(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂発泡体シート及びそれを用いた粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C08J 9/06 20060101AFI20240418BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20240418BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240418BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
C09J7/26
C09J7/38
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2020555254
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2020029567
(87)【国際公開番号】W WO2021020581
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2019141517
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 昌也
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-059819(JP,A)
【文献】特開2019-059932(JP,A)
【文献】特開2019-065252(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181498(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094723(WO,A1)
【文献】特表2018-521182(JP,A)
【文献】国際公開第2020/175698(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/06
C09J 7/26
C09J 7/38
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率の少なくとも一方の収縮率が5%以下であり、
23℃の温度での層間強度が0.80MPa以上であり、
厚さが1.5mm以下であり、
25%圧縮強度が800kPa以下であり、
プロピレン由来の構成単位を有する樹脂(A)及びポリエチレン系樹脂(B)を含み、
前記樹脂(A)が、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-プロピレンランダム共重合ゴム及びオレフィン系熱可塑性エラストマーを含むポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項2】
90℃の温度での層間強度が0.40MPa以上である請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項3】
MDの平均気孔径及びTDの平均気孔径の少なくとも一方の平均気孔径が250μm以下である請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項4】
架橋度が30~70質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項5】
見掛け密度が0.06~0.7g/cm
3である請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項6】
前記樹脂(A)及び前記ポリエチレン系樹脂(B)を含む樹脂組成物を発泡させてなり、
前記樹脂組成物における前記ポリプロピレン系樹脂及び前記エチレン-プロピレンランダム共重合ゴムの合計の含有量が、前記樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、50~90質量部である請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項7】
前記樹脂組成物における前記オレフィン系熱可塑性エラストマーの含有量が、前記樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、5~45質量部である請求項6に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シートと、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面に設けた粘着層とを備える粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡体シート及びそれを用いた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡体は、一般的に柔軟性、軽量性、衝撃吸収性及び断熱性に優れており、表皮材との積層体、断熱材、クッション材等として汎用されている。また、ポリオレフィン系樹脂発泡体は、優れた柔軟性、及び優れた衝撃吸収性を有することから、電子機器の固定用フォームテープとして使用されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-59819号公報
【文献】特開2018-53224号公報
【文献】特開2019-65153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、センターインフォメーションディスプレイ(CID)やヘッドアップディスプレイ(HUD)といった車載ディスプレイは、大型化及び曲面化が進み、モジュールのパネル固定用フォームテープに対してさらに高い柔軟性が求められている。さらに、日光等の影響でモジュールに熱がかかることが懸念されており、固定用フォームテープへの耐熱性も同時に求められている。また、モジュールは車両に使用されることで高い振動を受けることがあるので、固定用フォームテープへの耐衝撃性もさらに求められている。
発泡体基材に耐熱性能を持たせる単純な手法の一つとして、融点の高い樹脂を原料として用いることが考えられる。一方で、高融点樹脂を用いた発泡体は、その樹脂特性上、硬くなることが一般的である。その結果、基材の柔軟性が低下してテープ用途を想定した際の曲面追従性が低下したり(テープ浮き)、耐衝撃性が低下したりすることが問題点として考えられている。
そこで、本発明は、耐熱性、柔軟性及び耐衝撃性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡体シート、及びそれを用いた粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、特定の加熱収縮率、層間強度及び圧縮強度を有する発泡体シートを用いることによって、上記課題を解決できるとの知見に基づいてなされたのである。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1]90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率の少なくとも一方の収縮率が5%以下であり、23℃の温度での層間強度が0.80MPa以上であり、厚さが1.5mm以下であり、25%圧縮強度が800kPa以下であるポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[2]90℃の温度での層間強度が0.40MPa以上である上記[1]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[3]MDの平均気孔径及びTDの平均気孔径の少なくとも一方の平均気孔径が250μm以下である上記[1]又は[2]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[4]架橋度が30~70質量%である上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[5]見掛け密度が0.06~0.7g/cm3である上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[6]プロピレン由来の構成単位を有する樹脂(A)及びポリエチレン系樹脂(B)を含む樹脂組成物を発泡させてなる上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[7]前記樹脂(A)が、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-プロピレンランダム共重合ゴム及びオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む上記[6]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体樹脂シート。
[8]前記樹脂組成物における前記ポリプロピレン系樹脂及び前記エチレン-プロピレンランダム共重合ゴムの合計の含有量が、前記樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、50~90質量部である上記[7]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[9]前記樹脂組成物における前記オレフィン系熱可塑性エラストマーの含有量が、前記樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、5~45質量部である上記[7]又は[8]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[10]上記[1]~[9]のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シートと、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面に設けた粘着層とを備える粘着テープ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱性、柔軟性及び耐衝撃性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡体シート、及びそれを用いた粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例及び比較例における層間強度を評価するための試験装置の模式図である。
【
図2】落球試験の試験方法を説明するための図である。
【
図3】落球試験の試験方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[ポリオレフィン系樹脂発泡体シート]
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体シート(以下、単に「発泡体シート」と呼ぶ場合がある)は、90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率の少なくとも一方の収縮率が5%以下であり、23℃の温度での層間強度が0.80MPa以上であり、厚さが1.5mm以下であり、25%圧縮強度が800kPa以下である。これにより、耐熱性、柔軟性及び耐衝撃性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡体シートを提供することができる。以下、本発明の発泡体シートを詳細に説明する。
【0009】
(90℃の温度で1時間養生したときのMD及びTDの収縮率)
本発明の発泡体シートの90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率の少なくとも一方の収縮率は5%以下である。発泡体シートの90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率の両方の収縮率が5%よりも大きいと、車両内の高温環境下での使用に対して十分な耐熱性を有する発泡体シートが得られない場合がある。発泡体シートの耐熱性の観点から、本発明の発泡体シートの90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率の少なくとも一方の収縮率は、好ましくは4.5%以下であり、より好ましくは4.0%以下であり、さらに好ましくは3.5%以下である。本発明の発泡体シートの90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率の少なくとも一方の収縮率の範囲の下限値は特に限定されないが、例えば0.1%である。
なお、本発明の発泡体シートの90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率の両方の収縮率が、上記範囲内であることがより好ましい。
【0010】
JIS K6767に準拠して、発泡体シートの90℃でのMD及びTDの寸法変化を測定し、MD及びTDの加熱収縮率(%)を算出して、その値を本発明の発泡体シートの90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率とする。また、本発明において「MD」は、Machine Directionを意味し、シートの押出方向等と一致する方向である。「TD」は、Transverse Directionを意味し、MDに直交しかつシートの表面に平行な方向である。
発泡体シートの90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率は、発泡体シートを構成する樹脂の種類及び含有量等を調節することにより調整することができる。
【0011】
(23℃の温度での層間強度)
本発明の発泡体シートの23℃の温度での層間強度は0.80MPa以上である。発泡体シートの23℃の温度での層間強度が0.80MPa未満であると、モジュールが車両に使用されることで受ける高い振動に対して十分な耐衝撃性を有する発泡体シートが得られない場合がある。発泡体シートの耐衝撃性の観点から、本発明の発泡体シートの23℃の温度での層間強度は、好ましくは0.90MPa以上であり、より好ましくは1.50MPa以上である。本発明の発泡体シートの23℃の温度での層間強度の範囲の上限値は、とくに限定されないが、例えば5.00MPaである。
発泡体シートの23℃の温度での層間強度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。その測定方法は、発泡体シートを厚み方向に引張り、シートが破壊(剥離)する際の最大荷重を測定するものである。本発明の発泡体シートの層間強度測定において生じる破壊は、発泡体シートの内部で生じるので、層間強度は、発泡体シートの厚み方向の引張強度を主として反映したものとなる。
なお、23℃の温度での発泡体シートの層間強度は、発泡体シートを構成する樹脂の種類及び含有量等を調節することにより調整することができる。
【0012】
(90℃の温度での層間強度)
本発明の発泡体シートの90℃の温度での層間強度は、好ましくは0.40MPa以上である。発泡体シートの90℃の温度での層間強度が0.40MPa以上であると、車両内の高温環境下においてもモジュールが車両に使用されることで受ける高い振動に対して十分な耐衝撃性を有する発泡体シートが得られる。車両内の高温環境下における発泡体シートの耐衝撃性の観点から、本発明の発泡体シートの90℃の温度での層間強度は、より好ましくは0.50MPa以上であり、さらに好ましくは0.60MPa以上であり、特に好ましくは0.70MPa以上である。本発明の発泡体シートの90℃の温度での層間強度の範囲の上限値は、とくに限定されないが、例えば3.00MPaである。
発泡体シートの90℃の温度での層間強度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。なお、90℃の温度での発泡体シートの層間強度は、発泡体シートを構成する樹脂の種類及び含有量等を調節することにより調整することができる。
【0013】
(厚さ)
本発明の発泡体シートの厚さは1.5mm以下である。発泡体シートの厚さが1.5mmよりも大きいと、曲面を有する車載用電子機器への使用に対して、発泡体シートが厚すぎる場合がある。このような観点から、発泡体シートの厚さは、より好ましくは1.0mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm以下であり、よりさらに好ましくは0.3mm以下である。なお、本発明の発泡体シートの厚さの範囲の下限値は特に限定されないが、例えば、0.03mmである。また、表面及び裏面の両方の面が平滑な面である発泡体シートを得られるという観点から、本発明の発泡体シートは、厚さ方向に対して垂直な方向に厚い発泡体シートをスライスすることによって得られた発泡体シートではないことが好ましい。
【0014】
(25%圧縮強度)
本発明の発泡体シートの25%圧縮強度は800kPa以下である。発泡体シートの25%圧縮強度が800kPaよりも大きいと、発泡体シートの柔軟性が不十分となり、曲面追従性が著しく低下する場合がある。また、本発明の発泡体シートの25%圧縮強度は30kPa以上であることが好ましい。発泡体シートの25%圧縮強度が30kPa以上であると、電子機器への使用もしくは車載用電子機器への使用に対して、十分な機械的強度を有する発泡体シートを得ることができる。発泡体シートの柔軟性及び機械的強度の観点から、本発明の発泡体シートの25%圧縮強度は、好ましくは30~800kPaであり、より好ましくは40~750kPaであり、さらに好ましくは50~700kPaであり、特に好ましくは60~650kPaである。なお、発泡体シートの25%圧縮強度はJIS K 7181に準拠して測定することができる。また、発泡体シートの25%圧縮強度は、発泡体シートを構成する樹脂の種類及び含有量、発泡体シートの架橋度等を調節することにより調整することができる。
【0015】
(MD及びTDの平均気泡径)
本発明の発泡体シートにおけるMDの平均気泡径及びTDの平均気泡径の少なくとも一方の平均気泡径は、好ましくは250μm以下である。MDの平均気泡径及びTDの平均気泡径の少なくとも一方の平均気泡径が250μm以下であると、発泡体シートの機械的強度が改善されるとともに発泡体シートの耐衝撃性がさらに改善される。発泡体シートの機械的強度の観点及び耐衝撃性の観点から、MDの平均気泡径及びTDの平均気泡径の少なくとも一方の平均気泡径は、より好ましくは230μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下である。なお、本発明の発泡体シートにおけるMDの平均気泡径及びTDの平均気泡径の少なくとも一方の平均気泡径の範囲の下限値は特に限定されないが、例えば、120μmである。
なお、本発明の発泡体シートにおけるMDの平均気泡径及びTDの平均気泡径の両方の平均気泡径が、上記範囲内であることがより好ましい。また、発泡体シートの架橋度を調節することにより、MD及びTDの平均気泡径を調整できる。
【0016】
(架橋度)
本発明の発泡体シートの架橋度は、好ましくは30~70質量%である。発泡体シートの架橋度が30~70質量%であると、発泡体シートの気孔のMD及びTDの平均気孔径を所望の範囲に調整しやすくなる。また、層間強度を高くしやすくなる。このような観点から、発泡体シートの架橋度は、より好ましくは40~70質量%であり、さらに好ましくは45~65質量%であり、特に好ましくは50~60質量%である。なお、架橋度は後述する実施例に記載の方法にしたがって測定することができる。また、発泡体シートの架橋度は、架橋助剤の種類及び含有量、電離性放射線の照射線量等を調節することにより調整することができる。
【0017】
(見掛け密度)
本発明の発泡体シートの見掛け密度は、好ましくは0.06~0.7g/cm3である。発泡体シートの見掛け密度が0.06~0.7g/cm3であると、発泡体シートの耐熱性を向上させ、かつ柔軟性と耐衝撃性とをバランスよく向上させることができる。このような観点から、発泡体シートの見掛け密度は、より好ましくは0.07~0.6g/cm3であり、さらに好ましくは0.07~0.5g/cm3であり、特に好ましくは0.1~0.5g/cm3である。
【0018】
(曲げ弾性率)
本発明の発泡体シートの曲げ弾性率は、好ましくは150kPa以下である。本発明の発泡体シートの曲げ弾性率が150kPa以下であると、発泡体シートの曲面追従性がさらに良好となる。曲面追従性の観点から、発泡体シートの曲げ弾性率は、より好ましくは100kPa以下であり、さらに好ましくは50kPa以下である。なお、発泡体シートの曲げ弾性率の下限値はとくに限定されないが、例えば、5kPa以上である。曲げ弾性率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0019】
(樹脂組成物)
本発明の発泡体シートは、プロピレン由来の構成単位を有する樹脂(A)(以下、単に「樹脂(A)」という場合がある)を含む樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(C)」という場合がある)を発泡させてなるものであることが好ましい。さらに、本発明の発泡体シートは、樹脂組成物(C)を架橋させ、かつ発泡させてなるものであることがより好ましい。また、樹脂組成物(C)は、樹脂(A)に加えて、ポリエチレン系樹脂(B)(以下、単に「樹脂(B)」という場合がある)をさらに含むことがより好ましい。
【0020】
樹脂組成物(C)における樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物(C)の樹脂成分100質量部に対して、好ましくは55~99質量部である。このような樹脂組成物(C)を用いることにより、発泡体シートにおける90℃の温度での加熱収縮を低くしやすくなる。このような観点から、樹脂組成物(C)における樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物(C)の樹脂成分100質量部に対して、より好ましくは75~97質量部である。
【0021】
樹脂(A)は、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-プロピレンランダム共重合ゴム及びオレフィン系熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。このような樹脂(A)を含む樹脂組成物(C)を用いることにより、発泡体シートにおける90℃の温度での加熱収縮を低くし、23℃の温度での層間強度を高くし、25%圧縮強度を所定範囲に調整しやすくなる。このような観点から、樹脂(A)における、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-プロピレンランダム共重合ゴム及びオレフィン系熱可塑性エラストマーの含有量の合計は、好ましくは80~100質量%であり、より好ましくは90~100質量%であり、さらに好ましくは95~100質量%である。
【0022】
<ポリプロピレン系樹脂>
樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂を含むことにより、発泡体シートにおける90℃の温度での加熱収縮を低くしやすくなる。ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体が挙げられる。プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体の何れであってもよいが、プロピレンのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)であることが好ましい。ランダムポリプロピレンを使用することで、発泡体シートの耐熱性がさらに改善される。
プロピレンと他のオレフィンとの共重合体において、プロピレンと共重合される他のオレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等のα-オレフィンが挙げられ、これらの中ではエチレンが特に好ましい。すなわち、プロピレンのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)としてはエチレン-プロピレンランダム共重合体がより好ましい。
【0023】
樹脂組成物(C)におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は、樹脂組成物(C)の樹脂成分100質量部に対して、好ましくは30~70質量部である。このような樹脂組成物(C)を用いることにより、発泡体シートにおける90℃の温度での加熱収縮を低くしやすくなる。このような観点から、樹脂組成物(C)におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は、樹脂組成物(C)の樹脂成分100質量部に対して、より好ましくは35~65質量部であり、さらに好ましくは40~60質量部であり、よりさらに好ましくは40~50質量部である。
【0024】
<エチレン-プロピレンランダム共重合ゴム>
樹脂(A)がエチレン-プロピレンランダム共重合ゴムを含むことにより、発泡体シートにおける23℃の温度での層間強度を高くし、25%圧縮強度を所定の範囲に調整しやすくなる。エチレン-プロピレンランダム共重合ゴムは、エチレン及びプロピレンが実質的にランダムに共重合した非晶質又は低結晶性のゴム状物質である。
エチレン-プロピレンランダム共重合ゴムは、エチレン単位及びプロピレン単位に加え、他のモノマー単位を有していてもよい。他のモノマー単位を形成するモノマーとしては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等の炭素数4~8の共役ジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ジシクロオクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン等の炭素数5~15の非共役ジエン、酢酸ビニル等のビニルエステル化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では炭素数5~15の非共役ジエンが好ましく、入手容易性の観点から、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)がより好ましく、5-エチリデン-2-ノルボルネンがさらに好ましい。
【0025】
エチレン-プロピレンランダム共重合ゴムのエチレン単位の含有量は、通常30~85質量%、好ましくは40~80質量%、より好ましくは45~75質量%であり、プロピレン単位の含有量は、通常10~60質量%、好ましくは15~50質量%であり、非共役ジエン等のその他の単量体単位の含有量は、通常0~20質量%、好ましくは0~10質量%である。
【0026】
エチレン-プロピレンランダム共重合ゴムは、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPR)及びエチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM)がより好ましく、EPDMがさらに好ましい。なお、EPDMとしては、エチレン-プロピレン-5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-1,4-ヘキサジエン共重合ゴム、及びエチレン-プロピレン-ジシクロペンタジエン共重合ゴムが挙げられ、これらの中では、エチレン-プロピレン-5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合ゴムが好ましい。
これらのエチレン-プロピレンランダム共重合ゴムは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
樹脂組成物(C)におけるエチレン-プロピレンランダム共重合ゴムの含有量は、樹脂組成物(C)の樹脂成分100質量部に対して、好ましくは10~30質量部である。このような樹脂組成物(C)を用いることにより、発泡体シートにおける23℃の温度での層間強度を高くし、25%圧縮強度を所定の範囲に調整しやすくなる。このような観点から、樹脂組成物(C)におけるエチレン-プロピレンランダム共重合ゴムの含有量は、樹脂組成物(C)の樹脂成分100質量部に対して、より好ましくは15~25質量部であり、さらに好ましくは17~23質量部である。
【0028】
樹脂組成物(C)におけるポリプロピレン系樹脂及びエチレン-プロピレンランダム共重合ゴムの合計の含有量は、樹脂組成物(C)の樹脂成分100質量部に対して、好ましくは50~90質量部である。このような樹脂組成物(C)を用いることにより、発泡体シートにおける90℃の温度での加熱収縮を低くし、23℃の温度での層間強度を高くし、25%圧縮強度を所定の範囲に調整しやすくなる。このような観点から、樹脂組成物(C)におけるポリプロピレン系樹脂及びエチレン-プロピレンランダム共重合ゴムの合計の含有量は、樹脂組成物(C)の樹脂成分100質量部に対して、より好ましくは55~85質量部であり、さらに好ましくは60~80質量部であり、特に好ましくは60~70質量部である。
【0029】
<オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)>
オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、一般的には、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂をハードセグメントとし、EPR、EPDM等のポリオレフィン系ゴムをソフトセグメントとしたものである。TPOは、ブレンド型、動的架橋型、重合型のいずれも使用可能である。TPOは、ポリオレフィン系樹脂のマトリックス中にポリオレフィン系ゴムの微粒子が分散しているものが好ましい。
本発明の発泡体シートに使用されるTPOは、上述のポリオレフィン系樹脂及びポリオレフィン系ゴムのうちの少なくとも一方のポリオレフィン系化合物がプロピレン由来の構成単位を有する。樹脂(A)がこのようなTPOを含むことにより、発泡体シートにおける23℃の温度での層間強度を高くし、25%圧縮強度を所定の範囲に調整しやすくなる。本発明の発泡体シートに使用されるTPOでは、ポリオレフィン系樹脂及びポリオレフィン系ゴムの両方がプロピレン由来の構成単位を有することがより好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂はポリプロピレン系樹脂であることがより好ましい。
本発明の発泡体シートに使用されるTPOの市販品には、例えば、株式会社プライムポリマー製のオレフィン系熱可塑性エラストマー(製品名:プライムTPO、型番:E-2710、MFR:2.8g/10分)が挙げられる。
【0030】
発泡体シートにおける23℃の温度での層間強度を高くし、25%圧縮強度を所定の範囲に調整しやすくするという観点から、樹脂組成物(C)の樹脂成分におけるTPOの含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは5~45質量部であり、より好ましくは10~40質量部であり、さらに好ましくは15~35質量部であり、特に好ましくは25~35質量部である。
【0031】
樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂を含むと、発泡体シートにおける90℃の温度での加熱収縮を低くしやすくなる。また、樹脂(A)がエチレン-プロピレンランダム共重合ゴム及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)をさらに含むと、ポリプロピレン系樹脂及びエチレン-プロピレンランダム共重合ゴムの間の相溶性が改善されるとともに、23℃の温度での層間強度を高くし、25%圧縮強度を所定の範囲に調整しやすくなる。このような観点から、樹脂(A)は、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-プロピレンランダム共重合ゴム及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を含むことが好ましい。
【0032】
<ポリエチレン系樹脂(B)>
樹脂組成物(C)はポリエチレン系樹脂(B)をさらに含むことが好ましい。これにより、発泡体シートの柔軟性及び耐衝撃性がさらに良好になる。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂が挙げられるが、これらの中では直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)が好ましい。
【0033】
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、密度が0.910g/cm3以上0.950g/cm3未満のポリエチレンであり、好ましくは密度が0.910~0.940g/cm3のものである。発泡体は、密度が低い直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を含有することで、樹脂組成物を発泡体に加工する際の加工性や、発泡体を成形体に成形する際の成形性等が良好になりやすい。なお、上記樹脂の密度はJIS K7112に準拠して測定したものである。
【0034】
直鎖状低密度ポリエチレンは、通常、エチレンを主成分(全モノマーの80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上)とした、エチレンと少量のα-オレフィンの共重合体である。ここで、α-オレフィンとしては、炭素数3~12、好ましくは炭素数4~10のものが挙げられ、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げられる。なお、共重合体において、これらα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらのポリエチレン系樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
【0035】
発泡体シートの柔軟性及び耐衝撃性の観点から、樹脂組成物(C)におけるポリエチレン系樹脂(B)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは1~45質量部であり、より好ましくは3~25質量部であり、さらに好ましくは4~12質量部である。
【0036】
<その他の樹脂成分>
本発明の目的を阻害しない範囲であれば、樹脂組成物(C)は、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-プロピレンランダム共重合ゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリエチレン系樹脂以外の樹脂成分を含んでもよい。かかる樹脂成分としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アルキルアクリレ-ト共重合体、又はこれらに無水マレイン酸を共重合した変性共重合体等が挙げられる。
【0037】
発泡体シートの耐熱性及び機械的強度を向上させるとともに柔軟性、耐衝撃性及び成形性を確保するという観点から、樹脂組成物(C)におけるプロピレン由来の構成単位を有する樹脂(A)及びポリエチレン系樹脂(B)の含有量の合計は、好ましくは70~99質量%であり、より好ましくは80~98質量%である。
【0038】
<添加剤>
樹脂組成物(C)は、上記オレフィン系樹脂以外に添加剤として、通常、架橋助剤及び発泡剤を含有する。また、樹脂組成物(C)は、分解温度調整剤をさらに含んでもよい。さらに、樹脂組成物(C)は酸化防止剤を含有することが好ましい。
【0039】
架橋助剤
架橋助剤としては、多官能モノマーを使用することができる。例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能(メタ)アクリレート系化合物、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリレート系化合物、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。これらの中では、3官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましく、トリメチロールプロパントリメタクリレートがさらに好ましい。
架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて用いることができる。
架橋助剤を樹脂組成物(C)に添加することによって、少ない電離性放射線量で樹脂組成物(C)を架橋することが可能になる。そのため、電離性放射線の照射に伴う各樹脂分子の切断、劣化を抑制することができる。
架橋助剤の含有量は、樹脂組成物(C)を発泡する際に、架橋度の調整、制御の容易さの観点から、樹脂成分100質量部に対して0.2~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
【0040】
発泡剤
樹脂組成物(C)を発泡させる方法としては、化学的発泡法、物理的発泡法がある。化学的発泡法は、樹脂組成物(C)に添加した化合物の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法であり、物理的発泡法は、低沸点液体(発泡剤)を樹脂組成物(C)に含浸させた後、発泡剤を揮発させてセルを形成させる方法である。発泡法は特に限定されないが、均一な独立気泡発泡体シートを得る観点から、化学的発泡法が好ましい。
発泡剤としては、好ましくは熱分解型発泡剤が使用され、例えば分解温度が160~270℃程度の有機系又は無機系の化学発泡剤を用いることができる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
【0041】
無機系発泡剤としては、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物、ニトロソ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンがより好ましく、アゾジカルボンアミドが特に好ましい。
発泡剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱分解型発泡剤の添加量は、発泡体シートの気泡が破裂せずに適切に発泡させる観点から、樹脂成分100質量部に対して1~25質量部が好ましく、1.3~15質量部がより好ましく1.5~10質量部がさらに好ましい。
【0042】
分解温度調整剤
分解温度調整剤には、例えば、塩基性マグネシウム塩、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等が挙げられる。これらの分解温度調整剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの分解温度調整剤の中で、塩基性マグネシウム塩が好ましい。さらに、分解温度調整剤として好ましい塩基性マグネシウムは、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種のマグネシウム化合物である。樹脂組成物(C)は、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムのいずれか一方のみを含有してもよいし、両方を含有してもよい。しかし、樹脂組成物(C)は、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの両方を含有することが好ましい。樹脂組成物(C)に、分解温度発泡剤を配合することにより、熱分解型発泡剤の分解温度を調節することができ、これにより、発泡体シートの気泡径をさらに高い精度で調整することができる。
発泡剤、特にアゾジカルボンアミドが加熱により分解されると、その一部が昇華物になり、フォギングが発生する。しかし、樹脂組成物(C)が塩基性マグネシウムを含有することでそのような昇華物によるフォギングの発生が防止される。したがって、本発明においては、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを使用する場合には、樹脂組成物(C)は塩基性マグネシウムを含有することが好ましい。
【0043】
樹脂組成物(C)において分解温度調整剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.03~3.0質量部であり、より好ましくは0.04~2.0質量部であり、さらに好ましくは0.05~1.5質量部である。
【0044】
酸化防止剤
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中では、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用することがより好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
これらのフェノール系酸化防止剤の中で2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールが好ましく、これらの硫黄系酸化防止剤の中でジラウリルチオジプロピオネートが好ましい。
これらの酸化防止剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
また、樹脂組成物(C)は、必要に応じて、難燃剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、顔料等の上記以外の添加剤を含有してもよい。
【0045】
本発明の発泡体シートは耐熱性、柔軟性及び耐衝撃性が優れているので、電子機器への用途、特に車載電子機器への用途に適している。特にセンターインフォメーションディスプレイ(CID)やヘッドアップディスプレイ(HUD)といった車載画像表示装置への用途に適しており、曲面を有する車載画像表示装置への用途により適している。
【0046】
<発泡体シートの製造方法>
本発明の発泡体シートは、例えば、樹脂組成物(C)を溶融混練して所望形状に成形した後、電離性放射線を照射して樹脂組成物(C)を加熱発泡することにより製造することができる。
具体的には、以下の工程1~3を有する製造方法がより好ましい。
工程1:樹脂組成物(C)を構成する各成分を溶融混練した後、シート状の樹脂組成物(C)を得る工程
工程2:工程1で得られた樹脂組成物(C)に電離性放射線を照射して、架橋する工程
工程3:工程2で架橋した樹脂組成物(C)を、熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させて、発泡体シートを得る工程
【0047】
工程1では、樹脂組成物(C)を構成する各成分を混練装置に供給して、熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融混練し、その後、溶融混練された樹脂組成物(C)を、好ましくは溶融混練で使用した混練装置でシート状に成形する。
ここで使用される混練装置としては、例えば、射出成形機、押出機(単軸押出機、二軸押出機等)、バンバリーミキサー、ロール等の汎用混練装置等が挙げられるが、射出成形機や押出機が好ましく、射出成形機を用いれば、生産性よく製造することができる。
射出成形機又は押出機の内部の樹脂温度は、好ましくは120~220℃、より好ましくは140~200℃、さらに好ましくは150~195℃である。
【0048】
工程2では、シート状に成形された樹脂組成物(C)には電離性放射線が照射される。
電離性放射線としては、例えば、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中では、生産性及び照射を均一に行う観点から、電子線が好ましい。
電離性放射線の照射は、シート状に成形した樹脂組成物(C)の片面のみに照射してもよいし、両面に照射してもよい。
電離性放射線の加速電圧は、照射する発泡性樹脂組成物の厚さにもよるが、例えば、厚さが0.05~3mmの場合、400~1200kVであることが好ましく、500~1100kVであることがより好ましく、600~1000kVであることがより好ましい。
電離性放射線の照射線量は、照射する発泡性樹脂組成物の厚さ等を考慮し、表面荒れやひび割れ等生じることなく、所望の架橋度を得ることができる量であれがよいが、通常、0.1~10Mradが好ましく、0.2~5Mradがより好ましく、0.3~3Mradがより好ましい。
【0049】
工程3では、以上のように電離性放射線の照射により樹脂組成物(C)を架橋した後、樹脂組成物(C)を、発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させ、発泡体シートを得ることができる。なお、樹脂組成物(C)の発泡後、又は樹脂組成物(C)を発泡させつつ、MD方向又はCD方向の何れか一方又は双方に樹脂組成物(C)を延伸してもよい。
ここで、樹脂組成物(C)を加熱発泡させる温度は、発泡剤として使用される熱分解型発泡剤の分解温度によるが、通常140~300℃、好ましくは150~280℃、より好ましくは160~260℃である。
本発明の発泡体シートは、独立気泡構造であることが好ましいが、連続気泡を含む独立気泡構造であってもよい。
【0050】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、上記した本発明の発泡体シートを基材として用いた粘着テープであり、具体的には、本発明の発泡体シートと、本発明の発泡体シートの少なくとも一方の面に設けた粘着層とを備える。
本発明の粘着テープは、好ましくは発泡体シートの両面に粘着層が設けられている。すなわち、本発明の粘着テープは、好ましくは両面テープである。
また、本発明の粘着テープは、曲面を有する隙間であっても隙間を密閉することができるので、曲面を有する電子機器の外部から内部への埃や水分等の侵入を、より確実に防止するために使用される。したがって、本発明の粘着テープは、電子機器のシール材として好適に用いることができ、特に車載用電子機器のシール材として好適に用いることができ、曲面を有する車載用電子機器のシール材としてより好適に用いることができる。
【0051】
粘着層とは、少なくとも発泡体シート側の反対側の面に粘着性を有する層である。粘着層には、例えば、粘着剤単体からなる粘着剤層、基材の両面に粘着剤層を備える両面テープ等が挙げられる。粘着テープを薄くできるという観点から好ましい粘着層は粘着剤層である。
粘着テープを構成する粘着層の厚さは、5~200μmが好ましく、7~150μmがより好ましく、10~100μmがさらに好ましい。
【0052】
上記粘着層の粘着部分を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
粘着剤層を発泡体シート上に積層する方法としては、例えば、離形紙に塗布してある粘着剤を発泡体シートに対して転写する方法、発泡体シートの少なくとも一方の面にコーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法等が挙げられる。また、粘着剤層を発泡体シート上に積層する他の方法としては、例えば、発泡体シートの少なくとも一方の面にスプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、発泡体シートの一方の面に刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法等が挙げられる。一方、両面テープを発泡体シート上に積層する方法としては、例えば、両面テープを発泡体シートに貼る方法等が挙げられる。
【0053】
本発明の粘着テープは、耐熱性、柔軟性及び耐衝撃性に優れている発泡体シートを基材として用いるので、電子機器への用途、特に車載電子機器への用途に適している。特にセンターインフォメーションディスプレイ(CID)やヘッドアップディスプレイ(HUD)といった車載画像表示装置への用途に適している。さらに、被着面が曲面であっても、曲面に追従して粘着テープを接着できるので、本発明の粘着テープは、曲面を有する車載画像表示装置への用途により適している。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各物性の測定方法、及び発泡体シートの評価方法は以下のとおりである。
【0055】
(1)架橋度
発泡体シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の質量A(mg)を精秤した。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm
3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の質量B(mg)を精秤した。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
(2)発泡体シートの密度
発泡体シートの密度(見かけ密度)はJIS K7222に準拠して測定した。
(3)発泡体シートの厚さ
発泡体シートの厚さはダイヤルゲージを用いて計測した。
(4)平均気泡径
発泡体シートを50mm四方にカットし、液体窒素に1分間浸した後にMD及びTDそれぞれに沿って切断して、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、製品名VHX-900)を用いて200倍の拡大写真を撮影した。その撮影画像の発泡体シートにおいて、MD、TDそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてMD及びTDの気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、MD及びTDの気泡径の平均値(平均気泡径)を算出した。
(5)加熱収縮
JIS K6767に準拠して、発泡体シートの90℃でのMD及びTDの寸法変化を測定し、MDにおける90℃の加熱収縮率(%)及びTDにおける90℃の加熱収縮率(%)を算出した。
(6)25%圧縮強度
25%圧縮強度は、JIS K6767に準拠して測定した。
(7)23℃及び90℃の層間強度
図1に層間強度を評価するための試験装置の模式図を示す。発泡体シート11の25mm角範囲にプライマー(セメダイン株式会社製「PPXプライマー」)を塗布した後、塗布部分の中央に直径5mm分の接着剤12(セメダイン株式会社製「PPX」)を滴下した。その後直ちに、接着剤滴下部分に25mm角のアルミ製治具13を置き、発泡体シートと治具13とを圧着した。その後、治具13の大きさに沿って発泡体シートをカットした。カットした発泡体シートの治具13を接着していない面にプライマーを塗布し、塗布部分の中央に直径5mm分の接着剤12を滴下した。その後直ちに、接着剤滴下部分に10mm角のアルミ製治具14を置き、発泡体シートと治具14とを圧着した。治具14の周辺にはみ出した接着剤をふき取った後、治具14の大きさに沿って発泡体シートに切り込み15を入れた。これを室温で30分間放置することで接着剤を養生し、層間強度測定用サンプルとした。
続いて、恒温槽内で試験が行えるように恒温槽を設けた試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)に1kNのロードセルを設置した。そして、発泡体シートのシート面が引張方向に対して垂直になるように層間強度測定用サンプルを試験機に取り付けた。恒温槽の温度を23℃に設定した後、層間強度測定用サンプルの温度が23℃になるまで放置した。そして、治具の一方を速度100mm/分で垂直上向きに引っ張り、発泡体シートの1cm角の範囲のみを剥離させた。このときの最大荷重を測定し、1回目の測定結果とした。同様の操作を3回繰り返し、その平均値を23℃の層間強度とした。
また、恒温槽の設定温度を23℃から90℃に変更した以外は、23℃の層間強度と同様な方法で90℃の層間強度を測定した。
(8)曲げ弾性率
発泡体シートを幅25mm、長さ30mmにカットし、厚みが30mmとなる様にシートを重ね、その他の試験方法は(JIS 7171、7221-2)を参考にし、テンシロン(ORIENTEC社製、製品名:RTC-1310A)を用いて曲げ弾性率を測定した。
算出法としては、上記方法で測定した伸び量mmを横軸、荷重Nを縦軸としてプロットし、伸び量0.5mm~5mm範囲内のプロットの傾きが最大となる時の傾き値を曲げ弾性率とした。
(9)落球試験
以下の手順で落球試験を実施した。
(i)発泡体シートを横50mm×縦70mm×全辺の幅2mmになるように打ち抜き、両面に粘着剤層を形成して、額縁状の試料を作製した。そして、
図2(a)に示すように、額縁状の試料21を横70mm×縦95mmのSUS板(A)22に貼り付けた。なお、粘着剤層には、アクリル系粘着剤(積水化学工業株式会社製、型番:#5782)を用いた。
(ii)
図2(b)に示すように、SUS板(A)22に貼り付けた試料21を用いて、中央に横25mm×縦50mmの穴231を有する横120mm×縦120mmのSUS板(B)23に、SAS板(A)22がその穴を塞ぐように、SUS板(A)22を貼り付けた。
(iii)SUS板(A)22全体に5kgfの荷重をかけ、SUS板(A)22をSUS板(B)23に10秒間圧着した。その後、試料21を用いてSUS板(B)23に貼り付けたSUS板(A)22を23℃で24時間養生した。
(iv)
図3(a)に示すように、SUS板(B)23に対してSUS板(A)22が下側になるようにして、試料21を用いてSUS板(A)22を貼り付けたSUS(B)23を枠形状の台24の上に載せた。
(v)横100mm×縦100mmのSUS板の中央に直径20mm×高さ45mmのSUS製の円柱を垂設した治具を用意した。
図3(b)に示すように、板251に対して円柱252が下側になるようにし、治具25の円柱252の先端がSUS板(B)23の穴の中央に位置するようにして、SUS板(B)23の穴231から現れているSUS板(A)22の上に治具25を載せた。
(vi)
図3(b)に示すように、治具25の板251に対して高さ70cmの位置から、重さ285.5gの鉄球26を治具25の板251の中央の位置に向けて落下させた。そして、以下の基準で、試料21を評価した。
○:試料が破壊されなかった。
△:試料の一部で発泡体層間の破壊が見られた。
×:試料の全体で発泡体層間の破壊が見られた。
(10)90℃曲面追従性
発泡体シートに粘着剤層を持たせ、R(曲率半径)=0.095(m)を持つアクリル板に対して貼り付け、90℃で24h静置させる。その後、貼り合わせ部分を確認し、テープ浮きやシワの発生の有無によって曲面追従性を評価した。テープ浮き及びシワの発生がない場合は、「○」と評価し、テープ浮きのシワの発生の少なくとも一方が発生した場合は、「×」と評価したなお、粘着剤層には、アクリル系粘着剤(積水化学工業株式会社製、型番:#5782)を用いた。
【0056】
(実施例1~10及び比較例1~4の発泡体シートの作製)
<実施例1>
40質量部のランダムPP、20質量部のEPDM、35質量部のTPO、5質量部のLLDPE、3質量部の架橋助剤、3.5質量部の熱分解型発泡剤、1質量部の分解温度調整剤、及び0.5質量部の酸化防止剤、を単軸押出機に投入した。そして、樹脂温度180℃にて上述の原料を溶融混練して押し出し、厚さ0.36mmのシート状の樹脂組成物を得た。このシート状の樹脂組成物の両面に、電子線を照射することにより樹脂組成物を、40質量%の架橋度になるように架橋した。その後、架橋した樹脂組成物をMD及びTDに引き延ばしながら熱風オーブンにより250℃で5分間加熱し、その加熱により発泡させて、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである実施例1の発泡体シートを得た。
【0057】
<実施例2>
熱分解型発泡剤の配合量を3.5質量部から3.7質量部に変更し、電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から50質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである実施例2の発泡体シートを得た。
【0058】
<実施例3>
熱分解型発泡剤の配合量を3.5質量部から3.7質量部に変更し、架橋助剤の配合量を3質量部から4質量部に変更するとともに電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から50質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである実施例3の発泡体シートを得た。
【0059】
<実施例4>
熱分解型発泡剤の配合量を3.5質量部から1.6質量部に変更し、電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から50質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.5g/cm3であり、厚さが0.1mmである実施例4の発泡体シートを得た。
【0060】
<実施例5>
ランダムPPの配合量を40質量部から60質量部に変更し、TPOの配合量を35質量部から15質量部に変更し、熱分解型発泡剤の配合量を3.5質量部から7質量部に変更し、電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から50質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.075g/cm3であり、厚さが1.0mmである実施例5の発泡体シートを得た。
【0061】
<実施例6>
熱分解型発泡剤の配合量を3.5質量部から3.9質量部に変更し、電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から60質量%にした。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである実施例6の発泡体シートを得た。
【0062】
<実施例7>
ランダムPPの配合量を40質量部から60質量部に変更し、TPOの配合量を35質量部から15質量部に変更し、熱分解型発泡剤の配合量を3.5質量部から7.3質量部に変更し、電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から60質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.075g/cm3であり、厚さが1.0mmである実施例7の発泡体シートを得た。
【0063】
<実施例8>
熱分解型発泡剤の配合量を3.5質量部から4.2質量部に変更し、架橋助剤の含有量を3質量部から4質量部に変更するとともに電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から70質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである実施例8の発泡体シートを得た。
【0064】
<実施例9>
熱分解型発泡剤の配合量を3.5質量部から1.9質量部に変更し、電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から70質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.5g/cm3であり、厚さが0.1mmである実施例9の発泡体シートを得た。
【0065】
<実施例10>
電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から30質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである実施例10の発泡体シートを得た。
【0066】
<比較例1>
電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から20質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである比較例1の発泡体シートを得た。
【0067】
<比較例2>
架橋助剤の配合量を3質量部から1質量部に変更して樹脂組成物の架橋度を40質量%から20質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである比較例2の発泡体シートを得た。
【0068】
<比較例3>
ランダムPPの配合量を40質量部から80質量部に変更し、EPDMの配合量を20質量部から0質量部に変更し、TPOの配合量を35質量部から0質量部に変更し、LLDPEの配合量を5質量部から20質量部に変更した。さらに、熱分解型発泡剤の配合量を3.5質量部から3.7質量部に変更し、電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から50質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである比較例3の発泡体シートを得た。
【0069】
<比較例4>
ランダムPPの配合量を40質量部から0質量部に変更し、LLDPEの配合量を5質量部から45質量部に変更し、熱分解型発泡剤の配合量を3.5質量部から3.7質量部に変更し、架橋助剤の配合量を3質量部から0質量部に変更するとともに電子線の照射線量を変えて樹脂組成物の架橋度を40質量%から50質量%に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである比較例4の発泡体シートを得た。
【0070】
発泡体シートの物性及び評価結果を表1~3に示す。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
表1~3に示す樹脂成分及び添加剤の詳細は以下のとおりである。
ランダムPP:エチレン-プロピレンランダム共重合体、日本ポリプロ株式会社製、製品名:ノバテックFY6C、MFR:2.4g/10分、エチレン含有量:3質量%
EPDM:エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、JSR株式会社製、製品名:JSR EP51、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)=23、エチレン含有量:67質量%、ENB(エチリデンノルボルネン)含有量:5.8質量%
TPO:オレフィン系熱可塑性エラストマー、株式会社プライムポリマー製、製品名:プライムTPO、型番:E-2710、MFR:2.8g/10分、
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン、ダウケミカル社製、製品名:2036P、MFR:2.5g/10分
架橋助剤:トリメチロールプロパントリメタクリレート、東京化成工業株式会社製
熱分解型発泡剤:アゾジカルボンアミド
分解温度調整剤:酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム
酸化防止剤:2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ジラウリルチオジプロピオネート
【0075】
実施例1~10の発泡体シートでは、発泡体シートの90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率の少なくとも一方の収縮率が5%以下であり、23℃の温度での層間強度が0.80MPa以上であり、厚さが1.5mm以下であり、25%圧縮強度が800kPa以下であった。このため、落球試験の結果も90℃曲面追従性も良好であった。一方、比較例1及び比較例2の発泡体シートでは、発泡体シートの23℃の温度での層間強度が0.80MPa未満であったので、落球試験の結果が悪かった。また、比較例3の発泡体シートでは、25%圧縮強度が800kPaよりも大きかったため、90℃の温度の曲面追従性が悪かった。さらに、比較例4の発泡体シートでは、90℃の温度で1時間養生したときのMDの収縮率及びTDの収縮率の少なくとも一方の収縮率が5%よりも大きかったため、90℃の温度の曲面追従性の測定中、大きな熱収縮が起こり、このため90℃の温度の曲面追従性が悪かった。
【符号の説明】
【0076】
11 発泡体シート
12 接着剤
13,14 アルミ製治具
15 切り込み
21 額縁状の試料
22 SUS板(A)
23 SUS板(B)
24 枠形状の台
25 治具
26 鉄球
251 板
252 円柱