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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】医療用シェルター設備及び船舶
(51)【国際特許分類】
   B63J 2/12 20060101AFI20240418BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240418BHJP
   B63J 2/04 20060101ALI20240418BHJP
   B63J 2/10 20060101ALI20240418BHJP
   B63B 13/00 20060101ALI20240418BHJP
   A61G 10/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B63J2/12 Z
B63B35/00 Z
B63J2/04
B63J2/10
B63B13/00 A
A61G10/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020176115
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067420
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】豊田 剛生
(72)【発明者】
【氏名】上野 和浩
(72)【発明者】
【氏名】立石 文則
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-247469(JP,A)
【文献】特開2006-234229(JP,A)
【文献】特開2011-073606(JP,A)
【文献】特開平11-334697(JP,A)
【文献】特開2010-216765(JP,A)
【文献】特開2007-236817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63J 2/00 - 2/12
B63B 13/00
B63B 35/00
A61G 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用設備を収容するシェルター本体と、
前記シェルター本体内に空気を導入する空気導入部と、
海水を熱源として、前記空気導入部から導入される空気の温度を調整する第一熱交換器と、
前記シェルター本体に設けられ、海水が流通する海水流通ラインと、
前記シェルター本体内に設けられて、医療物資を収容可能な収容部と、
前記第一熱交換器よりも前記海水流通ラインの下流側で、該海水流通ラインを流通する前記海水と前記収容部内とを熱交換させる第二熱交換器と、
前記海水流通ラインにおける前記第二熱交換器の下流側の前記海水を、前記海水流通ラインにおける前記第一熱交換器の上流側に還流させる還流ラインと、
を備え、
前記第一熱交換器は、前記空気導入部から導入される前記空気と前記海水流通ラインを流通する前記海水とを熱交換させることで、前記空気の温度を調整する医療用シェルター設備。
【請求項2】
前記シェルター本体内から空気を排出する空気排出部をさらに備える請求項1に記載の医療用シェルター設備。
【請求項3】
前記収容部内に設けられて、該収容部内の温度を調整可能な温度調整部をさらに備える請求項1又は2に記載の医療用シェルター設備。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用シェルター設備と、
該医療用シェルター設備の前記シェルター本体が設置される船舶本体と、
を備え、
前記船舶本体は、
前記海水流通ラインに前記海水を導入可能な海水供給ラインと、
前記海水流通ラインから前記海水を排出可能な海水排出ラインと、
を有する船舶。
【請求項5】
医療用設備を収容するシェルター本体と、
前記シェルター本体内に空気を導入する空気導入部と、
海水を熱源として、前記空気導入部から導入される空気の温度を調整する第一熱交換器と、
前記シェルター本体に設けられ、海水が流通する海水流通ラインと、
を有する医療用シェルター設備と、
該医療用シェルター設備の前記シェルター本体が設置される船舶本体と、
を備え、
前記第一熱交換器は、前記空気導入部から導入される前記空気と前記海水流通ラインを流通する前記海水とを熱交換させることで、前記空気の温度を調整し、
前記船舶本体は、
前記海水流通ラインに前記海水を導入可能な海水供給ラインと、
前記海水流通ラインから前記海水を排出可能な海水排出ラインと、
前記海水流通ラインに導入される前記海水の温度を調整可能な熱源機器と、
を有する船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用シェルター設備及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、医療用シェルターの一種として、医療設備が収容された医療用コンテナが開示されている。医療用コンテナは患者を収容する居室として機能する。医療用コンテナは医療設備の不足する地域に陸上輸送又は海上輸送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-12577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、医療用コンテナ内の居室は、患者や医師、看護師等の快適性を担保する観点から室内空調が必要となる。特に船舶上に医療用コンテナを設置した場合には、エネルギー供給手段が制限されるために空調負荷の大きさが問題となる。
また、医療用コンテナでは、患者を収容して医療行為が行われるため、衛生性を担保する必要がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、省エネルギー化を図りながら衛生性を担保することができる医療用シェルター及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る医療用シェルター設備は、シェルター本体と、前記シェルター本体内に空気を導入する空気導入部と、海水を熱源として、前記空気導入部から導入される空気の温度を調整する第一熱交換器と、前記シェルター本体に設けられ、海水が流通する海水流通ラインと、前記シェルター本体内に設けられて、医療物資を収容可能な収容部と、前記第一熱交換器よりも前記海水流通ラインの下流側で、該海水流通ラインを流通する前記海水と前記収容部内とを熱交換させる第二熱交換器と、前記海水流通ラインにおける前記第二熱交換器の下流側の前記海水を、前記海水流通ラインにおける前記第一熱交換器の上流側に還流させる還流ラインと、を備え、前記第一熱交換器は、前記空気導入部から導入される前記空気と前記海水流通ラインを流通する前記海水とを熱交換させることで、前記空気の温度を調整する。
【0007】
本開示に係る船舶は、上記の医療用シェルター設備と、該医療用シェルター設備のシェルター本体が設置される船舶本体と、を備え、前記船舶本体は、前記海水流通ラインに前記海水を導入可能な海水供給ラインと、前記海水流通ラインから前記海水を排出可能な海水排出ラインと、を有する。
本開示に係る船舶は、医療用設備を収容するシェルター本体と、前記シェルター本体内に空気を導入する空気導入部と、海水を熱源として、前記空気導入部から導入される空気の温度を調整する第一熱交換器と、前記シェルター本体に設けられ、海水が流通する海水流通ラインと、を有する医療用シェルター設備と、該医療用シェルター設備の前記シェルター本体が設置される船舶本体と、を備え、前記第一熱交換器は、前記空気導入部から導入される前記空気と前記海水流通ラインを流通する前記海水とを熱交換させることで、前記空気の温度を調整し、前記船舶本体は、前記海水流通ラインに前記海水を導入可能な海水供給ラインと、前記海水流通ラインから前記海水を排出可能な海水排出ラインと、前記海水流通ラインに導入される前記海水の温度を調整可能な熱源機器と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、省エネルギー化を図りながら衛生性を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態に係る船舶の側面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る船舶の要部を示す縦断面図である。
図3】本開示の第二実施形態に係る船舶の要部を示す縦断面図である。
図4】本開示の第二実施形態に係る船舶の医療用シェルター設備における冷凍サイクルの模式図である。
図5】本開示の第一実施形態の第一変形例に係る船舶の医療用シェルター設備を示す模式図である。
図6】本開示の第一実施形態の第二変形例に係る船舶の医療用シェルター設備を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
(船舶)
以下、本開示の第一実施形態に係る船舶1について図1及び図2を参照して詳細に説明する。船舶1は、船舶本体2、及び医療用シェルター設備としての医療用コンテナ設備30を備えている。船舶1は、医療用コンテナ設備30を海上輸送するための病院船である。また、船舶1は、医療用コンテナ設備30を備えることで、船舶1上で医療行為を行うことが可能である。
【0012】
(船舶本体)
図1に示すように、船舶本体2は、船体10、主機11、プロペラ12及び居住施設13を有している。
船体10は、舷側10a、船底10b及び上甲板10cを有している。舷側10aは、船舶1の側部を構成するように左右に一対が設けられている。船底10bは、左右一対の舷側10a同士を下部で接続している。上甲板10cは、船底10bよりも上方で左右一対の舷側10a同士を接続している。上甲板10cは、船首から船尾にわたって延びる暴露甲板である。上甲板10cは、水平方向に延びている。
【0013】
主機11は船体10内における船尾側の部分に設けられている。プロペラ12は、船尾に設けられており、主機11によって回転駆動される。居住施設13は、船体10の上甲板10cの船尾側の部分から上方に立ち上がるように設けられている。
【0014】
図2に示すように、船舶本体2は、海水供給ライン14、海水排出ライン16、海水タンク17及び熱源機器20をさらに有している。
【0015】
海水供給ライン14は、船体10内に配置されたパイプであって海水が流通可能とされている。海水供給ライン14の一端は船体10の外面における喫水線よりも下方に開口する取水口とされている。海水供給ライン14の一端は、例えば舷側10a又は船底10bに開口している。海水供給ライン14の他端は、例えば上甲板10cに開口しており、他のパイプと接続可能に構成されている。海水供給ライン14の一端は上流端であり、海水供給ライン14の他端は下流端である。
【0016】
海水供給ライン14の一端側の部分には、第一供給弁14aが設けられている。海水供給ライン14の他端側の部分には、第二供給弁14bが設けられている。これら第一供給弁14a及び第二供給弁14bは、任意に開閉できるように構成されている。
【0017】
海水供給ライン14の中途には、海水供給ポンプ15が設けられている。海水供給ポンプ15は、海水供給ライン14における第一供給弁14aと第二供給弁14bとの間に設けられている。海水供給ポンプ15の駆動によって海水供給ライン14の一端から他端に向かって一端から取り入れられた海水が流通する。
【0018】
海水排出ライン16は、船体10内に配置されたパイプである。海水排出ライン16の一端は、例えば上甲板10cに開口しており、他のパイプと接続可能に構成されている。海水排出ライン16の他端は、舷側10a又は船底10bに開口する排水口とされている。海水排出ライン16の一端は上流端であり、他端は下流端である。
【0019】
海水排出ライン16の一端側の部分には、第一排出弁16aが設けられている。海水排出ライン16の他端側の部分には、第二排出弁16bが設けられている。これら第一排出弁16a及び第二排出弁16bは、任意に開閉できるように構成されている。
【0020】
海水タンク17は、船体10内に設けられている。海水タンク17は海水を貯留可能に構成されている。海水タンク17は、船体10内に構成された図示しないラインを介しての海水の導入・排出が可能とされている。なお、船体10内に設けられているバラストタンク等の他の用途のタンクを海水タンク17として用いてもよい。
【0021】
海水タンク17は、第一タンクライン18を介して海水供給ライン14と接続されている。第一タンクライン18は、海水供給ライン14における第一供給弁14aと第二供給弁14bとの間の部分であって、海水供給ポンプ15よりも一端側の部分に接続されている。第一タンクライン18には、第一タンク弁18aが設けられている。第一タンク弁18aは、任意に開閉できるように構成されている。
【0022】
海水タンク17は、第二タンクライン19を介して海水排出ライン16と接続されている。第二タンクライン19は、海水排出ライン16における第一排出弁16aと第二排出弁16bの間の部分に接続されている。第二タンクライン19には、第二タンク弁19aが設けられている。第二タンク弁19aは、任意に開閉できるように構成されている。
【0023】
熱源機器20は、船体10に設けられたヒータ又は冷却器である。熱源機器20として、船体10内に設けられた主機11、補機等の内燃機関や発熱する機器を用いてもよい。熱源機器20として、船体10内に設けられた冷凍機を用いてもよい。
【0024】
熱源機器20は、第一機器ライン21を介して海水供給ライン14に接続されている。第一機器ライン21は、海水供給ライン14における海水供給ポンプ15と第二供給弁14bとの間に接続されている。第一機器ライン21には、第一機器弁21aが設けられている。第一機器弁21aは任意に開閉できるように構成されている。
【0025】
熱源機器20は、第二機器ライン22を介して海水供給ライン14に接続されている。第二機器ライン22は、海水供給ライン14における第一機器ライン21との接続箇所と第二供給弁14bとの間に接続されている。第二機器ライン22には、第二機器弁22aが設けられている。第二機器弁22aは任意に開閉できるように構成されている。
【0026】
海水供給ライン14における第一機器ライン21の接続箇所と第二機器ライン22の接続箇所との間には、バイパス弁23が設けられている。バイパス弁23は任意に開閉できるように構成されている。
【0027】
(医療用コンテナ設備(医療用シェルター設備))
図1に示すように、医療用コンテナ設備30は船舶本体2に複数設けられている。医療用コンテナ設備30は、船舶本体2に着脱可能に構成されている。即ち、医療用コンテナ設備30は、船舶1に対して別途搭載できるように船舶本体2とは独立して構成されている。
【0028】
図2に示すように、医療用コンテナ設備30は、シェルター本体としてのコンテナ本体31、空気導入部40、空気排出部50、第一熱交換器60、収容部70、第二熱交換器80、温度調整部90、海水流通ライン100及び還流ライン110を有している。
【0029】
(コンテナ本体(シェルター本体))
コンテナ本体31は、船体10の上甲板10c上に設けられている。コンテナ本体31は、底板31a、側壁31b及び天板31cから構成された直方体状をなしている。コンテナ本体31には、例えばコンテナが用いられる。コンテナ本体31内の空間には、例えばベッド等の医療設備32が設けられている。即ち、コンテナ本体31内の空間は、患者が収容されて医療行為が行われる居室として機能する。コンテナ本体31の側壁31bは、4つの壁部から構成されている。4つの壁部のうちの一つには、人がコンテナ内に出入りするための出入口が設けられている。出入口は、扉によって開放・閉塞されるようになっている。
【0030】
(空気導入部)
空気導入部40は、外部からコンテナ本体31内に空気を導入する。空気導入部40は、コンテナ本体31の側壁31bに形成された空気導入口41、ケーシング42及びファン43から構成されている。
空気導入口41は、コンテナ本体31の側壁31bの上部に形成されている。空気導入口41は、側壁31bの他の部分や天板31cに形成されていてもよい。本実施形態では、空気導入口41は、側壁31bを構成する4つの壁部のうち出入口が設けられた壁部に形成されている。
【0031】
ケーシング42は、コンテナ本体31内の空間で空気導入口41を囲うように設けられている。ケーシング42の一部には、ケーシング内外を連通する吹出口42aが形成されている。
ファン43は、ケーシング42内に設けられている。ファン43は、空気導入口41から吹出口42aに向かって送風可能に設けられている。
【0032】
(空気排出部)
空気排出部50は、コンテナ本体31内から外部に空気を排出する。空気排出部50は、コンテナ本体31の側壁31bに形成された空気排出口51及びフィルタ52から構成されている。空気排出部50は、側壁31bを構成する4つの壁部のうち上記の出入口が設けられた壁部の反対側に位置する壁部(コンテナ本体31への出入口が設けられた壁部に対向する壁部)に設けられている。
空気排出口51は、空気導入口41に対向するようにコンテナ本体31の側壁31bの上部に形成されている。空気排出口51は、側壁31bの他の部分や天板31cに形成されていてもよい。
【0033】
フィルタ52は、空気排出口51に設けられている。フィルタ52は、空気排出口51の空気の流通を確保しつつ該空気排出口51を閉塞するように設けられている。フィルタ52としては、例えばHEPAフィルタが用いられている。フィルタ52は、ウイルスや細菌を捕捉可能な感染症対策構造を有することが好ましい。
【0034】
空気排出部50には、コンテナ本体31の空気を排出するための排気ダクトを備えていてもよい。排気ダクトは、コンテナ本体31から水平方向に延びた後、垂直方向に屈曲し、排気ダクトの排出口が海面に対面するように構成される。コンテナ本体31内の空気を外部に排出するために、排気ダクト内又はコンテナ本体31内にブロワ等を設置してもよい。
【0035】
(第一熱交換器)
第一熱交換器60は、コンテナ本体31内における空気導入部40のケーシング42内に設けられている。第一熱交換器60は、例えばフィンチューブ型の熱交換器である。第一熱交換器60の内部、即ち、チューブ内には海水が導入される。第一熱交換器60における海水と接触する部分は、海水に対して耐食性を有する材料から構成されている。
第一熱交換器60は、該第一熱交換器60の周囲の空気と該第一熱交換器60内に導入される海水との熱交換を行えるように構成されている。即ち、第一熱交換器60は、海水を熱源として、コンテナ本体31内に導入される空気の温度を調整する。
【0036】
(収容部)
収容部70は、コンテナ本体31内の居室に設けられている。収容部70は、底板31a上に設置されている。収容部70の内部は収容空間とされている。収容空間は、例えば薬剤や血液、臓器等の医療物資71が収容可能とされている。収容部70の側面には、例えば開閉可能な扉が設けられており、該扉を介して収容空間にアクセス可能とされている。
【0037】
(第二熱交換器)
第二熱交換器80は、収容部70内に設けられている。第二熱交換器80は、第一熱交換器60と同様、例えばフィンチューブ型の熱交換器である。第二熱交換器80の内部、即ち、チューブ内には海水が導入される。第二熱交換器80における海水と接触する部分は、海水に対して耐食性のある材料から構成されている。
第二熱交換器80は、収容部70内と該第二熱交換器80内に導入される海水との熱交換を行えるように構成されている。すなわち、収容部70内の空気又は医療物資71と海水との熱交換を行うことができる。
【0038】
(温度調整部)
温度調整部90は、収容部70内に設けられている。温度調整部90は、例えばヒータ及び冷却器の少なくとも一方から構成されている。温度調整部90は、収容部70内の温度(収容空間の空気の温度、第二熱交換器80の周囲の空気の温度)を調整可能に構成されている。なお、収容部70内にて温度調整部90と第二熱交換器80とが直接的に温度交換する構成であってもよい。
【0039】
(海水流通ライン)
海水流通ライン100は、海水が流通するパイプであって、一部がコンテナ本体31内を通過するようにコンテナ本体31に設けられている。海水流通ライン100の内面は、海水に対して耐食性を有する材料から構成されている。
海水流通ライン100は、上流側から下流側に向かって順次接続された上流側ライン101、中間ライン102及び下流側ライン103を有している。
【0040】
上流側ライン101は、コンテナ本体31内外にわたって延びている。上流側ライン101の上流端となる一端はコンテナ本体31外に位置している。上流側ライン101の一端は、海水供給ライン14の他端に接続されている。上流側ライン101の一端から上流側ライン101内に海水が導入される。これによって、上流側ライン101の一端には、海水供給ライン14を介して海水が供給される。上流側ライン101の一端は、海水流通ライン100の上流端とされている。
【0041】
上流側ライン101の下流端となる他端は、コンテナ本体31内のケーシング42内の空間に位置している。上流側ライン101の他端は、第一熱交換器60に接続されている。これによって、第一熱交換器60内には、上流側ライン101を介して海水が導入される。
上流側ライン101には上流側弁101aが設けられている。上流側弁101aは任意に開閉できるように構成されている。
【0042】
中間ライン102は、上流側ライン101の下流側に位置する。中間ライン102は、第一熱交換器60を介して上流側ライン101に接続されている。中間ライン102の上流端となる一端は、第一熱交換器60のチューブに接続されている。上流側ライン101を介して第一熱交換器60に導入された海水は、第一熱交換器60を通過した後に中間ライン102に導入される。
中間ライン102の下流端となる他端は、収容部70内の第二熱交換器80に接続されている。中間ライン102を介して第二熱交換器80に海水が導入される。
【0043】
下流側ライン103は、コンテナ本体31内外にわたって延びている。下流側ライン103の上流端となる一端は、第二熱交換器80のチューブに接続されている。中間ライン102を介して第二熱交換器80に導入された海水は、第二熱交換器80を通過した後に下流側ライン103に導入される。
【0044】
下流側ライン103の下流端となる他端は、コンテナ本体31外で海水排出ライン16の一端に接続されている。これによって、下流側ライン103を流通した海水が海水排出ライン16に導入される。下流側ライン103の他端は、海水流通ライン100の下流端とされている。
下流側ライン103には下流側弁103aが設けられている。下流側弁103aは任意に開閉できるように構成されている。
【0045】
(還流ライン)
還流ライン110は、海水流通ライン100における第二熱交換器80の下流側の海水を、海水流通ライン100における第一熱交換器60の上流側に還流させる。還流ライン110は、海水流通ライン100における第二熱交換器80の下流側の部分と該海水流通ライン100における第一熱交換器60の上流側の部分とを接続しているパイプである。還流ライン110の上流端となる一端は、下流側ライン103における下流側弁103aよりも上流側の部分に接続されている。還流ライン110の下流端となる他端は、上流側ライン101における上流側弁101aよりも下流側の部分に接続されている。
【0046】
還流ライン110には、還流ポンプ110aが設けられている。還流ポンプ110aが駆動されることによって、還流ライン110の一端から他端に向かって、該還流ライン110内の海水が流通する。
還流ライン110には、還流ポンプ110aを挟むようにして第一還流弁110b、第二還流弁110cが設けられている。第一還流弁110bは、還流ライン110における還流ポンプ110aよりも一端側の部分に設けられている。第二還流弁110cは、還流ライン110における還流ポンプ110aよりも他端側の部分に設けられている。第一還流弁110b及び第二還流弁110cはそれぞれ任意に開閉できるように構成されている。
【0047】
(作用効果)
次に上記医療用コンテナ設備30を有する船舶1の作用効果について図2を用いて説明する。医療用コンテナ設備30では、海水を熱源としてコンテナ本体31内の居室の空調及び収容部70内の温度調整を行う。
通常時、海水供給ライン14の第一供給弁14a、第二供給弁14b及びバイパス弁23、海水排出ライン16の第一排出弁16a、第二排出弁16b、海水流通ライン100の上流側弁101a及び下流側弁103aは開状態とされている。一方、第一タンクライン18の第一タンク弁18a、第二タンクライン19の第二タンク弁19a、第一機器ライン21の第一機器弁21a、第二機器ライン22の第二機器弁22a、還流ライン110の第一還流弁110b及び第二還流弁110cは閉状態とされている。
【0048】
そして、海水供給ライン14の海水供給ポンプ15が駆動されると、海水供給ライン14の一端から海水が取水され、海水供給ライン14、上流側ライン101、第一熱交換器60、中間ライン102、第二熱交換器80及び下流側ライン103及び海水排出ライン16の順で海水が流通し、該海水排出ライン16の下流端から海に海水が排出される。
【0049】
そして、医療用コンテナ設備30の空気導入部40におけるファン43が駆動することによって、コンテナ本体31のケーシング42内に空気導入口41を介して空気が導入される。当該空気は、第一熱交換器60を通過する際に該第一熱交換器60内を流れる海水と熱交換をし、その後、吹出口42aからコンテナ本体31内の居室に吹き出される。
【0050】
ここで、海水の温度が空気の温度より低い場合、第一熱交換器60で空気の熱が海水に移動する。これによって、空気の温度が下がり、海水の温度が上がる。そのため、居室には冷たい空気が吹き出され、居室内を冷房することができる。
また、海水の温度が空気の温度よりも高い場合、第一熱交換器60で海水の熱が空気に移動する。これによって、空気の温度が上がり、海水の温度が下がる。そのため、居室には暖かい空気が吹き出され、居室内を暖房することができる。
【0051】
居室内に吹き出された空気は、該居室内を空調した後に、空気排出部50の空気排出口51から外部に排出される。即ち、コンテナ本体31内では、ファン43によってコンテナ本体31を貫くような空気の流れが形成される。そして、空気排出部50のフィルタ52では、例えば居室内の患者に起因するウイルスや細菌等の汚染物質が捕捉される。そのため、船舶1の上甲板10c上に不用意に汚染物質が拡散してしまうことを回避できる。
【0052】
第一熱交換器60を流通した海水は、その後、中間ライン102を介して収容部70内の第二熱交換器80に導入される。第二熱交換器80では、該第二熱交換器80を流通する海水と該第二熱交換器80の周囲の空気との間で熱交換が行われる。その結果、収容部70内の温度が変化する。
ここで収容部70内に収容される医療物資71が薬剤や血液、臓器等の場合、これら医療物資71を適温に保つことが好ましい。本実施形態では、第一熱交換器60で空気と熱交換し、加熱又は冷却されることで適温となった海水によって、収容部70内の温度が調整される。具体的には、冷房時には、第一熱交換器60を流通した海水は、空気と熱交換することで加熱され温度が上昇しているため、収容部70内の温度を体温程度に保温することができる。暖房時には、第一熱交換器60を流通した海水は、空気と熱交換することで冷却され温度が低下しているため、収容部70内の温度を低下させることができる。
そして、第二熱交換器80を通過した海水は、下流側ライン103、海水排出ライン16を経由して海に排出される。
【0053】
以上のように本実施形態によれば、空気導入部40及び空気排出部50によって空気がコンテナ本体31を貫くように流れるため、コンテナ本体31の空気を常に入れ替えることができる。その結果、例えば患者がウイルス、細菌に感染している場合であっても、当該ウイルス、細菌がコンテナ本体31に滞留することを回避することができ、コンテナ本体31内の居室の雰囲気の衛生状態を常に清潔に維持することができる。また、出入口と空気排出部50が対向する側壁にそれぞれ設けられているため、コンテナ本体31を出入りする人が、排気を媒介してウイルス、細菌に感染することを防ぐことができる。
【0054】
また、本実施形態では、空気導入口41が、コンテナ本体31の側壁31bの上部に形成されているため、気流の死角を少なくすることができ、コンテナ本体31内の温度や湿度をむらなく調整することできる。
【0055】
排気ダクトを設け、さらに排出口を海面に対向させることで、排出口と上甲板10cとの距離を確保し、また、海面に対向する排出口を介してコンテナ本体31からの排気を海面に向かって放出することができる。そのため、汚染された空気が上甲板10cに流入するのを抑制することができる。これによって、作業者の感染リスクを低減することができる。
【0056】
また、本実施形態では第一熱交換器60を介して外部からコンテナ本体31内に導入される空気と海水とが熱交換されることで、コンテナ本体31内の居室に供給される空気の温度を調整している。即ち、熱容量の大きい海水を熱源として居室内の空気の温度を調整することで空調全体としてのエネルギー消費を抑えることができる。特に本実施形態では、外部から取り入れた海水とコンテナ本体31内に導入される空気とを直接的に熱交換させる構成のため、より熱交換を効率よく行うことができる。したがって、エネルギー供給手段が制限される船舶上であっても、省エネルギー化を図りながら衛生性を担保することができる。
【0057】
また、第一熱交換器60で熱交換することで温度が変化した海水は、第二熱交換器80を介して収容部70内の温度調整に用いることができる。そのため、収容部70内の温度を適温に維持することができ、医療物資71を適温に保つことができる。暖房時には、収容部70内の温度を体温程度に保温することができるため、医療物資71が生理食塩水などの場合、好適に保管できる。冷房時には、収容部70内の温度を低下させることができるため、医療物資71が、低温保存が必要な薬剤、血液、臓器などの場合、好適に保管できる。
【0058】
ここで、本実施形態では、第二熱交換器80を通過した海水を、第一熱交換器60に再度導入させることができる。即ち、海水流通ライン100に海水が流通している状態で、上流側弁101a及び下流側弁103aを閉状態とするとともに第一還流弁110b及び第二還流弁110cを開状態とする。そして、還流ポンプ110aを駆動させると、下流側ライン103の海水は、還流ライン110を流通して上流側ライン101に導入される。これによって、海水流通ライン100と還流ライン110とにわたって海水が循環する流れが生じる。
なお、上流側弁101a及び下流側弁103aを開状態として、海水流通ライン100と還流ライン110とにわたって海水を循環させてもよい。
【0059】
この際、第二熱交換器80で熱交換が行われることで海水の温度が上がった場合、当該海水が第一熱交換器60に再度導入されることで室内の暖房を行うことができる。一方、第二熱交換器80で熱交換が行われることで海水の温度が下がった場合、当該海水が第一熱交換器60に再度導入されることで室内の冷房を行うことができる。このようにして、医療用コンテナ設備30内で海水を循環させながら、医療物資71を適温に保ちつつ居室の空調を行うことができる。
【0060】
また、本実施形態では、収容部70内の温度調整部90によって、第二熱交換器80に導入される海水とともに医療物資71の温度調整を行うことができる。即ち、温度調整部90によって収容部70内の温度を加熱又は冷却することによって、海水とともに補助的に医療物資71の温度調整を行うことができる。
【0061】
また、温度調整部90によって、第二熱交換器80に導入される海水の温度を調整することもできる。即ち、温度調整部90を熱源として海水の温度を任意に調整することで、上記還流ライン110を用いた場合には、第一熱交換器60に空調に適した温度の海水を導入することができる。その結果、室内空調をより適切に行うことが可能となる。
【0062】
さらに、船舶1内の熱源機器20を用いて、海水流通ライン100に導入される海水の温度を調整してもよい。この場合、バイパス弁23が閉状態とされ、第一機器弁21a及び第二機器弁22aが開状態とされる。これによって、海水供給ライン14を流通する海水は、第一機器ライン21、熱源機器20、第二機器ライン22を経由してから医療用コンテナ設備30の海水流通ライン100に導入される。
ここで、熱源機器20が主機11や内燃機関等の発熱する機器の場合、海水は加熱される。そのため、コンテナ本体31内の居室を適切に暖房することができる。一方で、熱源機器20が冷凍機等の場合、海水は冷却される。そのため、コンテナ本体31内の居室を適切に冷房することができる。
【0063】
また、海水タンク17に貯留した海水を医療用コンテナ設備30に導入してもよい。この場合、海水供給ライン14の第一供給弁14aを閉状態とし、第一タンクライン18の第一タンク弁18aを開状態として海水供給ポンプ15を駆動させる。これによって、海水タンク17内の海水を用いてコンテナ本体31内の空調を行うことができる。
なお、海水供給ライン14の第一供給弁14aを開状態として、海洋からの海水と海水タンク17内の海水の双方を医療用コンテナ設備30に供給してもよい。
【0064】
さらに、下流側ライン103から海水排出ライン16に導入された海水を海水タンク17に再度貯留してもよい。この場合、海水排出ライン16の第二排出弁16bを閉状態とし、第二タンクライン19の第二タンク弁19aを開状態とすればよい。これによって、船舶1内で海水を循環させてコンテナ本体31内の空調を行うことができる。特に、海洋が汚染されている場合等、海洋から海水を取水できない場合には、海水タンク17に貯留した海水を用いることが好ましい。
【0065】
なお、空気排出部50にファン43が設けられていてもよい。この場合、空気導入部40のファン43を設けなくてもよい。これによっても、コンテナ本体31を貫くように空気を常に流通させることができる。
また、空気導入部40と空気排出部50の両方にファン43が設けられていてもよい。この場合、コンテナ本体31の空気を入れ替える能力を高めることができる。
また、空気排出口51と、空気導入部40を形成する空気導入口41の両方にフィルタ52が設けられていてもよい。
【0066】
<第二実施形態>
次に本開示の第二実施形態について図3及び図4を用いて説明する。図3では第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図3及び図4に示すように、第二実施形態の船舶本体2に設けられる医療用コンテナ設備200は、コンテナ本体31、空気導入部40、空気排出部50に加えて、海中モジュール210及び冷凍サイクル230を有している。
【0067】
(海中モジュール)
海中モジュール210は、海中に位置するように船舶本体2に設けられている。海中モジュール210は、モジュールケース211及び海中ポンプ212を有する。
【0068】
モジュールケース211は、船舶1の喫水線よりも下方に設けられており、海中に浸漬されている。モジュールケース211は船体10の船底10bに設けられている。モジュールケース211は、直方体の箱型形状をなしている。モジュールケース211は、長手方向を水平方向に一致させた状態で該モジュールケース211の上端が船底10bに固定されている。モジュールケース211には、該モジュールケース211内外を貫通する海水導入口211a及び海水排出口211bが形成されている。これら海水導入口211a及び海水排出口211bは、互いに対向する位置に形成されている。モジュールケース211が海中に位置する際には、該モジュールケース211内に海水が充填されている。
【0069】
海中ポンプ212は、モジュールケース211内に設けられている。海中ポンプ212が駆動されることで、モジュールケース211の海水導入口211aから海水排出口211bに向かって海水が圧送される。これによって、モジュールケース211内には、海水導入口211aから海水排出口211bへと向かって該モジュールケース211を貫くように海水が流通する。
【0070】
(冷凍サイクル)
図3及び図4に示すように、冷凍サイクル230は、第一熱交換器231、第三熱交換器232、圧縮機244、膨張弁245、四方弁246の各機器、及びこれら機器を接続して冷媒回路を構成するパイプとしての冷媒ライン233を有する。
【0071】
第一熱交換器231は、コンテナ本体31内における空気導入部40のケーシング42内に設けられている。第一熱交換器231は、例えばフィンチューブ型の熱交換器である。第一熱交換器231の内部、即ち、チューブ内には冷媒が導入される。
第一熱交換器231は、該第一熱交換器231に導入される冷媒とファン43によってコンテナ本体31内に導入された空気とで熱交換を行えるように構成されている。第一熱交換器231は、コンテナ本体31内を冷房する冷房運転時には蒸発器として用いられ、コンテナ本体31内を暖房する暖房運転時には凝縮器として用いられる。
【0072】
第三熱交換器232は、海中モジュール210におけるモジュールケース211内に設けられている。本実施形態では、モジュールケース211内における海中ポンプ212よりも海水排出口211b側に設けられている。第三熱交換器232は、例えばフィンチューブ型の熱交換器である。第三熱交換器232の内部、即ち、チューブ内には冷媒が導入される。
第三熱交換器232は、モジュールケース211内が海水で充填されることから該海水に浸漬されている。第三熱交換器232は、海中ポンプ212によって導入される周囲の海水と該第三熱交換器232内に導入される冷媒との熱交換を行えるように構成されている。第三熱交換器232は、冷房運転時には凝縮器として用いられ、暖房運転時には蒸発器として用いられる。
【0073】
圧縮機244は、冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を冷媒回路に供給する。
膨張弁245は、液化した高圧の冷媒を膨張させて低圧化する。
四方弁246は、暖房運転時と冷房運転時とで冷媒の流通する方向を切り替える。これによって、冷房運転時には、圧縮機244、第三熱交換器232、膨張弁245及び第一熱交換器231の順に、冷媒ライン233を冷媒が循環する。一方、暖房時には、圧縮機244、第一熱交換器231、膨張弁245及び第三熱交換器232の順に、冷媒ライン233を冷媒が循環する。
これら圧縮機244、膨張弁245及び四方弁246は、上甲板10c上に配置された機器箱260内に収容されている。
【0074】
(作用効果)
以上のような構成の船舶1及び医療用コンテナ設備200では、第一実施形態同様、空気導入部40及び空気排出部50によってコンテナ本体31の空気を常に入れ替えることができる。そのため、コンテナ本体31内の居室の雰囲気の衛生状態を常に清潔に維持することができる。
【0075】
また、海水は熱容量が大きいため、第三熱交換器232では効率良く熱交換を行うことができる。第三熱交換器232で海水と熱交換をした冷媒が第一熱交換器231に導入されることから、第一熱交換器231では、海水を熱源としてコンテナ本体31内に導入される空気の温度を調整することになる。そのため、エネルギー消費を抑えた空調を行うことができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、第一熱交換器231には、海水と熱交換をした冷媒のみが導入される構成とされている。そのため、海水が患者の居室であるコンテナ本体31内に持ち込まれることはない。したがって、コンテナ本体31内の居室の衛生状態をより清潔に維持することができる。即ち、万が一、冷媒ライン233を構成するパイプが破損した場合であっても、海洋からの海水が居室内に導入されることを回避することができる。
【0077】
また、本実施形態では、第一熱交換器231、第三熱交換器232、圧縮機244、膨張弁245、四方弁246及び冷媒ライン233によって冷凍サイクル230が構成されているため、コンテナ本体31内に導入される空気の温度を任意に調整することができる。したがって、より居室の快適性を向上させることができる。
【0078】
さらに、海中モジュール210内では海水が流通している状態にあるため、第三熱交換器232での冷媒と海水の熱交換を促すことができる。これによって、効率良く熱交換を行うことができる。
【0079】
なお、本実施形態では、例えば海中モジュール210を船体10に対して任意に移動させる移動機構が設けられていてもよい。これによって、海中の障害物を避けて海中モジュール210を海中に位置させることができる。また、移動機構によって海中モジュール210の水深位置を変化させる構成としてもよい。例えば、海中モジュール210を船底10bよりも深く位置させることによって、第三熱交換器232に導入される冷媒をより冷たい海水とで熱交換させることができる。これによって、熱交換をより効率良く行うことができる。
【0080】
さらに、本実施形態の医療用コンテナ設備200は、空気導入部40及び空気排出部50を有さない構成であってもよい。即ち、コンテナ本体31内の居室が閉空間とされていてもよい。この場合であっても、海水をコンテナ本体31内に導入する必要がないため、コンテナ本体31内の衛生性を担保することができる。
【0081】
なお、第二実施形態では、必ずしも冷凍サイクル230を有する構成でなくともよく、圧縮機244、膨張弁245及び四方弁246を有さない構成であってもよい。即ち、第一熱交換器231、第三熱交換器232及び冷媒ライン233を有していればよく、冷媒ライン233を流通する冷媒が第一熱交換器231と第三熱交換器232との間で循環する構成であればよい。これによっても、海水を熱源としてコンテナ本体31内の居室の温度を調整することができる。
【0082】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0083】
第一、第二実施形態では、コンテナ本体31を有する医療用コンテナ設備30について説明したが、コンテナ本体31に代えて例えばテントやドームハウス等の他のシェルター本体を有する医療用シェルター設備に本発明を適用してもよい。即ち、コンテナ本体31に代えて、雨風をしのげる居室を形成可能なシェルターであれば、他の構成を用いてもよい。
【0084】
例えば、第一、第二実施形態では、医療用コンテナ設備30、200が複数設けられている場合について説明したが、単一の医療用コンテナ設備30、200が設けられていてもよい。
第一実施形態では、複数の医療用コンテナ設備30のそれぞれに対応するように、船舶本体2に海水供給ライン14及び海水排出ライン16が設けられていてもよい。
【0085】
さらに、図5の第一変形例に示すように、第一実施形態の医療用コンテナ設備30が複数のコンテナ本体31を備えていてもよい。この場合、海水流通ライン100の上流側ライン101が各コンテナ本体31に共通して設けられた構成を採用することができる。即ち、上流側では一本の上流側ライン101が途中で複数に分岐して各コンテナ本体31内に海水を導入する構成であってもよい。
【0086】
また、図6の第二変形例に示すように、一のコンテナ本体31の還流ライン110が他のコンテナ本体31の上流側ライン101に接続された構成であってもよい。この場合、あるコンテナ本体31から還流ライン110を通じて別のコンテナ本体31に海水を還流させることができる。これによって、第二熱交換器80で熱交換が行われることで温度が上昇又は低下した海水を、別のコンテナ本体31内の第一熱交換器60に導入できるため、別のコンテナ本体31内の冷房又は暖房を行うことができる。また、該海水を、別のコンテナ本体31内の収容部70内に設けられた第二熱交換器80に導入できるため、別のコンテナ本体31内の収容部70内の温度を好適に保つことができる。さらに、収容部70に多くの医療物資71が収容されている等の理由から、多くの熱交換が必要な別のコンテナ本体31に多くの海水を流通させることができる。
【0087】
第一実施形態では、海水流通ライン100が海水供給ライン14を介さずに直接的に海から海水を取水する構成であってもよい。また、海水流通ライン100が海水排出ライン16を介さずに直接的に海に海水を排出する構成であってもよい。また、海水供給ライン14の一端は、海中で任意に移動できる構成であってもよい。これによって海中の障害物を避けながら海水を取水することができる。また、海洋の所望の場所から海水を取水することができる。例えば、水深の深い箇所から海水を取水することで、より冷たい海水を用いてコンテナ本体31内の空調を行うことができる。
【0088】
第二実施形態では、複数のコンテナ本体31のそれぞれに第一熱交換器231が設けられ、これら複数の第一熱交換器231に対して、単一の第三熱交換器232、圧縮機244、膨張弁245及び四方弁246が設けられた冷凍サイクル230を構成してもよい。
第一、第二実施形態では、第一熱交換器60、231、第二熱交換器80、第三熱交換器232が、それぞれ直列又は並列に複数設けられていてもよい。
【0089】
<付記>
各実施形態に記載の医療用シェルター設備30、200及び船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0090】
(1)第1の態様に係る医療用シェルター設備30は、シェルター本体31と、前記シェルター本体31内に空気を導入する空気導入部40と、海水を熱源として、前記空気導入部40から導入される空気の温度を調整する第一熱交換器60と、を備える。
【0091】
これによって、シェルター本体31にシェルター外から清潔な空気を導入することができる。海水を熱源として空気の温度の調整を行うため、エネルギー消費を抑えることができる。
【0092】
(2)第2の態様に係る医療用シェルター設備30は、(2)の態様の医療用シェルター設備30であって、前記シェルター本体内から空気を排出する空気排出部をさらに備える。
【0093】
これによって、シェルター本体31の空気を常に入れ替えることができるため、シェルター本体31内の衛生状態を常に清潔に維持することができる。
【0094】
(3)第3の態様に係る医療用シェルター設備30は、(1)又は(2)の態様の医療用シェルター設備30であって、前記シェルター本体31に設けられ、海水が流通する海水流通ライン100をさらに備え、前記第一熱交換器60は、前記空気導入部40から導入される空気と前記海水流通ライン100を流通する海水とで熱交換することで、前記空気の温度を調整する。
【0095】
シェルター本体31内に導入される空気と海水とが直接的に熱交換されることで、効率良く空気の温度調整を行うことができる。
【0096】
(4)第4の態様に係る医療用シェルター設備30は、(3)の態様の医療用シェルター設備30であって、前記シェルター内に設けられて、医療物資71を収容可能な収容部70と、前記第一熱交換器60よりも前記海水流通ライン100の下流側で、該海水流通ライン100を流通する海水と前記収容部70内とで熱交換する第二熱交換器80と、をさらに備える。
【0097】
これによって、空気と熱交換することによって加熱又は冷却された海水によって、収容部70内の温度調整を行うことができる。その結果、医療物資71を適温に保つことができる。
【0098】
(5)第5の態様に係る医療用シェルター設備30は、(4)の態様の医療用シェルター設備30であって、前記海水流通ライン100における前記第二熱交換器80の下流側の海水を、前記海水流通ライン100における前記第一熱交換器60の上流側に還流させる還流ライン110をさらに備える。
【0099】
これによって、収容部70と熱交換することで温度が上昇又は下降した海水が第一熱交換器60に再度導入される。したがって、医療用シェルター設備30内で海水を循環させながら再度空気の温度を調整することができる。
【0100】
(6)第6の態様に係る医療用シェルター設備30は、(4)又は(5)の態様の医療用シェルター設備30であって、前記収容部70内に設けられて、該収容部70内の温度を調整可能な温度調整部90をさらに備える。
【0101】
温度調整部90によって、海水流通ライン100の海水とともに収容部70内の医療物資71の温度調整を行うことができる。また、海水流通ライン100を流通する海水の温度も任意に調整することができる。
【0102】
(7)第7の態様に係る船舶1は、(3)から(6)のいずれかの態様の医療用シェルター設備30と、該医療用シェルター設備30が設置される船体10を有する船舶本体2と、を備え、前記船舶本体2は、前記海水流通ライン100に前記海水を導入可能な海水供給ライン14と、前記海水流通ライン100から前記海水を排出可能な海水排出ライン16と、を有する。
【0103】
これによって、船舶本体2の海水供給ライン14及び海水排出ライン16を介して、海水流通ライン100に円滑に海水を流通させることができる。
【0104】
(8)第8の態様に係る船舶1は、(7)の態様の医療用シェルター設備30であって、前記船体10に設けられて、前記海水流通ライン100に導入される海水の温度を調整可能な熱源機器20をさらに備える。
【0105】
海水流通ライン100に導入される海水を、予め船舶1の熱源機器20を利用して加熱又は冷却することで、海水流通ライン100を流れる海水と熱交換する空気の温度を任意に調整することができる。
【0106】
(9)第9の態様に係る医療用シェルター設備200は、(1)又は(2)の態様の医療用シェルター設備30であって、海水に接するように前記船体10に設けられて、前記海水と導入される冷媒とを熱交換させる第三熱交換器232と、前記第一熱交換器231及び第三熱交換器232を前記冷媒が循環するように接続する冷媒ライン233と、を備え、前記第一熱交換器231は、前記空気導入部40から導入される空気と該第一熱交換器231に導入される前記冷媒とを熱交換することで、前記空気の温度を調整する。
【0107】
これによって、海水がシェルター本体31に持ち込まれることはないため、シェルター本体31内の衛生状態をより適切に清潔に維持することができる。
【0108】
(10)第10の態様に係る医療用シェルター設備200は、シェルター本体31と、前記シェルター本体31内の空気と導入される冷媒とを熱交換することで該空気の温度を調整する第一熱交換器231と、海水に接するように前記船体10に設けられて、前記海水と導入される冷媒とで熱交換する第三熱交換器232と、前記第一熱交換器231及び第三熱交換器232を前記冷媒が循環するように接続する冷媒ライン233と、を備える。
【0109】
上記同様、海水がシェルター本体31に持ち込まれることはないため、シェルター本体31内の衛生状態をより適切に清潔に維持することができる。
【0110】
(11)第11の態様に係る医療用シェルター設備200は、前記冷媒ライン233に設けられた圧縮機244及び膨張弁245をさらに備え、前記第一熱交換器231、前記第三熱交換器232、前記圧縮機244、及び前記膨張弁245によって冷凍サイクル230が構成されている。
【0111】
これによって、海水を熱源としてシェルター本体31内に導入される空気の温度を任意に調整することができる。
【0112】
(12)第12の態様に係る船舶1は(9)から(11)のいずれかの態様の医療用シェルター設備200と、該医療用シェルターが設置される船体10を有する船舶本体2と、を備え、前記医療用シェルター設備200は、前記船体10の船底10bの下方に設けられて、前記第三熱交換器232を内部に収容するとともに内部を海水が流通する海中モジュール210をさらに備える。
【0113】
これによって、第三熱交換器232に導入される冷媒と、該第三熱交換器232の周囲の海水との熱交換を促すことができる。
【符号の説明】
【0114】
1 船舶
2 船舶本体
10 船体
10a 舷側
10b 船底
10c 上甲板
11 主機
12 プロペラ
13 居住施設
14 海水供給ライン
14a 第一供給弁
14b 第二供給弁
15 海水供給ポンプ
16 海水排出ライン
16a 第一排出弁
16b 第二排出弁
17 海水タンク
18 第一タンクライン
18a 第一タンク弁
19 第二タンクライン
19a 第二タンク弁
20 熱源機器
21 第一機器ライン
21a 第一機器弁
22 第二機器ライン
22a 第二機器弁
23 バイパス弁
30 医療用コンテナ設備(医療用シェルター設備)
31 コンテナ本体(シェルター本体)
31a 底板
31b 側壁
31c 天板
32 医療設備
40 空気導入部
41 空気導入口
42 ケーシング
42a 吹出口
43 ファン
50 空気排出部
51 空気排出口
52 フィルタ
60 第一熱交換器
70 収容部
71 医療物資
80 第二熱交換器
90 温度調整部
100 海水流通ライン
101 上流側ライン
101a 上流側弁
102 中間ライン
103 下流側ライン
103a 下流側弁
110 還流ライン
110a 還流ポンプ
110b 第一還流弁
110c 第二還流弁
200 医療用コンテナ設備(医療用シェルター設備)
210 海中モジュール
211 モジュールケース
211a 海水導入口
211b 海水排出口
212 海中ポンプ
230 冷凍サイクル
231 第一熱交換器
232 第三熱交換器
233 冷媒ライン
244 圧縮機
245 膨張弁
246 四方弁
260 機器箱
図1
図2
図3
図4
図5
図6