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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】検査装置、検査システム、及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20240418BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240418BHJP
   G01R 31/30 20060101ALI20240418BHJP
   G01R 31/3173 20060101ALI20240418BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G01R31/26 H
H05K3/00 T
G01R31/30
G01R31/3173
G01R31/28 G
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020166832
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059232
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-03-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの掲載日:令和2年8月20日 (2)ウェブサイトのアドレス:https://www.fujisan.co.jp/product/1281682672/
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】今堀 翔也
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-170224(JP,A)
【文献】特開平11-083957(JP,A)
【文献】特開2000-258289(JP,A)
【文献】米国特許第05744975(US,A)
【文献】実開昭59-042940(JP,U)
【文献】特開2000-148528(JP,A)
【文献】特開2011-185746(JP,A)
【文献】特開昭62-108599(JP,A)
【文献】特開2001-356148(JP,A)
【文献】特開昭62-10738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/28-31/3193、
31/26-31/27、
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象である複数の回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、
前記複数の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、
主制御部と、
前記複数の回路基板のうちの一の回路基板が前記テスト制御部に接続されるように、前記テスト制御部と前記複数の回路基板との接続を切り替え可能な接続切替部と、
を備え、
前記接続切替部は、前記複数の回路基板に対応する複数のチャンネルを有し、
前記複数のチャンネルは、前記テスト制御部に対して並列に接続され、
前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、
前記複数のチャンネルを切り替えることで前記一の回路基板を前記テスト制御部に順に接続させる接続処理を前記接続切替部に繰り返し実行させ、
前記接続処理に連動して前記一の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に実行させる、検査装置。
【請求項2】
検査対象である少なくとも一つの回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、
前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、
主制御部と、
を備え、
前記主制御部は、
前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に複数回実行させ、
前記振動ストレスの印加条件に応じて、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる、検査装置。
【請求項3】
前記主制御部は、前記振動ストレスの大きさが第1所定値以上である場合には、前記振動ストレスの大きさが前記第1所定値未満である場合と比較して、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を狭くする、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記主制御部は、前記振動ストレスの印加時間が第2所定値以上である場合には、前記振動ストレスの印加時間が前記第2所定値未満である場合と比較して、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を狭くする、請求項2又は3に記載の検査装置。
【請求項5】
検査対象である少なくとも一つの回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、
前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、
主制御部と、
を備え、
前記主制御部は、
前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に複数回実行させ、
前記バウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる、検査装置。
【請求項6】
前記主制御部は、前記バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第3所定値以上である場合には、前記バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が前記第3所定値未満である場合と比較して、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を狭くする、請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
検査対象である少なくとも一つの回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、
前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、
主制御部と、
を備え、
前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に複数回実行させ、
前記少なくとも一つの回路基板は、第1の回路基板及び第2の回路基板を含み、
前記テスト制御部は、前記第1の回路基板及び前記第2の回路基板の各々に対して前記バウンダリスキャンテストを複数回実行し、
前記主制御部は、前記第1の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、前記第2の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる、検査装置。
【請求項8】
前記主制御部は、前記第1の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第4所定値以上である場合には、前記第1の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が前記第4所定値未満である場合と比較して、前記第2の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を狭くする、請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
検査対象である少なくとも一つの回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、
前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、
主制御部と、
を備え、
前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に複数回実行させ、
前記環境形成装置は前記回路基板に対してさらに温度ストレスを印加可能であり
前記主制御部は、前記温度ストレスの印加条件に応じて、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる、検査装置。
【請求項10】
前記主制御部は、前記温度ストレスの大きさが遷移している期間内においては、前記温度ストレスの大きさが遷移していない期間内と比較して、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を狭くする、請求項9に記載の検査装置。
【請求項11】
前記少なくとも一つの回路基板は、複数の回路基板を含み、
前記テスト制御部は、前記複数の回路基板の各々に対して前記バウンダリスキャンテストを実行し、
前記複数の回路基板のうちの一の回路基板が前記テスト制御部に接続されるように、前記テスト制御部と前記環境形成装置に収容されている前記複数の回路基板との接続を切り替え可能な接続切替部をさらに備え、
前記主制御部は、
前記環境形成装置が前記複数の回路基板に対して前記振動ストレスを印加した状態で、
前記一の回路基板を前記テスト制御部に順に接続させる接続処理を前記接続切替部に繰り返し実行させ、
前記接続処理に連動して前記一の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に実行させる、請求項~10のいずれか一つに記載の検査装置。
【請求項12】
前記環境形成装置は、HALT(Highly Accelerated Limit Test)試験装置、HASS(High Accelerated Stress Screen)試験装置、又はHASA(High Accelerated Stress Audit)試験装置である、請求項1~11のいずれか一つに記載の検査装置。
【請求項13】
検査対象である少なくとも一つの回路基板を収容可能な環境形成装置と、
前記環境形成装置に対して通信可能に接続された検査装置と、
を備え、
前記検査装置は、
前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、
主制御部と、
を有し、
前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に複数回実行させ
前記環境形成装置は前記回路基板に対してさらに温度ストレスを印加可能であり、
前記主制御部は、前記振動ストレスの印加条件、前記温度ストレスの印加条件、又は前記バウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる、検査システム。
【請求項14】
検査対象である複数の回路基板を収容可能な環境形成装置と、
前記環境形成装置に対して通信可能に接続された検査装置と、
を備え、
前記検査装置は、
前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、
主制御部と、
前記複数の回路基板のうちの一の回路基板が前記テスト制御部に接続されるように、前記テスト制御部と前記複数の回路基板との接続を切り替え可能な接続切替部と、
を有し、
前記接続切替部は、前記複数の回路基板に対応する複数のチャンネルを有し、
前記複数のチャンネルは、前記テスト制御部に対して並列に接続され、
前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、
前記複数のチャンネルを切り替えることで前記一の回路基板を前記テスト制御部に順に接続させる接続処理を前記接続切替部に繰り返し実行させ、
前記接続処理に連動して前記一の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に実行させる、検査システム。
【請求項15】
環境形成装置に収容された少なくとも一つの回路基板に対して、前記環境形成装置によって3自由度以上の振動ストレス及び温度ストレスを印加するステップと、
前記環境形成装置が前記回路基板に対して前記振動ストレス及び温度ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対して行うバウンダリスキャンテストの実行間隔を、前記振動ストレスの印加条件、前記温度ストレスの印加条件、又は前記バウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて異ならせて、前記バウンダリスキャンテストを実行するステップと、
を備える、検査方法。
【請求項16】
環境形成装置に収容された複数の回路基板に対して、前記環境形成装置によって3自由度以上の振動ストレスを印加するステップと、
前記環境形成装置が前記回路基板に対して前記振動ストレスを印加している状態で、テスト制御部に対して並列に接続された複数のチャンネルを切り替えることで前記複数の回路基板のうちの一の回路基板を前記テスト制御部に順に接続させる接続処理を実行させ、前記接続処理に連動して前記一の回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行するステップと、
を備える、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、検査システム、及び検査方法に関し、特に、検査対象に対してバウンダリスキャンテストを実行するための、検査装置、検査システム、及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JTAG(Joint Test Action Group)に準拠した半導体デバイスが実装された回路基板を対象とする検査の一つとして、バウンダリスキャンテストが知られている。バウンダリスキャンテストでは、主に、回路基板上に実装された半導体デバイスの半田接合不良や、複数の半導体デバイス間の配線のオープン不良又はショート不良等が検査される。下記特許文献1には、JTAGに準拠した集積回路を対象としてバウンダリスキャンテストを実行するテストシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-148528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
量産工程を経て出荷された実製品は、振動又は温度等の様々な環境要因に晒された過酷な状況で使用される可能性がある。ところが上記特許文献1に開示されたテストシステムによると、バウンダリスキャンテストを実行する際に実製品の使用状況が想定されていないため、実製品の信頼性が低いという課題がある。また、テストコストを削減するために、テストの所要時間の短縮化が要求されているという課題もある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能な、検査装置、検査システム、及び検査方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る検査装置は、検査対象である複数の回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、前記複数の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、主制御部と、前記複数の回路基板のうちの一の回路基板が前記テスト制御部に接続されるように、前記テスト制御部と前記複数の回路基板との接続を切り替え可能な接続切替部と、を備え、前記接続切替部は、前記複数の回路基板に対応する複数のチャンネルを有し、前記複数のチャンネルは、前記テスト制御部に対して並列に接続され、前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記複数のチャンネルを切り替えることで前記一の回路基板を前記テスト制御部に順に接続させる接続処理を前記接続切替部に繰り返し実行させ、前記接続処理に連動して前記一の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に実行させる。
【0007】
この態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容されており、主制御部は、環境形成装置が回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、回路基板に対するバウンダリスキャンテストをテスト制御部に実行させる。このように、実製品の使用状況で起こり得る又は実製品の使用状況の想定範囲を超える3自由度以上の振動ストレスを回路基板に印加している状態で、当該回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行することによって、回路基板における不良の発生を促進しつつ、発生した不良箇所を高精度に評価できる。その結果、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
また、この態様によれば、接続切替部は、一の回路基板をテスト制御部に順に接続させる接続処理を繰り返し実行し、テスト制御部は、当該接続処理に連動して一の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを実行する。これにより、一のテスト制御部を用いて複数の回路基板の各々に対するバウンダリスキャンテストが連続的に実行されるため、複数の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを効率的に実行できる。その結果、テストコストを削減することが可能となる。
【0008】
本発明の第2態様に係る検査装置は、検査対象である少なくとも一つの回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、主制御部と、を備え、前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に複数回実行させ、前記振動ストレスの印加条件に応じて、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。
【0009】
この態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容されており、主制御部は、環境形成装置が回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、回路基板に対するバウンダリスキャンテストをテスト制御部に実行させる。このように、実製品の使用状況で起こり得る又は実製品の使用状況の想定範囲を超える3自由度以上の振動ストレスを回路基板に印加している状態で、当該回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行することによって、回路基板における不良の発生を促進しつつ、発生した不良箇所を高精度に評価できる。その結果、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
また、この態様によれば、主制御部は、振動ストレスの印加条件に応じて、バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。従って、振動ストレスの印加条件が、不良が発生しやすい条件である場合には、主制御部が実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、振動ストレスの印加条件が、不良が発生しにくい条件である場合には、主制御部が実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0010】
本発明の第3態様に係る検査装置は、第2態様において、前記主制御部は、前記振動ストレスの大きさが第1所定値以上である場合には、前記振動ストレスの大きさが前記第1所定値未満である場合と比較して、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を狭くする。
【0011】
この態様によれば、振動ストレスの大きさが第1所定値以上である場合には、不良が発生しやすいため、主制御部が実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、振動ストレスの大きさが第1所定値未満である場合には、不良が発生しにくいため、主制御部が実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0012】
本発明の第4態様に係る検査装置は、第2又は第3態様において、前記主制御部は、前記振動ストレスの印加時間が第2所定値以上である場合には、前記振動ストレスの印加時間が前記第2所定値未満である場合と比較して、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を狭くする。
【0013】
この態様によれば、振動ストレスの印加時間が第2所定値以上である場合には、不良が発生しやすいため、主制御部が実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、振動ストレスの印加時間が第2所定値未満である場合には、不良が発生しにくいため、主制御部が実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0014】
本発明の第5態様に係る検査装置は、検査対象である少なくとも一つの回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、主制御部と、を備え、前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に複数回実行させ、前記バウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。
【0015】
この態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容されており、主制御部は、環境形成装置が回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、回路基板に対するバウンダリスキャンテストをテスト制御部に実行させる。このように、実製品の使用状況で起こり得る又は実製品の使用状況の想定範囲を超える3自由度以上の振動ストレスを回路基板に印加している状態で、当該回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行することによって、回路基板における不良の発生を促進しつつ、発生した不良箇所を高精度に評価できる。その結果、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
また、この態様によれば、主制御部は、バウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。従って、一定数以上の不良箇所が検出され、他の不良が発生しやすい状況である場合には、主制御部が実行間隔を短く設定することによって、他の不良の発生を早期に発見できる。一方、一定数以上の不良箇所が検出されておらず、不良が発生しにくい状況である場合には、主制御部が実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0016】
本発明の第6態様に係る検査装置は、第5態様において、前記主制御部は、前記バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第3所定値以上である場合には、前記バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が前記第3所定値未満である場合と比較して、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を狭くする。
【0017】
この態様によれば、バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第3所定値以上である場合には、他の不良が発生しやすい状況であるため、主制御部が実行間隔を短く設定することによって、他の不良の発生を早期に発見できる。一方、バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第3所定値未満である場合には、不良が発生しにくい状況であるため、主制御部が実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0018】
本発明の第7態様に係る検査装置は、検査対象である少なくとも一つの回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、主制御部と、を備え、前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に複数回実行させ、前記少なくとも一つの回路基板は、第1の回路基板及び第2の回路基板を含み、前記テスト制御部は、前記第1の回路基板及び前記第2の回路基板の各々に対して前記バウンダリスキャンテストを複数回実行し、前記主制御部は、前記第1の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、前記第2の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。
【0019】
この態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容されており、主制御部は、環境形成装置が回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、回路基板に対するバウンダリスキャンテストをテスト制御部に実行させる。このように、実製品の使用状況で起こり得る又は実製品の使用状況の想定範囲を超える3自由度以上の振動ストレスを回路基板に印加している状態で、当該回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行することによって、回路基板における不良の発生を促進しつつ、発生した不良箇所を高精度に評価できる。その結果、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
また、この態様によれば、主制御部は、第1の回路基板に対するバウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、第2の回路基板に対するバウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。従って、第1の回路基板において一定数以上の不良箇所が検出され、第2の回路基板においても不良が発生しやすい状況である場合には、主制御部が第2の回路基板に関する実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、第1の回路基板において一定数以上の不良箇所が検出されておらず、第2の回路基板においても不良が発生しにくい状況である場合には、主制御部が第2の回路基板に関する実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0020】
本発明の第8態様に係る検査装置は、第7態様において、前記主制御部は、前記第1の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第4所定値以上である場合には、前記第1の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が前記第4所定値未満である場合と比較して、前記第2の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を狭くする。
【0021】
この態様によれば、第1の回路基板に対するバウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第4所定値以上である場合には、第2の回路基板においても不良が発生しやすい状況であるため、主制御部が第2の回路基板に関する実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、第1の回路基板に対するバウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第4所定値未満である場合には、第2の回路基板においても不良が発生しにくい状況であるため、主制御部が第2の回路基板に関する実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0022】
本発明の第9態様に係る検査装置は、検査対象である少なくとも一つの回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、主制御部と、を備え、前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に複数回実行させ、前記環境形成装置は前記回路基板に対してさらに温度ストレスを印加可能であり前記主制御部は、前記温度ストレスの印加条件に応じて、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。
【0023】
この態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容されており、主制御部は、環境形成装置が回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、回路基板に対するバウンダリスキャンテストをテスト制御部に実行させる。このように、実製品の使用状況で起こり得る又は実製品の使用状況の想定範囲を超える3自由度以上の振動ストレスを回路基板に印加している状態で、当該回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行することによって、回路基板における不良の発生を促進しつつ、発生した不良箇所を高精度に評価できる。その結果、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
また、この態様によれば、主制御部は、温度ストレスの印加条件に応じて、バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。従って、温度ストレスの印加条件が、不良が発生しやすい条件である場合には、主制御部が実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、温度ストレスの印加条件が、不良が発生しにくい条件である場合には、主制御部が実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0024】
本発明の第10態様に係る検査装置は、第9態様において、前記主制御部は、前記温度ストレスの大きさが遷移している期間内においては、前記温度ストレスの大きさが遷移していない期間内と比較して、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を狭くする。
【0025】
この態様によれば、温度ストレスの大きさが遷移している期間内においては、不良が発生しやすいため、主制御部が実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、温度ストレスの大きさが遷移していない期間内においては、不良が発生しにくいため、主制御部が実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0026】
本発明の第11態様に係る検査装置は、第2~第10態様のいずれか一つにおいて、前記少なくとも一つの回路基板は、複数の回路基板を含み、前記テスト制御部は、前記複数の回路基板の各々に対して前記バウンダリスキャンテストを実行し、前記複数の回路基板のうちの一の回路基板が前記テスト制御部に接続されるように、前記テスト制御部と前記環境形成装置に収容されている前記複数の回路基板との接続を切り替え可能な接続切替部をさらに備え、前記主制御部は、前記環境形成装置が前記複数の回路基板に対して前記振動ストレスを印加した状態で、前記一の回路基板を前記テスト制御部に順に接続させる接続処理を前記接続切替部に繰り返し実行させ、前記接続処理に連動して前記一の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に実行させる。
【0027】
この態様によれば、接続切替部は、一の回路基板をテスト制御部に順に接続させる接続処理を繰り返し実行し、テスト制御部は、当該接続処理に連動して一の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを実行する。これにより、一のテスト制御部を用いて複数の回路基板の各々に対するバウンダリスキャンテストが連続的に実行されるため、複数の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを効率的に実行できる。その結果、テストコストを削減することが可能となる。
【0028】
本発明の第12態様に係る検査装置は、第1~第11態様のいずれか一つにおいて、前記環境形成装置は、HALT試験装置、HASS試験装置、又はHASA試験装置である。
【0029】
この態様によれば、環境形成装置としてHALT試験装置、HASS試験装置、又はHASA試験装置を使用することにより、6自由度の振動ストレスと、広温度域かつ急速変化の温度ストレスとを、回路基板に印加することができる。その結果、回路基板における不良の発生を効果的に促進することが可能となる。
【0030】
本発明の第13態様に係る検査システムは、検査対象である少なくとも一つの回路基板を収容可能な環境形成装置と、前記環境形成装置に対して通信可能に接続された検査装置と、を備え、前記検査装置は、前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、主制御部と、を有し、前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に複数回実行させ、前記環境形成装置は前記回路基板に対してさらに温度ストレスを印加可能であり、前記主制御部は、前記振動ストレスの印加条件、前記温度ストレスの印加条件、又は前記バウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、前記バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる
【0031】
この態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容されており、主制御部は、環境形成装置が回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、回路基板に対するバウンダリスキャンテストをテスト制御部に実行させる。このように、実製品の使用状況で起こり得る又は実製品の使用状況の想定範囲を超える3自由度以上の振動ストレスを回路基板に印加している状態で、当該回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行することによって、回路基板における不良の発生を促進しつつ、発生した不良箇所を高精度に評価できる。その結果、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
また、この態様によれば、主制御部は、振動ストレスの印加条件、温度ストレスの印加条件、又はバウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。従って、実行間隔を短く設定することによって不良の発生を早期に発見でき、実行間隔を長く設定することによってテスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
本発明の第14態様に係る検査システムは、検査対象である複数の回路基板を収容可能な環境形成装置と、前記環境形成装置に対して通信可能に接続された検査装置と、を備え、前記検査装置は、前記回路基板に対するバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、主制御部と、前記複数の回路基板のうちの一の回路基板が前記テスト制御部に接続されるように、前記テスト制御部と前記複数の回路基板との接続を切り替え可能な接続切替部と、を有し、前記接続切替部は、前記複数の回路基板に対応する複数のチャンネルを有し、前記複数のチャンネルは、前記テスト制御部に対して並列に接続され、前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、前記複数のチャンネルを切り替えることで前記一の回路基板を前記テスト制御部に順に接続させる接続処理を前記接続切替部に繰り返し実行させ、前記接続処理に連動して前記一の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に実行させる。
この態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容されており、主制御部は、環境形成装置が回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、回路基板に対するバウンダリスキャンテストをテスト制御部に実行させる。このように、実製品の使用状況で起こり得る又は実製品の使用状況の想定範囲を超える3自由度以上の振動ストレスを回路基板に印加している状態で、当該回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行することによって、回路基板における不良の発生を促進しつつ、発生した不良箇所を高精度に評価できる。その結果、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
また、この態様によれば、接続切替部は、一の回路基板をテスト制御部に順に接続させる接続処理を繰り返し実行し、テスト制御部は、当該接続処理に連動して一の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを実行する。これにより、一のテスト制御部を用いて複数の回路基板の各々に対するバウンダリスキャンテストが連続的に実行されるため、複数の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを効率的に実行できる。その結果、テストコストを削減することが可能となる。
【0032】
本発明の第15態様に係る検査方法は、環境形成装置に収容された少なくとも一つの回路基板に対して、前記環境形成装置によって3自由度以上の振動ストレス及び温度ストレスを印加するステップと、前記環境形成装置が前記回路基板に対して前記振動ストレス及び温度ストレスを印加している状態で、前記回路基板に対して行うバウンダリスキャンテストの実行間隔を、前記振動ストレスの印加条件、前記温度ストレスの印加条件、又は前記バウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて異ならせて、前記バウンダリスキャンテストを実行するステップと、を備える。
【0033】
この態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容されており、環境形成装置が回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、回路基板に対するバウンダリスキャンテストが実行される。このように、実製品の使用状況で起こり得る又は実製品の使用状況の想定範囲を超える3自由度以上の振動ストレスを回路基板に印加している状態で、当該回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行することによって、回路基板における不良の発生を促進しつつ、発生した不良箇所を高精度に評価できる。その結果、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
また、この態様によれば、振動ストレスの印加条件、温度ストレスの印加条件、又はバウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。従って、実行間隔を短く設定することによって不良の発生を早期に発見でき、実行間隔を長く設定することによってテスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
本発明の第16態様に係る検査方法は、環境形成装置に収容された複数の回路基板に対して、前記環境形成装置によって3自由度以上の振動ストレスを印加するステップと、前記環境形成装置が前記回路基板に対して前記振動ストレスを印加している状態で、テスト制御部に対して並列に接続された複数のチャンネルを切り替えることで前記複数の回路基板のうちの一の回路基板を前記テスト制御部に順に接続させる接続処理を実行させ、前記接続処理に連動して前記一の回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行するステップと、を備える。
この態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容されており、環境形成装置が回路基板に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、回路基板に対するバウンダリスキャンテストをテスト制御部に実行させる。このように、実製品の使用状況で起こり得る又は実製品の使用状況の想定範囲を超える3自由度以上の振動ストレスを回路基板に印加している状態で、当該回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行することによって、回路基板における不良の発生を促進しつつ、発生した不良箇所を高精度に評価できる。その結果、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
また、この態様によれば、一の回路基板をテスト制御部に順に接続させる接続処理を繰り返し実行し、当該接続処理に連動して一の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを実行する。これにより、一のテスト制御部を用いて複数の回路基板の各々に対するバウンダリスキャンテストが連続的に実行されるため、複数の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを効率的に実行できる。その結果、テストコストを削減することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施の形態に係る検査システムの構成を簡略化して示す図である。
図2】検査装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
図3】環境形成装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
図4】回路基板に対する振動ストレスの印加パターンの第1の例を示す図である。
図5】回路基板に対する振動ストレスの印加パターンの第2の例を示す図である。
図6】回路基板に対する振動ストレスの印加パターンの第3の例を示す図である。
図7】回路基板に対する振動ストレスの印加パターンの第4の例を示す図である。
図8】回路基板に対する振動ストレスの印加パターンの第5の例を示す図である。
図9】回路基板に対するバウンダリスキャンテストの実行タイミングの第1の例を示す図である。
図10】回路基板に対するバウンダリスキャンテストの実行タイミングの第2の例を示す図である。
図11】回路基板に対するバウンダリスキャンテストの実行タイミングの第3の例を示す図である。
図12】回路基板に対するバウンダリスキャンテストの実行タイミングの第4の例を示す図である。
図13】変形例に係る検査装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
図14】スキャナユニットの構成を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0037】
図1は、本発明の実施の形態に係る検査システム1の構成を簡略化して示す図である。図1に示すように検査システム1は、互いに通信可能に接続された検査装置2と環境形成装置3とを備えている。環境形成装置3は、製品の設計開発段階で試作品を対象として環境試験を実行するための環境試験装置である。但し、環境形成装置3は、製品の出荷前テストにおいて実製品を対象としてスクリーニング試験を実行するためのスクリーニング装置であっても良い。検査装置2は、環境形成装置3に収容されている検査対象に対してバウンダリスキャンテストを実行するための制御部を備える装置である。検査対象は、JTAG(Joint Test Action Group)に準拠した半導体デバイスが実装された回路基板である。バウンダリスキャンテストでは、主に、回路基板上に実装された半導体デバイスの半田接合不良や、複数の半導体デバイス間の配線のオープン不良又はショート不良等が検査される。
【0038】
図2は、検査装置2(2A)の構成を簡略化して示すブロック図である。図2の接続関係で示すように、検査装置2Aは、システムコントローラ11(主制御部)、チャンバモニタ12、テストコントローラ13(テスト制御部)、記憶部14、表示部15、及び通信部16を備えている。
【0039】
テストコントローラ13は、システムコントローラ11からの制御に従って、検査対象である回路基板100(詳細は後述する)に対して実行されるバウンダリスキャンテストを制御するためのコントローラである。テストコントローラ13は、バウンダリスキャンテストにおいて、テストデータ(テストパターン)の生成、及びテストクロックの生成等の処理を行う。テストコントローラ13は、中継ユニット17に接続されている。
【0040】
システムコントローラ11は、CPU等のプロセッサとROM及びRAM等のメモリとを備えており、システム全体の動作を統括して制御する。システムコントローラ11は、環境形成装置3が回路基板100に対して所定の環境ストレスを印加している状態で、回路基板100に対するバウンダリスキャンテストをテストコントローラ13に実行させる。
【0041】
記憶部14は、半導体メモリ又はハードディスク等の任意の記憶装置である。表示部15は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の任意の表示装置である。システムコントローラ11とチャンバモニタ12とは、例えばRS-232Cケーブルによって互いに接続されている。システムコントローラ11とテストコントローラ13とは、例えばUSBケーブルによって互いに接続されている。通信部16と環境形成装置3の通信部21(詳細は後述する)とは、例えばRS-485ケーブルによって互いに接続されている。
【0042】
図3は、環境形成装置3の構成を簡略化して示す図である。本実施形態の例では、環境形成装置3として、HALT(Highly Accelerated Limit Test)試験装置、HASS(High Accelerated Stress Screen)試験装置、又はHASA(High Accelerated Stress Audit)試験装置が使用される。HALT試験装置の検査対象は主に試作品であり、HALT試験装置は、環境に対する試作品の弱点箇所を特定すべく、検査対象が故障するまで(不良箇所が検出されるまで)環境ストレスを印加し続ける。HASS試験装置及びHASA試験装置の検査対象は、主に実製品である。HASS試験は全ての実製品を対象とする全数検査であり、HASA試験は一部の実製品を対象とする抜き取り検査である。HALT試験装置、HASS試験装置、又はHASA試験装置は、実製品の使用状況の想定範囲(仕様範囲)を超える振動ストレス及び/又は温度ストレスを検査対象に印加することにより、高加速試験を実現可能である。振動ストレスとしては、直交3軸(水平面内のX軸及びY軸と鉛直方向のZ軸)の各軸の延在方向及び回転方向の振動によって、6自由度の振動ストレスを印加可能である。但し、実製品の使用状況で起こり得る又は実製品の使用状況の想定範囲を超える3自由度以上の振動ストレスを印加可能であれば良い。6自由度(3自由度以上)の振動ストレスは、単軸や2軸の振動とは異なり、実製品の使用状況で起こり得る又は実製品の使用状況の想定範囲を超える複合的な振動である。6自由度(3自由度以上)の振動ストレスによって、より短時間で検査対象の信頼性を評価することが可能である。振動加速度は、例えば5~75(Grms)の範囲内で任意に設定可能である。温度ストレスとしては、広温度域(例えば-100~+200℃)かつ急速変化(例えば平均70℃/min)の温度ストレスを印加可能である。
【0043】
図3に示すように環境形成装置3は、断熱性の筐体25によって囲まれた空調室23及びチャンバ24を備えている。空調室23には、空気循環用の送風機26と、加熱用のヒータ27と、冷却用の液体窒素を噴射するノズル28とが配置されている。ノズル28は、配管29を介して、環境形成装置3の外部に配置された液体窒素のタンク31に接続されている。配管29には、タンク31からノズル28への液体窒素の供給の可否を制御するための弁30が設けられている。空調室23内で生成された空調空気は、矢印Aで示すように、空調室23から給気口42を介してチャンバ24内に供給され、チャンバ24内を循環した後、チャンバ24から排気口41を介して空調室23に排出される。
【0044】
チャンバ24内には、平板状の振動テーブル32が配置されている。振動テーブル32は、筐体25の側面に固定された支持部材34によって、バネ33を介して揺動可能に支持されている。振動テーブル32は、アクチュエータ35によって駆動されることにより、上記6自由度の振動が実現される。アクチュエータ35は、運動方向が異なる複数個(例えば5個)のエアシリンダ等を用いて構成されている。各エアシリンダに対して圧縮空気の給気及び排気を短周期で繰り返すことによって、各エアシリンダにおいて振動運動が実現される。
【0045】
チャンバ24内の振動テーブル32の上面には、検査対象である回路基板100が、固定具38によって固定される。図示は省略するが、回路基板100においては、JTAG(Joint Test Action Group)に準拠したFPGA(Field Programmable Gate Array)等の半導体デバイスが、BGA(Ball Grid Array)等の接続方式による半田付け等によって、プリント配線板上に実装されている。回路基板100には、バウンダリスキャンテストのデータ(テストデータ及びテスト結果データ等)を通信するためのケーブル40が接続されている。ケーブル40は、筐体25の側壁に形成されているケーブル孔39を介して筐体25の外部に引き出され、図2に示した中継ユニット17に接続されている。環境形成装置3に収容されている回路基板100と、検査装置2Aのテストコントローラ13とは、ケーブル40及び中継ユニット17を介して相互に接続される。
【0046】
また、環境形成装置3は、環境コントローラ22、通信部21、温度センサ37、及び振動センサ36を備えている。温度センサ37は、チャンバ24内に配置されている。振動センサ36は、加速度センサ等を用いて構成されており、振動テーブル32に配置されている。
【0047】
環境コントローラ22は、CPU等のプロセッサとROM及びRAM等のメモリとを備えて構成されている。環境コントローラ22は、各制御信号によって、ヒータ27、弁30、及びアクチュエータ35の駆動をそれぞれ制御する。回路基板100に対する温度ストレスの印加及び振動ストレスの印加が、環境コントローラ22によって制御される。
【0048】
環境コントローラ22には、温度センサ37によって検出された、チャンバ24内の温度を示す温度データが入力される。環境コントローラ22は、温度センサ37から入力された温度データに基づいてヒータ27及び弁30をフィードバック制御することにより、チャンバ24内の温度を目標値に制御することができる。また、環境コントローラ22には、振動センサ36によって検出された、振動テーブル32の振動加速度を示す振動データが入力される。環境コントローラ22は、振動センサ36から入力された振動データに基づいてアクチュエータ35をフィードバック制御することにより、振動テーブル32の振動加速度を目標値に制御することができる。
【0049】
また、これらの温度データ及び振動データは、環境コントローラ22から通信部21,16を介してチャンバモニタ12(図2参照)に入力される。これにより、環境形成装置3のチャンバ24の状態(温度及び振動)を、検査装置2Aのチャンバモニタ12によってモニタリングすることができる。
【0050】
図4は、回路基板100に対する振動ストレスの印加パターンの第1の例を示す図である。グラフの横軸は経過時間を示し、縦軸は振動加速度の大きさを示している。第1の例では、環境コントローラ22は、テスト開始からテスト終了までの全期間において、振動テーブル32の振動加速度を一定値に保つ。これにより、テスト開始からテスト終了までの全期間において、一定の振動ストレスが回路基板100に印加される。
【0051】
図5は、回路基板100に対する振動ストレスの印加パターンの第2の例を示す図である。第2の例では、環境コントローラ22は、振動テーブル32を振動させる期間(振動加速度を所定値に設定することによって振動が「ON」となる期間)と、振動テーブル32を振動させない期間(振動加速度をゼロに設定することによって振動が「OFF」となる期間)とを交互に繰り返す。これにより、回路基板100に振動ストレスを印加する期間(ON期間)と印加しない期間(OFF期間)とが、交互に繰り返される。なお、ON期間の長さとOFF期間の長さとは、同一であっても良いし異なっていても良い。また、ON期間において、振動加速度は一定値であっても良いし変動値であっても良い。
【0052】
図6は、回路基板100に対する振動ストレスの印加パターンの第3の例を示す図である。第3の例では、環境コントローラ22は、振動テーブル32を大きく振動させる期間(振動加速度をある基準値より大きな値に設定することによって振動が「大」となる期間)と、振動テーブル32を小さく振動させる期間(振動加速度を当該基準値より小さな値に設定することによって振動が「小」となる期間)とを交互に繰り返す。これにより、回路基板100に大きな振動ストレスを印加する期間(大期間)と小さな振動ストレスを印加する期間(小期間)とが、交互に繰り返される。なお、大期間の長さと小期間の長さとは、同一であっても良いし異なっていても良い。また、大期間及び小期間のそれぞれにおいて、振動加速度は一定値であっても良いし変動値であっても良い。
【0053】
図7は、回路基板100に対する振動ストレスの印加パターンの第4の例を示す図である。第4の例では、環境コントローラ22は、時間の経過に伴って、振動加速度を徐々に大きい値にステップ状に変更する。これにより、時間の経過に伴ってステップ状に徐々に増大する振動ストレスが、回路基板100に印加される。なお、図7に示した例とは逆に、時間の経過に伴ってステップ状に徐々に低下する振動ストレスを、回路基板100に印加しても良い。また、ステップ状に変更する振動加速度の増大幅又は低下幅は一定値であっても良いし変動値であっても良い。さらに、振動ストレスをステップ状に増大させるパターンとステップ状に低下させるパターンとを組み合わせても良い。
【0054】
図8は、回路基板100に対する振動ストレスの印加パターンの第5の例を示す図である。第5の例では、環境コントローラ22は、時間の経過に伴って、振動加速度を徐々に大きい値に直線状に変更する。これにより、時間の経過に伴って直線状に徐々に増大する振動ストレスが、回路基板100に印加される。なお、図8に示した例とは逆に、時間の経過に伴って直線状に徐々に低下する振動ストレスを、回路基板100に印加しても良い。また、振動ストレスを直線状に増大させるパターンと直線状に低下させるパターンとを組み合わせても良い。
【0055】
環境コントローラ22は、回路基板100に対して、図4~8に示した振動ストレスの印加パターンの全てを実行しても良いし、一つのみを実行しても良い。また、環境コントローラ22は、回路基板100に対して、図4~8に示した振動ストレスの印加パターンを任意に組み合わせて実行しても良い。例えば、
・第1の例(図4)の後に第2の例(図5)を実行する。
・第2の例(図5)のON期間及びOFF期間と、第3の例(図6)の大期間及び小期間とを混在させる。
・第4の例(図7)又は第5の例(図8)の途中に第2の例(図5)のOFF期間又は第3の例(図6)の小期間を挿入する。
等の組み合わせを実行しても良い。また、環境コントローラ22は、回路基板100に対して、振動ストレスに加えて温度ストレスを印加しても良い。どの印加パターンを実行すべきかを示す情報は、回路基板100の種別等に応じて、予め環境コントローラ22に設定されている。
【0056】
図2に示した本実施形態に係る検査装置2Aにおいて、システムコントローラ11は、環境形成装置3が回路基板100に対して上記振動ストレス(及び温度ストレス)を印加している状態で、回路基板100に対するバウンダリスキャンテストをテストコントローラ13に実行させる。なお、以下の説明では、バウンダリスキャンテストの実行タイミングをシステムコントローラ11が決定する例について述べるが、この例には限られない。システムコントローラ11と同様の機能をテストコントローラ13に実装することにより、バウンダリスキャンテストの実行タイミングをテストコントローラ13が決定しても良い。この場合、テストコントローラ13は、バウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部としての機能と、テスト制御部にバウンダリスキャンテストを実行させ且つバウンダリスキャンテストの実行タイミングを決定する主制御部としての機能と、を備える。また、以下の説明では、検査装置2Aがシステムコントローラ11とテストコントローラ13とを個別に備える例について述べるが、この例には限られない。検査装置2Aは、システムコントローラ11及びテストコントローラ13の各機能を備える一つのコントローラを備えても良い。この場合、当該一つのコントローラは、上記テスト制御部としての機能と、上記主制御部としての機能と、を備える。
【0057】
図9は、回路基板100に対するバウンダリスキャンテストの実行タイミングの第1の例を示す図である。グラフの横軸は経過時間を示し、縦軸は振動加速度の大きさを示している。また、矢印Pは、バウンダリスキャンテストが実行されるタイミングを示している。振動ストレスの印加パターンとしては、図5に示した例が採用されている。テストコントローラ13は、回路基板100に対してバウンダリスキャンテストを複数回実行する。図9に示した第1の例において、バウンダリスキャンテストの実行間隔は、振動ストレスがON期間であるかOFF期間であるかに拘わらず、間隔W0で一定である(「一定パターン」と称す)。
【0058】
図10は、回路基板100に対するバウンダリスキャンテストの実行タイミングの第2の例を示す図である。振動ストレスの印加パターンとしては、図5に示した例が採用されている。テストコントローラ13は、回路基板100に対してバウンダリスキャンテストを複数回実行する。図10に示した第2の例において、システムコントローラ11は、振動ストレスの印加条件に応じて、バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。具体的には、システムコントローラ11は、振動ストレスの大きさが第1所定値未満であるOFF期間(例えば時刻T0~T1)においては、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、比較的広い間隔W11に設定する。また、システムコントローラ11は、振動ストレスの大きさが第1所定値以上であるON期間(例えば時刻T3~T4)においては、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、間隔W11より狭い間隔W12に設定する(「振動ストレスの大きさに応じた変動パターン」と称す)。
【0059】
この例によれば、振動ストレスの大きさが第1所定値以上である場合には、不良が発生しやすいため、システムコントローラ11がバウンダリスキャンテストの実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、振動ストレスの大きさが第1所定値未満である場合には、不良が発生しにくいため、システムコントローラ11がバウンダリスキャンテストの実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0060】
他の例として、システムコントローラ11は、振動ストレスの印加時間に応じてバウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせても良い。具体的には、システムコントローラ11は、テストが開始されてからの回路基板100に対する振動ストレスの印加時間を計測し、振動ストレスの印加時間が第2所定値未満である場合には、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、比較的広い間隔W11に設定する。また、システムコントローラ11は、振動ストレスの印加時間が第2所定値以上である場合には、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、間隔W11より狭い間隔W12に設定する(「振動ストレスの印加時間に応じた変動パターン」と称す)。
【0061】
この例によれば、振動ストレスの印加時間が第2所定値以上である場合には、不良が発生しやすいため、システムコントローラ11がバウンダリスキャンテストの実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、振動ストレスの印加時間が第2所定値未満である場合には、不良が発生しにくいため、システムコントローラ11がバウンダリスキャンテストの実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0062】
なお、上記とは逆に、不良が発生しやすい状況においてバウンダリスキャンテストの実行間隔を長く設定し、不良が発生しにくい状況においてバウンダリスキャンテストの実行間隔を短く設定することにより、回路基板100に発生した不良を確実に検出することができ、不良の発生を早期に発見することが可能となる。
【0063】
図11は、回路基板100に対するバウンダリスキャンテストの実行タイミングの第3の例を示す図である。振動ストレスの印加パターンとしては、図7に示した例が採用されている。システムコントローラ11は、振動ストレスの印加条件に応じて、バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。具体的には、システムコントローラ11は、振動ストレスが印加されていないOFF期間(時刻T0~T1)においては、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、比較的広い間隔W21に設定する。また、システムコントローラ11は、振動ストレスの大きさが1ステップ上昇した次の期間(時刻T1~T2)においては、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、間隔W21より狭い間隔W22に設定する。また、システムコントローラ11は、振動ストレスの大きさがさらに1ステップ上昇した次の期間(時刻T2~T3)においては、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、間隔W22より狭い間隔W23に設定する。このように、システムコントローラ11は、振動ストレスの大きさが1ステップ上昇する度に、バウンダリスキャンテストの実行間隔を徐々に狭く設定する。
【0064】
この例によれば、振動ストレスが大きいほど、不良が発生しやすいため、システムコントローラ11がバウンダリスキャンテストの実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、振動ストレスが小さいほど、不良が発生しにくいため、システムコントローラ11がバウンダリスキャンテストの実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0065】
なお、上記とは逆に、不良が発生しやすい状況においてバウンダリスキャンテストの実行間隔を長く設定し、不良が発生しにくい状況においてバウンダリスキャンテストの実行間隔を短く設定してもよい。この場合、回路基板100に発生した不良を確実に検出することができ、不良の発生を早期に発見することが可能となる。
【0066】
図12は、回路基板100に対するバウンダリスキャンテストの実行タイミングの第4の例を示す図である。振動ストレスの印加パターンとしては、図7に示した例が採用されている。また、振動ストレスに加えて温度ストレスも印加されている。温度サイクルの1周期(例えば時刻T3~T5)に連動して、振動ストレスの大きさが1ステップ上昇している。システムコントローラ11は、温度ストレスの印加条件に応じて、バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。具体的には、システムコントローラ11は、温度ストレスの大きさが遷移していない期間、つまり略一定(完全に一定である場合、及び、所定値未満の変動幅で微変動する場合の双方を含む)である期間(温度維持期間)内においては、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、比較的広い間隔W31に設定する。また、システムコントローラ11は、温度ストレスの大きさが遷移している期間(温度遷移期間)内においては、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、間隔W31より狭い間隔W32に設定する(「温度ストレスの印加条件に応じた変動パターン」と称す)。
【0067】
この例によれば、温度ストレスの大きさが遷移している期間内においては、不良が発生しやすいため、システムコントローラ11がバウンダリスキャンテストの実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、温度ストレスの大きさが一定である期間内においては、不良が発生しにくいため、システムコントローラ11がバウンダリスキャンテストの実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0068】
なお、上記とは逆に、温度遷移期間内におけるバウンダリスキャンテストの実行間隔よりも、温度維持期間内におけるバウンダリスキャンテストの実行間隔を短く設定しても良い。この場合は、不良が発生しにくい温度維持期間であっても、回路基板100に発生した不良を確実に検出でき、不良の発生を早期に発見することが可能となる。
【0069】
また、システムコントローラ11は、振動ストレスの大きさが一定である期間内においては、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、比較的広い間隔W31に設定し、振動ストレスの大きさが遷移している期間内においては、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、間隔W31より狭い間隔W32に設定しても良い。この場合、振動ストレスの大きさが遷移している期間内においては、不良が発生しやすいため、システムコントローラ11がバウンダリスキャンテストの実行間隔を短く設定することによって、回路基板100に発生した不良を早期に検出することができる。
【0070】
他の例として、システムコントローラ11は、バウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、バウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせても良い。具体的には、システムコントローラ11は、環境形成装置3から受信したテスト結果データに基づいて、バウンダリスキャンテストによって検出した不良箇所数をカウントする。システムコントローラ11は、不良箇所数のカウント値(テスト開始からの累積値)が第3所定値未満である場合には、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、比較的広い間隔W31に設定する。また、システムコントローラ11は、不良箇所数のカウント値が第3所定値以上である場合には、バウンダリスキャンテストの実行間隔を、間隔W31より狭い間隔W32に設定する(「不良箇所の検出状況に応じた変動パターン」と称す)。
【0071】
この例によれば、バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第3所定値以上である場合には、他の不良が発生しやすい状況であるため、システムコントローラ11がバウンダリスキャンテストの実行間隔を短く設定することによって、他の不良の発生を早期に発見できる。一方、バウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第3所定値未満である場合には、不良が発生しにくい状況であるため、システムコントローラ11がバウンダリスキャンテストの実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0072】
なお、上記とは逆に、検出された不良箇所数が第3所定値以上である場合におけるバウンダリスキャンテストの実行間隔よりも、検出された不良箇所数が第3所定値未満である場合におけるバウンダリスキャンテストの実行間隔を短く設定しても良い。この場合は、不良が発生しにくい状況においても、回路基板100に発生した不良を確実に検出でき、不良の発生を早期に発見することが可能となる。
【0073】
なお、振動ストレスの印加パターンとして図4に示した例が採用されている場合には、システムコントローラ11は、バウンダリスキャンテストの実行間隔として、一定パターン、振動ストレスの印加時間に応じた変動パターン、不良箇所の検出状況に応じた変動パターン、及び、温度ストレスの印加条件に応じた変動パターン、のいずれかを採用することができる。
【0074】
また、振動ストレスの印加パターンとして図5~8に示した例が採用されている場合には、システムコントローラ11は、バウンダリスキャンテストの実行間隔として、一定パターン、振動ストレスの大きさに応じた変動パターン、振動ストレスの印加時間に応じた変動パターン、不良箇所の検出状況に応じた変動パターン、及び、温度ストレスの印加条件に応じた変動パターン、のいずれかを採用することができる。
【0075】
システムコントローラ11は、バウンダリスキャンテストによる所定単位期間内における不良検出回数(又は不良検出割合)が所定の閾値を超えた場合に、回路基板100が故障したと判定する。回路基板100にクラック等の半田接合不良が発生した場合であっても、その不良の程度が小さい場合には、検出タイミングにおいてクラックが偶然に接触して不良として検出されない場合がある。振動ストレスの印加によって不良の程度が進行した場合には、たとえ検出タイミングがOFF期間に重なったとしても、クラックが接触せずに不良として検出される可能性が高い。従って、所定単位期間内における不良検出回数(又は不良検出割合)に基づいて故障判定を行うことにより、不良の程度が進行したことを検出することができる。
【0076】
<まとめ>
本実施形態に係る検査装置2によれば、検査対象である回路基板100は環境形成装置3に収容されており、システムコントローラ11(主制御部)は、環境形成装置3が回路基板100に対して3自由度以上の振動ストレスを印加している状態で、回路基板100に対するバウンダリスキャンテストをテストコントローラ13(テスト制御部)に実行させる。このように、実製品の使用状況の想定範囲を超える3自由度以上の振動ストレスを回路基板100に印加している状態で、当該回路基板100に対してバウンダリスキャンテストを実行することによって、回路基板100における不良の発生を促進しつつ、発生した不良箇所を高精度に評価できる。その結果、テストの所要時間の短縮化を図りつつ、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
【0077】
また、環境形成装置3としてHALT試験装置、HASS試験装置、又はHASA試験装置を使用することにより、6自由度の振動ストレスと、広温度域かつ急速変化の温度ストレスとを、回路基板100に印加することができる。その結果、回路基板100における不良の発生を効果的に促進することが可能となる。
【0078】
<変形例>
図13は、変形例に係る検査装置2(2B)の構成を簡略化して示すブロック図である。図2に示した構成に対して、スキャナユニット18が追加されている。本変形例において、環境形成装置3には、同種の複数の回路基板100(100_1~100_N)が収容されている。複数の回路基板100_1~100_Nは、中継ユニット17に対して並列に接続されている。各回路基板100と中継ユニット17とは、例えば、TDI(テストデータ入力)、TCK(テストクロック)、TMS(テストモードセレクト)、TRST(テストリセット)、及びTDO(テストデータ出力)の各ポート間を接続するための、5本を1組とする配線によって互いに接続される。図13中の「(N)」の表記は、回路基板100_1~100_Nと中継ユニット17との間のN組の並列配線をまとめていることを意味している。スキャナユニット18は、複数の回路基板100_1~100_Nのうちの一の回路基板100がテストコントローラ13に接続されるように、テストコントローラ13と複数の回路基板100_1~100_Nとの接続を切り替える。
【0079】
システムコントローラ11は、環境形成装置3が複数の回路基板100_1~100_Nに対して環境ストレスを印加している状態で、一の回路基板100をテストコントローラ13に順に接続させる接続処理をスキャナユニット18に繰り返し実行させる。また、システムコントローラ11は、当該接続処理に連動して、一の回路基板100に対するバウンダリスキャンテストをテストコントローラ13に実行させることにより、複数の回路基板100_1~100_Nの各々に対してバウンダリスキャンテストを複数回実行する。ここで、「連動して」とは、スキャナユニット18による接続の切り替えと、テストコントローラ13によるバウンダリスキャンテストの実行とが、互いに同期していることを意味する。
【0080】
図14は、スキャナユニット18の構成を簡略化して示す図である。スキャナユニット18は、検査対象である複数の回路基板100_1~100_Nと同数(又はそれ以上)の複数のチャンネルC(C1~CN)を有している。各チャンネルCは、常開接点方式のスイッチS(S1~SN)を含んでいる。各スイッチSの一方の端子はテストコントローラ13に接続され、他方の端子は中継ユニット17を介して回路基板100_1~100_Nに接続される。
【0081】
システムコントローラ11のスイッチング制御によってスイッチS1~SNのうちの一のスイッチSが閉じられることにより、そのスイッチSに接続されている一の回路基板100がテストコントローラ13に接続される。つまり、スイッチS1~SNの切替制御とチャンネルC1~CNの選択制御とは等価であり、一のスイッチSを閉じることによって、対応する一のチャンネルCが選択される。図14には、スイッチS1が閉じられてチャンネルC1が選択されることにより、回路基板100_1がテストコントローラ13に接続されている状況が示されている。なお、5つのポートの全てがスイッチS1によって切り替え可能な構成に代えて、5つのポートのうちの所望のポートだけがスイッチS1によって切り替え可能な構成が採用されてもよい。例えばTDI(テストデータ入力)及びTDO(テストデータ出力)の2つのポートだけがスイッチS1によって切り替え可能な構成が採用されてもよい。
【0082】
本変形例において、テストコントローラ13は、複数の回路基板100_1~100_Nの各々に対してバウンダリスキャンテストを複数回実行する。システムコントローラ11は、一の回路基板100に対するバウンダリスキャンテストによる不良箇所の検出状況に応じて、残りの回路基板100に対するバウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。具体的には、システムコントローラ11は、各回路基板100に対するバウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第4所定値未満である場合には、全ての回路基板100に対するバウンダリスキャンテストの実行間隔を、比較的広い第1間隔に設定する。また、システムコントローラ11は、少なくとも一つの回路基板100に対するバウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第4所定値以上である場合には、全ての回路基板100に対するバウンダリスキャンテストの実行間隔を、第1間隔より狭い第2間隔に設定する。
【0083】
本変形例によれば、スキャナユニット18(接続切替部)は、一の回路基板100をテストコントローラ13に順に接続させる接続処理を繰り返し実行し、テストコントローラ13は、当該接続処理に連動して一の回路基板100に対するバウンダリスキャンテストを実行する。これにより、一のテストコントローラ13を用いて複数の回路基板100_1~100_Nの各々に対するバウンダリスキャンテストが連続的に実行されるため、複数の回路基板100_1~100_Nに対するバウンダリスキャンテストを効率的に実行できる。その結果、テストコストを削減することが可能となる。
【0084】
また、本変形例によれば、少なくとも一つの回路基板に対するバウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第4所定値以上である場合には、他の回路基板100においても不良が発生しやすい状況であるため、システムコントローラ11が全ての回路基板100に関するバウンダリスキャンテストの実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見できる。一方、各回路基板100に対するバウンダリスキャンテストによって検出された不良箇所数が第4所定値未満である場合には、全ての回路基板100において不良が発生しにくい状況であるため、システムコントローラ11が全ての回路基板100に関するバウンダリスキャンテストの実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0085】
なお、本変形例では、一つの回路基板100に一つの半導体デバイスが実装されている回路構成を前提としたが、この例には限られない。一つの回路基板100に複数の半導体デバイスが実装されていても良い。この場合は、一つの半導体デバイスに対して一つのチャンネルCが割り当てられることにより、チャンネルCの選択と半導体デバイスの切り替えとが等価となる。
【符号の説明】
【0086】
1 検査システム
2 検査装置
3 環境形成装置
11 システムコントローラ
13 テストコントローラ
18 スキャナユニット
100(100_1~100_N) 回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14