(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20240418BHJP
A47J 27/14 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
A47J37/12 331
A47J27/14 E
(21)【出願番号】P 2020098268
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】592193535
【氏名又は名称】タニコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122563
【氏名又は名称】越柴 絵里
(72)【発明者】
【氏名】小出 宏之
(72)【発明者】
【氏名】水野 竜太
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-155666(JP,A)
【文献】特開2013-100956(JP,A)
【文献】特開2009-109141(JP,A)
【文献】特開2018-110704(JP,A)
【文献】特開平08-110960(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050043(WO,A1)
【文献】実開平01-072836(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
A47J 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を加熱するための液体を貯留する液体槽と、
前記液体槽を加熱する電磁誘導コイルと、
を具備する加熱調理器であって、
前記電磁誘導コイルは、内側が空洞であるボビン型のコイル保持体に電線が巻き回され、
前記液体槽
は上部槽及び当該上部槽の底部が下部槽の壁面につながる二段形状であり、導電性材料からなる
前記下部槽の壁面が前記コイル保持体の前記空洞に嵌合され、
前記液体槽を前記加熱調理器から取り外すことなく、前記コイル保持体が前記液体槽から着脱可能であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記
下部槽の壁面が垂直壁面である、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記液体槽の開口部側から見た際に、前記液体槽の中心と
前記上部槽の壁面の間の中間位置に前記電磁誘導コイルが存在するよう前記コイル保持体
が前記液体槽の下方位置に配置されている、請求項1又は2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記コイル保持体の前記空洞の水平断面積は、前記液体槽の
上部槽の開口面積の1/2~1/4であり、且つ前記空洞の水平断面形状が前記液体槽の
上部槽の開口形状と相似形である、請求項1~3の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記コイル保持体は、異なる径を組み合わせた切り欠き孔における係合部材のスライド操作により前記液体槽から着脱される、請求項1~4の何れか1項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンビニエンスストアやファーストフード店等で、冷凍食品や麺類などの食材を加熱するために使用する業務用の加熱調理器(例えば、フライヤーや茹で麺器など)の改良に関し、特に加熱源として電磁誘導コイルを使用する電磁誘導式加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導コイルを使用する従来のフライヤー等の加熱調理器は、一連のコイル線(電線)からなるコイルが加熱源として液体槽(油槽等)の槽外壁の少なくとも一部を覆うよう配設される(例えば、下記引用文献1、引用文献2参照)。一連のコイル線が複数回周回して油槽と一体化するよう取り付けられる構造である。所望の発熱効果を生じさせるために、1本の長い電線を整然と隙間無く且つ凹凸がないようにコイルを取り付けてフライヤーが完成する。コイル取り付け作業に手間がかかることから、コイルを液体槽(油槽等)から切り離すという概念はなかった。
【0003】
また、揚げ物用の加熱調理器であるフライヤーは、油槽に注がれた食用油を加熱して衣を付けた揚げ物の調理をするが、揚げカスが発生してその一部は油槽底部に沈澱する。沈殿した揚げカスは、発熱体の伝熱性を低下させてしまうため、油表面のみならず底に沈んだ揚げカス等も定期的にすくい取る必要がある。
【0004】
電磁誘導式フライヤーはコイルを油槽底部あたりに設けているため、油槽底部に沈殿する揚げカスが発熱体からの高熱により直ぐさま油槽底に焦げ付いてしまう。炭化した揚げカスは、揚げ上がった食材に付着して外観の見栄えを低下させたり、油槽内の油の品質劣化を促進させてしまっていた。さらに、電磁誘導加熱方式の固有の問題として、発熱部に炭化した揚げカスが溜まると異常発熱により油槽そのものにも損傷を与えかねないという課題が生じていた。
【0005】
このような油槽底での揚げカスの焦げ付きを防止するため、例えば、下記特許文献1は、油槽の中心に向かって下方向に傾斜する傾斜側壁の外側に加熱源である電磁誘導コイルを設けて油槽の傾斜側壁部分を発熱体とし、揚げカスは加熱源が設置されていない油槽底のカス溜め部に堆積させる構造のフライヤーを開示する。揚げカスは傾斜側壁に沿って落下しやすくなり、傾斜側壁に接する加熱源が揚げカスを長時間加熱する可能性は低い。その結果、揚げカスを長時間堆積してしまう平面の油槽底を加熱する構造と比べると、焦げ付きは低減できるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5436463号公報
【文献】特開2017-109076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、油槽と電磁誘導コイルが一体化した従来のフライヤー構造では、槽製造が終了しないとコイル製作が遅れてしまう。また、油槽が障害物になってしまうためにコイルの電線の配設がし難くなることや、重量が増えるために軽い力では動かないので無理な体勢でコイルを設置することが生じてしまい、電線を巻く作業が著しく困難であった。このため、フライヤー製品の生産効率が中々上がらないという課題が生じていた。
さらに、フライヤーの修理や交換のために油槽やコイルを点検しようとした場合、コイルを巻き付けて大型化した油槽を扱うことは困難なため筐体から外し難く、コイル線の修理や交換に手間がかかるという問題もあった。
【0008】
また、油槽底で揚げカスが焦げ付かないようにするため油槽に傾斜側壁を設けたフライヤーであっても、その傾斜が緩くなる程、平面の油槽底と同様に傾斜側壁に堆積する揚げカスが多くなること、及び油槽底のカス溜め部に堆積した揚げカスは油槽内での対流現象で巻き上げられて傾斜側壁に留まってしまうこともある。したがって、油槽の傾斜側壁を加熱する形状や構造にしても、揚げカスの焦げ付きを完全に防止することができていなかった。
【0009】
そこで、本発明は上述した問題を解決するため、高い生産効率で製造できコイルの修理や交換に手間がかからず、且つ揚げカスの焦げ付きを発生させない加熱調理器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る加熱調理器は、食品を加熱するための液体を貯留する液体槽と、前記液体槽を加熱する電磁誘導コイルとを具備し、電磁誘導コイルは、内側が空洞であるボビン型のコイル保持体に電線が巻き回され、前記液体槽の導電性材料からなる壁面が前記コイル保持体の前記空洞に嵌合され、前記コイル保持体が前記液体槽から着脱可能であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る加熱調理器は、前記壁面が垂直壁面である。さらに、液体槽の開口部側から見た際に、前記液体槽の中心と壁面の間の中間位置に前記電磁誘導コイルが存在するよう前記コイル保持体を前記液体槽の下方位置に配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る加熱調理器は、前記前記コイル保持体の前記空洞の水平断面積は、前記液体槽の開口面積の1/2~1/4であり、且つ前記空洞の水平断面形状が前記液体槽の開口形状と相似形である。さらに、前記コイル保持体は、異なる径を組み合わせた切り欠き孔における係合部材のスライド操作により前記液体槽から着脱されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る加熱調理器の加熱源である電磁誘導コイルは、内側がほぼ角柱又は円柱の空洞であるボビン型のコイル保持体に一連の電線が複数回周回することにより形成される。そして、液体を収容し且つコイルの磁界により誘導加熱されて発熱体の役割となる液体槽を、ボビン型コイル保持体の空洞に挿入させることで加熱調理器が完成する構造である。ボビン型構造であるため、液体槽からコイル保持体を取り外す手間はかからず、着脱自在である。
【0014】
このため、液体槽の設計段階で、槽サイズに適合するボビン空洞の径及び幅を求めておけば、槽自体の製造とは別個に加熱源の製造を行うことが可能となり、加熱調理器の生産効率を向上させることができる。また、電磁誘導コイル線に亀裂や断線が発生してコイルの交換・修理が必要となった場合、これまでは槽と加熱源が一体化していたことからコイルの交換・修理に付随して槽も一緒に筐体から取り出していた。これに対し、本発明の着脱自在なボビン型コイル保持体を用いた加熱源の場合、加熱源のみを取り出すことが可能となり、コイルの修理や交換を容易に行うことができる。
【0015】
また、液体槽の側壁が垂直の場合、コイル保持体の高さ(すなわち、ボビン型の幅)の領域面は、嵌合した液体槽の垂直側壁の少なくとも一部に相当する。
このため、コイルに流される交流電流によって液体槽の垂直側壁が誘導加熱されて発熱し、その熱が液体槽内の液体に伝搬する。液体槽内の揚げカスが発熱する垂直側壁に長時間滞留することはないので、揚げカスに対して直接的な加熱がされることはない。したがって、本発明に係る加熱調理器は、液体槽で揚げカスが焦げ付くことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態である加熱調理器の概略を示した全体構成図である。
【
図2】
図1に示す加熱調理器の食品搭載かご(バスケット)をリフトアップした状態を示す図である。
【
図3】ボビン型コイル保持枠及び枠体にコイル線を巻いた加熱源の一例を示す図である。
【
図4】加熱槽とボビン型コイル保持枠を嵌合させた際の部分断面図である。
【
図5】
図1に示す加熱調理器から、ボビン型コイル保持枠が取り外し可能であることを示す図である。
【
図6】加熱源と油槽のサイズ関係を示した図である。
【
図7】
図3とは異なる他のボビン型コイル保持枠の実施形態を示す図である。
【
図8】
図5に示す取り外しを可能にするコイル保持体の別の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、加熱調理器としてフライヤーを例に挙げるが、必ずしもフライヤーに限定するものではなく、茹で麺器などの他の加熱調理器にも適用可能である。
【0018】
図1は、フライヤー100の概略図である。液体槽である油槽1は、下部槽1a及び上部槽1bで構成された、導電性のステンレス製である。本実施形態の下部槽1a及び上部槽1bは共にほぼ四角筒型であり、上部槽1bに較べて下部槽1aの方が水平断面積は小さい。上部槽1bの底部は、側壁からつながる水平底部があり、下部槽1aの垂直側壁に連結する。下部槽1aの底から上部槽1bの所定の高さまで食用油が貯えられる。上部槽1bの形状にあわせて、加熱食材(冷凍食品など)を載置するバスケット4の大きさが適宜決定される。下部槽1aの底部には、油槽内の油を廃油として外部に排出するための排出口9がある。
図1に示す下部槽1aの底部は水平であるが、底部に堆積する上げカスを集約し易くするため、傾斜面のある底部にしてもよい。
【0019】
図2は、フライヤー100のバスケット4を所定のリフト手段10、例えば、自動昇降装置(オートリフト)で上方向に移動させた状態を示した図である。なお、バスケット4の昇降は手動により行うようにしてもよい。なお、バスケット4には、例えば、対向する一方側に1以上の爪と、他方側の取っ手で下部槽1aの外側の筐体にひっかかって積載する。
【0020】
加熱源2は、下部槽1aの垂直側壁の4面が画定する四角筒の形状に適合し且つ絶縁物で作られたコイル保持枠6に一連の電線が巻き回された電磁誘導コイルである。コイル保持枠6の一例を
図3(a)に示す。
図3(a)が示すとおり、保持枠6は内部が空洞のいわゆるボビン型形状である。
図3(b)は、保持枠6に電磁誘導コイル7を巻き付けた状態を示している。保持枠6の上下端の各辺は、巻かれたコイル線がコイル保持枠から外れず、しかも下部槽1aと着脱可能にするための孔を設けたフランジ12が設けられている。
図3(c)に示すように、コイル線7の外側には透磁性が高いフェライト(酸化鉄を主成分とするセラミックス)8を取り付けて磁力を閉じ込めている。このフェライト8により磁界が吸収されるので、フェライト8の外側はほとんど加熱されない。更に、フェライト及びコイルの周りをアルミ板などで覆って固定するようにしてもよい。
図4は、下部槽1aに接するコイル保持枠6及びフェライト8の断面図を示している。本実施形態では、コイル保持枠6と下部槽1aの間には保温目的で断熱材11を使用している。この断熱材11は、例えば、断熱繊維部材であってもよい。さらに、下部槽1aのみならず、上部槽1bの周囲にも断熱材で囲むようにしてもよい。
【0021】
なお、前記電磁誘導コイル線7は、被覆層が形成可能なようにエナメルニスをコーティングした多数本の銅線を撚り合わせ更に耐熱被覆したものであるが、ワークコイルを用いてもよい。
【0022】
コイル保持枠6の空洞に下部槽1aが嵌合することによって、
図1に示すようにコイル保持枠6が下部槽1aの垂直側壁と接する状態になるが、本願発明の特徴は、上述したようにコイル保持枠6を下部槽1aから着脱自在な構成にしている点である(
図5参照)。なお、本実施形態のコイル保持枠6の空洞は貫通孔の場合を示しているが、有底の空洞であっても良い。
【0023】
図5に示すように、上部槽1bの底面外側に電気溶接で固着した複数のねじ(例えば、溶着スタッドボルト)15を設け、コイル保持枠6のフランジ12にある孔に挿入して、ナット16で固定する。したがって、ナット16を緩めることにより、コイル保持枠6を下部槽1aから簡単に外すことができる。
【0024】
コイル保持枠6に巻き回された電磁誘導コイル線7の両端はインバータ(図示せず)に接続している。コイル線7に電流を流すと磁力線が発生し、この磁力線がステンレス製(導電性)の下部槽1aの垂直側壁部分を通る際に渦電流が生じる。渦電流は電気抵抗でジュール熱に変換され、垂直側壁部分を誘導加熱する。フライヤー100の油槽の一部が発熱体となることから、油槽内に導電性体を設置してここに磁束を透過させる必要はなく、油槽内部の清掃や揚げカス取りの作業も手間がからない。なお、電磁誘導コイル線に代わり、ワークコイルを用いた場合でも同様である。
【0025】
下部槽1aの垂直側壁部分が発熱体になるが、垂直壁面には揚げカスは滞留しないので、揚げカスが焦げ付くことがない。一方で、揚げカスが滞留しやすい下部槽1aの底部は加熱されないので、揚げカスは焦げ付きにくくなり、その結果、油の汚れを少なくすることができ、油槽に投入した食材が炭化した揚げカスで汚れることもない。また、電磁誘導による発熱部に揚げカスが溜まることにならないので、異常発熱による油槽の損傷の心配もない。
【0026】
なお、本実施形態では、油槽1がほぼ四角筒型の下部槽1a及び上部槽1bにより構成される例を挙げたが、必ずしもこれに限定するものではない。例えば、下部槽1aと上部槽1bの2段構成にせず、1つの四角筒型の油槽でもよいし、上部槽1bの底部が側壁からつながる水平底部ではなくて傾斜面を形成する底部であってもよいし、上部槽1bよりも下部槽1aの水平断面積の方が大きくてもよい。また、油槽形状が四角筒型に限定されず、例えば円筒型又は多角筒型であってもよい。さらに、上部槽1bが円筒型油槽であり、下部槽1aが四角筒型のように四角筒型と円筒型を組み合わせた油槽形状であってもよい。
【0027】
本実施形態のフライヤー100の加熱特性を説明する。
油槽の垂直壁面の外面に加熱源を設置し、垂直壁面を発熱体にした加熱方法の場合、電磁誘導の原理から垂直壁沿いの領域だけしか対流が起きず、このため油槽内の油は均一な温度にならないというのが従来の知見であった、したがって、上述した特許文献1においても傾斜側壁にヒーターを設置して、油槽内の中心付近で対流が起きやすくして温度バラツキを少なくする構成であった。
【0028】
ところで、加熱時の温度バラツキの要因は、発熱場所が垂直壁面ということの他に、コイル線の端面の状態も関係する。つまり、四角筒型や円筒型のコイル保持枠6では、一連のコイル線の巻き始めや終わり部の磁束密度が低くなるので、誘導加熱の効率が落ちてしまう。油槽という金属体自体を均一に加熱する目的(焼きばめなど)であれば、この端面の工夫が必要となる。しかしながら、本実施形態のフライヤー100では、油槽壁面からの発熱を油に伝えて油の対流を促す加熱方式であるため、発熱部自体の過熱むらは関係がなく、むしろ食材を載置するためのバスケット4内側の油温が均一温度になることがより重要である。
【0029】
本実施の形態のフライヤー100は、この温度バラツキの問題を、すなわち、食材を載置するためのバスケット4の内側の油温を均一温度にすることを、油槽の大きさ(上面からみた油槽の開口面積)と加熱源の大きさ(上面からみたコイル保持枠6の空洞の水平断面積)の関係を特定することで解決できることを実験で確認した。
【0030】
そこで、バスケット4の内側の油温ができるだけ均一温度になる油槽の開口面積とコイル保持枠の空洞の水平断面積の比率を試験で求めたところ、
上面から見て、上部槽1bの中央と上部槽1bの側壁面との間のほぼ真ん中に電磁誘導コイル線を置いて発熱するようにすることが適していることが判明した。
つまり、バスケット4の加熱ゾーンの温度バラツキをなくすためには、コイル保持枠6の空洞の水平断面積は上部槽1bの開口面積に対して1/2~1/4であり、コイル保持枠6の空洞の水平断面形状は上部槽1bの開口形状と相似形であって、油槽及び加熱源の両方の中心を揃えて設置させることが最適である結果を得ることができた。
【0031】
なお、加熱源2が必ずしも
図6(a)に示すような正方形のコイル保持枠6に巻かれたコイル線である必要はない。
図6(b)に示すように、長方形のコイル保持枠6で形成された加熱源が下部槽1aの垂直側壁に沿って配置されるようにしてもよい。この場合の下部槽1aは
図6(b)に示すように長方形状である。
【0032】
以上の説明から、本実施形態のフライヤー100は、以下の効果を有する。
本実施形態のフライヤー100の加熱源は、電磁誘導コイルが巻き付けられるボビン型のコイル保持枠6を使用し、しかもこのコイル保持枠6は油槽1と別体であり、容易に着脱自在である。このため、槽自体の製造とは別個に加熱源の製造を行うことできるので、コイル作成が容易になり、フライヤー100の生産効率が向上する。
また、電磁誘導コイルに亀裂や断線が発生してコイルの交換や修理が必要となった場合でも、加熱源のみを取り出すことが可能なので、修理や交換が容易になる。
【0033】
また、下部槽1aが垂直側壁の場合は、傾斜壁とは異なり、傾斜面に沿って微妙な力加減で電線を巻くことがなく、その結果、電線の保持具を設ける必要がない。つまり、局部的には平面に巻きつけるような作業になるので、微妙な力加減や保持具が不要であって、作業効率性が高くできるという効果を奏する。
更に、ボビン型コイル保持枠6の高さに相当する部分が、コイル保持枠6の空洞に嵌合する下部槽1aの垂直側壁と合わさることになる。したがって、コイル保持枠6に巻かれた電磁誘導コイル線7の磁界内に存在する下部槽1aの垂直側壁が誘導加熱されて発熱体となって油槽内の油を加熱するが、揚げカスが垂直側壁に長時間滞留することはないので、油槽内で揚げカスが焦げ付くことがない。
【0034】
(他の実施形態)
着脱自在を可能にするコイル保持枠6の別の実施形態について説明する。
図7は、下部槽1aが傾斜面を有する構造のときのコイル保持枠6の形状を示している。傾斜する槽壁にあわせてボビン型のコイル保持枠6が嵌合していれば、上述した実施形態と同様の着脱自在の効果は同一である。
【0035】
さらに、着脱自在をより一層効果的に行える別の実施形態としてだるま穴を用いた例を示す。
図8(a)~(c)は、コイル保持枠6の端部のフランジ12のみを抽出して示したものである。コイル保持枠6の外枠周囲のフランジ12には複数のだるま穴14が設けられている。だるま穴14は異なるねじ径を重ねて切り欠き加工されている穴形状である。上部槽1bの底部外側に固定されたフランジを有するスタッド13をだるま穴14の大径に通してから(
図8(b)参照)、小径にスライドさせると、フランジ12(すなわち、コイル保持枠6)と下部槽1aがしっかりと固定される(
図8(c)参照)。この状態からスタッド13を
図8(b)に示すだるま穴14の大径へスライドさせればフランジ12と下部槽1aが緩まり、そのままスタッド13を大径から外れるようにすれば油槽1をコイル保持枠6から切り離すことができる。このように、だるま穴14を設けたフランジ12がコイル保持枠6の上下面に備わっていることにより、ドライバーなどの工具を使用することなく、スタッド13をだるま穴内でスライド操作するだけで、コイル保持枠6と油槽1の容易な着脱を実現することが可能である。
図8では、フランジを有するスタッド13を示したが、
図4のようにボルト15をだるま穴14に通してナット16で締結してもよい。
【0036】
なお、フランジ12は、コイル保持枠6の4辺すべてに設けていなくてもよく、少なくとも1辺に存在すればよいが、下部槽1aを安定的にコイル保持枠6と結合するには少なくとも対向する2辺に存在するのが好ましい。また、
図8(a)~(c)では、各フランジ12に設けられるだるま穴の数は2つであるが、数に制限はなく適宜決定してよい。
【符号の説明】
【0037】
1 油槽(液体槽)
1a 下部槽
1b 上部槽
2 加熱源
3 油
4 バスケット
6 保持枠
7 電磁誘導コイル線
8 フェライト
9 排出口
10 リフト手段
11 断熱材
12 フランジ
13 スタッド
14 だるま穴
15 ねじ(ボルト)
16 ナット
100 フライヤー