(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電気パルス工具
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20240418BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B25B23/14 640M
B25F5/00 G
(21)【出願番号】P 2019556594
(86)(22)【出願日】2018-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2018058662
(87)【国際公開番号】W WO2018192775
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-08
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】クロトブリクスト アダム
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-001536(JP,A)
【文献】国際公開第99/062675(WO,A1)
【文献】特開2012-115926(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084158(WO,A1)
【文献】特開2013-198964(JP,A)
【文献】特開2015-193078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0121470(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00808018(EP,A1)
【文献】米国特許第06680595(US,B2)
【文献】特開2002-001676(JP,A)
【文献】米国特許第07770658(US,B2)
【文献】特開2006-315125(JP,A)
【文献】特開2011-240441(JP,A)
【文献】特開2003-018884(JP,A)
【文献】特開2004-074311(JP,A)
【文献】特開2013-022665(JP,A)
【文献】特開2011-073123(JP,A)
【文献】特開2011-031315(JP,A)
【文献】特開2009-202317(JP,A)
【文献】特開2012-115958(JP,A)
【文献】特開2002-154064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気パルス工具(10)を調整する方法であって、トルクがトルクパルスの状態で前記電気パルス工具(10)の出力シャフト(12)に送り出され、各期間に関し、電流パルスが電流オン時間(T
ON)中、電気モータに提供され、決められている電流オフ時間(T
OFF)中、電流供給が休止され、前記方法は、
オペレータが、所定の係数としてパラメータ値を決定するものであって、パラメータ値が大きいと電流オフ時間が長くなり、パラメータ値が小さいと電流オフ時間が短くなるものであって、
‐前記パルス工具用のコントローラが、前記電気パルス工具(10)のオペレータが選択する、前記電気パルス工具による来たる締付け作業で受けることになる反力の大きさを反映し前記コントローラのユーザインターフェースを介して前記コントローラ内に入力された
前記パラメータ値を検索し、
‐前記パルス工具用のコントローラが、前記電気パルス工具による来たる締付け作業のために、前記パラメータ値に基づいて前記電流オフ時間(T
OFF)を決定するステップと、を含み、
前記決められている電流オフ時間(T
OFF)は、前記トルクパルスの終了までの第1のオフ間隔および前記トルクパルスの終了後の第2のオフ間隔を含み、前記第2のオフ間隔はさらに、前記トルクパルスの幅(T
WIDTH)に基づいており、トルクパルスの幅が広いと、その結果として、オフ間隔(T
OFF)が広く、トルクパルスの幅が狭いと、その結果として、オフ間隔(T
OFF)が短い、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
パラメータ値が大きいと、その結果として、電流オフ時間(T
OFF)が長く、パラメータ値が小さいと、その結果として、電流オフ時間(T
OFF)が短い、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2のオフ間隔は、前記トルクパルスの前記幅(T
WIDTH)に前記パラメータ値を乗算して得られた値から前記電流オン時間(T
ON)を差し引いた値であり、すなわち、
T
SECOND
OFF=(パラメータ値・T
WIDTH)-T
ON
である、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、工具コントローラ内で実施される、
請求項1~3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記パラメータ値は、前記コントローラのユーザインターフェースを介して前記コントローラ内にエンターされる、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記電気パルス工具内で実施される、
請求項1~5のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
前記パラメータ値は、前記電気パルス工具のユーザインターフェースを介して前記電気パルス工具内にエンターされる、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
電気パルス工具(10)用のコントローラであって、トルクがトルクパルスの状態で前記電気パルス工具(10)の出力シャフト(12)に送り出され、各期間に関し、電流パルスが電流オン時間(T
ON)中、電気モータに提供され、決められている電流オフ時間(T
OFF)中、電流供給が休止され、前記コントローラは、
オペレータが、所定の係数としてパラメータ値を決定するものであって、パラメータ値が大きいと電流オフ時間が長くなり、パラメータ値が小さいと電流オフ時間が短くなる制御を行なうものであって、前記コントローラは、
前記電気パルス工具(10)のオペレータが選択する、前記電気パルス工具による来たる締付け作業において受けることになる反力の大きさを反映し前記コントローラのユーザインターフェースを介して前記コントローラ内に入力された
前記パラメータ値を検索し、
‐前記パラメータ値に基づいて前記電流オフ時間(T
OFF)を求めるよう動作し、パラメータ値が大きいと、その結果として、電流オフ時間(T
OFF)が長く、パラメータ値が小さいと、その結果として、電流オフ時間(T
OFF)が短く、前記決められている電流オフ時間(T
OFF)は、前記トルクパルスの終了までの第1のオフ間隔および前記トルクパルスの終了後の第2のオフ間隔を含み、前記第2のオフ間隔はさらに、前記トルクパルスの幅(T
WIDTH)に基づいており、トルクパルスの幅が広いと、その結果として、オフ間隔(T
OFF)が広く、トルクパルスの幅が狭いと、その結果として、オフ間隔(T
OFF)が短い、
ことを特徴とするコントローラ。
【請求項9】
前記第2のオフ間隔は、前記トルクパルスの前記幅(T
WIDTH)に前記パラメータ値を乗算して得られた値から前記電流オン時間(T
ON)を差し引いた値であり、すなわち、
T
SECOND
OFF
INTERVAL=(パラメータ値×T
WIDTH)-T
ON
TIME
である、
請求項8記載のコントローラ。
【請求項10】
前記パラメータ値は、前記コントローラのユーザインターフェースを介して前記コントローラ内にエンターされる、
請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記コントローラは、電気パルス工具(10)の一部である、
請求項8~10のうちいずれか一に記載のコントローラ。
【請求項12】
コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムは、電気パルス工具(10)内または電気パルス工具(10)用のコントローラ内で実行されると、前記電気パルス工具(10)または前記コントローラが請求項1~7のうちいずれか一に記載の方法を実施するようにさせる、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムは、電気パルス工具(10)用のコントローラ内で実行されると、前記電気パルス工具(10)用の前記コントローラが請求項1~7のうちいずれか一に記載の前記方法を実施するようにさせる、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気パルス工具用のコントローラおよび電気パルス工具用のコントローラにおける方法に関する。特に、本発明は、コントローラおよび電気パルス工具の反力の特性に関して電気パルス工具を構成するコントローラ内における方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルト、ねじおよびナットを締結するための電力工具が多くの互いに異なる用途で用いられている。これらの用途のうちの幾つかにおいて、クランプ力または少なくとも関連トルクを制御することができるようにすることが望ましくまたはそれどころか必要である。かかる電力工具は、典型的には、トルクが測定されるよう電力工具の出力シャフトを回転させるよう制御される。トルクが所定の値に達すると、電力工具は、出力シャフトの回転を停止させるよう制御される。これは、例えば、工具への電力を切断することによって達成されるのが良くあるいはクラッチを摺動させるのが良い。
【0003】
電力工具、特に手持ち型電力工具を操作する際に遭遇する問題は、オペレータが反力を受けることである。オペレータに伝わる反力を軽減する一手法は、電気モータをパルス化された仕方で駆動する一連のエネルギーパルスを供給するパルス型電気モータを使用することである。エネルギーは、典型的には、電流パルスとして供給されるのが良い。それにより、オペレータが対処する必要のある反力を軽減させることができる。
【0004】
米国特許第6,680,595号明細書は、ねじを締結するための制御方法および締結装置を記載している。締結装置は、パルス化漸増トルクを出力するよう制御される。実際のトルクを求め、そして実際のトルクが標的値に達したときにモータを停止させる。パルス化漸増トルクを発生させるには、パルス化電流を締結装置の電気モータに供給する。
【0005】
また、米国特許第7,770,658号明細書は、ねじを締結するための制御方法および締結装置を記載している。実際のトルクを求め、実際のトルクが標的値に達したときにモータを停止させる。さらに、実際のトルクが設定された値に達すると、締結装置により送り出されるトルクを減少させる。パルス化トルクを発生させるには、パルス化電流を締結装置の電気モータに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,680,595号明細書
【文献】米国特許第7,770,658号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電力アシスト型締結工具の作動を改良することが望まれ続けている。例えば、オペレータに伝えられる反力は、オペレータの作業条件を向上させるためにできるだけ小さいことが必要である。
【0008】
それゆえ、電気パルス工具を制御する改良型コントローラおよび方法が要望されている。
【0009】
本発明の目的は、反力の特性を向上させて電気パルス工具が使用上、人間工学的になるようにする改良型コントローラおよび電気パルス工具を制御する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明の第1の観点に従って、電気パルス工具をコンフィグレーションする方法であって、トルクがトルクパルスの状態で電気パルス工具の出力シャフトに送り出されることを特徴とする方法によって達成される。各期間に関し、電流パルスが電流オン時間中、電気モータに提供され、決められている電流オフ時間中、電流供給が休止される。本方法は、以下のステップを含む。電気パルス工具のオペレータが受ける場合のある反力の大きさを反映するパラメータ値を検索する。そして、パラメータ値に基づいて電流オフ時間を求める。
【0011】
本開示内容の第2の観点によれば、本発明は、電気パルス工具用のコントローラであって、トルクがトルクパルスの状態で電気パルス工具の出力シャフトに送り出されることを特徴とするコントローラに関する。各期間に関し、電流パルスが電流オン時間中、電気モータに提供され、決められている電流オフ時間中、電流供給が休止される。コントローラは、電気パルス工具のオペレータが受ける場合のある反力の大きさを反映するパラメータ値を検索するよう動作する。そして、パラメータ値に基づいて電流オフ時間を求める。
【0012】
本発明の例示の実施形態による利点は、電気パルス工具が使用上、人間工学的になるようにするよう反力の特性を向上させることにある。
【0013】
次に、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】先行技術に係る電流パルスシーケンスの図である。
【
図3】先行技術に係る電気パルス工具からの反力の図である。
【
図4】本発明の例示の実施形態に係る電流パルスシーケンスの図である。
【
図5】本発明の例示の実施形態に係る電気パルス工具からの反力の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
従来型電力工具、例えばナットランナまたはねじ回しは、典型的には、実施される作業、例えば継手の締め付けの質を制御することができるセンサ、例えば角度エンコーダおよびトルク計器を備えている。
【0016】
さらに、特に手持ち型動力工具に関し、オペレータの受ける反力は、できるだけ低いことと特定の締め付け作業を終了させる時間ができるだけ短いことの両方が重要である。オペレータは、作業サイクル中、何百回にもわたって締め付け作業を行う場合があり、したがって、締め付け作業は、オペレータの快適さにとって人間工学的であるとともに作業ステーションでの生産性のために迅速であることが重要である。人間工学的締め付け作業は、典型的には反力ができるだけ小さいことを示唆している。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る電気パルス工具10の例示の実施形態を示している。工具10は、トルクが一連のパルスの状態で送り出されてねじ継手を締め付ける締め付け作業または工具10によって実行される回転作用を含む同様な作用を実施するよう構成されている。この目的のため、パルス工具は、回転子20および固定子21を備えた電気モータ11を有する。電気モータ11は、2つの互いに逆の回転方向、すなわち時計回りの方向と反時計回りの方向に回転するよう構成されている。
【0018】
工具10は、ハンドル22をさらに有し、このハンドルは、図示の実施形態では拳銃型のものである。しかしながら、本発明は、かかる形態には限定されず、任意形式の電気パルス工具に利用でき、
図1の設計に限定されることはない。電源24がモータ11に接続されている。図示の実施形態では、電源は、ハンドルの下方部分内に配置されるのが良いバッテリである。他形式の電源、例えば電力を電気ケーブル経由で電気工具10に供給する外部電源もまた想定される。工具10は、電気モータ11の電力供給を制御するようオペレータによって操作可能に配置されたトリガ23をさらに有するのが良い。幾つかの実施形態では、工具10は、外部制御ユニット(図示せず)に連結されている。外部制御ユニットは、工具10に電力を供給することができる。制御ユニットはまた、工具を制御するために信号を工具10に送信したり信号を工具10から受信したりするよう構成されているのが良い。さらに、工具は、出力シャフト12を有する。
【0019】
本発明は、有利には、出力シャフト12が歯車装置(図示せず)によりモータ11に連結されている電気パルス工具に利用できる。しかしながら、本発明は、かかる形式の動力工具には限定されない。
【0020】
電気パルス工具10は、電気モータ11を制御するよう構成されたプロセッサ16をさらに有する。電気パルス工具10は、プロセッサ16によって実行可能な命令を格納しているメモリ26をさらに有する。プロセッサ16は、中央処理装置(CPU)、マイクロコントローラ、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、またはコンピュータプログラムコードを実行することができる任意他の適当な形式のプロセッサである。メモリ26は、読み取り書き込み記憶装置(RAM)、読み取り専用記憶装置(ROM)、または永続的記憶装置、例えば磁気メモリ、光メモリ、もしくはソリッドステートメモリまたはそれどころか遠隔取り付け型メモリのうちの1つまたはこれらの組み合わせである。
【0021】
本発明の例示の一実施形態によれば、エネルギーが出力シャフトに提供されたかどうかを判定するためにセンサ25が配置されている。センサ25は、一実施形態によれば、出力シャフト12上に配置されている。変形例として、センサ25は、歯車装置上に配置されても良い。しかしながら、センサ25は、電気パルス工具内の他の場所に配置されても良い。本発明の例示の一実施形態によれば、センサ25は、トルクセンサ25である。本発明の別の例示の実施形態によれば、センサ25は、位置センサ25である。
【0022】
先行技術に係る電気パルス工具では、電流は、モータに間欠的に供給され、その結果、モータは、トルクパルスを発生させる。それにより、作業者に及ぼされる反力が小さくなり、作業者は、片手でねじ締結作業を行うことができる。
【0023】
図2は、先行技術に係る動力工具内の電気モータのパルス幅変調方式を示している。
図2は、先行技術に係る電流パルスの幾つかの期間(破線)の図である。
図2で理解できるように、オン/オフ比は固定されており、このことは、オン時間T
ONおよびオフ時間T
OFFが各期間について同一であることを意味している。
図2はまた、パルスの状態で電気パルス工具の出力シャフトに送り出されるトルクパルスを示している。
【0024】
図3は、先行技術に係る電気パルス工具を用いた場合のオペレータの受ける反力を示している。
図3で理解できるように、反力は、締め付けの始まりの際においてすでに大きい。これは、反力が電流パルスではなくトルクパルスによって生じるからである。電流パルスの幅が一定であるが、トルクパルスが始まりの際に幅が広いので、反力は、直線状に大きくなっているということはない。かくして、始まりの際には大きな反力が存在し、オペレータは、この大きな反力に驚くために、オペレータによって不快であると認識される。
【0025】
しかしながら、本発明者は、電気モータに供給される電流パルスの特性を変化させることによって反力の特性を向上させることができるということが分かった。これは、各期間について、電気パルス工具のオペレータがさらされる場合のある反力の大きさを反映させるパラメータ値に基づいて、電流オン時間と電流オフ時間との関係を変化させることによって達成できる。
【0026】
かくして、本発明の一観点は、電気パルス工具10を構成する方法に関し、トルクは、トルクパルスの状態で電気パルス工具10の出力シャフト12に送り出される。各期間に関し、電流パルスが第1の電流オン時間中、電気モータに提供され、決められている電流オフ時間(TOFF)中、電流供給が休止される。一観点によれば、本方法は、次のステップを含む。電気パルス工具のオペレータが受ける場合のある反力の大きさを反映するパラメータ値を検索する。次に、パラメータ値に基づいて電流オフ時間TOFFを求める。
【0027】
例示の一実施形態によれば、電流オフ時間TOFFは、パラメータ値に基づいており、したがって、パラメータ値が大きいと、その結果として、電流オフ時間TOFFが長くなり、パラメータ値が小さいと、その結果として、電流オフ時間TOFFが短くなる。
【0028】
この実施形態の利点は、オペレータが、所定の係数を選択することによって電気パルス工具がオペレータに送り出す反力の特性を選択することができるということにある。
【0029】
例示の実施形態によれば、電気パルス工具10からの反力は、トルク振幅およびトルクパルスの幅とトルクパルスのオフ時間との関係で決まる。トルクパルスの幅は、電流パルスの幅で決まる。トルクパルスのオフ時間もまた、電流パルスのオフ時間で決まる。したがって、電流オン時間と電流オフ時間TOFFとの関係を変化させることによって反力の特性を変化させることができる。電流オン時間と電流オフ時間とのこの関係は、電気パルス工具のオペレータがさらされる場合のある反力の大きさを反映するパラメータ値によって表せる。パラメータ値が大きいと、その結果として、電流オフ時間TOFFが長くなり、パラメータ値が小さいと、その結果として、電流オフ時間TOFFが短くなる。
【0030】
本方法の別の例示の実施形態によれば、決められている電流オフ時間TOFFは、トルクパルスの終了までの第1のオフ間隔およびトルクパルスの終了後の第2のオフ間隔を含み、第2のオフ間隔はさらに、トルクパルスの幅に基づいており、トルクパルスの幅が広いと、その結果として、オフ間隔が広く、トルクパルスの幅が狭いと、その結果として、オフ間隔が短い。
【0031】
締め付けの開始時、電気パルス工具は、終了時よりもパルス1個当たり長い時間にわたってねじを締め付け、このことは、トルクパルス幅が広いことを意味している。したがって、本発明のこの例示の実施形態に係るオフ間隔は、反力の滑らかな増大を与えるために締め付けの開始の際に広いよう定められる。
【0032】
図4は、例示の実施形態に従って電気パルス工具を構成する方法を示しており、この場合、決められている電流オフ時間T
OFFは、トルクパルスの終了までの第1のオフ間隔およびトルクパルスの終了後の第2のオフ間隔を含む。そして、第2のオフ間隔は、さらに、トルクパルスの幅に基づいている。
図4はまた、本発明の例示の実施形態に従ってトルクパルスを示している。
図4では、トルクパルスの幅は、第1のオフ間隔に対応しているが、他の例示の実施形態では、トルクパルスの幅は、第1のオフ間隔に対応する必要はない。
【0033】
図4で理解できるように、各期間に関し、電流パルスが電流オン時間間隔中、電気モータに提供される。次に、第1および第2のオフ間隔中、電流供給が休止される。この例示の実施形態では、第2のオフ間隔はさらに、トルクパルスの幅に基づいており、トルクパルスの幅が広いと、その結果として、オフ間隔が広く、トルクパルスの幅が狭いと、その結果として、オフ間隔が短い。
【0034】
例示の実施形態によれば、電気パルス工具10からの反力は、トルク振幅およびトルクパルスの幅とトルクパルスのオフ時間との関係で決まる。
図4に示されている例示の実施形態では、トルクパルスのオフ時間は、電流オン時間間隔に第2のオフ時間間隔を加えたものである。締め付けの開始時、電気パルス工具は、終了時よりもパルス1個当たり長い時間にわたってねじを締め付け、このことは、トルクパルスの幅が広いことを意味している。したがって、本発明の例示の実施形態に係る第2のオフ間隔は、反力の滑らかな増大を与えるために締め付けの開始の際に広いよう定められる。
【0035】
図5は、本発明の例示の実施形態に係る工具を用いたときにオペレータの受ける反力を示している。
図5で理解できるように、反力は、締め付けの開始の際には小さい。反力はまた、先行技術の電気パルス工具と比較して直線状に増大している。これは、反力が各期間についてトルクパルスのオン時間とトルクパルスのオフ時間の関係によって生じるからである。トルクパルスの幅が広いと、その結果として、オフ間隔が広く、トルクパルスの幅が狭いと、その結果として、オフ間隔が短いように例示の実施形態によるオフ間隔がトルクパルスの幅に基づいて定められるので、反力は、開始の際には小さく、そして直線状に増大する。かくして、この結果、開始の際には反力が小さく、オペレータが大きな反力によって驚かされることはないので、この小さい反力がオペレータによって快適に受け止められる。
【0036】
本発明に係る方法の例示の一実施形態では、トルクパルスの幅は、電気パルス工具がエネルギーを出力シャフトに伝達し始める第1の時点から電気パルス工具がエネルギーを出力シャフトに伝達するのを停止する第2の時点までの期間に基づいて求められる。
【0037】
本方法の例示の実施形態では、トルクセンサが用いられ、エネルギーが出力シャフトに伝達されたかどうかは、出力シャフトに加わる決められているトルクに基づいて判定される。
【0038】
本方法の例示の一実施形態によれば、出力シャフトは、決められているトルクが本質的にゼロに達したときにエネルギーの伝達を停止させるよう構成されている。本方法の例示の一実施形態によれば、出力シャフトは、決められているトルクが本質的にゼロよりも大きい値に達したときにエネルギーの伝達を開始させるよう構成されている。本方法の別の例示の実施形態によれば、センサは、位置センサであり、エネルギーが出力シャフトに伝達されたかどうかは、出力シャフトの決められている位置の変化に基づいて判定される。本方法の別の例示の実施形態によれば、出力シャフトは、位置センサによって求められた速度が本質的にゼロに達したときにエネルギーの伝達を停止させるよう構成されている。
【0039】
本方法の例示の実施形態によれば、出力シャフトは、位置センサによって求められた決められている速度が本質的にゼロよりも大きい値に達したときにエネルギーの伝達を開始させるよう構成されている。
【0040】
本方法の例示の実施形態によれば、第2のオフ間隔は、トルクパルスの幅に所定の係数を乗算して得られた値から電流オン時間TCURRENTを差し引いた値である。
TPAUSE=(係数×TWIDTH)-TCURRENT
【0041】
本発明にかかる方法の例示の実施形態では、本方法は、工具コントローラ内で実施される。
【0042】
本発明にかかる方法の例示の実施形態では、パラメータ値は、コントローラのユーザインターフェースを介してコントローラ内にエンターされる。
【0043】
本発明にかかる方法の例示の実施形態では、本方法は、電気パルス工具内で実施される。
【0044】
本発明にかかる方法の例示の実施形態では、パラメータ値は、電気パルス工具のユーザインターフェースを介して電気パルス工具内にエンターされる。
【0045】
本発明にかかる方法の例示の実施形態では、係数は、例えば電気パルス工具用のコントローラから受け取られる。この係数は、コントローラのユーザインターフェースを介してコントローラにエンターされているのが良い。
【0046】
本発明にかかる方法の例示の実施形態では、パラメータ値は、コントローラのユーザインターフェースを介して電気パルス工具にエンターされる。
【0047】
本発明はまた、コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であって、コンピュータプログラムは、電気パルス工具10内で実行されると、電気パルス工具10が上述の方法を実施するようにさせることを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0048】
本発明はまた、コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であって、コンピュータプログラムは、電気パルス工具10用のコントローラ内で実行されると、電気パルス工具10用のコントローラが上述の方法を実施するようにさせることを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0049】
例示の一実施形態によれば、上述のコンピュータプログラムコードが電気パルス工具10のプロセッサ16内で実行されると、それにより、電気パルス工具10は、上述の方法に従って電流パルスを電気モータに提供する。
【0050】
かくして、例示の一実施形態によれば、電気パルス工具10は、プロセッサ16およびプロセッサ16によって実行可能な命令を格納したメモリ26を有し、電気パルス工具10は、各期間について、上述の例示の実施形態のうちの任意のものに従って本方法を実施するよう動作する。
【0051】
本発明はまた、電気パルス工具用のコントローラであって、トルクがトルクパルスの状態で電気パルス工具の出力シャフトに送り出されることを特徴とするコントローラに関する。各期間に関し、電流パルスが第1の電流オン時間中、電気モータに提供され、決められている電流オフ時間TOFF中、電流供給が休止される。コントローラは、電気パルス工具のオペレータが受ける場合のある反力の大きさを反映するパラメータ値を検索するよう動作する。そして、パラメータ値に基づいて電流オフ時間TOFFを求め、パラメータ値が大きいと、その結果として、電流オフ時間TOFFが長く、パラメータ値が小さいと、その結果として、電流オフ時間TOFFが短い。
【0052】
コントローラの例示の別の実施形態では、決められている電流オフ時間TOFFは、トルクパルスの終了までの第1のオフ間隔およびトルクパルスの終了後の第2のオフ間隔を含み、第2のオフ間隔はさらに、トルクパルスの幅に基づいており、トルクパルスの幅が広いと、その結果として、オフ間隔が広く、トルクパルスの幅が狭いと、その結果として、オフ間隔が短い。
【0053】
コントローラのさらに別の実施形態では、第2のオフ間隔は、トルクパルスの幅にパラメータ値を乗算して得られた値から電流オン時間を差し引いた値である。
TSECOND
OFF
INTERVAL=パラメータ値×TWIDTH-TON
【0054】
コントローラのさらに別の例示の実施形態では、パラメータ値は、コントローラのユーザインターフェースを介してコントローラ内にエンターされる。
【0055】
コントローラのさらに別の例示の実施形態では、コントローラは、電気パルス工具10の一部である。
【0056】
別の例示の実施形態では、コントローラは、プロセッサおよびコントローラによって実行可能な命令を格納したメモリを有し、コントローラは、各期間について、上述の例示の実施形態のうちの任意のものに従って本方法を実施するよう動作する。