(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】微粒子状非フィブリル化バインダを含む乾式電極フィルムのための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240418BHJP
H01G 11/32 20130101ALI20240418BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20240418BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240418BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240418BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240418BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01M4/139
H01G11/32
H01G11/50
H01G11/86
H01M4/13
H01M4/587
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2020551871
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 US2019024538
(87)【国際公開番号】W WO2019191397
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-08
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509316442
【氏名又は名称】テスラ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン ズーイン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥオン ヒエウ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ユディ ユディ
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】マグシノ プリンス
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-140977(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031449(WO,A1)
【文献】特表2017-517862(JP,A)
【文献】特表2015-508220(JP,A)
【文献】特表2016-534568(JP,A)
【文献】特開2016-072151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/84
H01M 10/00 -10/39
H01M 6/00 - 6/48
H01G 11/00 -11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥非フィブリル化バインダを、高剪断で処理して乾燥微粒子状非フィブリル化バインダを形成する工程と、
乾燥フィブリル化バインダを、前記乾燥微粒子状非フィブリル化バインダと組み合わせて、乾式電極フィルム混合物を形成する工程と、
前記乾式電極フィルム混合物をカレンダ加工して自立型乾式電極フィルムを形成する工程と、
を含む乾式の形成プロセスであり、
前記乾燥非フィブリル化バインダを高剪断で処理することは、ジェット粉砕することを含
み、
前記乾燥微粒子状非フィブリル化バインダは、1~10μmのD
50
粒径を有する、エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルム製造方法。
【請求項2】
乾燥非フィブリル化バインダを高剪断で加工して乾燥微粒子状非フィブリル化バインダを形成する工程と、
第1非破壊混合プロセスによって、前記乾燥微粒子状非フィブリル化バインダを、第1乾燥活物質と混合し、乾式バルク活物質混合物を形成する工程と、
乾燥フィブリル化バインダを、第2乾燥活物質と高剪断混合プロセスによって混合し、乾式構造バインダ混合物を形成する工程と、
前記乾式バルク活物質混合物と前記乾式構造バインダ混合物とを、第2非破壊混合プロセスによって混合し、乾式電極フィルム混合物を形成する工程と、
前記乾式電極フィルム混合物から自立型乾式電極フィルムを製造する工程と、
を含む乾式の形成プロセスであり、
前記乾燥非フィブリル化バインダを高剪断で加工することは、ジェット粉砕することを含
み、
前記乾燥微粒子状非フィブリル化バインダは、1~10μmのD
50
粒径を有する、エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルム製造方法。
【請求項3】
前記
乾式電極フィルム混合物が50重量%までの前記
乾燥微粒子状非フィブリル化バインダを含む、請求項1又は2に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【請求項4】
前記
乾燥微粒子状非フィブリル化バインダが、
セルロースおよびセルロース誘導体から選択され、前記セルロースおよび前記セルロース誘導体は、セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、硝酸セルロース、カルボキシアルキルセルロース、セルロース塩およびセルロース塩誘導体のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【請求項5】
前記乾燥微粒子状非フィブリル化バインダが、
セルロースおよびセルロース誘導体から選択され、前記セルロースおよび前記セルロース誘導体は、セルロース、セルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、硝酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシイソプロピルセルロース、ナトリウムセルロース、硝酸ナトリウムセルロースおよびカルボキシアルキルセルロースナトリウムのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【請求項6】
前記セルロースまたは前記セルロース誘導体が、約10,000~約500,000の数平均分子量を有する、請求項
4又は5に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【請求項7】
前記セルロース誘導体が、約0.7~約1.5の置換度を有する、請求項
4~6のいずれか1項に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【請求項8】
前記
乾燥フィブリル化バインダがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【請求項9】
前記乾式電極フィルムは、穴、亀裂および表面ピットがない、請求項1~8のいずれか1項に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【請求項10】
前記乾式電極フィルムが、少なくとも1N/mm
2の引張強度を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【請求項11】
前記乾式電極フィルムが、グラファイトを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【請求項12】
前記乾式電極フィルムが、少なくとも約250μmの厚さを有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【請求項13】
前記
乾式電極フィルム混合物が、さらに、追加の非フィブリル化バインダを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【請求項14】
前記乾式電極フィルムが、少なくとも約92wt%
の乾燥活物質を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の乾式電極フィルム
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年3月30日に出願された、「微粒子状非フィブリル化バインダを含む乾式電極フィルムのための組成物および方法」と題された米国仮特許出願第62/650,903号に基づく優先権の利益を主張し、その仮出願の開示内容全体は本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、一般に、エネルギー貯蔵装置に関し、特に、微粒子状非フィブリル化バインダを含む乾式電極フィルムのための材料および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電気エネルギー貯蔵セルは、電子、電気機械、電気化学、および他の有用なデバイスに電力を供給するために広く使用されている。このような電池には、一次化学電池や二次(充電式)電池のような電池、燃料電池、およびウルトラキャパシタを含む様々な種類のキャパシタが含まれる。キャパシタおよびバッテリを含むエネルギー貯蔵装置の動作電力およびエネルギーを増加させることは、エネルギー貯蔵を強化し、電力能力を増加させ、実際の使用例を広げるために望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
相補的な属性を組み合わせた電極フィルムを含むエネルギー貯蔵装置は、実際の用途においてエネルギー貯蔵装置の性能を向上させることができる。さらに、既存の乾式および溶媒フリーの製造方法は、電極の組成に実際的な制限を課すことがある。したがって、新しい電極フィルム配合物、およびそれらの製造方法は、電極フィルム配合物の可能性を拡大し、その結果、性能を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来技術を超えて達成される本発明とその優位性を要約する目的で、本発明の特定の目的とその優位性を本明細書に記載する。このような目的または優位性の全てが、本発明の任意の特定の実施形態において達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本明細書で教示または示唆され得るような他の目的または優位性を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つのまたは一群の優位性を達成または最適化する方法により、本発明を具体化または実行され得ることを認識するであろう。
【0006】
第1の態様では、約0.5μm~約40μmの粒子サイズを有する微粒子状の非フィブリル化バインダを含む自己支持型乾式電極フィルムが提供される。
【0007】
第2の態様では、エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルムが提供される。
乾式電極フィルムは、乾式活性材料と、フィブリル化バインダと約0.5~40μmのD50粒径を有する微粒子状の非フィブリル化バインダを含む乾式バインダと、を含み、その乾式電極フィルムは自立型である。
【0008】
いくつかの実施形態では、微粒子非フィブリル化バインダは、約1~25μmのD50粒径を有する。いくつかの実施形態では、乾式バインダは、50重量%までの微粒子状非フィブリル化バインダを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、微粒子状非フィブリル化バインダは、セルロースおよびセルロース誘導体のうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、微粒子状非フィブリル化バインダは、セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、硝酸セルロース、カルボキシアルキルセルロース、セルロース塩およびセルロース塩誘導体のうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、微粒子状非フィブリル化バインダは、セルロース、セルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、硝酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシイソプロピルセルロース、ナトリウムセルロース、硝酸ナトリウムセルロースおよびカルボキシアルキルセルロースナトリウムのうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、微粒子状非フィブリル化バインダは、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)のうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、セルロースまたはセルロース誘導体は、約10,000~約500,000の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、セルロース誘導体は、約0.7~約1.5の置換度を有する。
【0010】
いくつかの実施態様において、フィブリル化バインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。いくつかの実施態様において、乾式電極フィルムは、穴、亀裂及び表面ピットを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、乾式電極フィルムは、少なくとも約1Nの引張強度を有する。いくつかの実施形態では、乾式活性材料は黒鉛を含む。
【0011】
第3の態様では、集電体と接触する乾式電極フィルムを含む電極が提供される。第4の態様では、電極を含むリチウムイオン電池が提供される。
【0012】
第5の態様では、エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルムを製造する方法が提供される。この方法は、乾式非フィブリル化バインダを高剪断で処理して乾式微粒子状非フィブリル化バインダを形成し、乾式フィブリル化バインダを乾式微粒子状非フィブリル化バインダと組み合わせて乾式電極フィルム混合物を形成し、乾式電極フィルム混合物をカレンダ加工して自立型乾式電極フィルムを形成することを含む。
【0013】
第6の態様では、エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルムを製造する方法が提供される。この方法は、乾式微粒子状非フィブリル化バインダを提供すること、乾式微粒子状非フィブリル化バインダを第1非破壊混合プロセスによって乾式第1活性材料と混合して乾式バルク活性材料混合物を形成すること、乾式フィブリル化バインダを高剪断混合プロセスによって第2乾式活性材料と混合して乾式構造バインダ混合物を形成すること、乾式バルク活性材料混合物および乾式構造バインダ混合物を第2非破壊混合プロセスによって混合して乾式電極フィルム混合物を形成すること、および乾式電極フィルム混合物から自立型乾式電極フィルムを製造することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、乾式非フィブリル化バインダを高剪断で処理して、乾式微粒子状非フィブリル化バインダを形成することをさらに含む。
【0015】
これらの実施形態の全ては、本明細書に開示される本発明の範囲内であることが意図される。本発明のこれらの実施形態および他の実施形態は、添付の図面を参照した以下の好ましい実施形態の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるであろうが、本発明は、開示される任意の特定の好ましい実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、エネルギー貯蔵装置の実施形態を示す。
【
図2A】
図2Aは、3つのジェットが同じ点を向いているジェットミルの粉砕チャンバの内部の写真である。
【
図2B】
図2Bは、粒子の出力サイズを選択するスピニングホイールを備えた分級器の画像である。
【
図3B】
図3Bは、実施例1に従って処理されたジェット粉砕されたCMC粒子を示す。
【
図4】
図4は、実施例1に従って製造された乾式黒鉛アノードの充電および放電の比容量を提供するチャートを示し、市販のCMCと粉砕されたCMCから製造されたアノードを比較する。
【
図5A】
図5Aは、市販のCMC粒子を用いて調製されたアノードフィルムの画像を示す。
【
図5B】
図5Bは、実施例1の処理に従ってジェット粉砕されたCMC粒子を用いて調製されたアノードフィルムの画像を示す。
【
図6】
図6は、非フィブリル化バインダをフィブリル化バインダと組み合わせることによって自立型電極フィルムを製造する方法を示すフローチャートを提供する。
【
図7】
図7は、電極フィルムバインダの並列処理のための方法を示すフローチャートを提供する
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書では、エネルギー貯蔵装置で使用するための電極フィルムの様々な実施形態が提供される。特に、特定の実施形態では、本明細書に開示されるエネルギー貯蔵装置は、特定の粒子サイズを有する微粒子状非フィブリル化バインダを含む電極フィルムを含む。電極フィルムは、改善された機械特性および加工特性を示すことが見出された。また、そのような微粒子状非フィブリル化電極フィルムバインダを処理するための方法、および微粒子状非フィブリル化バインダを電極フィルムに組み込むための方法も提供される。本開示は、特定の成分の粒径が本明細書で提供される範囲内である場合に、電極フィルム中の材料の分布の均一性の向上が実現され得ることを明らかにする。
【0018】
リチウムイオンバッテリは、例えば、民生用機器、生産性装置、及びバッテリ駆動車両において、数多くの商業用及び工業用の電源として信頼されてきた。しかしながら、エネルギー貯蔵装置に課せられた要求は、継続的かつ急速に増大している。例えば、自動車産業は、プラグインハイブリッド車や純粋な電気自動車のような、コンパクトで効率的なエネルギー貯蔵に依存する車両を開発している。
【0019】
エネルギー貯蔵装置の貯蔵ポテンシャルに影響を及ぼすいくつかの構成要素は、電極、より具体的には、装置内の各電極を含む電極フィルムを含む。電極の電気化学的能力、例えば、電池電極の容量および効率は、様々な要因によって支配される。例えば、活性材料、バインダ、添加剤の分布、活性材料の粒径および表面積等の材料の物性、活性材料の表面特性、または、凝集性、導電素子との密着性等の電極フィルムの物性である。乾式処理方法は、伝統的に、高剪断および/または高圧処理工程を使用して、電極フィルム材料を粉砕し、混合するが、これは、湿式プロセスを使用して製造された電極フィルムよりも構造上の利点に寄与し得る。
【0020】
原則として、活性材料、バインダ、および他の成分のより均一な分布を有する電極フィルムは、より高い性能を示す。一般に、電極フィルムは、フィルム成分の機械的性質、およびそれらの間の相互作用により、性能が低下する可能性があると考えられている。例えば、機械的制限は、活性層と集電体との間の不十分な接着、および、例えば、活性材料とバインダとの間などの、電極フィルムにおける不十分な凝集に起因し得ると考えられる。このようなプロセスは、電力供給およびエネルギー貯蔵容量の両方において性能の損失をもたらす可能性がある。性能の低下は、例えば、イオン伝導性の低下、電気伝導性の低下、またはそれらの組合せによる活性材料の不活性化に起因し得ると考えられる。例えば、活性層と集電体との間の接着が減少するにつれて、セル抵抗が増加し得る。活性材料間の凝集の減少はまた、セル抵抗の増加をもたらすことがあり、場合によっては、電気的接触が失われ、セル中のイオンおよび電気移動サイクルから活性材料の一部が除去される可能性がある。理論によって限定されることを望むものではないが、活性材料の体積変化がそのようなプロセスに寄与し得ると考えられる。例えば、セル・サイクル中に大きな体積変化を経るシリコン系材料のような一定の活性材料を取込んだ電極において、さらなる分解が観察されるかもしれない。リチウムインターカレーション・デインターカレーションプロセスは、いくつかのシステムにおけるこのような体積変化に対応し得る。一般に、これらの機械的劣化プロセスは、任意の電極、例えば、カソード、アノード、正極、負極、バッテリ電極、キャパシタ電極、ハイブリッド電極、または他のエネルギー貯蔵装置の電極において観察され得る。電極フィルム材料の均一性を増加させることは、これらの問題の少なくともいくつかを軽減することが予想される。
【0021】
より具体的には、電極フィルム中のバインダの均一な分布が、改善された機械的特性を有するフィルムを提供し得る。このような改善は、多くの実用的な利点を提供することができる。例えば、バインダ成分が均一に分布する電極フィルムは、バインダ材料がより不均一に分布する電極フィルムと比較して、欠陥の発生率の減少および/または欠陥の重篤度の減少を示すことができる。例えば、バインダ成分が均一に分布する電極フィルムは、より高い引張強度および/または延性を示すことができるが、これは、エネルギー貯蔵装置の製造を容易にできる。具体的には、より高い引張強度および/または延性を有する電極フィルムは、集電体または他の基材に適用することがより容易である。これらの要因は、乾式電極処理技術が使用される場合に特に関連することがあり、電極フィルムは、本明細書において「自己支持型フィルム」としてさらに定義される自立型フィルムとして取り扱われてもよい。
【0022】
より小さい粒子サイズは、原則として、活性材料、バインダ、および他の成分を含む電極フィルム材料のより均一な分布を可能にし得る。しかしながら、実際には、いくつかの成分は、特定のサイズ閾値未満に縮小されると、凝集し得る。従って、電極フィルムの種々の成分の粒子サイズは、有利に範囲内に組み込まれ得る。本開示において、微粒子状非フィブリル化バインダが、特定の粒子サイズで電極フィルムに組み込まれ得ることが発見された。活性材料、バインダおよび添加剤の、より小さい粒子サイズおよびより密接な接触が実現されると、より良好な装置を導くことができる。より小さな粒径は、電極フィルムのより一貫した製造を可能にし得る。これらの電極フィルムは、実質的に同一のプロセスを使用して、および/または実質的に同一の条件下で、製造された電極フィルム間の特性のばらつきが低減されて製造されてもよい。
【0023】
電極フィルムが乾式の無溶媒プロセスによって製造される場合、水分散液は利用できず、セルロースの均一な分散を達成することはより困難であり得る。粉末形態の市販のCMCは、一般に、約40~70μmのD50粒径に限定される。この範囲内のより具体的なサイズは、特定の程度の置換に限定される。より大きな粒径の破片は、CMCの分散不均一性、カレンダ圧延中の局所的な圧力、加熱されたカレンダローラへのCMC粒子の付着のような種々の問題を発生させ、電極フィルム欠陥などの本明細書に記載される課題を導く可能性があると考えられる。セルロース粒子サイズを活性物質粒子と釣り合うように減少させると、本明細書に記載の課題を改善することができると考えられる。CMCは、より良好に分散され、活性材料粒子の粒径オーダーであるので、カレンダ圧力は、電極フィルム全体にわたってより均一に分布されると考えられ、これは、より一貫性をもたらし、黒鉛粒子などの活性材料粒子への損傷をより少なくすることができる。さらに、フィルム形成の一貫性の改善は、均一な連続ロールフィルムの製造を可能にし得る。
【0024】
いくつかの実施形態は、電池で使用するための乾式プロセスによって製造された電極フィルムを含み、電極フィルムは、0.5~40μmの範囲の粒径を有する微粒子状非フィブリル化バインダと、少なくとも1つのフィブリル化バインダとを含む。実施形態には、約0.5~約40μmの範囲のサイズを有する微粒子状非フィブリル化バインダ粒子、およびそのような微粒子状非フィブリル化バインダ粒子を組み込む電極フィルムを提供する乾式電極および製造プロセスが含まれる。このような電極フィルムは、活性材料、バインダ、および他の成分のより均一な分布を有し得る。このような微粒子状非フィブリル化バインダ粒子を組み込んだ電極フィルムは、改善された引張強度および/または加工性を示すことができる。特定の実施形態では、微粒子状非フィブリル化バインダは、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロースである。電極フィルムは、リチウムイオン電池のアノードとして使用するのに適している。特定の実施形態では、電極フィルムはグラファイトを含む。
【0025】
このような微粒子状非フィブリル化バインダ粒子を組み込んだ乾式または自己支持型電極フィルムは、典型的な電極フィルムと比較して改善された特性を提供することができる。例えば、乾式または自己支持型電極フィルムは、フィルム強度の向上、凝集性の向上、接着性の向上、電気的性能の向上、または欠陥発生率の減少のうちの1つ以上を提供し得る。欠陥は、電極フィルムの穴、亀裂、表面ピットを含み得る。密着性は、集電体との密着性であってもよい。電気的性能は、比容量であってもよい。フィルム強度は、引張強度であってもよい。
【0026】
本明細書に記載の電極フィルム、または本明細書に記載の電極フィルムを組み込んだエネルギー貯蔵装置は、改善された比容量(mAh/gで測定することができる)によって有利に特徴付けることができる。様々な実施形態において実現され得るさらなる改善は、装置の寿命にわたって低減された容量フェードを含む。
【0027】
いくつかの実施形態は、乾式電極プロセス技術に関する。乾式電極製造プロセスは、米国特許出願公開第2006/0114643号、米国特許出願公開第2006/0133013号、米国特許第9,525,168号、または米国特許第7,935,155号のうちの1つまたは複数に開示されているものとすることができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
本明細書では、微粒子状非フィブリル化バインダの粒子サイズを縮小させるための方法をさらに提供する。加圧ジェット粉砕プロセスは、微粒子非フィブリル化バインダの粒径を縮小させることが見出された。例えば、非フィブリル化バインダをジェットミルに入れ、「ジェット粉砕」して、電極フィルムに含まれる活性材料のメジアン(D50)粒径オーダーに粒径を小さくすることができる。いくつかの実施形態では、活性材料は、約15μmのメジアン粒径を有するグラファイトであってもよい。さらなる実施形態において、微粒子状非フィブリル化バインダは、例えばCMCのようなセルロースであってもよい。適切な加圧ジェット粉砕条件には、100~500psiの粉砕ガス圧が含まれる。ジェット粉砕は、粉砕された粒子を粒子サイズによって分離することを含むことができる。例えば、所定のサイズを有する微粒子状非フィブリル化バインダの粒子は、分級機によって分離することができる。
【0029】
一実施形態は、自立型電極フィルムを製造する方法である。
図6を参照すると、方法600は、非フィブリル化バインダを選択すること(605)、非フィブリル化バインダをジェット粉砕して、メジアン粒径を有する微粒子状非フィブリル化バインダを形成すること(610)を含むことができる。ステップ610は、非フィブリル化バインダを粉砕して、例えば約0.5~約40μmのような活性材料粒径オーダーの粒子を生じさせることを含み、その微粒子状非フィブリル化バインダ粒子をフィブリル化バインダおよび1つ以上の活性材料と組み合わせて、電極フィルム混合物を形成し(615)、その電極フィルム混合物をカレンダ加工して、自己支持型および/または自立型電極フィルムを形成する(620)。いくつかの実施形態では、各工程は、乾式であり、溶媒を含まない。いくつかの実施形態では、微粒子状非フィブリル化バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)および/またはCMCである。さらなる実施形態において、微粒子状非フィブリル化バインダは、CMCである。さらに別の実施形態では、フィブリル化バインダはPTFEである。さらに別の実施形態では、活性材料は黒鉛を含む。自立型電極フィルムを製造する方法は、
図7に提供されるような1つ以上の並列処理工程を含んでもよい。
【0030】
図7を参照すると、並列処理方法は、上側(図示)並列処理経路702および下側(図示)並列処理経路710から始まる。上側(図示)並列処理経路702では、バルク活性材料704を非フィブリル化バインダ706と非破壊的に混合することによって、バルク活性材料混合物708が形成される。非フィブリル化バインダ706は、本明細書中で先に記載されたように、微粒子状の非フィブリル化バインダであってもよい。非フィブリル化バインダ706は、例えば、PVDFおよび/またはCMCであってもよい。バルク活性材料704は、グラファイトであってもよい。下側(図示)並列処理経路710では、第2活性材料712と構造バインダ714とが非破壊混合下で組み合わされる。構造バインダ714はPTFEであってもよく、第2活性材料712はグラファイトであってもよい。混合された構造バインダおよび第2活性材料は、最初のバインダ混合物716を形成し、次いで、高剪断高強度プロセスでジェット粉砕されて、構造バインダ混合物718を形成する。次いで、バルク活性材料混合物708は、非破壊混合プロセスにおいて構造バインダ混合物718と組み合わされてバルク活性材料およびバインダの混合物720を形成し、次いで、低剪断ジェット粉砕によって処理されて、電極フィルム混合物722を形成する。低剪断ジェット粉砕は、例えば、構造バインダ混合物718を形成するために使用される最初のジェット粉砕と比較して、高い供給速度で実施されてもよい。次いで、電極フィルム混合物722は、自己支持型および自立型の電極フィルム724へプレスまたはカレンダ加工されてもよい。一般に、プロセスのいずれの段階においても溶媒は必要とされない。
【0031】
様々な実施形態では、例えば、バインダ粒子および活性材料粒子を含む混合物などの乾燥粉末は、例えば、対流、空気圧または拡散ミキサーを使用する穏やかなプロセスによって、以下のように混合することができる。混合媒体を伴うおよび伴わないタンブラー(例えば、ガラスビーズ、セラミックボール)、パドルミキサー、ブレードブレンダーまたは音響ミキサーである。穏やかな混合プロセスは、混合物中の任意の活性材料に関して非破壊的であり得る。限定するものではないが、穏やかな混合プロセスの後に、黒鉛粒子の粒径は維持することができる。さらなる実施形態において、粉末混合のシーケンスおよび条件は、活性材料、バインダ、および任意の添加剤の均一な分布を改善するために変更され得る。
【0032】
本明細書で提供される材料および方法は、様々なエネルギー貯蔵装置で実施することができる。本明細書で提供されるように、エネルギー貯蔵装置は、キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ(LIC)、ウルトラキャパシタ、バッテリ、リチウムイオンバッテリ、または前述のうちの2つ以上の態様を組み合わせたハイブリッドエネルギー貯蔵装置とすることができる。好ましい実施形態では、装置はリチウムイオン電池である。
【0033】
エネルギー貯蔵装置は、例えば、平面、らせん状に巻かれた、ボタン形状、またはパウチなどの任意の適切な形状であってもよい。エネルギー貯蔵装置は、システムの構成要素、例えば、発電システム、無停電電源システム、太陽光発電システム、例えば、産業機械及び/又は輸送に使用するためのエネルギー回収システムとすることができる。エネルギー貯蔵装置は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、および/または電気自動車(EV)を含む、様々な電子装置および/または自動車にパワーを供給するために使用されてもよい。
【0034】
図1は、本明細書で提供されるような微粒子状非フィブリル化バインダを含む電極フィルムを有するエネルギー貯蔵装置100の一例の側断面概略図を示す。エネルギー貯蔵装置100は、例えば、キャパシタ、バッテリ、キャパシタ-バッテリハイブリッド、又は燃料電池に分類することができる。一実施形態では、装置100はリチウムイオン電池である。
【0035】
このデバイスは、第1電極102と、第2電極104と、第1電極102と第2電極104との間に配置されたセパレータ106とを有する。第1電極102および第2電極104は、セパレータ106のそれぞれの対向する表面に隣接している。エネルギー貯蔵装置100は、エネルギー貯蔵装置100の電極102、104間のイオン連通を容易にするための電解質118を含む。例えば、電解質118は、第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106と接触していてもよい。電解質118、第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106は、エネルギー貯蔵装置ハウジング120内に収容される。第1電極102および第2電極104の一方または両方は、本明細書に記載されるように、微粒子状非フィブリル化バインダを含み得る。
【0036】
第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106のうちの1つ以上、またはそれらの構成要素は、多孔質材料を含み得る。多孔質材料内の細孔は、ハウジング120内の電解質118と接触するための封じ込めおよび/または増加した表面積を提供することができる。エネルギー貯蔵装置ハウジング120は、第1電極102、第2電極104およびセパレータ106の周囲に封止されてもよく、周囲の環境から物理的に封止されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1電極102は、アノード(負電極)とすることができ、第2電極104は、カソード(正電極)とすることができる。セパレータ106は、第1電極102および第2電極104のような、セパレータ106の対向する側面に隣接する2つの電極を、2つの隣接する電極間のイオン通信を可能にしながら電気的に絶縁するように構成することができる。セパレータ106は、適切な多孔質の電気絶縁材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、セパレータ106は、ポリマー材料を含むことができる。例えば、セパレータ106は、セルロース材料(例えば、紙)、ポリエチレン(PE)材料、ポリプロピレン(PP)材料、および/またはポリエチレンおよびポリプロピレン材料を含むことができる。
【0038】
一般に、第1電極102及び第2電極104は、それぞれ集電体及び電極フィルムを含む。電極102および104は、それぞれ電極フィルム112および114を含む。電極フィルム112及び114は、任意の適切な形状、サイズ及び厚さを有することができる。例えば、電極フィルムは、約30ミクロン(μm)から約250ミクロン、例えば、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約250ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1000ミクロン、約2000ミクロン、またはそれらの間の値の厚さを有することができる。電極フィルムは、一般に、1つ以上の活性材料、例えば、本明細書で提供されるアノード活性材料またはカソード活性材料を含む。電極フィルム112および/または114は、本明細書で提供されるような乾式および/または自己支持型電極フィルムであってもよく、本明細書で提供されるような引張強度または容量などの有利な特性を有する。第1電極フィルム112および/または第2電極フィルム114はまた、本明細書に記載されるような微粒子状非フィブリル化バインダを含んでもよく、また、1つ以上の追加のバインダを含んでもよい。電極フィルム112および/または114は、本明細書に記載されるようなプロセスによって調製されてもよい。電極フィルム112および/または114は、本明細書に記載されるように、湿式または自己支持型の乾式の電極であってもよい。
【0039】
図1に示すように、第1電極102及び第2電極104は、それぞれ、第1電極フィルム112に接する第1集電体108と、第2電極フィルム114に接する第2集電体110とを有している。第1集電体108および第2集電体110は、各対応する電極フィルムと外部電気回路(図示せず)との間の電気的接続を容易にする。第1集電体108および/または第2集電体110は、1つまたは複数の導電性材料を含み、対応する電極と外部回路との間の電荷の移動を容易にするように選択された任意の適切な形状およびサイズを有することができる。例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、銅、レニウム、ニオブ、タンタル、および貴金属、例えば銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、ならびにこれらの合金および組合せを含む材料などの金属材料を含むことができる。例えば、第1集電体108および/または第2集電体110は、例えば、アルミニウム箔または銅箔を含むことができる。第1集電体108および/または第2集電体110は、対応する電極と外部回路との間で電荷の移動を提供するようなサイズにされた長方形または略長方形の形状を有することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの活性材料は、処理された炭素材料を含むが、その処理された炭素材料は、米国特許出願公開第2014/0098464号に記載されているように、水素含有官能基、窒素含有官能基、および/または酸素含有官能基の数の減少を含む。例えば、処理された炭素粒子は、処理された炭素の1つ以上の表面上の1つ以上の官能基の減少を含み、例えば、未処理の炭素表面と比較して1つ以上の官能基の約10%~約60%の減少を含み、約20%~約50%を含むことができる。処理された炭素は、減少した数の水素含有官能基、窒素含有官能基、および/または酸素含有官能基を含むことができる。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は、約0.5%未満を含む約1%未満の水素を含有する官能基を含む。いくつかの実施態様において、処理された炭素材料は、約0.1%未満を含む約0.5%未満の窒素含有官能基を含む。いくつかの実施態様において、処理された炭素材料は、約3%未満を含む約5%未満の酸素含有官能基を含む。さらなる実施形態では、処理された炭素材料は、未処理の炭素材料よりも約30%少ない水素含有官能基を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、リチウムイオン電池とすることができる。いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池電極の電極フィルムは、本明細書に記載の微粒子状非フィブリル化バインダ、1つ以上の活性材料、およびフィブリル化バインダマトリックスを含むことができる。
【0042】
さらなる実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、適切なリチウム含有電解質で充電される。例えば、装置100は、リチウム塩と非水性または有機溶媒などの溶媒を含むことができる。一般に、リチウム塩は、レドックス安定性のあるアニオンを含む。いくつかの実施形態では、アニオンは一価であってもよい。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO2CF3)2)、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(LiSO3CF3)、およびそれらの組合せから選択することができる。いくつかの実施形態では、電解質は、第四級アンモニウムカチオンと、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレートおよびヨウ化物からなる群から選択されるアニオンとを含むことができる。いくつかの実施形態において、塩濃度は、約0.1mol/L(M)から約5M、約0.2M~約3M、または約0.3M~約2Mであってもよい。さらなる実施形態において、電解質の塩濃度は、約0.7M~約1Mであってもよい。特定の実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.2M、約0.3M、約0.4M、約0.5M、約0.6M、約0.7M、約0.8M、約0.9M、約1M、約1.1M、約1.2M、またはそれらの間の値であってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置の電解質は、液体溶媒を含むことができる。溶媒は、全ての成分を溶解する必要はなく、電解質のいかなる成分も完全に溶解する必要はない。さらなる実施形態において、溶媒は、有機溶媒であってもよい。いくつかの実施形態では、溶媒は、カーボネート、エーテルおよび/またはエステルから選択される1つ以上の官能基を含むことができる。いくつかの実施形態では、溶媒はカーボネートを含むことができる。さらなる実施形態では、カーボネートは、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、およびそれらの組み合わせなどの環状カーボネート、または、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびそれらの組み合わせなどの非環状カーボネートから選択することができる。特定の実施形態では、電解質は、LiPF6、および1つ以上のカーボネートを含むことができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池は、約2.5から4.5V、または3.0から4.2Vで動作するように構成される。さらなる実施形態では、リチウムイオン電池は、それぞれ、約2.5Vから約3Vの最小動作電圧を有するように構成される。さらに別の実施形態では、リチウムイオン電池は、それぞれ、約4.1Vから約4.4Vの最大動作電圧を有するように構成される。
【0045】
本明細書で使用される「バッテリ」および「キャパシタ」という用語は、当業者に、それらの通常のおよび慣習的な意味を与えられるべきであり、「バッテリ」および「キャパシタ」という用語は、互いに排他的ではない。キャパシタまたはバッテリは、単独で動作させてもよく、またはマルチセルシステムの構成要素として動作させてもよい単一の電気化学セルを指すことができる。
【0046】
本明細書で使用されるように、エネルギー貯蔵装置の電圧は、単一のバッテリまたはキャパシタセルのための動作電圧である。電圧は、定格電圧を超えるか、または、負荷を受けて定格電圧を下回るか、あるいは製造公差に従う。
【0047】
本明細書で提供されるように、「自己支持型」電極フィルムは、電極フィルムまたは層が自立することができるようにフィルムまたは層を支持し、その形状を維持するのに十分なバインダマトリックス構造を組み込む電極フィルムである。エネルギー貯蔵装置に組み込まれる場合、自己支持型の電極フィルムまたは活性層は、そのようなバインダマトリックス構造を組み込むものである。一般に、および採用される方法に応じて、そのような電極フィルムは、集電体または他のフィルムのような外部の支持要素なしに、エネルギー貯蔵装置の製造プロセスにおいて採用されるのに十分な強度を有する。例えば、「自己支持型」電極フィルムは、他の支持要素を伴わずに、電極製造プロセス内で巻き取られ、取り扱われ、および巻き出されるのに十分な強度を有することができる。カソード電極フィルムまたはアノード電極フィルムなど、本明細書に記載の乾式電極フィルムは、自己支持型であってもよい。
【0048】
本明細書で提供されるように、「溶媒フリーの」電極フィルムは、検出可能な処理溶媒、処理溶媒残留物、または処理溶媒不純物を含有しない電極フィルムである。カソード電極フィルムまたはアノード電極フィルムなど、本明細書に記載される乾式電極フィルムは、溶媒フリーであってもよい。
【0049】
本明細書で提供される「湿式」電極、「湿式プロセス」電極、またはスラリー電極は、活性材料、バインダ、および任意選択で添加剤のスラリーを含む少なくとも1つのステップによって調製される電極である。湿式電極は、一般に、電極が乾燥された後であっても、加工中に使用される溶媒のために、検出可能な量の加工溶媒残留物、および/または加工溶媒不純物を含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、「非破壊」プロセスは、電極活性材料の表面を含む電極活性材料がプロセス中に実質的に改変されないプロセスである。したがって、活性材料のエネルギー貯蔵装置への組み込みなどの用途における分析特性および/または性能は、プロセスを受けていないものと同一またはほぼ同一である。例えば、活性材料上のコーティングは、プロセス中に乱されないか、または実質的に乱されないことがある。非破壊プロセスの非限定的な実施例は、「非破壊混合または混合」であり、減圧、供給速度の増加、速度の減少(例えば、ブレンダー速度)、および/または、他のプロセスパラメータの変化によるジェット粉砕のように、活性材料に与えられる剪断が、エネルギー貯蔵装置に実装される場合に活性材料の分析特性および/または性能が悪影響を受ける閾値未満のままであるような混合である。「非破壊」プロセスは、電極活性材料の表面などの電極活性材料を実質的に改質し、活性材料の分析特性および/または性能に実質的に影響を及ぼす高剪断プロセスと区別することができる。例えば、高剪断ブレンドまたはジェット粉砕は、電極活性材料の表面に有害な影響を及ぼし得る。高剪断プロセスは、活性材料表面特性を損なうことなく、バインダ材料のフィブリル化、または自己支持型電極フィルムの形成を補助するためのバインダ/活性材料マトリックスの形成などの他の利点を提供するために実施することができる。本明細書の実施形態は、高剪断プロセスの過剰な使用による有害な影響を回避しながら、同様の利点を提供する。一般に、本明細書の非破壊プロセスは、より高い供給速度、より低い速度、および/またはより低い圧力のうちの1つ以上で実行されることで、電極活性材料を実質的に改変して性能に影響を及ぼす破壊的なプロセスよりも、低い剪断プロセスをもたらす。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される電極フィルムは、少なくとも1つの活性材料および少なくとも1つのバインダを含む。少なくとも1つの活性材料は、当技術分野で公知の任意の活性材料とすることができる。少なくとも1つの活性材料は、電池のアノードまたはカソードでの使用に適した材料であってもよい。アノード活性材料は、例えば、挿入材料(炭素、グラファイト、および/またはグラフェンなど)、合金化/非合金化材料(シリコン、酸化シリコン、スズ、および/または酸化スズなど)、金属合金または化合物(Si-Al、および/またはSi-Snなど)、および/または変換材料(酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ニッケル、および/または酸化銅など)などを含むことができる。アノード活性材料は、単独で使用するか、または混合して、多相材料(Si-C、Sn-C、SiOx-C、SnOx-C、Si-Sn、Si-SiOx、Sn-SnOx、Si-SiOx-C、Sn-SnOx-C、Si-Sn-C、SiOx-Sn、またはSn-SiOx-SnOxなど)を形成することができる。カソード活性材料は、例えば、金属酸化物、金属硫化物、またはリチウム金属酸化物であってもよい。リチウム金属酸化物は、例えば、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウム(LTO)、および/またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)とすることができる。いくつかの実施形態では、カソード活性材料は、例えば、層状遷移金属酸化物(LiCoO2(LCO)、Li(NiMnCo)O2(NMC)および/またはLiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA)など)、スピネルマンガン酸化物(LiMn2O4(LMO)および/またはLiMn1.5Ni0.5O4(LMNO)など)またはカンラン石(LiFePO4など)を含んでもよい。
【0052】
少なくとも1つの活性材料は、1つ以上の炭素材料を含んでもよい。炭素材料は、例えば、黒鉛材料、黒鉛、黒鉛含有材料、硬質炭素、軟質炭素、カーボンナノチューブ、多孔質炭素、導電性炭素、またはそれらの組み合わせから選択されてもよい。グラファイトは、合成または天然由来であってもよい。活性炭は、水蒸気プロセスまたは酸/エッチングプロセスから誘導することができる。いくつかの実施形態では、黒鉛材料は、表面処理された材料であってもよい。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は活性炭を含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、階層構造炭素を含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、構造化カーボンナノチューブ、構造化カーボンナノワイヤおよび/または構造化カーボンナノシートを含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、グラフェンシートを含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、表面処理された炭素であってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池またはハイブリッドエネルギー貯蔵装置のカソード電極フィルムは、少なくとも1つの活性材料を約70重量%から約92重量%、または約70重量%から約96重量%を含む、約70重量%から約98重量%含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、多孔質炭素材料を約5重量%まで、または約1重量%から約5重量%を含む、約10重量%まで含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、導電性添加剤を約1重量%から約3重量%を含む、約5重量%まで含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、バインダを約20重量%まで、例えば、約1.5重量%から10重量%、約1.5重量%から5重量%、または約1.5重量%から3重量%含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、バインダを約1.5重量%から約3重量%含むことができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、少なくとも1つの活性材料、バインダ、および任意選択で導電性添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、導電性添加剤は、カーボンブラックなどの導電性炭素添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、アノードの少なくとも1つの活性材料は、合成グラファイト、天然グラファイト、硬質炭素、軟質炭素、グラフェン、メソ多孔質炭素、ケイ素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、チタン酸リチウム、前述の材料の混合物、または複合材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、少なくとも1つの活性材料を、約80重量%から約98重量%、または約94重量%から約97重量%を含む、約80重量%から約98重量%含むことができる。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、導電性添加剤を、1重量%~約3重量%を含む約5重量%まで含むことができる。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、バインダを、約1.5重量%から10重量%、約1.5重量%から5重量%、または約3重量%から5重量%を含む、約20重量%まで含むことができる。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約4重量%のバインダを含む。いくつかの実施形態では、アノードフィルムは、導電性添加剤を含まなくてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態は、1つ以上のバインダを有する、アノードおよび/またはカソードなどの電極フィルムを含む。1つ以上のバインダは、本明細書に記載されるように、0.5μmから40μmの範囲の粒径を有する微粒子状非フィブリル化バインダを含み、いくつかの実施形態では、フィブリル化バインダとともに含む。微粒子状非フィブリル化バインダは、セルロースまたはセルロースの誘導体であってもよい。セルロースの誘導体は、例えば、セルロースアセテートなどのセルロースエステル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはヒドロキシエチルセルロース(HEC)などのセルロースエーテル、硝酸セルロース、または、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、またはカルボキシイソプロピルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロースを含むことができる。さらなる実施形態において、セルロースまたはセルロース誘導体は、セルロース塩を含んでもよい。さらなる実施形態において、セルロース塩カチオンは、ナトリウム、アンモニウム、またはリチウムから選択されてもよい。例えば、セルロースまたはセルロース誘導体は、ナトリウムセルロースエステル、ナトリウムセルロースエーテル、硝酸セルロースナトリウム、またはカルボキシアルキルセルロースナトリウムから選択されるナトリウムセルロースまたはナトリウムセルロース誘導体を含むことができる。好ましい実施形態では、微粒子状非フィブリル化バインダはCMCである。CMCは、ナトリウムカルボキシメチルセルロースを含んでもよい。
【0056】
セルロース誘導体は、その置換度によって特徴付けることができる。例えば、置換度は、約0.7から約1.5、または約1.2であってもよい。材料が電極フィルム内に実装される場合、所望の特性を提供するために、ある程度の置換が望ましい場合がある。しかしながら、粉末形態の市販のCMCは、特定の粒径および置換度に限定されることが見出された。例えば、1.2の置換度を有する市販のCMC粉末は、より大きな粒子サイズにおいてのみ利用可能であることが見出された。約40μmまでのより小さい粒子サイズは、0.7の置換度に限定されることが見出され、これは、好ましくない置換度であることが観察された。上述したように、より小さいCMC粉末は、そのような材料の必要性が認識されておらず、また、確実に望ましい置換度ではないので、利用可能ではなかった。
【0057】
いくつかの実施形態では、セルロースまたはセルロース誘導体は、架橋を含んでもよい。さらに、セルロースまたはセルロース誘導体は、一般に数平均分子量であるその分子量によって特徴付けられることができる。いくつかの実施形態では、セルロースまたはセルロース誘導体は、約10,000から約500,000、または約50,000から約400,000の数平均分子量を有する。
【0058】
1つ以上のバインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン、ポリアルキレン、ポリエーテル、スチレン-ブタジエン、ポリシロキサンおよびポリシロキサンのコポリマー、分岐ポリエーテル、ポリビニルエーテル、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。バインダはセルロースを含むことができる。セルロースは、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)のようなカルボキシアルキルセルロースであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。例えば、バインダは、ポリ塩化ビニレン、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-石炭アルキルメチルシロキサン、それらのコポリマー、及び/又はこれらの混合物を含むことができる。特定の実施形態では、フィブリル化バインダはPTFEである。乾式自己支持型電極フィルムは、前述のバインダの相互貫入ネットワークを含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のバインダは、CMC、PVDF、およびPTFEを含む。
【0059】
バインダは、ポリマー成分の様々な適切な比率を含むことができる。微粒子状非フィブリル化バインダは、バインダの50重量%までであり得る。例えば、微粒子状非フィブリル化バインダは、約0.1重量%から約50重量%、約0.5重量%から約10重量%、約0.5重量%から約5重量%、約0.5から約2重量%、または約0.5から約1重量%であり得る。PTFEは、バインダの約98重量%まで、例えば、約20重量%から約95重量%、約20重量%から約80重量%、約30重量%から約70重量%、約30重量%から約50重量%、または約50重量%から約90重量%を含む、約20重量%から約90重量%であり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のバインダは、約0.1から約2重量%のCMC、約0.1から約2重量%のPVDF、および約1から約4重量%のPTFEを含む。特定の実施形態では、1つ以上のバインダは、約1重量%のCMC、約1重量%のPVDF、および約2重量%のPTFEを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、微粒子状非フィブリル化バインダ粒子は、約0.5μmから約40μm、例えば、約1μmから約25μm、約2μmから約20μm、約5μmから約15μm、または約10μmから約15μmのメジアン粒径を有してもよい。電極フィルム混合物は、選択されたサイズを有する、微粒子状非フィブリル化バインダ粒子以外のバインダ粒子、例えば、PTFEバインダ粒子をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、バインダ粒子は、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、約500nm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約10μm、約50μm、約100μm、またはそれらの間の値であり得る。
【0061】
乾式製造プロセスは、電極フィルムの形成に溶媒を使用しないか、または実質的に使用しないプロセスを指すことができる。例えば、活性材料およびバインダを含む電極フィルムの成分は、乾燥粒子を含んでもよい。電極フィルムを形成するための乾燥粒子を組み合わせて、乾燥粒子電極フィルム混合物を提供することができる。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、電極フィルムの成分の重量パーセンテージおよび乾燥粒子電極フィルム混合物の成分の重量パーセンテージが実質的に同じであるように、乾式粒子電極フィルム混合物から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、乾式製造プロセスを使用して乾燥粒子電極フィルム混合物から形成される電極フィルムは、溶媒およびそれから生じる溶媒残留物などの任意の処理添加剤を含まないか、または実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、得られる電極フィルムは、乾燥粒子混合物から乾式プロセスを使用して形成された自己支持型フィルムである。いくつかの実施形態では、得られる電極フィルムは、乾式粒子電極フィルム混合物から乾式プロセスを使用して形成された自立型フィルムである。活性層または電極フィルムを形成するためのプロセスは、フィルムがフィブリル化バインダマトリックスを含むように、フィブリル化バインダ成分をフィブリル化することを含むことができる。さらなる実施形態では、自立型電極フィルムは、集電体の不在下で形成されてもよい。なお、さらなる実施形態において、電極フィルムは、フィルムが自己支持型であるように、フィブリル化ポリマーマトリックスを含み得る。フィブリルのマトリックス、格子、またはウェブを形成して、電極フィルムに機械的構造を提供することができると考えられる。
【0062】
いくつかの実施形態では、電極フィルムが、本明細書に記載の微粒子状非フィブリル化バインダを含む乾式および/または自己支持型フィルムであるエネルギー貯蔵装置の電極フィルムは、充電時または放電時の比容量が、約300mAh/g、約325mAh/g、約350mAh/g、約375mAh/g、約400mAh/g、約425mAh/g、約450mAh/g、約500mAh/g、またはそれらの間の値の範囲を提供し得る。さらなる実施形態では、電極フィルムが、本明細書に記載される微粒子状非フィブリル化バインダを含む乾式および/または自己支持型フィルムであるエネルギー貯蔵装置の電極フィルムは、約90%、約91%、約92%、約93%、またはそれらの間の値の範囲の第1サイクル効率を提供し得る。
【0063】
電極フィルムは、特定の用途に適した選択された厚さを有することができる。本明細書で提供される電極フィルムの厚さは、従来のプロセスによって調製される電極フィルムの厚さよりも厚くてもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、約250ミクロン、約300ミクロン、約350ミクロン、約400ミクロン、約450ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1mm、または約2mm、あるいはそれらの間の値の範囲の厚さを有することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微粒子状非フィブリル化バインダを含む自立型および/または自己支持型電極フィルムは、少なくとも約1Nの引張強度を有してもよい。さらなる実施形態では、引張強度は、約1N、約1.1N、約1.2N、約1.3N、約1.4N、約1.5N、約1.6N、約1.7N、約1.8N、約1.9N、約2N、約2Nより大きい値、またはそれらの間の値の範囲であってもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、実質的に同一の条件下で製造された、本明細書に記載の微粒子状非フィブリル化バインダを含む自立型および/または自己支持型電極フィルムのセット(例えば、少なくとも3つの電極フィルムのセット)は、約3%未満の標準偏差(sd)、例えば、約2.5%sd、約2%sd、約1.5%sd、約1%sd、約0.5%sd、またはそれらの間の値の範囲の比容量の変動を有し得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される微粒子状非フィブリル化バインダを含む自立型および/または自己支持型電極フィルムは、例えば活性材料の同等の構成の湿式電池電極よりも20~30%高い比エネルギー密度によって特徴付けられてもよい。
【0067】
以下の特定の実施例では、微粒子状非フィブリル化バインダを含む電極フィルムを作製した。
【0068】
例1
96重量%の黒鉛および4重量%のバインダを含み、バインダが2%のPTFE、1%のCMCおよび1%のPVDFを含む乾式電池アノード電極フィルムを作製した。他の電極フィルム組成物を想定し、調製することができ、本明細書の開示は、開示される特定の組成物に限定されない。
【0069】
分級器アタッチメントを有するHosokawa100AFG加圧ジェットミルを用いて、受け取ったCMC粉末をサイズ出力選択で粉砕した。1.2の置換度を有するSigmaAldrich(登録商標)ナトリウムカルボキシメチルセルロースを供給材料として使用した。10μmのD
50サイズを選択するために、分級機回転速度は8000rpmを用いた。粉砕ガス圧は120psiであり、初期チャンバ質量は100gであった。これは、約0.1kg/hrの生産速度をもたらした。100AFGマシンの写真は、
図2Aおよび2Bに見ることができる。SigmaAldrich(登録商標)から受け取ったCMC粉末は、約70μmのD
50粒径を有し、一方、Hosokawa粉砕後のCMCは、約10μmのD
50を有した。この差は、
図3Aおよび3BのSEM画像に見ることができる。Hosokawa粉砕後のCMCを乾式アノード電極並列プロセスで使用した場合、受け取ったCMCと比較して、最初のサイクル効率およびセル間の均一性の向上が観察された。この比較のための電気化学的データを
図4に示すが、受け取ったCMCを用いて、それぞれ386mAh/gおよび348mAh/gの充放電比容量(効率90.2%)が達成された。粉砕したCMCを用いて、それぞれ384mAh/gおよび349mAh/gの充放電比容量(効率90.9%)が達成された。
【0070】
電気化学的性能の向上に加えて、CMCのより小さいD
50粒径は、穴、亀裂または表面ピットのような電極欠陥を改善した。製造業者から受け取ったD
50粒径が70μmのCMC粉末を使用した乾燥粉末製剤は、
図5に示すような欠陥を有する自立型電極フィルムを生成した。これらの欠陥は、
図6に示すように、D
50粒径を約10μmへ粉砕したCMCを使用することにより回避された。これらの実験結果の根拠は、より小さいD
50CMC粒径によって提供されるより大きい表面積にある。電極配合物中の固定されたバインダ重量比では、より高い表面は、活性材料粉末マトリックスに対するより強い結合強度、およびフィルムを製造するために使用されるか、またはフィルムの厚さをカレンダ加工するために使用される加熱ローラーに対するより弱い親和性を提供し得る。対照的に、より大きなD
50CMC粒径は、活性材料粉末マトリックスに対するより弱い結合強度、およびフィルムを製造するために使用されるか、またはフィルムの厚さをカレンダ加工するために使用される加熱ローラーに対するより強い親和性を提供し得る。加熱されたカレンダローラに対するこのより強い親和性は、乾式処理中に加熱されたカレンダローラに直接接触した、粉砕されていない粉末中に見出されるCMCバインダ粒子のより大きなD
50粒径のより大きな単一スポットサイズに起因し得る。このように、より大きなCMC粒子は、粉末からフィルムへの形成の間に電極粉末試料から偶然に除去されるか、またはフィルムからフィルムへの厚さの減少プロセスの間にフィルムから抽出され、電極中に欠陥を残す。自立型電極フィルムの引張強度測定もまた、微粉砕されたCMCポリマーバインダに強い結合凝集強度があるという考えを支持する。引張強度さの結果は、より小さいD
50粒径(10μm対約70μm)のCMCバインダを用いて製造した同様の厚さでの電極フィルムは、より大きい粒径で製造したものより強いことを示している。実験結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
本発明の特定の実施形態を説明してきたが、これらの実施形態は、例としてのみ提示されており、本開示の範囲を限定することを意図していない。実際に、本明細書に記載される新規な方法およびシステムは、様々な他の形態で具体化されてもよい。さらに、本明細書で説明されるシステムおよび方法における様々な省略、置換、および変更は、本開示の趣旨から逸脱することなく行われ得る。添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物は、本開示の範囲および趣旨に含まれるような形態または修正を包含することが意図される。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【0073】
特定の態様、実施形態、または例に関連して説明される特徴、材料、特性、またはグループは、本明細書のこのセクションまたは他で説明される任意の他の態様、実施形態、または例と互換性がない限り、それらに適用可能であると理解されるべきである。本明細書に開示されたすべての特徴(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)、および/またはそのように開示された任意の方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的である場合を除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。保護は、前述の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせ、またはそのように開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0074】
さらに、別個の実施形態の文脈で本開示に記載される特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で記述される様々な特徴は、別々に複数の実施形態で、または任意の適切なサブコンビネーションで実装することも可能である。さらに、特徴は、特定の組合せで作用するものとして上述されてもよいが、請求される組合せからの1つ以上の特徴は、場合によっては、組合せから削除されてもよく、組合せは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションのバリエーションとして請求されてもよい。
【0075】
さらに、操作は、図面に示されるか、または特定の順序で本明細書に記載されてもよいが、そのような操作は、所望の結果を達成するために、示される特定の順序で、または連続した順序で、またはすべての操作が実行される必要はない。図示または説明されていない他の操作を、例示的な方法およびプロセスに組み込むことができる。例えば、1つまたは複数の追加の操作を、説明した操作のいずれかの前、後、同時に、またはその間に実行することができる。さらに、操作は、他の実施形態において再配置または再配列されてもよい。当業者であれば、いくつかの実施形態において、図示および/または開示されたプロセスにおいて取られる実際のステップは、図面に示されたものとは異なり得ることを理解するであろう。実施形態に応じて、上述のステップのうちのいくつかを除去することができ、他のステップを追加することができる。さらに、上記で開示された特定の実施形態の特徴および属性は、追加の実施形態を形成するために異なる方法で組み合わされてもよく、それらのすべては、本開示の範囲内にある。また、上述の実施態様における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実施態様においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、説明される構成要素およびシステムは、一般に、単一の製品に一体化されるか、または複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。例えば、本明細書に記載されるエネルギー貯蔵システムのための構成要素のいずれも、別々に提供されてもよく、またはエネルギー貯蔵システムを形成するために一体化されてもよい(例えば、一緒にパッケージ化されてもよく、または一緒に取り付けられてもよい)。
【0076】
本開示の目的で、特定の態様、優位性、及び新規な特徴について、本明細書に説明する。必ずしもすべてのそのような優位性が、任意の特定の実施形態に従って達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本開示が、本明細書で教示または示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点または利点のグループを達成する方法で実施または実行され得ることを認識するであろう。
【0077】
「可能」、「し得る」、「できる」「でもよい」などの条件付き文言は、特に断りのない限り、または、使用されるような文脈内で別様に理解されない限り、一般に、他の実施形態は、特定の特徴、要素、および/またはステップを含まない一方で、特定の実施形態が含むことを伝えるように意図している。したがって、そのような条件付き言語は、一般に、特徴、要素、および/またはステップが、1つまたは複数の実施形態に何らかの形で必要とされること、または1つまたは複数の実施形態が、ユーザ入力または指示の有無にかかわらず、これらの特徴、要素、および/またはステップが、任意の特定の実施形態に含まれているか、または任意の特定の実施形態で実行されるべきかどうかを決定するための論理を必然的に含むことを意図するものではない。
【0078】
特に断らない限り、語句「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」などの接続詞は、項目、用語などがX、Y、またはZのいずれかであり得ることを伝えるために一般的に使用される文脈とは別に理解されるので、このような接続詞は、特定の実施形態が、X、Yのうちの少なくとも1つ、およびZのうちの少なくとも1つの存在を必要とすることを一般的に意図するものではない。
【0079】
本明細書で使用される用語「ほぼ」、「約」、「一般的に」、および「実質的に」などの本明細書で使用される程度の言語は、依然として所望の機能を実行するか、または所望の結果を達成する、記載された値、量、または特性に近い値、量、または特性を表す。
【0080】
本開示の範囲は、このセクションまたは本明細書の他の場所における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されるようには意図されておらず、このセクションまたは本明細書の他の場所に提示されるように、あるいは将来提示される特許請求の範囲によって定義されてもよい。特許請求の範囲の言語は、特許請求の範囲に採用された言語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書に記載された例に限定されるものではなく、出願の手続き中にも広く解釈されるべきであり、これらの例は、非排他的なものとして解釈されるべきである。