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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】溶接位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20240418BHJP
   B25J 9/10 20060101ALI20240418BHJP
   B23K 9/127 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G01B5/00 A
B25J9/10 A
B23K9/127 501B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020152990
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047209
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 祥
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-020176(JP,A)
【文献】特開2008-279461(JP,A)
【文献】特開2011-170522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00
B25J 9/10
B23K 9/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触式センサを用いて溶接位置を検出する溶接位置検出装置であって、
第1位置から第1方向に前記接触式センサを移動させて、当該接触式センサと溶接対象である第1ワークとを接触させることにより、当該第1位置から当該第1ワークまでの第1距離又は当該接触点における第1座標値を取得する第1サーチ部と、
前記第1位置から前記第1方向と垂直である第2方向に所定距離離れて位置する第2位置から前記第1方向に前記接触式センサを移動させて、当該接触式センサと前記第1ワークとを接触させることにより、当該第2位置から当該第1ワークまでの第2距離又は当該接触点における第2座標値を取得する第2サーチ部と、
前記第1距離、前記所定距離及び前記第2距離に基づいて、又は前記第1座標値及び前記第2座標値に基づいて、前記第1ワークの傾きを算出する傾き算出部と、
前記第1ワークの傾きに沿って前記接触式センサを移動させて、前記第1ワークに接合される第2ワークまでの距離を取得する第3サーチ部と、
を備え、
前記第2方向は、前記第2ワークから離れる方向である、
溶接位置検出装置。
【請求項2】
前記第1方向は、鉛直方向又は水平方向である、
請求項1に記載の溶接位置検出装置。
【請求項3】
前記第1サーチ部は、前記接触式センサと前記第1ワークとを接触させた後、前記第1方向と反対方向に当該接触式センサを退避させる、
請求項1からのいずれか一項に記載の溶接位置検出装置。
【請求項4】
前記第1サーチ部は、少なくとも前記第1距離だけ退避させる、
請求項に記載の溶接位置検出装置。
【請求項5】
前記第2サーチ部は、前記接触式センサと前記第1ワークとを接触させた後、前記傾き算出部によって算出された前記第1ワークの傾きに基づいて、当該第1ワークに対して垂直方向に当該接触式センサを退避させる、
請求項1からのいずれか一項に記載の溶接位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接を行う溶接ロボットは、一般的に、ティーチングにより事前に設定された溶接線位置に沿って溶接トーチを移動させ、接合対象となるワークを溶接する。溶接ロボットにより溶接を行う場合、例えば、溶接するワークの組み立て誤差及び溶接時の熱によるワークの変形等により、溶接ロボットに設定された溶接線位置とこれから溶接するワークの溶接位置との間にずれが生じることがある。
【0003】
このような位置ずれを補正するために、接触式センサを備えた作業マニピュレータのセンシング動作生成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載の作業マニピュレータのセンシング動作生成方法は、接触式センサが接触するワークの接触面を抽出するとともに、この接触面を構成する一つのエッジを選択する。そして、当該エッジの位置と、接触式センサの基端側に設定した設定位置を接触面に射影した位置とが一致するように、作業マニピュレータのセンシング姿勢を再設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-170522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の作業マニピュレータのセンシング動作生成方法では、接触式センサがワークに深当たりしたり、浅当たりしたりする平行ずれには対応できるものの、ワークの傾きによる誤検出には対応できないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、ワークが傾いている場合であっても、溶接位置の誤検出を低減することができる溶接位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る溶接位置検出装置は、接触式センサを用いて溶接位置を検出する溶接位置検出装置であって、第1位置から第1方向に接触式センサを移動させて、当該接触式センサと溶接対象である第1ワークとを接触させることにより、当該第1位置から当該第1ワークまでの第1距離又は当該接触点における第1座標値を取得する第1サーチ部と、第1位置から第1方向と垂直である第2方向に所定距離離れて位置する第2位置から第1方向に接触式センサを移動させて、当該接触式センサと第1ワークとを接触させることにより、当該第2位置から当該第1ワークまでの第2距離又は当該接触点における第2座標値を取得する第2サーチ部と、第1距離、所定距離及び第2距離に基づいて、又は第1座標値及び第2座標値に基づいて、第1ワークの傾きを算出する傾き算出部と、第1ワークの傾きに沿って接触式センサを移動させて、第1ワークに接合される第2ワークまでの距離を取得する第3サーチ部と、を備える。
【0009】
この態様によれば、第1サーチ部は、第1位置から第1ワークまでの第1距離又は第1ワークとの接触点における第1座標値を取得し、第2サーチ部は、第1位置と所定距離離れて位置する第2位置から第1ワークまでの第2距離又は第1ワークとの接触点における第2座標値を取得する。そして、傾き算出部は、第1距離、所定距離及び第2距離に基づいて、又は第1座標値及び第2座標値に基づいて、第1ワークの傾きを算出し、第3サーチ部は、第1ワークの傾きに沿って接触式センサを移動させることによって第2ワークをサーチする。このため、接触式センサは、第1ワークに接触する誤検出、及び第2ワークを検出できないという空振りを回避することができる。つまり、ワークが傾いている場合であっても、溶接位置の誤検出を低減することができる。
【0010】
上記態様において、第2方向は、第2ワークから離れる方向であってもよい。
【0011】
この態様によれば、第2位置は、第1位置よりも第2ワークに対して離れる方向に位置するため、接触式センサを第2位置まで移動させる際に、第2ワークとの意図しない接触を回避することができる。第1ワークと第2ワークとの溶接線位置に対して離れる方向(近づく方向)への第1ワークの傾きを算出することができるため、接触式センサは、第1ワークに接触する誤検出、及び第2ワークを検出できないという空振りを確実に回避することができる。
【0012】
上記態様において、第1方向は、鉛直方向又は水平方向であってもよい。
【0013】
この態様によれば、第1サーチ部及び第2サーチ部は、第1ワークを鉛直方向に2回又は水平方向に2回サーチし、傾き算出部は、水平面に対する第1ワークの傾き又は鉛直面に対する第1ワークの傾きを算出する。そして、第3サーチ部は、水平面に対する第1ワークの傾き又は鉛直面に対する第1ワークの傾きに沿って接触式センサを移動させることによって第2ワークをサーチする。このため、第1ワークが水平面に対して傾いている場合であっても、鉛直面に対して傾いている場合であっても、適切に第2ワークを検出し、溶接位置の誤検出を低減することができる。
【0014】
上記態様において、第1サーチ部は、接触式センサと第1ワークとを接触させた後、第1方向と反対方向に当該接触式センサを退避させてもよい。
【0015】
この態様によれば、接触式センサの先端である溶接ワイヤ等を、第1ワークに接触する第1方向と反対方向に退避させるため、当該接触による溶接ワイヤ等に掛かる負担を軽減し、当該溶接ワイヤ等が曲がったりすることを防止することができる。
【0016】
上記態様において、第1サーチ部は、少なくとも第1距離だけ退避させてもよい。
【0017】
この態様によれば、接触式センサを第1ワークに対して十分な距離離れることになるため、第1ワークが相当程度傾いていたとしても、接触式センサを第2位置まで移動させる際に、第1ワークとの意図しない接触を回避することができる。
【0018】
上記態様において、第2サーチ部は、接触式センサと第1ワークとを接触させた後、傾き算出部によって算出された第1ワークの傾きに基づいて、当該第1ワークに対して垂直方向に当該接触式センサを退避させてもよい。
【0019】
この態様によれば、接触式センサの先端である溶接ワイヤ等を第1ワークに対して垂直方向に退避させるため、当該接触による溶接ワイヤ等に掛かる負担を軽減し、当該溶接ワイヤ等が曲がったりすることを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ワークが傾いている場合であっても、溶接位置の検出精度を向上させることができる溶接位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る溶接ロボットシステム10を示すシステム概要図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る溶接位置検出装置100の各機能を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る溶接位置検出装置100が実行する溶接位置検出方法300を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1実施形態に係る溶接位置検出装置100において、接触式センサにより第1ワークおよび第2ワークがサーチされる様子を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る溶接位置検出装置100において、傾き算出部120が座標値に基づいて、第1ワークの傾きを算出する様子を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る溶接位置検出装置100が実行する溶接位置検出方法500を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係る溶接位置検出装置100において、接触式センサにより第1ワークおよび第2ワークがサーチされる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の各実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する各実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0023】
<第1実施形態>
[溶接ロボットシステムの概要]
図1は、本発明の第1実施形態に係る溶接ロボットシステム10を示すシステム概要図である。図1において、溶接ロボットシステム10は、溶接ロボット20と、ティーチペンダント30と、ロボット制御装置40と、電源50とを備える。
【0024】
溶接ロボット20は、ケーブルを介してロボット制御装置40と接続されており、ロボット制御装置40からの動作指令に基づいてアーク溶接を行う。溶接ロボット20は、アーム先端部に溶接トーチ21を備えており、当該溶接トーチ21の先端から溶接ワイヤを送給し、溶接対象である金属材料(ワーク)との間にアークを発生させることによりアーク溶接を行う。
【0025】
溶接トーチ21は、ケーブルを介して電源50と接続されており、溶接ワイヤへの溶接電圧や溶接電流の供給を受ける。アーク溶接では、溶接ワイヤを金属材料に瞬間的に接触させて通電させると、溶接ワイヤと金属材料との間にアーク放電が発生し、発生したアークの熱により溶接ワイヤと金属材料とを溶解させることで、溶接が行われる。
【0026】
ティーチペンダント30は、溶接ロボット20の溶接関連教示情報について、溶接作業を実施する作業者からの入力を受け付ける。作業者は、アークの状態を確認しつつ、ティーチペンダント30を用いて最適な溶接関連教示情報を入力する。
【0027】
ここで、溶接関連教示情報とは、溶接ロボット20により行われる溶接に関する情報であり、溶接ロボット20の動作を教示する教示情報及び溶接条件が含まれる。溶接ロボット20の教示情報には、溶接ロボット20のアームの動作に関する情報、溶接ロボット20の位置及び姿勢に関する情報、溶接トーチ21の先端から送給される溶接ワイヤの突き出し長に関する情報等が含まれる。また、溶接条件には、溶接ワイヤに印加される溶接電圧、溶接ワイヤを流れる溶接電流の値及び溶接中における溶接線方向への溶接トーチ21の移動速度を表す溶接速度等が含まれる。
【0028】
ロボット制御装置40は、溶接ロボット20の制御を行う機器である。ロボット制御装置40は、ティーチペンダント30に接続されており、当該ティーチペンダント30に入力された溶接関連教示情報を取得することができる。ロボット制御装置40は、当該溶接関連教示情報に基づいて溶接ロボット20及び電源50を制御する。
【0029】
電源50は、ケーブルを介して溶接ロボット20に接続されており、ロボット制御装置40からの指令に基づいて溶接ロボット20における溶接トーチ21へ溶接電圧や溶接電流を供給する。
【0030】
なお、図1では、ティーチペンダント30は、ケーブルを介してロボット制御装置40に接続されているが、ワイヤレスで接続されていてもよい。すなわち、ティーチペンダント30とロボット制御装置40とは、無線通信を行う通信部を備えていてもよい。ロボット制御装置40とティーチペンダント30とがワイヤレスに接続されることで、作業者はケーブルの存在に煩わされたり、ケーブルの長さによる移動範囲の制限を受けたりすることなく、自由に移動をしながら溶接関連教示情報の入力を行うことができる。
【0031】
[溶接位置検出装置の構成]
上述した溶接ロボットシステム10において、溶接ロボット20がワークに対してアーク溶接を行う際に、当該ワークにおける溶接位置が重要となる。以下、接触式センサを用いて溶接位置を検出する溶接位置検出装置の構成について詳しく説明する。溶接位置検出装置では、接触式センサを用いてワークに接触することにより当該ワークの位置を確認し、当該ワークにおける溶接位置を検出する。
【0032】
図2は、本発明の第1実施形態に係る溶接位置検出装置100の各機能を示す機能ブロック図である。図2において、溶接ロボット20は、接触式センサ22を備え、ロボット制御装置40は、溶接位置検出装置100を備えている。溶接位置検出装置100は、接触検出部111及び電圧印加指令部112を含むサーチ部110と、傾き算出部120と、制御部130とを備える。
【0033】
なお、溶接位置検出装置100は、ロボット制御装置40に含まれる構成としているが、これは、溶接位置検出装置100に備えられている機能及びソフトウェア構成として含まれると解釈することもできる。換言すれば、ロボット制御装置40が溶接位置検出装置100に備えられている各機能ブロックを備える構成であっても構わない。
【0034】
溶接ロボット20における接触式センサ22は、典型的には、ワイヤタッチセンサを用いてもよい。溶接ロボット20における溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤと、溶接対象であるワークとの間にセンシング用の電圧を印加した状態で、制御部130の動作指令によって溶接ロボット20における溶接トーチ21を移動させる。そして、溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤがワークに接触すると、その際に電圧が変化するため、当該電圧の変化により溶接ワイヤとワークとの接触を認識する。つまり、溶接トーチ21及び当該溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤが接触式センサ22の一端を担っている。
【0035】
サーチ部110は、接触式センサ22を移動させて、溶接ワイヤとワークとが接触するまでの距離又はワークとの接触点における座標値を取得する。具体的には、電圧印加指令部112は、溶接ワイヤとワークとの間に電源50からセンシング用の電圧を印加するように指令し、当該電圧が印加された状態で、制御部130の動作指令によって溶接ロボット20における溶接トーチ21を移動させる。接触検出部111は、当該電圧を監視し、当該電圧の変化により溶接ワイヤとワークとの接触を検出する。このように、サーチ部110は、溶接ワイヤとワークとの接触を検出することによって、溶接トーチ21(溶接ワイヤ)の移動距離又は当該接触点における座標値を取得している。
【0036】
傾き算出部120は、サーチ部110によって取得されたワークまでの距離又はワークとの接触点における座標値に基づいて、当該ワークの傾きを算出する。傾きの算出方法についての詳細は、後述する。
【0037】
制御部130は、サーチ部110及び傾き算出部120に各指令及びデータの送受等を行い、溶接位置検出装置100で実行される処理を制御し、メモリ等の記憶部(図示せず)に記憶された溶接関連教示情報に基づいて、溶接ロボット20及び電源50を制御する。
【0038】
[ワークが傾いている場合における溶接位置検出方法]
次に、ワークが傾いている場合、当該ワークの傾きを算出しつつ溶接位置を検出する溶接位置検出方法について、具体的に詳しく説明する。
【0039】
図3は、本発明の第1実施形態に係る溶接位置検出装置100が実行する溶接位置検出方法300を示すフローチャートであり、図4は、本発明の第1実施形態に係る溶接位置検出装置100において、接触式センサにより第1ワークおよび第2ワークがサーチされる様子を示す図である。なお、以下、明細書中に示される(1)~(6)は、図4に示される丸付き数字1~6に対応する。
【0040】
図3において、溶接位置検出方法300はステップS301~S310を含み、各ステップは溶接位置検出装置100に含まれるプロセッサによって実行される。また、ここでは、図4に示されるように、第1ワークW10と第2ワークW20とが上下に重ねられて溶接される場合であって、所謂、重ね継手を例に挙げて説明する。
【0041】
ステップS301では、サーチ部110は、第1位置P1から鉛直方向に接触式センサ22(溶接トーチ21)を移動させて、第1ワークW10をサーチする(1)。
【0042】
ステップS302では、サーチ部110における接触検出部111は、接触式センサ22(溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤ)と第1ワークW10との接触を検出する。これにより、サーチ部110は、接触式センサ22の移動距離に基づいて、第1位置P1から第1ワークW10までの第1距離dv1を取得する。
【0043】
ステップS301及びS302は、第1位置P1から鉛直方向に第1ワークW10をサーチして第1距離dv1を取得するための第1サーチである。
【0044】
ステップS303では、サーチ部110は、ステップS301でのサーチ方向と反対方向に第1距離dv1だけ接触式センサ22を移動させる(2)。より詳細には、サーチ部110は、ステップS301及びS302において移動させた接触式センサ22をサーチ方向と真逆方向に第1距離dv1だけ移動させて、当該接触式センサ22を第1位置P1まで戻す。なお、サーチ方向は、鉛直方向かつ第1ワークW10に対して近づく方向であり、サーチ方向と反対方向とは、鉛直方向かつ第1ワークW10に対して離れる方向である。
【0045】
ここで、サーチ部110は、第1サーチの後処理として、接触式センサ22と第1ワークW10とを接触させた後、サーチ方向と反対方向に接触式センサ22を退避させている。実際に、第1ワークW10と接触するのは、溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤであり、当該溶接ワイヤには、接触による負担が掛かる場合がある。そこで、接触した後、接触したサーチ方向と真逆方向に退避させることによって、接触による溶接ワイヤ等に掛かる負担を軽減し、当該溶接ワイヤ等が曲がったりすることを防止している。
【0046】
また、サーチ部110は、接触式センサ22を第1距離dv1だけ移動させて、第1位置P1まで戻している。仮に、第1ワークW10が相当程度傾いていた場合、次のステップS304で接触式センサ22を水平方向に移動させれば、第1ワークW10に意図しない接触が発生する恐れがあるため、第1ワークW10に対して十分な距離を確保している。第1位置P1は、サーチ開始位置として、第1ワークW10と意図しない接触が発生することがないように、第1ワークW10に対して十分な距離が確保された位置に設定されている。
【0047】
換言すれば、サーチ部110は、接触式センサ22を第1位置P1に戻さなくてもよく、第1距離dv1よりも大きい距離を移動させて、第1ワークW10に対して十分な距離を確保しても構わない。また、接触式センサ22を水平方向に移動させた際に、第1ワークW10に意図しない接触を回避することができれば、第1距離dv1よりも小さい距離だけ、接触式センサ22を移動させても構わない。
【0048】
ステップS304では、サーチ部110は、水平方向に所定距離dh0だけ離れた第2位置P2まで接触式センサ22を移動させる(3)。
【0049】
ここで、サーチ部110は、接触式センサ22を水平方向に移動させるとしているが、これは、第2ワークW20に対して離れる方向(近づく方向)であり、典型的には、第1ワークW10と第2ワークW20との溶接線位置に対して離れる方向(近づく方向)である。第1位置P1と第2位置P2とが溶接線位置に対して離れる方向(近づく方向)に位置することにより、当該方向に対する第1ワークW10の傾きを算出することができるようになる。その結果、接触式センサ22は、第1ワークに接触する誤検出、及び第2ワークを検出できないという空振りを確実に回避することができる。
【0050】
さらに、サーチ部110は、接触式センサ22を、第2ワークW20に近づく方向に移動させれば、第2ワークW20に意図しない接触が発生する恐れがあるため、第2ワークW20に近づく方向よりも離れる方向に移動させる方がより好ましい。
【0051】
ステップS305では、サーチ部110は、第2位置P2から、再び、鉛直方向に接触式センサ22を移動させて、第1ワークW10をサーチする(4)。
【0052】
ステップS306では、サーチ部110における接触検出部111は、接触式センサ22(溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤ)と第1ワークW10との接触を検出する。これにより、サーチ部110は、接触式センサ22の移動距離に基づいて、第2位置P2から第1ワークW10までの第2距離dv2を取得する。
【0053】
ステップS305及びS306は、第2位置P2から鉛直方向に第1ワークW10をサーチして第2距離dv2を取得するための第2サーチである。
【0054】
ステップS307では、傾き算出部120は、第1距離dv1、所定距離dh0及び第2距離dv2に基づいて、第1ワークW10の傾きαを算出する。ここでは、傾きα=(第1距離dv1-第2距離dv2)/所定距離dh0により算出することができる。
【0055】
ステップS308では、サーチ部110は、接触式センサ22と第1ワークW10とを接触させた後、傾き算出部120によって算出された第1ワークW10の傾きαに基づいて、当該第1ワークW10に対して垂直方向に距離d1だけ当該接触式センサ22を移動させる(5)。
【0056】
ここで、サーチ部110は、第2サーチの後処理として、接触式センサ22と第1ワークW10とを接触させた後、当該第1ワークW10に対して垂直方向に接触式センサ22を退避させている。実際に、第1ワークW10と接触するのは、溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤであり、当該溶接ワイヤには、接触による負担が掛かる場合がある。そこで、接触した後、第1ワークW10に対して垂直方向に退避させることによって、接触による溶接ワイヤ等に掛かる負担を軽減し、当該溶接ワイヤ等が曲がったりすることを防止している。
【0057】
また、サーチ部110は、接触式センサ22を距離d1だけ移動させている。ここで、距離d1は、小さ過ぎると、測定誤差や算出誤差及び第1ワークW10の表面上に凹凸等があれば、後述するステップS309において接触式センサ22が移動する際に、第1ワークW10に誤って接触する可能性がある。一方、距離d1が大き過ぎると、後述するステップS310において接触式センサ22が第2ワークW20と接触できず、空振りしてしまう可能性がある。したがって、ここでは、距離d1は、第2ワークW20の厚みの半分程度に設定されるとよい。
【0058】
ステップS309では、サーチ部110は、ステップS307において傾き算出部120によって算出された第1ワークW10の傾きαに沿って接触式センサ22を移動させて、第2ワークW20をサーチする(6)。
【0059】
ステップS310では、サーチ部110における接触検出部111は、接触式センサ22(溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤ)と第2ワークW20との接触を検出する。これにより、サーチ部110は、接触式センサ22の移動距離に基づいて、第2ワークW20までの距離を取得する。これは、第1ワークW10の傾きαに沿って第2ワークW20をサーチして当該第2ワークW20までの距離を取得するための第3サーチである。
【0060】
このように、サーチ部110は、第1サーチにおいて、第1位置P1から第1ワークW10までの第1距離dv1を取得し、第2サーチにおいて、第1位置P1と所定距離dh0離れて位置する第2位置P2から第1ワークW10までの第2距離dv2を取得する。そして、傾き算出部120は、第1距離dv1、所定距離dh0及び第2距離dv2に基づいて、第1ワークW10の傾きαを算出する。さらに、サーチ部110は、第3サーチにおいて、第1ワークW10の傾きαに沿って接触式センサ22を移動させることによって第2ワークW20をサーチし、確実に当該第2ワークW20を検出している。
【0061】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る溶接位置検出装置100及び溶接位置検出方法300によれば、接触式センサ22は、第1ワークW10に対して意図しない接触となる誤検出、及び第2ワークW20を検出できないという空振りを回避することができる。つまり、第1ワークW10が傾いている場合であっても、溶接位置の誤検出を低減することができる。
【0062】
なお、上述したステップS307では、傾き算出部120は、第1距離dv1、所定距離dh0及び第2距離dv2に基づいて、第1ワークW10の傾きαを算出していたが、これに限定されるものではなく、例えば、接触式センサ22と第1ワークW10との接触点における座標値を取得し、当該座標値に基づいて傾きαを算出しても構わない。
【0063】
図5は、本発明の第1実施形態に係る溶接位置検出装置100において、傾き算出部120が座標値に基づいて、第1ワークの傾きを算出する様子を示す図である。図5において、サーチ部110は、ステップS302において、接触式センサ22と第1ワークW10との接触点Aにおける第1座標値を取得し、ステップS306において、接触式センサ22と第1ワークW10との接触点Bにおける第2座標値を取得する。
【0064】
ここで、サーチ方向へのベクトルXは、予め教示済みであるとするが、ベクトルYは、第2座標値-第1座標値により算出することができる。そうすれば、第1ワークW10の傾きαは、ベクトルX及びベクトルYを用いて、α=cos-1((X・Y)/(|X||Y|))により算出することができる。
【0065】
このように、必ずしも第1距離dv1及び第2距離dv2を取得しなくても、傾き算出部120は、接触点Aにおける第1座標値及び接触点Bにおける第2座標値に基づいて、第1ワークW10の傾きαを算出することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、ステップS304では、サーチ部110は、接触式センサ22を水平方向に移動させているが、正確に水平方向でなくても構わない。ステップS309では、第1ワークW10の傾きαに沿って接触式センサ22を移動させることによって、ステップS310では、接触式センサ22を第2ワークW20に対して垂直に接触させて検出することができる。換言すれば、接触式センサ22を第2ワークW20に対して垂直に接触させるために第1ワークW10の傾きαを算出できれば、ステップS304における接触式センサ22の移動は、正確に水平方向でなくても構わない。例えば、概ね水平方向である略水平方向であっても構わない。これにより、作業者は、接触式センサ22を正確に水平方向に移動させるための厳密な設定をする必要がなく、教示工数が低減され、結果的に、生産性の向上に繋がる。
【0067】
また、同様に、ステップS301及びS305における接触式センサ22の移動は、正確に鉛直方向でなくても構わない。ただし、第1ワークW10の傾きの程度によっては、接触式センサ22を移動させる際に、意図しない接触が発生したり、傾きを正確に算出できなかったりする場合があるため、これらの問題が発生しない場合及び範囲において、例えば、概ね鉛直方向である略鉛直方向であっても構わない。
【0068】
さらに、本実施形態では、サーチ部110は、ステップS302において第1ワークW10を検出した後、ステップS303及びS304において、接触式センサ22を、一旦、第1位置P1を介して第2位置P2まで移動させているが、当該第1位置P1を介さずに、直接、第2位置P2まで移動させても構わない。この場合、接触式センサ22は、第1ワークW10に接触した後、最短距離で第2位置P2まで移動できるため、処理の高速化を図ることができる。
【0069】
また、本実施形態では、ステップS308では、接触式センサ22を第1ワークW10対して垂直方向に退避させているが、これに限定されるものではなく、例えば、ステップS303と同様に、サーチ方向と反対方向に退避させても構わない。この場合、ステップS307における第1ワークW10の傾きαの算出結果に影響されることなく、簡易に高速処理ができる。
【0070】
なお、本実施形態では、重ね継手を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、すみ肉継手等、その他の溶接継手に適用することができる。
【0071】
<第2実施形態>
本発明の第1実施形態では、第1サーチ及び第2サーチにおいて、ワークを鉛直方向に2回サーチすることで第1ワークW10の傾きαを算出し、適切に溶接位置を検出していたが、本発明の第2実施形態では、ワークを水平方向に2回サーチすることでワークの傾きを算出し、適切に溶接位置を検出する溶接位置検出方法について説明する。なお、本発明の第2実施形態に係る溶接位置検出装置の構成は、図2に示された溶接位置検出装置100の構成と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0072】
図6は、本発明の第2実施形態に係る溶接位置検出装置100が実行する溶接位置検出方法500を示すフローチャートであり、図7は、本発明の第2実施形態に係る溶接位置検出装置100において、接触式センサにより第1ワークおよび第2ワークがサーチされる様子を示す図である。なお、以下、明細書中に示される(1)~(6)は、図7に示される丸付き数字1~6に対応する。
【0073】
図6において、溶接位置検出方法500はステップS501~S510を含み、各ステップは溶接位置検出装置100に含まれるプロセッサによって実行される。また、ここでは、図7に示されるように、第1ワークW11と第2ワークW21とが直交するように配置されて溶接される場合であって、所謂、すみ肉継手を例に挙げて説明する。
【0074】
ステップS501では、サーチ部110は、第1位置Q1から水平方向に接触式センサ22(溶接トーチ21)を移動させて、第1ワークW11をサーチする(1)。
【0075】
ステップS502では、サーチ部110における接触検出部111は、接触式センサ22(溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤ)と第1ワークW11との接触を検出する。これにより、サーチ部110は、接触式センサ22の移動距離に基づいて、第1位置Q1から第1ワークW11までの第1距離dh1を取得する。
【0076】
ステップS501及びS502は、第1位置Q1から水平方向に第1ワークW11をサーチして第1距離dh1を取得するための第1サーチである。
【0077】
ステップS503では、サーチ部110は、ステップS501でのサーチ方向と反対方向に第1距離dh1だけ接触式センサ22を移動させる(2)。より詳細には、サーチ部110は、ステップS501及びS502において移動させた接触式センサ22をサーチ方向と真逆方向に第1距離dh1だけ移動させて、当該接触式センサ22を第1位置Q1まで戻す。なお、サーチ方向は、水平方向かつ第1ワークW11に対して近づく方向であり、サーチ方向と反対方向とは、水平方向かつ第1ワークW11に対して離れる方向である。
【0078】
ここで、サーチ部110は、第1サーチの後処理として、接触式センサ22と第1ワークW11とを接触させた後、サーチ方向と反対方向に接触式センサ22を退避させている。実際に、第1ワークW11と接触するのは、溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤであり、当該溶接ワイヤには、接触による負担が掛かる場合がある。そこで、接触した後、接触したサーチ方向と真逆方向に退避させることによって、接触による溶接ワイヤ等に掛かる負担を軽減し、当該溶接ワイヤ等が曲がったりすることを防止している。
【0079】
また、サーチ部110は、接触式センサ22を第1距離dh1だけ移動させて、第1位置Q1まで戻している。仮に、第1ワークW11が相当程度傾いていた場合、次のステップS504で接触式センサ22を鉛直方向に移動させれば、第1ワークW11に意図しない接触が発生する恐れがあるため、第1ワークW11に対して十分な距離を確保している。第1位置Q1は、サーチ開始位置として、第1ワークW11と意図しない接触が発生することがないように、第1ワークW11に対して十分な距離が確保された位置に設定されている。
【0080】
換言すれば、サーチ部110は、接触式センサ22を第1位置Q1に戻さなくてもよく、第1距離dh1よりも大きい距離を移動させて、第1ワークW11に対して十分な距離を確保しても構わない。また、接触式センサ22を鉛直方向に移動させた際に、第1ワークW11に意図しない接触を回避することができれば、第1距離dh1よりも小さい距離だけ、接触式センサ22を移動させても構わない。
【0081】
ステップS504では、サーチ部110は、鉛直方向に所定距離dv0だけ離れた第2位置Q2まで接触式センサ22を移動させる(3)。
【0082】
ここで、サーチ部110は、接触式センサ22を鉛直方向に移動させるとしているが、これは、第2ワークW21に対して離れる方向(近づく方向)であり、典型的には、第1ワークW11と第2ワークW21との溶接線位置に対して離れる方向(近づく方向)である。第1位置Q1と第2位置Q2とが溶接線位置に対して離れる方向(近づく方向)に位置することにより、当該方向に対する第1ワークW11の傾きを算出することができるようになる。その結果、接触式センサ22は、第1ワークに接触する誤検出、及び第2ワークを検出できないという空振りを確実に回避することができる。
【0083】
さらに、サーチ部110は、接触式センサ22を、第2ワークW21に近づく方向に移動させれば、第2ワークW21に意図しない接触が発生する恐れがあるため、第2ワークW21に近づく方向よりも離れる方向に移動させる方がより好ましい。
【0084】
ステップS505では、サーチ部110は、第2位置Q2から、再び、水平方向に接触式センサ22を移動させて、第1ワークW11をサーチする(4)。
【0085】
ステップS506では、サーチ部110における接触検出部111は、接触式センサ22(溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤ)と第1ワークW11との接触を検出する。これにより、サーチ部110は、接触式センサ22の移動距離に基づいて、第2位置Q2から第1ワークW11までの第2距離dh2を取得する。
【0086】
ステップS505及びS506は、第2位置Q2から水平方向に第1ワークW11をサーチして第2距離dh2を取得するための第2サーチである。
【0087】
ステップS507では、傾き算出部120は、第1距離dh1、所定距離dv0及び第2距離dh2に基づいて、第1ワークW11の傾きβを算出する。ここでは、傾きβ=(第1距離dh1-第2距離dh2)/所定距離dv0により算出することができる。
【0088】
ステップS508では、サーチ部110は、接触式センサ22と第1ワークW11とを接触させた後、傾き算出部120によって算出された第1ワークW11の傾きβに基づいて、当該第1ワークW11に対して垂直方向に距離d2だけ当該接触式センサ22を移動させる(5)。
【0089】
ここで、サーチ部110は、第2サーチの後処理として、接触式センサ22と第1ワークW11とを接触させた後、当該第1ワークW11に対して垂直方向に接触式センサ22を退避させている。実際に、第1ワークW11と接触するのは、溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤであり、当該溶接ワイヤには、接触による負担が掛かる場合がある。そこで、接触した後、第1ワークW11に対して垂直方向に退避させることによって、接触による溶接ワイヤ等に掛かる負担を軽減し、当該溶接ワイヤ等が曲がったりすることを防止している。
【0090】
また、サーチ部110は、接触式センサ22を距離d2だけ移動させている。ここで、距離d2は、小さ過ぎると、測定誤差や算出誤差及び第1ワークW11の表面上に凹凸等があれば、後述するステップS509において接触式センサ22が移動する際に、第1ワークW11に誤って接触する可能性がある。一方、距離d2が大き過ぎると、後述するステップS510において接触式センサ22が第2ワークW21と接触できず、空振りしてしまう可能性がある。したがって、ここでは、距離d2は、第2ワークW21の端からはみ出ない範囲であって、ステップS509において接触式センサ22が移動する際に、第1ワークW11に誤って接触しない程度の距離を保持できるように設定されるとよい。
【0091】
ステップS509では、サーチ部110は、ステップS507において傾き算出部120によって算出された第1ワークW11の傾きβに沿って接触式センサ22を移動させて、第2ワークW21をサーチする(6)。
【0092】
ステップS510では、サーチ部110における接触検出部111は、接触式センサ22(溶接トーチ21の先端から突き出した溶接ワイヤ)と第2ワークW21との接触を検出する。これにより、サーチ部110は、接触式センサ22の移動距離に基づいて、第2ワークW21までの距離を取得する。これは、第1ワークW11の傾きβに沿って第2ワークW21をサーチして当該第2ワークW21までの距離を取得するための第3サーチである。
【0093】
このように、サーチ部110は、第1サーチにおいて、第1位置Q1から第1ワークW11までの第1距離dh1を取得し、第2サーチにおいて、第1位置Q1と所定距離dv0離れて位置する第2位置Q2から第1ワークW11までの第2距離dh2を取得する。そして、傾き算出部120は、第1距離dh1、所定距離dv0及び第2距離dh2に基づいて、第1ワークW11の傾きβを算出する。さらに、サーチ部110は、第3サーチにおいて、第1ワークW11の傾きβに沿って接触式センサ22を移動させることによって第2ワークW21をサーチし、確実に当該第2ワークW21を検出している。
【0094】
以上のように、本発明の第2実施形態に係る溶接位置検出装置100及び溶接位置検出方法500によれば、接触式センサ22は、第1ワークW11に対して意図しない接触となる誤検出、及び第2ワークW21を検出できないという空振りを回避することができる。つまり、第1ワークW11が傾いている場合であっても、溶接位置の誤検出を低減することができる。
【0095】
なお、第1実施形態において図5を用いて説明したように、本実施形態でも、傾き算出部120は、ステップS502及びステップS506において、接触式センサ22と第1ワークW11との接触点における座標値をそれぞれ取得し、当該座標値に基づいて傾きβを算出しても構わない。これにより、必ずしも第1距離dh1及び第2距離dh2を取得しなくても、傾き算出部120は、接触式センサ22と第1ワークW11との接触点における座標値に基づいて、第1ワークW11の傾きβを算出することができる。
【0096】
なお、本実施形態では、ステップS504では、サーチ部110は、接触式センサ22を鉛直方向に移動させているが、正確に鉛直方向でなくても構わない。ステップS509では、第1ワークW11の傾きβに沿って接触式センサ22を移動させることによって、ステップS510では、接触式センサ22を第2ワークW21に対して垂直に接触させて検出することができる。換言すれば、接触式センサ22を第2ワークW21に対して垂直に接触させるために第1ワークW11の傾きβを算出できれば、ステップS504における接触式センサ22の移動は、正確に鉛直方向でなくても構わない。例えば、概ね鉛直方向である略鉛直方向であっても構わない。これにより、作業者は、接触式センサ22を正確に鉛直方向に移動させるための厳密な設定をする必要がなく、教示工数が低減され、結果的に、生産性の向上に繋がる。
【0097】
また、同様に、ステップS501及びS505における接触式センサ22の移動は、正確に水平方向でなくても構わない。ただし、第1ワークW11の傾きの程度によっては、接触式センサ22を移動させる際に、意図しない接触が発生したり、傾きを正確に算出できなかったりする場合があるため、これらの問題が発生しない場合及び範囲において、例えば、概ね水平方向である略水平方向であっても構わない。
【0098】
さらに、本実施形態では、サーチ部110は、ステップS502において第1ワークW11を検出した後、ステップS503及びS504において、接触式センサ22を、一旦、第1位置Q1を介して第2位置Q2まで移動させているが、当該第1位置Q1を介さずに、直接、第2位置Q2まで移動させても構わない。この場合、接触式センサ22は、第1ワークW11に接触した後、最短距離で第2位置Q2まで移動できるため、処理の高速化を図ることができる。
【0099】
また、本実施形態では、ステップS508では、接触式センサ22を第1ワークW11対して垂直方向に退避させているが、これに限定されるものではなく、例えば、ステップS503と同様に、サーチ方向と反対方向に退避させても構わない。この場合、ステップS507における第1ワークW11の傾きβの算出結果に影響されることなく、簡易に高速処理ができる。
【0100】
なお、本実施形態では、すみ肉継手を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、重ね継手等、その他の溶接継手に適用することができる。
【0101】
<その他>
本発明の第1実施形態では、サーチ部110は、接触式センサ22を鉛直方向に移動させて第1ワークW10を2回サーチし、本発明の第2実施形態では、サーチ部110は、接触式センサ22を水平方向に移動させて第1ワークW11を2回サーチした。これにより、水平面及び鉛直面を基準として第1ワークW10及び第1ワークW11が傾いていたとしても、適切に第2ワークW20及び第2ワークW21を検出していた。ここで、サーチ方向は、典型的には、鉛直方向と水平方向であるが、これらに限定されるものではなく、例えば、略鉛直方向及び略水平方向等も含む任意の方向をサーチ方向として設定し、適用することもできる。
【0102】
また、従来では、接触式センサを用いて溶接位置を検出する溶接位置検出装置は、ワークの傾きへの対応として適用することは困難であったが、本発明によれば、ワークが傾いていた場合であっても適用することができ、適用範囲の拡大に繋がると言える。
【0103】
以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。各実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0104】
10…ロボットシステム、20…溶接ロボット、21…溶接トーチ、22…接触式センサ、30…ティーチペンダント、40…ロボット制御装置、50…電源、100…溶接位置検出装置、110…サーチ部、111…接触検出部、112…電圧印加指令部、120…傾き算出部、130…制御部、300,500…溶接位置検出方法、S301~S310…溶接位置検出方法300の各ステップ、S501~S510…溶接位置検出方法300の各ステップ、W10,W11…第1ワーク、W20,W21…第2ワーク、P1,Q1…第1位置、P2,Q2…第2位置、dh1,dv1…第1距離、dh2,dv2…第2距離、dh0,dv0…所定距離、d1,d2…垂直方向の距離、α,β…傾き、A,B…接触点、X,Y…ベクトル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7