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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】コールドプレート
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20240418BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020062226
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163815
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 将宗
(72)【発明者】
【氏名】益子 耕一
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019115(JP,A)
【文献】特開2014-079975(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090106(WO,A1)
【文献】特開2017-022260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィンが形成された金属プレートと、
前記複数のフィンを囲う樹脂カバーと、を備え、
前記金属プレートと前記樹脂カバーの周縁部を接合する第1接合部と、
前記周縁部よりも内側、且つ、前記第1接合部と同一平面上で、前記金属プレートと前記樹脂カバーとを接合する第2接合部と、が形成され
前記第2接合部において、前記樹脂カバーは、前記複数のフィンの周辺領域と接合されている、コールドプレート。
【請求項2】
前記第2接合部において、前記樹脂カバーは、前記複数のフィンの少なくとも一つと接合されている、請求項1に記載のコールドプレート。
【請求項3】
前記金属プレートには、前記複数のフィンの少なくとも一つの間に、支柱が形成されており、
前記第2接合部において、前記樹脂カバーは、前記支柱と接合されている、請求項1または2に記載のコールドプレート。
【請求項4】
前記複数のフィンは、前記金属プレートにおいて、前記第1接合部及び前記第2接合部の接合面以下に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のコールドプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドプレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、複数のフィンが形成された金属プレートと、複数のフィンを囲う金属カバーと、を備え、金属プレートと金属カバーの周縁部が、樹脂による射出成形によって接合されているコールドプレートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-22260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電子部品高集積化による発熱密度の増大により、コールドプレートの需要拡大が予測され、より低価格なコールドプレートが求められている。このため、従来の金属カバーを、樹脂カバーに変更することが検討されている。しかしながら、樹脂カバーは、金属カバーよりも剛性が低く、コールドプレートの内部を流れる冷媒の圧力が高い場合、膨らむように変形して破損してしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、冷媒の圧力による樹脂カバーの変形を抑制できるコールドプレートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るコールドプレートは、複数のフィンが形成された金属プレートと、前記複数のフィンを囲う樹脂カバーと、を備え、前記金属プレートと前記樹脂カバーの周縁部を接合する第1接合部と、前記周縁部よりも内側、且つ、前記第1接合部と同一平面上で、前記金属プレートと前記樹脂カバーとを接合する第2接合部と、が形成されている。
この構成によれば、金属プレートと樹脂カバーが、樹脂カバーの周縁部(第1接合部)だけでなく、当該周縁部よりも内側(第2接合部)においても接合される。第1接合部及び第2接合部は、同一平面上に形成されているため、樹脂カバーの周縁部とその内側で同程度の接合強度が確保できる。したがって、樹脂カバーが冷媒の圧力で膨らもうとする変形を、樹脂カバーの周縁部より内側の第2接合部において抑制することができる。
【0007】
上記コールドプレートでは、前記第2接合部において、前記樹脂カバーは、前記複数のフィンの少なくとも一つと接合されていてもよい。
【0008】
上記コールドプレートでは、前記第2接合部において、前記樹脂カバーは、前記複数のフィンの周辺領域と接合されていてもよい。
【0009】
上記コールドプレートでは、前記金属プレートには、前記複数のフィンの少なくとも一つの間に、支柱が形成されており、前記第2接合部において、前記樹脂カバーは、前記支柱と接合されていてもよい。
【0010】
上記コールドプレートでは、前記複数のフィンは、前記金属プレートにおいて、前記第1接合部及び前記第2接合部の接合面以下に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の一態様によれば、冷媒の圧力による樹脂カバーの変形を抑制できるコールドプレートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係るコールドプレートの断面構成図である。
図2図1に示す矢視A-A図である。
図3図1に示す領域Bの拡大図である。
図4】一実施形態に係るコールドプレートの断面斜視図である。
図5】一実施形態に変形例に係るコールドプレートの断面構成図である。
図6】一実施形態に変形例に係る第2接合部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係るコールドプレート1の断面構成図である。図2は、図1に示す矢視A-A図である。図3は、図1に示す領域Bの拡大図である。図4は、一実施形態に係るコールドプレート1の断面斜視図である。
これらの図に示すように、コールドプレート1は、複数のフィン11が形成された金属プレート10と、複数のフィン11を囲う樹脂カバー20と、を備えている。
【0015】
金属プレート10は、例えば、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金などの熱伝導性の良好な金属によって形成されている。金属プレート10の一方の板面10aには、スリット10bが形成されている。スリット10bは、図2及び図4に示すように、板面10aに対して一定の深さで、並列に複数形成されている。
【0016】
隣り合うスリット10bの間には、フィン11が形成されている。フィン11は、金属プレート10において、板面10a以下に形成されている。つまり、スリット10b(凹部)の形成により、金属プレート10に残った凸部がフィン11となっている。このような掘込式のフィン11は、金属プレート10の板面10aの略中央部において、平面視矩形状の領域に複数形成されている。
【0017】
樹脂カバー20は、例えば、ポリフェニレンスルフィルド(PPS)、ナイロン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ABS樹脂などの軽量且つ低価な樹脂によって形成されている。樹脂カバー20は、有頂筒状(碗状とも言う)のカバー本体21と、カバー本体21の内部空間を2つに仕切る仕切り壁22と、を有している。
【0018】
カバー本体21は、天壁部23と、天壁部23の外周部に連設された周壁部24と、を有している。天壁部23は、図4に示すように、平面視で矩形状に形成されている。また、周壁部24は、矩形の筒状(角筒状とも言う)に形成されている。周壁部24の開口端部には、外側に延出するフランジ部25(鍔部とも言う)が形成されている。
【0019】
仕切り壁22は、フィン11の長手方向の略中央部において、天壁部23から垂設されると共に、フィン11の短手方向において対向する周壁部24の一方の内壁面から他方の内壁面まで延びている(図2参照)。仕切り壁22は、複数のフィン11のそれぞれと接すると共に、複数のフィン11の形成領域の外側の周辺領域(フィン11が形成されていない板面10a)とも接している。
【0020】
仕切り壁22は、図1及び図4に示すように、天壁部23あるいは周壁部24に対して倍以上の厚みを有している。つまり、樹脂カバー20において、仕切り壁22が最も剛性の高い部分となっている。仕切り壁22は、カバー本体21の内部空間を2つに仕切り、入口側ヘッダー部4と、出口側ヘッダー部5と、を形成している。
【0021】
入口側ヘッダー部4は、複数のフィン11の一端側が連通する内部空間である。出口側ヘッダー部5は、複数のフィン11の他端側が連通する内部空間である。図1に示すように、天壁部23には、入口側ヘッダー部4に連通する位置に貫通孔23aが形成されている。貫通孔23aには、冷媒入口管2が接続されている。
【0022】
また、天壁部23には、出口側ヘッダー部5に連通する位置に貫通孔23bが形成されている。貫通孔23bには、冷媒出口管3が接続されている。冷媒入口管2から流入した冷媒は、入口側ヘッダー部4、複数のフィン11の隙間(スリット10b)、出口側ヘッダー部5を経て、冷媒出口管3から流出する。
【0023】
樹脂カバー20は、周壁部24の開口端部が、金属プレート10の板面10aを向くようにして、金属プレート10に接合されている。金属プレート10と樹脂カバー20との接合の原理を簡単に説明すると、図3に示すように、樹脂カバー20と接する金属プレート10の板面10aには、酸化処理などの表面処理によって、複数の微細孔12が形成されている。
【0024】
このような表面処理された板面10aに、樹脂カバー20を押し付け、熱圧着する。このようにすると、樹脂カバー20の一部が軟化あるいは溶融し、微細孔12に入り込んで、その後、固化する。その結果、微細孔12に入り込んだ樹脂がアンカーとなり、金属プレート10と樹脂カバー20とが接合される。
【0025】
図1に示すように、コールドプレート1には、金属プレート10と樹脂カバー20の周縁部を接合する第1接合部30と、周縁部よりも内側、且つ、第1接合部30と同一平面上で、金属プレート10と樹脂カバー20とを接合する第2接合部40と、が形成されている。
【0026】
第1接合部30においては、樹脂カバー20の周壁部24及びフランジ部25を含む周縁部が、金属プレート10と接合されている。つまり、樹脂カバー20の周囲(周壁部24及びフランジ部25の全周)が、金属プレート10と接合されている。なお、フランジ部25を設けることなく、周壁部24の開口端部のみが、金属プレート10の板面10aと接合されていても構わない。
【0027】
第2接合部40においては、樹脂カバー20の仕切り壁22が、金属プレート10と接合されている。つまり、樹脂カバー20の周縁部の内側の略中央部が、金属プレート10と接合されている。具体的に、第2接合部40においては、図2に示すように、樹脂カバー20の仕切り壁22が、金属プレート10に形成された複数のフィン11の頂面、及び、複数のフィン11の周辺領域(板面10a)と接合されている。
【0028】
第1接合部30と第2接合部40の接合面は、共に金属プレート10の板面10aであり、同一平面である。このため、金属プレート10に樹脂カバー20を熱圧着させる際、樹脂カバー20の周縁部とその内側の仕切り壁22に均一に荷重をかけることができる。これにより、第1接合部30と第2接合部40において、面一できれいな接合面を得ることができる。
【0029】
一方で、従来技術のインジェクション方式(射出成形)だと樹脂カバー20の周縁部だけ接合されて、その内側は接合できない。また、フィン11が、金属プレート10から飛び出ている従来技術の構成において、例えば、金属プレート10と樹脂カバー20の周縁部と、フィン11の頂面と樹脂カバー20の天壁部23とを熱圧着させることは可能であるが、接合面が同一平面ではないので、フィン11と天壁部23との接合強度が、樹脂カバー20の周縁部の接合強度に比べて弱く、十分な強度が得られないことがある。すなわち、接合面に段差があると、樹脂カバー20の周縁部とその内側に均一に荷重をかけられず、接合強度に差が出る場合がある。
【0030】
上記構成のコールドプレート1においては、フィン11は、冷媒との熱交換面積を大きくするために多いことが好ましく、したがって、スリット10bの幅は狭くなり、流動抵抗が大きくなる。その流動抵抗に打ち勝って十分な速度で冷媒が流れるように、冷媒はある程度高い圧力で樹脂カバー20の内部に供給される。そのため、樹脂カバー20の内部の圧力が高くなる。
【0031】
本実施形態では、樹脂カバー20の周縁部(第1接合部30)だけでなく、樹脂カバー20の周縁部よりも内側(第2接合部40)においても接合されている。また、第1接合部30及び第2接合部40は、同一平面上に形成されているため、樹脂カバー20の周縁部とその内側で同程度の接合強度が確保できる。したがって、樹脂カバー20が冷媒の圧力で膨らもうとする変形(例えば、天壁部23がドーム状に膨らもうとする変形)を、樹脂カバー20の周縁部より内側の第2接合部40(樹脂カバー20の略中央部)において抑制することができる。
【0032】
このように、上述の本実施形態によれば、複数のフィン11が形成された金属プレート10と、複数のフィン11を囲う樹脂カバー20と、を備え、金属プレート10と樹脂カバー20の周縁部を接合する第1接合部30と、周縁部よりも内側、且つ、第1接合部30と同一平面上で、金属プレート10と樹脂カバー20とを接合する第2接合部40と、が形成されている、という構成を採用することによって、冷媒の圧力による樹脂カバー20の変形を抑制できるコールドプレート1が得られる。
【0033】
また、本実施形態では、第2接合部40において、樹脂カバー20は、複数のフィン11の少なくとも一つと接合されている。この構成によれば、樹脂カバー20のうち最も膨らみやすい天壁部23の中央部における変形を抑制することができる。また、樹脂カバー20がフィン11と接合されることで、樹脂カバー20とフィン11との隙間を無くし、スリット10bの間を通らない冷媒を減らして冷却性能を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態では、第2接合部40において、樹脂カバー20は、複数のフィン11の周辺領域と接合されている。この構成によれば、複数のフィン11の形成領域の外側で金属プレート10と樹脂カバー20との接合面積を広く確保できるため、樹脂カバー20の周縁部より内側の接合強度を高めることができる。
【0035】
また、本実施形態では、複数のフィン11は、金属プレート10において、第1接合部30及び第2接合部40の接合面以下に形成されている。このように、フィン11を堀込式にして接合部を全て面一にすることで段差による隙間をなくすことができ、金属プレート10と樹脂カバー20の面と面をきれいに接合し易くなる。
【0036】
また、本実施形態の変形例として、図5及び図6に示すような構成を採用することができる。
【0037】
図5は、一実施形態の変形例に係るコールドプレート1の断面構成図である。なお、図5は、図2と同様に、図1に示す矢視A-A図に対応する部分を示している。
図5に示すように、金属プレート10には、複数のフィン11の少なくとも一つの間に、支柱13が形成されている。
【0038】
図5に示す支柱13は、複数のフィン11の形成領域の中央部に形成されている。支柱13は、フィン11の倍以上の厚みを有する。支柱13は、フィン11と平行に延びている。支柱13は、複数のフィン11の一つを厚くしたものとも言える。なお、支柱13は、円柱や角柱の柱状であってもよい。また、支柱13が、フィン11の長手方向に点在していても構わない。
【0039】
図5に示すように、第2接合部40において、樹脂カバー20は、支柱13と接合されている。この構成によれば、複数のフィン11の形成領域の内側で、金属プレート10と樹脂カバー20との接合面積を広く確保できるため、樹脂カバー20のうち最も膨らみやすい天壁部23の中央部における変形を効果的に抑制することができる。なお、支柱13があれば、フィン11と樹脂カバー20とが必ずしも接合している必要はない。
【0040】
図6は、一実施形態の変形例に係る第2接合部40の拡大断面図である。
上述したように、樹脂カバー20が支柱13と接合される場合、図6に示すように、樹脂カバー20は、フィン11と接合されていなくても構わない。フィン11は、支柱13の頂面未満(接合面未満)に形成されて、樹脂カバー20と接していない。なお、フィン11と樹脂カバー20が接していないと、フィン11とフィン11の間(スリット10b)を冷媒が通り難くなるが、フィン11と樹脂カバー20との隙間が十分に狭ければ問題はない。この構成によれば、樹脂カバー20からの荷重を支柱13が受けるため、フィン11に荷重がかからず、フィン11の変形を抑制することができる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【符号の説明】
【0042】
1…コールドプレート、10…金属プレート、11…フィン、20…樹脂カバー、30…第1接合部、40…第2接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6