(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F04D 27/02 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
F04D27/02 D
F04D27/02 G
(21)【出願番号】P 2020196891
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】広江 隆治
(72)【発明者】
【氏名】松尾 実
(72)【発明者】
【氏名】石黒 達男
(72)【発明者】
【氏名】中庭 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】時政 泰憲
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-241760(JP,A)
【文献】特開平09-079181(JP,A)
【文献】特開平08-042491(JP,A)
【文献】特開2019-128108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を含むシステムへの指令値であって、前記圧縮機の運転状態に影響する前記指令値を
周期Tで変動させる変動指令部と、
前記指令値に基づいて前記システムを運転したときの前記圧縮機または前記圧縮機を駆動する電動機の状態を示すパラメータ
のうち、前記指令値の変動に応答し、サージングが発生したときには前記指令値の変動に対しサージングが発生していないときと比べて大きさの異なる応答が生じる所定のパラメータに含まれる周期T/n(nは自然数)の変動成分の大きさを抽出する変動算出部と、
前記指令値
の変動の大きさに対する
前記所定のパラメータに含まれる前記周期T/n(nは自然数)の前記変動成分の大きさを表し、絶対値が大きいほどサージングの程度が大きいことを表す比例係数を算出する比例係数算出部と、
前記比例係数の絶対値が閾値以上であればサージングが発生していると判定する判定部と、
前記判定部によってサージングが発生していると判定された場合に、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量を増加させることにより、前記圧縮機のサージングを回避または抑制する制御を行う制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記指令値は、周期Tのsin波とcоs波を重畳させた値を持ち、サージングに強い影響を及ぼすことが分かっている所定の指令値であって、
前記比例係数算出部は、
前記sin波の振幅及び前記cоs波の振幅と、
前記指令値に対する前記パラメータの前記変動成分に含まれる前記周期T/n(nは自然数)のsin波成分の振幅及びcоs波成分の振幅と、に基づいて、
前記sin波の振幅及び前記cоs波の振幅の大きさに対する前記sin波成分の振幅及び前記cоs波成分の振幅の大きさの関係を前記比例係数として算出する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記sin波の振幅をa
n
、前記cоs波の振幅をb
n
、前記sin波成分の振幅の前記周期T/n(nは自然数)にわたる積算値をa
r
、前記cоs波成分の振幅の前記周期T/n(nは自然数)にわたる積算値をb
r
としたときに、前記比例係数算出部は(a
r
・a
n
+b
r
・b
n
)/(a
r
2
+b
r
2
)によって前記比例係数を算出する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記比例係数算出部は、複数の前記パラメータごとに前記比例係数を算出し、
前記制御部は、複数の前記比例係数の値に基づいて、前記圧縮機のサージングを回避または抑制する制御を行う、
請求項1
から請求項3の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記指令値は、前記圧縮機の回転数指令値であって、前記変動指令部は、前記回転数指令値を周期的に変動させ、
前記比例係数算出部は、前記回転数指令値を周期的に変動させたときの前記比例係数を算出し、
前記制御部は、前記比例係数の大きさに応じて、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量を増加させる制御を行う、
請求項1
から請求項4の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記システムは、複数の前記圧縮機を備え、前記圧縮機ごとに、前記圧縮機が吸入する流体の流量を制御する入口案内翼が設けられ、
前記指令値は、入口案内翼の角度指令値であって、前記変動指令部は、前記角度指令値を周期的に変動させ、
前記比例係数算出部は、前記角度指令値を周期的に変動させたときの前記比例係数を算出し、
前記制御部は、前記比例係数の大きさに応じて、複数の前記圧縮機が負担する仕事が均等化するように、前記入口案内翼ごとの角度指令値を調整する制御を行う、
請求項1から請求項
5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
複数の前記圧縮機について、前記制御部は、サージングが発生する可能性が低い方の前記圧縮機に設けられた前記入口案内翼を前記圧縮機の負担する仕事が増加するよう変更させる、
請求項
6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記指令値は、前記圧縮機の吸入側と吐出側を接続する配管に設けられた流量調節弁の開度指令値であって、前記変動指令部は、前記開度指令値を周期的に変動させ、
前記比例係数算出部は、前記流量調節弁の開度指令値を周期的に変動させたときの前記比例係数を算出し、
前記制御部は、前記比例係数の大きさに応じて、前記開度指令値を調整する制御を行う、
請求項1から請求項
7の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記圧縮機の吐出圧力または前記圧縮機の前後圧力比と、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量と、の関係が、予め定められたサージングが発生する可能性が高い関係にあるときに請求項
8に記載の処理を行う、
請求項
8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記パラメータは、前記圧縮機の回転数、前記圧縮機の振動、
前記圧縮機の軸又は軸受けの振動、前記圧縮機を流れる電流、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量、前記流体の圧力、前記圧縮機の前後における前記流体の圧力比、
前記圧縮機が吐出する流体の圧力変動、前記流体の流量の変動、前記電動機の回転数、前記電動機の振動、
前記電動機の軸又は軸受けの振動、前記電動機を流れる電流、前記電動機が消費する電力、周囲の騒音の少なくとも1つである、
請求項1から請求項
9の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
圧縮機を含むシステムへの指令値であって、前記圧縮機の運転状態に影響する前記指令値を
周期Tで変動させ、
前記指令値に基づいて前記システムを運転したときの前記圧縮機または前記圧縮機を駆動する電動機の状態を示す
パラメータのうち、前記指令値の変動に応答し、サージングが発生したときには前記指令値の変動に対しサージングが発生していないときと比べて大きさの異なる応答が生じる所定のパラメータの
周期T/n(nは自然数)の変動成分の大きさを抽出し、
前記指令値
の変動の大きさに対する
前記所定のパラメータに含まれる前記周期T/n(nは自然数)の前記変動成分の大きさを表し、絶対値が大きいほどサージングの程度が大きいことを表す比例係数を算出し、
前記比例係数の絶対値が閾値以上であればサージングが発生していると判定し、
サージングが発生していると判定された場合に、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量を増加させることにより、前記圧縮機のサージングを回避または抑制する制御を行う、
制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、
圧縮機を含むシステムへの指令値であって、前記圧縮機の運転状態に影響する前記指令値を
周期Tで変動させ、
前記指令値に基づいて前記システムを運転したときの前記圧縮機または前記圧縮機を駆動する電動機の状態を示す
パラメータのうち、前記指令値の変動に応答し、サージングが発生したときには前記指令値の変動に対しサージングが発生していないときと比べて大きさの異なる応答が生じる所定のパラメータの
周期T/n(nは自然数)の変動成分の大きさを抽出し、
前記指令値
の変動の大きさに対する
前記所定のパラメータに含まれる前記周期T/n(nは自然数)の前記変動成分の大きさを表し、絶対値が大きいほどサージングの程度が大きいことを表す比例係数を算出し、
前記比例係数の絶対値が閾値以上であればサージングが発生していると判定し、
サージングが発生していると判定された場合に、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量を増加させることにより、前記圧縮機のサージングを回避または抑制する制御を行う処理、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ圧縮機やターボ冷凍機に用いられる遠心圧縮機は、圧縮機の前後差圧が高い状態で流量を小さくすると激しく振動することが知られている。この現象は,サージングと呼ばれている。サージングが発生すると、圧縮機の効率が低下するだけではなく、圧縮機が損傷する可能性がある。このため、遠心圧縮機は、サージングを回避する制御装置によって制御される必要がある。サージングを回避する制御は、サージングを検知する機能と、圧縮機の運転条件を変更する機能の2つからなる。圧縮機の運転条件を変更する機能とは、圧縮機の運転条件を高差圧かつ小流量から、小差圧かつ大流量に変更する機能である。例えば、圧縮機の吐出側に接続された高圧配管と、圧縮機の吸入側に接続された低圧配管を接続する循環流配管を設け、高圧配管から循環流配管を通じて低圧配管への冷媒等の流体の循環流量を増やす。これにより,圧縮機の吐出側圧力が低下し、循環流に相当する分だけ流体の流量が増加して、サージングが回避される。循環は必須でなく、例えば、流体が大気の場合は、圧縮機の吐出側の配管から大気に放出することが一般的である。
【0003】
圧縮機が流体に対して成す仕事のうち、循環流量に相当する仕事は、冷凍などの本来の目的に使われることなく、流体を熱するだけなので損失である。このため、循環流量は必要最小限とすることが求められる。循環流量を必要最小限とするためには、まず、サージングの検知精度が重要である。圧縮機のサージングの検知は、圧縮機が圧縮する流体の流量と圧縮機の吐出圧力(または圧縮機の吸入側と吐出側の圧力比)とに基づいて行われることが一般的である(特許文献1)。流体流量の代わりにモータの駆動電流を監視してもよい(特許文献2)。
【0004】
ここで、
図10を参照する。
図10に例示するのは、圧縮機の特性曲線である。
図10のグラフの縦軸は圧縮機の吐出圧力(または圧縮比)、横軸は流体の流量である。サージラインL1は、圧縮機の吐出圧力と流量との関係におけるサージングが発生する運転領域とサージングが発生しない運転領域との境界線を示している。サージングは、圧縮機にて流体の流量が低下したときに生じる異常な運転状態である。圧縮機の作動点が、サージラインL1の左側の領域に含まれる吐出圧力と流量の関係にあるとき、つまり、高圧(または高差圧)かつ小流量となったときにサージングが発生する可能性が高くなる。サージラインL1の左側の領域をサージング領域と呼ぶ。圧縮機の運転条件がサージング領域に突入したときには、循環流配管に設けた循環流量調節弁を開いて、吐出圧力や圧力比を下げるとともに流体の流量を増大させて、運転条件を、サージングが発生しないサージラインL1右下の領域に移行させる。
【0005】
この制御においてサージラインL1の精度が重要である。サージラインL1が不正確だと、その誤差の分だけ余計に流体を循環させなければならなくなる可能性がある。これでは圧縮機仕事の損失を減らすことはできない。誤差の原因について述べる。
図10のサージラインL2は、圧縮機内部の汚れなどにより、運転時間が経過したあとにL1から変化したサージラインである。このような変化は、圧縮機の運転時間や運転履歴などによる性能劣化に強く依存する。サージラインL2を予め誤差なく定めることはできないから、一般的に圧縮機は損失を許容し、サージングが発生する手前で循環流量調節弁などを開いて運転をしている。サージラインL2の誤差への対応として、例えば、特許文献3には、吐出圧力と圧縮機の駆動電流の変動から、運転時間の経過を考慮して、サージングの発生を検知する技術が開示されている。しかし,吐出圧力や流量(または駆動電流)が変動するときの周波数や振幅は、圧縮機単体の性質だけから決まるわけではなく、圧縮機に接続された配管の寸法、配管に接続する容器の体積、流体の温度や組成、バイパス配管の流量調整弁などにも依存する。このため、吐出圧力や流量の変動について、サージング発生を判定する閾値を定めることは困難である。
【0006】
また、通常、圧縮機の吸入側では、流体は圧縮機の仕事を受けず、吐出側の流体が圧縮機の仕事を受けた流体である。その結果、圧縮機の吸入側の流体の温度は吐出側より低い。しかし、サージングが発生すると、流体の流れが変動し、圧縮機の仕事を受けた流体が吸入側へ逆流するような現象が生じる。すると、圧縮機の吸入側において、流体の温度上昇が生じる。特許文献2には、この性質を利用し、圧縮機の吸入側に温度センサを取り付け、サージングによる逆流の結果として生じる吸入側の流体温度の上昇を監視して、サージングの誤検知を回避する技術が開示されている。しかし、特許文献2の方法では、逆流が生じる程度に変動が増えてからしかサージングの発生を検知することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭62-195492号公報
【文献】特許第4191560号公報
【文献】国際公開第2013/051559号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
サージングが軽微な段階で確実にサージングを検知し対処する技術が求められている。
【0009】
本開示は、上記課題を解決することができる制御装置、制御方法およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の制御装置は、圧縮機を含むシステムへの指令値であって、前記圧縮機の運転状態に影響する前記指令値を周期Tで変動させる変動指令部と、前記指令値に基づいて前記システムを運転したときの前記圧縮機または前記圧縮機を駆動する電動機の状態を示すパラメータのうち、前記指令値の変動に応答し、サージングが発生したときには前記指令値の変動に対しサージングが発生していないときと比べて大きさの異なる応答が生じる所定のパラメータに含まれる周期T/n(nは自然数)の変動成分の大きさを抽出する変動算出部と、前記指令値の変動の大きさに対する前記所定のパラメータに含まれる前記周期T/n(nは自然数)の前記変動成分の大きさを表し、絶対値が大きいほどサージングの程度が大きいことを表す比例係数を算出する比例係数算出部と、前記比例係数の絶対値が閾値以上であればサージングが発生していると判定する判定部と、前記判定部によってサージングが発生していると判定された場合に、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量を増加させることにより、前記圧縮機のサージングを回避または抑制する制御を行う制御部と、を備える。
【0011】
また、本開示の制御方法は、圧縮機を含むシステムへの指令値であって、前記圧縮機の運転状態に影響する前記指令値を周期Tで変動させ、前記指令値に基づいて前記システムを運転したときの前記圧縮機または前記圧縮機を駆動する電動機の状態を示すパラメータのうち、前記指令値の変動に応答し、サージングが発生したときには前記指令値の変動に対しサージングが発生していないときと比べて大きさの異なる応答が生じる所定のパラメータの周期T/n(nは自然数)の変動成分の大きさを抽出し、前記指令値の変動の大きさに対する前記所定のパラメータに含まれる前記周期T/n(nは自然数)の前記変動成分の大きさを表し、絶対値が大きいほどサージングの程度が大きいことを表す比例係数を算出し、前記比例係数の絶対値が閾値以上であればサージングが発生していると判定し、サージングが発生していると判定された場合に、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量を増加させることにより、前記圧縮機のサージングを回避または抑制する制御を行う。
【0012】
また、本開示のプログラムは、コンピュータに、圧縮機を含むシステムへの指令値であって、前記圧縮機の運転状態に影響する前記指令値を周期Tで変動させ、前記指令値に基づいて前記システムを運転したときの前記圧縮機または前記圧縮機を駆動する電動機の状態を示すパラメータのうち、前記指令値の変動に応答し、サージングが発生したときには前記指令値の変動に対しサージングが発生していないときと比べて大きさの異なる応答が生じる所定のパラメータ周期T/n(nは自然数)の変動成分の大きさを抽出し、前記指令値の変動の大きさに対する前記所定のパラメータに含まれる前記周期T/n(nは自然数)の前記変動成分の大きさを表し、絶対値が大きいほどサージングの程度が大きいことを表す比例係数を算出し、前記比例係数の絶対値が閾値以上であればサージングが発生していると判定し、サージングが発生していると判定された場合に、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量を増加させることにより、前記圧縮機のサージングを回避または抑制する制御を行う処理、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
上述の制御装置、制御方法およびプログラムによれば、早期かつ確実にサージングを検知し対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第一実施形態に係る冷凍システムの一例を示す図である。
【
図2】第一実施形態に係る制御装置の一例を示す図である。
【
図3】第一実施形態に係る制御装置の動作の一例を示す図である。
【
図4】第二実施形態に係る制御装置の一例を示す図である。
【
図5】第三実施形態に係る冷凍システムの一例を示す図である。
【
図6】第三実施形態に係る制御装置の一例を示す図である。
【
図7】第三実施形態に係る制御装置の動作の一例を示す図である。
【
図8】第四実施形態に係る制御装置の一例を示す図である。
【
図9】第四実施形態に係る制御装置の動作の一例を示す図である。
【
図10】サージングラインについて説明する図である。
【
図11】各実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、各実施形態に係るサージングの制御について、
図1~
図11を参照しながら詳しく説明する。
【0016】
<第一実施形態>
(冷凍システムの構成)
図1は、第一実施形態に係る冷凍システムの一例を示す図である。
図1に示すように、冷凍システム100は、圧縮機1と、入口案内翼2と、凝縮器3と、蒸発器4と、配管P1、P2、P3と、循環流配管P4と、循環流量調整弁V1と、圧力計G1と、圧縮機出力制御装置10と、可変速駆動装置20と、電動機30と、サージング制御装置40と、を備える。配管P1は、圧縮機1の吐出側と凝縮器3を接続する。配管P2は、凝縮器3と蒸発器4を接続する。配管P3は、蒸発器4と圧縮機1の吸入側とを接続する。循環流配管P4は、配管P1と配管P3を接続する。循環流配管P4には、循環流配管P4を流れる冷媒の流量を調整するための循環流量調整弁V1が設けられている。また、圧縮機1や電動機30には回転数を計測する回転計が取り付けられていてもよい。圧縮機1や電動機30の本体、回転軸または軸受け等に振動計が取り付けられていてもよい。圧縮機1の吐出側の配管P1に冷媒の流量を計測する流量計が取り付けられていてもよい。また、圧力比を監視するために、圧縮機1の吸入側の配管P3に冷媒の圧力を計測する圧力計が設けられていてもよい。さらに、冷凍システム100に騒音計N1が取り付けられていてもよい。
【0017】
圧縮機1は、冷媒を圧縮し、高温高圧の冷媒を吐出する。圧縮機1は電動機30と接続されており、電動機30によって駆動される。圧縮機出力制御装置10は、圧縮機1への回転数指令値を可変速駆動装置(インバータ)20へ出力する。後述するように、本実施形態では、サージングの発生を検知するために、回転数指令値をわずかに変動させ、その応答を監視する。回転数指令値の変動は、サージング制御装置40によって指令される。可変速駆動装置20は、回転数指令値に基づく電流を電動機30に供給して電動機30を駆動し、電動機30は、回転数指令値に基づく回転数で圧縮機1を駆動する。また、圧縮機1の吸込側には、入口案内翼(IGV:inlet guide vane)2が設けられている。入口案内翼2は、圧縮機出力制御装置10によって制御される。圧縮機出力制御装置10は、角度指令値を入口案内翼2へ出力する。入口案内翼2は、この角度指令値に基づいて、案内翼の角度を調整し、圧縮機1へ吸入される冷媒の流量を調整する。また、圧縮機1の吐出側の配管P1には、圧力計V1が設けられており、圧力計G1は、圧縮機1の吐出側の冷媒圧力を計測する。騒音計N1は、圧縮機1、入口案内翼2、配管P1などから発される振動音や異音などの騒音を計測する。
【0018】
圧縮機1が吐出した冷媒は、凝縮器3へ供給される。凝縮器3は、高温高圧の冷媒を凝縮させる。凝縮器3には、配管11が接続されており、配管11には、図示しない冷却塔から冷却水が供給される。凝縮器3において、冷媒は、配管11を流れる冷却水との間で熱交換を行う。冷媒は冷却水へ放熱することによって凝縮する。凝縮器3によって凝縮された冷媒は、配管P2に設けられた膨張弁(図示せず)によって減圧される。減圧された低圧冷媒は、蒸発器4へ供給される。蒸発器4は、低圧冷媒を蒸発させる。蒸発器4には、配管12が接続されており、配管12を通じて、図示しない負荷に冷水を供給する。蒸発器4において、冷媒は、配管12を流れる冷水との間で熱交換を行う。冷媒は、負荷側へ供給される冷水を冷やし、自身は冷水から吸熱することによって気化する。気化した
気相冷媒は、入口案内翼2で流量調整された後に圧縮機1へ吸入され、圧縮機1によって再び圧縮される。冷媒は、このようにして冷媒回路中を循環する。
【0019】
サージング制御装置40は、可変速駆動装置20から電動機30へ供給される電流値と、圧力計V1が計測した冷媒圧力、または、圧縮機1の回転数、振動、軸と軸受けの振動、並びに電動機の回転数、消費電流、消費電力、振動、軸、軸受けの振動、冷媒の流量、圧縮機1前後の冷媒の圧力比、周囲の騒音などのパラメータを取得し、これらのパラメータのうち少なくとも1つについて、回転数指令値変動に対する応答を監視して、サージングの発生状況を判定する。サージングが発生すると、サージング制御装置40は、循環流量調節弁V1へ開度指令を出力する。例えば、循環流量調節弁V1は普段は閉とされており、サージングが発生すると、サージング制御装置40からの開度指令により、開へ制御される。循環流量調整弁V1が開となると、圧縮機1が吐出した冷媒の一部は、配管P1、循環流配管P4、配管P3を通って再び圧縮機1に吸入される。これにより、圧縮機1を流れる冷媒流量が増大し、圧縮機1の吐出圧力が低下し(または、圧縮機1の吸入側と吐出側の冷媒の圧力差が低下し)、サージングが回避される。このようにして、サージング制御装置40は、圧縮機1におけるサージングの発生状況を監視し、サージングが発生すると、循環流量調整弁V1の開度制御を通じて、サージングを回避・抑制するように制御を行う。
【0020】
(制御装置の構成)
次に、
図2を参照して、第一実施形態のサージング制御について詳しく説明する。
図2は、第一実施形態に係る制御装置(圧縮機出力制御装置10およびサージング制御装置40)の一例を示す図である。
圧縮機出力制御装置10は、回転数指令部101と加算部102とを備えている。
回転数指令部101は、冷凍システム100の負荷に応じた圧縮機1の回転数(基本回転数と呼ぶ。)を算出し、加算部102へ出力する。
加算部102は、サージング制御装置40から回転数変動指令値を取得し、回転数変動指令値を基本回転数に加算する。加算部102は、加算後の値を回転数指令値r
nとして可変速駆動装置20へ出力する。次に説明するように、回転数変動指令値r
nは、周期的に変動する値である。例えば、基本回転数が10000(rpm)であれば、変動量の大きさは、100~200(rpm)程度である。加算部102が出力する回転数指令値r
nは、例えば、9800~10200(rpm)を周期的に変動する値である。
【0021】
サージング制御装置40は、回転数変動指令部41と、減算部42と、変動算出部43と、比例係数算出部44と、開度指令値算出部45と、遅相補償部46と、を備える。
回転数変動指令部41は、例えば、以下の式(1)によって、上記の回転数変動指令値を算出し、圧縮機出力制御装置10へ出力する。
【0022】
【0023】
ここで、ar、brは任意の定数、tは時間、Tは任意の周期である。Tの長さは、例えば、10秒程度である。また、回転数変動指令値は、例えば、以下の式(1A)のように周期Tの整数倍の高調波を含んでもよい。
【0024】
【0025】
回転数指令値の変動は短周期であることが望ましい。圧縮機1を利用する冷凍機などでは、装置の熱容量の影響で圧縮機1の回転数指令を変更後、冷凍能力の違いとなって表れるまでに1分程度の時間がかかる。したがって、回転数指令値の変動周期が1分より充分に短ければ、可変数指令値の変動が冷凍能力には表れない。このような観点に基づき,回転数指令値の周期Tは、圧縮機1が使用される設備の応答周期よりも短く設定する(例えば、10秒)。
【0026】
減算部42は、回転数指令値r
nに対する応答のパラメータ(
図2の場合、圧縮機1の回転数n)と、回転数指令値r
nを取得して、これらの差分を計算する。減算部42は、計算した差分を変動算出部43へ出力する。
【0027】
変動算出部43は、圧縮機1の回転数nと、回転数指令値rnの偏差を算出する。圧縮機1の運転が整定状態にあれば,圧縮機1の回転数nは,圧縮機1の回転数指令値rnに一致する。しかし、サージングが発生すると、圧縮機の回転数は変動し、指令値に対して偏差Δn=rn-nを持つようになる。偏差Δnの大きさは、例えば、分散で計ることができる。変動算出部43は、次式(2)によって分散を算出する。Eは平均である。分散は一例であり、変動として偏差Δnを直接用いても良いし、さらにフーリエ変換などの手段によりΔnに含まれる特定の周波数帯域の振幅を用いてもよい。または、回転数nの平均値との偏差を用いても良い。これは他の実施形態でも同じである。
Var(Δn) = E((Δn-E(Δn))2) ・・・(2)
【0028】
比例係数算出部44は、変動算出部43が算出した偏差(分散)に基づいて、回転数指令値rnに対する応答(圧縮機1の回転数n)の比例係数を算出する。まず、比例係数算出部44は、Var(Δn)の回転数指令値rnの変動から周期Tの成分を次式(3A)、(3B)で評価する。
【0029】
【0030】
【0031】
そして、比例係数算出部44は、式(3A)、(3B)から次式(4)を導き、式(4)によって、比例係数κnを算出する。周期Tをサージングが成長または消滅する時間スケールに対して十分に長く設定すれば、次式(4)は、回転数指令値を周期Tで変動させたことにより生じた回転数の変動の比例係数κnを表している。式(3A)、(3B)では、基本形として、回転数変動周期Tと同じ周期の変動成分を評価するようあらわしているが、これに限らない。例えば、変形例として、周期がT/2、T/3、T/4、…、のように、変動の成分を評価しても良い。さらに、式(3A)、では、Var(Δn)にsin((2π/T)t)を,式(3B)ではcоs((2π/T)t)を係数としているが、係数の値が周期Tで繰り返すことが本質的に重要であり,たとえば、sgn(sin((2π/T)t))、またはsgn(cоs((2π/T)t))のように変更することもできる。ここで、sgn()は、入力の値が正のときにはsgnの値が1、負のときはsgnの値が-1、0のときにはsgnの値が0となる関数である。
【0032】
【0033】
開度指令値算出部45は、比例係数κ
nに基づいて、サージングの発生状況を判定し、サージングの発生状況に応じた循環流量調節弁V1の開度指令値u
RCV1を算出する。例えば、開度指令値算出部45は、比例係数κ
nを循環流量調節弁V1の開度指令値u
RCV1に変換する関数等を備えており、この関数等と比例係数κ
nとに基づいて、循環流量調節弁V1の開度指令値u
RCV1を算出する。開度指令値算出部45が有する折れ線関数451の例を
図2に示す。サージングの程度は回転数指令が低いほど激しい。よって、運転条件がサージラインに接近すると、回転数の変動に関する比例係数κ
nは負側に大きな値となる。従って、原則では比例係数κ
nが負側に大きな値となることをもって循環流量調節弁V1を開くことで十分である。しかし、実用上は値が正であったとしても、比例係数κ
nが大きくなれば循環流量調節弁V1を開くべきである。したがって、折れ線は、
図2の折れ線関数451に示すように,比例係数κ
nの正負によらず、値が大きくなれば循環流量調節弁開度指令値u
RCV1を変更して循環流量調節弁V1を開くような形状となる。
【0034】
遅相補償部46は、比例係数κnの大きさがサージングの受容限度を超えたときには遅相補償により循環流量調節弁V1の開度を定める。遅相補償部46は、循環流量調節弁開度指令値uRCV1を取得して積分制御を行って、循環流量調節弁V1の開度指令値uRCVを算出する。遅相補償部46は、開度指令値uRCVを循環流量調節弁V1へ出力する。これにより、開度指令値uRCV1の低周波数成分を増幅して、開度指令値uRCVが循環流量調節弁V1へ出力される。
【0035】
(制御装置の動作)
次に
図2、
図3を参照して、サージングの検知およびサージングに対処する制御について説明する。
図3は、第一実施形態に係る制御装置の動作の一例を示す図である。
圧縮機出力制御装置10とサージング制御装置40は、圧縮機1の運転中、以下の処理を所定の制御周期で繰り返し継続して実行する。
まず、圧縮機出力制御装置10が、回転数指令値を可変速駆動装置20へ出力する(ステップS11)。回転数指令部101は、基本回転数を出力する。回転数変動指令部41が、式(1)によって回転数変動指令値を算出する。加算部102は、基本回転数と回転数変動指令値を加算して、回転数指令値を可変速駆動装置20へ出力する。
【0036】
次に、サージング制御装置40は、回転数指令値の変動に対する応答の比例係数を算出する(ステップS12)。まず、変動算出部43が、式(2)により、回転数指令値と応答との偏差を算出する。次に比例係数算出部44が、式(3A)、(3B)により、式(4)を導き、式(4)により比例係数κnを算出する。比例係数算出部44は、比例係数κnを開度指令値算出部45へ出力する。
【0037】
次に、サージング制御装置40は、比例係数κnに基づいて、サージングの発生状況を評価する(ステップS13)。例えば、開度指令値算出部45は、比例係数κnの絶対値が閾値未満であれば、サージングが発生していないと判定し、閾値以上であれば、サージングが発生していると判定する。
【0038】
次に、サージング制御装置40は、サージングの発生状況に応じた循環流量調節弁V1の開度指令値u
RCVを算出する(ステップS14)。例えば、サージングが発生していなければ、開度指令値算出部45は、開度指令値u
RCV1として0以下の値を算出する。サージングが発生していれば、開度指令値算出部45は、サージングの大きさ(比例係数の大きさ)に応じた開度指令値u
RCV1を算出する。例えば、サージングの程度が大きい程、開度指令値算出部45は、大きな開度指令値u
RCV1を算出する。
なお、
図2の構成例では、開度指令値算出部45が、折れ線関数451に基づいて、ステップS13とステップS14の処理を同時に行っている。
【0039】
次に、サージング制御装置40は、循環流量調節弁V1の開度制御を行う(ステップS15)。例えば、遅相補償部46は、開度指令値uRCV1を遅相補償した開度指令値uRCVを循環流量調節弁V1へ出力する。
【0040】
上記説明したように、本実施形態によれば、圧縮機出力制御装置10が圧縮機1に対して周期的な変動を伴う回転数指令値を出力する。サージング制御装置40は、回転数指令値の変動に対する応答を取得し、両者の関係(比例係数κn)を算出する。圧力や回転数などの圧縮機1の応答は,サージング以外の要因でも変動する。従って,サージングによる応答を精度よく検知するために、本実施例ではサージングに特に強い影響を及ぼす回転数指令値を変動させ,それに対する圧縮機1の応答の中から周期成分を抽出して(式(3A)、式(3B))応答の大きさを評価し(式(4))、応答の大きさに基づいてサージングの発生を判定する。この方法であれば、圧縮機1に接続された配管P1、P3等の寸法、冷媒の温度や組成、循環流配管P4の循環流量調整弁V1などの影響を除外して、精度よくサージングの発生を検知することができる。また、サージングの発生を判定する為の閾値を適切に設定することにより、迅速にサージングの発生を検知することができる。
【0041】
なお、上記実施例では、圧縮機1の応答として圧縮機1の回転数nを例に挙げて説明を行ったが、回転数指令値の変動に対する応答として他のパラメータを用いてもよい。例えば、電流値変動、圧縮機1が吐出する冷媒の圧力変動、圧縮機1前後の冷媒の圧力比変動、冷媒の流量変動、圧縮機1本体の振動、圧縮機1の軸と軸受けの振動、電動機30の回転数、電動機30の消費電流や消費電力、電動機30本体の振動、軸、軸受けの振動、周囲の騒音を用いてサージング制御を行うことも可能である。表記を簡単化するために、サージング制御に利用する計測値をyi・・・、(i=1,2,3・・・)と記す。例えば、y1は圧縮機1の回転数、y2は吐出圧力、y3は圧力比、y4は流量であってもよい。このとき変動算出部43は、以下の式(5)で変動(分散)を算出する。
Var(yi) = E((Δyi-E(Δyi))2)、i=1,2,3… ・・・(5)
【0042】
また、比例係数算出部44は、以下の式(6A)、(6B)により、変動の周期T成分を抽出する。
【0043】
【0044】
【0045】
比例係数は、上記の式(6A)、(6B)より、次式(7)で算出することができる。比例係数算出部44は、式(7)のκyiを算出し、κyiに基づいてサージングの検知および回避制御を実行する。
【0046】
【0047】
本実施形態によれば、圧縮機のサージングを回避しつつ、軽度にサージングした状態で圧縮機を運転することができる。これにより,圧縮機の運転効率が改善され、電力などの動力を節約することができる。
【0048】
<第二実施形態>
(制御装置の構成)
以下、本発明の第二実施形態によるサージング制御について
図4を参照して説明する。
図4は、第二実施形態に係る制御装置の一例を示す図である。
本発明の第二実施形態に係る構成のうち、本発明の第一実施形態に係る圧縮機出力制御装置10およびサージング制御装置40を構成する機能部と同じものには同じ符号を付し、それらの説明を省略する。第二実施形態に係るサージング制御装置40Aは、回転数変動指令部41と、変動算出部43Aと、比例係数算出部44Aと、開度指令値算出部45Aと、遅相補償部46と、加重和算出部47Aと、を備える。
変動算出部43Aは、複数のパラメータy
i(i=1,2,3・・・)を取得し、各パラメータのそれぞれについて、上記の式(5)により変動を算出する。
比例係数算出部44Aは、各パラメータのそれぞれについて、上記の式(7)により比例係数κ
yiを算出する。
開度指令値算出部45Aは、比例係数算出部44Aが算出した各パラメータの比例係数κ
yiのそれぞれについて、開度指令値u
RCV1iを算出する。
加重和算出部47Aは、開度指令値算出部45Aが算出した各パラメータの開度指令値u
RCV1iについて、加重和を算出する。
遅相補償部46は、加重和算出部47Aが算出した開度指令値u
RCV1iの加重和について遅相補償した開度指令値u
RCVを算出し、開度指令値u
RCVを循環流量調節弁V1へ出力する。
【0049】
動作については、複数のパラメータを監視対象とし、パラメータごとの開度指令値uRCViの加重和を用いる点を除けば、第一実施形態と同様である。
つまり、まず、圧縮機出力制御装置10が、変動を含む回転数指令値を可変速駆動装置20へ出力する(ステップS11)。次に、サージング制御装置40は、回転数指令値の変動に対する応答の比例係数κniをパラメータごとに算出する(ステップS12)。次に、サージング制御装置40は、比例係数κniごとにサージングの発生状況を評価し(ステップS13)、サージングの発生状況に応じた循環流量調節弁V1の開度指令値uRCViを算出する(ステップS14)。次に加重和算出部47Aが開度指令値uRCV1i(i=1,2,3・・・)の加重和を算出する。次に、サージング制御装置40は、循環流量調節弁V1の開度制御を行う(ステップS15)。
【0050】
第二実施形態によれば、複数のパラメータに基づいてサージングの発生状況を判定するので、第一実施形態の効果に加え、より信頼性が向上するという効果が得られる。
【0051】
<第三実施形態>
(構成)
以下、本発明の第三実施形態によるサージング制御について
図5~
図6を参照して説明する。
図5は、第三実施形態に係る冷凍システムの一例を示す図である。
図示するように冷凍システム100Bは、直列に接続された低圧側の圧縮機(LP)1aと高圧側の圧縮機(HP)1bとを備える。圧縮機(LP)1aの吸入側には、入口案内翼(LP)2aが設けられ、圧縮機(HP)1bの吸入側には、入口案内翼(HP)2bが設けられている。圧縮機出力制御装置10Bは、入口案内翼(LP)2aと入口案内翼(HP)2bへ個別の角度指令値を出力する。また、圧縮機(LP)1aと圧縮機(HP)1bは同軸上に設けられ、共通の回転軸で駆動される。つまり、圧縮機(LP)1aと圧縮機(HP)1bは同じ速度で回転する。圧縮機出力制御装置10Bは、圧縮機(LP)1aおよび圧縮機(HP)1bへの回転数指令値を可変速駆動装置20へ出力し、電動機30は、圧縮機(LP)1aと圧縮機(HP)1bの共通の回転軸を回転駆動する。冷凍システム100Bの他の構成については
図1を用いて説明したものと同様である。
【0052】
図5の冷凍システム100Bにおいて、一つの圧縮機がサージングすると,圧力計G1が計測する吐出圧力や冷媒の流量等は変動する。例えば、圧縮機(LP)1aがサージングすれば吐出圧力は変動するし、圧縮機(HP)1bがサージングしても吐出圧力は変動する。このように、複数の圧縮機を有する構成の場合、一つの圧縮機がサージングすれば、他方の運転条件がどれだけサージラインから離れていても役に立たない。サージラインに対する余裕を圧縮機間で均等にするよう制御できれば、圧縮機が複数ある場合のサージング回避に有効である。また、複数の圧縮機を有する構成の場合、一つの圧縮機の運転条件が他の圧縮機が他に比べて、早くサージング領域に達する可能性がある。
【0053】
第三実施形態では、このような現象が生じるのを回避すべく、入口案内翼の角度指令値を変動させ、その応答に基づいて、入口案内翼の角度制御を圧縮機ごとに行うことにより、各圧縮機のサージラインに対する余裕を均一にし、ある一つの圧縮機が他に比べて極端に早くサージラインに達すること、および、その圧縮機のためだけに、(共有の)循環流量調節弁V1を開くことを回避する。
【0054】
(制御装置の構成)
次に、
図6を参照して、第三実施形態の制御装置(圧縮機出力制御装置10Bおよびサージング制御装置40B)について詳しく説明する。
図6は、第三実施形態に係る制御装置の一例を示す図である。
圧縮機出力制御装置10は、角度指令部(LP)103aと、角度指令部(HP)103bと、加算部104aと、減算部104bと、減算部105aと、加算部105bと、を備えている。
角度指令部(LP)103aは、入口案内翼(LP)2aへの角度指令値r
IGVLを算出する。
角度指令部(HP)103bは、入口案内翼(HP)2bへの角度指令値r
IGVHを算出する。
【0055】
加算部104aは、入口案内翼(LP)2aへの角度指令値に、サージング制御装置40Bが出力した角度変動指令値を加算して、角度指令値rIGVLを算出する(式(8A))。
【0056】
【0057】
減算部104bは、入口案内翼(HP)2bへの角度指令値から、サージング制御装置40Bが出力した角度変動指令値を減算して、角度指令値rIGVHを算出する(式(8B))。
【0058】
【0059】
減算部105aは、角度指令値rIGVLから、サージング制御装置40Bが出力した補償量uIGVを減算し、角度指令値uIGVLを算出する(式(9A))。
uIGVL = rIGVL - uIGV ・・・(9A)
【0060】
加算部105bは、角度指令値rIGVHに、サージング制御装置40Bが出力した補償量uIGVを加算し、角度指令値uIGVLを算出する(式(9B))。
uIGVH = rIGVH + uIGV ・・・(9B)
【0061】
第一実施形態、第二実施形態では、圧縮機1の回転数を変動させてサージングの検知を行うのに対し、第三実施形態では、入口案内翼2a、2bの角度を変動させる。圧縮機の回転数を変化させると、
図10のグラフの縦方向に運転条件が変更される。一方、入口案内翼の角度を変えると,主にグラフの横方向に運転条件が変更される。冷凍システム100Bの場合、圧縮機(LP)と圧縮機(HP)の回転軸は共通であり、回転数の制御により、それぞれの運転条件を独立に変更することはできない。このため、本実施形態では、入口案内翼(LP)の角度と入口案内翼(HP)の角度を変更して,それぞれ圧縮機1a、1bの運転条件を変える。ここで、角度指令値r
IGVLならびに角度指令値r
IGVHは,値が大きくなるほどに圧縮機の出力(仕事または圧力比が等しい場合の流量)が増えるよう配置されている。
【0062】
サージング制御装置40Bは、角度変動指令部41Bと、変動算出部43Bと、比例係数算出部44Bと、補償量算出部48Bと、を備える。
角度変動指令部41Bは、例えば、以下の式(10)によって、上記の角度変動指令値を算出し、圧縮機出力制御装置10Bへ出力する。
【0063】
【0064】
ここで、aIGV、bIGVは任意の定数、tは時間、TIGVは任意の周期である。また、角度変動指令値は、例えば、周期TIGVの整数倍の高調波を含んでもよい。
【0065】
回転数指令値と同様に、角度変動指令値の変動は短周期であることが望ましい。角度変動指令値の変動周期が例えば1分より充分に短ければ、角度指令値の変動が冷凍能力には表れない。
【0066】
変動算出部43Bは、パラメータyiの変動を算出する。パラメータyiとは、圧縮機1の回転数、電流値、圧縮機1の吐出圧力、圧縮機1前後の圧力比、冷媒の流量、圧縮機1本体の振動、圧縮機1の軸と軸受けの振動、電動機30の回転数、電動機30の消費電流や消費電力、電動機30本体の振動、軸、軸受けの振動などである。変動算出部43Bは、上記の式(5)によって変動(分散)を算出する。
【0067】
比例係数算出部44Bは、変動算出部43Bが算出した変動(分散)に基づいて、角度指令値の変動に対する応答の比例係数を算出する。まず、比例係数算出部44Bは、周期Tの成分を次式(11A)、(11B)で評価する。
【0068】
【0069】
【0070】
そして、比例係数算出部44Bは、式(11A)、(11B)から次式(12)を導き、式(12)によって、比例係数κIGVyiを算出する。
【0071】
【0072】
補償量算出部48Bは、圧縮機(LP)1aと圧縮機(HP)1bの運転条件のサージングラインへの接近度合いに応じて、入口案内翼(LP)2aおよび入口案内翼(HP)2bに対する角度指令値の補償量uIGVを算出する。比例係数κIGVyiの値が正であるならば、圧縮機(LP)1aのサージングを対策しなければならない。比例係数κIGVyiの値が負であるならば,圧縮機(HP)1bのサージングを対策しなければならない。したがって,比例係数κIGVyiの値が正ならば、圧縮機(LP)1aの仕事を減らし圧縮機(HP)1bの仕事を増やすように、補償量算出部48Bは、例えば、次式(13)のような積分特性の補償器で調整する。kIGVは比例ゲインであり,εは不完全積分の帯域を決める定数である。
【0073】
【0074】
(制御装置の動作)
次に
図6、
図7を参照して、圧縮機間でサージングラインへの余裕を均等に制御する処理について説明する。
図7は、第三実施形態に係る制御装置の動作の一例を示す図である。
圧縮機出力制御装置10Bとサージング制御装置40Bは、圧縮機1の運転中、以下の処理を所定の制御周期で繰り返し継続して実行する。
圧縮機出力制御装置10が、入口案内翼(LP)2aおよび入口案内翼(HP)2bに対する角度指令値に変動量を加減算する(ステップS21)。まず、角度指令部(LP)103aは、入口案内翼(LP)2aへの角度指令値u
IGVLを算出し、角度指令部(HP)103bは、入口案内翼(HP)2bへの角度指令値u
IGVHを算出する。次に、加算部104aは、角度指令部(LP)103aが算出した角度指令値r
IGVLに角度変動指令部41Bが算出した変動分を加算して、角度指令値r
IGVLを算出する。また、減算部104bは、角度指令部(HP)103bが算出した角度指令値r
IGVHから角度変動指令部41Bが算出した変動分を減算した角度指令値r
IGVHを算出する。
【0075】
次に、サージング制御装置40は、入口案内翼(LP)2aおよび入口案内翼(HP)2bへ出力した角度指令値の変動に対する応答の比例係数を算出する(ステップS22)。変動算出部43Bが、式(5)により、応答パラメータの変動を算出する。次に比例係数算出部44Bが、式(11A)、(11B)により、式(12)を導き、式(12)により比例係数κIGVyiを算出する。比例係数算出部44Bは、比例係数κIGVyiを補償量算出部48Bへ出力する。
【0076】
次に、補償量算出部48Bは、サージングラインへの接近度に応じた角度指令値の補償量を算出する(ステップS23)。補償量算出部48Bは、比例係数κIGVyiが正であれば、それだけ圧縮機(LP)1aの仕事が多い事を示すので、それ以上、負担を与えるとサージングに至る可能性が高い為、圧縮機(LP)1aの仕事を減らし(入口案内翼(LP)2aの角度を低下させ)、圧縮機(HP)1bの仕事を増大させる(入口案内翼(HP)2bの角度を増加させる)補償量uIGVを算出する。比例係数κIGVyiが負の場合、補償量算出部48Bは、圧縮機(LP)1aの仕事を増大させ(入口案内翼(LP)2aの角度を増加させ)、圧縮機(HP)1bの仕事を減少させる(入口案内翼(HP)2bの角度を低下させる)補償量uIGVを算出する。減算部105aは、ステップS21で算出した角度指令値uIGVLから補償量uIGVを差し引き(式(9A))角度指令値uIGVLを算出する。これに対し、加算部105bは、角度指令値uIGVHに補償量uIGVを加算して(式(9B))角度指令値uIGVHを算出する。圧縮機出力制御装置10Bは、角度指令値uIGVLを入口案内翼(LP)2aへ出力する。圧縮機出力制御装置10Bは、角度指令値uIGVHを入口案内翼(HP)2bへ出力する。このように入口案内翼(LP)2aの角度指令値と入口案内翼(HP)2bへの角度指令値を反対方向に振るように補正することで、仕事の均一化、サージングラインへの余裕の均等化を図る。本実施形態では、サージングラインへの近接度が近い圧縮機の仕事を減らすことと、サージングラインへの近接度が遠い圧縮機の仕事を増やすことを同時に行うよう説明している。これは必ずしも両方を行う必要はなく、たとえば、サージングラインへの近接度が遠い圧縮機の仕事を増やすことだけを実施してもよい。
【0077】
本実施形態によれば、各圧縮機1a、1bの運転条件のサージラインに対する余裕を、圧縮機間で均等にすることで、一方の圧縮機だけにサージングが発生するような状況を回避することができる。結果として、冷凍システム100B全体でもサージングを回避する可能性を向上することができる。
【0078】
なお、第三実施形態において、第二実施形態と同様、複数のパラメータのそれぞれについて補償量uIGVyiを算出し、これらの加重和を計算して最終的な補償量uIGVを算出するようにしてもよい。
【0079】
第三実施形態は、第一実施形態または第二実施形態と組み合わせることが可能である。つまり、圧縮機1a、1bへの回転数指令値を変動させつつ、循環流量調節弁V1の開度制御を行いながら、並行して、第三実施形態の入口案内翼(LP)2a、入口案内翼(HP)2bに対する角度制御を行うことができる。
【0080】
<第四実施形態>
以下、本発明の第四実施形態によるサージング制御について
図8~
図9を参照して説明する。
第一実施形態~第三実施形態は、サージングの発生を早期に検知し、サージングを回避する制御に関するものである。第四実施形態は、圧縮機の運転条件が既にサージラインを超え、循環流量調節弁V1を開いて運転しているときに、その開度を必要最小限にするためのものである。その目的のために,第四実施形態では、サージングの回避手段であり、サージング制御の支配因子である循環流量制御弁の開度を変動させ、その変動に対する圧縮機1の応答の比例係数を用いる。
なお、第一実施形態~第三実施形態の制御を実行していたとしても、例えば、冷凍システム100の要請や負荷の状況などにより、圧縮機1をサージング領域の運転条件で動作させなければならない状況が発生し得る。以下に説明する第四実施形態の制御は、そのような場面で有効である。
【0081】
(制御装置の構成)
図8は、第四実施形態に係る制御装置(サージング制御装置40C)の一例を示す図である。
圧縮機出力制御装置10は、第一実施形態または第二実施形態と同様の構成を備えている。サージング制御装置40Cは、第一実施形態または第二実施形態の構成に加え、開度変動指令部41Cと、変動算出部43Cと、比例係数算出部44Cと、開度指令値算出部45Cと、遅相補償部46Cと、加算部106と、加算部107と、を備える。
開度変動指令部41Cは、例えば、以下の式(14)によって、循環流量調節弁V1の開度変動指令値を算出する。
【0082】
【0083】
ここで、aRCV、bRCVは任意の定数、tは時間、TRCVは任意の周期である。開度変動指令値は、周期TRCVの整数倍の高調波を含んでもよい。
【0084】
加算部106は、第一実施形態又は第二実施形態の処理によって算出された循環流量調節弁V1の開度指令値uRCVに開度変動指令部41Cが算出した開度変動指令値を加算する。
【0085】
変動算出部43Cは、パラメータyiの変動を算出する。変動算出部43Cは、上記の式(5)によって変動(分散)を算出する。
【0086】
比例係数算出部44Cは、変動算出部43Cが算出した変動(分散)に基づいて、開度指令値の変動に対する応答の比例係数を算出する。まず、比例係数算出部44Cは、周期TRCVの成分を次式(15A)、(15B)で評価する。
【0087】
【0088】
【0089】
そして、比例係数算出部44Bは、式(15A)、(15B)から次式(16)を導き、式(16)によって、比例係数κRCVyiを算出する。
【0090】
【0091】
開度指令値算出部45Cは、比例係数κ
RCVyiに基づいて、循環流量調節弁V1の開度指令値u
RCV1を算出する。例えば、開度指令値算出部45は、比例係数κ
RCVyiを循環流量調節弁V1の開度指令値u
RCV1に変換する関数等を備えており、この関数等と比例係数κ
nとに基づいて、循環流量調節弁V1の開度指令値u
RCV1を算出する。開度指令値算出部45が有する折れ線関数452の例を
図8に示す。サージングの程度は循環流量調節弁V1の開度指令値が小さいほど激しい。折れ線関数452に示すように、比例係数κ
RCVyiの値が閾値を超えるまでは0以下の値であり、閾値を超えると、比例係数κ
RCVyiの値が大きくなるほど大きな循環流量調節弁開度指令値u
RCV1を算出する。これにより、循環流量調節弁V1の開度は、必要最小限となるように補償される。
【0092】
遅相補償部46は、比例係数κRCVyiの大きさがサージングの受容限度を超えたときには遅相補償により循環流量調節弁V1の補償量uRCV3を例えば、以下の式(17)により算出し、補償量uRCV3を加算部107へ出力する。kRCVは比例ゲインであり,εは不完全積分の帯域を決める定数、sはラプラス演算子である。
【0093】
【0094】
加算部107は、加算部106が計算した循環流量調節弁V1の開度指令値に補償量uRCV3を加算し、循環流量調節弁V1の最終的な開度指令値uRCV2を算出する。サージング制御装置40は、開度指令値uRCV2を循環流量調節弁V1へ出力する。
【0095】
(制御装置の動作)
次に
図8、
図9を参照して、サージング検知時の循環流量調節弁V1の制御について説明する。
図9は、第四実施形態に係る制御装置の動作の一例を示す図である。
前提として、サージングが発生し、循環流量調節弁V1が所定の開度で開かれているとする。あるいは、圧縮機1の吐出圧力または圧縮機1の前後圧力比と、冷媒の流量の関係が、サージング領域に属する状況であるとする。また、並行して、第一実施形態または第二実施形態の制御が実行されているとする。サージング制御装置40Cは、循環流量調節弁V1が開となっている間、以下の処理を所定の制御周期で繰り返し継続して実行する。
まず、サージング制御装置40Cが、循環流量調節弁V1への開度指令値を変動させる(ステップS31)。開度変動指令部41Cが、式(14)によって開度変動指令値を算出する。加算部106は、第一実施形態または第二実施形態の制御により算出された開度指令値u
RCVに開度変動指令値を加算する。
【0096】
次に、サージング制御装置40Cは、開度指令値の変動に対する応答の比例係数を算出する(ステップS32)。まず、変動算出部43Cが、式(5)によりパラメータの変動(分散)を算出する。次に比例係数算出部44Cが、式(15A)、(15B)により、式(16)を導き、式(16)により比例係数κRCVyiを算出する。比例係数算出部44Cは、比例係数κRCVyiを開度指令値算出部45Cへ出力する。
【0097】
次に、サージング制御装置40Cは、開度指令値の補償量を算出する(ステップS33)。まず、開度指令値算出部45Cが、比例係数κRCVyiと関数452とに基づいて、開度指令値uRCV1を算出する。次に、遅相補償部46が式(17)により、補償量uRCV3を算出する。
【0098】
次に、サージング制御装置40Cは、循環流量調節弁V1の開度制御を行う(ステップS34)。加算部107は、ステップS31で算出された変動成分を含む開度指令値に、補償量uRCV3を加算して、開度指令値uRCV2を算出する。サージング制御装置40Cは、開度指令値uRCV2を循環流量調節弁V1へ出力する。
【0099】
本実施形態によれば、サージングの発生時に循環流量調節弁V1の開度を、サージングの抑制に必要な最小限の開度に制御することができるので、圧縮機1による仕事の損失を抑えることができる。
なお、第四実施形態は、第一実施形態~第三実施形態と組み合わせることが可能である。例えば、第一実施形態または第二実施形態と、第三実施形態と、第四実施形態を組み合わせて実施することで、入口案内翼(LP)2a、入口案内翼(HP)2bの角度、循環流配管P4を流れる冷媒流量を適正化し、サージングを回避したり、サージングの程度を抑制したりすることができる。圧縮機1の回転数と、入口案内翼(LP)2a等の角度と、循環流量調節弁V1の開度を、同時並行で調整する場合は、圧縮機回転数を変更する周期Tと入口案内翼角度を変更する周期TIGVと循環流量を変更する周期TRCVの値は互いに違えなければならない。例えば,Tを3秒,TIGVを15秒,TRCVを75秒などのように、応答の速いものから順に短周期に設定し、他の周期は最短周期の整数倍に設定することが望ましい。
【0100】
図11は、各実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の圧縮機出力制御装置10,10B、サージング制御装置40,40A,40B,40Cは、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0101】
なお、圧縮機出力制御装置10,10B、サージング制御装置40,40A,40B,40Cの全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0102】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0103】
<付記>
各実施形態に記載の制御装置、制御方法およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0104】
(1)第1の態様に係る制御装置(圧縮機出力制御装置10、10B、サージング制御装置40~40C)は、圧縮機1,1a、1bを含むシステム(冷凍システム100)への指令値であって、前記圧縮機1,1a、1bの運転状態に影響する前記指令値(回転数、IGV開度、循環流量調節弁開度)を変動させる変動指令部(回転数変動指令部41、角度変動指令部41B、開度変動指令部41C)と、前記指令値に基づいて前記システムを運転したときの前記圧縮機または前記圧縮機を駆動する電動機30の状態を示すパラメータの変動の前記指令値に対する比例係数を算出する比例係数算出部44、44A、44B、44Cと、前記比例係数の値に基づいて、前記圧縮機のサージングを回避または抑制する制御を行う制御部(遅相補償部46、46B、減算部105a、加算部105b、加算部107)と、を備える。
圧縮機の運転状態に影響する指令値を変動させて、その応答を計測し、指令値の変動に対する計測したパラメータの変動の比例係数を算出する。そして、比例係数の大きさに応じてサージングを回避する運転点へ圧縮機の運転状態を移行させる制御を行う。これにより、サージングが発生しそうになっても早急にサージングを回避することができ、サージングが発生した場合でも速やかにサージングを抑制することができる。
【0105】
(2)第2の態様に係る制御装置(圧縮機出力制御装置10、サージング制御装置40A)は、(1)の制御装置であって、前記比例係数算出部44Aは、複数の前記パラメータごとに前記比例係数を算出し、前記制御部は、複数の前記比例係数の値に基づいて、前記圧縮機のサージングを回避または抑制する制御を行う。
複数のパラメータに基づいてサージング回避の制御を行うことにより、制御の信頼性を向上することができる。
【0106】
(3)第3の態様に係る制御装置(圧縮機出力制御装置10、サージング制御装置40~40A)は、(1)~(2)の制御装置であって、前記指令値は、前記圧縮機の回転数指令値であって、前記変動指令部は、前記回転数指令値を周期的に変動させ、前記比例係数算出部は、前記回転数指令値を周期的に変動させたときの前記比例係数を算出し、前記制御部は、前記比例係数の大きさに応じて、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量を増加させる制御を行う。
サージングに最も影響する圧縮機の回転数を変動させ、その応答を監視することにより、精度よくサージングを検知することができる。
【0107】
(4)第4の態様に係る制御装置(圧縮機出力制御装置10、10B、サージング制御装置40~40B)は、(1)~(3)の制御装置であって、前記システムは、複数の前記圧縮機を備え、前記圧縮機ごとに、前記圧縮機が吸入する流体の流量を制御する入口案内翼が設けられ、前記指令値は、入口案内翼の角度指令値であって、前記変動指令部は、前記角度指令値を周期的に変動させ、前記比例係数算出部は、前記角度指令値を周期的に変動させたときの前記比例係数を算出し、前記制御部は、前記比例係数の大きさに応じて、複数の前記圧縮機が負担する仕事が均等化するように、前記入口案内翼ごとの角度指令値を調整する制御を行う。
これにより、複数の圧縮機を備えるシステムにおいて、各圧縮機の回転数を個別に制御できないような場合でも、入口案内翼を個別に制御することによってサージングを回避することができる。
【0108】
(5)第5の態様に係る制御装置(圧縮機出力制御装置10、10B、サージング制御装置40~40B)は、(4)の制御装置であって、複数の前記圧縮機について、前記制御部(減算部105a、加算部105b)は、サージングが発生する可能性が低い方の前記圧縮機に設けられた前記入口案内翼を前記圧縮機の負担する仕事が増加するよう変更させる。
一方の圧縮機でサージングのリスクが高まると、サージングが発生する可能性が低い方の圧縮機のIGV開度を増大させる。これにより、各圧縮機間の負担を均一化し、サージラインとの余裕を均一化することができる。
【0109】
(6)第6の態様に係る制御装置(圧縮機出力制御装置10、10B、サージング制御装置40~40C)は、(1)から(5)の制御装置であって、前記指令値は、前記圧縮機の吸入側と吐出側を接続する配管に設けられた流量調節弁の開度指令値であって、前記変動指令部は、前記開度指令値を周期的に変動させ、前記比例係数算出部は、前記流量調節弁の開度指令値を周期的に変動させたときの前記比例係数を算出し、前記制御部は、前記比例係数の大きさに応じて、前記開度指令値を調整する制御を行う。
サージングが発生すると、圧縮機の吸入側と吐出側を接続する配管に設けられた流量調節弁を開としてサージングを抑制する制御を行うが、この制御中に流量調節弁の開度を変動させ、その応答に基づいて、流量調節弁の開度を調整することで、流量調節弁の開度を適正化することができる。例えば、流量調節弁の開度を最小限とすることができる。
【0110】
(7)第7の態様に係る制御装置は、(6)の制御装置であって、前記圧縮機の吐出圧力または前記圧縮機の前後圧力比と、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量と、の関係が、予め定められたサージングが発生する可能性が高い関係(
図10のサージラインL1の左側の領域の関係)にあるときに(6)に記載の処理を行う。
サージングが発生する運転条件で(6)に記載の処理を行うことにより、速やかに流量調節弁の開度を適正化することができる。
【0111】
(8)第8の態様に係る制御装置(圧縮機出力制御装置10、10B、サージング制御装置40~40C)は、(1)~(7)の制御装置であって、前記パラメータは、前記圧縮機の回転数、前記圧縮機の振動、前記圧縮機を流れる電流、前記圧縮機が吸入して吐出する流体の流量、前記流体の圧力、前記圧縮機の前後における前記流体の圧力比、前記電動機の回転数、前記電動機の振動、前記電動機を流れる電流、前記電動機が消費する電力、周囲の騒音の少なくとも1つである。
(1)~(7)に記載の制御方法は、上記した様々なパラメータを用いて実施することができるので、これらのうち、計測しやすいパラメータを用いることができる。
【0112】
(9)第9の態様に係る制御装置は、圧縮機を含むシステムへの指令値であって、前記圧縮機の運転状態に影響する前記指令値を変動させる変動指令部と、前記指令値に基づいて前記システムを運転したときの前記圧縮機または前記圧縮機を駆動する電動機の状態を示すパラメータの変動の前記指令値に対する比例係数を算出する比例係数算出部と、前記比例係数の値に基づいて、前記圧縮機のサージングを検知する検知部(開度指令値算出部45~45C)と、を備える。
圧縮機の運転状態に影響する指令値を変動させて、その応答を計測し、指令値の変動に対する計測したパラメータの変動の比例係数を算出する。そして、比例係数の大きさに基づいてサージングの発生を検知する。これにより、早期かつ確実にサージングの発生を検知することができる。
【0113】
(10)第10の態様に係る制御方法は、圧縮機を含むシステムへの指令値であって、前記圧縮機の運転状態に影響する前記指令値を変動させ、前記指令値に基づいて前記システムを運転したときの前記圧縮機または前記圧縮機を駆動する電動機の状態を示すパラメータの変動の前記指令値に対する比例係数を算出し、前記比例係数の値に基づいて、前記圧縮機のサージングを回避または抑制する制御を行う。
【0114】
(11)第11の態様に係るプログラムは、コンピュータ900に、圧縮機を含むシステムへの指令値であって、前記圧縮機の運転状態に影響する前記指令値を変動させ、前記指令値に基づいて前記システムを運転したときの前記圧縮機または前記圧縮機を駆動する電動機の状態を示すパラメータの変動の前記指令値に対する比例係数を算出し、前記比例係数の値に基づいて、前記圧縮機のサージングを回避または抑制する制御を行う処理を実行させる。
【符号の説明】
【0115】
100、100B・・・冷凍システム
1・・・圧縮機
1a・・・圧縮機(LP)
1b・・・圧縮機(HP)
2・・・入口案内翼
2a・・・入口案内翼(LP)
2b・・・入口案内翼(HP)
3・・・凝縮器
4・・・蒸発器
P1、P2、P3、11、12・・・配管
P4・・・循環流配管
V1・・・循環流量調整弁
G1・・・圧力計
N1・・・騒音計
10・・・圧縮機出力制御装置
20・・・可変速駆動装置
30・・・電動機
40、40A、40B、40C・・・サージング制御装置
41・・・回転数変動指令部
41B・・・角度変動指令部
41C・・・開度変動指令部
42・・・減算部
43、43A、43B、43C・・・変動算出部
44、44A、44B、44C・・・比例係数算出部
45、45A、45C・・・開度指令値算出部
46、46C・・・遅相補償部
47A・・・加重和算出部
48B・・・補償量算出部
101・・・回転数指令部
102・・・加算部
103a・・・角度指令部(LP)
103b・・・角度指令部(HP)
104a・・・加算部
104b・・・減算部
105a・・・減算部
105b・・・加算部
106、107・・・加算部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU、
902・・・主記憶装置、
903・・・補助記憶装置、
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース