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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/514 20060101AFI20240418BHJP
   H01R 31/06 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01R13/514
H01R31/06 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021042734
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142531
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】楊 竣凱
(72)【発明者】
【氏名】會澤 宏太
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-60657(JP,A)
【文献】特開2019-102228(JP,A)
【文献】登録実用新案第3143222(JP,U)
【文献】特開2020-107423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/514
H01R 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手接続体との接続方向に延びる複数の端子を配列保持する板状のブレードがハウジングで保持されて形成された接続ユニットが、ブレードの厚み方向を連結方向として複数連結された電気コネクタにおいて、
ハウジングは、ブレードの厚み方向で対向する2つの側壁と、コネクタ幅方向であるブレードの板幅方向でブレードの範囲外に位置する2つの端壁とで形成された周壁を有し、周壁内にブレードの挿入のためのブレード受入部が形成されており、
ブレードは、ハウジングのブレード受入部に挿入保持されており、
複数の接続ユニットは、ブレードの厚み方向で両端に位置する端部接続ユニットと、両端の端部接続ユニット間に位置する中間接続ユニットとを有し、
中間接続ユニットは、相手接続体の一部と係合する係合溝が、ブレードの厚み方向で貫通し相手接続体に向け開口してハウジングの端壁と側壁との間に形成され、
端部接続ユニットは、ブレードの厚み方向で少なくとも外側に位置する外方側壁と端壁との間に上記中間接続ユニットの係合溝の深さ以上で上記相手接続体に向け開口された溝が形成されていないことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
端部接続ユニットは、少なくとも外方側壁が中間接続ユニットの側壁よりも厚いこととする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
端部接続ユニットは、外方側壁がブレードの厚み方向で内側に位置する内方側壁よりも厚く、かつ、上記連結方向での上記外方側壁の側に貫通孔もしくは凹部が形成されていることとする請求項1または請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
端部接続ユニットは、端壁の外面に切欠部が形成され、切欠部は、上記接続方向での少なくとも一端側で、該接続方向とブレードの厚み方向で開放されていることとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の端子を配列保持するブレードがハウジングにより保持され、ブレードが相手接続体と接続される電気コネクタが特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている電気コネクタは、相手接続体としての相手コネクタとの接続方向に延びる複数の端子を配列保持するブレードがハウジングにより保持されて1つの接続ユニットを形成し、同一形態の複数の接続ユニットをブレードの厚み方向に配列そして連結することで形成されている。ハウジングは、ブレードの厚み方向で対向する2つの側壁と、ブレードの板幅方向でブレードの範囲外に位置する2つの端壁とで形成された周壁を有し、該周壁内に形成されたブレードの挿入のための受入溝でブレードを挿入保持している。
【0003】
一方、相手コネクタも、上記電気コネクタと同様に、複数のユニット(相手ユニット)が連繋部材により連結されて形成されている。連繋部材は複数の相手ユニットの端部(ブレードの幅方向における端部)同士を結合する金属板製である。
【0004】
相手コネクタが接続される上記電気コネクタは、全て接続ユニットのハウジングにおける両方の側壁に、相手コネクタの連繋部材の一部を受け入れるためのスリット状の係合溝が相手コネクタの方に向け開口して形成されている。かかる係合溝は、側壁と端壁との境界をなす位置に形成されている。
【0005】
特許文献1では、全ての接続ユニットは同じ形態で作られている。したがって、配列された複数の接続ユニットのうち、接続ユニットの連結方向(ブレードの厚み方向と同じ方向)での両端に位置する接続ユニット(端部接続ユニット)においても、両方の側壁、すなわち上記連結方向で外側に位置する外方側壁及び内側に位置する内方側壁の両方に係合溝が形成されている。しかし、特許文献1では、電気コネクタと相手コネクタとの嵌合状態にて、相手コネクタの連繋部材は、上記連結方向で電気コネクタの端部接続ユニットの外方側壁に対応する位置までは及んでおらず、したがって、電気コネクタにおける端部接続ユニットの外方側壁に形成された係合溝に連繋部材が進入することがない。この端部接続ユニットの外方側壁には、連結されるべき接続ユニットが接面していない、すなわち、不在だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-102229
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気コネクタにおける全ての接続ユニットのハウジングは、樹脂をモールド成形して作られており、接続ユニットは側壁同士が接面した状態で複数連結される関係上、電気コネクタをコンパクトにするために、側壁は比較的肉薄に形成されることが多い。したがって、側壁は端壁に比べ長いこともあり強度が低下しやすい。
【0008】
特許文献1では、かかる側壁と端壁との境界位置に、相手コネクタの連繋部材の一部を受け入れる係合溝が形成されているので、側壁は上記境界位置での強度が低下している。したがって、端部接続ユニットは、連結方向で外側に位置し自由状態にある外方側壁に外力を受けると、この外方側壁を支持する接続ユニットが不在であるため、変形したりあるいは損傷したりしてしまう虞れがある。
【0009】
例えば、電気コネクタと相手コネクタとの嵌合状態では、電気コネクタの接続ユニットの受入部に相手コネクタのユニットの一部が嵌入され、その結果、接続ユニットの2つの側壁は相手ユニットに押し広げられて互いに離れる方向へ向けた外力を受ける。隣接する接続ユニット同士で接面し合う側壁には、同じ外力が、隣接する接続ユニットからの反力として、上記連結方向で互いに逆向きに作用することになるので、これらの外力が反力と相殺される結果、側壁が撓み変形することはない。しかし、複数の接続ユニットのうち上記連結方向で両端に位置する端部接続ユニットにおいては、端部接続ユニットの2つの側壁のうち上記連結方向で外側に位置する外方側壁は他の接続ユニットが接面しておらず何ら支持されていないため、相手ユニットからの力を受けて外側に向け撓み変形し、損傷する虞れがある。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑み、連結方向で端部に位置する接続ユニットの外側の外方側壁に強度の低下をもたらすことのない電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電気コネクタは、相手接続体との接続方向に延びる複数の端子を配列保持する板状のブレードがハウジングで保持されて形成された接続ユニットが、ブレードの厚み方向を連結方向として複数連結されている。
【0012】
かかる電気コネクタにおいて、本発明では、ハウジングは、ブレードの厚み方向で対向する2つの側壁と、コネクタ幅方向であるブレードの板幅方向でブレードの範囲外に位置する2つの端壁とで形成された周壁を有し、周壁内にブレードの挿入のためのブレード受入部が形成されており、ブレードは、ハウジングのブレード受入部に挿入保持されており、複数の接続ユニットは、ブレードの厚み方向で両端に位置する端部接続ユニットと、両端の端部接続ユニット間に位置する中間接続ユニットとを有し、中間接続ユニットは、相手接続体の一部と係合する係合溝が、ブレードの厚み方向で貫通し相手接続体に向け開口してハウジングの端壁と側壁との間に形成され、端部接続ユニットは、ブレードの厚み方向で少なくとも外側に位置する外方側壁と端壁との間に上記中間接続ユニットの係合溝の深さ以上で上記相手接続体に向け開口された溝が形成されていないことを特徴としている。
【0013】
このような構成の本発明によると、ブレードの厚み方向である連結方向で、中間接続ユニットの側壁と端壁の間には相手コネクタの一部との係合のための係合溝が形成されているが、端部接続ユニットの少なくとも外方側壁には中間接続ユニットの係合溝の深さ以上で相手接続体に向け開口された溝が形成されていない。したがって、端部接続ユニットの外方側壁には強度の低下がなく、端部接続ユニットの内方側壁や中間接続ユニットの側壁に比し高い強度が確保される。したがって、電気コネクタと相手コネクタとの嵌合状態において、端部接続ユニットの2つの側壁が相手ユニットに押し広げられて互いに離れる方向へ向けた外力を受けたとき、端部接続ユニットの外方側壁は、接続ユニットに接面することなく何ら支持されていなくても、それ自体が強度を有しているので、撓み変形ひいては損傷しにくい。
【0014】
本発明において、端部接続ユニットは、少なくとも外方側壁が中間接続ユニットの側壁よりも厚いことが好ましい。
【0015】
このように、端部接続ユニットの外方側壁を中間接続ユニットの側壁より厚くすることで、端部接続ユニットの外方側壁の強度がさらに向上し、外方側壁の撓み変形ひいては損傷を良好に防止できる。
【0016】
本発明において、端部接続ユニットは、外方側壁がブレードの厚み方向で内側に位置する内方側壁よりも厚く、かつ、上記連結方向での上記外方側壁の側に貫通孔もしくは凹部が形成されていることが好ましい。
【0017】
中間接続ユニット及び端部接続ユニットのいずれの接続ユニットにおいても、側壁が端壁より長いので、成形金型には、通常、端壁側から溶融樹脂材料が注入されることとなり、その結果、溶融樹脂材料は、一方の端壁位置から両方の側壁部分へ分流し他方の端壁位置に至る。その際、端部接続ユニットにおいて、2つの側壁の壁厚が異なっていると、それぞれの側壁を流れる溶融樹脂材料は他方の端壁位置へ同時に達しなくなる。そこで、厚い外方側壁側に、貫通孔もしくは凹部を設けて、両方の側壁部分での溶融プラスチックに対する流動抵抗、換言すると、流動性を同じにすることで、両方の側壁に分流した溶融樹脂材料は同時に他方の端壁位置へ達する。
【0018】
本発明において、端部接続ユニットは、端壁の外面に切欠部が形成され、切欠部は、上記接続方向での少なくとも一端側で、該接続方向とブレードの厚み方向で開放されていることが好ましい。
【0019】
複数の接続ユニットを配列して連結するとき、正確な配列位置をくずさないで連結するために、複数の接続ユニットあるいは接続ユニットの部品(ここでは、説明の便宜上「接続ユニット」と総称する)を治具内に配列した状態で配置することによって支持することがあるが、その際、端部接続ユニットを正規位置、すなわち連結方向で複数の中間接続ユニットの両端側の位置に確実に配置する必要がある。本発明では、中間接続ユニットを誤った位置、すなわち治具内における連結方向での端部位置に配置しようとしても、治具の内側隅部に設けられた突部に中間接続ユニットが衝突して干渉し、治具内に配置できない。したがって、誤った位置への配置であることをすぐに認識できる。一方、端部接続ユニットを正規位置、すなわち治具における端部位置に配置しようとした場合には、端部接続ユニットに形成された切欠部によって治具の隅部の突部との衝突が回避され、端部接続ユニットを難なく配置できる。また、切欠部が、上記連結方向で非対称な形状をなしている場合には、端部接続ユニットを連結方向で逆向きに位置した状態で治具内の上記正規位置に配置しようとしたときも同様である。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、以上のように、複数の接続ユニットがブレードの厚み方向で連結される電気コネクタにおいて、複数の接続ユニットは、ブレードの厚み方向で両端に位置する端部接続ユニットと、両端の端部接続ユニット間に位置する中間接続ユニットとを有し、中間接続ユニットは、相手接続体の一部と係合する係合溝が、ブレードの厚み方向で貫通し相手接続体に向け開口してハウジングの端壁と側壁との間に形成され、これに対し、端部接続ユニットは、ブレードの厚み方向で少なくとも外側に位置する外方側壁と端壁との間に中間接続ユニットの係合溝の深さ以上で相手接続体に向け開口された溝が形成されていないこととしたので、係合溝が形成されていてこの係合溝の存在により強度が低下している中間接続ユニットに比し、高い強度が確保される。したがって、電気コネクタと相手コネクタとの嵌合状態において、端部接続ユニットの2つの側壁が相手ユニットに押し広げられて互いに離れる方向へ向けた外力を受けたとき、端部接続ユニットの外方側壁は、接続ユニットに接面することなく何ら支持されていなくても、それ自体が強度を有してるので、撓み変形ひいては損傷しにくい。また、外方側壁は、相手接続体の一部との係合に関与しないので、係合溝がないことによる不具合も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る電気コネクタおよびこれに対して上方そして下方から接続される二つの相手コネクタの斜視図であり、嵌合前の状態を示している。
図2図1の電気コネクタの各部材を分離した状態で示した斜視図である。
図3図1の電気コネクタの中間接続ユニットを示し、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
図4図1の電気コネクタの端部接続ユニットを示し、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
図5図1の電気コネクタのブレードを単体で示し、(A)は斜視図、(B)は、コネクタ幅方向に見た側面図である。
図6図1の電気コネクタの接続ユニットについての断面図であり、(A)は中間接続ユニット、(B)は端部接続ユニットを示す。
図7】接続ユニットの配列のために用いられる治具を示し、(A)は端部接続ユニットが正規位置に配されている場合、(B)は中間接続ユニットが誤って端部接続ユニットの位置に配されようとした場合を示す。
図8】接続ユニットの配列のために用いられる治具を示し、(A)は中間接続ユニットが正規位置に配されている場合、(B)は端部接続ユニットが誤って中間接続ユニットの位置に配された場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面にもとづき、本発明の一実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る電気コネクタである中継電気コネクタを相手接続体としての相手コネクタとともに示した斜視図であり、コネクタ同士の接続前の状態で示している。また、図2は、図1の中継電気コネクタの各部材を分離した状態で示した斜視図である。本実施形態に係る中継電気コネクタ1(以下、単に「中継コネクタ1」という)は、互いに平行な異なる回路基板(図示せず)にそれぞれ取り付けられた相手コネクタ2と他の相手コネクタ3とを中継するように、相手コネクタ2と他の相手コネクタ3に接続される。
【0024】
本実施形態では、方向性を理解しやすくするために、回路基板の面に平行なコネクタ幅方向をX(一方をX1、他方をX2)、回路基板の面に平行でコネクタ幅方向Xに対して直角な方向である後述の接続ユニットの連結方向をY(一方をY1、他方をY2)、コネクタ幅方向Xと連結方向Yの両方に対して直角な上下方向であるコネクタの接続方向をZ(上方をZ1、下方をZ2)として設定してある。
【0025】
図1に見られるように、中継コネクタ1には、接続方向Zをコネクタ挿抜方向として、相手コネクタ2が上方Z1側から、すなわち下方Z2へ向け嵌合接続される。また、中継コネクタ1は、他の相手コネクタ3に対して上方Z1側から嵌合接続される。
【0026】
図1に示される中継コネクタ1は、相手コネクタ2,3の複数の接続ユニット(相手ユニット)それぞれに対応して接続される複数の接続ユニット10と、連結方向Yに配列された複数の接続ユニット10を一括して連結する金属板製の二つの連結部材100(図2参照)とを有している。本実施形態では、図1に見られるように、接続ユニット10は、複数の相手コネクタ2,3のそれぞれに対応して12個設けられている。
【0027】
接続ユニット10は、連結方向Yで両端に位置する2つの端部接続ユニット10Bと、両方の端部接続ユニット10Bの間に位置する10個の中間接続ユニット10Aとを有している。端部接続ユニット10Bと中間接続ユニット10Aとは、外観そして外形寸法は異なるが、後述するブレード20の収容のための溝状のブレード受入部10A-1は同じ形状で形成されていて、1つのブレード20は端部接続ユニット10Bにも中間接続ユニット10Aにも選択的に挿入が可能となっている。
【0028】
本実施形態において、連結方向Yで両端に位置する端部接続ユニット10Bが2個であるのに対し、中間に位置する中間接続ユニット10Aは10個と多数設けられている関係上、先ず、中間接続ユニット10Aから説明する。その際、本発明では、端部接続ユニット10Bが中間接続ユニット10Aと比べて外観形状そして外形寸法が異なっていることに特徴があるので、ブレード受入部等の内部構造については、可能な限り説明を簡略化する。
【0029】
各中間接続ユニット10Aは、互いに同形状をなして対をなす二つのブレード20を有している。これら二つのブレード20は、中間接続ユニット10Aの連結方向Yで対称となるように向かい合って配されて、後述のハウジング70Aに形成された後述の溝状のブレード受入部10A-1に挿入保持されている(図6(A)参照)。中間接続ユニット10Aの上部にてブレード20同士間で上方へ向けて開口する空間は、相手コネクタ2を上方から受け入れるための上側受入部11A(図6(A)参照)として形成されている。一方、中間接続ユニット10Aの下部にてブレード20同士間で下方へ向けて開口する空間は、相手コネクタ3を下方から受け入れるための下側受入部12A(図6(A)参照)として機能する。
【0030】
図5(A)は、図1の中継コネクタ1のブレード20を単体で示した斜視図であり、図5(B)は、コネクタ幅方向Xに見たブレード20の側面図である。図5(A)に見られるように、ブレード20は、コネクタ幅方向Xに等間隔で配列された複数の端子30と、複数の端子30を一体モールド成形により一括して保持する樹脂製の板状の基材40と、基材40の一方の板面側(図5(A),(B)でのY2側であり、後述する「内側」に対応)に取り付けられる内側グランド板50そして他方の板面側(図5(A),(B)でのY1側であり、後述する「外側」に対応)に取り付けられる外側グランド板60とを有している(図5(B)をも参照)。以下、各ブレード20において対をなす二つのブレード20において、互いに対面する面側を「内側」といい、その反対の面側を「外側」という。
【0031】
図5(A),(B)に見られるように、端子30は、接続方向Z、すなわち図にて上下方向に延びる帯片状の金属部材を部分的に屈曲して作られている。端子30は、基材40の上端から上方に延出する上側弾性腕部31と、基材40の下端から下方へ延出する下側弾性腕部32と、上下方向に延び上側弾性腕部31と下側弾性腕部32とを連結する連結部33(図6(A)参照)とを有している。
【0032】
上側弾性腕部31および下側弾性腕部32は、それぞれ板厚方向(連結方向Y)に弾性変位可能となっている。図5(A),(B)に見られるように、上側弾性腕部31の上端側そして下側弾性腕部32の下端側には、板厚方向となる連結方向Yで内側(Y2側)へ向けて突出するように屈曲した上側接触部31Aそして下側接触部32Aが形成されており、上側接触部31Aそして下側接触部32Aがそれぞれ相手コネクタ2,3の端子120(後述する「相手端子120」)に弾性接触するようになっている。
【0033】
基材40は、図5(A),(B)に見られるように、コネクタ幅方向Xでは端子配列範囲を含む範囲に延びるとともに、接続方向(上下方向)Zでは連結部33(図6(A)参照)の範囲にわたって延びる四角板状をなしている。
【0034】
内側グランド板50は、既述したように、基材40の内側面(図5(A),(B)でのY2側の板面)に位置して設けられている。外側グランド板60は、既述したように、基材40の外側面(図5(A),(B)でのY1側の板面)に位置して設けられている。内側グランド板50および外側グランド板60は、超音波融着により、基材40のそれぞれ対応する板面に接面した状態で基材40に保持される。図5(B)に見られるように、外側グランド板60には、上端側に上側係止片61、下端側に下側係止片62が、Y1側へ向けて切り起されて形成されている。上側係止片61は、後述の上側ハウジング半体80Aに係止し、下側係止片62は下側ハウジング半体90Aに係止するようになっている(図3(A)参照)。
【0035】
中間接続ユニット10Aのハウジング70Aは、樹脂等の電気絶縁材で作られており、図1及び図3に見られるように、接続方向Zで分割された上側ハウジング半体80Aと下側ハウジング半体90Aとを有している。上側ハウジング半体80Aと下側ハウジング半体90Aとは互いに同じ形状をなし、一方が他方に対し上下反転して位置している。ハウジング70Aは、二つのブレード20の内側面同士が対面した状態で、上側ハウジング半体80Aで両ブレード20の上半部を、そして下側ハウジング半体90Aで両ブレード20の下半部を収容し保持している(図6(A)参照)。
【0036】
以下、図1ないし図3、そして図6(A)にもとづいて下側ハウジング半体90Aの構成を説明し、上側ハウジング半体80Aについては、下側ハウジング半体90Aの各部の「90」台の符号に「10」を減じた80台の符号を付して説明を省略する。下側ハウジング半体90Aは、図3(A)に見られるように、コネクタ幅方向Xに延びる二つの側壁91Aと中間接続ユニット10Aの連結方向Yに延び側壁91Aの端部同士を連結する二つの端壁92Aとで形成された周壁を有し、全体として略直方体外形の角筒状をなしている。該周壁の内部には相手コネクタ3の受入れ等のための空間が形成されている(図6(A)も参照)。また、図6(A)に見られるように、この内部の空間には、下側ハウジング半体90Aの連結方向Yでの中央位置に、一つの隔壁94Aが形成されている。隔壁94Aは、二つの側壁91A同士間でコネクタ幅方向Xに延び二つの端壁92Aの内壁面同士を連結している。この側壁91A、端壁92Aおよび隔壁94Aで囲まれ上下方向に貫通し連結方向Yで側壁91A側に位置する二つの空間は、それぞれブレード20を収容する。下側ハウジング半体90Aには、図3(A)に見られるように、ブレード20の外側グランド板60に設けられた係止片62が係止する係止窓95Aが複数箇所に貫通形成されている。
【0037】
図2に見られるように、端壁92Aの上部には端壁92Aの壁厚内に、コネクタ幅方向Xに対して直角に拡がるスリット状をなす溝状の連結部材収容部97Aが上方に向け開放して形成されている。連結部材収容部97Aは、上方に開放されるとともに連結方向Yに貫通しており、後述の連結部材100の下部を収容し、連結部材100の後述する爪状の係止突片102が係止する構造になっている。また、端壁92Aの上部には、コネクタ幅方向Xでの連結部材収容部97Aよりも外側の位置にて、上方に開口するとともにコネクタ幅方向Xに貫通する端溝99Aが形成されている(図3(A)も参照)。
【0038】
また、図3(A)に見られるように、下側ハウジング半体90Aの下部には、コネクタ幅方向Xにおける側壁91Aと端壁92Bとの間の位置に、連結方向Yに貫通するとともに下方へ開口したスリット状をなす係合溝98Aが形成されている。係合溝98Aは、コネクタ幅方向Xで連結部材収容部97A(図2参照)よりも内側に位置している。係合溝98Aは、コネクタ嵌合状態にて、相手コネクタ3の後述する連繋部材130の上部を下方から受け入れて、該上部と係合するようになっている。ここで、「係合」とは、係合溝98A内に連繋部材130の上部が収容されることをいう。
【0039】
端部接続ユニット10Bのハウジング70Bは、中間接続ユニット10Aの場合と同様に、樹脂等の電気絶縁材で作られており、図1に見られるように、接続方向Zで分割された上側ハウジング半体80Bと下側ハウジング半体90Bとを有している。上側ハウジング半体80Bと下側ハウジング半体90Bとは互いに同じ形状をなしている。ハウジング70Bは、二つのブレード20の内側面同士が対面した状態で、上側ハウジング半体80Bで両ブレード20の上半部を、そして下側ハウジング半体90Bで両ブレード20の下半部を収容し保持している(図6(B)参照)。
【0040】
端部接続ユニット10Bのハウジング70Bは、中間接続ユニット10Aのハウジング70Aに対し、その外観、すなわち、外形、外形寸法が相違している。以下、ハウジング70Bの説明に際し、ハウジング70Aの場合と同様に、図1ないし図2図4そして図6(B)にもとづいて下側ハウジング半体90Bの構成を説明し、上側ハウジング半体80Bについては、下側ハウジング半体90Bの各部の「90」台の符号に「10」を減じた80台の符号を付して説明を省略する。
【0041】
下側ハウジング半体90Bは、図4(A)に見られるように、上下方向となる接続方向Zに見たときに、コネクタ幅方向Xに延びる二つの側壁91B(後述の「外方側壁91B―1」及び「内方側壁91B―2」)と中間接続ユニット10Aの方向Yに延び側壁91Bの端部同士を連結する二つの端壁92Bとで形成された周壁を有し、全体として略直方体外形の角筒状をなしている。該周壁の内部には相手コネクタ3の受入れ等のための空間が形成されている(図6(B)も参照)。また、図6(B)に見られるように、この端部接続ユニット10Bの内部の空間における構造は、中間接続ユニット10Aと全く同じであるので、中間接続ユニット10Aの場合における符号の「A」を「B」に代えることで、その構造の説明は省略する。
【0042】
二つの側壁91Bは、連結方向Yにおいて外側(図4(A),(B)及び図6(B)にてY2側)に位置する外方側壁91B-1と、連結方向Yにおいて内側(図4(A),(B)及び図6(B)にてY1側)に位置する内方側壁91B-2とを有している。外方側壁91B-1は、図1に見られるように、中間接続ユニット10Aと面することなく、連結方向Yにて最外端に位置している。一方、内方側壁91B-2は、連結方向Yにて隣接する中間接続ユニット10Aの側壁91Aと面して位置している。本実施形態では、外方側壁91B-1が内方側壁91B-2よりも壁厚となっている。また、内方側壁91B-2は、中間接続ユニット10Aの側壁91Aと同じ壁厚となっている。すなわち、外方側壁91B-1が中間接続ユニット10Aの側壁91Aよりも壁厚となっている。
【0043】
外方側壁91B-1は、内方側壁91B-2に対し、接続方向Zの全域において壁厚が大きくなっている必要はなく、同方向での一部域で壁厚が大きくなっていてもよい。本実施形態では、図4(A),(B)に見られるように、下部、すなわち相手コネクタ3との接続方向側の域で壁厚が大きくなっている。
【0044】
外方側壁91B-1には、図4(A)に見られるように、中間接続ユニット10Aの下側ハウジング半体90Aの側壁91Aの場合と同様に、ブレード20の外側グランド板60に設けられた下側係止片62が係止する係止窓95B-1が複数箇所に貫通形成されている。この外方側壁91B-1では、複数の係止窓95B-1のうち一部には、窓の空間を拡大する拡大部95B-1Aが設けられている。さらに、外方側壁91B-1には、コネクタ幅方向Xで係止窓95B-1と同じ位置で、接続方向Zで離間した位置に、貫通孔95X1B,95X2Bが形成されている。また、図4(A)に見られるように、下側ハウジング半体90Bは、コネクタ幅方向Xで係止窓95B-1よりも外側位置、すなわち、端壁92Bの位置や外方側壁91B-1と端壁92Bとの間の位置にて、上下方向に延びた開口部をもつ貫通孔96B-1が連結方向Yに貫通して形成されている。これらの係止窓95B-1、貫通孔95X1B,95X2B,96B-1は、下側ハウジング半体90Bにおける内方側壁91B-2側には形成されておらず、外方側壁91B-1側のみに形成されている。
【0045】
係止窓95B-1の拡大部95B-1A及び貫通孔95X1B,95X2B,96B-1は、一方の端壁位置から成形金型内へ溶融樹脂材料を注入して下側ハウジング半体90Bを成形する際、互いに壁厚が異なる外方側壁91B-1側と内方側壁91B-2側との間で、溶融樹脂材料の流動性を可及的に同じにする役割を有している。すなわち、壁厚の大きい外方側壁91B-1にのみ拡大部95B-1A及び貫通孔95X1B,95X2B,96B-1を設けることにより、外方側壁91B-1側での流動抵抗が増大し、その結果、外方側壁91B-1側での流動性が内方側壁91B-2側での流動性とほぼ同じになる。したがって、外方側壁91B-1側と内方側壁91B-2側とに分流した溶融樹脂材料はほぼ同時に他方の端壁位置へ達することとなる。
【0046】
溶融樹脂材料の流動性を可及的に同じにための貫通孔の形状、位置、数は、下側ハウジング半体90Bの形状に応じて適宜設定可能であり、図4(A)に示されている係止窓95B-1の拡大部95B-1A及び貫通孔95X1B,95X2B,96B-1は、あくまで一例にすぎない。また、連結方向Yで貫通する貫通孔であることは必須ではなく、貫通していない凹部として形成されていてもよい。
【0047】
端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bにおける端壁92Bは、図4(A)に見られるように、その外面に、連結方向Yで外方側壁91B-1の側(図4(A),(B)でのY2側)に位置し外側に向け開放されかつ接続方向Zで下方Z2に向け開放された切欠部92B-1が形成されている。この切欠部92B-1は、後述するように、外形そして外形寸法が異なる中間接続ユニット10Aと端部接続ユニット10Bとを連結する際に、各接続ユニット10A,10Bが組立用治具に正規位置、かつ、正規向きで配置されるように組立用の治具と協働するために形成されている。
【0048】
また、下側ハウジング半体90Bの下部にて、コネクタ幅方向Xにおける内方側壁91B-2と端壁92Bとの間の位置には、中間接続ユニット10Aの係合溝98A(図3(A)参照)と同形状をなす、すなわち、連結方向Yに貫通するとともに下方へ開口したスリット状をなす係合溝(図示せず)が形成されている。該係合溝は、図4(A)に示される、上側ハウジング半体80Bの上部に形成された係合溝88Bを上下反転させた形状をなしている。上記係合溝は、コネクタ幅方向Xで連結部材収容部97B(図2参照)よりも内側に位置している。該係合溝は、コネクタ嵌合状態にて、相手コネクタ3の後述する連繋部材130の上部を下方から受け入れて、該上部と係合するようになっている。
【0049】
一方、下側ハウジング半体90Bの下部にて、コネクタ幅方向Xにおける外方側壁91B-1と端壁92Bとの間の位置には、溝が形成されていない。つまり、外方側壁91B-1から端壁92Bにわたる範囲で下側ハウジング半体90Bの下端面が平坦面をなしている。したがって、本実施形態では、下側ハウジング半体90Bは、外方側壁91B-1と端壁92Bとの間の位置にて、接続方向(上下方向)Zで中実な部分が大きく形成されているので、その分、外方側壁91B-1の強度は低下することがなく、その壁厚方向、換言すると、連結方向Yに撓み変形しにくくなっている。
【0050】
本実施形態では、外方側壁91B-1と端壁92Bとの間に溝が全く形成されていないこととしたが、外方側壁91B-1の十分な強度を確保できるのであれば、若干の深さの溝、具体的には、中間接続ユニット10Aの係合溝98Aよりも接続方向(上下方向)Zで小さい(浅い)溝が形成されていてもよい。外方側壁91B-1は、連結方向Yにて相手コネクタ3の連繋部材130よりも外側に位置しており、連繋部材130との係合には関与しないので、外方側壁91B-1に係合溝がないことによる不具合は何ら生じない。
【0051】
連結部材100は、金属板部材の平坦面を維持するようにして該金属板部材を打ち抜くとともに、部分的に屈曲して作られている。図2に見られるように、連結部材100は、連結方向Yを長手方向そして上下方向をなす接続方向Zを短手方向として延びる帯状部材に形成されている。図2に見られるように、連結部材100は、連結方向Yで接続ユニット10A,10Bの配列範囲にわたって延びているとともに、接続方向Zでは両方のハウジング半体80A,90Aそして80B,90Bにまたがる範囲にわたって延び、接続ユニット10A,10Bの各端壁82A,82B,92A,92Bにおける連結部材収容部87A,87B,97A,97B内に収容される。このようにして連結部材100が接続ユニット10A,10Bの各連結部材収容部87A,87B,97A,97B内に位置することにより良好なシールド効果が得られる。また、本実施形態では、連結部材100は、コネクタ幅方向Xに対して直角な板面をもつ板状部材で作られており、コネクタ幅方向Xでの寸法が連結部材100の板厚寸法とほぼ等しいので、中継コネクタ1がコネクタ幅方向Xで大型化することがない。
【0052】
連結部材100は、図2に見られるように、連結方向Yでの各接続ユニット10A,10Bと対応する位置に、爪状の上側係止突片101および下側係止突片102(両者を区別する必要がないときには「係止突片101,102」と総称する)が形成されている。係止突片101,102は、それぞれ対応するハウジング半体80A,90A,80B,90Bの被係止部(図示せず)に対して接続方向Zそして連結方向Yで係止する。係止突片101,102は、後述するように、複数の接続ユニット10が連結部材100で連結された後に、治具で折曲されてハウジング半体80A,90A,80B,90Bと係止する。
【0053】
次に、中継コネクタ1の組立ての手順について説明する。まず、二つのブレード20の内側面同士が互いに対面するようにして(図6(A),(B)参照)、各ブレード20の下半部を中間接続ユニット10Aの下側ハウジング半体90Aと端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bのそれぞれへ上方から収容する。また、このように二つのブレード20を収容した下側ハウジング半体90A,90Bを連結方向Yに配列する。このとき、連結方向Yでの両端位置に下側ハウジング半体90Bを一つずつ配置するとともに、両端位置の下側ハウジング半体90Bの間に下側ハウジング半体90Aを複数配列させる。
【0054】
次に、中間接続ユニット10Aの上側ハウジング半体80Aと端部接続ユニット10Bの上側ハウジング半体80Bを、下側ハウジング半体90A,90Bに対して上下反転した姿勢で、それぞれ対応するブレード20に上方からもたらし、各ブレード20の上半部を上側ハウジング半体80B,90B内へ下方から収容する。しかる後、上側ハウジング半体80A,80B及び下側ハウジング半体90A,90Bでブレード20を収容した状態で、上側ハウジング半体80A,80Bの連結部材収容部87A,87Bと下側ハウジング半体90A,90Bの連結部材収容部97A,97Bとが相俟って上下に連通して形成されたスリット状の空間へ、連結方向Yで連結部材100を挿入する。このとき、上側ハウジング半体80A,80Bの端溝89A,89Bと下側ハウジング半体90A,90Bの端溝99A,99Bとが相俟って上下に連通して形成されたスリット状の空間(図3(A),(B)及び図4(A),(B)参照)に対応する位置に、連結部材100の折曲加工前の係止突片101,102を位置させる。
【0055】
次に、端溝89A,89Bで形成される空間に治具(図示せず)を上記空間にコネクタ幅方向Xで外部から挿通させて、連結部材100の係止突片101,102を折曲加工により形成する。この結果、係止突片101,102が上側ハウジング半体80A,80Bと下側ハウジング半体90A,90Bに係止し、上側ハウジング半体80A,80Bと下側ハウジング半体90A,90Bが連結方向Y、接続方向Zで完全に連結され、1つの中継コネクタ1が得られる。
【0056】
上述の手順で中継コネクタ1を効率的かつ確実に組み立てるには、最初に、複数の中間接続ユニット10Aの下側ハウジング半体90Aと、端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bを、正規位置に確実に配置する必要がある。本実施形態では、下側ハウジング半体90A,90Bを正しい位置に配置しその姿勢を保つために治具Jを用いる。図7(A),(B)、図8(A),(B)には治具Jが部分的に示されている。
【0057】
図7(A),(B)及び図8(A),(B)では、完成された1つの接続ユニット10A,10Bが治具Jに配置された状態、あるいは配置されようとしている状態が示されているが、実際には、接続ユニット10A,10Bとして完成される前における、下側ハウジング半体90A,90Bが二つのブレード20を収容した状態、すなわち上側ハウジング半体80A,80Bが取り付けられていない状態で、治具Jに一つずつ配列されていく。
【0058】
治具Jは、コネクタ幅方向Xに見てU字枠状をなし、連結方向Yに延びる横部J1と、横部J1の両端で上方Z1に垂立する縦部J2とを有している。図7(A),(B)及び図8(A),(B)では、連結方向YでY2側に位置する縦部J2及びその近傍の横部J1のみが図示されている。横部J1には、コネクタ幅方向Xでの両端位置に、連結方向Yにおける各下側ハウジング半体90A,90Bの正規位置を定めるための突起J1-1が等間隔で連結方向Yに配列して設けられている。全ての突起J1-1は、同形状をなしており、図7(B)に見られるように、連結方向Yで端部に位置する端部突起J1-1Bと、中間に位置する中間突起J1-1Aとを有している。突起J1-1は、コネクタ幅方向Xでの下側ハウジング半体90A,90Bの両端寄りに形成された空間(図示せず)へ下方から嵌入して、下側ハウジング半体90A,90Bを支持可能となっている。中間突起J1-1Aは中間接続ユニット10Aの下側ハウジング半体90Aを支持し、端部突起J1-1Bは端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bを支持する。
【0059】
縦部J2の基部には、コネクタ幅方向Xでの両端位置で、縦部J2と横部J1とにより形成される隅部に位置するように、突部J2-1が設けられている。この突部J2-1は、端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bの端壁92Bに形成された切欠部92B-1に収まるように、連結方向Yで内方へ向けて突出している(図7(A)参照)。換言すると、本実施形態では、端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bに切欠部92B-1が形成されているので、下側ハウジング半体90Bが治具Jにおける端部位置、すなわち正規位置に上方から配置されるとき、端壁92Bと突部J2-1とが衝突して干渉することがなく、下側ハウジング半体90Bが難なく配置される。
【0060】
なお、本実施形態では、連結方向Yで、縦部J2の上部内側と、突部J2-1の上部内側には、テーパ部J2-A、J2-1Aがそれぞれ形成されており、下側ハウジング半体90Bを上方から配置する際に、テーパ部J2-A、J2-1Aで案内可能となっている。
【0061】
一方、中間接続ユニット10Aの下側ハウジング半体90Aは、端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bとは異なり、端壁92Aに切欠部を有していない(図7(B)参照)。したがって、仮に、下側ハウジング半体90Aが、治具Jの端部位置、すなわち端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bが配置されるべき位置に、誤って配置されようとしたときには、下側ハウジング半体90Aは突部J2-1に衝突して干渉し、かかる位置に配置することができない(図7(B)参照)。したがって、下側ハウジング半体90Aが誤った位置に配置されようとしていることがすぐに認識される。
【0062】
また、切欠部92B-1は、連結方向Yで外方側壁91B-1側(図7(A)にてY2側)にのみ開放されており、連結方向Yで非対称な形状をなしている。したがって、端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bであったとしても、仮に、連結方向Yでの向きが正しくないとき、すなわち、外方側壁91B-1が縦部J2に面することなく縦部J2と反対側で内方(図7(A)でのY1側)に向いているときには、下側ハウジング半体90Bが突部J2-1に衝突して干渉し、下側ハウジング半体90Bをかかる位置に配置することができない。したがって、下側ハウジング半体90Bが誤った向きで配置されようとしていることがすぐに認識される。
【0063】
本実施形態では、中間突起J1-1Aと端部突起J1-1Bとは同形状をなしているので、中間突起J1-1Aは、中間接続ユニット10Aの下側ハウジング半体90Aのみならず、端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bにも嵌入可能である。しかし、端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bが、図8(B)のごとく、誤って中間突起J1-1Aの位置に配置された場合、下側ハウジング半体90Bの外方側壁91Bの壁厚が大きいため、下側ハウジング半体90Bと縦部J2との間隔が狭くなり、この間隔に、換言すると端部突起J1-1Bの位置に、さらに別の端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bを配置することができなくなる。したがって、端部突起J1-1Bに別の下側ハウジング半体90Bを配置できない時点で、この端部突起J1-1Bに隣接する中間突起J1-1Aの位置に、誤って端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bが配置されていることを認識できる。
【0064】
このように、本実施形態では、下側ハウジング半体90A,90Bが誤った位置に配置されていること、あるいは配置されようとしていることを早期に認識することができるので、下側ハウジング半体90A,90Bを正規位置に効率よく配列することが可能である。
【0065】
次に、上側ハウジング半体80A,80Bを、治具Jで支持されている下側ハウジング半体90A,90Bに対し、既述の要領で、ブレード20を介して組み込む。さらに、既述したように、上側ハウジング半体80A,80Bの連結部材収容部87A,87Bと下側ハウジング半体90A,90Bの連結部材収容部97A,97Bとが相俟って形成されたスリット状の空間へ、連結方向Yで連結部材100を挿入した後、連結部材100の上側係止突片101と下側係止突片102を折曲形成することで、1つの中継コネクタが得られる。しかる後、下側ハウジング半体90A,90Bのための治具Jを外す。
【0066】
次に、相手コネクタ2,3の構成について説明する。図1に見られるように、本実施形態では、中継コネクタ1の接続ユニット10と同数の相手コネクタ2,3が接続ユニット10の連結方向Yと同じ方向に等間隔で配列されており、全ての相手コネクタ2,3が後述の連繋部材130によって連繋されている。相手コネクタ2,3は全く同じ構成であるので、以下、相手コネクタ3の構成を中心に説明し、相手コネクタ2の説明は相手コネクタ3と同じ符号を付して省略する。
【0067】
図1に見られるように、相手コネクタ3は、コネクタ幅方向Xを長手方向として延びる樹脂等の電気絶縁材製のハウジング110と、ハウジング110によってコネクタ幅方向Xに配列保持される複数の端子120(以下、「相手端子120」という)と、ハウジング110に保持される相手グランド板(図示せず)とを有している。
【0068】
図1に見られるように、ハウジング110は、コネクタ幅方向Xを長手方向として延びていて、同方向で中継コネクタ1とほぼ同じ寸法で形成されている。ハウジング110は、コネクタ幅方向Xに延びる両方の壁面(連結方向Yに対して直角な面)に、複数の端子収容部111がコネクタ幅方向Xで等間隔をなして配列形成されている。端子収容部111は、上記壁面から没するともに上下方向である接続方向Zに延びる溝状をなしており、相手端子120を収容して保持するようになっている。
【0069】
ハウジング110は、その厚み方向となる連結方向Yの中間位置に金属板製の相手グランド板(図示せず)を埋設保持している。相手グランド板は、連結方向Yに対して直角な板面をもちコネクタ幅方向Xにて相手コネクタ3のほぼ全域にわたって延びている。
【0070】
相手端子120は、金属板部材を板厚方向に打ち抜くことにより作られており、全体形状が接続方向Zに延びた帯片状をなし、ハウジング110の端子収容部111へ下方から圧入されて保持されて、コネクタ幅方向Xに配列されている。相手端子120は、中継コネクタ1の端子30の下側接触部32Aとの接触のための接触部が上端側に形成されているとともに、回路基板の対応回路部(図示せず)との半田接続のための接続部が下端側に形成されている。この下端側の接続部はハウジング110の下面から突出しており、図1では該接続部に半田ボールBが取り付けられた状態が示されている。
【0071】
連繋部材130は、コネクタ幅方向Xに対して直角な板面をもち相手コネクタ3の連結方向Yで相手コネクタ3の配列範囲全域にわたって延びている。本実施形態では、連結方向Yにて連繋部材130が延びる範囲は、中継コネクタ1の両端に位置する端部接続ユニット10Bの外方側壁81B-1,91B-1の位置にまでは及んでいない。連繋部材130は、その板面がコネクタ幅方向Xでの相手コネクタ3の両側の面(コネクタ幅方向Xに対して直角な面)に近接して対面するように位置しているとともに、連繋部材130の上縁がグランド板(図示せず)と連結されている。
【0072】
次に、中継コネクタ1と相手コネクタ2,3とのコネクタ嵌合接続の要領について説明する。まず、複数の相手コネクタ2,3をそれぞれ異なる回路基板(図示せず)に半田接続して取り付ける。次に、相手コネクタ3を、相手端子120の接触部が上側に位置するような姿勢(図1に示される姿勢)とし、中継コネクタ1の各接続ユニット10の下側受入部12A,12B(図6(A),(B)参照)が、それぞれ対応する相手コネクタ3と対応するようにして、中継コネクタ1を相手コネクタ3の上方に位置させる(図1参照)。
【0073】
次に、中継コネクタ1を下方Z2へ移動させて(図1の矢印参照)、各接続ユニット10をそれぞれ対応する相手コネクタ3に上方から嵌合させる。中継コネクタ1と相手コネクタ3との嵌合が完了すると、接続ユニット10のブレード20に設けられた端子30の下側接触部32Aが、相手コネクタ3に設けられた相手端子120の接触部と接圧をもって接触して電気的に導通する。
【0074】
次に、相手コネクタ2を、相手コネクタ3に対して上下反転させた姿勢(図1に示される姿勢)で中継コネクタ1に対して上方から嵌合接続させる(図1の矢印参照)。相手コネクタ2の嵌合接続の要領については、相手コネクタ3について既述した要領と同様である。
【0075】
このようにして、相手コネクタ2と相手コネクタ3が中継コネクタ1に嵌合接続されることにより、それぞれ互いに対応する相手コネクタ2と相手コネクタ3とが各接続ユニット10を介して電気的に接続される。
【0076】
本実施形態では、中継コネクタ1に相手コネクタ3が下方から嵌合された状態にて、端部接続ユニット10Bの下側ハウジング半体90Bにおける外方側壁91B-1と内方側壁91B-2が相手コネクタ3に押し広げられて連結方向Yで互いに離れる方向へ向けた外力を受けたとき、端部接続ユニット10Bの外方側壁91B-1は、隣接する中間接続ユニット10Aの側壁91Aに接面することがなく、何ら支持されない。しかし、本実施形態では、下側ハウジング半体90Bの下部にて、コネクタ幅方向Xにおける外方側壁91B-1と端壁92Bとの間の位置に溝が形成されていないので、外方側壁91B-1自体が強度を有している。また、外方側壁91B-1は、内方側壁91B-2よりも、部分的に壁厚寸法が大きくなっており、さらなる強度の向上が図られている。したがって、外方側壁91B-1はその壁厚方向(連結方向Y)に撓み変形しにくく、その結果、損傷しにくい。
【0077】
中継コネクタ1に相手コネクタ2が上方から嵌合された状態における、端部接続ユニット10Bの上側ハウジング半体80Bの外方側壁81B-1についても、既述した下側ハウジング半体90Bの外方側壁91B-1と同様のことが言え、外方側壁81B-1の撓み変形ひいては損傷が良好に防止されている。
【符号の説明】
【0078】
1 電気コネクタ(中継コネクタ)
2,3 相手接続体(相手コネクタ)
10 接続ユニット
10A 中間接続ユニット
10B 端部接続ユニット
20 ブレード
30 端子
70A,70B ハウジング
81A,91A;81B,91B 側壁
82A,92A;82B,92B 端壁
81B-1;91B-1 外方側壁
81B-2;91B-2 内方側壁
82B-1;92B-1 切欠部
85X1B,85X2B;95X1B,95X2B 貫通孔
86B-1,96B-1 貫通孔
88A,98A;88B,98B 係合溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8