の先端側の外周を覆うコイル体40とを備える複合体を準備する(S110)。具体的には、コアシャフト10と、上述した構成とされたコイル体40(樹脂部20Aの非接触部21Aの内周側に位置する第1のコイル部41、および、樹脂部20Aの接触部22Aの内部に位置し、コイル体40を構成する素線間のピッチが第1のコイル部41を構成する素線間のピッチよりも大きい第2のコイル部42を有するコイル体40と、を準備する。次に、コアシャフト10の先端側(本実施形態では、細径部11の全体およびテーパ部12の先端側の一部)がコイル体40の内側空間に挿入された状態で、コアシャフト10とコイル体40とを接合する先端チップ30Aおよび基端側接合部50Aを形成することにより、コアシャフト10とコイル体40とを接合する。基端側接合部50Aは、上述の先端チップ30の形成方法に類似の方法により形成されてもよい。つまり、基端側接合部50Aは、溶融したろう材や樹脂材料によりコアシャフト10の基端部及びコイル体40の基端部を覆うことにより形成されてもよい。図2に示すように、第2のコイル部42の基端部の素線間に前述のろう材や樹脂材料が入り込み、コアシャフト10とコイル体40を接合することにより、より強固な接合が可能となる。以上の工程により、コアシャフト10と、コアシャフト10の先端側の外周を覆うコイル体40とを備える複合体を準備する。S110の工程は、特許請求の範囲における第1の工程の一例である。
【0054】
次に、上記複合体を液状の樹脂材料に入れるディッピング処理を行い、ディッピング処理後の当該複合体に付着した樹脂材料を硬化させる処理を施すことにより、樹脂部20Aを形成する(S120)。具体的には、ディッピング処理により、樹脂材料を、コアシャフト10(の先端側)と、先端チップ30Aと、コイル体40とを覆うように被覆し、樹脂材料を硬化させる処理を施すことにより、樹脂部20Aを形成する。この際、樹脂材料は、コイル体40を構成する素線間のピッチが比較的小さい(本実施形態では、ピッチが素線の直径とほぼ同一)第1のコイル部41においては、第1のコイル部41の内周側には充填されずに外周側のみに被覆され、コイル体40を構成する素線間のピッチが比較的大きい第2のコイル部42においては、第2のコイル部42の外周側を被覆するだけでなく内周側にまで充填される。その結果、コアシャフト10との間に第2の空間S2が形成された非接触部21Aと、コアシャフト10に接触した接触部22Aが形成される。第1のコイル部41は、樹脂部20Aの非接触部21Aの内周側に位置し、第2のコイル部42は、樹脂部20Aの接触部22Aの内部に位置する。主として以上の方法により、上述した構成のガイドワイヤ100Aを製造することができる。なお、S120の工程は、特許請求の範囲における第2の工程の一例である。
【0055】
B-3.第2実施形態の効果:
第2実施形態のガイドワイヤ100Aでは、コアシャフト10の先端側(本実施形態では、細径部11の全体およびテーパ部12の先端側の一部)の外周を覆うコイル体40を備える。コイル体40は、樹脂部20Aの非接触部21Aの内周側に位置する第1のコイル部41と、樹脂部20Aの接触部22Aの内部に位置し、コイル体40を構成する素線間のピッチが第1のコイル部41を構成する素線間のピッチよりも大きい第2のコイル部42とを有している。
【0056】
そのため、第2実施形態のガイドワイヤ100Aでは、コイル体40のうち、樹脂部20Aの非接触部21Aの内周側に位置する第1のコイル部41を構成する素線間のピッチは、樹脂部20Aの接触部22Aの内部に位置する第2のコイル部42を構成する素線間のピッチよりも小さい。そのため、第1のコイル部41を構成する素線間のピッチが第2のコイル部42を構成する素線間のピッチと同等以上である構成に比べて、軸方向の単位長さ当たりのコイル体40(より具体的には、第1のコイル部41)と樹脂部20A(より具体的には、樹脂部20Aの非接触部21A)との接触面積が大きくなり、これにより、コイル体40(より具体的には、第1のコイル部41)と樹脂部20Aの非接触部21Aとの密着性が向上し、これによりコイル体40からの樹脂部20Aの剥離が抑制される。また、コイル体40の第1のコイル部41を構成する素線間のピッチが小さいことにより、放射線不透過性(例えば、X線不透過性)が良好なものとなる。
【0057】
また、第2実施形態のガイドワイヤ100Aでは、ガイドワイヤ100Aの長手方向軸上において、第1のコイル部41と第2のコイル部42との境界線(以下、「移行部分」ともいう。)TPは、樹脂部20Aの切替部213Aに重なっている。言い換えると、第1のコイル部41と第2のコイル部42との境界線TPは、コアシャフト10の長手方向において、切替部213Aの先端と基端の間に配置されている。
【0058】
ガイドワイヤ100Aの長手方向軸上において第1のコイル部41と第2のコイル部42との移行部分TPが樹脂部20Aの切替部213Aに重なっていない構成、または樹脂部20Aが切替部213Aを備えていない構成においては、コイル体40の剛性が大きく変化する部分である第1のコイル部41と第2のコイル部42との境界部分に、外力による応力が集中しやすいため、当該境界部分において屈曲(キンク)が発生しやすい。
【0059】
これに対し、第2実施形態のガイドワイヤ100Aでは、上述の通り、ガイドワイヤ100Aの長手方向軸上において、第1のコイル部41と第2のコイル部42との移行部分TPは、樹脂部20Aの切替部213Aに重なっている。そのため、第2実施形態のガイドワイヤ100Aにおいては、ガイドワイヤ100Aの長手方向軸上において、第1のコイル部41と第2のコイル部42との移行部分TPは、樹脂部20Aの切替部213Aに重なっていない構成等に比べて、コイル体40の剛性が大きく変化する部分である第1のコイル部41と第2のコイル部42との境界部分における応力の集中が抑制される。これにより、当該境界部分に応力が集中することに起因して屈曲(キンク)が発生することを抑制することができる。
【0060】
第2実施形態のガイドワイヤ100Aの製造方法は、下記の第1の工程と第2の工程とを備える。第1の工程では、コアシャフト10と、コアシャフト10の先端側の外周を覆うコイル体40と、を備える複合体を準備する。第2の工程では、前記複合体を液状の樹脂材料に入れるディッピング処理を行い、ディッピング処理後の前記複合体に付着した樹脂材料を硬化させる処理を施すことにより、コイル体40を形成する。第2実施形態のガイドワイヤ100Aの製造方法によれば、上述したコアシャフト10と樹脂部20Aとコイル体40とを備えるガイドワイヤ100Aを、容易に製造することができる。
【0061】
また、第2実施形態のガイドワイヤ100Aは、第1実施形態と同様に、コアシャフト10と、樹脂により形成され、コアシャフト10の先端側(より具体的には、細径部11の全体およびテーパ部12の一部)の外周を覆う管状の樹脂部20Aとを備える。樹脂部20Aは、コアシャフト10の外周との間に第2の空間S2が形成された非接触部21Aと、コアシャフト10の外周に接触している接触部22Aとを備えている。非接触部21Aの厚さは、接触部22Aの厚さよりも厚い。なお、図2のt3は、先端側非接触部212Aの径方向の厚さを示しており、図2のt4は、先端側接触部221Aの径方向の厚さを示している。
【0062】
そのため、第2実施形態のガイドワイヤ100Aによれば、第1実施形態の場合と同様の理由から、ガイドワイヤ100Aの先端側の柔軟性を確保することと、樹脂部20Aの接触部22Aの強度を確保することとを両立させることができる。なお、第2実施形態のガイドワイヤ100Aによれば、樹脂部20Aの接触部22Aの強度を確保することができることにより、コイル体40からの樹脂部20Aの剥離を抑制することもできる。
【0063】
また、第2実施形態のガイドワイヤ100Aでは、第1実施形態と同様に、樹脂部20Aの非接触部21Aは、基端側において、接触部22Aに近づくにつれて、径方向におけるコアシャフト10との距離が短くなる切替部213Aを有する。そのため、第2実施形態のガイドワイヤ100Aにおいては、第1実施形態の場合と同様の理由から、上記の切替部213Aを有していない構成に比べて、非接触部21Aと、接触部22Aとの境界部分に応力が集中することが抑制される。これにより、当該境界部分に応力が集中することに起因して屈曲(キンク)が発生することを抑制することができる。
【0064】
また、第2実施形態のガイドワイヤ100Aでは、非接触部21Aの曲げ剛性は、接触部22Aの曲げ剛性よりも小さいため、血管内においてナックル形状が形成されるとき、非接触部21Aがナックル形状となりやすい。つまり、非接触部21Aが湾曲しやすく、接触部22Aが直線形状を保持しやすい。そのため、(樹脂部20Aの非接触部21Aの)設計時において非接触部21Aの長さを調節することにより、ナックル形状が生じる長さを調節することができる。従って、例えば、樹脂部20Aの非接触部21Aがコアシャフト10の先端から50mm以内の長さに形成されている構成においては、ナックル形状となる長さを50mm以内に収めることができる。
【0065】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
上記実施形態におけるガイドワイヤ100、100Aの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態では、軸方向に平行なガイドワイヤ100、100Aの断面(例えば、図1に示すガイドワイヤ100の断面、または図2に示すガイドワイヤ100Aの断面)において、切替部213、213Aの内表面(第1の空間S1に面する表面、または第2の空間S2に面する表面)は、直線状となっている。軸方向に平行なガイドワイヤ100、100Aの断面において、切替部213の内表面は、図4に示すように、基端部が半円状になるように湾曲した曲線状となっていてもよい。また、軸方向に平行なガイドワイヤ100、100Aの断面において、切替部213の内表面(第1の空間S1に面する表面、または第2の空間S2に面する表面)は、図5に示すように、第1の空間S1(または、第2の空間S2)の径方向内側に突出するように湾曲した曲線状となっていてもよい。また、軸方向に平行なガイドワイヤ100、100Aの断面において、切替部213の内表面(第1の空間S1に面する表面、または第2の空間S2に面する表面)は、図6に示すように、第1の空間S1(または、第2の空間S2)内径が基端側に向かって段階的に減少するような段差構造となっていてもよい。これらの構成においても、上記実施形態の場合と同様の理由から、非接触部21、21Aと接触部22、22Aとの境界部分に応力が集中することに起因して屈曲(キンク)が発生することを抑制することができる。
【0068】
また、上記第2実施形態では、コイル体40は、1本の素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒形状に形成された構成であるが、コイル体40は、複数の素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒形状に形成した構成であってもよいし、複数の素線を撚って形成した1本の撚線を螺旋状に巻回することにより中空円筒形状に形成した構成であってもよいし、複数の素線を撚って形成した撚線を複数本、螺旋状に巻回することにより中空円筒形状に形成した構成であってもよい。
【0069】
また、上記第2実施形態(または変形例。以下、同様)では、コイル体40は、第1のコイル部41と、コイル体40を構成する素線間のピッチが第1のコイル部41を構成する素線間のピッチよりも大きい第2のコイル部42とを有する構成であるが、コイル体40を構成する素線のピッチは種々変形可能である。例えば、コイル体40は、コイル体40を構成する素線のピッチが均一である構成であってもよい。また、上記第2実施形態では、第1のコイル部41を構成する素線間のピッチは素線の直径とほぼ同一であるが、第1のコイル部41を構成する素線間のピッチが素線の直径よりも大きい構成であってもよい。
【0070】
また、上記第2実施形態において、コイル体40は、第1のコイル部41の一部のみが、樹脂部20Aの非接触部21Aの内周側に位置する構成であってもよく、第2のコイル部42の一部のみが、樹脂部20Aの接触部22Aの内部に位置する構成であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態のガイドワイヤ100、100Aを構成する各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。また、上記実施形態におけるガイドワイヤ100、100Aの製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【符号の説明】
【0072】
10:コアシャフト
11:(コアシャフトの)細径部
12:(コアシャフトの)テーパ部
13:(コアシャフトの)太径部
20:樹脂部
20A:樹脂部
21:(樹脂部の)非接触部
21A:(樹脂部の)非接触部
22:(樹脂部の)接触部
22A:(樹脂部の)接触部
23:(樹脂部の)最先端部
23A:(樹脂部の)最先端部
30:先端チップ
30A:先端チップ
40:コイル体
41:第1のコイル部
42:第2のコイル部
50:基端側接合部
50A:基端側接合部
100:ガイドワイヤ
100A:ガイドワイヤ
212:先端側非接触部
212A:先端側非接触部
213:切替部
213A:切替部
221:先端側接触部
221A:先端側接触部
222:基端側接触部
222A:基端側接触部
S1:第1の空間
S2:第2の空間
TP:(第1のコイル部と第2のコイル部との)移行部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6