IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 水ing株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-排水処理方法及び排水処理装置 図1
  • 特許-排水処理方法及び排水処理装置 図2
  • 特許-排水処理方法及び排水処理装置 図3
  • 特許-排水処理方法及び排水処理装置 図4
  • 特許-排水処理方法及び排水処理装置 図5
  • 特許-排水処理方法及び排水処理装置 図6
  • 特許-排水処理方法及び排水処理装置 図7
  • 特許-排水処理方法及び排水処理装置 図8
  • 特許-排水処理方法及び排水処理装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】排水処理方法及び排水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20230101AFI20240418BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240418BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20240418BHJP
   C02F 11/147 20190101ALI20240418BHJP
【FI】
C02F3/12 S ZAB
C02F3/12 V
C02F3/12 N
C02F1/44 F
C02F1/44 C
B01D65/02 520
C02F11/147
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021004431
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022109088
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-05-29
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 惇太
(72)【発明者】
【氏名】葛 甬生
(72)【発明者】
【氏名】金子 秀人
(72)【発明者】
【氏名】唯木 嘉行
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-176710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
C02F 1/44
B01D 65/02
C02F 11/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜分離活性汚泥法を用いた排水処理方法において、膜分離活性汚泥槽内の膜ろ過原水の液相の有機物濃度及び膜ろ過水の有機物濃度を測定してその差分をモニタリング指標とし、前記モニタリング指標が増加したときに、前記膜分離活性汚泥槽へ供給する洗浄空気量の増加、ろ過継続時間の短縮、または前記膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の増加、のいずれか1以上の処理を行うように運転条件を調整することを含み、
前記モニタリング指標が第1の基準値を超える場合に、前記膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の増加の処理を行い、
前記モニタリング指標が第1の基準値よりも高い第2の基準値を超える場合に、前記膜分離活性汚泥槽へ供給する洗浄空気量の増加又は前記ろ過継続時間の短縮のいずれか1以上の処理を行うことを含む排水処理方法。
【請求項2】
前記有機物濃度として、COD、BOD、TOC、または、有機炭素検出型サイズ排除クロマトグラフィーで測定して分子量20000以上に分画される有機物濃度、のいずれかを測定することを含む請求項に記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記モニタリング指標が増加した場合に、前記膜ろ過原水の少なくとも一部に対して、オゾン分解処理、促進酸化処理、または、活性炭吸着処理のいずれか1以上の処理を行うことを含む請求項1又は2に記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記膜ろ過原水が、有機物を含む汚泥に高分子凝集剤を添加して脱水処理した後に発生する脱水分離液である請求項1~のいずれか1項に記載の排水処理方法。
【請求項5】
前記モニタリング指標が増加した場合に、前記膜分離活性汚泥槽に供給される前の脱水処理で前記膜ろ過原水に添加される高分子凝集剤の添加率を低減する処理を行うことを含む請求項1~のいずれか1項に記載の排水処理方法。
【請求項6】
活性汚泥の存在下で膜ろ過原水を膜分離処理して膜ろ過水を得る膜分離活性汚泥槽と、
前記膜分離活性汚泥槽を曝気する曝気装置と、
前記膜分離活性汚泥槽から前記膜ろ過水を吸引する吸引ポンプと、
前記膜分離活性汚泥槽から汚泥を引き抜く排泥ポンプと、
前記膜分離活性汚泥槽内の前記膜ろ過原水の液相の有機物濃度と前記膜ろ過水の有機物濃度との差分値をモニタリング指標とし、前記モニタリング指標が増加したときに、前記膜分離活性汚泥槽へ供給する洗浄空気量の増加、ろ過継続時間の短縮、または前記膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の増加、のいずれか1以上の処理を行うように、前記曝気装置、前記吸引ポンプ及び前記排泥ポンプの運転条件を制御する制御装置と
を備え
前記制御装置が、前記モニタリング指標が第1の基準値を超える場合に、前記膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の増加の処理を行い、前記モニタリング指標が第1の基準値よりも高い第2の基準値を超える場合に、前記膜分離活性汚泥槽へ供給する洗浄空気量の増加又は前記ろ過継続時間の短縮のいずれか1以上の処理を行うことを特徴とする排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理方法及び排水処理装置に関し、特に、膜分離活性汚泥法を利用した廃水処理方法及び排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のし尿・浄化槽汚泥処理においては、夾雑物を除去した汚泥を活性汚泥法等により直接生物処理し、有機物及び窒素を除去する手法が主流であり、膜分離活性汚泥法もその処理方式の1つとして採用されてきた。膜分離活性汚泥法は、固液分離を膜分離により行うために、生物処理槽内のMLSS(活性汚泥浮遊物:Mixed Liquor Suspended Solids)濃度を高め、敷地面積を削減することができるという利点を有している。
【0003】
また、近年では、し尿・浄化槽汚泥をあらかじめ脱水し、脱水ケーキを固形物燃料等として再利用し、かつ生物処理対象を脱水分離液のみとすることで、生物処理の負荷を低減させる手法が主流になりつつある。更に、近年増加している汚泥や生ごみ等のバイオマスを嫌気性消化し、メタンガスを回収する設備においても、嫌気性消化汚泥を脱水後に生物処理する必要がある。このようなケースでも、生物処理に膜分離活性汚泥法を採用し、敷地面積を削減することが多い。
【0004】
膜分離活性汚泥法を利用した技術として、例えば、特許第5868217号公報(特許文献1)には、被処理水を生物反応槽内で活性汚泥により生物処理し、生物反応槽の槽内混合液を膜分離装置で固液分離して分離膜を透過した膜ろ過水を槽外に取り出す膜分離活性汚泥処理方法において、COD(化学的酸素要求量)、BOD(生物学的酸素要求量)、TOC(全酸素要求量)、全糖濃度、タンパク質濃度、ウロン酸濃度、E260(波長260nmでの紫外線吸光度)の何れかに基づいて有機物濃度を求め、槽内混合液中の液相の有機物濃度と膜ろ過水の有機物濃度との濃度差、または槽内混合液中の液相の有機物濃度と膜ろ過水の有機物濃度との濃度比率を調整指標として、調整指標が増加したときに生物反応槽内の活性汚泥量を増加させ、調整指標が減少したときに生物反応槽内の活性汚泥量を減少させて、分離膜のファウリングを抑制することを特徴とする膜分離活性汚泥処理方法が記載されている。
【0005】
特許第4046661号公報(特許文献2)には、生物処理槽において有機性汚水を活性汚泥処理し、生物処理槽内に浸漬設置した第1分離手段をなす浸漬型膜分離装置で活性汚泥混合液を固液分離し、活性汚泥処理により生物処理槽内に蓄積される生物由来ポリマーを含むCODを第2分離手段によって適時に活性汚泥混合液から固液分離して、生物処理槽内の活性汚泥量を高濃度に維持しつつ、活性汚泥混合液中の生物由来ポリマー量を低濃度に維持するのに際して、浸漬型膜分離装置を透過した膜ろ液中のCODを測定し、浸漬型膜分離装置のろ過膜の細孔より大きい所定口径の細孔を有するろ過手段で生物処理槽内の活性汚泥混合液をろ過したろ過手段ろ液中のCODを測定し、ろ過手段ろ液中のCODから膜ろ液中のCODを減算したCOD差値が所定値以上であるときに、第2分離手段によって活性汚泥混合液から生物由来ポリマーを含むCODを分離することを特徴とする汚水の処理方法が記載されている。
【0006】
特許第5822264号公報(特許文献3)には、活性汚泥中で被処理液に散気する散気手段が浸漬配置された曝気槽と、活性汚泥中の被処理液から透過液を得る膜分離装置が浸漬配置された膜分離槽を備えた膜分離活性汚泥処理装置の運転方法であって、活性汚泥中の被処理液の上澄み液中の有機物濃度とBOD/SS負荷の値に基づいて、有機物濃度が所定値以上であるときに、BOD/SS負荷の値が所定値以上である場合には散気手段の単位時間当たりの散気量を増加させ、BOD/SS負荷の値が所定値未満である場合には散気手段の単位時間当たりの散気量を減少させるように、散気手段の単位時間当たりの散気量を調整する膜分離活性汚泥処理装置の運転方法が記載されている。
【0007】
特開2014-193452号公報(特許文献4)には、活性汚泥を収容した被処理水収容槽に有機性汚水を流入させ、生物処理し、被処理水収容槽又はその後段に設置した膜分離装置によって固液分離を行って処理水を得る有機性汚水の処理方法であって、活性汚泥中の細胞外ATP量または活性汚泥中の細胞外ATP量の増加速度が所定の基準値に達した際、膜分離装置に供給する散気量、膜分離装置の洗浄条件、被処理水収容槽に凝集剤を注入する凝集剤注入条件、膜分離装置のろ過流束、及び、被処理水収容槽からの活性汚泥の引き抜き量、から選ばれる少なくとも1つの条件を制御する有機性汚水の処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5868217号公報
【文献】特許第4046661号公報
【文献】特許第5822264号公報
【文献】特開2014-193452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
し尿・浄化槽汚泥、嫌気性消化汚泥等の有機性汚泥の脱水処理の際には、無機凝集剤及び高分子凝集剤(ポリマー)を汚泥に添加することで、汚泥を凝集させてから脱水処理を行う。この際、高分子凝集剤の添加率は、凝集フロックの状態等により決定されるが、汚泥の性状の変化により過不足が生じると、脱水分離液中の浮遊物質(SS)濃度の増加及びろ液中の残存ポリマーの増加を招き、生物処理原水中に含まれる高分子凝集剤の濃度が増加する。
【0010】
高分子凝集剤は難分解性であることが多いため、微生物による分解がされにくく、その分子量は100万以上である。このような高分子凝集剤は、通常、膜分離活性汚泥法で使用される分離膜で捕捉されるが、高分子凝集剤の槽内濃度が高くなるにつれて分離膜上にゲル層と呼ばれる層が形成されてファウリングが進行するおそれがある。そのため、ファウリングを適切に抑制するための対策が必要となる。
【0011】
引用文献1に記載された発明では、槽内混合液中の有機物濃度と膜ろ過水の有機物濃度の濃度差を適用し、濃度差が増大したときに、生物反応槽内の活性汚泥量を増大させる処理を行うことを提案している。しかしながら、このような処理方法では、生物反応槽内で増大した活性汚泥又はその細胞外物質と高分子凝集剤とが生物反応槽内で更に結合し、ゲル層を分離膜上に更に堆積させる恐れがあり、その結果、ファウリングを適切に抑制できなくなる場合がある。
【0012】
特許文献2に記載されるような第2分離手段を用いたファウリング抑制手法では、第1分離手段だけでなく、第2分離手段の膜閉塞の問題も考慮する必要があるため、メンテナンス処理が煩雑になる。特許文献3に記載されるような活性汚泥中の被処理液の上澄み液中の有機物濃度とBOD/SS負荷の値に基づく曝気風量の調整手法、或いは、特許文献4に記載されるような細胞外ATP量に基づくファウリング制御方法によっても、他の従来技術と同様に、分離膜の閉塞の兆候を迅速に検出し、ファウリングを抑制して長期間の安定的な排水処理を行う観点からはまだ十分な処理であるとはいえない。
【0013】
上記課題を鑑み、本発明は、分離膜の閉塞の兆候を迅速に検出でき、ファウリングを適切に抑制しながら安定して効率良く排水処理を行うことが可能な排水処理方法及び排水処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、膜分離活性汚泥装置の膜ろ過原水の液相の有機物濃度と膜ろ過で得られる膜ろ過水(膜透過水)の有機物濃度との差分をモニタリング指標とし、このモニタリング指標に基づいて、特定の処理を行うことが有効であることを見出した。
【0015】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施の形態は一側面において、膜分離活性汚泥法を用いた排水処理方法において、膜分離活性汚泥槽内の膜ろ過原水の液相の有機物濃度及び膜ろ過水の有機物濃度を測定してその差分をモニタリング指標とし、モニタリング指標が増加したときに、膜分離活性汚泥槽へ供給する洗浄空気量の増加、ろ過継続時間の短縮、または膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の増加、のいずれか1以上の処理を行うように運転条件を調整することを含む排水処理方法である。
【0016】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は一実施態様において、モニタリング指標が第1の基準値を超える場合に、膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の増加の処理を行い、モニタリング指標が第1の基準値よりも高い第2の基準値を超える場合に、膜分離活性汚泥槽へ供給する洗浄空気量の増加又はろ過継続時間の短縮のいずれか1以上の処理を行う。
【0017】
本発明の実施の形態は別の一側面において、膜分離活性汚泥法を用いた排水処理方法において、膜分離活性汚泥槽内の膜ろ過原水の液相の有機物濃度及び膜ろ過水の有機物濃度を測定し、その差分をモニタリング指標とし、膜分離活性汚泥槽の汚泥滞留時間が6日以上でモニタリング指標が増加したときに、膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の増加を行うように運転条件を調整し、膜分離活性汚泥槽の汚泥滞留時間が6日未満でモニタリング指標が増加したときに、膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の低減を行うように運転条件を調整することを含む排水処理方法である。
【0018】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は一実施態様において、膜分離活性汚泥槽の汚泥滞留時間が6日以上でモニタリング指標が増加したときに、膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の増加を行う処理と、膜分離活性汚泥槽へ供給する洗浄空気量の増加及びろ過継続時間の短縮のいずれか1以上を行う処理とを組み合わせて行うように運転条件を調整し、
膜分離活性汚泥槽の汚泥滞留時間が6日未満でモニタリング指標が増加したときに、膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の低減を行う処理と、膜分離活性汚泥槽へ供給する洗浄空気量の増加及びろ過継続時間の短縮のいずれか1以上を行う処理とを組み合わせて行うように運転条件を調整する。
【0019】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は一実施態様において、有機物濃度が、COD、BOD、TOC、または、有機炭素検出型サイズ排除クロマトグラフィーで測定した結果、分子量20000以上に分画される有機物濃度のいずれかを含む。
【0020】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は一実施態様において、モニタリング指標が増加した場合に、膜ろ過原水の少なくとも一部に対して、オゾン分解処理、促進酸化処理、または、活性炭吸着処理のいずれか1以上の処理を行うことを更に含む。
【0021】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は一実施態様において、膜ろ過原水が、有機物を含む汚泥に高分子凝集剤を添加して脱水処理した後に発生する脱水分離液である。
【0022】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は更に別の一実施態様において、モニタリング指標が増加した場合に、膜分離活性汚泥槽に供給される前の脱水処理で膜ろ過原水に添加される高分子凝集剤の添加率を低減する。
【0023】
本発明の実施の形態に係る排水処理装置は一側面において、活性汚泥の存在下で膜ろ過原水を膜分離処理して膜ろ過水を得る膜分離活性汚泥槽と、膜分離活性汚泥槽を曝気する曝気装置と、膜分離活性汚泥槽から膜ろ過水を吸引する吸引ポンプと、膜分離活性汚泥槽から汚泥を引き抜く排泥ポンプと、膜分離活性汚泥槽内の膜ろ過原水の液相の有機物濃度と膜ろ過水の有機物濃度との差分値をモニタリング指標とし、モニタリング指標が増加したときに、膜分離活性汚泥槽へ供給する洗浄空気量の増加、ろ過継続時間の短縮、または膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の増加、のいずれか1以上の処理を行うように、曝気装置、吸引ポンプ及び排泥ポンプの運転条件を制御する制御装置とを備える排水処理装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、分離膜の閉塞の兆候を迅速に検出でき、ファウリングを適切に抑制しながら安定して効率良く排水処理を行うことが可能な排水処理方法及び排水処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る排水処理装置の例を表す概略図である。
図2】汚泥滞留時間(SRT)とモニタリング指標(ΔS-CODMn)の関係の一例を表すグラフである。
図3】SRTと膜間差圧の関係の一例を表すグラフである。
図4】SRTと5Cろ紙ろ過量の関係の一例を表すグラフである。
図5】BOD-SS負荷とΔS-CODMnの関係の一例を表すグラフである。
図6】BOD-SS負荷と膜間差圧の関係の一例を表すグラフである。
図7】BOD-SS負荷と5Cろ紙ろ過量の関係の一例を表すグラフである。
図8】ΔS-CODMnと膜間差圧の関係の一例を表すグラフである。
図9】ΔS-CODMnと5Cろ紙ろ過量の関係の一例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る排水処理装置及び排水処理方法について説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0027】
本発明の実施の形態に係る排水処理装置は、図1に示すように、膜分離活性汚泥法を用いて排水を処理し、処理汚泥及び膜ろ過水を得る膜分離活性汚泥槽1と、膜分離活性汚泥槽1を曝気する曝気装置2と、膜分離活性汚泥槽1から膜ろ過水を吸引する吸引ポンプ3と、膜分離活性汚泥槽1から汚泥を引き抜く排泥ポンプ4と、膜分離活性汚泥槽1の運転条件を制御する制御装置8とを備える。
【0028】
処理対象としては、有機物を含有する有機性排水であれば特に限定されない。特に、し尿・浄化槽汚泥、下水初沈汚泥、下水余剰汚泥、生ごみ、バイオマスの嫌気性消化汚泥のいずれか1つ以上を含む有機性汚泥の脱水分離液を、膜分離活性汚泥槽1の膜ろ過原水として使用することができる。脱水分離液中には、高分子凝集剤が含まれているため、膜分離活性汚泥槽1内で長期間処理するにつれて、脱水分離液中に含まれる高分子凝集剤が凝集してゲル層を形成し、膜分離活性汚泥槽1内の分離膜10に付着し、ファウリングを起こしやすくなる。本発明の実施の形態に係る排水処理装置を用いて生物処理を行うことで、ファウリングを抑制しながら長期間安定して処理を行うことができる。
【0029】
脱水分離液は、浮遊物質(SS)、溶解性COD(CODCr、CODMn)、BOD、TOC、窒素、リン、カルシウム(Ca)等を含有し得る。以下に限定されるものではないが、脱水分離液は、典型的には、SSを100~3000mg/L、より典型的には500~2000mg/Lを含む。脱水分離液は、CODCrを500~10000mg/L、より典型的には1000~5000mg/L含み、CODMnを100~5000mg/L、より典型的には500~3000mg/L含む。脱水分離液は、BODを500~5000mg/L、より典型的には1000~3000mg/L含み、TOCを250~4000mg/L、より典型的には500~2000mg/L含む。脱水分離液は、全窒素(T-N)を10~500mg/L、より典型的には50~300mg/L含み、全リン(T-P)を5~200mg/L、より典型的には10~100mg/L含む。脱水分離液は、有機体窒素(T-Nから無機態窒素(NOx-N、NH4-N)を差し引いて求めた濃度)を5~300mg/L、より典型的には50~200mg-N/L含む。
【0030】
特に、脱水分離液中にSSが500mg/L以上含まれていると、SSに吸着された高分子凝集剤が膜分離活性汚泥槽1に流入する影響が大きくなり、ファウリングが進行しやすくなる。また、脱水分離液中に有機体窒素が50mg/L以上含まれると、タンパク質の分解過程で高分子有機物を生成し、ゲル層を形成しやすくなる。
【0031】
また、脱水分離液中のBOD/CODCrが0.7以下となると、難分解性、遅分解性の有機物の割合が増加し、膜分離活性汚泥槽内で高分子凝集剤と複合しゲル層を形成しやすくなる。更に、脱水処理に供する汚泥の種類として、下水の最初沈殿池汚泥、し尿汚泥、生ごみ、等生物処理を経ない汚泥を含む場合は汚泥性状が変動しやすい。このような汚泥を前脱水することにより、ポリマーの添加率が過剰、もしくは不足し、高分子凝集剤がろ液側に流出しやすくなる。
【0032】
膜ろ過原水として脱水分離液を使用する場合は、膜分離活性汚泥槽1に供給する前の有機性汚泥に対して以下の前処理操作が行われる。前処理操作としては、例えば、有機性汚泥に対し、高分子凝集剤及び必要に応じて無機凝集剤を添加し、撹拌を行って凝集処理を行う。有機性汚泥の表面は一般的に負に帯電しているため、高分子凝集剤はカチオン性ポリマーを用いることが好適である。高分子凝集剤の分子量としては100~1500万、好ましくは100~1000万、より好ましくは100~750万のものが好適に利用できる。高分子凝集剤の添加率は、典型的には0.2~4w/w%対TS、より好ましくは0.5~3w/w%である。高分子凝集剤の選定及び添加率は、凝集試験またはラボスケールの脱水試験等により決定されることが望ましい。
【0033】
無機凝集剤としては、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等が使用できる。中でも、薬品費用及び腐食防止の観点から、ポリ硫酸第二鉄の使用が望ましい。無機凝集剤の添加率についても、凝集試験、ラボスケールの脱水試験等により決定されることが望ましい。
【0034】
無機凝集剤の添加方法としては、汚泥の濃縮前に無機凝集剤を添加する前添加方式、汚泥の濃縮後に無機凝集剤を添加する後添加方式、または汚泥の濃縮前後にそれぞれ無機凝集剤を添加する両添加方式等がある。中でも、脱水性の向上及び後段の生物処理に必要なリンを分離液側に供給するという観点から、後添加方式もしくは両添加方式とすることが望ましい。
【0035】
上記の凝集処理によって得られる凝集汚泥は、脱水処理前に濃縮処理することで、脱水処理時の処理速度の向上及び脱水汚泥の含水率の低下を図ることができる。濃縮処理としては機械濃縮を利用することができ、濃縮機としては、回転式、重力式、及び加圧式のいずれの型式でもよい。
【0036】
濃縮処理で得られた濃縮汚泥を、更に脱水処理することにより、脱水汚泥と脱水分離液が得られる。脱水機には、遠心脱水機、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機、スクリュープレス型脱水機、ロータリープレス型脱水機、電気浸透式脱水機などを用いることができる。
【0037】
特に、スクリュープレス脱水機は、低動力で低含水率を達成することができる点で好ましい。スクリュープレス脱水機は、円筒形外筒の内部に、円筒形外筒と同心のスクリュー軸及びスクリュー羽根を備え、混合汚泥供給側の濃縮部と、円筒形外筒とスクリュー軸との間の空間が混合汚泥の進行方向に向かって次第に狭くなる脱水ケーキ排出側の圧搾部と、が形成されており、円筒形外筒に分離液排出用の複数の開孔を備える。
【0038】
中でも軸摺動型スクリュープレス脱水機は、脱水汚泥出口方向と並行にスクリュー軸が移動し、脱水汚泥を強制排出する機構を有する。スクリュープレス脱水機を用いることで、脱水ケーキの含水率を大幅に低下させることができる。また、独立したスクリーンと脱水機とを組み合わせた脱水装置だけでなく、スクリーン機能を奏する濃縮部を前段に含み、後段に圧搾部を含む、スクリーンと脱水機とが一体化されている脱水装置は、スクリーンを別途設ける必要がなく、装置構成が簡易になるため好ましい。
【0039】
膜分離活性汚泥槽1内では、膜分離活性汚泥槽1内に流入する膜ろ過原水に対して、活性汚泥を用いた微生物反応を利用した有機物除去、及び硝化-脱窒による窒素除去が行われ、膜分離により活性汚泥と処理水とを分離する膜分離活性汚泥法を利用した生物処理が行われる。
【0040】
膜分離活性汚泥槽1内における生物処理としては、有機物や窒素が除去できるものであればよく、例えば、循環式硝化-脱窒法、ステップ流入式硝化-脱窒法等が採用できる。活性汚泥の汚泥濃度(MLSS)は、典型的には4,000~18,000mg/Lとすることができ、より好ましくは6,000~15,000mg/Lとし、処理の状況に合わせて調整することが望ましい。例えば、膜分離活性汚泥槽1内のMLSSを測定するための汚泥濃度計7が膜分離活性汚泥槽1内に配置されていてもよい。
【0041】
膜ろ過水の窒素除去処理に際し、硝化時にアルカリ度が不足する場合は、薬剤添加手段(不図示)によって、水酸化ナトリウム溶液(NaOH)等のアルカリ剤を添加し、脱窒時に有機物が不足する場合は、メタノール(CH3OH)等の有機物を添加してもよい。
【0042】
膜分離活性汚泥槽1内には分離膜10が収容されている。分離膜10の膜の種類としては、MF(精密ろ過:microfiltration)膜、UF(限外ろ過:ultrafiltration)膜のいずれを用いても良い。特に、孔径0.2μm以上、もしくは分画分子量100万以上の膜を使用することで、ファウリングの抑制を抑えつつ長期的に安定した運転が可能となる。
【0043】
膜の材質は、有機膜としては、PSF(ポリスルホン)、PE(ポリエチレン)、CA(酢酸セルロース)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PP(ポリプロピレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)等を用いることができ、無機膜としてはセラミックを用いた膜を用いることができる。ろ過方式は全量ろ過とクロスフローろ過のどちらでも良いが、ファウリングの抑制の観点ではクロスフローろ過を採用することが望ましい。膜モジュールの形式については特に制限はなく、中空糸型、平膜型、スパイラル型、管型、モノリス型等が採用できる。
【0044】
曝気装置2は、膜分離活性汚泥槽1内に収容された散気装置21及び散気装置21に空気等の気体を供給するブロワ22を備えることができる。曝気装置2は、分離膜10の膜表面に気泡が当たるように配置される。典型的には、曝気装置2は、分離膜10の下部又は底部に配置され、膜分離活性汚泥槽1内に気体を送り込んで、膜表面に堆積する堆積物(ゲル層)を剥離し、膜洗浄を行うように構成されている。膜洗浄時の曝気空気量は、以下に限定されるものではないが、典型的には6~30L/m2/分であり、より好ましくは9~25L/m2/分である。
【0045】
曝気装置2は、連続曝気方式としてもよいし、曝気期間と次の曝気期間の間に所定の休止期間を設ける間欠曝気方式を採用してもよい。間欠曝気が行われる場合は、膜分離活性汚泥槽1から膜ろ過水を吸引する吸引ポンプ3の駆動が、OFF(吸引停止)時間となっている休止期間に、曝気装置2を用いた曝気による膜洗浄が行われるように、運転条件が設定されることで、曝気装置2による膜洗浄効果をより有効に得ることができる。
【0046】
吸引ポンプ3による膜ろ過水の吸引は、分離膜10のファウリングの抑制の観点から、間欠タイマを設けて間欠吸引とすることが望ましい。膜ろ過中は、分離膜10の膜表面上に有機物が吸着され、ファウリングが進行しやすくなる。そのため、特にファウリングの進行が予想される場合は、フラックスを上げて可能な限り吸引時間の比率を下げることが望ましい。具体的には、ON時間とOFF時間の各1回行う操作を1サイクルとした場合、1サイクル当たりの間欠タイマのON、OFF時間の比を59:1~4:1とすることが望ましく、29:1~9:1とすることがより望ましい。
【0047】
排泥ポンプ4は、膜分離活性汚泥槽1の下部に接続された引き抜き配管41に接続されており、膜分離活性汚泥槽1で発生した処理汚泥を余剰汚泥として引き抜く。排泥ポンプ4による引抜汚泥量の調整は、制御装置8からの運転条件の入力に応じて適宜行うことができる。
【0048】
図1に示すように、膜分離活性汚泥槽1内に収容される膜ろ過原水の有機物濃度を測定するための有機物濃度測定装置5と、吸引ポンプ3を介して膜分離活性汚泥槽1内から膜分離活性汚泥槽1内の外部へ吸引される膜ろ過水の有機物濃度を測定するための有機物濃度測定装置6とが設けられていても良い。
【0049】
有機物濃度測定装置5、6としては、COD計、BOD計、TOC計、有機炭素検出型サイズ排除クロマトグラフィー(LC-OCD)等の有機物測定器を利用することができる。有機物濃度測定装置5、6を使用せずに、膜ろ過原水及び膜ろ過水を手動又は自動でサンプリングし、図1の排水処理装置以外の別設備において、膜ろ過原水及び膜ろ過水の有機物濃度を測定することも勿論可能である。
【0050】
膜ろ過原水及び膜ろ過水の有機物濃度の測定結果は制御装置8へ入力される。膜分離活性汚泥槽1に、膜ろ過原水の温度を測定するための温度計及び分離膜10の膜間差圧を計測するための圧力計等を含む計測装置等が更に設けられていてもよく、各計測装置からの計測結果が、制御装置8に入力されるように構成されていてもよい。
【0051】
分離膜10の膜閉塞のメカニズムは、膜ろ過原水中に含まれる高分子凝集剤等の膜閉塞原因物質が生物処理に流入し、活性汚泥又はその細胞外物質と結合し、高分子かつ難分解の複合体を形成し、膜表面にゲル層を形成するというものであると推定される。更に、一旦、このゲル層が形成されると、ゲル層の存在により更に膜表面に膜閉塞原因物質が捕捉されやすくなり、急激にファウリングが進行する。したがって、ファウリングの発生を防止するためには、膜閉塞の原因となる有機物の挙動をモニタリングすることが重要となる。
【0052】
本発明の実施の形態に係る排水処理装置及び排水処理方法では、膜閉塞原因物質の指標として、膜ろ過原水の液相の有機物濃度と、膜ろ過水の有機物濃度を測定したときの差分を採用する。この差分が、分離膜10で捕捉されている有機物濃度、すなわち分離膜10の膜表面に堆積するゲル層を形成する有機物濃度に大きく影響を及ぼすためである。なお、ファウリングの指標としては、他に所定の孔径(例えば5C)のろ紙の所定時間(例えば5分間)でのろ過量を測定することもできるが、この手法では水温、ろ紙の折り方、等の測定条件や測定時のMLSS等の運転条件が影響を及ぼす場合がある。上述のように有機物濃度差分を測定した方が、誤差を小さくすることができ、定量性の面で優れている。
【0053】
膜分離活性汚泥槽1の膜ろ過原水は、通常、高濃度の活性汚泥である。そのため、モニタリング指標として、膜ろ過原水の液相の有機物濃度を測定する場合には、膜分離活性汚泥槽1から採取した膜ろ過原水をろ過し、膜ろ過原水中の活性汚泥を除去してから分析を行う。膜ろ過原水の採取に際し、膜分離活性汚泥槽1の上流部分では、未分解の原水中の易分解性有機物や脱窒の際に添加したメタノールが残留し、有機物濃度の差分の測定に影響を及ぼす場合がある。よって、採取場所については、膜分離活性汚泥槽1の下流の膜分離に供する直前の汚泥を採取することが望ましい。ろ過する際は、孔径は膜分離活性汚泥槽1内で使用している膜の孔径と同等またはそれ以上のものを使用することが望ましく、典型的には、孔径0.45~1μm程度である。
【0054】
モニタリング指標として測定する有機物濃度としては、上述の通り、COD、BOD、TOC等が採用できるが、ゲル層の形成原因となる有機物をより適切に測定し、かつ、難分解性のポリマーを適切測定するための指標としては、CODMn、CODCr、TOCの使用がより望ましい。
【0055】
以下の例に限定されるものではないが、例えば、モニタリング指標としてCODMnの差分値(ΔCODMn)を利用する場合、ΔCODMnの基準を70mg/L以下、更には60mg/L以下、更には40mg/L以下とし、測定値が予め設定した基準を超える場合に、膜分離活性汚泥槽1の運転条件の変更を行うことにより、膜分離活性汚泥槽1の膜閉塞を長期間抑制することができる。
【0056】
膜分離活性汚泥槽1内において、窒素除去のための循環式硝化脱窒を行う場合は、硝化の状況や脱窒の状況により、膜ろ過水中に易分解性の有機物が残存することがある。易分解性有機物が残存すると分離膜10の膜閉塞原因物質の定量的な評価が難しくなる。このような場合は、測定する有機物濃度の指標として難分解性有機物を測定することが好ましい。ここで、難分解性有機物とは、測定対象の排水を一定時間(例えば1~8時間)曝気し、残存した有機物と定義する。このような有機物濃度を測定することで分離膜10の閉塞の兆候のより迅速な検出が可能となる。
【0057】
膜閉塞の原因となる有機物を測定する別の手法として、分子量分画と有機物濃度の分布を組み合わせた分析装置である有機炭素検出型サイズ排除クロマトグラフィー:LC-OCD(Liquid Chromatography-Organic Carbon Detector)で分析する手法がある。膜閉塞の原因となる有機物は、LC-OCDで分子量20,000以上に分画される物質であることがわかっており、膜ろ過原水の液相と膜ろ過水の濃度を測定することで、対象を絞って定量することが可能になる。
【0058】
LC-OCDは、サイズ排除カラムを備える液体クロマトグラフ有機炭素計であり、試料中の溶存有機物を、サイズ排除カラムを備える液体クロマトグラフによって、下記(1)~(5)のモル質量画分に分画した後、各画分を有機炭素計で計測し有機体炭素として定量する。
(1)Biopolymers:バイオポリマー、モル質量20,000g/mol以上の画分
(2)Humic Substances:フミン質、モル質量500~20,000g/molの画分
(3)Building Blocks:ビルディングブロック(基礎的要素)、モル質量300~500g/molの画分
(4)LMW Acids:低分子有機酸、モル質量350g/mol以下の有機酸の画分
(5)LMW Neutrals:低分子中性物質、モル質量350g/mol以下の有機酸以外の画分
【0059】
LC-OCDを用いた分析は例えば以下の手順で行うことができる。まず、採取したサンプルを孔径0.45μmPTFEメンブランフィターでろ過し、TOCが1~2mg/Lとなるように超純水(ミリQ水)で希釈して分析試料を調製し、LC-OCD装置のサイズ排除カラムに通水する。モル質量20,000g/mol以上、モル質量500~20,000g/mol、モル質量300~500g/mol、モル質量350g/mol以下の4つの画分に分画し、各画分の有機炭素濃度を測定する。移動相としてリン酸緩衝液(pH6.58)を用いる。LC-OCD分析装置は、例えば、DOC-Labor社のLC-OCD Model 8を用いることができる。
【0060】
サイズ排除カラムによる分画後の各画分の分析試料は、薄膜反応器(グランツェル薄膜反応器 DOC-Labor社)内で酸性化液(リン酸、pH1.5)と窒素ガスパージにより無機炭素を除去された後、紫外線ランプ(DOCOXランプ、DOC-Lavor社)により酸化され、CO2としてNDIR(非分散形赤外線吸収法)検出器で検出される。得られた分析結果を専用ソフトウェア(ChromCALC,DOC-Labor社)にて解析する。具体的には、クロマトグラムの形状をもとにピークを分割し、各ピークの面積から濃度を計算することにより、LC-OCDで分子量20,000以上に分画される有機物を定量することができる。
【0061】
-運転改善方法-
本実施形態では、モニタリング指標が増加したときに、ファウリング低減のための運転改善方法として以下の3つの対策、即ち、(1)膜閉塞原因物質の流入量の低減、(2)膜に付着するゲル層の剥離促進、及び(3)膜分離活性汚泥槽1内の膜閉塞物質の分解又は排出の少なくとも一以上の処理を実施する。モニタリング指標が適正範囲内に収まるように、下記の改善対策が適切になされた場合には処理条件を通常条件に戻してもよいことは勿論である。
【0062】
(1)膜閉塞原因物質の流入量の低減
膜ろ過原水中の膜閉塞原因物質、例えば、脱水分離液中の高分子凝集剤が過剰の場合、脱水分離液に含まれる高分子凝集剤の濃度が高くなり、活性汚泥やその細胞外物質と結合し、複合体を形成して膜閉塞が起こりやすくなる。そのため、モニタリング指標が増加に応じた場合に、膜分離活性汚泥槽1内へ流入する前、例えば前処理操作において、膜ろ過原水に添加される高分子凝集剤等の添加剤の最適添加率を確認し、安定した運転を維持する上で可能であれば、添加剤の添加率を低減させるような処理を行うことで、膜閉塞原因物質の流入量の低減を図るように、運転条件を調整する。
【0063】
例えば、膜ろ過原水として脱水分離液を用いる場合、モニタリング指標の測定値が予め設定された基準を超えた場合に、脱水処理のための高分子凝集剤の添加率を低減させるように運転条件を調整する。高分子凝集剤の最適添加率は、凝集試験、もしくは脱水分離液のコロイド荷電の分析等により確認することができる。他の手法としては、モニタリング指標が増加に応じた場合に、高分子凝集剤の種類の再選定、無機凝集剤の添加率の調整、生ごみ等の受け入れを行っている場合は受け入れ量の低減という手法を取ることができる。
【0064】
(2)膜に付着するゲル層の剥離促進
膜分離活性汚泥槽1内に収容された分離膜10の膜に付着するゲル層の破壊を促進する手法の一つとしては、間欠タイマを用いて、吸引ポンプ3による膜ろ過水の吸引のタイミングを調整することで、分離膜10のろ過継続時間を調整する方法が考えられる。モニタリング指標が増加した場合は、1サイクルあたりの間欠タイマのON、OFF時間の比が59:1~4:1、望ましくは29:1~9:1となる適正範囲内において、ろ過継続時間(ON時間)を短縮してろ過休止時間(OFF時間)が長くなるように、ON、OFF時間の比を調整し、OFF時間中に膜面に気泡を当てる時間を長くすることで、ゲル層の剥離を促進させることができる。
【0065】
膜分離活性汚泥槽1内に収容された分離膜10の膜に付着するゲル層の破壊を促進する別の手法としては、曝気装置2による膜分離活性汚泥槽1内の曝気時間の調整を行う手法がある。例えば、モニタリング指標が増加したときに、曝気空気量6~30L/m2/分であり、より好ましくは9~25L/m2/分の範囲において、膜分離活性汚泥槽1へ供給する洗浄空気量を通常運転時よりも5~50%程度増加させることで、分離膜10の膜表面に付着するゲル層の剥離を促進させることができる。
【0066】
(3)膜分離活性汚泥槽1内の膜閉塞物質の分解又は排出
分離膜10の膜に付着したゲル層を剥離させても、ゲル層の原因物質は難分解で遅分解であり、分子量が大きく、膜面で捕捉されやすい性質を有する。そのため、捕捉されやすい物質が槽内にある限り、再び膜面に付着し、ファウリングが進行しやすい状態が継続されることがあるため、膜分離活性汚泥槽1内の膜閉塞物質の分解又は排出を促進するための対策として以下の手法が好適に用いられる。
【0067】
-SRT制御-
ゲル層の原因物質は、膜で捕捉され汚泥とともに槽内に滞留する可能性が高い。そのため、SRTが長いほど原因物質が濃縮され、ファウリングが進行しやすくなる。このため、硝化、脱窒等の処理が悪化しない範囲でSRTを下げ、ゲル層の原因物質を槽外に排出することが望ましい。
【0068】
なお、ファウリングの要因の1つとして、特許文献1に記載されるように、活性汚泥の細胞外物質の存在が知られており、ファウリングを防止するために、SRTを長くし、汚泥負荷を下げる対策がとられることがある。しかしながら、脱水分離液のように原水中に難分解性のゲル層の原因物質が含まれ、SRTが既に適正な範囲である場合、SRTを長くすることは逆にファウリング原因物質の濃縮を促進することにつながる可能性がある。このため、本実施形態では適正なSRTを保ったうえで、あえてSRTを下げることで、ゲル層の原因物質の濃縮を防止する手法を採用することが好ましい。
【0069】
SRTとしては、典型的には35日以下、より典型的には30日以下となるように引抜汚泥量を調整することにより、ファウリングを適切に抑制しながら長期間安定して効率良く排水処理を行うことが可能となる。一方、SRTを短かくしすぎても、分離膜10の膜間差圧が高くなり、安定した処理が行えない場合がある。典型的には、SRTは6日以上となるように制御することが好ましく、10日以上とすることが好ましい。これにより、膜分離活性汚泥槽1内の分離膜10のファウリングを適切に抑制しながら安定的に処理できる。
【0070】
-物理化学処理-
モニタリング指標が増加した場合に、膜ろ過原水の少なくとも一部に対して、オゾン分解処理、促進酸化処理、または、活性炭吸着処理のいずれか1以上の処理を行うことにより、ゲル層の原因物質を分解、除去する。
【0071】
-モニタリング指標の測定値に基づく膜分離活性汚泥槽1内の活性汚泥量の調整-
SRTを適切に調整しても、膜ろ過原水の変動等により、膜分離活性汚泥槽1内の状態が一時的にゲル層の形成を促進させる状態となり得る場合がある。本実施形態では、モニタリング指標が増加したときに、膜分離活性汚泥槽1からの引抜汚泥量を増加させて膜分離活性汚泥槽1内の活性汚泥量を低減させるように、排泥ポンプ4を調節するための運転条件の制御を行うことで、分離膜10に付着するゲル層の原因物質を槽外に排出させることが好ましい。
【0072】
以下に限定されるものではないが、分離膜10の膜間差圧が予め設定された許容範囲内に維持され、膜分離活性汚泥法による生物処理を安定的に行うことができる第1の汚泥滞留時間(典型的にはSRTが6日~35日間)においてモニタリング指標が増加した場合には、膜分離活性汚泥槽1からの引抜汚泥量の増加を行う。分離膜10の膜間差圧が上記許容範囲を超える第2の汚泥滞留時間(典型的には6日未満となる場合)においてモニタリング指標が増加した場合は、膜分離活性汚泥槽1からの引抜汚泥量の低減を行うことが好ましい。なお、SRTが35日を超える場合にモニタリング指標が増加した場合には、引抜汚泥量を低減させるとSRTが長くなり処理に影響を及ぼす可能性がある。なお、SRTが35日を超える場合にモニタリング指標が増加した場合には、膜分離活性汚泥槽1からの引抜汚泥量の増加を行う。
【0073】
制御装置8は、曝気装置2のブロワ22、排泥ポンプ4、吸引ポンプ3、有機物濃度測定装置5、6、汚泥濃度計7に電気的に接続されており、モニタリング指標が増加したときに、膜分離活性汚泥槽1へ供給する洗浄空気量の増加、ろ過継続時間の短縮、または膜分離活性汚泥槽1からの引抜汚泥量の増加、のいずれか1以上の処理を行うように、曝気装置2、吸引ポンプ3及び排泥ポンプ4の運転条件を制御する。
【0074】
図1に示す排水処理装置を用いて本発明の実施の形態に係る排水処理方法を実施することができる。即ち、実施の形態に係る排水処理方法は、膜分離活性汚泥槽1内の膜ろ過原水の液相の有機物濃度及び膜ろ過水の有機物濃度を測定してその差分をモニタリング指標とし、モニタリング指標が増加したときに、膜分離活性汚泥槽1へ供給する洗浄空気量の増加、ろ過継続時間の短縮、または膜分離活性汚泥槽1からの引抜汚泥量の増加、のいずれか1以上の処理を行うように運転条件を調整することを含む。
【0075】
このように、本発明の実施の形態に係る排水処理装置及び排水処理方法によれば、膜分離活性汚泥槽1内の膜ろ過原水の液相の有機物濃度及び膜ろ過水の有機物濃度を測定してその差分をモニタリング指標とし、モニタリング指標が増加した場合に、膜閉塞原因物質の流入量の低減、膜に付着するゲル層の剥離促進、及び膜分離活性汚泥槽1内の膜閉塞物質の分解又は排出の少なくとも一以上の処理を実施することにより、分離膜の閉塞の兆候を迅速に検出でき、ファウリングを適切に抑制しながら安定して効率良く排水処理を行うことができる。
【0076】
(変形例)
膜分離活性汚泥槽1内の分離膜10の閉塞を抑制する方法として、モニタリング指標が増加したときに、膜分離活性汚泥槽1へ供給する洗浄空気量の増加、ろ過継続時間の短縮、または膜分離活性汚泥槽からの引抜汚泥量の増加の少なくともいずれかを行うタイミングまたは処理時間の少なくともいずれかを各処理毎に適正化することが好ましい。
【0077】
例えば、膜分離活性汚泥槽1へ供給する洗浄空気量の増加及びろ過継続時間の短縮処理は、分離膜10に付着したゲル層を物理的に除去するための処理であり、ファウリングを抑制するための処置としては、比較的短時間で効果が出やすい。一方、膜分離活性汚泥槽1からの引抜汚泥量を増加させるための排泥ポンプ4の制御は、分離膜10の膜表面上でゲル層を形成しやすい物質濃度を高めないように膜分離活性汚泥槽1内の濃度を調整するための処置であり、ファウリングを抑制するための処置としては、比較的長時間継続させることで効果を得ることができる。よって、分離膜10の汚染度合及び膜分離活性汚泥槽1内の汚泥及び流入高分子凝集剤の濃度に応じて、ファウリングを抑制するための短期的な処置と長期的な処置とを組み合わせることが好ましい。
【0078】
洗浄空気量の増加は、短期的にファウリングを抑制できる反面、ブロワ22の電力消費量の増加によるランニングコストの増加、活性汚泥の解体、等の課題がある。また、ろ過継続時間の増加は、短期的にファウリングを抑制できる反面、時間当たりのろ過量には限界がある。また、SRTの制御は、汚泥が入れ替わるまでには数日~数十日の期間が必要であり、効果が出るまでに時間がかかる。よって、本実施形態では、短期的に効果が得られる洗浄空気量の増加及びろ過継続時間の短縮処理と、長期的に効果が得られる引抜汚泥量の調整処理を組み合わせる。例えば、ファウリングの発生初期は、短期的な対策と長期的な対策を同時に行い、汚泥の入れ替わりが進行してモニタリング指標が低下した後は、短期的な処置を処置前に戻すことで、ファウリングを即時に抑制しつつ、長期間に渡ってランニングコストを抑え、かつ安定的な運転化が可能になる。
【0079】
具体的な例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モニタリング指標に対して、第1の基準値と第1の基準値よりも大きい第2の基準値を予め設定しておき、モニタリング指標が増大して第1の基準値を超えたときには、膜分離活性汚泥槽1からの引抜汚泥量の増加を行う処理を開始し、更に第2の基準値を超えたときには、膜分離活性汚泥槽1へ供給する洗浄空気量の増加及びろ過継続時間の短縮のいずれか1以上を行う第1の処理を開始するように、運転条件を調整することができる。
【0080】
具体的には、膜分離活性汚泥槽1内の分離膜10の膜間差圧が基準範囲内となり、安定的な生物処理が行われる第1の汚泥滞留時間(典型的には6~35日間)において、モニタリング指標が増加したときに、膜分離活性汚泥槽1へ供給する洗浄空気量の増加及びろ過継続時間の短縮のいずれか1以上を行う第1の処理と、膜分離活性汚泥槽1からの引抜汚泥量の増加を行う第2の処理との少なくともいずれかを行うように運転条件を調整することができる。
【0081】
また、分離膜10の膜間差圧が上記基準範囲を超える第2の汚泥滞留時間(典型的には6日未満)においてモニタリング指標が増加した場合には、膜分離活性汚泥槽1へ供給する洗浄空気量の増加及びろ過継続時間の短縮のいずれか1以上を行う第1の処理と、膜分離活性汚泥槽1からの引抜汚泥量の低減を行う第3の処理との少なくともいずれかを行うように運転条件を調整することができる。なお、SRTが35日を超える場合にモニタリング指標が増加した場合には、膜分離活性汚泥槽1へ供給する洗浄空気量の増加及びろ過継続時間の短縮のいずれか1以上を行う第1の処理と、膜分離活性汚泥槽1からの引抜汚泥量の増加を行う第2の処理との少なくともいずれかを行うように運転条件を調整することができる。
【0082】
これにより、膜分離活性汚泥槽1内での生物処理をより安定的に進めることができ、基準値を満たす処理水を安定して継続的に得ながら、膜ろ過原水の急激な性状変動が生じた場合においても、分離膜10の閉塞の兆候を迅速に検出し、ファウリングを適切に抑制しながら長期間安定して効率良く排水処理を行うことが可能となる。
【0083】
上記対策を行い、モニタリング指標の減少が確認された場合は、膜分離活性汚泥槽1へ供給する洗浄空気量の増加及びろ過継続時間の短縮のいずれか1以上を行う第1の処理を、対策前の状態に段階的に戻すことで、ランニングコストを低減しつつ、処理の安定化が可能になる。
【実施例
【0084】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0085】
(試験1)SRT制御
脱窒槽と硝化槽(膜分離槽)とを備える膜分離活性汚泥槽内に供給する膜ろ過原水として、し尿・浄化槽汚泥の脱水分離液を用い、脱水分離液のMLSSを3,000~20,000mg/Lに変化させ、SRT、硝化槽のT-N-SS負荷(以下「T-N-SS負荷」という)及び全槽BOD-SS負荷(以下「BOD-SS負荷」という)の変化による膜ろ過性能を検討した処理試験条件と測定結果を表1に示す。なお、BOD-SS負荷は脱窒槽及び硝化槽の合計のBOD-SS負荷を表す。
【0086】
【表1】
【0087】
試験1では、孔径0.4μmの有機平膜を用いた。ろ過フラックスを0.4m/dで一定とし、膜間差圧の変化、有機物濃度の差分値(ΔS-CODMn)及び5Cろ紙ろ過量で膜に対する汚染度を評価した。5Cろ紙ろ過量は、150mmφの5Cろ紙を用い、50ml汚泥混合液を5分間にろ過できるろ液量を測定した結果を示す。ΔS-CODMnは膜分離槽混合液中の溶解性CODMn(S-CODMn)と膜分離水のCODMnの差を示す。このΔS-CODMnが高いほど膜表面の汚染度が高く、ろ過しにくいことを示す。Δ膜間差圧、ΔS-CODMn及び5Cろ紙ろ過量はいずれも連続処理3ヵ月後の測定値である。
【0088】
図2~4は、試験1で得られたSRTと膜汚染度を示す指標となるΔS-CODMn、膜間差圧、5Cろ紙ろ過量の関係を示す。SRTは10~30dの場合、ΔS-CODMnが22~40mg/Lと比較的に安定し、膜汚染が少ないと判断された。一方、SRTが6dと短い場合、ΔS-CODMnが82mg/Lと高く、膜汚染が多いと判断された。また、SRTが40dと長い場合も、ΔS-CODMnが90mg/Lと高く、膜汚染の多いことが示された。
【0089】
図3に示すSRTと膜間差圧の関係から、膜間差圧を安定処理の目安となる25KPa以下、好ましくは20KPa以下とするためにはSRTを6~35d、更には10~30dとするのが妥当と推測される。図4に示すSRTと5Cろ紙ろ過量の関係から、良好なろ過性能の目安とされる5Cろ紙ろ過量8ml以上、好ましくは10ml以上に維持するためには、SRTを6~35d、更にはSRTを10~30dとするのが好ましいと判断される。
【0090】
図5~7は試験で得られた反応槽全体のBOD-SS負荷とΔS-CODMn、膜間差圧、5Cろ紙ろ過量の関係を示す。BOD-SS負荷からみると、膜汚染を抑制するためには、BOD-SS負荷を0.05~0.2kg/kg/dとするのが妥当と考えられる。図8はΔS-CODMnと膜間差圧の関係、図9はΔS-CODMnと5Cろ紙ろ過量の関係を示す。ΔS-CODMnと膜間差圧が良好な相関が見られた。膜間差圧を安定処理の目安である20KPa以下とするためには、ΔS-CODMnを40mg/L以下にて運転管理するのが好ましい。ΔS-CODMnと5Cろ紙ろ過量も同様に良好な相関が見られた。5Cろ紙ろ過量を良好なろ過性能目安である10ml以上とするためにはΔS-CODMnを約70mg/L以下にて運転管理するのが好ましい。
【0091】
以上の結果より、本発明の一実施態様によれば、膜汚染を抑制し、安定したろ過性能を維持するためには、ΔS-CODMnを少なくとも70mg/L以下、好ましくは40mg/L以下となるように運転条件を管理し、適切なSRTやBOD-SSの調整を行うことが好ましいことが分かった。
【0092】
(試験2)適正SRT条件、適正吸引時間条件下の曝気風量検討
試験1と同様の設備で、膜ろ過原水としてし尿・浄化槽汚泥の脱水分離液を用い、脱水分離液のMLSSを3,000~20,000mg/Lに変化させ、洗浄空気量及びろ過継続時間(吸引タイマ)の変化による膜ろ過性能を検討した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
SRT18d、吸引9分と吸引停止1分の繰り返し条件下、洗浄空気量7~18L/m2/分では、膜間差圧は17~23Kpaと低値を維持し、5Cろ紙ろ過量も15~21mLと多く良好な状態であった(No.11~13)。洗浄空気量を4L/m2/分に絞ると、膜間差圧は26Kpaに上昇し、5Cろ紙ろ過量も9.2mLと少なく膜閉塞の兆候がみられた(No.14)。
【0095】
SRT18d、洗浄空気量18L/m2/分の条件下、吸引20分~40分ごとに1分間吸引停止することで、膜間差圧は24~32Kpaと低値を維持し、5Cろ紙ろ過量も16~20mLと多く良好な状態であった(No.15、16)。しかしながら、吸引60分ごとに1分間吸引停止した場合、膜間差圧は31Kpaに上昇し、5Cろ紙ろ過量も8.4mLと少なく膜閉塞の兆候がみられた(No.17)。
【0096】
(試験3)モニタリング指標に基づく制御
以下の3条件で連続運転を行い、膜間差圧が30kPa以上となるまでの日数を調べた。
(1)比較例1:通常運転、モニタリング指標に基づく制御なし
(洗浄空気量7L/m2/分、吸引タイマOn:Off=12:1、SRT18日)
(2)実施例1:モニタリング指標に基づく制御(短期的処置のみ)
(ΔS-CODMn40mg/L以上となった場合に、通常運転から洗浄空気量を9L/m2/分、吸引タイマOn:Off=9:1へ変更する制御を行い、ΔS-CODMn30mg/L以下となった場合に通常運転に戻す制御を行った)
(3)実施例2:モニタリング指標に基づく制御(短期的処置と長期的処置の組み合わせ)
ΔS-CODMn40mg/L以上となった場合に、通常運転から洗浄空気量を9L/m2/分、吸引タイマOn:Off=9:1、排泥ポンプを操作してSRTを14日に変更、ΔS-CODMn30mg/L以下となった場合に通常運転に戻す制御を行い、S-CODMn30mg/L以下となった場合に洗浄空気量を7L/m2/分、吸引タイマOn:Off=12:1、SRT14日とし、S-CODMn20m以下で通常運転の条件に戻す制御を行った。
【0097】
【表3】
【0098】
実施例1の短期的処置のみを行う場合では234日、実施例2の短期的処置と長期的処置の組み合わせでは381日と、制御をおこなわない比較例1に比べてより長期間安定的に運転できることが確認された。
【符号の説明】
【0099】
1…膜分離活性汚泥槽
2…曝気装置
3…吸引ポンプ
4…排泥ポンプ
5、6…有機物濃度測定装置
7…汚泥濃度計
8…制御装置
10…分離膜
21…散気装置
22…ブロワ
41…引き抜き配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9