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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】防振構造物
(51)【国際特許分類】
   E02D 31/08 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
E02D31/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020052642
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152262
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大塚 友理
(72)【発明者】
【氏名】小谷 朋央貴
(72)【発明者】
【氏名】丸 隆宏
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-047208(JP,A)
【文献】特開2003-096808(JP,A)
【文献】実開昭56-000710(JP,U)
【文献】特開平11-193529(JP,A)
【文献】特公昭56-002842(JP,B2)
【文献】特開平02-200927(JP,A)
【文献】特開2014-132143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋設された第1板状部材と、
前記第1板状部材と向かい合わせに、前記地盤に埋設された第2板状部材と、
前記第1板状部材から前記第2板状部材に亘って前記地盤に設けられた空溝と、
前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に架け渡された緩衝部材と、
前記緩衝部材の上に配置され、前記空溝を覆う蓋部材と、
を有し、
前記第1板状部材及び前記第2板状部材は、前記地盤から突出する突出部を有し、
前記緩衝部材は、弾性部材、発泡緩衝材、気泡緩衝材、及び緩衝装置のいずれかであるとともに、前記突出部に跨るように被せられている、防振構造物。
【請求項2】
前記第1板状部材は、前記第2板状部材よりも深い位置まで埋設される、請求項1に記載の防振構造物。
【請求項3】
前記第1板状部材、前記第2板状部材及び前記空溝は、振動源と防振対象物とを結ぶ直線上に配置され、
前記第1板状部材は、前記振動源に近い側に配置される、請求項1又は2に記載の防振構造物。
【請求項4】
前記第2板状部材は、前記第1板状部材よりも剛性が低い、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の防振構造物。
【請求項5】
前記第1板状部材の前記空溝に露出する面とは反対側の面は、掘削現場に面している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の防振構造物。
【請求項6】
前記第1板状部材は、前記掘削現場の深さよりも深い位置まで埋設される、請求項5に記載の防振構造物。
【請求項7】
前記第1板状部材及び前記第2板状部材は、シートパイルである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の防振構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、防振構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工事現場で発生する振動や車両等の移動によって発生する振動に対する対策として、振動源と防振対象物との間の地盤に、空の溝を設けて振動の伝播を軽減する技術が知られている。しかしながら、空の溝を放置しておくと、時間とともに溝周囲の地盤が崩れるなどの不具合が生じ得る。その対策として、例えば、特許文献1には、振動源の周囲に溝を設け、その溝の中に間隔保持材を挿入した構造物が開示されている。間隔保持材は、溝の両側の壁面に接する抑え板と、両側の抑え板に介在させて配置した横断材とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-125151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の防振構造物は、間隔保持材が抑え板と横断材との一体物で構成されているため、地中の振動を抑制するには、地中深くに間隔保持材を設置しなければならず、施工性が悪いという問題がある。また、両側の抑え板の間は、複数の横断材で接続されているため、振動が横断材を介して伝播してしまうという問題もある。
【0005】
本発明の課題の一つは、振動の伝播を抑制しつつ施工性の高い防振構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態における防振構造物は、地盤に埋設された第1板状部材と、前記第1板状部材と向かい合わせに、前記地盤に埋設された第2板状部材と、前記第1板状部材から前記第2板状部材に亘って前記地盤に設けられた空溝と、を有し、前記第1板状部材は、前記第2板状部材よりも深い位置まで埋設される。
【0007】
前記第1板状部材、前記第2板状部材及び前記空溝は、振動源と防振対象物とを結ぶ直線上に配置され、前記第1板状部材は、前記振動源に近い側に配置されてもよい。
【0008】
前記第2板状部材は、前記第1板状部材よりも剛性が低いものであってもよい。
【0009】
前記第1板状部材の前記空溝に露出する面とは反対側の面は、掘削現場に面していてもよい。このとき、前記第1板状部材は、前記掘削現場の深さよりも深い位置まで埋設されていてもよい。
【0010】
前記防振構造物は、前記空溝を覆う蓋部材をさらに有していてもよい。その際、前記蓋部材と前記第1板状部材及び前記第2板状部材との間には、緩衝部材が介在していてもよい。
【0011】
前記第1板状部材及び前記第2板状部材は、シートパイルであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態の防振構造物の構成を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態の防振構造物の構成を示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態の防振構造物の構成を示す拡大図である。
図4】本発明の第1実施形態の変形例における防振構造物の構成を示す拡大図である。
図5】本発明の第1実施形態の変形例における防振構造物の構成を示す拡大図である。
図6】本発明の第2実施形態の防振構造物の構成を示す断面図である。
図7】本発明の第2実施形態の変形例における防振構造物の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図面において、既出の図面に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0014】
本明細書中において、「振動源」とは、地盤に振動を生じさせる領域を指す。振動源には、例えば、建築工事や土木工事が行われる建設現場、又は、道路、飛行場のような車両等の走行に伴う振動が発生する施設(交通機関)も含まれる。なお、振動源は、建設現場のような比較的広い領域を指す場合もあるし、杭打ち作業が行われている領域のように局所的に振動を生じる領域を指す場合もある。
【0015】
本明細書中において、「防振対象物」とは、地盤を介して伝播する振動から保護する対象となる構造物を指す。防振対象物には、例えば、建築物、又は、遺跡等が含まれる。典型例としては、病院、マンション等の多数の人の居住空間となっている建築物や、精密機器が動作する工場等が挙げられる。
【0016】
本明細書中において、「空溝」とは、地盤中に形成された空洞の溝、具体的には、振動源と防振対象物との間の地盤を物理的に離隔させる溝を意味する。したがって、溝の中に充填物が存在する場合は、「空溝」には含まれない。
【0017】
本明細書中において、「掘削現場」とは、掘削作業を伴う建設現場を指す。例えば、基礎工事における掘削作業によって地盤に形成された窪み(掘削穴)も掘削現場に含まれる。掘削作業には、建設作業及び土木作業に伴う掘削作業が含まれる。
【0018】
〔第1実施形態〕
[防振構造物の構成]
図1は、本発明の第1実施形態の防振構造物10の構成を示す平面図である。図2は、本発明の第1実施形態の防振構造物10の構成を示す断面図である。具体的には、図2は、図1に示す防振構造物10をA-A線で切った断面図に相当する。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態の防振構造物10は、地盤1の上に位置する振動源2と防振対象物3との間に配置される。本実施形態において、振動源2は、工事現場で建設機械が作業する領域であり、防振対象物3は、マンションである。振動源2では、地盤1に対して振動が発生する。図2に示すように、振動源2で発生した振動は、地盤1の表面を進行する表面波2a及び地盤1の内部(地中)を進行する実体波2bとして地盤1を伝播する。本実施形態において、特に遮断することが望ましい振動は、周波数が20Hz以下(好ましくは10Hz以下)の振動、すなわち、人が不快に感じやすい振動である。
【0020】
防振構造物10は、地盤1に埋設された第1板状部材11及び第2板状部材12、第1板状部材11と第2板状部材12との間に設けられた空溝13、並びに空溝13を覆う蓋部材14を含む。防振構造物10は、振動源2から発生する振動が防振対象物3へ伝播することを抑制するための構造物である。図1に示すように、本実施形態の防振構造物10は、振動源2に近い側の第1板状部材11が、防振対象物3に近い側の第2板状部材12よりも深い位置まで埋設された構成となっている。第2板状部材12は、土圧によって空溝13内に倒れ込むことがない位置(例えば、空溝13の深さの倍程度の位置)まで、埋設されている。
【0021】
第1板状部材11及び第2板状部材12は、地盤1よりも剛性の高い材料で構成される部材である。本実施形態において、第1板状部材11及び第2板状部材12は、シートパイル(鋼矢板)である。ただし、この例に限らず、土壁の山留に利用可能な部材であれば他の部材を用いてもよい。第1板状部材11及び第2板状部材12は、振動源2と防振対象物3との間に、互いに向かい合わせに配置される。このとき、空溝13の内部には、第1板状部材11と第2板状部材12とを連結するような部材が存在しない。すなわち、空溝13は、第1板状部材11から第2板状部材12に亘って地盤1に設けられている。
【0022】
第1板状部材11及び第2板状部材12は、ともに空溝13よりも深い位置まで埋設されている。また、第1板状部材11は、第2板状部材12よりもさらに深い位置まで埋設されている。すなわち、本実施形態では、第1板状部材11の高さ(鉛直方向の長さ)が第2板状部材12の高さよりも大きい。このように、振動源2に近い側の第1板状部材11として、第2板状部材12よりも高さのある部材を用いることにより、より深い範囲まで実体波2bの伝播を抑制することができる。
【0023】
空溝13は、第1板状部材11と第2板状部材12との間に設けられた溝である。本実施形態では、空溝13の深さは2mであるが、この例に限られるものではない。空溝13は、第1板状部材11と第2板状部材12とを向かい合わせに埋設した後、それらの間を掘削することにより形成される。そのため、図2に示すように、第1板状部材11の一部及び第2板状部材12の一部は、空溝13に対して露出する。しかし、前述のとおり、第1板状部材11及び第2板状部材12は、ともに空溝13よりも深い位置まで埋設されているため、土圧によって空溝13内に倒れ込むことはない。
【0024】
図1に示すように、防振構造物10は、細長い矩形形状(スリット形状)を有している。空溝13の長手方向の長さは、特に制限はないが、空溝13の端部における表面波2aの廻り込みを防ぐのに十分な長さであることが望ましい。空溝13の幅(長手方向に直交する方向の長さ)も、特に制限はなく、本実施形態では、略1mである。空溝13の幅は、第1板状部材11の空溝13への露出面と第2板状部材12の空溝13への露出面との間の最短距離で近似してもよい。
【0025】
本実施形態では、空溝13を構成する土壁(側壁)のうち、振動源2と防振対象物3とを結ぶ直線上に位置する土壁に第1板状部材11及び第2板状部材12を設けた例を示している。しかし、この例に限らず、空溝13の土壁すべてに板状部材を設けることも可能である。
【0026】
蓋部材14は、空溝13を覆うように、第1板状部材11及び第2板状部材12の上に設けられる。蓋部材14は、空溝13の中に人や車両等が転落しないようにする保護部材として機能する。また、蓋部材14は、防振構造物10の上に他の構造物を建設するための床材として機能させることもできる。そのため、蓋部材14としては、人や車両等が乗っても十分に耐えられる程度の剛性を有していることが望ましい。本実施形態では、蓋部材14は、鉄板である。しかし、この例に限らず、蓋部材14の材質は、タイル、コンクリート、樹脂、金属、合金、木材等であってもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【0027】
図3は、本発明の第1実施形態の防振構造物10の構成を示す拡大図である。図3(A)は、防振構造物10の平面拡大図であり、図3(B)は防振構造物10の断面拡大図である。本実施形態では、蓋部材14を介した振動の伝播を軽減するために、第1板状部材11と蓋部材14との間、及び、第2板状部材12と蓋部材14との間に、それぞれ第1緩衝部材15a及び第2緩衝部材15bを介在させている。
【0028】
図3(A)及び図3(B)に示すように、第1板状部材11及び第2板状部材12の頂部は、ほぼ地表面と同じ位置で切断されている。第1板状部材11の頂部には第1緩衝部材15aが配置され、第2板状部材12の上には第2緩衝部材15bが配置される。蓋部材14は、第1緩衝部材15aと第2緩衝部材15bとの間に跨って配置される。これにより、蓋部材14を用いて空溝13を覆うことができる。
【0029】
このように、防振構造物10は、第1板状部材11に伝わる振動が、第1緩衝部材15aによって直接的に蓋部材14に伝達されない構成となっている。また、多少の振動が蓋部材14を介して伝播したとしても、第2板状部材12と蓋部材14との間にも第2緩衝部材15bが介在しているため、蓋部材14から第2板状部材12に伝わる振動を大幅に軽減することができる。
【0030】
本実施形態では、第1緩衝部材15a及び第2緩衝部材15bとして、ゴム等の弾性部材を用いる。しかし、この例に限らず、第1緩衝部材15a及び第2緩衝部材15bとして、合成樹脂で構成される発泡緩衝材、エアークッション等の気泡緩衝材、ダンパー等の緩衝装置等を設けてもよい。なお、蓋部材14は、必須の構成ではなく、必要に応じて省略してもよい。その場合は、当然のことながら第1緩衝部材15a及び第2緩衝部材15bも不要である。その場合、空溝13に落ちないためのバリケード等を設けてもよい。
【0031】
以上のとおり、本実施形態の防振構造物10は、第1板状部材11と第2板状部材12とで空溝13を挟んだ構造を有し、振動源2に近い側の第1板状部材11が、第2板状部材12よりも深い位置まで埋設されている。また、空溝13の内部には、第1板状部材11から第2板状部材12に振動を伝達する部材が存在しない。このように、本実施形態の防振構造物10は、少なくとも2枚の板状部材(具体的には、シートパイル)を地盤1の中に埋設した後、両者の間の地盤1を掘削するだけで形成することができるため、施工性に優れている。
【0032】
また、空溝13の内部を介した振動の伝達がないため、防振性能が高い上に、相対的に深くまで埋設された第1板状部材11によって地中を伝播する実体波も大幅に抑制することができる。これにより、防振対象物3に伝播する振動レベル(JISで定義する振動レベル)を、例えば55dB以下(好ましくは50dB以下)まで低減することが可能である。したがって、本実施形態によれば、振動の伝播を抑制しつつ施工性の高い防振構造物を提供することができる。
【0033】
(変形例1)
本実施形態では、第1板状部材11及び第2板状部材12を同一の部材(具体的には、同一断面のシートパイル)とした例を示したが、この例に限らず、材料や断面の変更によって、第2板状部材12を、第1板状部材11よりも剛性の低い部材としてもよい。振動源2から遠い側の第2板状部材12は、空溝13の崩れを防ぐことができる程度の剛性があれば足りるからである。
【0034】
(変形例2)
変形例2では、第1板状部材11及び第2板状部材12と蓋部材14との間の緩衝部材の構成を、図3(A)及び図3(B)に示した構成とは異なるものとした例について説明する。
【0035】
図4は、本発明の第1実施形態の防振構造物10aの構成を示す拡大図である。図4(A)は、防振構造物10aの平面拡大図であり、図4(B)は防振構造物10aの断面拡大図である。本変形例では、蓋部材14を介した振動の伝播を軽減するために、第1板状部材11及び第2板状部材12と蓋部材14との間に緩衝部材15cを介在させている。
【0036】
本変形例では、図4(A)及び図4(B)に示すように、第1板状部材11と第2板状部材12との間に緩衝部材15cを掛け渡し、その緩衝部材15cの上に蓋部材14が配置される。このとき、第1板状部材11及び第2板状部材12の頂部を地盤1から僅かに突出させ、その突出部に跨るように緩衝部材15cを被せる。これにより、蓋部材14や緩衝部材15cに対して横方向の力が加わっても、緩衝部材15cの横方向へのずれを防止することができる。また、第1板状部材11及び第2板状部材12の頂部が地盤1から突出しているため、空溝13の内部への土砂やごみ等の侵入を防ぐことができる。
【0037】
(変形例3)
変形例3では、第1板状部材11及び第2板状部材12と蓋部材14との間の緩衝部材の構成を、図3(A)、図3(B)、図4(A)及び図4(B)に示した構成とは異なるものとした例について説明する。
【0038】
図5は、本発明の第1実施形態の防振構造物10bの構成を示す拡大図である。図5(A)は、防振構造物10bの平面拡大図であり、図5(B)は防振構造物10bの断面拡大図である。本変形例では、蓋部材14aを介した振動の伝播を軽減するために、第1板状部材11及び第2板状部材12と蓋部材14との間に緩衝部材15d及び15eを介在させている。
【0039】
本変形例では、図5(A)及び図5(B)に示すように、蓋部材14aにおける第1板状部材11の上方に位置する部分に対し、緩衝部材15dを設けておく。同様に、蓋部材14aにおける第2板状部材12の上方に位置する部分に対し、緩衝部材15eを設けておく。本実施形態では、蓋部材14aに対して、緩衝部材15d及び15eを接着している。変形例2と同様に、第1板状部材11及び第2板状部材12の頂部は地盤1から僅かに突出させてあり、その突出部に跨るように緩衝部材15d及び15eを被せる。これにより、蓋部材14aや緩衝部材15d及び15eに対して横方向の力が加わっても、緩衝部材15d及び15eの横方向へのずれを防止することができる。また、第1板状部材11及び第2板状部材12の頂部が地盤1から突出しているため、空溝13の内部への土砂やごみ等の侵入を防ぐことができる。
【0040】
〔第2実施形態〕
第2実施形態では、第1実施形態とは異なる構成を有する防振構造物20について説明する。具体的には、本実施形態の防振構造物20は、第1板状部材21が、掘削現場の山留部材を兼ねている。本実施形態において、第1実施形態と同じ要素については同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0041】
図6は、本発明の第2実施形態の防振構造物20の構成を示す断面図である。本実施形態の防振構造物20は、第1板状部材21、第2板状部材22、空溝23及び蓋部材24を含む。本実施形態では、防振構造物20に隣接して掘削現場4が存在し、第1板状部材21が、掘削現場4の山留部材を兼ねている。つまり、第1板状部材21は、掘削現場4と空溝23との間の仕切り部材としても機能する。
【0042】
掘削現場4は、第1板状部材21と山留部材25とで山留を構成している。図示は省略するが、図面の奥行き方向における掘削現場4の土壁にも板状部材が設けられている。つまり、掘削現場4を囲む山留部材のうち、少なくとも1つが防振構造物20の第1板状部材21と共通である。この場合、掘削現場4を囲む山留部材として、すべて同一サイズ(同一の高さ)のシートパイルを用いることができ、そのうちの1枚を防振構造物20の第1板状部材21に転用することができる。
【0043】
図6に示すように、本実施形態において、掘削現場4の深さは、空溝23の深さよりも深い。そのため、第1板状部材21の空溝23に露出する第1面21aとは反対側の第2面21bは、第1面21aよりも大きな面積が掘削現場4に面している。この場合においても、第1板状部材21は、掘削現場4の山留部材として機能できる深さまで埋設されている。言い換えると、第1板状部材21は、掘削現場4の深さよりも深い位置まで埋設されているため、掘削現場4の山留部材として機能する。
【0044】
以上のように、本実施形態の防振構造物20の第1板状部材21は、隣接する掘削現場4の山留部材を兼ねることができる。そのため、第1板状部材21として、掘削現場4に用いるシートパイルを転用することができ、施工コストを低減することが可能である。
【0045】
(変形例1)
図7は、本発明の第2実施形態の変形例1における防振構造物30の構成を示す断面図である。本変形例の防振構造物30は、第1板状部材31、第2板状部材32、空溝33及び蓋部材34を含む。本変形例では、図6に示す例とは異なり、空溝33の深さの方が、掘削現場4aの深さよりも深い。この場合においても、第1板状部材31は、掘削現場4aの山留部材を兼ねることができる。
【0046】
図7に示す例では、空溝33の方が掘削現場4aよりも深いため、例えば、第1板状部材31、第2板状部材32及び山留部材35を同一サイズ(同一の高さ)とすることができる。そのため、掘削現場4aと防振構造物30とに使用するシートパイルを共通化することができ、施工コストをさらに低減することが可能である。
【0047】
本発明の実施形態及びその変形例は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。上述した実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0048】
また、上述した実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0049】
1…地盤、2…振動源、2a…表面波、2b…実体波、3…防振対象物、4、4a…掘削現場、10、10a、20、30…防振構造物、11、21、31…第1板状部材、12、22、32…第2板状部材、13、23、33…空溝、14、24、34…蓋部材、15a…第1緩衝部材、15b…第2緩衝部材、15c、16…緩衝部材、21a…第1面、21b…第2面、25、35…山留部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7