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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3232 20160101AFI20240418BHJP
   B65D 53/02 20060101ALI20240418BHJP
   F16J 15/3268 20160101ALI20240418BHJP
【FI】
F16J15/3232 301
B65D53/02
F16J15/3268
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020075645
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021173298
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】土屋 幸司
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 利和
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-092362(JP,U)
【文献】実開平03-069759(JP,U)
【文献】実開昭59-098163(JP,U)
【文献】実開昭59-066064(JP,U)
【文献】実開平03-067764(JP,U)
【文献】特開2020-028552(JP,A)
【文献】実開昭56-039658(JP,U)
【文献】特公昭48-025696(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3232
B65D 53/02
F16J 15/3268
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するとともに環状の平面形状を有する第一突条部と、
弾性を有するとともに環状の平面形状を有し、前記第一突条部に隣り合う第二突条部と、
前記第一突条部および前記第二突条部の間に形成される、環状の平面形状を有する凹部と、
前記第一突条部および前記第二突条部よりも低い摩擦係数を有する滑材で構成されるとともに前記凹部に支持されて、平面視したときに環状に配置される滑性凸部と、を有し、
前記滑性凸部は、前記滑材で構成された複数の球のそれぞれが前記凹部に支持されることにより構成されている、シール部材。
【請求項2】
前記滑材は、フッ素樹脂である、請求項に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
シール部材は、様々な機械要素において使用され、気密性または液密性などの所期の機能を発現する。このようなシール部材の一例として、ロータリ式バルブに使用されるシール部材が知られている。例えば特許文献1に開示されているシール部材を、図8に示す。図8に示すシール部材177は、ケーシング102によって形成されているロータ収容空間に収容されているロータ101に向かって延出するように設けられている。より詳しくは、シール部材177は、ロータ収容空間に向けて開口する開口部125aに配置されている。シール部材177は、開口部125aの内周面に当接する筒部と、当該筒部の一端から突出し、ロータ101に当接する先端当接部180とを有している。先端当接部180は、先端側に向かうにつれて内側に狭まり、かつ、折り返されるように湾曲している内側湾曲部181を備えている。このように、シール部材177は、回動するロータ101に先端当接部180で当接し、摺動するロータ101と開口部125aとの隙間を密閉している。シール部材177の筒部は、例えば、ロータ101への冷却水の経路となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-245737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなシール部材のロータに押し付けられる部分には、ロータに対するシール性とともに摺動性が必要である。シール性と摺動性は相反する性質であるとも言える。例えば、先述の特許文献1は、比較的摩擦係数の低い樹脂部材からシール部材177を形成することが記載されている。比較的摩擦係数の低い樹脂部材でシール部材177を形成すると、摺動性は十分だがシール性が不十分となる虞がある。
【0005】
そこで、本発明の一態様は、シール性と摺動性とを兼ね備えるシール部材を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシール部材は、弾性を有するとともに環状の平面形状を有する第一突条部と、弾性を有するとともに環状の平面形状を有し、前記第一突条部に隣り合う第二突条部と、前記第一突条部および前記第二突条部の間に形成される、環状の平面形状を有する凹部と、前記第一突条部および前記第二突条部よりも低い摩擦係数を有する滑材で構成されるとともに前記凹部に支持されて、平面視したときに環状に配置される滑性凸部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、シール性と摺動性とを兼ね備えるシール部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係るシール部材の部分断面図である。
図2】本発明の実施形態1に係るシール部材の外観を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態1に係るシール部材がシールしている様を示す部分断面図である。
図4】本発明の実施形態1に係るシール部材の平面図である。
図5】本発明の実施形態2に係るシール部材の部分断面図である。
図6】本発明の実施形態2に係るシール部材がシールしている様を示す部分断面図である。
図7】本発明の実施形態3に係るシール部材の平面図である。
図8】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係るシール部材の一実施形態について、図1から図4を用いて説明する。
【0010】
(シール部材の構成)
まず、本実施形態1のシール部材の外観から説明する。図2は、本実施形態1のシール部材1Aの外観を示す斜視図である。シール部材1Aは、弾性を有する材料から構成することができ、シール対象物に対してその一部分を当接させることにより当接領域においてシール性を実現する。
【0011】
図2に示すように、シール部材1Aは、円筒形状の全体構造を有する本体部10を備える。本体部10の上面10aは、平面視において環状であり、図2中に示す本体部10の中心軸Cの位置にて最も深く窪んだ球面の一部に相当する、曲面を有している。なお、本体部10の形状はこれに限定されるものではなく、シール対象物の表面に概ね沿うように、当該表面の三次元形状に合ったものであればよい。そのため、環状の上面10aは、平面を有していてもよい。
【0012】
シール部材1Aは、上面10aに、弾性を有するとともに環状の平面形状を有する第一突条部11と、弾性を有するとともに環状の平面形状を有し、第一突条部11に隣り合う第二突条部12と、第一突条部11および第二突条部12の間に形成される、平面視したときに環状に配置される滑性凸部30を有する。
【0013】
第一突条部11は、中心軸Cを中心とした環状の平面形状を有する。第二突条部12も、中心軸Cを中心とした環状の平面形状を有し、第一突条部11よりも外側に形成されている。滑性凸部30も、中心軸Cを中心とした環状の平面形状を有し、第一突条部11よりも外側、且つ第二突条部12よりも内側に配されている。
【0014】
シール部材1Aについて更に図1を用いて詳述する。図1は、図2に示す切断線A-A´においてシール部材1Aを切断した状態を示す矢視断面図である。
【0015】
シール部材1Aは、図1に示すように、本体部10の上面10aに、上方に突出した第一突条部11および第二突条部12を有する。ここで、上方とは、上面10aを平面とみなして当該平面をXY平面と仮定した場合のXY平面に対して垂直方向をZ軸としたXYZ座標からなる三次元座標系において、Z軸の正方向のことを示す。Z軸は、中心軸Cと概ね平行である。第一突条部11および第二突条部12は、上方に概ね真っ直ぐ突出していてもよく、突出端に向かって、第一突条部11と第二突条部12とが互いに遠ざかる方向に広がってV字型を形成するようになっていてもよい。第一突条部11および第二突条部12の上面10aからの突出長H(図1)は、特に制限はないが、本実施形態1では、第一突条部11および第二突条部12の突出端のほうが、滑性凸部30の上端よりも上方に突出している。要するに、第一突条部11および第二突条部12の突出端の高さと滑性凸部30の上端の高さとの間には、差△dがある。
【0016】
第一突条部11と第二突条部12との間には、環状の平面形状を有する凹部13が設けられている。凹部13は、上面10aよりも下方に窪んだ形状を有しており、滑性凸部30を嵌合させている。これにより、滑性凸部30を、本体部10に確実に支持させることができる。ただし、この態様に限定されるものではなく、凹部13の底の位置は、上面10aと同一面内にあってもよい。
【0017】
本体部10は、第一突条部11および第二突条部12を含めて、弾性を有し、且つ滑性凸部30よりも高い摩擦係数を有する材料から構成することができる。例えば、本体部10の材料は、通常のゴム材料であってよい。本体部10の弾性は、シール部材1Aの用途に応じて適宜に決めることが可能である。
【0018】
また、「摩擦係数」は、JIS K7125として定義される。第一突条部11および第二突条部12を含めて本体部10の摩擦係数は、シール部材1Aの用途に応じた十分な相対的な滑り性を本体部10が発現する範囲において適宜に決めることができ、例えば、摺動面のシールの用途では0.04~0.5の範囲から適宜に決めてもよい。
【0019】
これらの条件を満たす本体部10の具体例としては、例えば一般的なゴム材料、各種の樹脂材料等がある。これらの材料は使用用途に応じて適宜選択することができる。
【0020】
滑性凸部30は、凹部13に支持された、本体部10とは別の部材である。具体的には、滑性凸部30は、凹部13に嵌合することによって、環状の第一突条部11と第二突条部12との間に配される。なお、凹部13に滑性凸部30を嵌合させるだけでなく、適当な接着剤を用いて凹部13の表面に対して滑性凸部30を固着させてもよい。
【0021】
滑性凸部30は、図1に示すように、断面形状が円形である。その断面の直径は、滑性凸部30が嵌合していない状態の凹部13の幅、すなわち第一突条部11および第二突条部12との離間距離よりも、僅かに大きい。そのため、滑性凸部30は、凹部13を僅かに押し広げるようにして、凹部13と嵌合している。ここで、先述した第一突条部11と第二突条部12とがV字型をなす態様として、凹部13に滑性凸部30が嵌合する前は、第一突条部11と第二突条部12とは平行に上方に突出していてもよい。そして、嵌合によって凹部13が押し広げられることによって第一突条部11と第二突条部12とがV字型を形成してもよい。
【0022】
図3は、上面10a側からみたシール部材1Aの平面図である。図3に示すように、滑性凸部30は、凹部13に重ねられる環状の部材である。ただし、環状の部材である必要はなく、後述する実施形態3に示すように、別の態様であってもよい。また、本実施形態1では、滑性凸部30の断面形状が図1に示すように円形であるが、この形状に限定されるものではない。例えば、断面形状が、台形を含む四角形および六角形といった矩形であってもよく、断面が楕円形であってもよい。また、滑性凸部30は中空であってもよい。
【0023】
滑性凸部30は、第一突条部11および第二突条部12よりも低い摩擦係数を有する滑材で構成される。滑性凸部30の摩擦係数は、本体部10の摩擦係数と同様に、滑性凸部30が、シール部材1Aの用途に応じた十分な滑り性を作用面および本体部10の少なくとも一方に対して発現する範囲において適宜に決めることができる。滑性凸部30の摩擦係数は、例えば摺動面のシールの用途であれば、0.04~0.5の範囲から適宜に決めてもよい。
【0024】
なお、ここでいう滑材とは、シール対象物の表面に対して滑性を有する材料として定義することができるが、これに加えて、凹部13の表面に対して滑性を有する材料であってもよい。滑性凸部30の具体例としては、例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂を採用できるほか、ポリアセタール、ポリアミド、ポリオレフィン系、シリコーン系、エラストマー系の自己潤滑材料を添加した樹脂等を採用することができる。中でも、十分な潤滑性と十分な強度とを有するという理由から、フッ素樹脂を採用することが好ましい。
【0025】
なお、滑性凸部30は、先に例示した材料によって構成される単一部材であるが、本発明の一形態としてはこれに限定されるものではなく、例えば環状の基材の表面に先に例示した滑性を有する材料が膜状に貼着した態様であってもよい。
【0026】
本実施形態1のシール部材1Aは、上面10aにシール対象物を当接させてシールするが、シールしている状態においてシール対象物を摺動させる。例えば図1に示すように曲面である上面10aを有するシール部材1Aは、中心軸Cに対して直交する方向に管軸を有する管やバルブであるシール対象物に対して好適なシール部材となる。そして、シール部材1Aは、先述の第一突条部11および第二突条部12、並びに滑性凸部30を具備することによって、このようなシール対象物へのシール性とともにシール対象物の摺動性を実現する。これについて、以下に、図4を用いて説明する。
【0027】
(シール対象物への当接)
図4は、シール対象物の表面400に、シール部材1Aを当接させた状態を示す部分断面図である。シール部材1Aを、本体部10の上面10aを表面400に対向させて、表面400に向けて押し付けると、まず第一突条部11および第二突条部12の突出端が表面400に当接する。これに伴い、弾性を有する第一突条部11および第二突条部12は、突出長Hが(当接前よりも)短くなるように変形する。このとき、第一突条部11および第二突条部12の各々の突出端が、互いから遠ざかる方向にも変形する。これを、図4に、変形後の第一突条部11´および第二突条部12´として示している。図4に示す断面視においては、変形後の第一突条部11´および第二突条部12´と、表面400との間には、2箇所のシール領域Sが形成される。
【0028】
また、図4に示すように第一突条部11´および第二突条部12´が変形することにより、当接前は第一突条部11および第二突条部12に埋もれていた滑性凸部30が露出するかたちとなって、表面400に当接する。先述のように滑性凸部30は摩擦係数が低い滑材によって構成されているため、この当接領域においては、シール対象物が表面400の面方向に摺動しやすい。以下、この当接領域を、摺動が促進される領域として摺動促進領域Rと称する。なお、滑性凸部30が、凹部13内において摺動してもよい。
【0029】
要するに、本実施形態1のシール部材1Aによれば、シール対象物の表面400に対して、2箇所のシール領域Sの間に摺動促進領域Rが形成されていることから、比較的簡素な構成でありながらシール性と摺動性とを兼ね備えることができる。
【0030】
(シール部材の製造方法)
本実施形態1のシール部材1Aは、本体部10を射出成型等により製造した後、別工程によって作製した環状の滑性凸部30を、本体部10の凹部13に嵌合させることによって製造することができる。
【0031】
(調整について)
本実施形態1のシール部材1Aは、図1に示すように、第一突条部11および第二突条部12が、滑性凸部30よりも突出している。そのため、シール対象物の表面への当接の度合いを調整することによって、シール性の強度を調整することができる。
【0032】
具体的には、シール対象物の表面に対してシール部材1Aを比較的軽く当接させた場合には、滑性凸部30は当該表面に当接せず、第一突条部11および第二突条部12のみが当接することによって、シール性が比較的緩いシール部材1Aをすることができる。
【0033】
反対に、シール対象物の表面に対してシール部材1Aを比較的強く当接させた場合には、摩擦抵抗が大きい第一突条部11および第二突条部12が変形して表面に対する抵抗性が大きくなる。その一方で、滑性凸部30も表面に当接することによって、摺動促進領域が形成され、摺動が促進される。
【0034】
当接の具合の調整は、例えば、図1に示した本体部10の外側面にネジ山を設けることによって実現可能である。すなわち、シール部材1Aを雄ネジとして構成し、シール対象物の表面に対向する位置に設けた雌ネジを含む構成要素に螺合させる態様とし、螺合の度合いを調整する。これにより、所期のシール性および摺動性を実現させることができる。
【0035】
〔変形例〕
第一突条部11および第二突条部12は、本体部10とは別の部材から構成してもよい。別の部材から構成する場合には、第一突条部11および第二突条部12を、先に例示した材料から構成すればよく、その場合は、本体部10を構成する材料に制限がなくなる。
【0036】
また、第一突条部11および第二突条部12の全体が滑性凸部30よりも高い摩擦係数を有する材料から構成されている必要もない。例えば、第一突条部11および第二突条部12の表面における少なくとも突出端およびその近傍が、滑性凸部30よりも高い摩擦係数を有する材料から構成されていればよい。すなわち、弾性を有する第一突条部11および第二突条部12と、その表面とが別材料から構成され、当該表面の突出端およびその近傍のみが、滑性凸部30よりも高い摩擦係数を有する材料によって構成されていてもよい。
【0037】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図5および図6を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0038】
図5は、本実施形態2のシール部材1Bの部分断面図である。図5に示す状態は、実施形態1の図1の状態に相当する。
【0039】
上述の実施形態1のシール部材1Aは、図1に示したように、第一突条部11および第二突条部12が、滑性凸部30よりも突出している。これに対して、本実施形態2のシール部材1Bは、シール対象物に当接していない状態において、滑性凸部30が、第一突条部21および第二突条部22よりも突出している。ここで、第一突条部21および第二突条部12は、実施形態1の第一突条部11および第二突条部12と形状および滑性凸部30との相対的な位置関係が異なっているのみである。図5には、滑性凸部30と、第一突条部21および第二突条部22との突出量の差を、△d´で示す。
【0040】
シール部材1Bは、滑性凸部30の上面、および第一突条部21および第二突条部22の上面は、本体部10の上面10aから突出した位置に設けられている。そのため、シール対象物の表面に当接させる際、本体部10の上面10aではなく、滑性凸部30の上面、および第一突条部21および第二突条部22の上面が、当該表面に当接する。これについて、図6に基づいて説明する。
【0041】
図6は、シール対象物の表面400に、シール部材1Bを当接させた状態を示す部分断面図である。図6に示す状態は、上述の実施形態1の図4の状態に相当する。シール部材1Bを、本体部10の上面10aを表面400に対向させて、表面400に向けて押し付けると、まず滑性凸部30が表面400に当接する。更に押し付けていくと、滑性凸部30は変形して表面400との当接領域(摺動促進領域R)を広げつつも凹部13の底に向かって押し込められ、これに伴って第一突条部21および第二突条部22の上面が表面400に当接する。弾性を有する第一突条部21および第二突条部22は、当接に伴い、突出長H´が(当接前よりも)短くなるように変形する(図6には変形後の第一突条部21´および第二突条部22´を図示している)。
【0042】
これにより、実施形態1のシール部材1Aと同様に、シール対象物の表面400に対して、2箇所のシール領域Sと、その間の摺動促進領域Rとが形成される。
【0043】
すなわち、シール部材1Bによれば、比較的簡素な構成でありながらシール性と摺動性とを兼ね備えることができる。
【0044】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図7を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0045】
図7は、本実施形態3のシール部材1Cの平面図である。図7に示す状態は、実施形態1の図3に示す状態に相当する。実施形態1のシール部材1Aでは環状の部材からなる滑性凸部30が凹部13に支持されている態様であるのに対して、本実施形態3では、滑材で構成された複数の球33のそれぞれが凹部13に支持されて滑性凸部30´を構成している。
【0046】
各球33は、本体部10の製造工程とは別工程によって作製され、平面視において環状に形成された凹部13に嵌合させて一連の環状にすることによって、滑性凸部30´を作製する。図7では、球33同士は当接しているが、これに限らず、互いが離間していてもよい。また、球33は中空であってもよい。
【0047】
各球33の径は、実施形態1の滑性凸部30の断面円形の径と等しく構成すればよい。また、球33は、実施形態1の滑性凸部30と同一の材料から構成すればよい。また、実施形態1と同様、球33が単一部材からなる必要はなく、滑性を有する材料によって芯部を内包した態様のものであってもよい。
【0048】
本実施形態3のシール部材1Cが、シール対象物の表面に当接すると、図4に示した状態と同一となり、シール対象物の表面400に対して、2箇所のシール領域Sと、その間の摺動促進領域Rとが形成される。この状態において、シール対象物が摺動に伴って、少なくとも一つの球33が凹部13内において回転してもよい。これにより、シール対象物の摺動性が更に助長される。
【0049】
さらに、球33が嵌合している凹部13は、弾性を有する本体部10で構成されている。したがって、シール対象物からの押圧が強く、また変動する場合では、球33は、高い圧力で凹部13に対して押し付けられる。しかしながら、シール対象物からの変動する強い圧力は、球33を受ける凹部13によって吸収され、また球33自身が有する弾性によっても吸収される。よって、本実施形態では、シール対象物からの押圧が強く、また変動する場合においても、十分なシール性と摺動性とを発現しつつ、さらに高い耐久性を呈することが期待される。
【0050】
以上のように、本実施形態3のシール部材1Cにおいても比較的簡素な構成でありながらシール性と摺動性とを兼ね備えることができる。
【0051】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るシール部材は、弾性を有するとともに環状の平面形状を有する第一突条部と、弾性を有するとともに環状の平面形状を有し、前記第一突条部に隣り合う第二突条部と、前記第一突条部および前記第二突条部の間に形成される、環状の平面形状を有する凹部と、前記第一突条部および前記第二突条部よりも低い摩擦係数を有する滑材で構成されるとともに前記凹部に支持されて、平面視したときに環状に配置される滑性凸部と、を有する。前記態様1の構成によれば、シール対象物へのシール性を実現し、且つシール対象物の摺動性を損なうことのないシール部材を提供することができる。
【0052】
本発明の態様2に係るシール部材は、前記態様1の構成において、前記滑性凸部は、平面視したときに前記凹部に重ねられる環状の部材であってもよい。これにより、シール対象物の一部の領域を囲むようにしてシール性を発揮することができると同時に当該領域を囲む環状に摺動性を発揮することができる。
【0053】
本発明の態様3に係るシール部材は、前記態様1の構成において、前記滑性凸部は、前記滑材で構成された複数の球のそれぞれが前記凹部に支持されることにより構成されていてもよい。これにより、シール対象物の一部の領域を囲むようにしてシール性を発揮することができると同時に当該領域を囲む環状に摺動性を発揮することができる。
【0054】
本発明の態様4に係るシール部材は、前記態様1~3の構成において、前記滑材は、フッ素樹脂であってもよい。これにより、耐久性に優れた滑性凸部を具備するシール部材を提供することができる。
【符号の説明】
【0055】
1A、1B、1C シール部材
10 本体部
10a 上面
11、21 第一突条部
12、22 第二突条部
13 凹部
30、30´ 滑性凸部
33 球
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8