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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】クレンジング料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20240418BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240418BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240418BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20240418BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q19/10
A61Q1/14
A61K8/34
C11D1/68
C11D3/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020117673
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015058
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(72)【発明者】
【氏名】三譯 秀樹
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070481(JP,A)
【文献】特開2006-225403(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/047743(JP,A1)
【文献】特開2016-185932(JP,A)
【文献】特開2020-002056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/68
C11D 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)~(E)成分を含有する透明クレンジング料。
(A)炭素数14~22の分岐脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのジエステル
(B)1分子あたりの、ポリグリセリン重合度と脂肪酸の結合残基数の比(ポリグリセリン重合度/脂肪酸の結合残基数)が2.5~3.5である炭素数6~10の直鎖脂肪酸とポリグリセリンのエステル
(C)油剤
(D)グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン-3、ポリグリセリン-4、ポリグリセリン-5、ポリグリセリン-6およびポリグリセリン-10から選ばれる1以上
(E)クレンジング料全量あたり水を1~4質量%(ただしクレンジング料全量あたり水を20~45質量%含有するものを除く)
【請求項2】
(B)成分が、カプリル酸トリグリセリル、ジカプリル酸ペンタグリセリル、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル、ヘキサカプリン酸エイコサグリセリル、カプリン酸トリグリセリル、ジカプリル酸ヘキサグリセリルおよびジカプリン酸ヘキサグリセリルから選ばれる1以上である請求項1に記載の透明クレンジング料。
【請求項3】
(A)成分と、(B)成分の含有量の合計が、クレンジング料全量当たり5~30質量%であり、且つ(A)と(B)の質量比((A)/(B))が4/1~1/3である請求項1または2に記載の透明クレンジング料。
【請求項4】
(C)成分をクレンジング料全量当たり20~50質量%を含有する請求項1~3のいずれかに記載の透明クレンジング料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、透明クレンジング料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料には、種々の生理活性成分や油性成分などの多様な特性を有する多くの物質が配合される。これらの多様な特性を有する成分を安定に保つための必要な成分として界面活性剤が配合される。界面活性剤は、水と油、水と空気、水と粉などの界面に集まってそれらをなじみやすくするとともに、乳化、起泡、吸着、濡れ、分散などの作用を示す。
皮膚の皮脂汚れや油性のメイクアップ化粧料を落とす目的で、界面活性剤を配合し、界面活性剤の作用でメイク汚れを落とす水性クレンジング料(ウォータータイプのクレンジング料)や、油性成分の溶解作用でメイク汚れを落とす油性クレンジング料(オイルタイプのクレンジング料)の両方が上市されている。
【0003】
近年、クレンジング料は、オイルタイプのクレンジング料(油性クレンジング料)が主流となっている。油性クレンジング料は一般的にリップカラーやファンデーション等のメイクアップ化粧料に対するクレンジング性能に優れる反面、フィルムを形成するタイプのマスカラなどを落とす性能については、水性クレンジング料よりも劣る傾向にあった。また、すすぎ流しに時間がかかり、オイルが肌に残ることによるヌルヌル感が指摘されている。
一方、水性クレンジング料はすすぎ流しに優れる反面、ウォータープルーフタイプ等の耐久性(化粧持ち効果)に優れたメイクアップ化粧料に対するクレンジング力に劣ることが指摘されている。
このような問題を解決するため、油と水を共存しながら透明液状であるクレンジング料が提案されている。これらのクレンジング料は、油を含むため、メイクに対するクレンジング性能に優れ、一方で水も含むため、洗い流し性に優れ、良好なクレンジング性能と洗い流し性能を両立することができる。水と油を配合した透明クレンジング料に関する技術は大きく4つに大別できる。すなわちa)油が多く、水が少ないタイプ、b)油が少なく、水が多いタイプ、c)油と水両方が多いタイプ、d)油と水両方が少なく、界面活性剤またはポリオールが多いタイプ、である。
【0004】
これらのタイプのクレンジング料については、多数の組成が開示されているが、次のような特徴と問題点が知られている。
a)油が多く、水が少ないタイプ(特許文献1、特許文献2参照)のクレンジング料は、水が15質量%以下で油が占める割合が高いため、性能としては油性クレンジング料に近い特徴を持ち、メイクに対するクレンジング性能が高い反面、洗い流し易さに問題があることが指摘されている。
【0005】
b)油が少なく、水が多いタイプ(特許文献3、特許文献4参照)のクレンジング料は、油剤の配合量が10質量%以下となり水が占める割合が高いため、性能としては水性クレンジングに近い特徴を持ち、洗い流し易さに優れる反面、クレンジング性能が劣ることが指摘されている。
【0006】
c)油と水の両方が多いタイプ(特許文献5、特許文献6参照)のクレンジング料は、低温から高温までの幅広い温度帯における安定性を保つため、ノニオン性界面活性剤が高配合されるか、または界面活性助剤として炭素数2~5の一価アルコール、ブチレングリコールやジプロピレングリコール等の二価アルコール、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、あるいはこれらの化合物誘導体が配合されている。しかしこれらの成分は、高配合すると肌への刺激や乾燥、使用時の眼刺激の懸念があり、さらに洗浄後の保湿実感を損なうという問題がある。
【0007】
d)油と水の両方が少なく、界面活性剤またはポリオールが多いタイプ(特許文献7、特許文献8)のクレンジング料は、主成分がノニオン界面活性剤またはポリオールである。これらの成分を配合すると、肌に対する安全性と使用時ののびが重くなることなどが問題点として指摘されている。
【0008】
また、本願発明者は、オイルタイプのクレンジング料でありながら、クレンジングに際して水が混入しても洗浄力が低下しないクレンジオイルを提案した(特許文献9)。このクレンジング料は、洗い流し時に微細な乳化粒径となって油性のぬるつき感が残りにくいという特徴を有している。そして、このクレンジング料は、A成分:炭素数14以上22以下の分岐脂肪酸とポリグリセリンとのジエステル、炭素数14以上22以下の不飽和脂肪酸とポリグリセリンとのジエステルのいずれか、または両方、B成分:炭素数6以上10以下の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであって、ポリグリセリンの重合度と脂肪酸の結合数の比(=ポリグリセリンの重合度/脂肪酸の結合数)が2.0以上4.0以下のもの、C成分:二価アルコールと分岐脂肪酸のジエステル油、グリセリンと分岐脂肪酸のトリエステル油及びジカルボン酸と分岐脂肪族アルコールのジエステル油からなる群から選ばれる1種または2種以上、D成分:親水性化合物を含有している。このクレンジング料は、クレンジング後の洗い流しで、速やかに油の残留感を低下させるが、洗いあがりのさっぱりした効果のためには、さらに油分の残留感を低下させることが必要と考えられる。また、オイルタイプのクレンジング料であるため、フィルムタイプのメイクアップ化粧料に対するクレンジング力に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第4373103号公報
【文献】特許第5410650号公報
【文献】特許第6006152号公報
【文献】特許第6274998号公報
【文献】特許第4658976号公報
【文献】特許第5468314号公報
【文献】特許第6247849号公報
【文献】特許第6294642号公報
【文献】特許第6234533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
クレンジング料の洗浄効果と水洗後の油成分を含有するクレンジング料に含まれる油の肌への残留感を低下させるためには、油と水を共存させたタイプのクレンジング料が有効である。しかし、上記の従来技術に述べたような問題に加えて、水と油の両方を含有すると、白濁や分離が生じ、化粧料としての美観や性能が損なわれることが多かった。また、仮に常温で透明であったとしても、高温や低温の状態に長期保管すると白濁や分離が生じることがあり、広い温度領域で安定な透明クレンジング料が求められていた。
また、多種多様なタイプのメイクアップ化粧料が上市される中、消費者のその選択も多岐に渡り、1つのクレンジング料では満足な化粧落としができなくなってきた。
本願発明は、このような現状に鑑みて、水と油を含有する透明で安定なクレンジング料であって、広い温度領域で透明かつ安定であり、しかも油性や水性の多種類の異なるタイプのメイクアップ化粧料(例えば、リップカラー、ウォータープルーフタイプマスカラ、フィルムタイプマスカラ)に対して洗浄力が高く、洗浄後の油成分の残留感を少なくした、水で洗い流ししやすいクレンジング料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)次の(A)~(E)成分を含有する透明クレンジング料。
(A)炭素数14~22の分岐脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのジエステル
(B)1分子あたりの、ポリグリセリン重合度と脂肪酸の結合残基数の比(ポリグリセリン重合度/脂肪酸の結合残基数)が2.5~3.5である炭素数6~10の直鎖脂肪酸とポリグリセリンのエステル
(C)油剤
(D)グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン-3、ポリグリセリン-4、ポリグリセリン-5、ポリグリセリン-6およびポリグリセリン-10から選ばれる1以上
(E)クレンジング料全量あたり水を13~47質量%
(2)(B)成分が、カプリル酸トリグリセリル、ジカプリル酸ペンタグリセリル、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル、ヘキサカプリン酸エイコサグリセリル、カプリン酸トリグリセリル、ジカプリル酸ヘキサグリセリルおよびジカプリン酸ヘキサグリセリルから選ばれる1以上である(1)に記載の透明クレンジング料。
(3)(A)成分と、(B)成分の含有量の合計が、クレンジング料全量当たり5~30質量%であり、且つ(A)と(B)の質量比((A)/(B))が4/1~1/3である(1)または(2)に記載の透明クレンジング料。
(4)(C)成分をクレンジング料全量当たり20~50質量%含有する(1)~(3)のいずれかに記載の透明クレンジング料。
【発明の効果】
【0012】
本願発明により、水と油の両方を高含有しながら、透明で安定なクレンジング料を得ることができる。本願発明のクレンジング料は、5℃~50℃の幅広い温度帯で安定であり、透明・均一である。また、本発明のクレンジング料は、油性タイプのメイクアップ化粧料(例えばリップカラー)、ウォータープルーフタイプのメイクアップ化粧料(例えばウォータープルーフタイプアイライナー)、フィルムタイプのメイクアップ化粧料(例えばフィルムタイプマスカラ)といった異なるタイプのメイクアップ化粧料のいずれに対しても、強いクレンジング力を有している。この優れたクレンジング力は、消費者の使用場面(水の混入のある、なし)を選ばず、どのような使用場面であっても安定なクレンジング力を実現するので、設計品質として従来のクレンジング料よりも格段に優れている。
本発明のクレンジング料は、油分を肌に残さずに水ですっきりと洗い落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例22、比較例35、比較例37のクレンジング料に水を添加したときの洗浄力変化(洗浄対象;リップカラー)を測定したグラフである。
図2】実施例14、実施例22、比較例35~37のクレンジング料を用いたときのウォータープルーフタイプアイライナーの洗浄試験結果を示すグラフである。
図3】実施例14、実施例22、比較例35~37のクレンジング料を用いたときのフィルムタイプマスカラの洗浄試験結果を示すグラフである。
図4】実施例14、実施例22、比較例35、36のクレンジング料を0.1質量%の濃度で水に分散させたときの乳化粒子の体積平均粒子径の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明の透明なクレンジング料を調製するために用いる配合成分について以下に説明する。
なお、本願発明でいう、「透明」とは、直径30mmの透明なガラス容器にクレンジング料を充填した、このクレンジング料の層を横から見通して10ポイントの活字を肉眼で判読できる状態をいう。
【0015】
(A)成分:炭素数14~22の分岐脂肪酸又は不飽和脂肪酸とポリグリセリンとのジエステル
本願発明のクレンジング料には、(A)成分として炭素数14~22の分岐脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸とポリグリセリンとのジエステルを用いる。
(A)成分である炭素数14~22の分岐脂肪酸とポリグリセリンとのジエステル、炭素数14~22の不飽和脂肪酸とポリグリセリンとのジエステルとしては、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-10等が挙げられる。
(A)成分の炭素数14~22の分岐脂肪酸とポリグリセリンとのジエステル、炭素数14~22の不飽和脂肪酸とポリグリセリンとのジエステルのいずれか、または両方の配合量は、クレンジング料全量当たり1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく、5~15質量%が特に好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリンは、平均重合度が5~15が好ましい。
【0016】
(B)成分:1分子あたりの、ポリグリセリン重合度と脂肪酸の結合残基数の比が2.5~3.5である炭素数6~10の直鎖脂肪酸とポリグリセリンのエステル
本願発明のクレンジング料には、1分子あたりの、ポリグリセリン重合度/脂肪酸の結合残基数の比が2.5~3.5である、炭素数6~10の直鎖脂肪酸とポリグリセリンとのエステルを(B)成分として配合する。
(B)成分である、1分子あたりの、ポリグリセリン重合度と脂肪酸の結合残基数の比(ポリグリセリン重合度/脂肪酸の結合残基数)が2.5~3.5である、炭素数6~10の直鎖脂肪酸とポリグリセリンとのエステルとしては、カプリル酸トリグリセリル(ポリグリセリン重合度と脂肪酸の結合残基数の比が3.0)、ジカプリル酸ペンタグリセリル(同2.5)、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル(同3.3)、ヘキサカプリン酸エイコサグリセリル(同3.3)、カプリン酸トリグリセリル(同3.0)、ジカプリル酸ヘキサグリセリル(同3.0)、ジカプリン酸ヘキサグリセリル(同3.0)が好ましく、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル又はジカプリン酸ヘキサグリセリルがより好ましい。洗い流し性能を特に重要視する場合は、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリルが最も好ましい。
さらにまた(B)成分の配合量は、クレンジング料全量当たり0.5~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、3~10質量%が特に好ましい。
【0017】
本願発明のクレンジング料においては、 (A)成分と(B)成分の含有量の合計は、クレンジング料全量当たり5~30質量%が好ましく、8~20質量%がより好ましく、10~20質量%がさらに好ましい。また(A)成分と(B)成分の含有比率は、(A)と(B)の比((A)/(B))が4/1~1/3となるように配合すると好ましい。(A)と(B)の比((A)/(B))が4/1を超えるか、或いは1/3を下回ると、透明性と広い温度領域での安定性を保つのが難しくなる恐れが高まる。
【0018】
(C)成分:油剤
本願発明のクレンジング料にあっては、(C)成分として油剤を含有する。
本願発明において配合する(C)成分の油剤としては、以下のようなものが例示できる。
天然動植物油脂類及び半合成油脂、炭化水素油、エステル油、グリセライド油、シリコーン油、脂溶性ビタミン、高級脂肪酸、動植物や合成の精油成分等が挙げられる。天然動植物油脂類及び半合成油脂としては、アボカド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油(オリーブ果実油)、小麦胚芽油、ゴマ油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、月見草油、トウモロコシ油、菜種油、馬脂、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、硬化ヤシ油、落花生油、メドゥフォーム油、ラノリン等が挙げられる。炭化水素油としては、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、ワセリン等が挙げられる。エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸テトラデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸エステル、テトラロジン酸ペンタエリスリット、(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、ジカプリリルエーテル、ジイソノナン酸BG、コハク酸ジエチルヘキシル等が挙げられる。グリセライド油としては、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリテトラデカン酸グリセリル、ジパラメトキシケイ皮酸モノイソオクチル酸グリセリル等が挙げられる。シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロヘキサシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン等が挙げられる。脂溶性ビタミンとしてはトコフェロール等、精油としてはオレンジ果皮油、ローズマリー葉油等が挙げられる。
これらの例示した中でも、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、ジカプリリルエーテル、ジイソノナン酸BG、コハク酸ジエチルヘキシル、ミネラルオイル、アボカド油、メドゥフォーム油、オリーブ果実油、トコフェロール、オレンジ果皮油、ローズマリー葉油が好ましく、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、ジカプリリルエーテル、ジイソノナン酸BG、コハク酸ジエチルヘキシル、ミネラルオイルが特に好ましい。(C)成分の油剤は、単独で配合してもよいが、2以上を組み合わせて含有させることができる。本願発明のクレンジング料は、(C)成分をクレンジング料全量当たり、好ましくは20~50質量%、より好ましくは25~50質量%含有する。
【0019】
(D)成分:グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン-3、ポリグリセリン-4、ポリグリセリン-5、ポリグリセリン-6およびポリグリセリン-10 本願発明のクレンジング料には、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン-3、ポリグリセリン-4、ポリグリセリン-5、ポリグリセリン-6およびポリグリセリン-10から選ばれる1以上を配合する。これらの成分は、クレンジング料に含有される油剤の溶剤として作用して、クレンジング料の透明性と安定性に貢献する。
本願発明のクレンジング料は、(D)成分をクレンジング料全量当たり5~40質量%、好ましくは7~35質量%、さらに好ましくは7~30質量%含有する。この範囲を外れると、透明で安定なクレンジング料が得られなくなる恐れが高まる。
【0020】
(E)成分:水
本願発明のクレンジング料には、洗浄効果と洗い流しの効果を得るために(E)成分として水を13~47質量%含有する。水の含有量が13質量%未満の場合はフィルムタイプのメイクアップ化粧料(例えばフィルムタイプマスカラ)が落としにくくなる恐れがある。水の含有量が47質量%を超えると、ウォータープルーフタイプのメイクアップ化粧料(例えばウォータープルーフタイプアイライナー)等の耐久性(化粧持ち効果)に優れたメイクアップ化粧料に対するクレンジング力が低下する恐れが高まる。本発明においては、(E)成分を13~47質量%の範囲にすることで、本発明のクレンジング料がタイプの異なるメイクアップ化粧料(例えばリップライナー、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラ)のいずれも落とすことが出来るようになる。本発明において、(E)成分の配合量は、好ましくはクレンジング料全量に対し13~47質量%、より好ましくは15~45質量%である。
【0021】
任意成分の配合について
また、本願発明の透明クレンジング料には、化粧料に常用される各種原料を本願発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。例えば、ブチレングリコール(BG)やジプロピレングリコール(DPG)、ペンチレングリコールなどの多価アルコール、防腐剤、リン酸2KなどのpH調整剤、中和剤、酸化防止剤、香料、着色剤(例えばシアノコバラミン、(クロロフィリン/銅)複合体)、美容成分(例えばローズマリーエキス)等を配合することができる。
【0022】
本願発明の透明クレンジング料は、使用性や使用感を考慮して様々な剤型に設計される。具体的には液状又はジェル状である。
【実施例
【0023】
以下に本願発明のクレンジング料の実施例、比較例を示し、試験例によって本願発明の特徴と効果をさらに詳細に説明する。
1.効果試験法
次の手法により、実施例および比較例の各クレンジング料を評価した。
<経時安定性確認(外観観察)方法>
調製したクレンジング料を直径30mmのスクリューキャップ付透明ガラス瓶に充填し、室温(RT、25℃)で、この容器を横から見通して10ポイントの活字を読み取れることで、透明性を評価した。また、透明なものについては、均一性を目視にて評価した。
本試験においては、透明・不均一なものはなかった。したがって、表中には、下記文言で記載した。
透明:透明・均一状態
白濁:白濁し、不透明である状態 (前記「透明」の判定基準に入らないものは、白濁とした)
分離:二相以上に分離した状態
【0024】
また調製直後の状態が透明であったサンプルについては5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管した。
なお、調製直後の状態が分離していたサンプルについては、安定性試験を実施せず、表では「-」と記載した。各温度で一ヵ月保管した後の外観を、各保管温度で観察した。表中の文言は下記の状態である。
○ :透明・均一状態
白濁:白濁し、不透明である状態(前記「透明」の判定基準に入らないものは、白濁とした)
分離:二相以上に分離した状態
モヤ:透明であるが、モヤが認められ、均一ではない状態
なお、本試験においては、「モヤ」が認められたサンプルはなかった。
【0025】
<洗い流し性能(体積基準平均径)の評価方法>
試験に用いたクレンジング料を0.1%になるように水で希釈し、O/W型乳化組成物を調製し、この組成物中の乳化粒子径をELSZ-1000(大塚電子株式会社製)を用いて動的光散乱法により粒度分布を測定し、体積基準平均径の測定を行った。この乳化粒子径(体積基準平均径)を洗い流し性の評価として採用した。
なお、乳化粒子径と洗い流し効果の関係については、特許第6234533号に次のことが記載されている。
(1)乳化粒子径が大きいと肌に油性感が残る。
(2)水を添加した時に形成される乳化粒子径が300nm以下であれば、素早くすっきりと洗い流すことが出来る。
本試験では、100nm以下のサイズの乳化粒子径を測定できる装置を導入して、下記(3)を追加した。
(3)乳化粒子径が100nm以下であればさらに素早くすっきりと洗い流すことが出来る。
本試験では、洗い流し性能を見るのに、前記(1)~(3)のとおり乳化粒子径のサイズで評価できると考え、乳化粒子径(体積基準平均径)を試験して求め、これを評価した。表には、乳化粒子径(体積基準平均径)の数値をそのまま記載した。なお表中、「-」とあるのは、調製直後に分離又は白濁が生じた、或いはサンプル量の不足のため、測定を実施していないものである。
【0026】
次に、本発明の透明クレンジング料のクレンジング力について、異なる使用場面(水の混和のある、なし)を想定して試験し、評価した。
すなわち、「水と混和した際のクレンジング力」を、油性メイクアップ化粧料の代表であるリップカラーで評価し、「水と混和しない状態でのクレンジング力」を、ウォータープルーフタイプのメイクアップ化粧料の代表であるウォータープルーフタイプアイライナーと、フィルムタイプのメイクアップ化粧料の代表であるフィルムタイプマスカラで評価した。
<水と混和した際のクレンジング力評価方法>
(1)3cm×6cmの白色人工皮革の2cm×2cm枠内に、リップカラー(ファンケル モイスチャールージュP#84ビロードレッド)0.004gを塗布し30分乾燥させた。これを試験検体とした。
(2)作成した試験検体の色彩値(Lab1)を色彩色差計(装置名:CM-2600d、コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定した。
(3)実施例、または比較例で調製したクレンジング料の質量100%に対して、所定量(40%、60%、80%、100%)の水を添加して試験サンプルを作製した。
(4)上記(1)で作製した試験検体に、(3)で作製した試験サンプル0.1mlを滴下し、指で1秒間に1回の速度で20回擦った。
(5)試験検体を水で十分に洗い流し、乾燥させた。
(6)乾燥後の試験検体の色彩値(Lab2)を、色彩色差計を用いて測定した。
(7)以下の計算式によりメイク洗浄率を算出した。
メイク洗浄率(%)=100×[(L1-L2)2+(a1-a2)2+(b1-b2)2]1/2/[(L1-L0)2+(a1-a0)2+(b1-b0)2]1/2
ただし、Lab0は、リップカラー塗布前の白色人工皮革の色彩値
【0027】
<クレンジング力評価方法(ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラ)>
(1)3cm×6cmの白色人工皮革の直径1cm枠内に、メイク品0.005gを塗布し30分乾燥させた。これを試験検体とした。
ウォータープルーフタイプアイライナーとして、メイベリンニューヨーク マスターライナー クリーミィペンシルBK-1を用いた。
フィルムタイプマスカラとして、アテニア パーフェクトマスカラr 21を用いた。
(2)作製した試験検体の色彩値(Lab1)を色彩色差計(装置名:CM-2600d、コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定した。
(3)上記(1)で作製した試験検体に、試験サンプル0.1mlを滴下し、指で1秒間に1回の速度で20回擦った。
(4)試験検体を水で十分に洗い流し、乾燥させた。
(5)乾燥後の試験検体の色彩値(Lab2)を、色彩色差計を用いて測定した。
(6)以下の計算式によりメイク洗浄率を算出した。
メイク洗浄率(%)=100×[(L1-L2)2+(a1-a2)2+(b1-b2)2]1/2/[(L1-L0)2+(a1-a0)2+(b1-b0)2]1/2
ただし、Lab0は、メイク品塗布前の白色人工皮革の色彩値
【0028】
2.(D)成分の配合効果確認
(A)成分:ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10
(B)成分:ヘキサカプリル酸ポリグリセリル-20
(C)成分:エチルヘキサン酸セチル
(C)成分:トリエチルヘキサノイン
(D)成分:グリセリン
(E)成分:水35質量%
上記(A)~(E)成分を配合した実施例1、(D)成分を配合せず(E)成分の水の配合量を変えた比較例1~5の組成(下記表1)のクレンジング料を調製した。調製方法は、各配合成分を混合し、加温しながら撹拌することで透明なクレンジング料を得た。
この実施例1、比較例1~5を用いて、調製直後の透明性・均一性、洗い流し性能(体積基準平均径)、保存による変化を試験した。(D)成分配合による効果の評価結果を表1の下段に示した。
なお以下に示す配合表の配合量は、全て組成物あたりの質量%で表示している。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例1は(D)成分であるグリセリンの他に、BGを任意成分として配合している。実施例1は、5℃~50℃の温度領域で安定であった。
一方、比較例1~5は(D)成分を配合していない。また、油/水比を変えて検討したが、比較例1~4は調製直後の観察で透明なものはなく、1ヶ月保管(5℃~50℃の温度領域)後も透明で安定なクレンジング料はなかった。比較例5は、調製直後透明であったが、1ヶ月保管(5℃~50℃の温度領域)後、透明で安定ではなかった。
以上の実施例1と比較例1~5の試験より、透明性と温度安定性に(D)成分の配合が重要であることが分かった。
【0031】
3.(D)成分の相違による配合効果確認
(A)成分:ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10
(B)成分:ヘキサカプリル酸ポリグリセリル-20
(C)成分:エチルヘキサン酸セチル
(C)成分:トリエチルヘキサノイン
(C)成分:(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル
(C)成分:ジカプリリルエーテル
(D)成分:グリセリン
(D)成分:ポリグリセリン-5
(E)成分:水25質量%、40質量%
上記(A)~(E)成分を配合した実施例2、実施例3(表2の組成)のクレンジング料を調製した。同様にして、(D)成分を配合せず(E)成分の水の配合量を変えた比較例6~15の組成(表2の組成)のクレンジング料を調製した。この実施例2、3、比較例6~15を用いて、実施例1と同様に調製直後の透明性・均一性、洗い流し性能(体積基準平均径)、保存による変化を試験した。(D)成分配合による効果の評価結果を表2の下段に示した。
【0032】
【表2】
【0033】
実施例2、3のクレンジング料は、(D)成分としてグリセリン、ポリグリセリン-5を配合しており、いずれも透明で安定性の高いクレンジング料を調製することができた。
一方、比較例6~13に示すとおり、BG又はDPGでは、透明で安定性の高いクレンジング料が調製困難であった。また、比較例14、15の組成は、ソルビトールあるいは、保湿剤として汎用されるメチルグルセス-10を用いた組成であるが、長期間透明で保存安定性の高いクレンジング料を調製できなかった。
以上の試験から、グリセリンおよびポリグリセリン-5は、クレンジング料の透明性と安定性に高い効果を有していることが分かった。
【0034】
4.(D)成分であるポリグリセリンの重合度の相違による配合効果確認
(A)成分:ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10
(B)成分:ヘキサカプリル酸ポリグリセリル-20
(C)成分:エチルヘキサン酸セチル
(C)成分:トリエチルヘキサノイン
(D)成分:グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン-3、ポリグリセリン-4、ポリグリセリン-5、ポリグリセリン-6およびポリグリセリン-10から選ばれる1以上
(E)成分:水20質量%、30質量%、35質量%、40質量%
上記(A)~(E)成分を配合した実施例4~16の組成(下記表3)のクレンジング料を調製した。
実施例4~16のクレンジング料について同様に配合効果確認の試験を行った。評価結果を下記表3の下段に示した。
【0035】
【表3】
【0036】
実施例4~16に示すように、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン-3、ポリグリセリン-4、ポリグリセリン-5、ポリグリセリン-6およびポリグリセリン-10のいずれも、(D)成分として好ましいことが分かった。
【0037】
5.(A)成分および(B)成分の組み合わせ効果とその他の界面活性剤の相違による効果確認
(A)成分:ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10
(B)成分:ヘキサカプリル酸ポリグリセリル-20
(C)成分:エチルヘキサン酸セチル
(C)成分:トリエチルヘキサノイン
(C)成分:(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル
(C)成分:ジカプリリルエーテル
(D)成分:グリセリン
(E)成分:水35質量%
上記(A)~(E)成分を配合した実施例17(表4の組成)のクレンジング料を調製した。同様にして、(A)成分および(B)成分のいずれか一方を配合するか、その他のノニオン界面活性剤と組み合わせ、(D)成分と(E)成分の配合量を変化させた例として比較例16~25の組成(表4の組成)を調製し、同様に評価した。
【0038】
【表4】
【0039】
実施例17に示す通り、(A)成分と(B)成分を組み合わせ、本発明の構成((A)+(B)+(C)+(D)+(E))をとることで、透明で安定性の高いクレンジング料が得られた。
一方、比較例16、17は、(A)成分または(B)成分のいずれか一方のみを単独で
配合使用した組成である。比較例16、17は調製直後に分離した。
また、比較例18~21は、一般的なクレンジング料に用いられるトリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、イソステアリン酸PEG-8グリセリルと、本発明に用いる(A)成分、(B)成分のいずれか一方を組み合わせて配合した組成である。比較例19~21は調製直後に分離し、比較例18は、温度安定な透明クレンジング料が調製できなかった。
さらにまた、比較例22~25は、一般的なクレンジング料に用いられるトリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、イソステアリン酸PEG-8グリセリルの単独使用またはこれらの組み合わせによる組成である。比較例23~25は調製直後に分離した。比較例22は、温度安定な透明クレンジング料とはならなかった。
以上の実施例と比較例の検討結果から、透明で温度安定なクレンジング料を調製するためには、界面活性剤である(A)成分と(B)成分の両方を組み合わせて用いることが必要であることがわかった。
【0040】
6.(A)成分および(B)成分のポリグリセリンの重合度と脂肪酸の結合数の比(ポリグリセリンの重合度/脂肪酸の結合数)の効果確認
(A)成分:ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10
(A)成分:ジオレイン酸ポリグリセリル-10
(B)成分:ヘキサカプリル酸ポリグリセリル-20
(B)成分:ジカプリン酸ポリグリセリル-6
(C)成分:エチルヘキサン酸セチル
(C)成分:トリエチルヘキサノイン
(C)成分:(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル
(C)成分:ジカプリリルエーテル
(D)成分:グリセリン
(E)成分:水35質量%
上記(A)~(E)成分を配合した実施例18、19(表5の組成)のクレンジング料を調製した。
(A)成分として、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、およびジオレイン酸ポリグリセリル-10を選択し、(B)成分としてヘキサカプリル酸ポリグリセリル-20、ジカプリン酸ポリグリセリル-6を選択した。また(A)成分の比較例としてイソステアリン酸ポリグリセリル-10、(B)成分の比較例としてオクタイソノナン酸ポリグリセリル-20、ペンタ(カプリル酸/カプリン酸)ポリグリセリル-20、トリラウリン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-4を選定した。
表5に実施例と比較例の組成および、ポリグリセリンエステルの炭素鎖長数と結合脂肪酸の分岐の有無、ポリグリセリンの重合度と脂肪酸の結合数の比(ポリグリセリンの重合度/脂肪酸の結合数)を記載した。また表5には、説明のため表4に示した実施例17も合わせて載せている。
【0041】
【表5】
【0042】
(A)成分の検討結果
実施例17、18の評価結果から明らかなように、(A)成分としてジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-10のどちらを用いても透明で温度安定なクレンジング料を調製できた。
一方、比較例26に示すように(A)成分を含まず、イソステアリン酸ポリグリセリル-10を配合した組成では、調製直後に分離した。
(A)成分としては炭素数C18を有する分岐鎖または不飽和脂肪酸とのジエステルであるデカグリセリンが望ましいことがわかった。すなわち(A)成分としては炭素数C14~22の分岐鎖および/または不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのジエステルが好ましいと判断した。
【0043】
(B)成分の検討結果
実施例19の評価結果に示すように、(B)成分としてジカプリン酸ポリグリセリル-6を用いると透明で安定なクレンジング料が調製できた。
一方、比較例27~34の評価結果に示すとおり、(B)成分に代えてその他のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合、比較例27、28、32は温度安定な透明クレンジング料が調製できず、比較例29~31、33、34は調整直後に分離した。
(B)成分として、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化度はポリグリセリンの重合度と脂肪酸の結合数の比(ポリグリセリンの重合度/脂肪酸の結合数)が2.5~3.5であり、脂肪酸の炭素数がC8~C10であり、かつ脂肪酸が直鎖であることが、より好ましい結果であった。すなわち(B)成分として、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化度はポリグリセリンの重合度と脂肪酸の結合数の比(ポリグリセリンの重合度/脂肪酸の結合数)が2.5~3.5であり、脂肪酸の炭素数がC6~C10であって、かつ脂肪酸が直鎖脂肪酸であることが、より好ましいと判断した。
【0044】
7.(A)成分および(B)成分の濃度効果確認
(A)成分:ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10
(B)成分:ヘキサカプリル酸ポリグリセリル-20
(C)成分:エチルヘキサン酸セチル
(C)成分:トリエチルヘキサノイン
(D)成分:グリセリン
(E)成分:水30質量%
上記(A)~(E)成分を配合した実施例20、21(表6の組成)のクレンジング料を調製した。前述の試験例では(A)成分と(B)成分の合計含有量を16質量%として試験を行ったが、本試験では、(A)成分と(B)成分の合計含有量を12.5質量%とし、同様にして評価を行った。
【0045】
【表6】
【0046】
実施例20、21の組成のクレンジング料は、いずれの評価も好ましい結果であった。
(A)成分、(B)成分の含有量を減量しても、透明で温度安定なクレンジング料が得られることが確認できた。
【0047】
8.(C)成分の検討
(A)成分:ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10
(B)成分:ヘキサカプリル酸ポリグリセリル-20
(C)成分:エチルヘキサン酸セチル
(C)成分:イソノナン酸イソトリデシル
(C)成分:パルミチン酸エチルヘキシル
(C)成分:トリエチルヘキサノイン
(D)成分:グリセリン
(E)成分:水30質量%
上記(A)~(E)成分を配合した実施例22~26(表7の組成)のクレンジング料を調製した。
(C)成分としてエチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノインを配合した実施例22~26の組成のクレンジング料を、同様にして評価を行った。結果を表7に示す。
【0048】
【表7】
【0049】
実施例22~26の評価は、いずれも好ましい結果であった。(C)成分の油剤として、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノインの1以上を配合して、温度安定で透明なクレンジング料が得られた。
【0050】
9.(C)成分に配合する油剤の組み合わせの検討
(A)成分:ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10
(B)成分:ヘキサカプリル酸ポリグリセリル-20
(C)成分:エチルヘキサン酸セチル
(C)成分:トリエチルヘキサノイン
(C)成分:(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル
(C)成分:ジカプリリルエーテル
(C)成分:ジイソノナン酸BG
(C)成分:コハク酸ジエチルヘキシル
(C)成分:ミネラルオイル
(D)成分:グリセリン
(E)成分:水20質量%、35質量%
上記(A)~(E)成分を配合した実施例27~32(表8の組成)のクレンジング料を調製した。
(C)成分として配合するエチルヘキサン酸セチル、トリエチルヘキサノイン、(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル、ジカプリリルエーテル、ジイソノナン酸BG、コハク酸ジエチルヘキシル、ミネラルオイルを組み合わせて配合した実施例27~32を、同様にして評価を行った。
組成および評価結果を下記の表8に示す。
【0051】
【表8】
【0052】
実施例27~32の評価結果から、エチルヘキサン酸セチル、トリエチルヘキサノイン、(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル、ジカプリリルエーテル、ジイソノナン酸BG、コハク酸ジエチルヘキシル、ミネラルオイルを組み合わせて、(C)成分として配合したところ、いずれも透明で温度安定なクレンジング料が調製できた。
【0053】
10.使用実態に即した効果の確認試験
前述した実施例14、実施例22の透明なクレンジング料を用いて、使用実態に即した場面でのクレンジング力を試験した。使用実態とは、一つには風呂場等で使用して水が混入することを想定した、という意味である。試験方法は、前記に説明した手法の、<水と混和した際のクレンジング力評価方法(洗浄対象;リップカラー)>に従って評価した。
また、別の使用実態として、アイライナーやマスカラは室内で化粧落としをする化粧行動が少なくないことから、室内での使用(水が混入しない使用場面)を想定して、前述の<クレンジング力評価方法(洗浄対象;ウォータープルーフアイライナー、フィルムタイプマスカラ)>に従って試験し評価した。また比較例35~37の組成のクレンジング料を調製して同様に試験し評価した。
比較例35は本発明のB成分とD成分とE成分を欠く組成((A)+(C)が一致)であり、比較例36は本発明のB成分とE成分を欠く組成((A)+(C)+(D)が一致)であり、比較例37は本発明の(A)成分と(B)成分と(D)成分と(E)成分を欠く組成((C)が一致)である。比較例35~37は任意成分を加えて透明クレンジング料としている。比較例35~37に配合されているオクタイソノナン酸ポリグリセリル-20、テトラオレイン酸ソルベス-30、ポリソルベート80、オレイン酸ソルビタンは界面活性剤である。比較例35~37の組成は、従来の油性クレンジング料として代表的な組成である。
下記表9に実施例14、22、比較例35~37の組成を示す。なお比較例35~37は、(E)成分の水を全く含まないか、実質的に(E)成分の水を含有しない組成(水1質量%以下)であり、ウォータープルーフアイライナーに対して強い洗浄力を有することが確認できた組成である。また実施例14は前記表3に、実施例22は前記表7に載せたものと同一である。
【0054】
【表9】
【0055】
<水と混和した際のクレンジング力(洗浄対象;リップカラー)>
実施例22、比較例35、比較例37の各クレンジング料100質量%に対して、水を40~100質量%添加したときの洗浄率(%)を図1に示す。なお、実施例14、比較例36は試験していない。
実施例22は(C)成分の油剤量、界面活性剤量((A)成分と(B)成分の合計量)が、比較例35、37の組成における(C)成分の油剤量、界面活性剤量と比べて少ないにも関わらず、水が混入しても比較例35と同等のクレンジング性能を有していた。また、比較例37は水の混入によって顕著なクレンジング性能の低下が観察された。
【0056】
<クレンジング力評価(洗浄対象;ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタ
イプマスカラ)>
(1)ウォータープルーフタイプアイライナーに対するクレンジング力評価
実施例14、実施例22、比較例35~37の組成のクレンジング料の、ウォータープルーフタイプアイライナーに対する評価結果を図2に示す。
図2に示す通り、油性メイクのウォータープルーフタイプアイライナーに対して、実施例14および実施例22のクレンジング料は、(C)成分の油剤量、界面活性剤量((A)成分と(B)成分の合計量)が、比較例35、36、37の(C)成分の油剤量、界面活性剤量と比べて少ないにも関わらず強い洗浄効果を示した。この洗浄効果は、油性クレンジング料である比較例35~37と同等か又はそれ以上のクレンジング性能を有していた。
【0057】
(2)フィルムタイプマスカラに対するクレンジング力評価
実施例14、実施例22、比較例35~37の組成のクレンジング料の、フィルムタイプマスカラに対するクレンジング力の評価結果を図3に示す。
本発明の実施例14、実施例22は、フィルムを形成するフィルムタイプマスカラに対して、強いクレンジング効果を示した。一方、従来の油性クレンジング料である比較例35~37は、フィルムタイプマスカラに対して、洗浄力が極めて弱かった。実施例14は水を35質量%、実施例22は水を30質量%含有しており、本発明の構成((A)+(B)+(C)+(D)+(E))とすることにより、フィルムタイプマスカラに対して強い
洗浄力を発揮したものと考えられる。
【0058】
<洗い流し性能(体積基準平均径)>
実施例14、実施例22、比較例35、比較例36、比較例37のクレンジング料の0.1質量%水溶液の乳化粒子の体積基準平均径測定結果を下記表10に示す。体積基準平均径測定値が11438nmと非常に大きかった比較例37を除いた実施例14、22、比較例35、36について、体積基準平均径測定値をグラフ化して図4に示した。
【0059】
【表10】
【0060】
表10、図4から明らかなように、比較例37の乳化粒子径(体積基準平均径)が11438nmであった以外は、いずれも素早くすっきりと洗い流すことができるレベルと評価できる300nm以下であった。これらのうち実施例14、実施例22は乳化粒子径(体積基準平均径)が100nm以下であり、比較例35~37に比して非常に細かい粒子径を有しており、さらに素早く洗い流すことができると判断した。
前述した実施例1~32の乳化粒子径(体積基準平均径)はおおむね100nm以下であり、最大でも140.9nm(実施例23)であることから、本発明の構成をとるクレンジング料は、洗い流し性が一般的な油性タイプのクレンジング料よりも優れていると判断できる。
【0061】
以上の通り、本発明のクレンジング料は、実際の使用に即した試験において、従来の耐水性のクレンジングオイルと同等の耐水性を有し、油性メイクアップ化粧料として代表的なリップカラーに対して従来のクレンジングオイルと同等のクレンジング性能を有していた(図1の実施例22と比較例35)。
また一般的な油性クレンジング料では落としにくい場合があると位置づけられるウォータープルーフタイプ化粧料(例えばウォータープルーフタイプのアイライナー)に対して、従来のクレンジングオイルと同等以上のクレンジング性能を有していた(図2)。さらに、従来のクレンジングオイルでは落とすことが困難とされていたフィルムタイプマスカラに対して、本発明のクレンジング料は高いクレンジング性能を有していることが明らかとなった(図3)。
また本発明の構成をとるクレンジング料は、体積基準平均径の測定結果から、クレンジング後の洗い流しが容易であることが明らかである(表10、図4)。
【0062】
市場には様々なタイプのメイクアップ化粧料があり、その選択は消費者の嗜好に任されている。
本発明の構成をとる透明クレンジング料は、水があらかじめ安定に配合されていることから、消費者がどのようなタイプのメイクアップ化粧料を選択して使用していても、また消費者がどのような使用場面(水の混入の恐れの高い風呂場/水の混入する恐れのない室内)でクレンジング行為(化粧落とし)を行っても、常に安定して優れたクレンジング効果を得ることが出来た。
従来技術では、例えば落としにくいアイメイクに対しては、それを落とす専用のクレンジング料で化粧を落とし、顔全体は別のクレンジング料で化粧落としをするなど煩雑な化粧行動をとらざるをえなかった。つまり消費者は、嗜好したメイクアップ化粧料のタイプに合わせて複数のクレンジング料を揃えて所有することは当たり前であった。しかしながら、本発明の構成をとるクレンジング料であれば、1つのクレンジング料で、タイプの異なるメイクアップ化粧料を落とすことが出来る。この効果は従来技術のクレンジング料では考えられてこなかったものであり、それを達成した本願発明は画期的である。
次に、任意成分(着色効果のあるシアノコバラミンや(クロロフィリン/銅)複合体、BG、その他の界面活性剤、保湿成分であるローズマリーエキス)、製品の香りづけにもなる(C)成分(オレンジ果皮油、ローズマリー葉油)を配合した実施例33~36を示す。単位は質量%である。常法により調製した。
【0063】
【表11】
【0064】
表11の実施例33~36に示したとおり、本発明の構成をとるクレンジング料は、透明で温度安定であった。また乳化粒子径(体積基準平均径)が、いずれも一般的に素早くすっきりと洗い流すことができるレベルと評価できる300nm以下であった。実施例33~36のクレンジング料を、20名の女性モニターに渡して、ホームユーステストを行ったところ、クレンジング力に対して全く不満はみられず、意見欄にはフィルムタイプマスカラ、ウォータープルーフタイプアイライナー、ファンデーション、口紅のいずれも良く落ちた、と非常に高い評価であった。
【0065】
<クレンジング力評価(官能試験によるメイク汚れの落としやすさの評価)>
実施例1(表1)、実施例17~19(表5)、実施例27~32(表8)、実施例33~36(表11)のクレンジング料について、訓練された官能評価員が、実際に各化粧料を使用して評価した。すなわち官能評価員が洗浄対象の化粧料を使って化粧を行い、1時間後に室内で、評価対象のクレンジング料と手指を使って化粧落としを行った。その後水で洗い流した後、タオルで軽く水滴をふきとり、メイク汚れの落ち具合を目視で観察した。
なお、使用した化粧料は次の通りである。
口紅(リップカラー):モイスチャールージュP#84ビロードレッド
(株式会社ファンケル製)
ウォータープルーフタイプアイライナー:マスターライナー
クリーミィペンシルBK-1
(メイベリンニューヨーク製)
フィルムタイプマスカラ:パーフェクトマスカラr21
(株式会社アテニア製)
(評価基準)
○:メイク汚れがほぼきれいに落ちている
△:メイク汚れがわずかに残っている
×:メイク汚れが明らかに残っている
【0066】
表12の下段に官能評価によるクレンジング評価結果を示す。表12には、すでに記載した各評価項目の結果も併せて記載した。
【0067】
【表12】
【0068】
(結果)
実施例1(表1)、実施例17~19(表5)、実施例27~32(表8)、実施例33~36(表11)のクレンジング料のすべてが「○」評価であり、ほぼきれいにメイク汚れを落とすことが確認できた。
【0069】
表13に示す組成のクレンジング料(実施例37~49、比較例38、39)を常法により調製し、同様に評価した。結果を下段に示す。
【0070】
【表13】
【0071】
<外観観察(透明性)>
(a)調製直後の外観
実施例37~49のクレンジング料は、すべて外観透明であった。また比較例38のクレンジング料も透明であった。一方比較例39は、調製直後外観が白濁し不透明となった。実施例37~49、比較例38の試料に対し、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管する安定性試験をおこなった。
【0072】
(b)安定性試験後の外観(安定性)
実施例37~49のクレンジング料、比較例38のクレンジング料は、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管した後1ヶ月後に取り出し透明性を評価したところすべて透明性を保っていた。
【0073】
<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定)>
実施例37~49のクレンジング料、比較例38のクレンジング料について測定した乳化粒子径の体積基準平均径を表13に示した。測定した実施例13例中の3例(実施例40、43、47)が、「乳化粒子径が100nm以下であると一層素早くすっきりと洗い流すことができる」の評価であった。また残りの実施例7例(実施例41、42、44、45、46、48、49)と比較例14も「乳化粒子径が101~300nmであると素早くすっきりと洗い流すことができる」の評価となる乳化粒子の体積基準平均径を示した。
【0074】
<洗い流しやすさ(官能評価)>
官能評価員の評価結果を表13に示す。
実施例37~49のすべてのクレンジング料及び比較例38が「○評価:肌に油性感が残らず洗い流し易い」の評価であった。洗い流しやすさ(官能評価)の結果は、体積基準平均径の測定結果の判定と一致した。
【0075】
<クレンジング力評価(官能評価によるメイク汚れの落としやすさの評価)>
口紅、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラの落としやすさ評価結果を表13に示す。
実施例37~49のクレンジング料すべてが「○」評価であり、ほぼきれいにメイク汚れを落とすことが確認できた。しかし比較例38のクレンジング料はフィルムタイプのマスカラの汚れを落とすことができず、この試験は「×」評価であった。
【0076】
以上の試験結果から次のように結論付けることができた。
すなわち、比較例38のクレンジング料がフィルムタイプマスカラを落とすことができないことから、フィルムタイプのマスカラ汚れを落とすためには、(E)成分である水の含有量は、10質量%を超える必要があることが分かった。
また比較例39が調製直後に白濁することから、クレンジング料が白濁などを生じさせないためには、(E)成分である水の含有量は、50質量%未満でなければならないものと考えられた。
一方、実施例37~49が、調製直後透明で保存試験後も透明であること、官能評価での洗い流しやすさ及び官能評価による洗浄効果が「〇」評価であることから、(E)成分の水の含有量が15~44.99質量%の範囲であるための効果であるものと考えられた。
図1
図2
図3
図4