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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/18 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
G01N27/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020195836
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084165
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅広
(72)【発明者】
【氏名】北野谷 昇治
(72)【発明者】
【氏名】松倉 佑介
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-249684(JP,A)
【文献】特開2012-202939(JP,A)
【文献】特開2017-122616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0349201(US,A1)
【文献】阿部 博幸ほか,エンジンルームに実装される筐体構造電子部品の硫黄腐食における加速試験方法の提案,材料と環境,日本,公益社団法人 腐食防食学会,2016年05月15日,65巻,5号,p.193-196
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサ素子と、
ガス導入口を含む壁部を有する箱状のケーシングと、
前記ガスセンサ素子が実装された実装面を含み、前記実装面が前記壁部から離された状態で前記ガスセンサ素子が前記ガス導入口と重なるように、前記ケーシングの内部に配置される回路基板と、
前記ガスセンサ素子の周りを取り囲みつつ、前記実装面と前記壁部との間に配置される環状の弾性シール体とを備えるガスセンサであって、
前記弾性シール体は、硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂からなり、かつ
前記弾性シール体は、前記実装面と前記壁部とにそれぞれ接着されているガスセンサ。
【請求項2】
前記弾性シール体は、前記実装面と前記壁部との間で挟まれた状態で配置され、前記硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂の接着性により、前記実装面と前記壁部とにそれぞれ接着されている請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記ガスセンサ素子は、自身の温度変化により抵抗値が変化する発熱抵抗体を含む熱伝導式ガスセンサ素子からなる請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記ケーシングの内部に配置される金属製の網部材を備える請求項3に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
被検出ガス(例えば、水素等の可燃性ガス)の濃度を検出するガスセンサが知られている。この種のガスセンサは、例えば、特許文献1に示されるように、被検出ガスを検出するためのガスセンサ素子が実装された回路基板が、樹脂製の箱状のケーシングに収容された構成を備えている。回路基板とケーシングとの間には、ガスセンサ素子を取り囲むように環状の弾性シール体が介在されており、弾性シール体、回路基板及びケーシングによって密閉された空間が形成される。その空間に、ケーシングに設けられたガス導入口から、被検出ガスを含む雰囲気ガスが導入されると、空間中の被検出ガスの濃度が、ガスセンサ素子により検出される。
【0003】
弾性シール体を構成する材料としては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等のゴム材料が利用されている。弾性シール体には、通常、ゴム弾性を改善等する目的で、加硫(硫黄架橋)が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-122616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加硫等により、弾性シール体中に硫黄成分が含まれていると、時間の経過と共に、弾性シール体から硫黄を含む腐食成分(例えば、硫黄ガス等の硫黄成分)が発生し、その腐食成分が、回路基板上に形成されたガスセンサ素子を実装するためのパッド部を腐食する虞があった。
【0006】
パッド部は、銅(Cu)を含んでいるため、パッド部と腐食成分とが反応すると、硫化銅(CuS)が生成される。硫化銅が、例えば、隣り合ったパッド部の間を繋ぐように成長すると、ガスセンサ素子の端子間がショートして、ガスセンサ素子が故障する虞があった。
【0007】
本発明の目的は、ガスセンサ素子を取り囲む弾性シール体から、硫黄を含む腐食成分の発生が防止されたガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> ガスセンサ素子と、ガス導入口を含む壁部を有する箱状のケーシングと、前記ガスセンサ素子が実装された実装面を含み、前記実装面が前記壁部から離された状態で前記ガスセンサ素子が前記ガス導入口と重なるように、前記ケーシングの内部に配置される回路基板と、前記ガスセンサ素子の周りを取り囲むように前記実装面に形成され、かつ前記実装面と前記壁部との間に配置される環状の弾性シール体とを備えるガスセンサであって、前記弾性シール体は、硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂からなるガスセンサ。
【0009】
<2> 前記ガスセンサ素子は、自身の温度変化により抵抗値が変化する発熱抵抗体を含む熱伝導式ガスセンサ素子からなる前記<1>に記載のガスセンサ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガスセンサ素子を取り囲む弾性シール体から、硫黄を含む腐食成分の発生が防止されたガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係るガスセンサの構成を模式的に表した断面図
図2図1の測定室付近の拡大断面図
図3】回路基板上のパッド部と弾性シール体との配置関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、図1図3を参照しつつ説明する。図1は、実施形態1に係るガスセンサ1の構成を模式的に表した断面図である。説明の便宜上、図1の上側を、ガスセンサ1の上側とし、図1の下側を、ガスセンサ1の下側とする。ガスセンサ1は、被検出ガスへの熱伝導を利用して被検出ガスの濃度を検出する装置である。このようなガスセンサ1は、例えば、エネルギー源として水素ガスを利用した燃料電池を搭載するシステム(例えば、燃料電池自動車、家庭用燃料電池システム)に配置され、可燃性ガスである水素ガスを検出する。これにより、システム内における水素ガスの漏れを検出できる。
【0013】
ガスセンサ1は、図1に示されるように、主として、検出素子アッセンブリ2と、ケーシング3と、回路基板4と、弾性シール体5とを備えている。
【0014】
図2は、測定室付近の拡大断面図である。検出素子アッセンブリ(キャップ付きパッケージ)2は、図2に示されるように、ガスセンサパッケージ21と、保護キャップ25とを備えている。
【0015】
ガスセンサパッケージ21は、主として、ガスセンサ素子22と、本体部23と、複数の端子部24とを備えている。ガスセンサ素子22は、自身の温度変化により抵抗値が変化する発熱抵抗体(不図示)を有する熱伝導式の検出素子(熱伝導式ガスセンサ素子)である。本体部23は、ガスセンサ素子22を収容する上方に開口した箱状部材であり、概ね直方体状をなしている。本体部23は、絶縁性セラミックからなる。端子部24は、本体部23内のガスセンサ素子22の電極に接続する導電性の部材であり、本体部23の底面23aに配される底面側端子部24aと、底面側端子部24aから立ち上がり本体部23の外側側面23bに形成される側面側端子部24bとを有する。
【0016】
保護キャップ25は、箱状の本体部23の開口部を覆うように被せられる蓋材であり、上側に凸状に盛り上がった形をなしている。保護キャップ25の上面部25aには、被検出ガスを含む雰囲気ガスを保護キャップ25の内側に導入するための複数の通気孔(不図示)が形成されている。これらの通気孔の形成位置は、本体部23内においてガスセンサ素子22の発熱抵抗体が配置されている箇所と、上下方向で重ならないように設定されている。このように通気孔の位置が設定されることで、埃等の異物が保護キャップ25内に侵入した場合でも、異物が発熱抵抗体に近付くことが抑制される。発熱抵抗体で生じた熱が異物に伝わってしまうと、被検出ガスの濃度検出の精度が低下するため、上記のように、保護キャップ25がガスセンサパッケージ21の本体部23に取り付けられる。
【0017】
ケーシング3は、検出素子アッセンブリ2、回路基板4等を収容する略箱状の部材であり、非導電性の樹脂で構成されている。ケーシング3は、その内部に、検出素子アッセンブリ2等を収容する空間31を備えている。ケーシング3は、第1ケーシング部3Aと、第2ケーシング部3Bとを備えている。空間31は、第1ケーシング部3Aと第2ケーシング部とで囲まれている。
【0018】
第1ケーシング部3Aは、全体的には、上方に開口した容器状をなしており、その底側(下側)を構成する壁部3A1には、回路基板3を支持する凸状の支持部3A2,3A3が設けられている。また、第1ケーシング部3Aの側方(図1の右側)には、コネクタ部3A4が設けられている。なお、第1ケーシング部3Aの上方に開口した部分を、開口部3A5と称する。
【0019】
第2ケーシング部3Bは、第1ケーシング部3Aの開口部3A5を覆うような蓋状(板状)をなしており、第2ケーシング部3Bを構成する壁部3B1に、ガス導入口3B2が設けられている。ガス導入口3B2は、被検出ガスを、測定室7の内部に導入するためのものであり、第2ケーシング部3Bの略中央に設けられている。なお、ガス導入口3B2の内部には、金属製の網部材3Dが配置されている。
【0020】
第2ケーシング部3Bの壁部3B1には、上方に向かって環状に突出した環状部材3B3が設けられており、その内側に、網部材3Dを保持する枠部3Cが収容されている。枠部3Cの内側には、上下方向に貫通する孔部が設けられており、その孔部が、ガス導入口3B2として利用されている。枠部3Cは、網部材3Dを上下で挟持できるように2部品で構成されている。なお、他の実施形態においては、網部材と枠部とをインサート成形等により一体成形することで、枠部を1部品で構成してもよい。
【0021】
なお、第2ケーシング部3Bの壁部3B1には、ガス導入口3B2と重なる部分に、開口部3B4が設けられており、その開口部3B4を覆うと共に、ガス導入口3B2と重なるように、撥水フィルタ3Eが設けられている。なお、本明細書では、環状部材3B3や、網部材3Dを保持する枠部3Cも、第2ケーシング部3Bの壁部3B1の一部を構成するものとする。
【0022】
網部材3Dは、例えば、メッシュ状の金網からなり、ガスセンサパッケージ21が有するガスセンサ素子の発熱抵抗体(後述)が高温になって可燃性の被検出ガスが発火した場合でも、火炎がガスセンサ1の外部に出るのを防止する機能(フレームアレスタ機能)を備えている。撥水フィルタ3Eは、ガス導入口3B2からケーシング3の内部に、水が浸入することを防止する機能を備えている。なお、被検出ガスは、撥水フィルタ3Eを通過可能である。
【0023】
第1ケーシング部3Aに設けられたコネクタ部3A4は、外部回路との電気的接続に利用される。コネクタ部3A4の内部には、複数のコネクタピン6が設けられている。回路基板3には、複数のコネクタピン6を接続するための複数のスルーホール4Aが形成されている。個々のコネクタピン6は、スルーホール4Aに挿入された状態で、回路基板34上にはんだ付けにより固定される。
【0024】
回路基板4は、被検出ガスの濃度を検出するための回路を備えた基板であり、上側に配される面(実装面)4aに、検出素子アッセンブリ2が実装される。なお、回路基板4には、それ以外に、ガスセンサ素子を制御するマイコンや各種電子部品(不図示)がはんだ付け等により実装されている。
【0025】
また、回路基板4の実装面4aには、検出素子アッセンブリ2の実装時に利用される複数のパッド部41が設けられている。図3は、回路基板4上のパッド部41と弾性シール体5との配置関係を示す説明図である。パッド部41は、銅又は銅合金からなる薄手の層状部材であり、公知の方法(エッチング等)で回路基板4上に形成される。回路基板4上には、パッド部41以外に、図示されないパターン状の配線等が形成されている。
【0026】
検出素子アッセンブリ2は、本体部23に設けられた複数の端子部24が、対応するパッド部41に対してそれぞれ重なるように、回路基板4上に配置される。実装時に、パッド部41上には、ペースト状のはんだが付与されており、そのはんだの上に、端子部24の底面側端子部24aが載せられ、その状態でリフローが行われる。
【0027】
なお、パッド部41は、底面側端子部24aよりも大きく、パッド部41上に底面側端子部24aが重ねられる部分(重畳部41a)の外側に、はみ出した部分(延設部41b)がある。そのはみ出した延設部41bと、端子部24の側面側端子部24bとを電気的に接続するために、はんだ付けがなされている。そのため、延設部41b及び側面側端子部24bを覆うように、はんだ部26が形成されている。
【0028】
このように、回路基板4の実装面4aには、ガスセンサ素子22が、検出素子アッセンブリ2のガスセンサパッケージ21に収容された状態で、実装されている。そのため、本明細書では、「ガスセンサ素子22が回路基板4の実装面4aに実装されている」、と表現する場合がある。
【0029】
回路基板4は、図1に示されるように、容器状の第1ケーシング部3Aの底側に設けられた複数の支持部3A2,3A3に支持された状態で、ケーシング3の内部に収容されている。ケーシング3の内部において、回路基板4は、実装面4aが、第1ケーシング部3Aの壁部3B1から離された状態であり、かつ回路基板4上に実装された検出素子アッセンブリ2が、ガス導入口3B2と上下方向で重なるように、配置されている。そのような回路基板4と、壁部3B1との間に、弾性シール体5が介在されている。
【0030】
壁部3B1のうち、回路基板4の実装面4aと対向する側の部分には、下側(回路基板4側)に向かって円環状に盛り上がった円環部3Fが設けられており、その円環部3Fと、回路基板4の実装面4aとの間で、弾性シール体5が挟まれた状態となっている。なお、円環部3Fは、壁部3B1の一部として構成されている。円環部3Fの内側に、開口部3B4が配されている。
【0031】
回路基板4、弾性シール体5及びケーシング3の壁部3B1で囲まれた空間が、被検出ガスの濃度を検出するために外部からガス導入口3B2を介して導入された雰囲気ガスを収容する測定室7として利用される。
【0032】
弾性シール体5は、硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂からなる。硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂とは、硫黄を含まない縮合型シリコーン樹脂のことであり、市販品を用いることができる。なお、本明細書において「硫黄非含有」とは、JIS K 6233-3に規定された電気炉燃焼法分析の結果、硫黄量が50ppm以下のものを言う。硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂は、大気中に含まれている水分を取り込みながら硬化反応が進行するため、硬化時に加熱が不要であり、常温(室温)で硬化させることができる。なお、硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂では、硬化反応に伴って、低分子(例えば、アセトン等)が放出されるものの、その低分子は、硬化後の硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂からは実質的に放出されないため、弾性シール体5は、被検出ガスの濃度検出の精度に影響しない。
【0033】
また、弾性シール体5に使用される硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂は、硬化した状態で、従来の弾性シール体の代替品として使用可能な、適度の弾性を備えている。
【0034】
硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂としては、一液で縮合反応が進行する一液タイプであってもよいし、主剤と硬化剤とを混合した混合物の状態で縮合反応が進行する二液タイプであってもよい。なお、取扱性、作業性等の観点より、一液タイプの硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂が好ましい。
【0035】
弾性シール体5は、例えば、以下の方法で製造される。先ず、回路基板4の実装面4a上に、未硬化状態の流動性を備えた硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂(以下、「硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂組成物」と称する場合がある。)を、ディスペンサ等の公知の塗布機を利用して円環状に付与し、その付与物を回路基板4の実装面4aとの間で挟むようにして、付与物にケーシング3の壁部3B1(円環部3F)を接触させる。そして、回路基板4の実装面4aとケーシング3の円環部3Fとの間で、付与物(硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂組成物)を挟んだものを、所定時間、常温で放置して、硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂組成物を硬化させる。このようにして、硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂組成物の硬化物(硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂)からなる弾性シール体5が得られる。
【0036】
なお、他の実施形態においては、上述した方法とは反対に、先ず、ケーシング3の壁部3B1(円環部3F)に、硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂組成物を付与し、その後、その付与物に、回路基板4の実装面4aを接触させて、付与物を自然硬化させてもよい。
【0037】
硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂は、接着性を備えており、未硬化の状態から硬化すると、ケーシング3の壁部3B1や、回路基板4の実装面4aに対して接着性を発揮する。そのため、弾性シール体5とケーシング3の壁部3B1(円環部3F)との間や、弾性シール体5と回路基板4の実装面4aとの間に隙間が形成されることが抑制され、測定室7は、優れた気密性(密閉性)を備えている。
【0038】
本実施形態の弾性シール体5は、硫黄を含んでいないため、弾性シール体5から硫黄を含む腐食成分(例えば、硫黄ガス等の硫黄成分)が発生することが防止される。そのため、回路基板4上に形成されたパッド部41が腐食成分により腐食されることが防止される。
【0039】
本実施形態のガスセンサ1では、隣り合ったパッド部41の間を繋ぐように、腐食生成物(硫化銅)が形成されて、ガスセンサ素子22の端子部24間がショートすることにより、ガスセンサ素子22が故障することが防止される。
【0040】
なお、回路基板4の実装面4a上のパッド部41は、図3に示されるように、弾性シール体5の近くに配置されている。特に、パッド部41の延設部41bは、弾性シール体5の近くに配置されている。延設部41bは、対応する端子部24との電気的な接続のために、はんだ部26によって覆われているものの、その付近に、腐食成分(硫黄ガス等の硫黄成分)が存在していると、銅を含むパッド部41(延設部41b)は、時間の経過と共に、腐食成分によって腐食されてしまう。なお、図3において、一点鎖線で囲まれた範囲Sに、検出素子アッセンブリ2が実装される。
【0041】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
(1)実施形態1において、回路基板4の実装面4aのうち、環状の弾性シール体5よりも外側の範囲にある外側実装面4a1には、湿気や腐食ガス等が接触しないように保護するコーティン層(保護層)が形成されている。コーティング層としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を含む公知のものが利用される。コーティン層は、回路基板4に形成されたパターン状の配線(銅を含む)等を覆うように形成されている。弾性シール体5からは、硫黄を含んだ腐食成分が発生しないため、他の実施形態においては、外側実装面4a1に、コーティング層の形成を省略して、パターン状の配線等を露出させてもよい。
【0043】
(2)弾性シール体に使用される硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂としては、低分子シロキサンの発生が抑制されたものが好ましい。ただし、ガスセンサ素子として、熱伝導式のガスセンサ素子を使用すれば、低分子シロキサンによる劣化の問題が発生しないため、低分子シロキサンをある程度、発生する硫黄非含有縮合型シリコーン樹脂を使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…ガスセンサ、2…検出素子アッセンブリ、21…ガスセンサパッケージ、22…ガスセンサ素子、23…本体部、24…端子部、25…保護キャップ、26…はんだ部、3…ケーシング、3A…第1ケーシング部、3B…第2ケーシング部、3B1…第2ケーシング部の壁部、3B2…ガス導入口、4…回路基板、41…パッド部、5…弾性シール体、7…測定室
図1
図2
図3