(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】鼻部及び前記鼻部を含む患者インターフェース装置
(51)【国際特許分類】
A61M 16/06 20060101AFI20240418BHJP
A61M 16/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
A61M16/06 C
A61M16/00 305A
(21)【出願番号】P 2021505344
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2019071991
(87)【国際公開番号】W WO2020038836
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-06-15
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】グラショー ジョナサン セイヤー
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0013685(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0204870(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気道圧力支援システムの患者インターフェース装置のための鼻部において、
前記気道圧力支援システムは、ガス流生成器を有し、
前記ガス流発生器は、患者の気道に送出される呼吸ガス流を生成するように構成され、
前記患者インターフェース装置は、前記ガス流発生器により生成される呼吸ガス流を受け取るために、ガス流発生器と流体連通している、
前記鼻部は、
前記ガス流発生器と流体連通するように構成される延長部、及び
前記延長部の上に設けられるキャップ部材
を有し、
前記延長部及び前記キャップ部材は、前記ガス流発生器からの呼吸ガス流が前記鼻部を通過しないときの第1位置と前記ガス流発生器からの呼吸ガス流が前記鼻部を通過するときの第2位置との間を移動するように各々構成され、前記延長部及び前記キャップ部材が
前記第1位置から前記第2位置に移動するとき、前記延長部は、前記延長部及び前記キャップ部材の中心に延在する共通の縦軸に対して半径方向外側に前記キャップ部材を広げる、
鼻部。
【請求項2】
前記延長部及び前記キャップ部材は、前記呼吸ガス流が前記鼻部を出て、前記患者の気道に送出されるために通る開口を一緒に画定する、複数の遠位縁部を各々有する、請求項1に記載の鼻部。
【請求項3】
前記延長部の前記複数の遠位縁部は、第1の遠位縁部及び前記第1の遠位縁部と概ね同一平面上にある第2の遠位縁部を含み、前記延長部は、前記第1の遠位縁部を第2の遠位縁部に接続する及び前記キャップ部材に対して実質的に内側に配される、少なくとも1つの中間縁部をさらに有する、請求項2に記載の鼻部。
【請求項4】
前記キャップ部材の前記複数の遠位縁部は、各々が前記第1の遠位縁部及び前記第2の遠位縁部と概ね同一平面上にある、第3の遠位縁部及び第4の遠位縁部を含み、前記キャップ部材は、前記第3の遠位縁部を前記第4の遠位縁部に接続する及び前記延長部に対して実質的に外側に配される、少なくとも1つの中間縁部をさらに有する、請求項3に記載の鼻部。
【請求項5】
前記キャップ部材は、前記延長部に対して外側に配され、前記少なくとも1つの中間縁部と封止係合するように構成される、請求項3に記載の鼻部。
【請求項6】
前記少なくとも1つの中間縁部は、第1の中間縁部、及び前記第1の中間縁部に対向して配され、前記第1の中間縁部から離間されている第2の中間縁部を含む、請求項3に記載の鼻部。
【請求項7】
前記キャップ部材の前記複数の遠位縁部は、1つの単一遠位縁部だけを含み、前記延長部の前記第1及び第2の遠位縁部は、前記キャップ部材の前記1つの単一遠位縁部に対して内側に各々配される、請求項3に記載の鼻部。
【請求項8】
前記キャップ部材は、前記延長部に結合され、前記延長部に対して外側に配される環状の結合部を有する、請求項1に記載の鼻部。
【請求項9】
前記結合部は、接着剤により前記延長部に結合される、請求項8に記載の鼻部。
【請求項10】
前記結合部は、スナップフィット機構により前記延長部に結合される、請求項8に記載の鼻部。
【請求項11】
前記延長部は、円筒形状部を有し、前記キャップ部材は、前記延長部の前記円筒形状部と同心であり、前記延長部の前記円筒形状部に対して外側に配される円筒形状部を有し、前記鼻部は、鼻カニューレである、請求項1に記載の鼻部。
【請求項12】
気道圧力支援システムのための患者インターフェース装置において、
前記気道圧力支援システムは、ガス流発生器を有し、
前記ガス流発生器は、患者の気道に送出される呼吸ガス流を生成するように構成され、
前記患者インターフェース装置は、各々が前記患者の対応する鼻孔の内部に延在し、前記鼻孔に対して封止係合するように構成される一対の鼻部を有し、
前記鼻部の各々は、
前記呼吸ガス流を受け取るために、前記ガス流発生器と流体連通している対応する延長部、及び
前記対応する延長部の上に設けられる対応するキャップ部材
を有し、前記対応する延長部及び前記対応するキャップ部材は、前記ガス流発生器からの呼吸ガス流が前記鼻部を通過しないときの第1位置と前記ガス流発生器からの呼吸ガス流が前記鼻部を通過するときの第2位置との間を移動するように構成され、前記対応する延長部及び前記対応するキャップ部材が
前記第1位置から前記第2位置に移動するとき、前記対応する延長部は、前記対応する延長部及び前記対応するキャップ部材の中心に延在する共通の縦軸に対して半径方向外側に前記対応するキャップ部材を広げる、
患者インターフェース装置。
【請求項13】
前記ガス流発生器に流体結合されるように構成されるベース部をさらに含み、前記対応する延長部は、前記ベース部から外向きに延在し、前記ベース部と流体連通している、請求項12に記載の患者インターフェース装置。
【請求項14】
前記ベース部に結合され、前記ガス流発生器に流体結合されるように構成される結合部材をさらに備える、請求項13に記載の患者インターフェース装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国特許法第119条の下、2018年8月23日に出願された米国仮特許出願第62/721,683号の優先権を主張し、その内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、鼻部(nasal portion)に関するものであり、より詳細には、患者インターフェース装置のための鼻部に関する。本発明はまた、前記鼻部を含む患者インターフェース装置にも関する。
【0003】
多くの人は、睡眠時の呼吸障害を患っている。睡眠時無呼吸は、世界中で何百万人もの人々が患っている上記の睡眠時の呼吸障害の一般的な例である。睡眠時無呼吸の1つの種類は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)であり、これは、典型的には上気道又は咽頭領域である気道の閉塞によって呼吸ができないことにより、睡眠が繰り返し中断される状態である。気道の閉塞は、少なくとも一部は上気道セグメントを安定化させる筋肉の全般的な弛緩によるものであり、それにより組織が気道を崩壊させるためであると一般的に考えられている。睡眠時無呼吸症候群のもう1つの種類は、中枢性無呼吸であり、これは、脳の呼吸中枢からの呼吸信号が無いことによる呼吸の中断である。閉塞性、中枢性又は閉塞性と中枢性との組み合わせである混合性であるかどうかの無呼吸の状態は、呼吸の完全な又は略完全な中断として、例えば最大呼吸空気量の90%以上の減少として定められる。
【0004】
睡眠時無呼吸で苦しめられている人々は、睡眠中、潜在的に重症レベルのヘモグロビン酸素飽和度の低下を伴い、睡眠断片化及び換気の完全な又は略完全な中断を断続的に経験する。これらの症状は、日中の過度の眠気、不整脈、肺動脈高血圧、うっ血性心不全及び/又は認知機能障害に臨床的に変換される。睡眠時無呼吸の他の結果は、右室機能不全、睡眠中と同様に、覚醒時の二酸化炭素の貯留、並びに連続して減少する動脈血酸素分圧を含む。睡眠時無呼吸を患う人は、潜在的に危険な機器を運転及び/又は操作している間、事故の危険性の増大と同様に、これらの要因による高い死亡率の危険性がある。
【0005】
患者が気道の完全な又は略完全な閉塞を患っていなくても、気道が部分的に閉塞しているだけで、例えば睡眠からの覚醒のような悪影響が生じ得ることも分かっている。気道の部分的な閉塞は通例、低呼吸と呼ばれる浅い呼吸をもたらす。低呼吸は通例、最大呼吸空気流の50%以上の減少として定められる。睡眠時呼吸障害の他の種類は、限定ではないが、上気道抵抗症候群(UARS)、及び一般的にいびきと呼ばれる、例えば咽頭壁の振動のような気道の振動を含む。
【0006】
患者の気道に持続的気道陽圧(CPAP)を加えることにより、睡眠時呼吸障害を治療することがよく知られている。この陽圧は、"副木"を効果的に気道に当て、それにより、肺までの開いた通路を維持する。患者の快適さを増大させるために、患者に送出されるガスの圧力が患者の呼吸サイクルと共に変化する、又は患者の呼吸努力と共に変化する陽圧治療を施すことも知られている。この圧力支援技術は、二層式(bi-level)の圧力支援と呼ばれ、患者に送出される吸気気道陽圧(IPAP)は、呼気気道陽圧(EPAP)よりも高い。例えば患者が無呼吸及び/又は低呼吸を経験しているかどうかのような、検出される患者の状態に基づいて、圧力が自動的に調節される陽圧治療を施すことも知られている。この圧力支援技術は、圧力支援装置が、呼吸障害を治療するために必要な分だけ高い圧力を患者に供給しようとするので、自動滴定型の陽圧支援と呼ばれる。
【0007】
このように、圧力支援療法は、患者の顔の上に、柔らかくフレキシブルな封止クッションを持つマスクコンポーネントを含む患者インターフェース装置の配置を含む。マスクコンポーネントは、限定ではないが、患者の鼻を覆う鼻マスク、患者の鼻及び口を覆う鼻/口マスク、又は患者の顔を覆うフルフェイスマスクである。マスクコンポーネントは、患者の鼻孔の内部に延在し、この鼻孔と係合するように構成される枕形式の鼻部又は鼻カニューレを含んでもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのようなマスク構成要素が持つ1つの既知の欠点は、枕形式の鼻部又は鼻カニューレが、呼吸ガスが出る概ね固定される開口を有することである。枕形式の鼻部又は鼻カニューレは、患者の鼻孔の内部で終端するので、これらの開口は、一般に比較的小さい。このような設計は、患者にとって不快な呼吸感覚をもたらし得る(鼻孔だけでなくそれ自体の)呼吸ガス流の制限を与える。その上、既存の円錐形の枕マスクは、堅固な封止を維持するために枕を顔内に押し込むことを必要とし、その結果、幾分敏感な中隔及び鼻孔上に不快な圧力点を時々生じさせる。加えて、患者の顔に対する封止は、ヘッドギアにより及ぼされる圧縮力に大きく依存し、そのため、ヘッドギアの動き又は長時間にわたる伸張は、前記封止の安定性を著しく低下させる。その上、枕形式のクッションは、例えば限定するものではないが、変形に対する抵抗性があるので、この枕形式のクッションはしばしば、簡単には患者の鼻孔の形状には適合せず、その結果、圧力点及び封止の低下をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の目的は、患者インターフェース装置のための改善された鼻部、及びこの鼻部を含む患者インターフェース装置を提供することである。
【0010】
開示される概念のある態様によれば、気道圧力支援システムの患者インターフェース装置のための鼻部が提供される。気道圧力支援システムは、ガス流発生器を含む。このガス流発生器は、患者の気道に送出される呼吸ガス流を生成するように構成される。患者インターフェース装置は、前記ガス流発生器と流体連通している。前記鼻部は、ガス流発生器と流体連通するように構成される延長部、及びこの延長部に設けられるキャップ部材を含む。延長部及びキャップ部材は、第1位置と第2位置との間を各々移動し、延長部及びキャップ部材が第1位置と第2位置との間を移動するとき、キャップ部材は、延長部に対して独立して移動する。
【0011】
開示される概念のもう1つの態様によれば、患者インターフェース装置が提供される。この患者インターフェース装置は、一対の前述した鼻部を含む。
【0012】
構成物の関連する要素の動作方法及び機能、並びに製造部品と製造の経済性との組み合わせと同じく、本開示のこれら及び他の目的、特徴並びに特性は、付随する図面を参照して、以下の説明及び添付の請求項を考慮するとより明白となり、これらの全てが本明細書の一部を形成し、同様の参照番号は、様々な図面において対応する部品を示す。しかしながら、これら図面は単に例証及び説明を目的とするものであり、本発明の境界を画定するものとは意図されないことは明白に理解されるべきである。明細書及び請求項に用いられるように、文脈上明白に他の意味で述べている場合を除き、複数あることを述べなくとも、それらが複数あることも含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】開示される概念の1つの非限定的な実施例に従う、気道圧力支援システム及びこの気道圧力支援システムの患者インターフェース装置の一部が簡略化された等角図である。
【
図2】
図1の患者インターフェース装置の鼻部の等角図である。
【
図3】
図1の患者インターフェース装置の鼻部の分解等角図である。
【
図5】開示される概念のもう1つの非限定的な実施例に従う、もう1つの鼻部の断面図である。
【
図6】延長部及びキャップ部材が第1の位置に配置された状態で示されている
図2の鼻部の上面図である。
【
図7】延長部及びキャップ部材が第2の位置に配置された状態で示されている
図2の鼻部のもう1つの上面図である。
【
図8】開示される概念のもう1つの非限定的な実施例に従う、もう1つの鼻部の等角図である。
【
図9】開示される概念のもう1つの非限定的な実施例に従う、もう1つの鼻部の分解等角図である。
【
図10】開示される概念のもう1つの非限定的な実施例に従う、もう1つの鼻部の等角図である。
【
図11】開示される概念のもう1つの非限定的な実施例に従う、もう1つの鼻部の分解等角図である。
【
図12】開示される概念のもう1つの非限定的な実施例に従う、もう1つの鼻部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
必要に応じて、本発明の詳細な実施例が本明細書に開示されるが、開示される実施例は、単なる例証であり、これらは様々な形態で実施され得ると理解されたい。故に、本明細書に開示される特定の構造及び機能の詳細は、限定であると解釈されるべきではなく、単に特許請求の範囲の基礎として及び略如何なる適切に詳述された構造においても本発明を様々に用いることを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0015】
明細書において、特に文脈上はっきりと述べていない限り、複数あると述べていなくても、それらが複数あることを含む。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が"結合される"と述べることは、連動している限り、これらの部品が直接的に又は間接的、すなわち1つ以上の中間部品若しくは構成要素を介しての何れかにより接合される又は共に動作することを意味している。明細書において、"直接結合される"は、2つの要素が一緒に接合又は結合されること、及び互いに直に接していることを意味している。明細書において、"固定して結合される"又は"固定される"は、2つの構成要素が互いに対し一定の向きを維持しながら、1つとして移動するように結合されることを意味している。
【0016】
明細書において、"ユニタリ(unitary)"という言葉は、構成要素が単一ピース又は単一ユニットとして作られることを意味している。すなわち、別々に作られ、その後ユニットとして連結される部分を含んでいる構成要素は、"ユニタリ"な構成要素又は本体ではない。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が互いに"係合する"と述べることは、これらの部品が互いに向けて直接的に又は1つ以上の中間部品若しくは構成要素を介して間接的にの何れかにより力を及ぼしていることを意味している。明細書において、"数字"は、1若しくは1以上の整数(すなわち複数)を意味する。
【0017】
明細書において、例であり限定ではない方向の表現は、頂部、底部、左側、右側、上方、下方、前方、後方及びそれらの派生語は、図面に示される要素の向きに関連し、特に明瞭に言わない限り、請求項を制限しない。
【0018】
図1は、開示される概念の1つの非限定的な実施例による、気道圧力支援システム2の一部が簡略化された等角図である。示されるように、気道圧力支援システム2は、(簡略化形式で示される)ガス流発生器4、このガス流発生器4に結合される(簡略化形式で示される)ホース6及び新しい患者インターフェース装置10を含む。ガス流発生器4は、患者の気道に送出される呼吸ガス流を生成するように構成される。患者インターフェース装置10は、ガス流発生器4により生成される前記呼吸ガス流を受け取るためにホース6と流体連通している。
【0019】
図1の例において、患者インターフェース装置10は、ホース6に結合される結合部材(例えば限定ではないが、エルボー部材12)、ベース部14及び各々が患者の対応する鼻孔の内部に延在し、この鼻孔に封止係合するように構成される一対の鼻部100、200を含む。ベース部14は、ホース6に流体結合されていると理解される。明細書において、「流体結合される」又は「流体接続される」という言葉は、互いに結合される2つ以上の構成要素の間に流体経路が提供されることを意味する。さらに、エルボー部材12は、ベース部14に結合され、ホース6をこのベース部14と流体接続するために、ホース6に結合されるように構成される。
【0020】
ある例示的な実施例において、鼻部100、200は各々、枕形式の鼻部である。明細書において「枕形式」という言葉は、概ね円錐形の封止要素、鼻孔に挿入されるほど十分に小さく設計される前記円錐形の封止要素の頂部及び鼻孔の開口に対して封止するように設計される前記円錐形の封止要素のより広い底部を意味する。鼻部200は、好ましくは鼻部100と同じように構成及び構築されるが、例示し易くする及び開示を節約するために、鼻部100のみが本明細書に開示及び例示される。
【0021】
図2~4は、鼻部100の夫々等角図、分解等角図及び断面図を示す。
図3に最もはっきり示されるように、鼻部100は、延長部110及びこの延長部110に設けられるキャップ部材140を含む。ある実施例において、延長部110は、ベース部14から外側に延在する、及びこのベース部14と流体連通している。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が互いに「流体連通」していると述べることは、前記部品又は構成要素の間に流体経路が設けられることを意味する。このようにして、呼吸ガスは、ベース部14を通り延長部110に入ることができる。例示的な実施例において、ベース部14及び延長部110は、単一の材料片(例えば、限定ではないがシリコーン)から作られるユニタリな構成要素であるが、ベース部14及び延長部110が、開示される概念の範囲から逸脱することなく、別々に形成されてもよい。キャップ部材140及び延長部110は、適切な結合機構により結合される別個の構成要素であってもよい。
【0022】
例えば、
図4に示されるように、延長部110及びキャップ部材140は、各々対応する環状の結合部122、152を有する。ある例示的な実施例において、延長部110の結合部は、環状の溝領域122の形状である、及びキャップ部材140の結合部は、環状の突出152の形状であり、キャップ部材140の外側から、延長部110及びキャップ部材140の中心を通り延在する共通の縦軸170に向かって半径方向内側に突出している。図示されるように、突出152は、スナップフィット(snap-fit)機構を介して前記溝領域122に結合され、延長部110に対して外側に置かれる。代替的に、適切な代替の鼻部(例えば、
図5に示される鼻部100')は、接着部180'により延長部110'に結合される、キャップ部材140'の結合部152'を有してもよい。上述した延長部110、110'及びキャップ部材140、140'は、別々及び別個の構成要素として製造されるが、同様の適切な代替の鼻部(図示せず)が単一の材料片から製造される(例えば、同時成形(co-molding)を介して)延長部及びキャップ部材を有し得ると理解される。
【0023】
図3を引き続き参照すると、延長部110及びキャップ部材140は、複数の遠位縁部112、114、142、144、及びこれら遠位縁部112、114、142、144を接続する少なくとも1つの中間縁部116、118、146、148を各々有する。延長部110及びキャップ部材140は、複数のフラップ部113、115、143、145及び複数の切り欠き117、119、147、149を各々有する。切り欠き117、119、147、149は、対応する中間縁部116、118、146、148及び遠位縁部112、114、142、144により境界が定められる空隙である。遠位縁部112、114は、好ましくは同一平面上にあり、キャップ部材140及び延長部110が組み立てられるとき、キャップ部材140の遠位縁部142、144は、好ましくは延長部110の遠位縁部112、114と同一平面上にある。中間縁部116、118は、好ましくは互いに対向し、離間され、中間縁部146、148も好ましくは、互いに対向し、離間される。
図2に示されるように、延長部110の遠位縁部112、114及びキャップ部材140の遠位縁部142、144は共に、呼吸ガス流が鼻部100を出て、患者の気道を通るのに通過する開口160を画定する。例示的な実施例において、延長部110の中間縁部116、118は、キャップ部材140に対して実質的に内側に置かれる。それ故に、キャップ部材140は、延長部110に対して外側に置かれ、中間縁部116、118と封止係合されるように構成される。さらに、キャップ部材140の中間縁部146、148は、延長部110に対して実質的に外側に置かれる。
【0024】
既知の鼻部(図示せず)とは異なり、鼻部100は、ある位置とある位置との間を移動するように構成され、多くの利点を提供する。より具体的には、
図6及び
図7を参照すると、延長部110及びキャップ部材140は、第1の位置(
図6)と第2の位置(
図7)との間を移動するように各々構成され、延長部110及びキャップ部材140が第1の位置と第2の位置との間を移動するとき、キャップ部材140は、延長部110に対して独立して移動する。
図6及び
図7は鼻部100の上面図であるため、(点で表される)縦軸170は、紙面に出入りするように延在し、紙面に垂直であると理解される。
図6及び
図7を比較すると、キャップ部材140及び延長部110が第1の位置から第2の位置に移動するとき、キャップ部材140及び延長部110は、縦軸170に対して半径方向外側に各々広がることが分かる。例えば、
図6の第1の位置において、前記開口は、第1の直径172を有し、
図7の第2の位置において、前記開口は、第1の直径172よりも大きい第2の直径174を有する。何れにしても、開口は必ずしも円形であるというわけではないが、第1の位置から第2の位置で開口の領域が増大することが理解され得る。
【0025】
この動きを達成するために、例えば、呼吸ガスが鼻部100を通過するとき、遠位縁部112、114、142、144は、互いに対して摺動する。つまり、第1の位置から第2の位置に移動するとき、延長部110の遠位縁部112、114は、呼吸ガスにより遠位縁部142、144の間にある空間に押し込まれ、故に出口の開口160のサイズを広げさせると理解され得る(
図6及び
図7参照)。患者インターフェース装置10(
図1)が患者により装着され、呼吸/治療ガス流が供給されると、呼吸ガスが鼻部100を通り、患者の気道内に入るとき、開口160が拡大される。その上、一次出口の開口のサイズが拡大されるので、鼻部110に存在する呼吸ガスに関連する圧力降下も同様に減少し、それ故に、患者に対する圧力支援療法のより快適な送達がもたらされる。従って、患者は、患者インターフェース装置10を使用するより快適な体験が提供される。その上、これは、ヘッドギアの精密な力にあまり頼らない封止要素となり、封止性能を長期間持続する。
【0026】
図8及び
図9は、開示される概念のもう1つの非限定的な例示的な実施例における、鼻部100、200の何れかの代わりに、患者インターフェース装置10に実装され得る、もう1つの鼻部300の夫々等角図及び分解等角図である。鼻部300は、上述した鼻部100、200と同様に構成され、同様の番号は同様の構成要素を示す。
図9に明確に示されるように、延長部310は、延長部110と実質的に同じ構造である。すなわち、延長部310は、対向する遠位縁部312、314、及びこれら遠位縁部312、314の間に延在する中間縁部316、318を有する。しかしながら、鼻部100とは異なり、鼻部300は、1つの遠位縁部342だけを有するキャップ部材340を備える。
図8に示されるように、延長部310の上に組み立てられるとき、キャップ部材340の遠位縁部342は、遠位縁部312、314と概ね同一平面上にあり、これら遠位縁部312、314に対して外側に置かれる。しかしながら、適切な代替の鼻部は、開示される概念の範囲から逸脱することなく、同一平面の遠位縁部を持つ必要がないことが理解される。さらに、キャップ部材140とは異なり、キャップ部材340は、比較的薄く(例えば、限定ではないが0.05~0.5mm)なるように構成され、それにより、鼻部100に関して上述したのと同じように第1の位置と第2の位置との間の移動を可能にする。具体的には、第1の位置と第2の位置との間を移動するとき、内部空気圧は、遠位縁部312、314を半径方向外側に広げさせる、及びキャップ部材340の単一の遠位縁部342も半径方向外側に広げさせる。従って、鼻部300の一次出口の開口360は、上述した鼻部100の開口160が拡大されるのと実質的に同じように拡大されることが理解され得る。
【0027】
さらに、中間縁部316、318を殆ど取り囲むことにより、キャップ部材340は、延長部310とキャップ部材340との間におけるの漏出点(リークポイント)の数を最小限にするという追加の機能を果たすことが理解される。例えば、延長部310の外側とキャップ部材340の内側との間の空間内に入り込む、中間縁部316、318の近位を通る呼吸ガスは、有利には一次出口の開口の近位以外、鼻部300を出る位置を持たない。
【0028】
図10及び
図11は、開示される概念のもう1つの非限定的な実施例による、もう1つの鼻部400の夫々等角図及び分解等角図である。鼻部400は、上述した鼻部100,200,300と同様に構成され、同様の番号は同様の構成要素を示すが、鼻部400は鼻カニューレである。明細書において、「鼻カニューレ」という言葉は、鼻孔内に挿入され、鼻孔の内面に対して封止するように設計される概ね円筒形の要素を意味する。例えば、
図11に示されるように、延長部410は、遠位縁部412、414及び中間縁部416、418から延在する概ね円筒形状部411を有する。同様に、キャップ部材440は、遠位縁部442、444及び中間縁部446、448から延在する概ね円筒形状部441を有する。延長部410及びキャップ部材440は、複数のフラップ部413、415、443、445及び複数の切り欠き417、419、447、449を各々有する。切り欠き417、419、447、449は、対応する中間縁部416、418、446、448及び遠位縁部412、414、442、444により境界が定められる空隙である。従って、枕形式の鼻部100、100'、200、300に加えて、鼻カニューレである鼻部400が、本明細書において考察され得ると理解される。特に、鼻部400は、第1の位置から第2の位置に外側に広がるように構成され、鼻孔と係合し、より大きな流路を提供する。
【0029】
図12及び
図13は、開示される概念のもう1つの非限定的な実施例による、鼻部100、200の何れかに代わる、患者インターフェース装置10(
図1)に実装されるもう1つの鼻部500の夫々断面図及び分解等角図である。鼻部500は、上述した鼻部100、200、300、400と同様に構成され、同様の番号は同様の構成要素を示す。しかしながら、図示されるように、延長部510及びキャップ部材540は共に、対応する1つの単一中間縁部516、546だけを各々有する。例えば、
図13に示されるように、延長部510及びキャップ部材540は、1つの単一フラップ部513、543及び1つの単一切り欠き517、547を各々有する。切り欠き517、547は、中間縁部516、546及び遠位縁部512、542により境界が定められる空隙である。従って、鼻部500は、呼吸ガスが一次出口の開口の他に出る可能性のある場所の数を最小限にする機構を持つと理解される。具体的に、延長部510に入り、患者の鼻孔の内部に向かって通る際、(例えば、2つの対向する中間縁部を介する)2つの可能性のある側部出口の開口を持つのではなく、延長部510は、呼吸ガスが逃げる可能性のある経路を提供する1つの単一中間縁部516だけを有する。その上、上記呼吸ガスが、中間縁部516を通り、延長部510の外側とキャップ部材540の内側との間にある空間に逃げたとしても、キャップ部材540は単に、前記呼吸ガスが逃げるのに通る1つの単一中間縁部546を備えるだけである。
【0030】
従って、開示される概念は、改善される(例えば、鼻部を出る際の圧力降下の減少、更なる快適性、ヘッドギアの精密な力の必要性を減らす)鼻部100、100'、200、300、400、500及びそれらを含む患者インターフェース装置10を提供することが理解される。
【0031】
請求項において、括弧の間に置かれる如何なる参照記号もその請求項を限定するとは解釈されるべきではない。「有する」又は「含む」という言葉は、請求項に挙げられる以外の素子又はステップの存在を排除するものではない。幾つかの手段を列挙している装置の請求項において、これらの手段の幾つかは、ハードウェアの同一のアイテムによって具現化されてもよい。要素が複数あると述べていなくても、その要素が複数あることを排除しない。幾つかの手段を列挙している如何なる装置の請求項において、これらの手段の幾つかは、ハードウェアの1つの同じアイテムによって具現化されてもよい。幾つかの要素が互いに異なる従属請求項に挙げられているという単なる事実は、これらの要素が組み合わせて使用されることができないことを示していない。
【0032】
本発明は、最も実用的で好ましい実施例であると現在考えられているものに基づいて、例示の目的に詳細に説明されていたとしても、そのような詳細は、単に例示が目的であること、並びに本発明は、開示される実施例に限定されるのではなく、それどころか添付の特許請求の範囲の主旨及び範囲内にある修正案及び同等の構成を含むことが意図されることを理解されたい。例えば、本発明は、可能な限り、何れかの実施例の1つ以上の特徴が他の何れかの実施例の1つ以上の特徴と組み合わされ得ることを検討していることが理解されるべきである。例えば、