IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スタンレー電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用灯具 図1
  • 特許-車両用灯具 図2
  • 特許-車両用灯具 図3
  • 特許-車両用灯具 図4
  • 特許-車両用灯具 図5
  • 特許-車両用灯具 図6
  • 特許-車両用灯具 図7
  • 特許-車両用灯具 図8
  • 特許-車両用灯具 図9
  • 特許-車両用灯具 図10
  • 特許-車両用灯具 図11
  • 特許-車両用灯具 図12
  • 特許-車両用灯具 図13
  • 特許-車両用灯具 図14
  • 特許-車両用灯具 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/27 20180101AFI20240418BHJP
   F21S 41/24 20180101ALI20240418BHJP
   F21S 41/40 20180101ALI20240418BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20240418BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240418BHJP
   F21W 102/18 20180101ALN20240418BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240418BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240418BHJP
【FI】
F21S41/27
F21S41/24
F21S41/40
F21V5/04 650
F21W102:155
F21W102:18
F21Y115:10 500
F21Y115:30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020194027
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022082878
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】杉原 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】星野 真也
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043663(WO,A1)
【文献】特開平08-167301(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109630976(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/27
F21S 41/24
F21S 41/40
F21V 5/04
F21W 102/155
F21W 102/18
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を出射する第1の光源と、
前記第1の光源と隣接して配置されて、前記第1の光と同一方向に向けて第2の光を出射する第2の光源と、
前記第1の光及び前記第2の光を互いに同一方向に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記投影レンズは、前記第1の光源と対向する側に位置する第1の入射部と、前記第1の入射部とは反対側に位置する出射部とを含む第1のレンズ体と、前記第2の光源と対向する側に位置する第2の入射部と、前記第1の入射部と前記第2の入射部との間に位置する第3の入射部とを含む第2のレンズ体とを有し、
前記出射部と前記第3の入射部との間に設けられた第1の境界面と、前記第1の境界面との境界ラインから前記第1の入射部と前記第3の入射部との間に亘って設けられた第2の境界面とを挟んで、前記第1のレンズ体と前記第2のレンズ体とが突き合わされた構造を有し、
且つ、前記第1の境界面と前記第2の境界面とが前記境界ラインを挟んで鋭角に配置され、
前記第1の入射部から前記第1のレンズ体の内部へと入射した第1の光のうち、前記第2の境界面で反射した第1の光が、前記出射部から第1のレンズ体の外部へと出射され、
前記第2の入射部から前記第2のレンズ体の内部へと入射した第2の光のうち、前記第1の境界面を透過した第2の光及び前記第2の境界面を透過した第2の光が、前記出射部から第1のレンズ体の外部へと出射され、
前記第3の入射部から前記第2のレンズ体の内部へと入射した第1の光のうち、前記第1の境界面を透過した第1の光が、前記出射部から第1のレンズ体の外部へと出射されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1のレンズ体の屈折率よりも前記第2のレンズ体の屈折率が小さいことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1のレンズ体と前記第2のレンズ体とが中間層を介して突き合わされた構造を有し、
前記第2のレンズ体の屈折率は、前記中間層の屈折率以下であることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記出射部は、前記第1の光及び前記第2の光を前記境界ラインが延在する方向と前記第1の光源及び前記第2の光源が並ぶ方向とにおいて集光させるレンズ面を有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記投影レンズは、前記出射部と対向する側に位置する第3のレンズ体を有し、
前記出射部は、前記第1の光及び前記第2の光を前記境界ラインが延在する方向において集光させるレンズ面を有し、
前記第3のレンズ体は、前記出射部から出射された第1の光及び第2の光を前記第1の光源及び前記第2の光源が並ぶ方向において集光させるレンズ面を有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記第3のレンズ体は、前記出射部との間に空気層を設けた状態で、前記第1のレンズ体と一体に組み合わされていることを特徴とする請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記第1の光源及び前記第2の光源は、同じ基板の同一面上に設けられていることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記第1の入射部から入射して前記投影レンズにより投影される第1の光が、上端に前記境界ラインにより規定されるカットオフラインを含む第1の配光パターンを形成し、
前記第2の入射部から入射して前記投影レンズにより投影される第2の光が、前記第1の配光パターンよりも上方に位置する第2の配光パターンを形成し、
前記第3の入射部から入射して前記投影レンズにより投影される第1の光が、前記カットオフラインの上方に位置する第3の配光パターンを形成することを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用前照灯(ヘッドランプ)などの車両用灯具は、光源と、光源から出射された光を車両の進行方向に向けて反射するリフレクタと、リフレクタにより反射された光の一部を遮光(カット)するシェードと、シェードにより一部がカットされた光を車両の進行方向に向けて投影する投影レンズとを備えている。
【0003】
このような車両用灯具では、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、シェードの前端によって規定される光源像を投影レンズにより反転投影することで、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成している。
【0004】
また、車両用灯具では、車両の進行方向に向けて光を出射する別の光源をシェードの下方に配置し、走行用ビーム(ハイビーム)として、この光源が出射する光を投影レンズにより投影することで、ロービーム用配光パターンの上方にハイビーム用配光パターンを形成している。
【0005】
ところで、下記特許文献1に記載の車両用灯具では、上述したリフレクタ及びシェードの代わりに、上下2つの光源に対応して設けられた2つの導光部材を用いて、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとを形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/043663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の車両用灯具では、2つの導光部材の間に空気層(エアギャップ)を存在させ、第一導光レンズからの光を全反射面部で全反射することによりすれ違い用ビームを形成している。このため、ハイビーム用配光エリアへの光が照射されないものとなるものの、すれ違い用ビームとして必要となるハイビーム用配光エリアでのオーバーヘッド用配光パターンの形成が困難である。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、良好な配光パターンを得ると共に、オーバーヘッド用配光パターンを形成することを可能とした車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 第1の光を出射する第1の光源と、
前記第1の光源と隣接して配置されて、前記第1の光と同一方向に向けて第2の光を出射する第2の光源と、
前記第1の光及び前記第2の光を互いに同一方向に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記投影レンズは、前記第1の光源と対向する側に位置する第1の入射部と、前記第1の入射部とは反対側に位置する出射部とを含む第1のレンズ体と、前記第2の光源と対向する側に位置する第2の入射部と、前記第1の入射部と前記第2の入射部との間に位置する第3の入射部とを含む第2のレンズ体とを有し、
前記出射部と前記第3の入射部との間に設けられた第1の境界面と、前記第1の境界面との境界ラインから前記第1の入射部と前記第3の入射部との間に亘って設けられた第2の境界面とを挟んで、前記第1のレンズ体と前記第2のレンズ体とが突き合わされた構造を有し、
且つ、前記第1の境界面と前記第2の境界面とが前記境界ラインを挟んで鋭角に配置され、
前記第1の入射部から前記第1のレンズ体の内部へと入射した第1の光のうち、前記第2の境界面で反射した第1の光が、前記出射部から第1のレンズ体の外部へと出射され、
前記第2の入射部から前記第2のレンズ体の内部へと入射した第2の光のうち、前記第1の境界面を透過した第2の光及び前記第2の境界面を透過した第2の光が、前記出射部から第1のレンズ体の外部へと出射され、
前記第3の入射部から前記第2のレンズ体の内部へと入射した第1の光のうち、前記第1の境界面を透過した第1の光が、前記出射部から第1のレンズ体の外部へと出射されることを特徴とする車両用灯具。
〔2〕 前記第1のレンズ体の屈折率よりも前記第2のレンズ体の屈折率が小さいことを特徴とする前記〔1〕に記載の車両用灯具。
〔3〕 前記第1のレンズ体と前記第2のレンズ体とが中間層を介して突き合わされた構造を有し、
前記第2のレンズ体の屈折率は、前記中間層の屈折率以下であることを特徴とする前記〔2〕に記載の車両用灯具。
〔4〕 前記出射部は、前記第1の光及び前記第2の光を前記境界ラインが延在する方向と前記第1の光源及び前記第2の光源が並ぶ方向とにおいて集光させるレンズ面を有することを特徴とする前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
〔5〕 前記投影レンズは、前記出射部と対向する側に位置する第3のレンズ体を有し、
前記出射部は、前記第1の光及び前記第2の光を前記境界ラインが延在する方向において集光させるレンズ面を有し、
前記第3のレンズ体は、前記出射部から出射された第1の光及び第2の光を前記第1の光源及び前記第2の光源が並ぶ方向において集光させるレンズ面を有することを特徴とする前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
〔6〕 前記第3のレンズ体は、前記出射部との間に空気層を設けた状態で、前記第1のレンズ体と一体に組み合わされていることを特徴とする前記〔5〕に記載の車両用灯具。
〔7〕 前記第1の光源及び前記第2の光源は、同じ基板の同一面上に設けられていることを特徴とする前記〔1〕~〔6〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
〔8〕 前記第1の入射部から入射して前記投影レンズにより投影される第1の光が、上端に前記境界ラインにより規定されるカットオフラインを含む第1の配光パターンを形成し、
前記第2の入射部から入射して前記投影レンズにより投影される第2の光が、前記第1の配光パターンよりも上方に位置する第2の配光パターンを形成し、
前記第3の入射部から入射して前記投影レンズにより投影される第1の光が、前記カットオフラインの上方に位置する第3の配光パターンを形成することを特徴とする前記〔1〕~〔7〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、良好な配光パターンを得ると共に、オーバーヘッド用配光パターンを形成することを可能とした車両用灯具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用灯具の構成を示す斜視図である。
図2図1に示す車両用灯具の構成を示す分解斜視図である。
図3図1に示す車両用灯具の構成を示す鉛直断面図である。
図4図1に示す車両用灯具の第1の入射部側の構成を示す水平断面図である。
図5図1に示す車両用灯具の第2の入射部側の構成を示す水平断面図である。
図6図1に示す車両用灯具の第3の入射部側の構成を示す水平断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る車両用灯具の構成を示す斜視図である。
図8図7に示す車両用灯具の構成を示す分解斜視図である。
図9図7に示す車両用灯具の構成を示す鉛直断面図である。
図10図7に示す車両用灯具の第1の入射部側の構成を示す水平断面図である。
図11図7に示す車両用灯具の第2の入射部側の構成を示す水平断面図である。
図12図7に示す車両用灯具の第3の入射部側の構成を示す水平断面図である。
図13】本発明の第3の実施形態に係る車両用灯具の構成を示す鉛直断面図である。
図14図13に示す車両用灯具の第3の入射部側の構成を示す水平断面図である。
図15】第1の光及び第2の光により形成されるロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン及びオーバーヘッド用配光パターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を車両用灯具の前後方向(長さ方向)、Y軸方向を車両用灯具の左右方向(幅方向)、Z軸方向を車両用灯具の上下方向(高さ方向)として、それぞれ示すものとする。
【0014】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば図1図6に示す車両用灯具1Aについて説明する。
なお、図1は、車両用灯具1Aの構成を示す斜視図である。図2は、車両用灯具1Aの構成を示す分解斜視図である。図3は、車両用灯具1Aの構成を示す鉛直断面図である。図4は、車両用灯具1Aの第1の入射部7側の構成を示す水平断面図である。図5は、車両用灯具1Aの第2の入射部10側の構成を示す水平断面図である。図6は、車両用灯具1の第3の入射部13側の構成を示す水平断面図である。
【0015】
本実施形態の車両用灯具1Aは、車両用前照灯(ヘッドランプ)に本発明を適用したものであり、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成するすれ違い用ビーム(ロービーム)と、ロービーム用配光パターンの上方側にハイビーム用配光パターンを形成する走行用ビーム(ハイビーム)とを、それぞれ車両の前方(+X軸方向)に向けて切り替え自在に照射するものである。
【0016】
具体的に、この車両用灯具1Aは、図1図6に示すように、灯体(図示せず。)の内側に、第1の光L1を出射する第1の光源2と、第2の光L2を出射する第2の光源3と、第1の光L1及び第2の光L2を投影する投影レンズ4とを概略備えている。
【0017】
なお、灯体は、前面が開口したハウジングと、このハウジングの開口を覆う透明なレンズカバーとにより構成される。また、灯体の形状については、車両のデザイン等に合わせて、適宜変更することが可能である。
【0018】
第1の光源2及び第2の光源3は、例えば白色光を発する発光ダイオード(LED)からなる。また、LEDには、車両照明用の高出力(高輝度)タイプのもの(例えばSMD LEDなど。)を使用することができる。なお、第1の光源2及び第2の光源3については、上述したLED以外にも、例えばレーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いることができる。
【0019】
本実施形態の車両用灯具1Aでは、第1の光源2と第2の光源3とが互いに隣接した状態で、この車両用灯具1Aの鉛直方向(上下方向)に並んで配置されている。このうち、第1の光源2を構成する1つのLEDが上部側に配置され、第2の光源3を構成する1つのLEDが下部側に配置されている。
【0020】
第1の光源2及び第2の光源3は、それぞれのLEDを駆動する駆動回路が設けられた回路基板5の一面(本実施形態では正面)側に実装されている。これにより、第1の光源2と第2の光源3とは、前方(+X軸側)に向けて第1の光L1と第2の光L2とを放射状に出射する。すなわち、これら第1の光源2及び第2の光源3は、同じ回路基板5の同一面上に設けられて、互いに同一方向に向けて第1の光L1及び第2の光L2を放射状に出射する構成となっている。
【0021】
また、回路基板5の他面(本実施形態では背面)側には、第1の光源2及び第2の光源3が発する熱を放熱させるヒートシンク6が取り付けられている。ヒートシンク6は、熱伝導性の高い例えばアルミニウムなどの金属製の押出成形体からなる。ヒートシンク6は、回路基板5と接触するベース部6aと、回路基板5からベース部6aに伝わる熱の放熱性を高める複数のフィン部6bとを有している。
【0022】
なお、本実施形態では、上述した第1の光源2及び第2の光源3を構成するLEDと、LEDを駆動する駆動回路とが回路基板5上に実装された構成となっているが、LEDが実装された実装基板と、LEDを駆動する駆動回路が設けられた回路基板とを別々に配置し、実装基板と回路基板との間をハーネスと呼ばれる配線コードを介して電気的に接続し、LEDが発する熱から駆動回路を保護する構成としてもよい。
【0023】
投影レンズ4は、第1の光源2と対向する側に位置する第1の入射部7と、第1の入射部7とは反対側に位置する出射部8とを含む第1のレンズ体9と、第2の光源3と対向する側に位置する第2の入射部10と、第1の入射部7と第2の入射部10との間に位置する第3の入射部13とを含む第2のレンズ体11とを有している。
【0024】
投影レンズ4では、第1のレンズ体9の屈折率よりも第2のレンズ体11の屈折率が小さくなっている。本実施形態では、例えば、第1のレンズ体9がポリカーボネート樹脂(PC)からなり、第2のレンズ体11がアクリル樹脂(PMMA)からなる。
【0025】
なお、第1のレンズ体9と第2のレンズ体11との屈折率が異なる材質の組み合わせについては、このような組み合わせに必ずしも限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。また、上述した光透過性を有する樹脂に限らず、ガラスを用いることも可能である。
【0026】
投影レンズ4は、出射部8と第3の入射部13との間に設けられた第1の境界面T1と、第1の境界面T1との境界ラインSから第1の入射部7と第3の入射部13との間に亘って設けられた第2の境界面T2とを挟んで、第1のレンズ体9と第2のレンズ体11とが中間層Mを介して突き合わされた構造を有している。
【0027】
中間層Mは、第1のレンズ体9と第2のレンズ体11とを接合する光透過性の接着材からなる。また、中間層Mの厚みは、第1のレンズ体9と第2のレンズ体11とを接合するのに十分な厚みであればよい。
【0028】
投影レンズ4では、第1のレンズ体9の屈折率よりも中間層Mの屈折率が小さくなっている。また、第2のレンズ体11の屈折率は、中間層Mの屈折率以下となっている。すなわち、この第2のレンズ体11の屈折率は、中間層Mの屈折率と同じか、中間層Mの屈折率の方が第2のレンズ体11の屈折率よりも大きいものとなっている。
【0029】
一方、第1のレンズ体9と中間層Mとの屈折率の差(臨界角)を大きくする場合は、第2のレンズ体11の屈折率に近い値の中間層Mを用いることが好ましい。中間層Mには、公知の接着材の中から、このような条件を満足する接着材を適宜選択して用いることが可能である。
【0030】
第1の境界面T1は、第1のレンズ体9と第2のレンズ体11との間を境界ラインSから下方に向かって区画する面からなり、なお且つ、境界ラインSから斜め後方に向かって傾斜している。第2の境界面T2は、第1のレンズ体9と第2のレンズ体11との間を境界ラインSから後方に向かって区画する面からなり、なお且つ、境界ラインSから斜め上方に向かって傾斜している。
【0031】
したがって、第1の境界面T1と第2の境界面T2とは、境界ラインSを挟んで鋭角に配置されている。境界ラインSは、この車両用灯具1Aの水平方向(左右方向)に延在しながら、上述したロービーム用配光パターンのカットオフラインを規定している。
【0032】
第1のレンズ体9と第2のレンズ体11とは、互いの第1の境界面T1及び第2の境界面T2を中間層Mを挟んで突き合わせることによって、第1の境界面T1の間及び第2の境界面T2の間に空気層を介在させることなく、接着材となる中間層Mを介して接合されている。
【0033】
また、第1のレンズ体9は、一対のアーム部9a,9bを有している。一対のアーム部9a,9bは、第1のレンズ体9の上下両側から後方に向かって延長して設けられている。また、一対のアーム部9a,9bの先端側は、互いに離間する方向に向かって折り曲げられた形状を有している。
【0034】
投影レンズ4では、一対のアーム部9a,9bを回路基板5と共に、灯体内にあるブラケットなどの固定位置にネジ止めにより固定する。これにより、第1の光源2及び第2の光源3と第1の入射部7及び第2の入射部10との間隔を保持した状態で、第1のレンズ体9及び第2のレンズ体11が第1の光源2及び第2の光源3に対して位置決め固定されている。
【0035】
第1の入射部7は、第1の光源2と対向する部分に位置して、第1の光源2から出射された第1の光L1の一部が入射する凸面状の第1の集光入射面7aと、第1の集光入射面7aの周囲を囲む位置から第1の光源2側に突出した部分の内周側に位置して、第1の光源2から出射された第1の光L1の一部が入射する略円筒状の第2の集光入射面7bと、突出した部分の外周側に位置して、第2の集光入射面7bから入射した第1の光L1を反射する截頭円錐状の集光反射面7cとを有している。
【0036】
また、第1の入射部7は、第1の境界面T1を挟んで第3の入射部13と隣接しているため、第1の集光入射面7a、第2の集光入射面7b及び集光反射面7cの下部側の一部が第2の境界面T2に沿って切り欠かれた形状を有している。
【0037】
第1の入射部7では、第1の光源2から放射状に出射された第1の光L1のうち、第1の集光入射面7aから第1のレンズ体9の内部に入射した第1の光L1を光軸寄りに集光させる。一方、第2の集光入射面7bから第1のレンズ体9の内部に入射した第1の光L1を集光反射面7cで反射させることによって光軸寄りに集光させる。
【0038】
これにより、第1の入射部7から第1のレンズ体9の内部へと入射した第1の光L1は、図3に示す車両用灯具1Aの鉛直断面において、第1の光源2から出射された第1の光L1の光軸AX1よりも斜め下方に向かって傾斜した光軸AX2寄りに集光しながら、第1のレンズ体9の前方に向かって導光される。
【0039】
一方、第1の入射部7から第1のレンズ体9の内部へと入射した第1の光L1は、図4に示す車両用灯具1Aの水平断面において、第1の光L1の光軸AX1に対して平行化しながら、第1のレンズ体9の前方に向かって導光される。なお、第1の入射部7については、車両用灯具1Aの水平断面において、第1の光L1が光軸AX1寄りに集光しながら、第1のレンズ体9の内部へと入射する構成としてもよい。
【0040】
また、第1の入射部7から第1のレンズ体9の内部へと入射した第1の光L1は、第1のレンズ体9の前方にある出射部8に向かって導光される。このうち、第2の境界面T2に入射した第1の光L1は、この第2の境界面T2で反射された後に、出射部8に向かって導光される。
【0041】
すなわち、第2の境界面T2では、第1のレンズ体9の屈折率よりも中間層Mの屈折率を小さくしているため、この第2の境界面T2に入射した第1の光L1を出射部8に向けて全反射することができる。
【0042】
第2の入射部10は、第2の光源3と対向する部分に位置して、第2の光源3から出射された第2の光L2の一部が入射する凸面状の第1の集光入射面10aと、第1の集光入射面10aの周囲を囲む位置から第2の光源3側に突出した部分の内周側に位置して、第2の光源3から出射された第2の光L2の一部が入射する略円筒状の第2の集光入射面10bと、突出した部分の外周側に位置して、第2の集光入射面10bから入射した第2の光L2を反射する截頭円錐状の集光反射面10cとを有している。
【0043】
第2の入射部10では、第2の光源3から放射状に出射された第2の光L2のうち、第1の集光入射面10aから第2のレンズ体11の内部に入射した第2の光L2を光軸寄りに集光させる。一方、第2の集光入射面10bから第2のレンズ体11の内部に入射した第2の光L2を集光反射面10cで反射させることによって光軸寄りに集光させる。
【0044】
これにより、第2の入射部10から第2のレンズ体11の内部へと入射した第2の光L2は、図3に示す車両用灯具1Aの鉛直断面において、第2の光源3から出射された第2の光L2の光軸AX3よりも斜め上方に向かって傾斜した光軸AX4寄りに集光しながら、第2のレンズ体11の前方に向かって導光される。
【0045】
一方、第2の入射部10から第2のレンズ体11の内部へと入射した第2の光L2は、図5に示す車両用灯具1Aの水平断面において、第2の光L2の光軸AX3に対して平行化しながら、第2のレンズ体11の前方に向かって導光される。なお、第2の入射部10については、車両用灯具1Aの水平断面において、第2の光L2が光軸AX3寄りに集光しながら、第2のレンズ体11の内部へと入射する構成としてもよい。
【0046】
また、第2の入射部10から第2のレンズ体11の内部へと入射した第2の光L2は、第2のレンズ体11の前方にある第1の境界面T1及び第2の境界面T2を透過して、第1のレンズ体9の内部へと入射する。第1のレンズ体9の内部に入射した第2の光L2は、出射部8に向かって導光される。
【0047】
すなわち、第1の境界面T1及び第2の境界面T2では、第1のレンズ体9の屈折率よりも中間層M及び第2のレンズ体11の屈折率を小さくしているため、これら第1の境界面T1及び第2の境界面T2に入射した第2の光L2を出射部8に向けて透過することができる。
【0048】
また、第2の境界面T2では、第1のレンズ体9の屈折率よりも中間層M及び第2のレンズ体11の屈折率を小さくすることで、第2の境界面T2に入射した第2の光L2を下方に屈折させながら、前方の出射部8に向けて透過することができる。これにより、投影レンズ4では、高さ寸法を低く抑えて、全体の薄型化を図ることが可能である。
【0049】
第3の入射部13は、集光反射面10cよりも上方に位置して、第1の光源2から出射された第1の光L1の一部が入射する凹面状の拡散入射面13aを有している。
【0050】
第3の入射部13では、第1の光源2から放射状に出射された第1の光L1のうち、第1の光源2と対向する部分よりも下方に位置する拡散入射面13aから第2のレンズ体11の内部に入射した第1の光L13を拡散させる。
【0051】
これにより、第3の入射部13から第2のレンズ体11の内部へと入射した第1の光L13は、図3に示す車両用灯具1Aの鉛直断面において、境界ラインSの近傍に向かって拡散しながら、第2のレンズ体11の前方に向かって導光される。
【0052】
一方、第3の入射部13から第2のレンズ体11の内部へと入射した第1の光L13は、図6に示す車両用灯具1Aの水平断面において、第2のレンズ体11の前方に向かって拡散しながら導光される。
【0053】
また、第3の入射部13から第2のレンズ体11の内部へと入射した第1の光L13は、第2のレンズ体11の前方にある第1の境界面T1を透過して、第1のレンズ体9の内部へと入射する。第1のレンズ体9の内部に入射した第1の光L13は、出射部8に向かって導光される。
【0054】
すなわち、第1の境界面T1では、第1のレンズ体9の屈折率よりも中間層M及び第2のレンズ体11の屈折率を小さくしているため、第1の境界面T1に入射した第1の光L13を上方に屈折させながら、前方の出射部8に向けて透過することができる。
【0055】
出射部8は、第1のレンズ体9の正面側に出射面8aを有している。出射面8aは、車両用灯具1Aの鉛直方向(第1の光源2及び第2の光源3が並ぶ方向)及び水平方向(境界ラインSが延在する方向)において、第1の光L1及び第2の光L2を集光させる球面状又は非球面状の凸レンズ面により構成されている。また、この凸レンズ面の焦点は、境界ラインS又はその近傍に設定されている。
【0056】
出射部8では、第1のレンズ体9の内部で導光される第1の光L1及び第2の光L2を出射面8aにより集光しながら、第1のレンズ体9の外部へと出射する。また、出射部8では、出射面8aから出射された第1の光L1及び第2の光L2が集光された後に、車両用灯具1Aの水平方向及び鉛直方向に拡散されることによって、第1の光L1及び第2の光L2が第1のレンズ体9(投影レンズ4)の前方に向けて拡大投影される。
【0057】
なお、第1のレンズ体9及び第2のレンズ体11を構成する面のうち、図示や説明を省略したその他の面については、第1のレンズ体9及び第2のレンズ体11の内部を通過する第1の光L1及び第2の光L2に悪影響を与えない範囲で自由に設計(例えば、遮蔽するなど。)することが可能である。
【0058】
以上のような構成を有する本実施形態の車両用灯具1Aでは、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、第1の光源2が出射する第1の光L1を投影レンズ4により車両の進行方向に向けて投影する。このとき、投影レンズ4の前方に向けて投影される第1の光L1が、出射面8aの焦点近傍に形成される光源像を反転投影して、上端に境界ラインSによって規定されるカットオフラインを含むロービーム用配光パターン(第1の配光パターン)を形成する。
【0059】
一方、本実施形態の車両用灯具1Aでは、走行用ビーム(ハイビーム)として、第1の光源2及び第2の光源3が出射する第1の光L1及び第2の光L2を投影レンズ4により車両の進行方向に向けて投影する。このとき、投影レンズ4の前方に向けて投影される第2の光Lが、ロービーム用配光パターン(第1の配光パターン)よりも上方に位置する第2の配光パターンを形成する。ハイビーム用配光パターンは、この第2の配光パターンと、第1の光L1により形成されるロービーム用配光パターン(第2の配光パターン)との重ね合わせによって形成される。
【0060】
本実施形態の車両用灯具1Aでは、上述した第1の光源2から出射された第1の光L1が第1の入射部7から第1のレンズ体9の内部へと入射する。このとき、第1の入射部7から第1のレンズ体9の内部へと入射した第1の光L1は、図3に示す車両用灯具1Aの鉛直断面において、第1の光源2から出射された第1の光L1の光軸AX1よりも斜め下方に向かって傾斜した光軸AX2寄りに集光しながら、第1のレンズ体9の前方に向かって導光される。
【0061】
このうち、出射部8に向かって導光される第1の光L11は、この出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。これにより、第1の光L11は、図15に示すロービーム用配光パターンLPにおけるH-H線より下方の配光パターンを形成する。
【0062】
一方、第2の境界面T2に入射した第1の光L12は、この第2の境界面T2で反射された後に、出射部8に向かって導光され、この出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。これにより、第1の光L12は、図15に示すロービーム用配光パターンLPにおけるカットオフラインCL付近の配光パターンを形成する。
【0063】
また、本実施形態の車両用灯具1Aでは、上述した第2の光源3から出射された第2の光L2が第2の入射部10から第2のレンズ体11の内部へと入射する。このとき、第2の入射部10から第2のレンズ体11の内部へと入射した第2の光L2は、図3に示す車両用灯具1Aの鉛直断面において、第2の光源3から出射された第2の光L2の光軸AX3よりも斜め上方に向かって傾斜した光軸AX4寄りに集光しながら、第2のレンズ体11の前方に向かって導光される。
【0064】
このうち、第1の境界面T1に入射した第2の光L21は、この第1の境界面T1を透過し、第1のレンズ体9の内部へと入射した後、出射部8に向かって導光され、この出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。これにより、第2の光L21は、図15に示すハイビーム用配光パターンHPにおけるH-H線より上方の配光パターンを形成する。
【0065】
一方、第2の境界面T2に入射した第2の光L22は、この第2の境界面T2を透過し、第1のレンズ体9の内部へと入射した後、出射部8に向かって導光され、この出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。これにより、第2の光L22は、図15に示すハイビーム用配光パターンHPにおける下方の配光パターンを形成する。
【0066】
また、第2の境界面T2に入射した第2の光L22は、この第2の境界面T2を透過したときに、第2の境界面T2で反射された第1の光L12の位置や光線角度と近づけられる。これにより、第2の光L22は、ロービーム用配光パターンLPのカットオフラインCLよりも下方に出射されるため、図15に示すハイビーム用配光パターンHPの下部側とロービーム用配光パターンLPのカットオフラインCLとを重ねることが可能である。
【0067】
また、本実施形態の車両用灯具1Aでは、上述した第1の光源2から出射された第1の光L1の一部が第3の入射部13から第2のレンズ体11の内部へと入射する。このとき、第3の入射部13から第2のレンズ体11の内部へと入射した第1の光L13は、図3に示す車両用灯具1Aの鉛直断面において、境界ラインSの近傍に向かって拡散しながら、第2のレンズ体11の前方に向かって導光される。
【0068】
このうち、第1の境界面T1に入射した第1の光L13は、この第1の境界面T1を透過し、第1のレンズ体9の内部へと入射した後、出射部8に向かって導光され、この出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。これにより、第1の光L13は、図15に示すロービーム用配光パターンLPにおけるカットオフラインCLの上方に、道路標識等を照射するためのオーバーヘッド用配光パターン(第3の配光パターン)OPを形成する。
【0069】
以上のように、本実施形態の車両用灯具1Aでは、上述した第1の光源2及び第2の光源3から出射された第1の光L1及び第2の光L2を投影レンズ4により投影することによって、良好なロービーム用配光パターンLP、ハイビーム用配光パターンHP及びロービーム用配光パターンLPに必要となるオーバーヘッド用配光パターンOPを得ることが可能である。
【0070】
また、本実施形態の車両用灯具1Aでは、上述した投影レンズ4を構成する第1のレンズ体9と第2のレンズ体11とが、中間層Mを挟んで互いの第1の境界面T1及び第2の境界面T2を突き合わせることによって、第1の境界面T1の間及び第2の境界面T2の間に空気層を介在させることなく、中間層Mを介して接合されている。
【0071】
これにより、本実施形態の車両用灯具1Aでは、第1の境界面T1の間及び第2の境界面T2の間でフレネル損失が発生することを防ぐことができ、第1の光源2及び第2の光源3から出射された第1の光L1及び第2の光L2の利用効率を高めることが可能である。
【0072】
さらに、本実施形態の車両用灯具1Aでは、上述した投影レンズ4の高さ寸法を低く抑えることによって、全体の薄型化を図ることが可能である。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば図7図12に示す車両用灯具1Bについて説明する。
なお、図7は、車両用灯具1Bの構成を示す斜視図である。図8は、車両用灯具1Bの構成を示す分解斜視図である。図9は、車両用灯具1Bの構成を示す鉛直断面図である。図10は、車両用灯具1Bの第1の入射部7側の構成を示す水平断面図である。図11は、車両用灯具1Bの第2の入射部10側の構成を示す水平断面図である。図12は、車両用灯具1Bの第3の入射部13側の構成を示す水平断面図である。また、以下の説明では、上記車両用灯具1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0074】
本実施形態の車両用灯具1Bは、図7図12に示すように、上記車両用灯具1Aの構成に加えて、投影レンズ4を構成する第3のレンズ体12を備えている。
【0075】
すなわち、この投影レンズ4は、上述した第1のレンズ体9及び第2のレンズ体11と共に、出射部8と対向する側に位置する第3のレンズ体12を有している。
【0076】
第3のレンズ体12は、その背面側に第1の光L1及び第2の光L2が入射する入射面12aと、その正面側に第1の光L1及び第2の光L2が出射する出射面12bとを有している。
【0077】
入射面12aは、車両用灯具1Aの鉛直方向において、第1の光L1及び第2の光L2を集光させるように、その円柱軸が水平方向に延びた略半円柱状の凹レンズ面により構成されている。
【0078】
出射面12bは、車両用灯具1Aの鉛直方向において、第1の光L1及び第2の光L2を集光させるように、その円柱軸が水平方向に延びた略半円柱状の凸レンズ面により構成されている。
【0079】
また、本実施形態の車両用灯具1Bでは、第1のレンズ体9の出射面8a、第3のレンズ体12の入射面12a及び出射面12bにより構成される合成レンズの合成焦点が、境界ラインS又はその近傍に設定されている。
【0080】
なお、出射部8については、上述した車両用灯具1Aの鉛直方向及び水平方向において、第1の光L1及び第2の光L2を集光させる出射面8aを有した構成となっているが、第3のレンズ体12を有する場合、車両用灯具1Aの水平方向のみにおいて、第1の光L1及び第2の光L2を集光させる出射面8aを有した構成としてもよい。
【0081】
この場合、出射面8aについては、車両用灯具1Aの水平方向において、第1の光L1及び第2の光L2を集光させるように、その円柱軸が鉛直方向に延びた略半円柱状の凸レンズ面により構成することが可能である。
【0082】
また、第3のレンズ体12については、上述した入射面12aが凹レンズ面により構成されたものに限らず、入射面12aが平面により構成されたものであってよい。
【0083】
第3のレンズ体12は、出射部8との間に空気層Kを設けた状態で、第1のレンズ体9と一体に組み合わされている。第3のレンズ体12は、一対のアーム部12c,12dを有している。一対のアーム部12c,12dは、第3のレンズ体12の上下両側から後方に向かって延長して設けられている。また、一対のアーム部12c,12dの先端側は、互いに離間する方向に向かって折り曲げられた形状を有している。
【0084】
投影レンズ4では、一対のアーム部12c,12dの間で第1のレンズ体9を挟み込んだ状態で、一対のアーム部12c,12dが第1のレンズ体9に対して位置決め固定されている。これにより、入射面12aと出射面8aとの間に空気層Kを設けた状態で、第1のレンズ体9と第3のレンズ体12とが一体に組み合わされている。
【0085】
なお、第3のレンズ体12を構成する面のうち、図示や説明を省略したその他の面については、第3のレンズ体12の内部を通過する第1の光L1及び第2の光L2に悪影響を与えない範囲で自由に設計(例えば、遮蔽するなど。)することが可能である。
【0086】
以上のような構成を有する本実施形態の車両用灯具1Bでは、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、第1の光源2が出射する第1の光L1を投影レンズ4により車両の進行方向に向けて投影する。このとき、投影レンズ4の前方に向けて投影される第1の光L1が、上述した合成レンズの焦点近傍に形成される光源像を反転投影して、上端に境界ラインSによって規定されるカットオフラインを含むロービーム用配光パターン(第1の配光パターン)を形成する。
【0087】
一方、本実施形態の車両用灯具1Bでは、走行用ビーム(ハイビーム)として、第1の光源2及び第2の光源3が出射する第1の光L1及び第2の光L2を投影レンズ4により車両の進行方向に向けて投影する。このとき、投影レンズ4の前方に向けて投影される第2の光Lが、ロービーム用配光パターン(第1の配光パターン)よりも上方に位置する第2の配光パターンを形成する。ハイビーム用配光パターンは、この第2の配光パターンと、第1の光L1により形成されるロービーム用配光パターン(第2の配光パターン)との重ね合わせによって形成される。
【0088】
本実施形態の車両用灯具1Bでは、上述した第1の光源2から出射された第1の光L1が第1の入射部7から第1のレンズ体9の内部へと入射する。このとき、第1の入射部7から第1のレンズ体9の内部へと入射した第1の光L1は、図9に示す車両用灯具1Bの鉛直断面において、第1の光源2から出射された第1の光L1の光軸AX1よりも斜め下方に向かって傾斜した光軸AX2寄りに集光しながら、第1のレンズ体9の前方に向かって導光される。
【0089】
このうち、出射部8に向かって導光される第1の光L11は、この出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。さらに、第1のレンズ体9の外部へと出射された第1の光L11は、空気層Kを介して入射面12aから第3のレンズ体12の内部に入射し、出射面12bから第3のレンズ体12の外部へと出射される。これにより、第1の光L11は、図15に示すロービーム用配光パターンLPにおけるH-H線より下方の配光パターンを形成する。
【0090】
一方、第2の境界面T2に入射した第1の光L12は、この第2の境界面T2で反射された後に、出射部8に向かって導光され、この出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。さらに、第1のレンズ体9の外部へと出射された第1の光L12は、空気層Kを介して入射面12aから第3のレンズ体12の内部に入射し、出射面12bから第3のレンズ体12の外部へと出射される。これにより、第1の光L12は、図15に示すロービーム用配光パターンLPにおけるカットオフラインCL付近の配光パターンを形成する。
【0091】
また、本実施形態の車両用灯具1Bでは、上述した第2の光源3から出射された第2の光L2が第2の入射部10から第2のレンズ体11の内部へと入射する。このとき、第2の入射部10から第2のレンズ体11の内部へと入射した第2の光L2は、図9に示す車両用灯具1Aの鉛直断面において、第2の光源3から出射された第2の光L2の光軸AX3よりも斜め上方に向かって傾斜した光軸AX4寄りに集光しながら、第2のレンズ体11の前方に向かって導光される。
【0092】
このうち、第1の境界面T1に入射した第2の光L21は、この第1の境界面T1を透過し、第1のレンズ体9の内部へと入射した後、出射部8に向かって導光され、この出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。さらに、第1のレンズ体9の外部へと出射された第2の光L21は、空気層Kを介して入射面12aから第3のレンズ体12の内部に入射し、出射面12bから第3のレンズ体12の外部へと出射される。これにより、第2の光L21は、図15に示すハイビーム用配光パターンHPにおけるH-H線より上方の配光パターンを形成する。
【0093】
一方、第2の境界面T2に入射した第2の光L22は、この第2の境界面T2を透過し、第1のレンズ体9の内部へと入射した後、出射部8に向かって導光され、この出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。さらに、第1のレンズ体9の外部へと出射された第2の光L22は、空気層Kを介して入射面12aから第3のレンズ体12の内部に入射し、出射面12bから第3のレンズ体12の外部へと出射される。これにより、第2の光L22は、図15に示すハイビーム用配光パターンHPにおける下方の配光パターンを形成する。
【0094】
また、第2の境界面T2に入射した第2の光L22は、この第2の境界面T2を透過したときに、第2の境界面T2で反射された第1の光L12の位置や光線角度と近づけられる。これにより、第2の光L22は、ロービーム用配光パターンLPのカットオフラインCLよりも下方に出射されるため、図15に示すハイビーム用配光パターンHPの下部とロービーム用配光パターンLPのカットオフラインCLとを重ねることが可能である。
【0095】
また、本実施形態の車両用灯具1Bでは、上述した第1の光源2から出射された第1の光L1の一部が第3の入射部13から第2のレンズ体11の内部へと入射する。このとき、第3の入射部13から第2のレンズ体11の内部へと入射した第1の光L13は、図9に示す車両用灯具1Aの鉛直断面において、境界ラインSの近傍に向かって拡散しながら、第2のレンズ体11の前方に向かって導光される。
【0096】
このうち、第1の境界面T1に入射した第1の光L13は、この第1の境界面T1を透過し、第1のレンズ体9の内部へと入射した後、出射部8に向かって導光され、この出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。さらに、第1のレンズ体9の外部へと出射された第1の光L13は、空気層Kを介して入射面12aから第3のレンズ体12の内部に入射し、出射面12bから第3のレンズ体12の外部へと出射される。これにより、第1の光L13は、図15に示すロービーム用配光パターンLPにおけるカットオフラインCLの上方に、道路標識等を照射するためのオーバーヘッド用配光パターン(第3の配光パターン)OPを形成する。
【0097】
以上のように、本実施形態の車両用灯具1Bでは、上述した第1の光源2及び第2の光源3から出射された第1の光L1及び第2の光L2を投影レンズ4により投影することによって、良好なロービーム用配光パターンLP、ハイビーム用配光パターンHP及びロービーム用配光パターンLPに必要となるオーバーヘッド用配光パターンOPを得ることが可能である。
【0098】
また、本実施形態の車両用灯具1Bでは、上述した投影レンズ4を構成する第1のレンズ体9と第2のレンズ体11とが、中間層Mを挟んで互いの第1の境界面T1及び第2の境界面T2を突き合わせることによって、第1の境界面T1の間及び第2の境界面T2の間に空気層を介在させることなく、中間層Mを介して接合されている。
【0099】
これにより、本実施形態の車両用灯具1Bでは、第1の境界面T1の間及び第2の境界面T2の間でフレネル損失が発生することを防ぐことができ、第1の光源2及び第2の光源3から出射された第1の光L1及び第2の光L2の利用効率を高めることが可能である。
【0100】
さらに、本実施形態の車両用灯具1Bでは、上述した投影レンズ4の高さ寸法を低く抑えることによって、全体の薄型化を図ることが可能である。
【0101】
本実施形態の車両用灯具1Bでは、上述した第3のレンズ体12を追加することで、第1のレンズ体9の出射部8と第3のレンズ体12との間で、この車両用灯具1Bの鉛直方向において第1の光L1及び第2の光L2を集光させる機能と、この車両用灯具1Bの水平方向において第1の光L1及び第2の光L2を集光させる機能とを分担させることが可能である。
【0102】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態として、例えば図13及び図14に示す車両用灯具1Cについて説明する。
なお、図13は、車両用灯具1Cの構成を示す鉛直断面図である。図14は、車両用灯具1Cの構成を示す水平断面図である。また、以下の説明では、上記車両用灯具1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0103】
本実施形態の車両用灯具1Cは、図13に示すように、上記車両用灯具1Aの構成のうち、第1のレンズ体9の屈折率よりも第2のレンズ体11の屈折率が大きくなる構成を有している。したがって、本実施形態では、例えば、第2のレンズ体11がポリカーボネート樹脂(PC)からなり、第1のレンズ体9がアクリル樹脂(PMMA)からなる。
【0104】
第3の入射部13は、集光反射面10cよりも上方から突出した部分の上側に位置して、第1の光源2から出射された第1の光L1の一部が入射する凹面状の拡散入射面13bと、突出した部分の下側に位置して、拡散入射面13bから入射した第1の光L13を反射する凹面状の拡散反射面13cとを有している。
【0105】
第3の入射部13では、第1の光源2から放射状に出射された第1の光L1のうち、第1の光源2と対向する部分よりも下方に位置する拡散入射面13bから第2のレンズ体11の内部に入射した第1の光L13を拡散反射面13cに向かって屈折させた後、拡散反射面13cで前方に向かって反射する。
【0106】
これにより、第3の入射部13から第2のレンズ体11の内部へと入射した第1の光L13は、図13に示す車両用灯具1Cの鉛直断面において、境界ラインSの近傍に向かって拡散しながら、第2のレンズ体11の前方に向かって導光される。
【0107】
一方、第3の入射部13から第2のレンズ体11の内部へと入射した第1の光L13は、図14に示す車両用灯具1Cの水平断面において、第2のレンズ体11の前方に向かって拡散しながら導光される。
【0108】
また、第3の入射部13から第2のレンズ体11の内部へと入射した第1の光L13は、第2のレンズ体11の前方にある第1の境界面T1を透過して、第1のレンズ体9の内部へと入射する。第1のレンズ体9の内部に入射した第1の光L13は、出射部8に向かって導光され、この出射部8から第1のレンズ体9の外部へと出射される。
【0109】
これにより、第1の光L13は、図15に示すロービーム用配光パターンLPにおけるカットオフラインCLの上方に、道路標識等を照射するためのオーバーヘッド用配光パターン(第3の配光パターン)OPを形成する。
【0110】
以上のように、本実施形態の車両用灯具1Cでは、上記車両用灯具1Aと同様に、第1の光源2及び第2の光源3から出射された第1の光L1及び第2の光L2を投影レンズ4により投影することによって、良好なロービーム用配光パターンLP、ハイビーム用配光パターンHP及びロービーム用配光パターンLPに必要となるオーバーヘッド用配光パターンOPを得ることが可能である。
【0111】
なお、上記車両用灯具1Cの構成については、上記車両用灯具1Aの構成に適用する場合に限らず、上記車両用灯具1Bの構成にも適用することが可能である。
【0112】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記車両用灯具1A,1B,1Cでは、第1のレンズ体9と第2のレンズ体11とが中間層Mを介して突き合わされた構成となっているが、中間層Mを省略し、第1のレンズ体9と第2のレンズ体11とが直接突き合わされた構成としてもよい。
【0113】
なお、本発明を適用した車両用灯具は、上述した車両用前照灯(ヘッドランプ)に対して好適に用いられるものの、本発明が適用される車両用灯具については、上述したフロント側の車両用灯具に限らず、例えばリアコンビネーションランプなどのリア側の車両用灯具に本発明を適用することも可能である。
【0114】
すなわち、本発明は、第1の光を出射する第1の光源と、第1の光源と隣接して配置されて、第1の光と同一方向に向けて第2の光を出射する第2の光源と、第1の光及び第2の光を互いに同一方向に向けて投影する投影レンズとを備える車両用灯具に対して本発明を幅広く適用することが可能である。
【0115】
また、第1の光源及び第2の光源については、上述したLEDに限らず、例えばレーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いることも可能である。また、第1の光及び第2の光の色についても、上述した白色光に限らず、赤色光や橙色光など、その用途に応じて適宜変更することが可能である。さらに、第1の光源と第2の光源とが互いに異なる色の第1の光と第2の光とを選択的に出射する構成とすることも可能である。
【0116】
また、上記車両用灯具1A,1B,1Cでは、上述した第1の光源2及び第2の光源3が並ぶ方向が車両用灯具1A,1B,1Cの鉛直方向となり、境界ラインSが延在する方向が車両用灯具1A,1B,1Cの水平方向となっているが、第1の光源及び第2の光源が並ぶ方向が車両用灯具の水平方向となり、境界ラインが延在する方向が車両用灯具の鉛直方向となる車両用灯具に対して本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0117】
1A,1B,1C…車両用灯具 2…第1の光源 3…第2の光源 4…投影レンズ 5…回路基板 6…ヒートシンク 7…第1の入射部 8…出射部 9…第1のレンズ体 10…第2の入射部 11…第2のレンズ体 12…第3のレンズ体 13…第3の入射部 T1…第1の境界面 T2…第2の境界面 M…中間層 S…境界ライン L1…第1の光 L2…第2の光 LP…ロービーム用配光パターン HP…ハイビーム用配光パターン OP…オーバーヘッド用配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15