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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 25/02 20060101AFI20240418BHJP
   B43K 23/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B43K25/02 100
B43K23/00 100Q
B43K23/00 100Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020081878
(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公開番号】P2021176678
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅也
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-175987(JP,U)
【文献】実開昭60-141281(JP,U)
【文献】特開平11-321184(JP,A)
【文献】実開平05-051688(JP,U)
【文献】特開2005-074826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 25/02
B43K 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具の端部に弾性のある線材製のクリップが装着された筆記具において,
クリップは,筆記具の軸線方向に回転可能であって,前記端部の所定面と前記クリップの固定時の支持部とが,仮想される同一面上に位置する第1の位置に固定可能であり,
前記端部の所定面と第1の位置となったクリップの支持部とによって筆記具が載置面上に自立可能となっていると共に、クリップ装着用の取り付け孔が軸垂直方向に離隔して2箇所形成されており、前記クリップの支持部から同方向に曲げられて伸びる腕部の先端で互いに折り重なるように対向する向きに折り曲げ形成された2つの端部が、各々異なる取り付け孔にそれぞれ差し込まれてクリップが回動可能に装着されたことを特徴とする筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,回転可能なクリップを備えた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,筆記具では,机等に載せる際には後端を下方に向けて自立させる際には,軸方向に対して垂直な面のある筆記具の後端面を利用せざるを得なかった。従来の構造では,後端面が狭いので自立時にバランスが取りにくく,自立が容易ではなかった。容易に自立を可能にする構造が要請されていた。
【0003】
筆記具には,軸本体に対してワイヤークリップを回転可能にして,長さを増加させ得るボールペンが開示されている(特許文献1,特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1および特許文献2の技術では,ワイヤークリップを回動させる構造だが自立構造になっていないものであった。
【0005】
また,クリップが回転可能な拡大鏡付きの筆記具が開示されている(特許文献3参照)。このクリップは,回転角度に制限があり,自立構造とするのは困難である。
【0006】
また,コンパス機能があるペンキャップが開示されている(特許文献4参照)。ヒンジ付きのクリップを回転させてキャップを自立可能と示唆する図示があるが,クリップの回転角度に制限があり,筆記具本体を自立可能かどうか不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭59-71765号公報
【文献】実開昭61-70082号公報
【文献】特開2005-74826号公報
【文献】実開平7-31388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は,斯かる実情に鑑み,クリップを回転させることによって容易に自立できる筆記具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は,筆記具の端部に弾性のある線材製のクリップが装着された筆記具において,クリップは,筆記具の軸線方向に回転可能であって,前記端部の所定面と前記クリップの固定時の支持部とが,仮想される同一面上に位置する第1の位置に固定可能であり,前記端部の所定面と第1の位置となったクリップの支持部とによって筆記具が載置面上に自立可能となっていることを特徴とする筆記具である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の筆記具によれば,クリップを回転させることによって,筆記具の端部の所定面とクリップの固定時の支持部とが仮想される同一面になる第1の位置になって,前記端部の所定面と第1の位置となったクリップの支持部とによって筆記具が載置面上に自立可能となっているので,筆記具を不使用時等に自立させて任意の場所に筆記具を載置できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る筆記具であって,クリップがポケット等の物を挟み付け可能な通常位置となった説明図であって,(a)がクリップ側から見た正面図,(b)が側面図,(c)が(a)のC-C線に沿う縦断面図である。
図2図1の筆記具において,クリップが端部の所定面とクリップの固定時の支持部とが同一面になる第1の位置として横置きした状態の筆記具の斜視図である。
図3図1の筆記具において,クリップを第1の位置として倒立させた状態の筆記具の説明図であって,(a)が側面からの斜視図,(b)がやや前方からの斜視図である。
図4図1の筆記具において,クリップを通常位置にした状態の斜視図である。
図5図1の筆記具において,クリップが通常位置から第1の位置の間の第2の位置で固定されたクリップによって筆記具が吊下げ可能になっている状態の斜視図である。
図6図1の筆記具において,クリップがキャップ本体に組まれたキャップであってクリップが第1の位置となった状態のキャップの説明図であり,(a)が全体側面図,(b)が前方から斜視図,(c)が前方からの視図,(d)が(b)とは別方向の斜視図,(e)がクリップの向きと逆側からの視図,(f)が(a)と逆側から見た側面図,(g)がクリップの方向からの視図である。
図7図1の筆記具において,図6のキャップであってクリップが通常位置となった状態の説明図であり,(a)が前方からの斜視図,(b)が前方からの視図,(c)がクリップ側からの視図,(d)が側方からの視図,(e)が(c)のE-E線に沿う断面図,(f)が後方からの斜視図,(g)が後方からの視図である。
図8図1の筆記具において,図6のキャップからクリップを除いたキャップ本体の部品説明図であり,(a)が前方からの斜視図,(b)が前方からの視図,(c)が一方側からの視図,(d)が側方からの視図,(e)が(c)のE-E線に沿う断面図,(f)が後方からの斜視図,(g)が後方からの視図である。
図9図1の筆記具において,クリップの部品図であり,(a)が一方からの斜視図,(b)が他方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1図5は実施形態に係る筆記具の全体説明図である。図6図7はキャップの説明図である。図8がキャップ本体の部品説明図,図9はクリップの部品説明図である。
【0014】
図1図4に示すように,実施形態の筆記具は,着脱可能なキャップ16を筆記具本体18に設けたものであり,キャップ16の端部10(実施形態では先端部)に弾性のある線材製のクリップ12が装着された筆記具である。
【0015】
図1に示すように,筆記具は,筆記具本体18が,液収容部18a内にインクを直に又は中綿に含侵させて収容されている。筆記具本体18は全体に後端の閉鎖された筒状に構成されており,先端部18bは液収容部18aよりも細径になっている,先端部18bには,ペン芯24を保持する先軸22が嵌め込みによって固定されている。なお,キャップ16のキャップ本体16aの中央部か後部に向けて開口しており,内部には,ペン芯24を覆う内筒と先軸22の外周に嵌めて固定するための外筒が形成されている。
【0016】
ペン芯24は繊維束,インク誘導体その他の公知の材質等によって種々に構成できる。
【0017】
クリップ12は,筆記具の軸線方向に回転可能(図1図4に回動軌跡を一点鎖線号FRで示す)であって,端部10の所定面10aとクリップ12の固定時の支持部14とが,仮想される同一面BP(図3に一転鎖線で示す)上に位置する第1の位置に固定可能である。
【0018】
図3に示すように,クリップ12を第1の位置に固定して,端部10の所定面10aと第1の位置となったクリップ12の支持部14とを下方に向けることによって,筆記具が机の上面等の載置面上に自立可能となっている。
【0019】
筆記具は,筆記具本体18に着脱可能なキャップ16を有しており,クリップ12はキャップ16に設けられ,キャップ16が筆記具本体18に装着され,かつ,クリップ12が第1の位置(実施形態では,図2図3の状態の位置)に固定された状態では,端部10の所定面10aと前記支持部14との距離が,筆記具本体18の軸径を上回る距離を確保できる構成となっている。
【0020】
また,クリップ12の幅とキャップ16の外径が略一致することが好適である。このようにすれば,自立機能の安定性とクリップ機能を両立させることができる。
【0021】
クリップ12は,支持部14がキャップ16の一側面20aに隣接して物を挟み付け可能な通常位置(図1図4のクリップ12の状態)から他側面20bに向かうように回動可能とされ(図1にて回動軌跡を符号FRで示す),前記クリップ12が,他側面20bに向けて回動されて前記第1の位置になった際に筆記具の他側面20bがクリップ側に傾斜した状態に固定可能としたものである。
【0022】
図6は,キャップ16においてクリップ12が第1の位置になったものを示し,図7はクリップ12が通常位置になったものを示す。図8は,キャップ本体16aの部品図,図9はクリップ12の部品図を示している。
【0023】
図8に示すように,キャップ16のクリップを外した状態の,キャップ本体16aは,先端に端部10が突出している。すなわち,キャップ本体16aの先端側の端部10は,左右に凹所26,26が凹んで形成された壁状に形成されている。端部10の先端面に所定面10aが形成されている。端部10の左右の凹所26,26によって,先方に尖ったV字山形状の突起28が形成されている。突起28の山形の一面28aにクリップ12が近接した状態が通常位置(図1図4図7参照)であり,クリップ12とキャップ本体16aの側面との間にポケット等の物を挟んでその物に筆記具を固定できる。キャップ本体16aの一側面20aには,挟み付けた物が取れないようにするために,突起16bがクリップ12に対応する位置に形成されている。
【0024】
また,端部10の突起28の山形の他面28bは,図2図3図6に示すように,クリップ12が第1の位置になったときに接し又は隣接する面となる。この他面28bは,クリップ12の支持部14又はその他部分に応力が加わった際に,クリップ12を支持してクリップ12の位置を第1の位置に保持する機能を奏することができる。
【0025】
クリップ12を第1の位置にして図3に示すように,端部10の所定面10aとクリップ12の支持部14とを下方に向けて机や支持台の上面等の載置面上に載置することができる。この際に,所定面10aと支持部14とが仮想される同一面BPが載置面と一致又はほぼ一致する。
【0026】
図8はキャップ本体16a,図9はクリップの説明図である。
【0027】
図8に示すように,キャップ本体16aの先端側の端部10には,クリップ12装着用の取り付け孔30a,30bがキャップ本体16aの軸垂直方向に離隔して2箇所形成されている。
【0028】
クリップ12は,図9に示すように,1本の金属製等の弾性のある線条体を端部12a,12bが折り重なるように概略矩形形状に折り曲げ形成したものである。
【0029】
クリップ12の辺状の支持部14から同方向にほぼ90°に曲げられて腕部12c,12cが延び,腕部12c,12cの先端部でさらに対向する向きにほぼ90°曲げられて,互いに重なるようになった端部12a,12bが形成される。端部12a,12b同士が上下方向(図1の筆記具のクリップ12の回転軌跡面に相当)に重なり,腕部12c,12cは,側面視で緩やかな概略クの字形状を呈して折り曲げられている。
【0030】
キャップ本体16aにクリップ12の取り付けは,端部10の取り付け孔30a,30bにクリップ12の端部12a,12bを左右からそれぞれ差し込んで組み付ける。図7に示すように,離隔した取り付け孔30a,30bに,端部12a,12bを差し込んでクリップ12をキャップ本体16aに取り付けるため,クリップ12が捩じられて弾性力が生じる。この弾性力によって,クリップ12は,通常位置においてキャップ本体16aの一側面に向かおうとする力が働き,第2に位置において保持しようとする力が働き,第1の位置においてキャップ本体16aの他側面に向かおうとする力が働く。
【0031】
したがって,クリップ12は各位置を安定的に保持できることから,クリップを第1の位置とした場合において,図2に示すように,筆記具を横向きにして筆記具本体18の後端部とクリップ12の支持部14にして机の上等の載置面上に載せても,又,筆記具を倒立させて図3に示すように載置面上に載せても,クリップ12は第1の位置を強固に保持するため,筆記具の不使用時に安定的に置くことができる。
【0032】
クリップ12は,キャップ16に対して回動可能であり,図1図4に示すクリップ12が一側面20aに隣接する通常位置から,図5に示すように,他側面20bに向かう途中位置の第2の位置(図5参照)で固定可能とされたものである。さらにクリップ12を回動させると曲げると第1の位置(図6参照)で固定可能になる。
【0033】
図5に示す第2の位置で固定されたクリップ12によって筆記具が壁等の任意のフックに吊下げ可能になっている。
【0034】
実施形態の筆記具によれば,クリップ12を回転させることによって,筆記具の端部10の所定面10aとクリップ12の固定時の支持部14とが仮想される同一面BPになる第1の位置になって,端部10の所定面10aと第1の位置となったクリップ12の支持部14とによって筆記具が載置面上に自立可能となっているので,筆記具を不使用時に自立させて任意の場所に筆記具を載置できる。
【0035】
したがって,筆記具は,クリップを回転させることによって場所を取らずに容易に自立できるという優れた効果を奏し得る
【0036】
なお,実施形態の変形例として,クリップをキャップではなく,筆記具本体18の後端部(ペン芯の反対端)に端部10及びクリップ12を設けて,後端部を載置面上に置く構造とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は,キャップ又は筆記具本体にクリップを設けた筆記具に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 端部
10a 所定面
12 クリップ
12a,12b クリップの端部
12c,12c クリップの腕部
14 支持部
16 キャップ
16a キャップ本体
16b 突起
18 筆記具本体
18a 液収容部
18b 先端部
20a 一側面
20b 他側面
22 先軸
28 突起
28a 一面
28b 他面
30a,30b 取り付け孔
BP 仮想面
FR 回動軌跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9