(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】プラズマトーチ及びプラズマトーチ用センタパイプ
(51)【国際特許分類】
H05H 1/34 20060101AFI20240418BHJP
H05H 1/28 20060101ALI20240418BHJP
B23K 10/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H05H1/34
H05H1/28
B23K10/00 504
(21)【出願番号】P 2020175157
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】山口 義博
(72)【発明者】
【氏名】高田 伸浩
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-140871(JP,A)
【文献】特開2003-138329(JP,A)
【文献】特開2001-150142(JP,A)
【文献】特開2003-033862(JP,A)
【文献】特開2001-110593(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0016968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
B23K 10/00-10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる内部通路と、前記内部通路を閉じる先端部と、前記先端部の内面に接続される根元部を含み前記先端部の内面から突出する凸部と、少なくとも一部が前記凸部の内部に配置される電極インサートとを含む電極と、
前記軸線方向において前記先端部の内面と向かい合う第1パイプ端部と、前記第1パイプ端部と反対に位置する第2パイプ端部とを含み、少なくとも一部が前記電極の前記内部通路内に配置されるセンタパイプと、
前記センタパイプ内に配置される第1通路と、前記センタパイプの内面と前記凸部との間に配置される第2通路と、前記第1パイプ端部と前記先端部の内面との間に配置される第3通路と、前記センタパイプの外面と前記電極の内面との間に配置される第4通路とを含み、前記第1通路から前記第2通路と第3通路とを通って前記第4通路に冷却液が流れる冷却液通路と、
を備え、
前記凸部の少なくとも一部は、前記センタパイプ内に配置され、
前記センタパイプの内面は、先端方向に向かって縮径する第1傾斜面を含み、前記先端方向は、前記第2パイプ端部から前記第1パイプ端部へ向かう方向であり、
前記第1傾斜面は、前記凸部の前記根元部へ向かって延びている、
プラズマトーチ。
【請求項2】
前記センタパイプの内面は、前記第1傾斜面に対して、前記先端方向と逆方向に配置された第2傾斜面を含み、
前記第2傾斜面は、前記先端方向に向かって拡径している、
請求項1に記載のプラズマトーチ。
【請求項3】
前記第2傾斜面の少なくとも一部は、前記電極の径方向において、前記凸部と向かい合う、
請求項2に記載のプラズマトーチ。
【請求項4】
前記第2傾斜面の少なくとも一部は、前記電極の径方向において、前記凸部と向かい合わない位置に配置される、
請求項2又は3に記載のプラズマトーチ。
【請求項5】
前記第2通路は、前記第2傾斜面と前記凸部との間において、前記先端方向に向かって拡大する断面積を有する、
請求項2から4のいずれかに記載のプラズマトーチ。
【請求項6】
前記第1傾斜面の少なくとも一部は、前記電極の径方向において、前記電極インサートと並ぶ位置に配置される、
請求項1から5のいずれかに記載のプラズマトーチ。
【請求項7】
前記第2通路は、前記第1傾斜面と前記凸部との間において、前記先端方向に向かって縮小する断面積を有する、
請求項1から6のいずれかに記載のプラズマトーチ。
【請求項8】
前記第3通路は、前記先端方向と逆方向に向かって拡大する断面積を有する、
請求項1から7のいずれかに記載のプラズマトーチ。
【請求項9】
プラズマトーチ用センタパイプであって、
第1パイプ端部と、
前記第1パイプ端部と反対に位置する第2パイプ端部と、
前記センタパイプの内面に設けられ、先端方向へ向かって縮径し、前記先端方向は、前記第2パイプ端部から前記第1パイプ端部へ向かう方向である、第1傾斜面と、
前記センタパイプの内面に設けられ、前記第1傾斜面に対して、前記先端方向と逆方向に配置され、前記先端方向へ向かって拡大する第2傾斜面と、
を備えるプラズマトーチ用センタパイプ。
【請求項10】
前記センタパイプの軸線方向に対する前記第1傾斜面の傾斜角度は、前記軸線方向に対する前記第2傾斜面の傾斜角度よりも大きい、
請求項9に記載のプラズマトーチ用センタパイプ。
【請求項11】
前記センタパイプの軸線方向において、前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面よりも長い、
請求項9又は10に記載のプラズマトーチ用センタパイプ。
【請求項12】
前記センタパイプの外面に設けられ、前記先端方向と逆方向へ向かって縮径する第3傾斜面をさらに備える、
請求項9から11のいずれかに記載のプラズマトーチ用センタパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマトーチ及びプラズマトーチ用センタパイプ
【背景技術】
【0002】
プラズマトーチは、電極とワークとの間でアークを発生させる。プラズマトーチは、アークをノズルで細く絞り込むことで、ワークの切断に適した高温高速のプラズマアークを生成する。例えば、特許文献1に示されているように、電極内は中空であり、電極の内部にはセンタパイプが配置される。電極の先端部の内面には、凸部が設けられている。電極の先端の外面には凹部が設けられている。凹部には、ハフニウムなどの電極インサートが配置される。凸部の一部は、センタパイプ内に配置される。
【0003】
電極とセンタパイプとによって、冷却液通路が形成される。冷却液通路は、センタパイプの内部の通路と、センタパイプの外面と電極の内面との間の通路とを含む。冷却液が冷却液通路を流れることで、電極が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極は高温になるため、プラズマトーチでは、電極への高い冷却能力が求められる。特に、プラズマトーチの高出力化により、電極の寿命の低下を防止するために、冷却能力の向上が望まれている。本開示は、プラズマトーチにおいて、電極の冷却能力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るプラズマトーチは、電極と、センタパイプと、冷却液通路とを備える。電極は、内部通路と、先端部と、凸部と、電極インサートとを含む。内部通路は、電極の軸線方向に延びている。先端部は、内部通路を閉じる。凸部は、先端部の内面に接続される根元部を含む。凸部は、先端部の内面から突出している。電極インサートの少なくとも一部は、凸部の内部に配置される。センタパイプは、第1パイプ端部と、第2パイプ端部とを含む。第1パイプ端部は、軸線方向において先端部の内面と向かい合う。第2パイプ端部は、第1パイプ端部と反対に位置する。センタパイプの少なくとも一部は、電極の内部通路内に配置される。
【0007】
冷却液通路は、第1通路と、第2通路と、第3通路と、第4通路とを含む。第1通路は、センタパイプ内に配置される。第2通路は、センタパイプの内面と凸部との間に配置される。第3通路は、第1パイプ端部と先端部の内面との間に配置される。第4通路は、センタパイプの外面と電極の内面との間に配置される。冷却液は、第1通路から第2通路と第3通路とを通って第4通路に流れる。凸部の少なくとも一部は、センタパイプ内に配置される。センタパイプの内面は、先端方向に向かって縮径する第1傾斜面を含む。先端方向は、第2パイプ端部から第1パイプ端部へ向かう方向である。第1傾斜面は、凸部の根元部へ向かって延びている。
【0008】
本態様に係るプラズマトーチによれば、第1傾斜面によって、冷却液通路が絞られる。それにより、冷却液の流速が増大する。また、冷却液は、第1傾斜面によって、電極の凸部の根元部へ案内される。凸部の根元部は、アークが発生する電極インサートに近いため、高温になり易い。従って、第1傾斜面によって根元部へ冷却液を案内することで、効果的に電極を冷却することができる。それにより、電極への冷却能力が向上する。
【0009】
本開示の他の態様に係るプラズマトーチ用センタパイプは、第1パイプ端部と、第2パイプ端部と、第1傾斜面と、第2傾斜面とを備える。第2パイプ端部は、第1パイプ端部と反対に位置する。第1傾斜面は、センタパイプの内面に設けられる。第1傾斜面は、先端方向へ向かって縮径している。先端方向は、第2パイプ端部から第1パイプ端部へ向かう方向である。第2傾斜面は、センタパイプの内面に設けられる。第2傾斜面は、第1傾斜面に対して、先端方向と逆方向に配置される。第2傾斜面は、先端方向へ向かって拡大している。
【0010】
本態様に係るセンタパイプによれば、プラズマトーチにおいて、第1傾斜面によって、冷却液通路が絞られる。それにより、冷却液の流速が増大する。また、冷却液は、第1傾斜面によって、電極の凸部へ案内される。凸部は、アークが発生する電極の先端部に近いため、高温になり易い。従って、第1傾斜面によって凸部へ冷却液を案内することで、効果的に電極を冷却することができる。それにより、電極への冷却能力が向上する。さらに、第2傾斜面によって、冷却液通路が拡大される。そのため、第1傾斜面によって、冷却液通路が絞られていても、圧損の増大が抑えられる。それにより、冷却液を供給するためのポンプへの負荷が軽減される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、プラズマトーチにおいて、電極の冷却能力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るプラズマトーチの中心軸線に沿った断面図である。
【
図3】第2冷却液通路内の複数の位置における第2冷却液通路の断面積を示す図である。
【
図4】電極及び変形例に係るセンタパイプの拡大図である。
【
図5】変形例に係る第2冷却液通路内の複数の位置における第2冷却液通路の断面積を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態に係るプラズマトーチについて説明する。
図1は、実施形態に係るプラズマトーチ1の中心軸線に沿った断面図である。本実施形態においてプラズマトーチ1は、酸素プラズマ切断用のプラズマトーチである。ただし、プラズマトーチ1は、窒素やアルゴンなど酸素を含まないガスを用いるプラズマ切断用のプラズマトーチであってもよい。
【0014】
プラズマトーチ1は、トーチ本体3と、第1リテーナキャップ4と、第2リテーナキャップ5と、電極6と、絶縁ガイド7と、ノズル8と、絶縁リング9と、シールドキャップ10とを有する。トーチ本体3は、接続管32に取り付けられている。トーチ本体3は、ベース部33と、電極台座34と、ノズル台座36と、絶縁スリーブ37と、ホルダ38とを有する。ベース部33と、電極台座34と、ノズル台座36と、絶縁スリーブ37と、ホルダ38とは、プラズマトーチ1の中心軸線と同心に配置される。
【0015】
ベース部33は、円筒状の形状を有する。ベース部33は、導電体で形成されている。電極台座34と絶縁スリーブ37とは、ベース部33の孔に挿入されている。電極台座34は、円管状の形状を有する。電極台座34は、導電体で形成されている。ベース部33は、図示しない電源からのケーブルと電気的に接続されている。
【0016】
絶縁スリーブ37は、円管状の形状を有する。絶縁スリーブ37は、絶縁体で形成されている。絶縁スリーブ37の一部は、ベース部33の孔内に配置されている。絶縁スリーブ37は、電極台座34とノズル台座36との間に位置している。
【0017】
ノズル台座36は、円管状の形状を有する。ノズル台座36は、絶縁体で形成されている。ノズル台座36には、ノズルに電気的に接触する接触子(図示せず)が取り付けられている。接触子は、電源からのケーブルと電気的に接続されている。ベース部33は、ノズル台座36の孔に挿入されている。絶縁スリーブ37は、ノズル台座36の孔に挿入されている。絶縁スリーブ37の先端部は、ベース部33から突出しており、ノズル台座36の孔内に配置されている。
【0018】
ホルダ38は、円管状の形状を有する。ホルダ38は、接着等の手段により接続管32に取り付けられている。ノズル台座36は、ホルダ38の孔に挿入されている。ノズル台座36の先端部は、ホルダ38から突出している。
【0019】
第1リテーナキャップ4は、先端部が先細りした円筒状の形状を有する。第1リテーナキャップ4は、ノズル台座36を覆うように、トーチ本体3に取り付けられる。第1リテーナキャップ4の先端部は、シールドキャップ10が挿入される開口4aを有する。ホルダ38とノズル台座36とは、第1リテーナキャップ4内に配置される。第1リテーナキャップ4は、ホルダ38に取り付けられる。
【0020】
第2リテーナキャップ5は、先端部が先細りした円筒状の形状を有する。第2リテーナキャップ5の先端部は、シールドキャップ10が挿入される開口5aを有する。第2リテーナキャップ5は、第1リテーナキャップ4を覆うように、第1リテーナキャップ4に取り付けられる。第1リテーナキャップ4は、第2リテーナキャップ5内に配置される。第2リテーナキャップ5は、第1リテーナキャップ4に取り付けられる。
【0021】
電極6と絶縁ガイド7とノズル8と絶縁リング9とシールドキャップ10とは、互いに同心に配置される。電極6と絶縁ガイド7とノズル8と絶縁リング9とシールドキャップ10とのそれぞれの軸線とは、プラズマトーチ1の中心軸線と一致する。電極6は円筒状の形状を有している。電極6は、導電体で形成されている。電極6の一部は、絶縁ガイド7の孔内に配置されている。電極6は、絶縁ガイド7と接合されている。電極6については、後に詳細に説明する。
【0022】
絶縁ガイド7は、電極6とノズル8とを電気的に絶縁すると共に、電極6とノズル8とを連結する。絶縁ガイド7は、電極6とノズル8とを、軸線方向及び径方向に、互いに位置決めする。なお、軸線方向は、
図1における上下の方向である。径方向は、
図1における左右の方向である。絶縁ガイド7は、管状の形状を有する。絶縁ガイド7は、絶縁体で形成されている。ノズル8は、先端部が先細り形状を有する円筒状の形状を有する。ノズル8は、絶縁ガイド7に接合される。ノズル8は、噴射孔8aを有する。噴射孔8aは、ノズル8の軸線方向に延びており、ノズル8の先端に到達している。
【0023】
絶縁リング9は、ノズル8に接合されている。シールドキャップ10は、ノズル8を覆う。シールドキャップ10は、絶縁リング9に接合される。シールドキャップ10は噴射孔10aを有する。シールドキャップ10の噴射孔10aとノズル8の噴射孔8aとは、同心に配置される。
【0024】
プラズマトーチ1は、センタパイプ11を備えている。センタパイプ11は、電極台座34の孔に挿入されている。センタパイプ11は、ノズル台座36の先端から突出している。センタパイプ11の少なくとも一部は、電極6内に配置される。センタパイプ11は、電極6と同心に配置される。センタパイプ11は、電極6内に冷却水を供給する。
【0025】
センタパイプ11は、導電体で形成されている。センタパイプ11は、電極台座34と接触しており、電極台座34と電気的に接続されている。センタパイプ11の外面には、接触子12が取り付けられている。接触子12は導電体で形成されている。接触子12は、電極6の内面に接触している。接触子12は、電極6とセンタパイプ11とを電気的に接続する。
【0026】
センタパイプ11は、第1パイプ端部13と第2パイプ端部14とを含む。第1パイプ端部13は、軸線方向において先端部62の内面と向かい合う。第1パイプ端部13は、先端部62の内面に対して間隔をおいて配置されている。第2パイプ端部14は、軸線方向において、第1パイプ端部13と反対に位置する。以下の説明において、軸線方向において、第2パイプ端部14から第1パイプ端部13へ向かう方向が「先端方向A1」と定義される。先端方向A1と逆方向、すなわち、軸線方向において、第1パイプ端部13から第2パイプ端部14へ向かう方向が「基端方向A2」と定義される。
【0027】
図2は、電極6及びセンタパイプ11の拡大図である。
図1及び
図2に示すように、電極6は、内部通路61と、先端部62と、基端部63と、凸部64と、電極インサート65とを含む。内部通路61は、電極6の軸線方向に延びている。先端部62は、内部通路61を閉じている。
図1に示すように、先端部62は、ノズル8内に配置されている。内部通路61は、基端部63において開口している。
【0028】
図2に示すように、凸部64は、内部通路61内に配置されている。凸部64は、先端部62の内面から突出している。凸部64は、基端方向A2へ向かって突出している。凸部64は、根元部66を含む。根元部66は、先端部62の内面に接続されている。先端部62の外面は、凹部67を含む。凹部67は、基端方向A2へ向かって凹んでいる。電極インサート65は、凹部67内に配置されている。電極インサート65の少なくとも一部は、凸部64の内部に配置される。電極インサート65は、例えばハフニウムなどのプラズマ電極として利用される材料で形成される。電極インサート65は、先端部65から凹んだ形状を有している。それにより、凹部67の縁でガス流が剥離することで、電極インサート65の金属蒸気の拡散が抑えられる。その結果、電極6の消耗が抑えられる。ただし、電極インサート65の形状は上記のものに限られず、変更されてもよい。
【0029】
凸部64の少なくとも一部は、センタパイプ11内に配置されている。センタパイプ11の内面は、凸部64に対して間隔をおいて配置されている。センタパイプ11の内面は、第1傾斜面15と第2傾斜面16とを含む。第1傾斜面15は、径方向において凸部64に対して間隔をおいて配置されている。第1傾斜面15は、先端方向A1に向かって縮径している。第1傾斜面15は、先端方向A1に向かって、径方向内方へ傾斜している。第1傾斜面15は、先端方向A1に向かって、凸部64に近づくように傾斜している。
【0030】
第1傾斜面15は、凸部64の根元部66へ向かって延びている。例えば、第1傾斜面15の延長線は、凸部64の根元部66と重なる。第1傾斜面15の少なくとも一部は、径方向において、凸部64と向かい合っている。本実施形態では、第1傾斜面15の全体が、径方向において、凸部64と向かい合っている。第1傾斜面15の少なくとも一部は、電極6の径方向において、電極インサート65と並ぶ位置に配置される。言い換えれば、第1傾斜面15の少なくとも一部は、電極6の径方向から見て、電極インサート65と重なる。本実施形態では、第1傾斜面15の全体が、電極6の径方向において、電極インサート65と並ぶ位置に配置されている。
【0031】
第2傾斜面16は、第1傾斜面15に対して、基端方向A2に配置されている。第2傾斜面16は、第1傾斜面15に接続されている。第2傾斜面16は、径方向において凸部64に対して間隔をおいて配置されている。第2傾斜面16は、先端方向A1に向かって拡径している。第2傾斜面16は、先端方向A1へ向かって、径方向外方へ傾斜している。第2傾斜面16は、先端方向A1へ向かって凸部64から離れるように傾斜している。
【0032】
第2傾斜面16の一部は、電極6の径方向において、凸部64と向かい合う。第2傾斜面16の残りの部分は、電極6の径方向において、凸部64と向かい合わない位置に配置される。すなわち、第2傾斜面16の残りの部分は、凸部64よりも基端方向A2に位置している。センタパイプ11の軸線方向に対する第1傾斜面15の傾斜角度は、軸線方向に対する第2傾斜面16の傾斜角度よりも大きい。センタパイプ11の軸線方向において、第2傾斜面16は、第1傾斜面15よりも長い。
【0033】
センタパイプ11の外面は、電極6の内面に対して間隔をおいて配置されている。センタパイプ11の外面は、第3傾斜面17を含む。第3傾斜面17は、基端方向A2へ向かって縮径する。第3傾斜面17は、基端方向A2へ向かって、径方向内方へ傾斜している。第3傾斜面17は、基端方向A2へ向かって、電極6の内面から離れるように傾斜している。
【0034】
次に、プラズマトーチ1の冷却液通路について説明する。
図1において、実線の矢印は、冷却液の流れを示している。
図1に示すように、トーチ本体3には、冷却液供給管30と冷却液排出管31とが接続されている。冷却液は、図示しない冷却液の供給源から、ポンプによって、冷却液供給管30を通って、プラズマトーチ1に供給される。冷却液は、トーチ本体3内の第1冷却液通路W1から、第2冷却液通路W2に供給される。第2冷却液通路W2は、電極6とセンタパイプ11とによって形成されている。第2冷却液通路W2については、後に詳細に説明する。冷却液は、第2冷却液通路W2から、トーチ本体3内の第3冷却液通路W3を通り、第4冷却液通路W4へ供給される。第4冷却液通路W4は、第1リテーナキャップ4とノズル8との間の通路を通る。冷却液は、第4冷却液通路W4から、トーチ本体3内の第5冷却液通路W5を通り、冷却液排出管31へ排出される。
【0035】
次に、第2冷却液通路W2について説明する。
図2に示すように、第2冷却液通路W2は、第1通路21と、第2通路22と、第3通路23と、第4通路24とを含む。第1通路21は、センタパイプ11内に配置される。第2通路22は、センタパイプ11の内面と凸部64との間に配置される。第3通路23は、第1パイプ端部13と先端部62の内面との間に配置される。第4通路24は、センタパイプ11の外面と電極6の内面との間に配置される。冷却液は、第1通路21から、第2通路22と第3通路23とを順に通って、第4通路24に流れる。
【0036】
図3は、第2冷却液通路W2内の位置P1-P8における第2冷却液通路W2の断面積を示す図である。第2冷却液通路W2の断面積は、センタパイプ11の軸線に垂直な断面における第2冷却液通路W2の面積を意味する。
図3に示すように、第1位置P1と第2位置P2とは、第1通路21内に位置する。第1位置P1と第2位置P2との間では、第1通路21の断面積は一定である。
【0037】
第3位置P3、第4位置P4,及び第5位置P5は、第2通路22内に位置する。第3位置P3は、第2傾斜面16と凸部64との間に位置する。第5位置P5は、第1傾斜面15と凸部64との間に位置する。第4位置P4は、第3位置と第5位置との間に位置する。第4位置P4は、第1傾斜面15と第2傾斜面16との境界位置と凸部64との間に位置する。
【0038】
第3位置P3と第4位置P4との間では、第2通路22の断面積は、先端方向A1に向かって拡大する。すなわち、第2通路22は、第2傾斜面16と凸部64との間において、先端方向A1に向かって拡大する断面積を有する。第4位置P4と第5位置P5との間では、第2通路22の断面積は、先端方向A1に向かって縮小する。すなわち、第2通路22は、第1傾斜面15と凸部64との間において、先端方向A1に向かって縮小する断面積を有する。第5位置P5における第2通路22の断面積は、位置P3における第2通路22の断面積よりも小さい。
【0039】
第6位置P6は、第3通路23内に位置する。第5位置P5と第6位置P6との間では、第3通路23の断面積は、先端方向A1へ向かって拡大している。第7位置P7と第8位置P8とは、第4通路24内に位置する。第7位置P7と第8位置P8との間では、第4通路24の断面積は、基端方向A2へ向かって拡大している。すなわち、第4通路24は、基端方向A2に向かって拡大する断面積を有する。第8位置P8における第4通路24の断面積は、第1位置P1における第1通路21の断面積よりも大きい。
【0040】
以上説明した本実施形態に係るプラズマトーチ1では、第2通路22は、第1傾斜面15と凸部64との間において、先端方向A1に向かって縮小する断面積を有する。それにより、冷却液の流速が増大する。また、冷却液は、第1傾斜面15によって、電極6の凸部64の根元部66へ案内される。凸部64の根元部66は、アークが発生する電極インサート65に近いため、高温になり易い。従って、第1傾斜面15によって根元部66へ冷却液を案内することで、効果的に電極6を冷却することができる。それにより、電極6への冷却能力が向上する。
【0041】
また、第2傾斜面16は、第1傾斜面15に対して冷却液の流れの上流に位置している。第2傾斜面16は、先端方向A1へ向かって拡径している。また、第2通路22は、第2傾斜面16と凸部64との間において、先端方向A1に向かって拡大する断面積を有する。そのため、第2通路22における圧損の増大を抑えることができる。それにより、冷却液を供給するためのポンプへの負荷が軽減される。さらに、第2傾斜面16は、第1傾斜面15と比べて、電極インサート65から離れている。そのため、第2傾斜面16と凸部64との間において、冷却液の流速が低下しても、電極6への冷却能力の低下が抑えられる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0043】
プラズマトーチの構造は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、トーチ本体3と、第1リテーナキャップ4と、第2リテーナキャップ5と、電極6と、絶縁ガイド7と、ノズル8と、絶縁リング9と、シールドキャップ10との構造は、変更されてもよい。センタパイプ11は、接触子12を介さずに電極6と電気的に接続されてもよい。
【0044】
センタパイプ11の構造は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、第1傾斜面15及び第2傾斜面16の構造は変更されてもよい。
図4は、変形例に係るセンタパイプ11を示す図である。
図5は、変形例に係る第2冷却液通路W2の断面積を示す図である。
図4に示すように、変形例に係るセンタパイプ11では、軸線方向において、第2傾斜面16は、第1傾斜面15よりも短い。第3位置P3と第4位置P4との間において、第2通路22の断面積は、先端方向A1へ向かって縮小している。すなわち、第2通路22は、第2傾斜面16と凸部64との間において、先端方向A1に向かって縮小する断面積を有する。変形例に係るセンタパイプ11の他の構成については、上述した実施形態に係るセンタパイプ11と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示によれば、プラズマトーチにおいて、電極の冷却能力が向上する。
【符号の説明】
【0046】
6:電極, 11:センタパイプ, 13:第1パイプ端部, 14:第2パイプ端部, 15:第1傾斜面, 16:第2傾斜面, 17:第3傾斜面, 21:第1通路, 22:第2通路, 23:第3通路, 24:第4通路, 61:内部通路, 62:先端部, 64:凸部, 65:電極インサート, 66:根元部, W2:第2冷却液通路