(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B41J2/14 611
(21)【出願番号】P 2020162449
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲右
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-030144(JP,A)
【文献】特開2004-130688(JP,A)
【文献】特開2011-148232(JP,A)
【文献】特開2015-125371(JP,A)
【文献】国際公開第2012/141008(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 29/00 - 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記液体を噴射する噴射部と、
前記液体を噴射させるための駆動信号を前記噴射部に対して出力する、1または複数の駆動基板と
を備え、
前記駆動基板は、
前記液体噴射ヘッドの外部から伝送される伝送データが入力される、第1および第2の入力端子と、
前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との間において互いに直列配置されており、前記第1および第2の入力端子のうちの一方の入力端子を介して入力された前記伝送データに基づいて、前記駆動信号を生成する、複数の駆動デバイスと、
前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との間において、互いに直列配置された前記複数の駆動デバイスを介して配置されており、前記伝送データを伝送する複数の伝送線路と、
前記複数の伝送線路上に配置された複数の終端抵抗と
を備え、
前記複数の駆動デバイスはそれぞれ、前記伝送データを入力または出力する、第1および第2の入出力部を有していると共に、
前記複数の駆動デバイスが、
直列配置のうちの一端に位置する第1の駆動デバイスと、
前記直列配置のうちの他端に位置する第2の駆動デバイスと
を含んでおり、
前記複数の伝送線路が、
前記第1の入力端子と、前記第1の駆動デバイスにおける前記第1の入出力部との間を接続する、第1の伝送線路と、
前記第2の入力端子と、前記第2の駆動デバイスにおける前記第2の入出力部との間を接続する、第2の伝送線路と、
前記第1の駆動デバイスにおける前記第2の入出力部と、前記第2の駆動デバイスにおける前記第1の入出力部との間を接続する、1または複数の第3の伝送線路と
を含んでおり、
前記複数の終端抵抗が、
前記第1の伝送線路上において、前記第1の駆動デバイスにおける前記第1の入出力部の近傍に配置された、第1の終端抵抗と、
前記第2の伝送線路上において、前記第2の駆動デバイスにおける前記第2の入出力部の近傍に配置された、第2の終端抵抗と、
前記1または複数の第3の伝送線路上の各々において、一端付近および他端付近のうちの一方に配置された、第3の終端抵抗と
を含んでいる
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記複数の駆動デバイスが、前記直列配置において前記第1および第2の駆動デバイスの間に位置する、1または複数の第3の駆動デバイスを、更に含んでいると共に、
前記複数の第3の伝送線路は、前記第1の駆動デバイスにおける前記第2の入出力部と、前記第2の駆動デバイスにおける前記第1の入出力部との間を、前記1または複数の第3の駆動デバイスを介して接続しており、
前記複数の第3の伝送線路上の各々における前記第3の終端抵抗が、前記第1の駆動デバイス側の端部付近と前記第2の駆動デバイス側の端部付近とで、交互に配置されている
請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記1または複数の第3の伝送線路における線路長がそれぞれ、前記伝送データの伝送周波数から求められる信号波長の、1/4未満の値となっている
請求項1または請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第1ないし第3の終端抵抗のうちの少なくとも1つが、前記駆動デバイスの内部に設けられている
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置が様々な分野に利用されており、液体噴射ヘッドとしては、各種方式のものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液体噴射ヘッドでは一般に、製造コストや消費電力を低減することが、求められている。製造コストおよび消費電力の双方を低減することが可能な、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する噴射部と、液体を噴射させるための駆動信号を噴射部に対して出力する1または複数の駆動基板と、を備えたものである。上記駆動基板は、液体噴射ヘッドの外部から伝送される伝送データが入力される第1および第2の入力端子と、第1の入力端子と第2の入力端子との間において互いに直列配置されており、第1および第2の入力端子のうちの一方の入力端子を介して入力された伝送データに基づいて上記駆動信号を生成する、複数の駆動デバイスと、第1の入力端子と第2の入力端子との間において、互いに直列配置された複数の駆動デバイスを介して配置されており、上記伝送データを伝送する複数の伝送線路と、これらの複数の伝送線路上に配置された複数の終端抵抗と、を備えている。上記複数の駆動デバイスはそれぞれ、上記伝送データを入力または出力する第1および第2の入出力部を有している。上記複数の駆動デバイスは、直列配置のうちの一端に位置する第1の駆動デバイスと、直列配置のうちの他端に位置する第2の駆動デバイスと、を含んでいる。上記複数の伝送線路は、上記第1の入力端子と上記第1の駆動デバイスにおける上記第1の入出力部との間を接続する第1の伝送線路と、上記第2の入力端子と上記第2の駆動デバイスにおける上記第2の入出力部との間を接続する第2の伝送線路と、上記第1の駆動デバイスにおける上記第2の入出力部と上記第2の駆動デバイスにおける上記第1の入出力部との間を接続する、1または複数の第3の伝送線路と、を含んでいる。上記複数の終端抵抗は、上記第1の伝送線路上において、上記第1の駆動デバイスにおける上記第1の入出力部の近傍に配置された第1の終端抵抗と、上記第2の伝送線路上において、上記第2の駆動デバイスにおける上記第2の入出力部の近傍に配置された第2の終端抵抗と、上記1または複数の第3の伝送線路上の各々において、一端付近および他端付近のうちの一方に配置された第3の終端抵抗と、を含んでいる。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置によれば、製造コストおよび消費電力の双方を、低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射装置の概略構成例を表すブロック図である。
【
図2】
図1に示した液体噴射ヘッドの概略構成例を模式的に表す斜視図である。
【
図3】
図2に示した液体噴射ヘッドの構成例を模式的に表す断面図である。
【
図4A】
図2,
図3に示したフレキシブル基板の詳細構成例を模式的に表す平面図である。
【
図4B】
図2,
図3に示した他のフレキシブル基板の詳細構成例を模式的に表す平面図である。
【
図5】
図4Aに示したフレキシブル基板内での各部材の配置構成例を表す模式図である。
【
図6】
図4Bに示した他のフレキシブル基板内での各部材の配置構成例を表す模式図である。
【
図7A】伝送線路における一般的な終端抵抗の配置構成例を表す回路図である。
【
図7B】伝送線路における一般的な終端抵抗の他の配置構成例を表す回路図である。
【
図7C】伝送線路における一般的な終端抵抗の他の配置構成例を表す回路図である。
【
図8A】伝送線路における一般的な終端抵抗の他の配置構成例を表す回路図である。
【
図8B】伝送線路における一般的な終端抵抗の他の配置構成例を表す回路図である。
【
図9】変形例1に係る液体噴射ヘッドにおけるフレキシブル基板内での各部材の配置構成例を表す模式図である。
【
図10】変形例2に係る液体噴射ヘッドにおけるフレキシブル基板内での各部材の配置構成例を表す模式図である。
【
図11】変形例3に係る液体噴射ヘッドにおけるフレキシブル基板内での各部材の配置構成例を表す模式図である。
【
図12A】変形例4に係る駆動デバイスにおける終端抵抗の配置構成例を表す模式図である。
【
図12B】変形例4に係る駆動デバイスにおける終端抵抗の他の配置構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(駆動デバイスおよび伝送線路と終端抵抗との配置構成例)
2.変形例1~4(終端抵抗の他の配置構成例)
3.その他の変形例
【0010】
<1.実施の形態>
[プリンタ5の概略構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ5の概略構成例を、ブロック図で表したものである。
図2は、
図1に示した液体噴射ヘッドとしてのインクジェットヘッド1の概略構成例を、模式的に斜視図で表したものである。
図3は、
図2に示したインクジェットヘッド1の構成例を、模式的に断面図(Y-Z断面図)で表したものである。
【0011】
なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
プリンタ5は、後述するインク9を利用して、被記録媒体(例えば、
図1中に示した記録紙P)に対し、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。このプリンタ5は、
図1に示したように、インクジェットヘッド1、印刷制御部2およびインクタンク3を備えている。
【0013】
なお、インクジェットヘッド1は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応し、プリンタ5は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。また、インク9は、本開示における「液体」の一具体例に対応している。
【0014】
(A.印刷制御部2)
印刷制御部2は、インクジェットヘッド1に対して、各種の情報(データ)を供給するものである。具体的には
図1に示したように、印刷制御部2は、インクジェットヘッド1内(後述する駆動デバイス41等)に対してそれぞれ、印刷制御信号Scを供給するようになっている。
【0015】
なお、この印刷制御信号Scには、例えば、画像データ、吐出タイミング信号、および、インクジェットヘッド1を動作させるための電源電圧等が、含まれるようになっている。
【0016】
(B.インクタンク3)
インクタンク3は、インク9を内部に収容するタンクである。このインクタンク3内のインク9は、
図1に示したように、インク供給管30を介して、インクジェットヘッド1内(後述する噴射部11)へと供給されるようになっている。なお、このようなインク供給管30は、例えば、可撓性を有するフレキシブルホースにより構成されている。
【0017】
(C.インクジェットヘッド1)
インクジェットヘッド1は、
図1中の破線の矢印で示したように、後述する複数のノズル孔Hnから記録紙Pに対して液滴状のインク9を噴射(吐出)して、画像や文字等の記録を行うヘッドである。このインクジェットヘッド1は、例えば
図2,
図3に示したように、1つの噴射部11と、1つのI/F(インターフェース)基板12と、4つのフレキシブル基板13a,13b,13c,13dと、2つの冷却ユニット141,142とを、備えている。
【0018】
(C-1.I/F基板12)
I/F基板12は、
図2,
図3に示したように、2つのコネクタ10と、4つのコネクタ120a,120b,120c,120dと、回路配置領域121とを、備えている。
【0019】
コネクタ10は、
図2に示したように、印刷制御部2からインクジェットヘッド1(後述する各フレキシブル基板13a,13b,13c,13d)へ向けて供給される、前述した印刷制御信号Scを入力する部分(コネクタ部分)である。
【0020】
コネクタ120a,120b,120c,120dはそれぞれ、I/F基板12と、フレキシブル基板13a,13b,13c,13dとの間をそれぞれ、電気的に接続する部分(コネクタ部分)である。
【0021】
回路配置領域121は、I/F基板12上において各種の回路が配置されている領域である。なお、I/F基板12上の他の領域にも、このような回路配置領域が設けられているようにしてもよい。
【0022】
(C-2.噴射部11)
噴射部11は、
図1に示したように、複数のノズル孔Hnを有しており、これらのノズル孔Hnからインク9を噴射する部分である。このようなインク9の噴射は、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13d上の後述する駆動デバイス41から供給される駆動信号Sd(駆動電圧Vd)に従って、行われるようになっている(
図1参照)。
【0023】
このような噴射部11は、
図1に示したように、アクチュエータプレート111およびノズルプレート112を含んで構成されている。
【0024】
(ノズルプレート112)
ノズルプレート112は、ポリイミド等のフィルム材または金属材料により構成されたプレートであり、
図1に示したように、上記した複数のノズル孔Hnを有している。これらのノズル孔Hnは、所定の間隔をおいて並んで形成されており、例えば円形状となっている。
【0025】
具体的には、
図2に示した噴射部11の例では、ノズルプレート112内における複数のノズル孔Hnが、列方向(X軸方向)に沿ってそれぞれ配置された、複数のノズル列(4つのノズル列)により構成されている。また、これらの4つのノズル列同士は、列方向と直交する方向(Y軸方向)に沿って、並んで配置されている。
【0026】
(アクチュエータプレート111)
アクチュエータプレート111は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。このアクチュエータプレート111には、複数のチャネル(圧力室)が設けられている。これらのチャネルは、インク9に対して圧力を印加するための部分であり、所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルは、圧電体からなる駆動壁(不図示)によってそれぞれ画成されており、断面視にて凹状の溝部となっている。
【0027】
このようなチャネルには、インク9を吐出させるための吐出チャネルと、インク9を吐出させないダミーチャネル(非吐出チャネル)とが、存在している。言い換えると、吐出チャネルにはインク9が充填される一方、ダミーチャネルにはインク9が充填されないようになっている。なお、各吐出チャネルに対するインク9の充填は、例えば、そのような各吐出チャネルに共通して連通する流路(共通流路)を介して、行われるようになっている。また、各吐出チャネルは、ノズルプレート112におけるノズル孔Hnと個別に連通している一方、各ダミーチャネルは、ノズル孔Hnには連通しないようになっている。これらの吐出チャネルとダミーチャネルとは、前述した列方向(X軸方向)に沿って、交互に並んで配置されている。
【0028】
また、上記した駆動壁における対向する内側面にはそれぞれ、駆動電極が設けられている。この駆動電極には、吐出チャネルに面する内側面に設けられたコモン電極(共通電極)と、ダミーチャネルに面する内側面に設けられたアクティブ電極(個別電極)とが、存在している。これらの駆動電極と、後述する駆動デバイス41との間は、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dを介して、電気的に接続されている。これにより、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dを介して、駆動デバイス41から各駆動電極に対し、前述した駆動電圧Vd(駆動信号Sd)が印加されるようになっている(
図1参照)。
【0029】
(C-3.フレキシブル基板13a,13b,13c,13d)
フレキシブル基板13a,13b,13c,13dはそれぞれ、
図2,
図3に示したように、I/F基板12と噴射部11との間を電気的に接続する基板である。これらのフレキシブル基板13a,13b,13c,13dはそれぞれ、前述したノズルプレート112における4列のノズル列ごとのインク9の噴射動作を、個別に制御するようになっている。また、例えば
図3中の符号P1a,P1b,P1c,P1dにて示したように、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dが噴射部11と接続する箇所付近(圧着電極433付近)では、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dが、折り曲げられるようになっている。なお、圧着電極433と噴射部11との間は、例えばACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電フィルム)を用いた熱圧着によって、互いに電気的接続がなされるようになっている。
【0030】
このようなフレキシブル基板13a,13b,13c,13d上にはそれぞれ、駆動デバイス41が個別に実装されている(
図3参照)。これらの駆動デバイス41はそれぞれ、噴射部11における対応するノズル列内のノズル孔Hnからインク9を噴射させるための、駆動信号Sd(駆動電圧Vd)を出力するデバイスである。したがって、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dからは、このような駆動信号Sdが、噴射部11に対して出力されるようになっている。なお、このような各駆動デバイス41は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成されている。
【0031】
また、これらの各駆動デバイス41は、前述した冷却ユニット141,142によって冷却されるようになっている。具体的には
図3に示したように、フレキシブル基板13a,13b上の駆動デバイス41同士の間に、冷却ユニット141が固定配置されており、この冷却ユニット141がこれらの駆動デバイス41に対してそれぞれ押し当てられることで、各駆動デバイス41が冷却されている。同様に、フレキシブル基板13c,13d上の駆動デバイス41同士の間に、冷却ユニット142が固定配置されており、この冷却ユニット142がこれらの駆動デバイス41に対してそれぞれ押し当てられることで、各駆動デバイス41が冷却されている。なお、このような冷却ユニット141,142はそれぞれ、各種方式の冷却機構を用いて構成することが可能である。
【0032】
[フレキシブル基板13a,13b,13c,13dの詳細構成]
続いて、
図1~
図3に加えて、
図4A,
図4B,
図5,
図6を参照して、前述したフレキシブル基板13a,13b,13c,13dの詳細構成例について、説明する。
【0033】
図4A,
図4Bは、
図2,
図3に示したフレキシブル基板13a~13dの詳細構成例を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したものである。具体的には、
図4Aは、フレキシブル基板13a,13cの平面構成例(Z-X平面構成例)を、
図4Bは、フレキシブル基板13b,13dの平面構成例(Z-X平面構成例)を、それぞれ示している。また、
図5は、
図4Aに示したフレキシブル基板13a,13c内での各部材の配置構成例を、模式的に表したものであり、
図6は、
図4Bに示したフレキシブル基板13b,13d内での各部材の配置構成例を、模式的に表したものである。
【0034】
まず、
図4A,
図4Bにそれぞれ示したように、これらのフレキシブル基板13a~13dにはそれぞれ、以下のような各部材が、設けられている。すなわち、接続電極130、第1入力端子Tin1、第2入力端子Tin2、第1伝送線路Lt1、第2伝送線路Lt2、第3伝送線路Lt31~Lt34、複数(この例では5つ)の駆動デバイス41、および、前述した圧着電極433が、設けられている。
【0035】
接続電極130は、各フレキシブル基板13a~13dにおけるI/F基板12側の端部領域に配置されており、各フレキシブル基板13a~13dとI/F基板12との間を、電気的に接続するための電極である。
【0036】
第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2にはそれぞれ、インクジェットヘッド1の外部(前述した印刷制御部2)から伝送される伝送データDt(前述した印刷制御信号Sc)が、入力されるようになっている(
図1,
図2,
図4A,
図4B参照)。また、このような伝送データDtは、第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2のうちの一方入力端子を介して、各フレキシブル基板13a~13d内に伝送されるようになっている。具体的には、例えば
図4Aに示したように、フレキシブル基板13a,13cではそれぞれ、第1入力端子Tin1を介して、伝送データDtが各フレキシブル基板13a,13c内に、伝送されるようになっている。一方、例えば
図4Bに示したように、フレキシブル基板13b,13dではそれぞれ、第2入力端子Tin2を介して、伝送データDtが各フレキシブル基板13b,13d内に、伝送されるようになっている。
【0037】
上記した5つの駆動デバイス41はそれぞれ、
図4A,
図4Bに示した例では、各フレキシブル基板13a~13d上(表面S1および裏面S2のうちの、表面S1側)に実装されている。このような5つの駆動デバイス41として、
図4A,
図4Bに示した例では、1つの第1駆動デバイス411と、1つの第2駆動デバイス415と、3つの第3駆動デバイス412~414とが、それぞれ設けられている。また、これら5つの駆動デバイス41は、第1入力端子Tin1と第2入力端子Tin2との間において、互いに直列配置(カスケード接続)されている。具体的には、
図4A,
図4Bに示したように、各フレキシブル基板13a~13dのいずれにおいても、第1入力端子Tin1側から第2入力端子Tin2側へ向けて、第1駆動デバイス411、第3駆動デバイス412~414、および、第2駆動デバイス415の順で、直列配置されている。換言すると、このような駆動デバイス41の直列配置のうちの一端に、第1駆動デバイス411が位置すると共に、この直列配置の他端に、第2駆動デバイス415が位置している。そして、これらの第1駆動デバイス411と第2駆動デバイス415との間に、複数(この例では3つ)の第3駆動デバイス412~414が位置している。これら5つの駆動デバイス41はそれぞれ、上記したように、第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2のうちの一方入力端子を介して入力された伝送データDtに基づいて、前述した駆動信号Sdを生成するようになっている。なお、このようにして生成された駆動信号Sdはそれぞれ、各フレキシブル基板13a~13d上の前述した圧着電極433を介して、噴射部11側へと供給されるようになっている。
【0038】
また、第1入力端子Tin1と第2入力端子Tin2との間には、互いに直列配置された5つの駆動デバイス41を介して、伝送データDtを伝送するための複数の伝送線路が配置されている。具体的には、
図4A,
図4Bに示したように、第1入力端子Tin1と第1駆動デバイス411との間には、第1伝送線路Lt1が配置され、第2入力端子Tin2と第2駆動デバイス415との間には、第2伝送線路Lt2が配置されている。また、第1駆動デバイス411と第3駆動デバイス412との間には、第3伝送線路Lt31が配置され、第3駆動デバイス412と第3駆動デバイス413との間には、第3伝送線路Lt32が配置されている。第3駆動デバイス413と第3駆動デバイス414との間には、第3伝送線路Lt33が配置され、第3駆動デバイス414と第2駆動デバイス415との間には、第3伝送線路Lt34が配置されている。
【0039】
ここで、上記したように、フレキシブル基板13a,13cとフレキシブル基板13b,13dとではそれぞれ、伝送データDtが入力される入力端子(第1入力端子Tin1または第2入力端子Tin2)が、互いに異なっている(
図4A,
図4B参照)。また、それに伴い、フレキシブル基板13a,13cとフレキシブル基板13b,13dとではそれぞれ、入力された伝送データDtにおける基板内での伝送方向が、互いに異なっている。すなわち、フレキシブル基板13a,13cではそれぞれ、第1入力端子Tin1から入力された伝送データDtが、第1駆動デバイス411、第3駆動デバイス412,413,414、および、第2駆動デバイス415の順に、伝送されるようになっている(
図4A参照)。一方、フレキシブル基板13b,13dではそれぞれ、第2入力端子Tin2から入力された伝送データDtが、第2駆動デバイス415、第3駆動デバイス414,413,412、および、第1駆動デバイス411の順に、伝送されるようになっている(
図4B参照)。
【0040】
このようにして、フレキシブル基板13a,13cとフレキシブル基板13b,13dとではそれぞれ、伝送データDtが入力される入力端子および伝送データDtの伝送データが、互いに異なっている。ただし、これらのフレキシブル基板13a,13cとフレキシブル基板13b,13dとではそれぞれ、基板の構造自体は互いに同一となっており、各フレキシブル基板13a~13dの構成が、共通化(共用)されている(
図4A,
図4B参照)。つまり、詳細は後述するが、伝送データDtの伝送方向等に応じて複数種類のフレキシブル基板(駆動基板)を用意する必要がなく、インクジェットヘッド1内において、1種類のフレキシブル基板(駆動基板)のみが、設けられていることになる。
【0041】
(終端抵抗の配置構成例)
ここで、
図5,
図6に示したように、上記した5つの駆動デバイス41(第1駆動デバイス411、第3駆動デバイス412~414および第2駆動デバイス415)はそれぞれ、伝送データDtの入出力(入力または出力)を行う、一対の入出力部(入出力端子)を有している。具体的には、これらの第1駆動デバイス411、第3駆動デバイス412~414および第2駆動デバイス415はそれぞれ、第1入出力部Tio1と、第2入出力部Tio2とを、有している。
【0042】
したがって、
図5,
図6に示したように、前述した第1伝送線路Lt1は、第1入力端子Tin1と、第1駆動デバイス411における第1入出力部Tio1との間を、接続するようになっている。また、第2伝送線路Lt2は、第2入力端子Tin2と、第2駆動デバイス415における第2入出力部Tio2との間を、接続するようになっている。また、4つの第3伝送線路Lt31~~Lt34は、第1駆動デバイス411における第2入出力部Tio2と、第2駆動デバイス415における第1入出力部Tio1との間を、3つの第3駆動デバイス412~414を介して、接続している。具体的には、第3伝送線路Lt31は、第1駆動デバイス411における第2入出力部Tio2と、第3駆動デバイス412における第1入出力部Tio1との間を、接続している。また、第3伝送線路Lt32は、第3駆動デバイス412における第2入出力部Tio2と、第3駆動デバイス413における第1入出力部Tio1との間を、接続している。第3伝送線路Lt33は、第3駆動デバイス413における第2入出力部Tio2と、第3駆動デバイス414における第1入出力部Tio1との間を、接続している。第3伝送線路Lt34は、第3駆動デバイス414における第2入出力部Tio2と、第2駆動デバイス415における第1入出力部Tio1との間を、接続している。
【0043】
そして、
図5,
図6に示したように、これら複数の伝送線路(第1伝送線路Lt1、第2伝送線路Lt2および第3伝送線路Lt31~Lt34)上には、以下のような複数の終端抵抗が配置されている。すなわち、第1伝送線路Lt1上において、第1駆動デバイス411における第1入出力部Tio1の近傍には、第1終端抵抗Rt1が配置されている。また、第2伝送線路Lt2上において、第2駆動デバイス415における第2入出力部Tio2の近傍には、第2終端抵抗Rt2が配置されている。
【0044】
また、4つの第3伝送線路Lt31~Lt34上の各々において、一端付近および他端付近のうちの一方には、第3終端抵抗Rt31~Rt34が配置されている。具体的には、
図5,
図6に示したように、第3伝送線路Lt31上の一端付近(第1駆動デバイス411側の端部付近)、つまり、第1駆動デバイス411における第2入出力部Tio2の近傍に、第3終端抵抗Rt31が配置されている。また、第3伝送線路Lt32上の他端付近(第2駆動デバイス415側の端部付近)、つまり、第3駆動デバイス413における第1入出力部Tio1の近傍に、第3終端抵抗Rt32が配置されている。第3伝送線路Lt33上の一端付近(第1駆動デバイス411側の端部付近)、つまり、第3駆動デバイス413における第2入出力部Tio2の近傍に、第3終端抵抗Rt33が配置されている。第3伝送線路Lt34上の他端付近(第2駆動デバイス415側の端部付近)、つまり、第2駆動デバイス415における第1入出力部Tio1の近傍に、第3終端抵抗Rt34が配置されている。このようにして、
図5,
図6の例では、4つの第3伝送線路Lt31~Lt34上の各々における第3終端抵抗Rt31~Rt34が、第1駆動デバイス411側の端部付近と、第2駆動デバイス415側の端部付近とで、交互に配置されるようになっている。
【0045】
なお、詳細は後述するが、一般的には、伝送線路上の送信端(出力端)側に終端抵抗を配置するのは、好ましい配置とは言えない。ただし、複数の駆動デバイス同士のカスケード接続用の伝送線路の長さ(線路長)が、比較的短いような場合には、終端抵抗の位置が、好ましい配置である受信端(入力端)側から若干ずれていても、ほぼ問題ないと言える。また、
図5,
図6の例では、第1入力端子Tin1側から伝送データDtが入力される場合(
図5)と、第2入力端子Tin2側から伝送データDtが入力される場合(
図6)とで、受信端側に配置された終端抵抗の数(2つ)と、送信端側に配置された終端抵抗の数(2つ)とがそれぞれ、互いに一致するようになっている。これにより、伝送データDtの入力方向(伝送方向)によって、伝送データDtの伝送品位に偏りが生じないようになっている。
【0046】
また、このような第3伝送線路Lt31~Lt34における線路長はそれぞれ、伝送データDtの伝送周波数ftから求められる信号波長λtの、1/4未満の値(L31~L34<λt×1/4)となっている。また、第3伝送線路Lt31~Lt34における線路長がそれぞれ、この信号波長λtの1/8未満の値(L31~L34<λt×1/8)になっているのが、より望ましい。これは、1/4という値は、90°の位相に相当し、この程度の短い伝送線路であれば、受信側の回路にて伝送エラーが起こらない程度の伝送品質が保つことが可能な、限界値であるからである。また、1/8という値は、45°の位相に相当するが、限界値である1/4の場合と比べて、位相シフトによる伝送品質の劣化がより抑えられるため、好ましいと言える。
【0047】
ここで、上記したフレキシブル基板13a~13dはそれぞれ、本開示における「駆動基板」の一具体例に対応している。また、第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2はそれぞれ、本開示における「第1の入力端子」および「第2の入力端子」の一具体例に対応している。また、第1入出力部Tio1および第2入出力部Tio2はそれぞれ、本開示における「第1の入出力部」および「第2の入出力部」の一具体例に対応している。また、第1駆動デバイス411は、本開示における「第1の駆動デバイス」の一具体例に対応し、第2駆動デバイス415は、本開示における「第2の駆動デバイス」の一具体例に対応し、第3駆動デバイス412~414はそれぞれ、本開示における「第3の駆動デバイス」の一具体例に対応している。また、第1伝送線路Lt1は、本開示における「第1の伝送線路」の一具体例に対応し、第2伝送線路Lt2は、本開示における「第2の伝送線路」の一具体例に対応し、第3伝送線路Lt31~Lt34はそれぞれ、本開示における「第3の伝送線路」の一具体例に対応している。また、第1終端抵抗Rt1は、本開示における「第1の終端抵抗」の一具体例に対応し、第2終端抵抗Rt2は、本開示における「第2の終端抵抗」の一具体例に対応し、第3終端抵抗Rt31~Rt34はそれぞれ、本開示における「第3の終端抵抗」の一具体例に対応している。
【0048】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ5の基本動作)
このプリンタ5では、以下のようなインクジェットヘッド1によるインク9の噴射動作を用いて、被記録媒体(記録紙P等)に対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。具体的には、本実施の形態のインクジェットヘッド1では、以下のようにして、せん断(シェア)モードを用いたインク9の噴射動作が行われる。
【0049】
まず、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13d上の駆動デバイス41はそれぞれ、噴射部11におけるアクチュエータプレート111内の前述した駆動電極(コモン電極およびアクティブ電極)に対し、駆動電圧Vd(駆動信号Sd)を印加する。具体的には、各駆動デバイス41は、前述した吐出チャネルを画成する一対の駆動壁に配置された各駆動電極に対し、駆動電圧Vdを印加する。これにより、これら一対の駆動壁がそれぞれ、その吐出チャネルに隣接するダミーチャネル側へ、突出するように変形する。
【0050】
このとき、駆動壁における深さ方向の中間位置を中心として、駆動壁がV字状に屈曲変形することになる。そして、このような駆動壁の屈曲変形により、吐出チャネルがあたかも膨らむように変形する。このように、一対の駆動壁での圧電厚み滑り効果による屈曲変形によって、吐出チャネルの容積が増大する。そして、吐出チャネルの容積が増大することにより、インク9が吐出チャネル内へ誘導されることになる。
【0051】
次いで、このようにして吐出チャネル内へ誘導されたインク9は、圧力波となって吐出チャネルの内部に伝播する。そして、ノズルプレート112のノズル孔Hnにこの圧力波が到達したタイミング(またはその近傍のタイミング)で、駆動電極に印加される駆動電圧Vdが、0(ゼロ)Vとなる。これにより、上記した屈曲変形の状態から駆動壁が復元する結果、一旦増大した吐出チャネルの容積が、再び元に戻ることになる。
【0052】
このようにして、吐出チャネルの容積が元に戻る過程で、吐出チャネル内部の圧力が増加し、吐出チャネル内のインク9が加圧される。その結果、液滴状のインク9が、ノズル孔Hnを通って外部へと(記録紙Pへ向けて)吐出される(
図1参照)。このようにしてインクジェットヘッド1におけるインク9の噴射動作(吐出動作)がなされ、その結果、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作が行われる。
【0053】
(B.インクジェットヘッド1における作用・効果)
続いて、本実施の形態のインクジェットヘッド1における作用および効果について、従来の一般的な終端抵抗の構成例(
図7A~
図7C,
図8A,
図8B)と比較しつつ、詳細に説明する。
【0054】
(B-1.一般的な終端抵抗の構成例について)
図7A~
図7Cおよび
図8A,
図8Bはそれぞれ、伝送線路における一般的な終端抵抗の配置構成例を、回路図で表したものである。
【0055】
まず、インクジェットプリンタの内部では、近年、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)のような、高速差動伝送が多く使われるようになっている。このため、狭いインクジェットヘッド内にて、いかに効率的に高速差動線路を引き回すかといったことは、重要である。その際に生じる問題として、そのような高速差動線路上への終端抵抗の配置方法が挙げられる。
【0056】
近年では、双方向伝送に対応可能、すなわち、1つのポートを受信端(入力端)としても送信端(出力端)としても使用することが可能な、デバイスが存在する。このような双方向伝送が可能なデバイスは、インクジェットヘッド内部のように小型化が求められる回路では、基板上の部品や配線密度を上げるのに適しており、非常に貴重なものである。従来の一般的なインクジェットヘッドでは、このような双方向伝送が可能な駆動デバイスを使用し、これらの駆動デバイス同士のカスケード接続(直列接続)を簡略化して、回路集積度の向上を行ってきた。
【0057】
しかし、近年のインクジェットヘッドでは、印刷時の生産効率向上を図るため、印刷データを伝送する際の高速化が求められ、それに伴い、上記したような高速差動伝送が必要となってきている。このような高速作動伝送には、上記したLVDSに加えてCML(Current Mode Logic)等の、様々な伝送方法が知られており、基本的には、高速差動線路の特性インピーダンスと同じ値の終端抵抗が、受信端(入力端)に配置されるようになっている。
【0058】
具体的には、例えば
図7Aに示したように、デバイス100内の送信端101とデバイス200内の受信端202との間に、高速差動線路としての差動線路300が接続されている場合、この受信端202の入力側に、終端抵抗Rtが配置されるようになっている。また、
図7Bに示した例では、デバイス200の内部において、そのような受信端202の入力部に、終端抵抗Rtが配置されている。
【0059】
ここで、例えば特許文献1に記載されているような、いわゆる「マルチドロップ」型の伝送方式(1つの送信端から複数の受信端に対してLVDS伝送を行う方式)では、複数の受信端のうちの1つの受信端に対してのみ、終端抵抗が配置されるようになっている。これは、全ての受信端に対して終端抵抗を配置すると、終端抵抗値が低くなり、受信側のデバイスに大負荷が生じてしまうためである。ただし、そのようにして、1つの受信端に対してのみ終端抵抗が配置されていると、この終端抵抗から相対的に遠い位置の受信端では、高周波信号の反射が起こり、デジタル信号波形の品質が悪くなることから、例えばH(High)/L(Low)判定の誤りに起因した、伝送エラーが生じ易くなってしまう。また、これを解決するためには、終端抵抗やデバイスの配置自由度を、大幅に低下させてしまうことになる。
【0060】
このため、インクジェットヘッド内のデバイス(駆動デバイス)では、複数の駆動デバイスに対してデータ伝送を行う際に、LVDSを用いて伝送された入力データを後段の駆動デバイスに対して出力する、前述したカスケード接続が行われる場合がある。このようなカスケード接続を行うことで、上記した「マルチドロップ型」のような終端抵抗の問題は、解決されるように思われる。
【0061】
しかしながら、このカスケード接続の場合にも、課題はある。具体的には、例えば、インクジェットヘッドでは一般に、駆動デバイスによって動作させるノズル列が複数存在する場合が多いことから、これら複数のノズル列を駆動するための基板(駆動基板)も、複数必要になることが多い。また、このような場合、複数の駆動基板はそれぞれ、例えば、インクジェットヘッド内の金属部材(冷却ユニット等)に対して、表裏が逆に配置されることが多い。ちなみに、
図3を用いて前述したように、本実施の形態のインクジェットヘッド1においても、複数の駆動基板としての、フレキシブル基板13a,13cとフレキシブル基板13b,13dとがそれぞれ、冷却ユニット141,142に対して、表裏が逆に配置されている。
【0062】
そして、このような場合、例えば前述した
図4A,
図4Bのように、カスケード接続された複数の駆動デバイスにおける受信端(入力端)が、設置方向により入れ替わることがある。すると、これに対応するためには、このままでは、複数種類の駆動基板を用意する必要が生じてしまう。具体的には、
図4Aに示した駆動基板としてのフレキシブル基板13a,13cにおいて、仮に、各駆動デバイス41における第1入力端子Tin1側(この場合には受信端側(入力端側))にそれぞれ、終端抵抗を配置したとする。そして、このような終端抵抗の配置構成を、
図4Bに示した駆動デバイスとしてのフレキシブル基板13b,13dにも適用した場合には、各駆動デバイス41の送信端側(出力端側)にそれぞれ、終端抵抗が配置されることになる。したがって、このような終端抵抗の配置構成例では、有効なデータ伝送ができなくなってしまうため、このケースでは、2種類の駆動基板を用意する必要が生じてしまうことになる。
【0063】
このようにして、複数種類の駆動基板が必要となる場合、インクジェットヘッドの製造の際に、管理コストが増大してしまうことになる。
【0064】
そこで、このような管理コストの増大を避けるには、駆動基板の種類を少なくすることが望ましいが、その場合には、各駆動デバイスにおいて、双方向伝送が可能な入出力端子(入出力部)を設ける必要が生じる。この双方向伝送に対応した駆動基板は、例えば、低速なシングルエンド通信においては、比較的容易に対応できるものの、上記したLVDSのような高速差動伝送では、やはり、終端抵抗の問題が浮き彫りとなる。
【0065】
例えば、カスケード接続された2つの駆動デバイスが双方向伝送に対応した場合、これら2つの駆動デバイスに接続された伝送線路の両端に、終端抵抗が必要となる。具体的には、
図7Cに示した例では、双方向伝送に対応した2つのデバイス100,200の間に接続された差動線路300の両端に、終端抵抗Rt100,Rt200が配置されている。具体的には、デバイス100内における送信端101および受信端102の近傍に、終端抵抗Rt100が配置されていると共に、デバイス200内における送信端201および受信端202の近傍に、終端抵抗Rt200が配置されている。
【0066】
このようにして、カスケード接続された複数の駆動デバイスの場合において、伝送線路の両端に終端抵抗が配置されていると、受信端にて満足する電圧振幅レベルが半分になるため、それを補償するため、例えば送信端からの伝送に使用する電流を、増やす必要がある。つまり、この場合、データ伝送の際の消費電流が、増加してしまうことになる。
【0067】
ちなみに、このような消費電流の増加を回避するために、制御端子や部品の選択的実装によって、終端抵抗のオン状態(有効状態)とオフ状態(無効状態)とを切り替えるといった手法も、考えられる。具体的には、
図8A,
図8Bに示した例では、上記した
図7Cの構成例において、終端抵抗Rt100,Rt200のオン状態とオフ状態とを個別に切り替えるためのスイッチSW1,SW2が、追加的に設けられている。
【0068】
ここで、
図8Aの場合には、制御端子Tc1が「L」状態に設定されることで、スイッチSW1がオフ状態に設定されると共に、制御端子Tc2が「H」状態に設定されることで、スイッチSW2がオン状態に設定されている。つまり、この
図8Aの場合、差動線路300の両端に位置する2つの終端抵抗Rt100,Rt200のうち、終端抵抗Rt100は無効状態となることで、終端抵抗Rt200のみが有効状態となる。一方、
図8Bの場合には、制御端子Tc1が「H」状態に設定されることで、スイッチSW1がオン状態に設定されると共に、制御端子Tc2が「L」状態に設定されることで、スイッチSW2がオフ状態に設定されている。つまり、この
図8Bの場合、差動線路300の両端に位置する2つの終端抵抗Rt100,Rt200のうち、終端抵抗Rt200は無効状態となることで、終端抵抗Rt100のみが有効状態となる。
【0069】
しかしながら、このような手法では、余分な制御端子や部品(スイッチ等)によって、ただでさえ、実装密度や配線密度が高いインクジェットヘッド用の駆動基板に対して、大きなストレスになる。また、部品の選択的実装は、駆動基板の製造上の管理などの点から、できるだけ避けたい手法である。つまり、終端抵抗の配置構成を考えるうえでは、このような終端抵抗の有効状態と無効状態とを切り替える手法は、望ましくないと言える。
【0070】
このようにして、従来の一般的な終端抵抗の構成例では、駆動基板の管理コストが増大してしまったり、データ伝送の際の消費電流が増加してしまったりする。その結果、この一般的な終端抵抗の構成例では、インクジェットヘッドの製造コストや消費電力がそれぞれ、増大してしまうおそれがあると言える。
【0071】
(B-2.作用・効果)
これに対して、本実施の形態のインクジェットヘッド1では、以下のような構成となっていることで、例えば、以下のような作用および効果が得られる。
【0072】
すなわち、まず、このインクジェットヘッド1では、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dにおいて、第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2のうちの一方の入力端子を介して、伝送データDtが排他的に入力されるようになっている。また、これらの第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2の間において、互いに直列配置(カスケード接続)された複数の駆動デバイス41同士で、伝送データDtが双方向に入出力されるようになっている。具体的には、複数の伝送線路(第1伝送線路Lt1、第2伝送線路Lt2および第3伝送線路Lt31~Lt34)と、第1入出力部Tio1および第2入出力部Tio2とを介して、伝送データDtが双方向に入出力されるようになっている。
【0073】
これにより、インクジェットヘッド1内で複数のフレキシブル基板13a,13b,13c,13dを使用する場合において、第1入力端子Tin1から伝送データDtを入力させるフレキシブル基板13a,13cの構成と、第2入力端子Tin2から伝送データDtを入力させるフレキシブル基板13b,13dの構成とを、共通化(共用)させることができるようになる。その結果、このインクジェットヘッド1では、駆動基板としてのフレキシブル基板13a,13b,13c,13dの管理コストが、抑えられる。
【0074】
ここで、第1入力端子Tin1から伝送データDtが入力される場合には(
図5参照)、第1伝送線路Lt1上の受信端(第1駆動デバイス411の第1入出力部Tio1)の近傍に配置された第1終端抵抗Rt1が、インクジェットヘッド1の外部から伝送データDtを入力する際の、終端抵抗として機能する。一方、第2入力端子Tin2から伝送データDtが入力される場合には(
図6参照)、第2伝送線路Lt2上の受信端(第2駆動デバイス415の第2入出力部Tio2)の近傍に配置された第2終端抵抗Rt2が、インクジェットヘッド1の外部から伝送データDtを入力する際の、終端抵抗として機能する。
【0075】
また、これらのいずれの場合においても(
図5,
図6参照)、複数の第3伝送線路Lt31~Lt34上の各々に配置された第3終端抵抗Rt31~Rt34が、互いに直列配置された複数の駆動デバイス41間で伝送データDtを伝送する際(データ伝送の際)の、終端抵抗として機能する。そして、このような第3終端抵抗Rt31~Rt34はそれぞれ、第3伝送線路Lt31~Lt34上における一端付近および他端付近のうちの一方のみに配置されている。これにより、例えば、上記第3の伝送線路上の両端付近に配置されている場合(例えば、前述した
図7Cの場合)と比べ、複数の駆動デバイス41間でのデータ伝送の際の消費電流が、抑えられる。
【0076】
以上のことから本実施の形態では、駆動基板としてのフレキシブル基板13a,13b,13c,13dの管理コストを抑えつつ、データ伝送の際の消費電流を抑えることができる。その結果、本実施の形態では、インクジェットヘッド1の製造コストおよび消費電力の双方を、低減することが可能となる。
【0077】
また、本実施の形態では、3つ以上の駆動デバイス41が互いに直列配置されている場合において、複数の第3伝送線路Lt31~Lt34上の各々における第3終端抵抗Rt31~Rt34が、交互に配置されている。具体的には、第1駆動デバイス411側の端部付近と、第2駆動デバイス415側の端部付近とで、これらの第3終端抵抗Rt31~Rt34が、交互に配置されている。これにより、第1入力端子Tin1から伝送データDtが入力される場合(
図5参照)と、第2入力端子Tin2から伝送データDtが入力される場合(
図6参照)との間で、第3終端抵抗Rt31~Rt34の配置位置の差が、小さくなる(配置位置のばらつきが低減される)。したがって、これらの場合(
図5,
図6参照)において、複数の駆動デバイス41間でのデータ伝送の際の品質が、略均一化される結果、安定的なデータ伝送を実現することが可能となる。
【0078】
更に、本実施の形態では、第3伝送線路Lt31~Lt34の線路長L31~L34がそれぞれ、前述した信号波長λtの1/4未満の値(L31~L34<λt×1/4)となっていることから、以下のようになる。すなわち、第3伝送線路Lt31~Lt34上を伝送データDtが伝送する際に、その伝送データDtの伝送方向に応じて、第3終端抵抗Rt31~Rt34が、受信端(入力端)ではなくて送信端(出力端)に位置している場合であっても、データ伝送の際の品質の低下(伝送信号の劣化)が、ほとんど生じなくなる。その結果、安定的なデータ伝送を実現することが可能となる。
【0079】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~4)について説明する。なお、以下では、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0080】
[変形例1~3]
(構成)
図9は、変形例1に係る液体噴射ヘッド(インクジェットヘッド1A)におけるフレキシブル基板13A内での各部材の配置構成例を、模式的に表したものである。また、
図10は、変形例2に係る液体噴射ヘッド(インクジェットヘッド1B)におけるフレキシブル基板13B内での各部材の配置構成例を、模式的に表したものである。
図11は、変形例3に係る液体噴射ヘッド(インクジェットヘッド1C)におけるフレキシブル基板13C内での各部材の配置構成例を、模式的に表したものである。
【0081】
なお、これらのインクジェットヘッド1A~1Cはそれぞれ、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、これらのインクジェットヘッド1A~1Cを備えたプリンタは、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。
【0082】
まず、
図9に示した変形例1のインクジェットヘッド1Aでは、第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2を有するフレキシブル基板13A内に、以下の各部材が設けられている。すなわち、このフレキシブル基板13A内には、第1駆動デバイス411、第2駆動デバイス415、第1伝送線路Lt1、第2伝送線路Lt2、第3伝送線路Lt31、第1終端抵抗Rt1、第2終端抵抗Rt2、および、第3終端抵抗Rt31が、それぞれ設けられている。このフレキシブル基板13Aは、
図5,
図6に示した実施の形態のフレキシブル基板13a~13dにおいて、以下のように変更したものとなっており、他の構成は基本的には同様となっている。すなわち、このフレキシブル基板13Aは、3つの第3駆動デバイス412~414をそれぞれ省く(設けない)と共に、3つの第3伝送線路Lt32~Lt34および3つの第3終端抵抗Rt32~Rt34もそれぞれ、省くようにしたものとなっている。また、第3終端抵抗Rt31は、第3伝送線路Lt31上の一端付近(第1駆動デバイス411側の端部付近)、つまり、第1駆動デバイス411における第2入出力部Tio2の近傍に、配置されている。
【0083】
また、
図10に示した変形例2のインクジェットヘッド1Bでは、第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2を有するフレキシブル基板13B内に、以下の各部材が設けられている。すなわち、このフレキシブル基板13B内には、第1駆動デバイス411、第2駆動デバイス415、第3駆動デバイス412、第1伝送線路Lt1、第2伝送線路Lt2、第3伝送線路Lt31,Lt32、第1終端抵抗Rt1、第2終端抵抗Rt2、および、第3終端抵抗Rt31,Rt32が、それぞれ設けられている。このフレキシブル基板13Bは、
図9に示した変形例1のフレキシブル基板13Aにおいて、以下のように変更したものとなっており、他の構成は基本的には同様となっている。すなわち、このフレキシブル基板13Bは、1つの第3駆動デバイス412を更に設けると共に、1つの第3伝送線路Lt32および1つの第3終端抵抗Rt32もそれぞれ、更に設けるようにしたものとなっている。また、第3終端抵抗Rt32は、第3伝送線路Lt32上の他端付近(第2駆動デバイス415側の端部付近)、つまり、第2駆動デバイス415における第1入出力部Tio1の近傍に、配置されている。
【0084】
また、
図11に示した変形例3のインクジェットヘッド1Cでは、第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2を有するフレキシブル基板13C内に、以下の各部材が設けられている。すなわち、このフレキシブル基板13C内には、第1駆動デバイス411、第2駆動デバイス415、第3駆動デバイス412,413、第1伝送線路Lt1、第2伝送線路Lt2、第3伝送線路Lt31,Lt32,Lt33、第1終端抵抗Rt1、第2終端抵抗Rt2、および、第3終端抵抗Rt31,Rt32,Rt33が、それぞれ設けられている。このフレキシブル基板13Cは、
図10に示した変形例2のフレキシブル基板13Bにおいて、以下のように変更したものとなっており、他の構成は基本的には同様となっている。すなわち、このフレキシブル基板13Cは、1つの第3駆動デバイス413を更に設けると共に、1つの第3伝送線路Lt33および1つの終端抵抗Rt33もそれぞれ、更に設けるようにしたものとなっている。また、第3終端抵抗Rt33は、第3伝送線路Lt33上の他端付近(第2駆動デバイス415側の端部付近)、つまり、第2駆動デバイス415における第1入出力部Tio1の近傍に、配置されている。したがってこの変形例3では、これまでに説明した実施の形態および変形例1,2とは異なり、3つの第3終端抵抗Rt31~Rt34が、第1駆動デバイス411側の端部付近と、第2駆動デバイス415側の端部付近とで、交互には配置されていないこととなる。
【0085】
(作用・効果)
このような構成の変形例1~3においても、基本的には、実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、駆動基板としてのフレキシブル基板13a,13b,13c,13dの管理コストを抑えつつ、データ伝送の際の消費電流を抑えることができる。その結果、インクジェットヘッド1A~1Cの製造コストおよび消費電力の双方を、低減することが可能となる。
【0086】
[変形例4]
図12A,
図12Bは、変形例4に係る駆動デバイス41D1,41D2における終端抵抗Rtの配置構成例を、模式的に表したものである。具体的には、
図12Aは、駆動デバイス41D1における終端抵抗Rtの配置構成例を、
図12Bは、駆動デバイス41D2における終端抵抗Rtの配置構成例を、それぞれ示している。
【0087】
なお、これらの駆動デバイス41D1,41D2を備えたインクジェットヘッドはそれぞれ、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、そのようなンクジェットヘッドを備えたプリンタはそれぞれ、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。
【0088】
まず、
図12Aに示した駆動デバイス41D1では、この駆動デバイス41D1の内部(第1入出力部Tio1側の内部)に、終端抵抗Rtが設けられている。この終端抵抗Rtは、これまでに説明した終端抵抗(第1終端抵抗Rt1、第2終端抵抗Rt2および第3終端抵抗Rt31~Rt34)のうちの、少なくとも1つに相当するものである。
【0089】
一方、
図12Bに示した駆動デバイス41D2では、この駆動デバイス41D2の内部(第2入出力部Tio2側の内部)に、終端抵抗Rtが設けられている。この終端抵抗Rtも、これまでに説明した上記終端抵抗のうちの、少なくとも1つに相当するものである。
【0090】
このようにして変形例4では、第1終端抵抗Rt1、第2終端抵抗Rt2および第3終端抵抗Rt31~Rt34のうちの少なくとも1つが、駆動デバイス41D1,41D2の内部に設けられている(内蔵されている)ことから、以下のようになる。すなわち、駆動基板としてのフレキシブル基板13a,13b,13c,13d上において、実装部品や回路規模の削減が図られる。その結果、この変形例4では、インクジェットヘッドの製造コストを更に低減したり、インクジェットヘッドの小型化を図ることが可能となる。
【0091】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0092】
例えば、上記実施の形態等では、プリンタ5およびインクジェットヘッド1,1A~1Cにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0093】
具体的には、例えば、上記実施の形態等では、フレキシブル基板(駆動基板)、駆動デバイス、伝送線路および終端抵抗等の構成例について、具体的に挙げて説明したが、これらの構成例は、上記実施の形態等で説明したものには限られない。例えば、上記実施の形態等では、本開示における「駆動基板」がフレキシブル基板である場合を、例に挙げて説明したが、例えば、本開示における「駆動基板」が、非フレキシブル基板であってもよい。
【0094】
更に、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの数値例については、実施の形態等で説明した数値例には限られず、他の数値であってもよい。具体的には、例えば上記実施の形態等では、第3伝送線路Lt31~Lt34の線路長L31~L34がそれぞれ、前述した信号波長λtの1/4未満の値(L31~L34<λt×1/4)である場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、場合によっては、例えば、線路長L31~L34の少なくとも1つが、この信号波長λtの1/4以上の値であってもよい(L31~L34≧λt×1/4)。
【0095】
また、インクジェットヘッドの構造としては、各タイプのものを適用することが可能である。すなわち、例えば、アクチュエータプレート111における各吐出チャネルの延在方向の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。あるいは、例えば、各吐出チャネルの延在方向に沿ってインク9を吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。更には、プリンタの方式としても、上記実施の形態等で説明した方式には限られず、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式など、各種の方式を適用することが可能である。
【0096】
更に、例えば、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッド、あるいは、インク9を循環させずに利用する、非循環式のインクジェットヘッドのいずれであっても、本開示を適用することが可能である。
【0097】
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0098】
更に、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ5(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0099】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0100】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0101】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記液体を噴射する噴射部と、
前記液体を噴射させるための駆動信号を前記噴射部に対して出力する、1または複数の駆動基板と
を備え、
前記駆動基板は、
前記液体噴射ヘッドの外部から伝送される伝送データが入力される、第1および第2の入力端子と、
前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との間において互いに直列配置されており、前記第1および第2の入力端子のうちの一方の入力端子を介して入力された前記伝送データに基づいて、前記駆動信号を生成する、複数の駆動デバイスと、
前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との間において、互いに直列配置された前記複数の駆動デバイスを介して配置されており、前記伝送データを伝送する複数の伝送線路と、
前記複数の伝送線路上に配置された複数の終端抵抗と
を備え、
前記複数の駆動デバイスはそれぞれ、前記伝送データを入力または出力する、第1および第2の入出力部を有していると共に、
前記複数の駆動デバイスが、
直列配置のうちの一端に位置する第1の駆動デバイスと、
前記直列配置のうちの他端に位置する第2の駆動デバイスと
を含んでおり、
前記複数の伝送線路が、
前記第1の入力端子と、前記第1の駆動デバイスにおける前記第1の入出力部との間を接続する、第1の伝送線路と、
前記第2の入力端子と、前記第2の駆動デバイスにおける前記第2の入出力部との間を接続する、第2の伝送線路と、
前記第1の駆動デバイスにおける前記第2の入出力部と、前記第2の駆動デバイスにおける前記第1の入出力部との間を接続する、1または複数の第3の伝送線路と
を含んでおり、
前記複数の終端抵抗が、
前記第1の伝送線路上において、前記第1の駆動デバイスにおける前記第1の入出力部の近傍に配置された、第1の終端抵抗と、
前記第2の伝送線路上において、前記第2の駆動デバイスにおける前記第2の入出力部の近傍に配置された、第2の終端抵抗と、
前記1または複数の第3の伝送線路上の各々において、一端付近および他端付近のうちの一方に配置された、第3の終端抵抗と
を含んでいる
液体噴射ヘッド。
(2)
前記複数の駆動デバイスが、前記直列配置において前記第1および第2の駆動デバイスの間に位置する、1または複数の第3の駆動デバイスを、更に含んでいると共に、
前記複数の第3の伝送線路は、前記第1の駆動デバイスにおける前記第2の入出力部と、前記第2の駆動デバイスにおける前記第1の入出力部との間を、前記1または複数の第3の駆動デバイスを介して接続しており、
前記複数の第3の伝送線路上の各々における前記第3の終端抵抗が、前記第1の駆動デバイス側の端部付近と前記第2の駆動デバイス側の端部付近とで、交互に配置されている
上記(1)に記載の液体噴射ヘッド。
(3)
前記1または複数の第3の伝送線路における線路長がそれぞれ、前記伝送データの伝送周波数から求められる信号波長の、1/4未満の値となっている
上記(1)または(2)に記載の液体噴射ヘッド。
(4)
前記第1ないし第3の終端抵抗のうちの少なくとも1つが、前記駆動デバイスの内部に設けられている
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の液体噴射ヘッド。
(5)
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【符号の説明】
【0102】
1,1A~1C…インクジェットヘッド、10…コネクタ、11…噴射部、111…アクチュエータプレート、112…ノズルプレート、12…I/F基板、120a,120b,120c,120d…コネクタ、121…回路配置領域、13a,13b,13c,13d,13A~13C…フレキシブル基板、130…接続電極、141,142…冷却ユニット、2…印刷制御部、3…インクタンク、30…インク供給管、41,41D1,41D2…駆動デバイス、411…第1駆動デバイス、415…第2駆動デバイス、412~414…第3駆動デバイス、433…圧着電極、5…プリンタ、9…インク、P…記録紙、Hn…ノズル孔、Dt…伝送データ、Sc…印刷制御信号、Sd…駆動信号、Vd…駆動電圧、S1…表面、S2…裏面、Tin1…第1入力端子、Tin2…第2入力端子、Tio1…第1入出力部、Tio2…第2入出力部、Lt1…第1伝送線路、Lt2…第2伝送線路、Lt31~Lt34…第3伝送線路、Rt…終端抵抗、Rt1…第1終端抵抗、Rt2…第2終端抵抗、Rt31~Rt34…第3終端抵抗。