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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ワイヤソー
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20240418BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20240418BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B24B27/06 Q
B24B27/06 R
B28D5/04 C
H01L21/304 611W
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020026681
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130164
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】河津 知之
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 克彦
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-218509(JP,A)
【文献】特開昭60-137508(JP,A)
【文献】特開平09-155858(JP,A)
【文献】実開昭63-011580(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B28D 5/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工用ローラ間にワイヤを巻回し、加工用ローラの回転に伴ってワイヤを走行させて、ワイヤによりワークを切断するワイヤソーにおいて、
前記加工用ローラを支持するスピンドルと、
前記スピンドルを回転可能に軸支する偏芯軸受と、
前記偏芯軸受が挿着される軸受設置孔を有する支持フレームと、を備え、
前記軸受設置孔の軸心と、前記スピンドルの軸心とは、偏芯しており、
前記偏芯軸受の外周面、及び、前記軸受設置孔の内壁面のうちの一方には、固定具がそれぞれ着脱可能に挿入される係合部が複数形成されており、
他方には、前記固定具がそれぞれ着脱可能に挿入される係合部が少なくとも一つ形成されており、
前記偏芯軸受を回動させることで、複数の前記加工用ローラの軸心間の距離を増減させて、
前記固定具を前記係合部に挿入することで、前記偏芯軸受を予め設定された所定位置に固定する
ことを特徴とするワイヤソー。
【請求項2】
前記偏芯軸受は、2つから成り、
前記偏芯軸受は、一方の前記偏芯軸受を、時計回り方向に回動させて、他方の偏芯軸受を、反時計回り方向に回動させることによって、複数の前記加工用ローラの軸心間の距離を増減させる
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤソー。
【請求項3】
前記係合部は、前記偏芯軸受の外周面と、前記軸受設置孔の内壁面とに、予め設定した所定の角度間隔で配置されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤソー。
【請求項4】
複数の前記スピンドルの軸心間の距離は、前記偏芯軸受の取り付け角度を変えることによって増減できる
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のワイヤソー。
【請求項5】
前記固定具は、キーから成り、
前記係合部は、キー溝から成る
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のワイヤソー。
【請求項6】
前記偏芯軸受は、前記スピンドルを回転可能に軸装するスピンドル設置孔を有し、
前記スピンドル設置孔の軸心は、前記偏芯軸受の中心線上の位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のワイヤソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤソーに関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来のワイヤソー100を示す要部概略図である。
図7に示すように、半導体材料や磁性材料等のワークWをワイヤ430で切断する従来のワイヤソー100は、複数の加工用ローラ410,420に所定間隔で巻き付けたワイヤ430を高速走行させて、加工部400のワイヤ430にワークWを押し当てることで切断している。
【0003】
従来のワイヤソー100では、ワークWの幅L100を変更した場合、ワイヤ430が弛んで加工精度が悪化するため、加工用ローラ410,420の主軸440,450の軸間距離L200を、ワークWの幅L100に応じて変更する必要がある。その場合は、主軸440,450を支持している支持フレーム700を、ワークWの幅L100に合った軸間距離L200を有するものに取り替える必要があり、取り替えに時間がかかるという問題点があった。
【0004】
このほか、支持フレーム700と加工室とが一体になっているワイヤソーの場合は、加工室全体を取り替える必要があり、主軸の軸間距離を変更するのに手間がかかるという問題点があった。
【0005】
それらの問題点を解消して軸間距離を容易に変更できるようにしたものとしては、例えば、特許文献1に記載されたワイヤソーが知られている。特許文献1に記載のワイヤソーでは、加工用ローラ(16,17)を回転自在に軸支している支持フレーム(22)を、固定フレーム(14)に脱着交換可能に装着して、所望の軸間距離を有する支持フレーム(22)の取り替え可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-218509号公報(図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のワイヤソーは、加工用ローラ(16,17)の軸間距離を変更する際、ワークの幅に適合した所望の軸間距離を有する支持フレームに取り替える必要があった。このため、作業員は、多種類の支持フレームを用意しておいて、ワークの幅が変更された場合、ワークの幅に適合した支持フレームに交換する作業を行わなければならない。このようなことから、特許文献1に記載のワイヤソーは、支持フレームの種類が増加して、部品点数、部品管理工数、及び、支持フレームの交換作業工数が増加するという問題点があった。
【0008】
本発明は、前記した問題点を解消すべく創案されたものであって、支持フレームを取り替えずに、加工用ローラの軸間距離(軸心間の距離)を容易に変更することができるワイヤソーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係るワイヤソーは、複数の加工用ローラ間にワイヤを巻回し、加工用ローラの回転に伴ってワイヤを走行させて、ワイヤによりワークを切断するワイヤソーにおいて、前記加工用ローラを支持するスピンドルと、前記スピンドルを回転可能に軸支する偏芯軸受と、前記偏芯軸受が挿着される軸受設置孔を有する支持フレームと、を備え、前記軸受設置孔の軸心と、前記スピンドルの軸心とは、偏芯しており、前記偏芯軸受の外周面、及び、前記軸受設置孔の内壁面のうちの一方には、固定具がそれぞれ着脱可能に挿入される係合部が複数形成されており、他方には、前記固定具がそれぞれ着脱可能に挿入される係合部が少なくとも一つ形成されており、前記偏芯軸受を回動させることで、複数の前記加工用ローラの軸心間の距離を増減させて、前記固定具を前記係合部に挿入することで、前記偏芯軸受を予め設定された所定位置に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、支持フレームを取り替えずに、加工用ローラの軸間距離(軸心間の距離)を容易に変更することができるワイヤソーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るワイヤソーを示す要部概略図である。
図2】本発明の実施形態に係るワイヤソーの要部概略断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るワイヤソーの要部概略図であり、図1の状態の左側の偏芯軸受を90度時計回り方向に回動させ、右側の偏芯軸受を90度反時計回り方向に回動させたときの加工部の状態を示す。
図4図3の状態の左側の偏芯軸受を90度時計回り方向に回動させ、右側の偏芯軸受をさらに90度反時計回り方向に回動させたときの加工部の状態を示す要部概略図である。
図5図4の状態の左側の偏芯軸受を90度時計回り方向に回動させ、右側の偏芯軸受をさらに90度反時計回り方向に回動させたときの加工部の状態を示す要部概略図である。
図6図5の状態の左側の偏芯軸受を90度時計回り方向に回動させ、右側の偏芯軸受をさらに90度反時計回り方向に回動させたときの加工部の状態を示す要部概略図である。
図7】従来のワイヤソーを示す要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るワイヤソー1を図1図6を参照して説明する。
なお、本発明のワイヤソー1の実施形態を説明するのにあたり、便宜上、図1に示す加工用ローラ41,42を前側から見た状態の方向側を正面として説明する。
【0013】
<ワーク>
図1に示すように、ワークWは、半導体材料、磁性材料、セラミック等の硬脆材料から成る。ワークWは、ワイヤソー1に配置された加工装置4のワイヤ43に押し当てることで切削して切断される。
【0014】
≪ワイヤソー≫
ワイヤソー1は、加工装置4の加工用ローラ41,42間における加工部40のワイヤ43によってワークWを切断する切断装置である。ワイヤソー1は、クランプ装置2と、昇降装置3と、加工装置4と、支持フレーム7と、を備えて構成されている。
【0015】
≪クランプ装置≫
クランプ装置2は、加工装置4でワークWを加工する際に、ワークWをクランプするための保持機構である。クランプ装置2は、加工室に搬入されたワークWを、ワーク治具21を介在して間接的にクランプしてから、そのワークWを加工装置4の加工部40のワイヤ43に押し当てて加工する。
【0016】
図1に示すように、ワークWの上面には、ガラスプレート、金属プレート等の板状部材を介在してワーク治具21が着脱可能に装着されている。ワーク治具21の上面には、クランプ装置2のワーク保持部材(図示省略)に着脱可能に連結される複数の被クランプ部(図示省略)が設けられている。
【0017】
≪昇降装置≫
図1に示すように、昇降装置3は、下端部にワーク治具21等を介在してワークWを保持するクランプ装置2を備えて、ワークWを昇降させるための装置である。昇降装置3は、ワークWを加工装置4のワイヤ43に下降させて押し付けて加工したり、ワークWを上昇させたりする。昇降装置3は、例えば、クランプ装置2を上下させるボールねじ等を備えて成る移動機構(図示省略)と、その移動機構を作動させるサーボモータ等から成る移動用駆動モータ(図示省略)等と、を備えて構成されている。
【0018】
≪加工装置≫
図1に示すように、加工装置4は、クランプ装置2にクランプされたワークWを加工する切削機構である。図1または図2に示すように、加工装置4は、加工用ローラ41,42と、ワイヤ43と、スピンドル44,45と、加工用ローラ41,42とスピンドル44,45を一体回転可能に回転駆動させる駆動モータ(図示省略)と、偏芯軸受46,47と、軸受48,48と、カラー49,49と、を備えて構成されている。加工装置4は、装置本体(図示省略)に取り付けられた支持フレーム7に設けられている。
【0019】
図1に示すように、加工装置4の加工部40の上方には、ワークWを支持するクランプ装置2が昇降装置3によって昇降可能に配置されている。加工装置4は、ワイヤソー1の運転時に、ワイヤ43が加工用ローラ41,42間で走行されて、クランプ装置2で保持されたワークWが、昇降装置3によって下降されて加工部40のワイヤ43に押し付けられることで切断する。
【0020】
<加工用ローラ>
図1及び図2に示すように、加工用ローラ41,42は、ワイヤ43が巻き掛けられた左右一対の円柱形状のローラである。加工用ローラ41,42の両端部は、スピンドル44,45によってスピンドル44,45と一体回転可能に挟着支持されている。加工用ローラ41,42は、ワークWの幅L10に対応した適宜な間隔(軸心間の距離L2,L3)で水平方向に対向配置されている。加工用ローラ41,42は、駆動モータ(図示省略)によってスピンドルと一体回転されることで、ワイヤ43を加工用ローラ41,42間で走行させるように構成されている。加工用ローラ41,42は、少なくとも加工部40の両側に一対であればよく、相互間隔をおいて平行に配置される構成であれば、3本以上でもよい。以下、加工用ローラ41,42が二つの場合を例に挙げて説明する。
【0021】
<ワイヤ>
図1に示すように、ワイヤ43は、加工用ローラ41,42が回転することで走行して、押し付けられたワークWを切削して切断するための加工用ワイヤである。ワイヤ43は、例えば、1本の線材によって構成されている。ワイヤ43は、加工用ローラ41,42によって、一定量前進及び一定量後退を繰り返して、全体として歩進的に前進し、または、一方向に連続して前進するように駆動される。
【0022】
<スピンドル>
スピンドル44,45は、加工部40の両側の加工用ローラ41,42の両端部を挟着支持する丸棒形状の軸である(図2参照)。スピンドル44,45は、偏芯軸受46,47の偏芯した箇所に形成されたスピンドル設置孔46c,47cに挿入されている。スピンドル44,45の軸心44a,45aは、偏芯軸受46,47の軸心7c,7dから中心線O3-O3の方向に距離dだけズレた位置にある。このため、複数のスピンドル44,45の軸心44a,45a間の距離L2,L3は、偏芯軸受46,47の取り付け角度を変えることによって増減させることができる。
【0023】
<偏芯軸受>
図1に示すように、偏芯軸受46,47は、スピンドル44,45を回転可能に軸支する軸受である。偏芯軸受46,47は、支持フレーム7の軸受設置孔7a,7bに回転可能に挿入されて、固定具71,72によって、所定の位置に固定されている。偏芯軸受46,47の軸心7c,7dから距離dズレた位置には、スピンドル44,45が回転自在に挿入されるスピンドル設置孔46c,47cが形成されている。偏芯軸受46,47の外周面46a,47a、及び、軸受設置孔7a,7bの内壁面7e,7fのうちの一方には、固定具71,72がそれぞれ着脱可能に挿入される係合部46b,47bが複数形成されており、他方には、固定具71,72がそれぞれ着脱可能に挿入される係合部7g,7hが少なくとも一つ形成されている。偏芯軸受46,47とスピンドル44,45との間には、複数のベアリングから成る軸受48と、軸受48と軸受48との間に配置されたカラー49と、が設けられている。
【0024】
係合部46b,47bは、偏芯軸受46,47の回動を抑止する固定具71,72が挿入される凹状溝の穴から成る。以下、係合部7g,7h,46b,47b及び固定具71,72の一例として、係合部7g,7h,46b,47bがキー溝、固定具71,72がキーの場合を例に挙げて、実施形態を説明する。
【0025】
係合部46b,47bは、例えば、偏芯軸受46,47の上下左右方向の中心線O1-O1,O2-O2,O3-O3上の四か所に形成されている。つまり、係合部46b,47bは、偏芯軸受46,47の軸心7c,7dに対して90度間隔の角度で、外周面46a,47aに四つ形成されている。
【0026】
スピンドル設置孔46c,47cは、スピンドル44,45を回転可能に軸装する軸孔である。スピンドル設置孔46c,47cは、軸受設置孔7a,7b(偏芯軸受46,47)の軸心7c,7dから距離dズレた位置に形成されている。
【0027】
≪支持フレーム≫
図1及び図2に示すように、支持フレーム7は、偏芯軸受46,47が挿着される軸受設置孔7a,7bを有する一対のフレーム部材である。支持フレーム7は、ワイヤソー1の基台(図示省略)の上部に載設されたコラム(図示省略)に設けられている。
【0028】
軸受設置孔7a,7bの軸心7c,7dと、スピンドル44,45の軸心44a,45aとは、任意の距離d偏芯してズレて配置されている。距離dは、例えば、2mm~4mm程度である。
【0029】
係合部7g,7hは、固定具71,72が挿入配置される凹形状の溝穴である。係合部7g,7hは、軸受設置孔7a,7bの内壁面7e,7fに、予め設定した所定の角度の位置に配置された、一つの穴から成る。
【0030】
<固定具>
固定具71,72は、軸受設置孔7a,7bに回転自在に挿入された偏芯軸受46,47を予め設定された所定位置に固定するための部材である。固定具71,72は、四つあるうちの一つの係合部46b,47bと、この係合部46b,47bに合致させた係合部7g,7hと、から成る挿入穴に挿入される。固定具71,72及び係合部7g,7h,46b,47bは、スピンドル設置孔46c,47cの軸心44a,45aが、少なくとも偏芯軸受46,47の中心線O1-O1,O2-O2,O3-O3上の位置に配置されている。
【0031】
[ワイヤソーの作用]
次に、本発明の実施形態に係るワイヤソー1の作用を、図1図6を参照しながら説明する。
【0032】
図1に示すように、ワークWの幅L10が比較的狭い場合は、スピンドル44,45の軸心44a,45a間の距離L2をワークWの幅L10に合わせて狭くする。これにより、加工用ローラ41,42の軸心間の距離L2を狭くすることができる。
【0033】
図1に示す幅L10のワークWよりも少し大ききものを加工する場合は、例えば、図1に示す状態の左側の偏芯軸受46を、時計回り方向(矢印a方向)に90度回動させると共に、右側の偏芯軸受47を、反時計回り方向(矢印b方向)に90度回動させる。すると、図3に示すように、仮想線で示す左側のスピンドル44(加工用ローラ41)は、図3に実線で示すスピンドル44のように、下方向に距離d、左方向に距離d変位する。仮想線で示す右側のスピンドル45(加工用ローラ42)は、図3に実線で示すスピンドル45のように、下方向に距離d、右方向に距離d変位する。このため、加工用ローラ41,42の軸心間の距離L2は、距離L1と同じ長さに長くなる。
【0034】
さらに大きなワークWを加工する場合は、図3の状態の左側の偏芯軸受46を、時計回り方向(矢印a方向)にさらに90度回動させると共に、図3の状態の右側の偏芯軸受47を、反時計回り方向(矢印b方向)にさらに90度回動させる。すると、左側のスピンドル44(加工用ローラ41)は、図4に実線で示すスピンドル44のように、上方向に距離d、左方向に距離d変位する。右側のスピンドル45(加工用ローラ42)は、図4に実線で示すスピンドル45のように、上方向に距離d、右方向に距離d変位する。このため、加工用ローラ41,42の軸心間の距離L2を、偏芯軸受46,47の軸心間の距離L1よりも距離dの二倍長い距離L3にすることができる。
【0035】
この図4の状態の左側の偏芯軸受46を、時計回り方向(矢印a方向)にさらに90度回動させると共に、図4の状態の右側の偏芯軸受47を、反時計回り方向(矢印b方向)にさらに90度回動させる。すると、左側のスピンドル44(加工用ローラ41)は、図5に実線で示すスピンドル44のように、上方向に距離d、右方向に距離d変位する。右側のスピンドル45(加工用ローラ42)は、図5に実線で示すスピンドル45のように、上方向に距離d、左方向に距離d変位する。このため、加工用ローラ41,42の軸心間の距離L2は、距離L1になる。
【0036】
この図5の状態の左側の偏芯軸受46を、時計回り方向(矢印a方向)にさらに90度回動させると共に、図4の状態の右側の偏芯軸受47を、反時計回り方向(矢印b方向)にさらに90度回動させる。すると、左側のスピンドル44(加工用ローラ41)は、図6に実線で示すスピンドル44のように、下方向に距離d、右方向に距離d変位する。右側のスピンドル45(加工用ローラ42)は、図6に実線で示すスピンドル45のように、上方向に距離d、左方向に距離d変位する。このため、偏芯軸受46,47は、図1に示す元の状態に戻り、加工用ローラ41,42の軸心間の距離L2を、最も短い長さ(距離L2)に変更することができる。
【0037】
このようにスピンドル44,45は、偏芯軸受46,47を回動させると変位するように構成されている。加工用ローラ41,42は、偏芯軸受46,47を回動させると、スピンドル44,45に軸支されているので、一緒に変位して、加工用ローラ41,42の軸心間の距離L2を増減させることができるように構成されている。
【0038】
このように、本発明のワイヤソー1は、図1に示すように、複数の加工用ローラ41,42間にワイヤ43を巻回し、加工用ローラ41,42の回転に伴ってワイヤ43を走行させて、ワイヤ43によりワークWを切断するワイヤソー1において、加工用ローラ41,42を支持するスピンドル44,45と、スピンドル44,45を回転可能に軸支する偏芯軸受46,47と、偏芯軸受46,47が挿着される軸受設置孔7a,7bを有する支持フレーム7,7と、を備え、軸受設置孔7a,7bの軸心7c,7dと、スピンドル44,45の軸心44a,45aとは、偏芯している。
【0039】
かかる構成によれば、本発明のワイヤソー1は、軸受設置孔7a,7bの軸心7c,7dと、スピンドル44,45の軸心44a,45aと、が偏芯していることで、支持フレーム7を取り替えずに、加工用ローラ41,42の軸心間の距離L2を容易に変更することができる。
このため、本発明のワイヤソー1は、支持フレーム7を変更することなく、一つの支持フレーム7をそのまま使用して、加工用ローラ41,42の軸心間の距離L2を変えることができるので、異なる大きさのワークWに対応できる。その結果、本発明のワイヤソー1は、部品点数、部品管理工数、及び、支持フレーム7の交換作業工数の増加を抑制してコストダウンを図ることができる。
【0040】
また、図1に示すように、偏芯軸受46,47の外周面46a,47a、及び、軸受設置孔7a,7bの内壁面7e,7fのうちの一方には、固定具71,72がそれぞれ着脱可能に挿入される係合部46b,47bが複数形成されており、他方には、固定具71,72がそれぞれ着脱可能に挿入される係合部7g,7hが少なくとも一つ形成されている。
【0041】
かかる構成によれば、偏芯軸受46,47と支持フレーム7,7には、固定具71,72が挿入される係合部7g,7h,46b,47bが複数形成されていることで、固定具71,72を適合した位置にある係合部7g,7h,46b,47bに挿入して位置決めすることができる。
【0042】
また、図1に示すように、係合部7g,7h,46b,47bは、偏芯軸受46,47の外周面46a,47aと、軸受設置孔7a,7bの内壁面7e,7fとに、予め設定した所定の角度間隔で配置されている。
【0043】
かかる構成によれば、固定具71,72は、偏芯軸受46,47を所定角度だけ回動させることで、係合部7g,7h,46b,47bに挿入して偏芯軸受46,47を支持フレーム7の所定位置に固定することができる。
【0044】
また、図1に示すように、複数のスピンドル44,45の軸心44a,45a間の距離L2,L3は、偏芯軸受46,47の取り付け角度を変えることによって増減できる。
【0045】
かかる構成によれば、スピンドル44,45の軸心間の距離L2,L3は、偏芯軸受46,47を回動させて、偏芯軸受46,47の取り付け角度を変えることで、加工用ローラ41,42の軸心間の距離L2,L3を調整することができる。これにより、加工用ローラ41,42の軸心間の距離L2,L3を、ワークWの幅L10に合った間隔に調整することが可能となる。
【0046】
また、固定具71,72は、キーから成り、係合部7g,7h,46b,47bは、キー溝から成る。
【0047】
かかる構成によれば、固定具71,72は、キーから成り、係合部7g,7h,46b,47bは、キー溝から成ることで、固定具71,72を係合部7g,7h,46b,47bに容易に着脱して、キーを挿入するキー溝を変えることができる。
【0048】
また、偏芯軸受46,47は、スピンドル44,45を回転可能に軸装するスピンドル設置孔46c,47cを有し、固定具71,72及び係合部7g,7h,46b,47bは、スピンドル設置孔46c,47c(スピンドル44,45)の軸心44a,45aが、少なくとも偏芯軸受46,47の中心線O1-O1,O2-O2,O3-O3上の位置に配置されている。
【0049】
かかる構成によれば、スピンドル設置孔46c,47c(スピンドル44,45)の軸心44a,45aは、偏芯軸受46,47の中心線O1-O1,O2-O2,O3-O3上に配置されていることで、左右の偏芯軸受46,47を回動させることによって、最大偏芯距離dの二倍の距離だけ変位させることができる。このため、加工用ローラ41,42は、図1に示すスピンドル44の軸心44a1の位置を軸心44a3に変位できるので、加工用ローラ41,42間の距離L2を、距離L3に広げることができる。
【0050】
このように、ワイヤソー1は、偏芯軸受46,47を回動させることで、加工用ローラ41,42間の距離L2を変えることができるので、支持フレーム7をワークWの大きさに合わせて交換する必要が無い。このため、部品点数、取り替え作業の作業工数、取り替え作業の作業時間を削減してコストダウンを図ることができる。
【0051】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0052】
例えば、実施形態では、偏芯軸受46,47を支持フレーム7の軸受設置孔7a,7bに固定する手段として、支持フレーム7及び偏芯軸受46,47に形成した係合部7g,7h,46b,47bとしてのキー溝と、係合部7g,7h,46b,47bに挿入される固定具71,72としてのキーと、を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
固定具71,72は、ドローボルト、位置決めピン等の位置決め用固定具であってもよい。その場合、係合部7g,7h,46b,47bは、ドローボルトに合わせて雌ねじ状に形成したり、位置決めピンに合わせて位置決め穴を形成したりすればよい。
【0053】
このように構成しても、前記実施形態と同様な作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0054】
1 ワイヤソー
7 支持フレーム
7a,7b 軸受設置孔
7c,7d 軸受設置孔の軸心
7e,7f 軸受設置孔の内壁面
7g,7h,46b,47b 係合部(キー溝)
40 加工部
41,42 加工用ローラ
43 ワイヤ
44,45 スピンドル
44a,44a1,44a2,44a3,44a4,45a スピンドルの軸心
46,47 偏芯軸受
46a,47a 偏芯軸受の外周面
46c,47c スピンドル設置孔
71,72 固定具(キー)
L2,L3 スピンドルの軸心間の距離
O1-O1,O2-O2,O3-O3 偏芯軸受の中心線
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7