(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】焼却炉
(51)【国際特許分類】
F23G 5/00 20060101AFI20240418BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20240418BHJP
F23L 9/02 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
F23G5/00 109
F23G5/44 F
F23G5/00 C
F23L9/02
(21)【出願番号】P 2021507227
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2020010168
(87)【国際公開番号】W WO2020189394
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019047859
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重政 祥子
(72)【発明者】
【氏名】古林 通孝
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/147030(WO,A1)
【文献】特開平05-113208(JP,A)
【文献】特表2014-513786(JP,A)
【文献】特開2003-172508(JP,A)
【文献】特開2005-201548(JP,A)
【文献】特開2009-121747(JP,A)
【文献】特開2009-236388(JP,A)
【文献】中国実用新案第208154485(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第19648639(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第102980194(CN,A)
【文献】特開2017-145979(JP,A)
【文献】特開2017-145980(JP,A)
【文献】特開2014-167353(JP,A)
【文献】中国実用新案第202692074(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00
F23G 5/44
F23C 9/08
F23C 99/00
F23L 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側から後側に向けて乾燥段と燃焼段と後燃焼段とをこの順に有するとともに、
乾燥段から燃焼段に向けて下向きに傾斜し、前側の天井壁と後側の天井壁と後壁とを有した一次燃焼室と、
一次燃焼室の出口側に接続して設けられるとともに二次燃焼用ガス供給ノズルを有した二次燃焼室とを備え、
一次燃焼室には、後側の天井壁と後壁とのうちの少なくともいずれか一方に、空気と、EGRガスと、空気およびEGRガスの混合ガスとのうちいずれかを前側に向けて供給する一次燃焼室用後部供給ノズルを有し、
前側の天井壁に、一次燃焼室内にガスを供給するノズルが設置されず、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、この一次燃焼室用後部供給ノズルから供給されるガス流によって、燃焼段で発生した未燃ガスを後壁側に引き寄せるものであり、
二次燃焼室には、後側に向けてガス流を供給する前部供給ノズルを有し、
前部供給ノズルは、この前部供給ノズルから供給されるガス流によって、乾燥段で発生した未燃ガスを、前側に引き寄せたうえで二次燃焼室に流れ込ませるものであ
り、
複数の二次燃焼用ガス供給ノズルが上下多段に設置されており、最下段の後側に向けてガス流を供給する二次燃焼用ガス供給ノズルが前部供給ノズルを兼ね、
最下段の二次燃焼用ガス供給ノズルからの流量を定量とし、他の二次燃焼用ガス供給ノズルからの流量を調節することで、二次空気の供給量の調節機能を発揮するものであることを特徴とする焼却炉。
【請求項2】
前側から後側に向けて乾燥段と燃焼段と後燃焼段とをこの順に有するとともに、後側の天井壁と後壁とを有した一次燃焼室と、
一次燃焼室の出口側に接続して設けられるとともに二次燃焼用ガス供給ノズルを有した二次燃焼室と
、
制御装置とを備え、
一次燃焼室には、後側の天井壁と後壁とのうちの少なくともいずれか一方に、空気と、EGRガスと、空気およびEGRガスの混合ガスとのうちいずれかを前側に向けて供給する一次燃焼室用後部供給ノズルを有し、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、少なくとも空気を一次燃焼室に供給するものであり、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、この一次燃焼室用後部供給ノズルから供給されるガス流によって、燃焼段で発生した未燃ガスを後壁側に引き寄せるものであり、
制御装置は、一次燃焼室用後部供給ノズルから一次燃焼室へのガスの供給量を制御することで一次燃焼室における酸素濃度を調節するためのものであり、
複数の一次燃焼室用後部供給ノズルが上下多段に設置されており、
複数の一次燃焼室用後部供給ノズルにおいて、一部の一次燃焼室用後部供給ノズルにおけるガス供給量を固定し、その他の一次燃焼室用後部供給ノズルにおけるガス供給量を制御することで、一次燃焼室における酸素濃度を調節するものであり、
二次燃焼室には、後側に向けてガス流を供給する前部供給ノズルを有し、
前部供給ノズルは、この前部供給ノズルから供給されるガス流によって、乾燥段で発生した未燃ガスを、前側に引き寄せたうえで二次燃焼室に流れ込ませるものであることを特徴とする焼却炉。
【請求項3】
前部供給ノズルからの供給ガスが、一次燃焼室用後部供給ノズルからの供給ガスと干渉しないように、前部供給ノズルと一次燃焼室用後部供給ノズルとが互い違いに配置されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の焼却炉。
【請求項4】
一次燃焼室は、投入ホッパと、投入ホッパから繋がる間口と、間口から繋がる前側の天井壁とを備え、
前側の天井壁の後部において一次燃焼室が二次燃焼室に接続され、
前部供給ノズルは、ガス流を水平方向または水平方向よりも下向きに噴射するものであり、
前側の天井壁は、前側から後側に向かうにつれて、水平方向に対し上向きに0度を超えかつ60度以下である角度で傾斜していることを特徴とする請求項1
または2に記載の焼却炉。
【請求項5】
二次燃焼室は、前部供給ノズルを設置するための前壁を有し、この前壁は、乾燥段の後端よりも後側に位置することを特徴とする請求項1
または2に記載の焼却炉。
【請求項6】
前側から後側に向けて乾燥段と燃焼段と後燃焼段とをこの順に有するとともに、
乾燥段から燃焼段に向けて下向きに傾斜し、前側の天井壁と後側の天井壁と後壁とを有した一次燃焼室と、
一次燃焼室の出口側に接続して設けられるとともに二次燃焼用ガス供給ノズルを有した二次燃焼室とを備え
る焼却炉の運転方法であって、
一次燃焼室
が後側の天井壁と後壁とのうちの少なくともいずれか一方に
有する一次燃焼室用後部供給ノズルは、空気と、EGRガスと、空気およびEGRガスの混合ガスとのうちいずれかを前側に向けて供
給し、
前側の天井壁に、一次燃焼室内にガスを供給するノズルが設置されず、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、この一次燃焼室用後部供給ノズルから供給されるガス流によって、燃焼段で発生した未燃ガスを後壁側に引き寄
せ、
二次燃焼室
が有する前部供給ノズルは、後側に向けてガス流を供
給し、
前部供給ノズルは、この前部供給ノズルから供給されるガス流によって、乾燥段で発生した未燃ガスを、前側に引き寄せたうえで二次燃焼室に流れ込ませ
、
複数の二次燃焼用ガス供給ノズルが上下多段に設置されており、最下段の後側に向けてガス流を供給する二次燃焼用ガス供給ノズルが前部供給ノズルを兼ね、
最下段の二次燃焼用ガス供給ノズルからの流量を定量とし、他の二次燃焼用ガス供給ノズルからの流量を調節することで、二次空気の供給量の調節機能を発揮することを特徴とする焼却炉
の運転方法。
【請求項7】
前側から後側に向けて乾燥段と燃焼段と後燃焼段とをこの順に有するとともに、後側の天井壁と後壁とを有した一次燃焼室と、
一次燃焼室の出口側に接続して設けられるとともに二次燃焼用ガス供給ノズルを有した二次燃焼室と
、制御装置とを備え
る焼却炉の運転方法であって、
一次燃焼室
が後側の天井壁と後壁とのうちの少なくともいずれか一方に
有する一次燃焼室用後部供給ノズルは、空気と、EGRガスと、空気およびEGRガスの混合ガスとのうちいずれかを前側に向けて供給し、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、少なくとも空気を一次燃焼室に供給し、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、この一次燃焼室用後部供給ノズルから供給されるガス流によって、燃焼段で発生した未燃ガスを後壁側に引き寄
せ、
制御装置は、一次燃焼室用後部供給ノズルから一次燃焼室へのガスの供給量を制御することで一次燃焼室における酸素濃度を調節し、
複数の一次燃焼室用後部供給ノズルが上下多段に設置されており、
複数の一次燃焼室用後部供給ノズルにおいて、一部の一次燃焼室用後部供給ノズルにおけるガス供給量を固定し、その他の一次燃焼室用後部供給ノズルにおけるガス供給量を制御することで、一次燃焼室における酸素濃度を調節し、
二次燃焼室
が有する前部供給ノズルは、後側に向けてガス流を供給
し、
前部供給ノズルは、この前部供給ノズルから供給されるガス流によって、乾燥段で発生した未燃ガスを、前側に引き寄せたうえで二次燃焼室に流れ込ませ
ることを特徴とする焼却炉
の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
JPH05-113208Aには、焼却炉において、二次燃焼室に適当量の二次空気を供給するとともに、EGRガス(Exhaust Gas Recirculation におけるガス)を一次燃焼室の後側の天井部から供給するようにしたものが開示されている。これにより、二次空気によって二次燃焼室における未燃ガスの燃焼に必要な最低限の酸素量を確保するとともに、EGRガスの供給により発生する撹拌気流によって二次空気と未燃ガスとの十分な撹拌を行うようにしている。JPH05-113208Aの段落0015では、このようにすることで、高い燃焼ガス温度を維持して一酸化炭素(CO)およびダイオキシン類の生成を抑制することができると説明されている。
【0003】
JPH07-158827Aには、焼却炉において、一次燃焼室の後側の天井部に二次燃焼用空気の供給用のノズルを設け、当該ノズルから廃棄物の燃焼火炎の内方もしくはその先端部近傍に二次燃焼用空気を供給するようにしたものが開示されている。JPH07-158827Aの段落0013には、供給された二次燃焼空気が高温の火炎へ直接に接触し、火炎の内方及び火炎の外周部近傍の酸素濃度が高まることにより、火炎の外周部近傍に存在する多量の未燃煤媒やCO等の未燃ガスが旺盛に燃焼すると記載されている。そして、その結果、二次燃焼室内へ移行する未燃煤媒やCOの総量が減少して、黒煙の発生が防止されると共に、排ガス中のCO濃度が減少すると説明されている。
【0004】
しかしながら、JPH05-113208AやJPH07-158827Aに記載の技術では、多量の未燃煤媒やCO等の未燃ガスが一次燃焼室において旺盛に燃焼するが、一次燃焼室における後燃焼火格子(後側)と、この後燃焼火格子が設けられた燃焼室の天井壁との間の空間が十分に活用されていない。このため一次燃焼室内または二次燃焼室内の未燃ガスの濃度が局所的に高くなり、それを原因として窒素酸化物(NOx)が発生するという問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、JP2014-167353Aでは、焼却炉の一次燃焼室における前側の天井壁から後方に向けて前側からの再循環排ガスを供給するとともに、同一次燃焼室における後壁または後側天井壁から前方に向けて後側からの再循環排ガスを供給するようにしたものが開示されている。このような構成であると、一次燃焼室における燃焼位置が基準範囲に比べて前寄りにある場合と、後寄りにある場合と、基準範囲内にある場合とに場合分けし、各場合に応じて前側からの再循環排ガスと後側からの再循環排ガスとの配分比を変更することで、NOx濃度の大幅な低減を可能とすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、JP2014-167353Aに記載された技術をさらに改良して、焼却炉の一次燃焼室における前側の天井壁から後方に向けて前側からの再循環排ガスを供給するとともに、同一次燃焼室における後壁または後側天井壁から前方に向けて後側からの再循環排ガスを供給することでNOx濃度の大幅な低減を可能とするようにしたものと比べて、より簡単な構成でありながら同様のNOx低減効果を発揮することができる焼却炉を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の焼却炉は、
前側から後側に向けて乾燥段と燃焼段と後燃焼段とをこの順に有するとともに、乾燥段から燃焼段に向けて下向きに傾斜し、前側の天井壁と後側の天井壁と後壁とを有した一次燃焼室と、
一次燃焼室の出口側に接続して設けられるとともに二次燃焼用ガス供給ノズルを有した二次燃焼室とを備え、
一次燃焼室には、後側の天井壁と後壁とのうちの少なくともいずれか一方に、空気と、EGRガスと、空気およびEGRガスの混合ガスとのうちいずれかを前側に向けて供給する一次燃焼室用後部供給ノズルを有し、
前側の天井壁に、一次燃焼室内にガスを供給するノズルが設置されず、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、この一次燃焼室用後部供給ノズルから供給されるガス流によって、燃焼段で発生した未燃ガスを後壁側に引き寄せるものであり、
二次燃焼室には、後側に向けてガス流を供給する前部供給ノズルを有し、
前部供給ノズルは、この前部供給ノズルから供給されるガス流によって、乾燥段で発生した未燃ガスを、前側に引き寄せたうえで二次燃焼室に流れ込ませるものであり、
複数の二次燃焼用ガス供給ノズルが上下多段に設置されており、最下段の後側に向けてガス流を供給する二次燃焼用ガス供給ノズルが前部供給ノズルを兼ね、
最下段の二次燃焼用ガス供給ノズルからの流量を定量とし、他の二次燃焼用ガス供給ノズルからの流量を調節することで、二次空気の供給量の調節機能を発揮するものであることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため本発明の焼却炉は、
前側から後側に向けて乾燥段と燃焼段と後燃焼段とをこの順に有するとともに、後側の天井壁と後壁とを有した一次燃焼室と、
一次燃焼室の出口側に接続して設けられるとともに二次燃焼用ガス供給ノズルを有した二次燃焼室と、
制御装置とを備え、
一次燃焼室には、後側の天井壁と後壁とのうちの少なくともいずれか一方に、空気と、EGRガスと、空気およびEGRガスの混合ガスとのうちいずれかを前側に向けて供給する一次燃焼室用後部供給ノズルを有し、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、少なくとも空気を一次燃焼室に供給するものであり、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、この一次燃焼室用後部供給ノズルから供給されるガス流によって、燃焼段で発生した未燃ガスを後壁側に引き寄せるものであり、
制御装置は、一次燃焼室用後部供給ノズルから一次燃焼室へのガスの供給量を制御することで一次燃焼室における酸素濃度を調節するためのものであり、
複数の一次燃焼室用後部供給ノズルが上下多段に設置されており、
複数の一次燃焼室用後部供給ノズルにおいて、一部の一次燃焼室用後部供給ノズルにおけるガス供給量を固定し、その他の一次燃焼室用後部供給ノズルにおけるガス供給量を制御することで、一次燃焼室における酸素濃度を調節するものであり、
二次燃焼室には、後側に向けてガス流を供給する前部供給ノズルを有し、
前部供給ノズルは、この前部供給ノズルから供給されるガス流によって、乾燥段で発生した未燃ガスを、前側に引き寄せたうえで二次燃焼室に流れ込ませるものであることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、上記の焼却炉において、前部供給ノズルからの供給ガスが、一次燃焼室用後部供給ノズルからの供給ガスと干渉しないように、前部供給ノズルと一次燃焼室用後部供給ノズルとが互い違いに配置されていることが好適である。
【0010】
本発明によれば、上記の焼却炉において、一次燃焼室は、投入ホッパと、投入ホッパから繋がる間口と、間口から繋がる前側の天井壁とを備え、
前側の天井壁の後部において一次燃焼室が二次燃焼室に接続され、
前部供給ノズルは、ガス流を水平方向または水平方向よりも下向きに噴射するものであり、
前側の天井壁は、前側から後側に向かうにつれて、水平方向に対し上向きに0度を超えかつ60度以下である角度で傾斜していることが好適である。
【0011】
本発明によれば、上記の焼却炉において、二次燃焼室は、前部供給ノズルを設置するための前壁を有し、この前壁は、乾燥段の後端よりも後側に位置することが好適である。
【0012】
本発明の焼却炉の運転方法は、
前側から後側に向けて乾燥段と燃焼段と後燃焼段とをこの順に有するとともに、乾燥段から燃焼段に向けて下向きに傾斜し、前側の天井壁と後側の天井壁と後壁とを有した一次燃焼室と、
一次燃焼室の出口側に接続して設けられるとともに二次燃焼用ガス供給ノズルを有した二次燃焼室とを備える焼却炉の運転方法であって、
一次燃焼室が後側の天井壁と後壁とのうちの少なくともいずれか一方に有する一次燃焼室用後部供給ノズルは、空気と、EGRガスと、空気およびEGRガスの混合ガスとのうちいずれかを前側に向けて供給し、
前側の天井壁に、一次燃焼室内にガスを供給するノズルが設置されず、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、この一次燃焼室用後部供給ノズルから供給されるガス流によって、燃焼段で発生した未燃ガスを後壁側に引き寄せ、
二次燃焼室が有する前部供給ノズルは、後側に向けてガス流を供給し、
前部供給ノズルは、この前部供給ノズルから供給されるガス流によって、乾燥段で発生した未燃ガスを、前側に引き寄せたうえで二次燃焼室に流れ込ませ、
複数の二次燃焼用ガス供給ノズルが上下多段に設置されており、最下段の後側に向けてガス流を供給する二次燃焼用ガス供給ノズルが前部供給ノズルを兼ね、
最下段の二次燃焼用ガス供給ノズルからの流量を定量とし、他の二次燃焼用ガス供給ノズルからの流量を調節することで、二次空気の供給量の調節機能を発揮することを特徴とする。
【0013】
本発明の焼却炉の運転方法は、
前側から後側に向けて乾燥段と燃焼段と後燃焼段とをこの順に有するとともに、後側の天井壁と後壁とを有した一次燃焼室と、
一次燃焼室の出口側に接続して設けられるとともに二次燃焼用ガス供給ノズルを有した二次燃焼室と、制御装置とを備える焼却炉の運転方法であって、
一次燃焼室が後側の天井壁と後壁とのうちの少なくともいずれか一方に有する一次燃焼室用後部供給ノズルは、空気と、EGRガスと、空気およびEGRガスの混合ガスとのうちいずれかを前側に向けて供給し、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、少なくとも空気を一次燃焼室に供給し、
一次燃焼室用後部供給ノズルは、この一次燃焼室用後部供給ノズルから供給されるガス流によって、燃焼段で発生した未燃ガスを後壁側に引き寄せ、
制御装置は、一次燃焼室用後部供給ノズルから一次燃焼室へのガスの供給量を制御することで一次燃焼室における酸素濃度を調節し、
複数の一次燃焼室用後部供給ノズルが上下多段に設置されており、
複数の一次燃焼室用後部供給ノズルにおいて、一部の一次燃焼室用後部供給ノズルにおけるガス供給量を固定し、その他の一次燃焼室用後部供給ノズルにおけるガス供給量を制御することで、一次燃焼室における酸素濃度を調節し、
二次燃焼室が有する前部供給ノズルは、後側に向けてガス流を供給し、
前部供給ノズルは、この前部供給ノズルから供給されるガス流によって、乾燥段で発生した未燃ガスを、前側に引き寄せたうえで二次燃焼室に流れ込ませることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前部供給ノズルは、この前部供給ノズルから供給されるガス流によって、乾燥段で発生した未燃ガスを、前側に引き寄せ、二次燃焼室に流れ込ませることができるため、焼却炉の一次燃焼室における前側の天井壁から再循環排ガスを供給するようにした従来のものと同様のサーマルNOx低減効果の達成に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る焼却炉の構成を示す正面図である。
【
図2】同焼却炉における要部の平面視の拡大断面図である。
【
図3】同焼却炉における二次燃焼室の平面視の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示される焼却炉は、ごみ供給部11と、一次燃焼室12と、二次燃焼室13と、排ガス経路14とを備える。一次燃焼室12と二次燃焼室13とでは、ごみの燃焼と、ごみから発生した炭素と水素を主成分とする未燃ガスの燃焼とが行われる。一次燃焼室12は、上部に排ガスの出口15が設けられ、この出口15によって一次燃焼室12と二次燃焼室13とが連通している。ごみ供給部11は、ごみ受け入れ用の投入ホッパ16と、図外のごみピットからのごみ17を投入ホッパ16に投入するクレーン18と、投入ホッパ16の底部から一次燃焼室12の内部にごみを供給するための給塵装置としてのプッシャ19とを備える。
【0022】
図示の焼却炉において、一次燃焼室12は、複数の壁部によって構築されている。詳細には、投入ホッパ16が設けられている側を前側と規定するとともに、投入ホッパ16から離れた側を後側と規定すると、一次燃焼室12は、投入ホッパから繋がる間口20と、間口20の上端から後側に向かうにつれて次第に上昇するように傾斜して設けられた前側の天井壁21と、他方で、後側に設置される上下方向の後壁22と、後壁22の上端から前側に向かうにつれて次第に上昇するように傾斜して設けられた後側の天井壁23とを有する。一次燃焼室12からの排ガスの出口15は、前側の天井壁21の後部と後側の天井壁23の前部との間に設けられている。
【0023】
本発明において、前側の天井壁21には、一次燃焼室12内にガスを供給するノズルは設置されない。なぜなら、ごみ焼却炉内に供給することが可能なトータルのガス供給量(「流量」とも称する)は、排ガスの酸素濃度や炉内の温度が適切な値になるように適切な量が決められることから、前側の天井壁21に一次燃焼室12内にガスを供給するノズルを設置しないことにより、ごみ焼却炉に設置している他のノズル(特に、後述する二次燃焼用ガス供給ノズル44及び一次燃焼室用後部供給ノズル40)が供給することが可能なガス供給量を増加させることが出来るためである。また、イニシャルコストの削減、省スペース化などの利点もあるためである。
【0024】
前側の天井壁21は、乾燥段24の天井壁21にノズルを設置せずとも、乾燥段24で発生した未燃ガスを一次燃焼室12の前側の部分に流しやすいように、水平方向に対する天井壁21の傾斜角をたとえば15度以上かつ40度以下とすることが好ましく、15度以上かつ30度以下とすることがさらに好ましい。前側の天井壁21の長さは、1m以上かつ5m以下であることが好ましく、2m以上かつ4m以下であることがさらに好ましい。
【0025】
後側の天井壁23は、一次燃焼室12において、燃焼段25や後燃焼段26での燃焼により生成され二次燃焼室13へと向かう未燃ガスを、
図1において符号64で示すように、一次燃焼室12の後壁22側へ引き寄せるようにするため、水平方向に対する天井壁23の傾斜角を15度以上かつ60度以下とすることが好ましく、15度以上かつ35度以下とすることがさらに好ましい。後側の天井壁23の長さは、2m以上かつ8m以下であることが好ましく、4m以上かつ7m以下であることがさらに好ましい。
【0026】
一次燃焼室12は、プッシャ19に続いて、前側から後側に向けて乾燥段24と燃焼段25と後燃焼段26とを、この順に有する。そして、乾燥段24の底部には乾燥用火格子27が設けられ、燃焼段25の底部には燃焼用火格子28が設けられ、後燃焼段26の底部には後燃焼用火格子29が設けられている(以下、乾燥用火格子27、燃焼用火格子28、後燃焼用火格子29は、それぞれ単に「火格子」と称することもある)。図示の焼却炉では、各火格子27、28、29のうち、乾燥用火格子27と燃焼用火格子28とが、前側から後側に向けて、すなわち乾燥段24から燃焼段25に向かう方向に沿って、下向きに傾斜して設けられている。そして、図示の焼却炉では、後燃焼用火格子29は、水平方向に設けられている。後燃焼段26よりも後側には、ごみ17を焼却することで発生した灰の排出口30が設けられている。乾燥用火格子27と燃焼用火格子28と後燃焼用火格子29を傾斜させる場合において、その傾斜角は、いずれも、一次燃焼室12内においてごみ17を容易に後側へ移送させるために、水平方向に対して0度以上かつ20度以下であることが好ましく、10度以上かつ20度以下であることがさらに好ましい。
【0027】
一次空気供給路31は、一次燃焼室12へ一次空気(燃焼用空気、以下、燃焼用空気は、単に「空気」と称することもある)を供給するための配管である。この一次空気供給路31は、各火格子27、28、29に対応して分岐されたうえで、各火格子27、28、29の下側にそれぞれ設けられた風箱32、33、34に接続されている。送風機(ファン)により、一次空気供給路31からの一次空気が各火格子を介して一次燃焼室12の内部に供給される。
【0028】
一次燃焼室12には、一次燃焼室用後部供給ノズル40が設けられる。この一次燃焼室用後部供給ノズル40は、後側の天井壁23と後壁22とのうちの少なくともいずれか一方に設けられる。また、焼却炉のサイズに応じて、一次燃焼室12の幅方向に所定間隔おきに並列して複数本が設置される。
【0029】
一次燃焼室用後部供給ノズル40は、その複数が上下多段且つ幅方向に同列に設置されていることが好ましい。また、一次燃焼室用後部供給ノズル40は、その複数が上下多段に設置されている場合、一部の一次燃焼室用後部供給ノズル40におけるガス供給量を固定し、その他の一次燃焼室用後部供給ノズル40におけるガス供給量を制御することによって、一次燃焼室用後部供給ガスのガス供給量を制御することが好ましい。このようにすることで、ガス供給量が固定された一次燃焼室用後部供給ノズル40から供給される充分な流速のガス流によって、特に燃焼段25で発生した排ガスおよび未燃ガスを、後燃焼段26における一次燃焼室12内の上部の空間65に流れ込ませて、
図1において符号64で示す一次燃焼室内の流れを、安定的に保つことができる。その結果、一次燃焼室12における後燃焼火格子29と、一次燃焼室12における後燃焼火格子29が設けられた部分の天井壁23との間の空間65が十分に活用されて、未燃ガスの燃焼がなされる。例えば、ガス供給量が固定される一次燃焼室用後部供給ノズル40の供給量は、ノズルの口径によっても異なるが、流速が35m/s~70m/sとなるようにすることが好ましい。
【0030】
上記した一部を除くところの、その他の一次燃焼室用後部供給ノズル40は、上述のように酸素を含むガスの供給量を制御できるものであることが好ましい。酸素を含むガスの供給量が制御される一次燃焼室用後部供給ノズル40によって、一次燃焼室12内における酸素濃度を調節することができて、後燃焼火格子29が設けられた一次燃焼室12の空間65において、未燃ガスが適切な酸素濃度で効果的に燃焼される。一次燃焼室12の空間65において、未燃ガスが適切な酸素濃度で効果的に燃焼されることによって、不完全燃焼で発生するCOおよびダイオキシン類の生成も抑制することができる。
【0031】
このような場合、特に、最下段の一次燃焼室用後部供給ノズル40の供給量を固定し、最下段以外のその他の一次燃焼室用後部供給ノズル40の供給量を制御することが好ましい。最下段の一次燃焼室用後部供給ノズル40の供給量を固定することで、特に燃焼段25で発生した排ガスおよび未燃ガスを、後燃焼段26における一次燃焼室12の上部の空間65に流れ込ませることができ、燃焼室12における後燃焼火格子29の上部の空間65が十分に活用されて未燃ガスの燃焼がなされる。
【0032】
図1の例では、一次燃焼室用後部供給ノズル40は、上下2段で後側の天井壁23に設けられている。そして、
図2に示すように、一次燃焼室用後部供給ノズル40は、一次燃焼室12の幅方向に並列に各2本が設置されている。すなわち、40aは上段側の2本のノズル、40bは下段側の2本のノズルで、これらは所定間隔おきに幅方向に同列に配置されている。そして、図示の例では、上下両段のノズル40a、40bが、いずれも後側の天井壁23における後端側(後燃焼段26上の天井壁23)の部分に設けられている。なお、
図2は、その右側の部分において、一次燃焼室12における下段側の一次燃焼室用後部供給ノズル40bを設置した部分を断面表示するとともに、その左側の部分において、二次燃焼室13における後述の前部供給ノズル44を設置した部分を断面表示したものである。一次燃焼室用後部供給ノズル40は、前部供給ノズル44のガス流と互いに干渉することを避けるために、図示のように前部供給ノズル44と互い違い(千鳥状)に配置することが好ましい。なお、
図2において、一点鎖線38は、燃焼室12、13における中央の位置を示す。
【0033】
あるいは、
図2の構成に代えて、一次燃焼室用後部供給ノズル40は、一次燃焼室12のたとえば幅方向のサイズに応じて、その設置数を任意に変更することができる。たとえば、一次燃焼室12の幅方向のサイズが大きい場合には、上段側のノズル40aおよび下段側のノズル40bともに、一次燃焼室12の幅方向に並列に3本ずつ設置することもできる。その場合は、それに応じて二次燃焼室13のサイズも大きくなることに対応して、前部供給ノズル44も二次燃焼室13の幅方向に並列に3本設置することができる。そして、そのような場合には、上記とは異なって、一次燃焼室用後部供給ノズル40のガス流と、前部供給ノズル44のガス流とが互いに衝突する構成とすることもできる。
【0034】
さらに、炉の形状によっては、
図2の構成に代えて、一次燃焼室用後部供給ノズル40と前部供給ノズル44との少なくともいずれかを中央の位置38に配置することが好ましい場合もある。
【0035】
ガス供給路41は、一次燃焼室用後部供給ノズル40へ、空気と、EGRガスと、空気及びEGRガスの混合ガスとのうちの一つであるところの後部供給ガスを供給する配管である。そして、図示しない送風機(ファン)により、ガス供給路41から後部供給ガスが一次燃焼室用後部供給ノズル40を介して一次燃焼室12に供給される。このようにすることで、特に燃焼段25で発生した排ガスおよび未燃ガスを、後燃焼段26における一次燃焼室12の上部の空間65に流れ込ませること(旋回させること)ができ、一次燃焼室12における後燃焼火格子29と、この後燃焼火格子29が設けられた一次燃焼室12の天井壁23との間の空間65において、未燃ガスの燃焼がなされる。
【0036】
二次燃焼室13は、上述のように一次燃焼室12の出口15に接続して上向きに設けられている。二次燃焼室13は、その横断面を矩形状として設置されており、42は二次燃焼室13の前壁、43は二次燃焼室13の後壁である。そして、前側の天井壁21と前壁42とは、前側の交差部63Aにおいて接続されている。また、後側の天井壁23と後壁43とは、後側の交差部63Bにおいて接続されている。前側の交差部63Aと後側の交差部63Bとは、同じ高さとすることが好ましい。なお、前側の交差部63Aは、前側の天井壁21の後端と前壁42の下端とが断面円弧状に接続されていることが好ましい。火格子27、28から前側の交差部63Aまでの高さは、1.0m~5.0mであることが好ましく、2.0m~4.0mであることがさらに好ましい。
【0037】
図1および
図3に示すように、二次燃焼室13の前壁42及び後壁43には、二次燃焼室13に二次燃焼用ガスを供給する二次燃焼用ガス供給ノズル44が設けられている。二次燃焼用ガス供給ノズル44は、上下多段に設置されており、各段において、焼却炉のサイズに応じて所定間隔おきに幅方向に並列に複数本が設けられている。
図1に示される焼却炉においては、前壁42における二次燃焼用ガス供給ノズル44は、上下2段に設けられている。44aは上段側のノズル、44bは下段側のノズルである。
図3に示すように、各段において、二次燃焼用ガス供給ノズル44は、前壁42及び後壁43に、互いに干渉することを避けるために、互い違い(千鳥状)に配置される。
【0038】
図3は、
図2に示すように一次燃焼室用後部供給ノズル40が一次燃焼室12の幅方向に2本設置されている場合についての、二次燃焼室13の前壁42および後壁43における二次燃焼用ガス供給ノズル44の配置例を示す。図示のように、前壁42には2本の二次燃焼用ガス供給ノズル44が設けられ、後壁43には3本の二次燃焼用ガス供給ノズル44が設けられている。
【0039】
これに対し、たとえば上述のように一次燃焼室12の幅方向のサイズが大きく、それに応じて一次燃焼室用後部供給ノズル40を一次燃焼室12の幅方向に並列に3本設置するような場合には、それにしたがって二次燃焼室13のサイズも大きくなるため、二次燃焼室13の後壁43の二次燃焼用ガス供給ノズル44も、たとえば二次燃焼室13の幅方向に並列に4本設置することができる。なお、二次燃焼用ガス供給ノズル44の設置本数は、上記の例に限られるものではなく、炉のサイズすなわち二次燃焼室13のサイズに応じて任意である。
【0040】
二次燃焼用ガス供給ノズル44から供給される二次燃焼用ガスは、乾燥段24からの未燃ガスの一部61と、燃焼段25から一次燃焼室12の後壁22側へ引き寄せた後の未燃ガスの一部64とが合流した後の未燃ガスの燃焼を促す為のものである。二次燃焼用ガスは、二次空気(燃焼用空気)と、EGRガスと、二次空気およびEGRガスの混合ガスのうちのいずれかである。
【0041】
二次燃焼室13の前壁42の位置は、乾燥段24の後端よりも一次燃焼室12の後壁22側であることが望ましい。なぜなら、後述する前部供給ノズル44から供給されるガス流によって、乾燥段24で発生した未燃ガスを前壁42側に引き寄せ、また一次燃焼室用後部供給ノズル40から供給されるガス流によって、乾燥段24および燃焼段25で発生した未燃ガスを後壁22側に引き寄せるコントロールがしやすいためである。
【0042】
二次燃焼室13の前壁42には、前部供給ノズル44が設けられる。この前部供給ノズル44は、二次燃焼室13の前壁42における下端の近傍の位置に設けられる。具体的には、前壁42における下端から好ましくは0mm~2000mmの間に設けられ、さらに好ましくは300mm~800mmの間に配置される。前部供給ノズルが上下多段に設けられる場合、1段目は、下端から好ましくは0mm~1000mmの間、さらに好ましくは500mm~800mmの間に配置される。また2段目は、下端から好ましく300mm~2000mmの間、さらに好ましくは500mm~800mmの間に配置される。また、上述のように、焼却炉のサイズに応じて、二次燃焼室13の前壁42の幅方向に並列して複数本が設置される。
【0043】
前部供給ノズル44は、水平方向又は水平方向より下向きに噴出させることが好ましい。具体的には、前部供給ノズル44は、水平方向から0度以上かつ30度以下の角度でガスを噴出させることが好ましい。前部供給ノズル44、流速が20m/s~60m/sになるようにガス供給量が制御される。
【0044】
図1の焼却炉においては、二次燃焼室13の前壁42における下端の近傍の位置に設けられ後側に向けてガス流を供給する二次燃焼用ガス供給ノズル44が、前部供給ノズル44を兼ねている例が示されている。すなわち、一次燃焼室12との連通口である出口15の近傍における二次燃焼室13の前壁42の下端の近傍の位置に、前部供給ノズルを兼ねている二次燃焼用ガス供給ノズル44が設けられている。なお、
図1に示される焼却炉においては、二次燃焼用ガス供給ノズル44は、二次燃焼室13の後壁43の下端の近傍にも、前部供給ノズルを兼ねている二次燃焼用ガス供給ノズル44と対峙して、二次燃焼室13の未燃ガスを攪拌するために設けられている。
【0045】
図1に示される焼却炉においては、二次燃焼室13に接続される排ガス経路14よりも下流側に、バグフィルタ45と誘引ファン46と煙突47とが設けられている。その他に、減温塔やエコノマイザ等を適宜設けることもできる。
【0046】
排ガス経路14には、排ガスを熱源とするボイラ48が設けられている。流量計49は、ボイラ48からの蒸気流量を測定するためのものである。また、排ガス経路14には、この経路14を通る排ガスの酸素濃度を検出するための酸素濃度センサ51が設けられている。酸素濃度計52は、酸素濃度センサ51からの信号を受けて酸素濃度を演算する。煙突47や他の排ガス路の部分には、単数種類または複数種類の排ガスセンサ53が設けられている。この排ガスセンサ53は、NOx計やSOx計やCO計や酸素濃度計などの排ガス測定計55に接続されている。
【0047】
図1において、54は制御装置で、図示された焼却炉の燃焼状態を制御するためのものである。詳細な説明は省略するが、一次空気供給路31における各分岐路や、二次燃焼用ガス供給ノズル44へのガス供給路や、一次燃焼室用後部供給ノズル40へのガス供給路41には、流量計やダンパが設けられている。制御装置54は、各流量計からの信号を受取ったうえで、各ダンパが所要の開度となるように制御する。
【0048】
このような構成において、一次燃焼室12と二次燃焼室13とでは、ごみ17の燃焼と、ごみ17から発生した炭素と水素を主成分とする未燃ガスの燃焼とが行われる。特に、二次燃焼室13では、二次燃焼用ガス供給ノズル44からの酸素を含むガスによって、一次燃焼室12で発生した未燃ガスが燃焼される。詳細には、プッシャ19によって投入ホッパ16から一次燃焼室12に送り込まれたごみ17は、乾燥段24において乾燥され、乾燥段24への次のごみの送り込みに伴って燃焼段25へ送り込まれ、燃焼段25で燃焼されたうえで、同様に後燃焼段26へ送り込まれて、後燃焼の対象とされる。その結果生じた焼却灰は、排出口30から炉外へ排出される。乾燥用火格子27と燃焼用火格子28とが後ろ側に向けて下向きに傾斜しているため、ごみを容易に後側に搬送させることができる。
【0049】
二次燃焼室13の前壁42に設けられた前部供給ノズルを兼ねている二次燃焼用ガス供給ノズル44から、二次燃焼室13の後壁43に向けてガスを噴出させる。すると、その噴出流によって、乾燥段24にて発生した未燃ガスの一部61は、一次燃焼室用後部供給ノズル40から供給されるガス流によって後壁22側に引き寄せられることはない。このため、乾燥段24からの未燃ガスの一部61の流れを安定的に保つことができ状態で、この未燃ガスの一部61を二次燃焼室13に流れ込ませることが出来る。
【0050】
図1に示される焼却炉においては、二次燃焼用ガス供給ノズル44は、上述のように、上段側のノズル44aと下段側のノズル44bとの上下2段構造とされていることで、たとえば、下段側のノズル44bからの流量を定量(固定)としたうえで、上段側のノズル44aからの流量を調節して、二次燃焼用ガス供給ノズル44の全体の流量を制御することが好ましい。つまり、下段側のノズル44bは、前部供給ノズルとして、上述のように乾燥段24にて発生した未燃ガスの一部61を上部の空間62へ流して、一次燃焼室12において燃焼させるために必要な流速および流量を確保することを目的として用いられる。これに対し上段側のノズル44aは、二次燃焼室13における酸素濃度を調整するために用いることができる。
【0051】
例えば、焼却対象としてのごみ17の質や量が変化した場合には、上段側のノズル44aにおけるガス供給量の調節を行う。これらのガス供給量の調節は、二次燃焼用ガス供給ノズル44へのガス供給路に設けられるところの、図示を省略した制御式のダンパや手動式のダンパにて行うことができる。
【0052】
以上のように前部供給ノズルを兼ねる二次燃焼用ガス供給ノズル44を動作させることで、この前部供給ノズルから供給されるガス流によって、乾燥段24にて発生した未燃ガスの一部61をこの乾燥段24内の上部の空間62に流れ込ませることが可能となる。
【0053】
以下では、一次燃焼室用後部供給ノズル40の動作について説明する。この一次燃焼室用後部供給ノズル40から、ガス流を、後側の天井壁23の傾斜に合わせて、間口20側に向けて水平方向又は水平方向より上向きに噴出させることで、一次燃焼室12において、乾燥段24、燃焼段25、後燃焼段26での燃焼により生成され二次燃焼室13へと向かう未燃ガスを、
図1において符号64で示すように、一次燃焼室12の後壁22側へ引き寄せるようにすることができる。これにより、特に燃焼段25で発生した排ガスおよび未燃ガスを、後燃焼段26における一次燃焼室12の上部の空間65に流れ込ませ(旋回させ)、また攪拌させることができる。このため、一次燃焼室12の内部の未燃ガスの濃度が局部的に高くなり過ぎることがない。また、後燃焼段26における上部の空間65にて未燃ガスを時間をかけて燃焼させることができて、二次燃焼室13へ送られる未燃ガスの量を低減あるいは適宜にコントロールすることができる。
【0054】
一次燃焼室用後部供給ノズル40のガス供給量は、各火格子27、28、29上の燃焼位置に基づいて、場合分けすることが好ましい。例えば、燃焼位置が前寄りにある場合は、一次燃焼室用後部供給ノズル40のガス供給量を上げることが好ましい。また、燃焼位置が後ろ寄りにある場合は、一次燃焼室用後部供給ノズル40のガス供給量を下げるように制御すればよい。燃焼位置が後ろ寄りにある場合は、燃焼位置が基準範囲内にある場合と同じ制御としてもよい。なお、燃焼位置は、各火格子27、28、29上の燃焼開始位置および/または燃え切り位置に基づいて判断され、図示していない赤外線カメラ、工業用カメラによって確認されることが好ましい。
【0055】
図1に示される焼却炉において、一次燃焼室用後部供給ノズル40は、上述のように上段側の一次燃焼室用後部供給ノズル40aと下段側の一次燃焼室用後部供給ノズル40bとの上下2段の構成である。その場合には、下段側の一次燃焼室用後部供給ノズル40bを流速確保用とするとともに、上段側の一次燃焼室用後部供給ノズル40aを、必要な流量を確保するための補助用とすることが好ましい。なぜなら、1本の一次燃焼室用後部供給ノズル40からあまり高速でガスを噴出しすぎると、一次燃焼室用後部供給ノズル40のノズル口径から噴出できるガスの最大量を超えて、その流れが乱れて、所要の引き寄せ効果を発揮できず、また一次燃焼室12の内部のガスを良好に撹拌することができなくなるためである。なお、下段側の一次燃焼室用後部供給ノズル40bを所要の引き寄せ効果を発揮する為の流速確保用とすることで、上段側の一次燃焼室用後部供給ノズル40aを流速確保用とする場合に比べて、未燃ガスを含む排ガスを一次燃焼室12の後方へ引き寄せ、空間65のより後方において燃焼させることが出来る。
【0056】
一次燃焼室用後部供給ノズル40からのガス流の傾斜角度は、できるだけ上向きである方が、未燃ガスを含む排ガスを一次燃焼室12の後方へ引き寄せやすくなる。しかし、上向き過ぎると、天井壁23との摩擦により減衰して、所要の機能を発揮できなくなる。未燃ガスを含む排ガスを著しい減衰なく後側へ引き寄せるために、一次燃焼室用後部供給ノズル40からのガス流の傾斜角度は、天井壁23の傾斜角度からマイナス35度以内であることが好ましく、天井壁23の傾斜角度からマイナス20度以内であることがいっそう好ましい。一次燃焼室用後部供給ノズル40からのガス流の傾斜角度の下限は、このガス流による各火格子27、28、29上の火炎域への直接的な影響を考慮すると、0度すなわち水平方向であることが好ましい。
【0057】
以上のように本発明によれば、二次燃焼室13の前壁42に設けられた二次燃焼用ガス供給ノズル44から、二次燃焼室13の後壁43に向けてガスを噴出させることで、乾燥段24にて発生した未燃ガスの一部61を、前側に引き寄せる。すなわち、一次燃焼室用後部供給ノズル40から供給されるガス流によって未燃ガスの一部61を後壁側に引き寄せることなく、これを乾燥用火格子27よりも上部の空間62へ流れ込ませて、一次燃焼室12の前側の天井壁21から後方に向けて再循環排ガスなどを供給する供給装置を設けることなしに、この供給装置を設けたのと同様の作用効果を発揮することができ、同様の顕著なNOx低減効果を得ることができるものである。
【0058】
さらに、本発明によれば、次のような利点も得ることができる。すなわち、一次燃焼室12において、JP2014-167353Aと比べて、乾燥用火格子27及び燃焼用火格子28と前部供給ノズル(前部供給ノズルを兼ねる二次燃焼用ガス供給ノズル44)との距離を近づけ、公知の技術において設置していた乾燥段天井でのガス供給ノズルによる撹拌効果を前部供給ノズル(前部供給ノズルを兼ねる二次燃焼用ガス供給ノズル44)からのガス流によって行うようにしたため、そして、特に、一次燃焼室12を傾斜型としたうえで、乾燥段24における天井壁21の傾斜角度を60度以下、好ましくは30度以下、さらに好ましくは15~25度としたため、乾燥段24の天井壁21にノズルを設置せずとも、燃焼排ガスの一部が一次燃焼室12の前側の部分を流れやすいようにして、JP2014-167353Aのように前側の天井壁21にノズルを設置した場合と同様のNOx低減効果を得ることができる。このように前側の天井壁21にノズルを設置せずに、一次燃焼室12に設置しているノズルの数を減らすことで、一次燃焼室12に設置している他のノズルが供給することが可能なトータルの流量の制限が緩和される。つまり、ごみ焼却炉に設置している他のノズル(特に、後述する二次燃焼用ガス供給ノズル44及び一次燃焼室用後部供給ノズル40)が供給することが可能なガス供給量を増加させることが出来る。従って、一次燃焼室12に設置している他のノズルの流量を増やして流速を上げることができ、これにより排ガスの撹拌を行いやすくすることができる。
【0059】
上記においては、二次燃焼用ガス供給ノズル44が前部供給ノズルを兼ねる例について説明したが、兼ねない構成とすることもできる。
【0060】
また、後燃焼段26における特に上部の空間65が上部の空間62に比べて広いので、未燃ガスなどの滞留時間を長く保ちながら、未燃ガスが局所的に集まるのを防ぎつつ、上部の空間65で未燃ガスをじわじわ燃やすことができる。その結果、空間65を経由して二次燃焼室13に流れ込ませる未燃ガスを減少させ、このため二次燃焼室13でも局所的に燃焼温度が上がらず、したがってNOxが発生しにくい多段燃焼が可能となる。
【0061】
また、一次燃焼室用後部供給ノズル40から供給されるガス流によって、燃焼段25等で発生した未燃ガスを後壁22側に引き寄せ、他方で、前部供給ノズルから供給されるガス流によって、乾燥段24で発生した未燃ガスを、前側に引き寄せる。すなわち、一次燃焼室用後部供給ノズル40から供給されるガス流によって乾燥段24で発生した未燃ガスを後壁22側に引き寄せることなく、二次燃焼室13に流れ込ませる。そして、二次燃焼室13にて両方の未燃ガスを合流させるため、二次燃焼室13にて未燃ガスの調整をすることができ、このため局所的に燃焼温度が上がることがなく、したがってNOxが発生しにくい。
【0062】
さらに、一次燃焼室12において十分な燃焼を行うことが可能であるために、二次燃焼室13における二次燃焼用ガス供給ノズル44からの酸素(二次空気)の供給量を必要最小限に抑えながら、未燃ガスと二次空気との十分な撹拌を確保することができる。したがって、酸素の供給量を必要最小限に抑えることができ、このためにNOxの生成を抑制しながら、COおよびダイオキシン類の生成も抑制することができる。
【0063】
また、一次燃焼室12の空間65においても、一次燃焼室用後部供給ノズル40から空気を供給することにより、適切な酸素濃度を維持することができる。このため、燃焼が不安定となってCOおよびダイオキシン類が生成することを、抑制することができる。
【0064】
一方で、酸素濃度が低い低空気比では燃焼が不安定になるという問題が生じる。詳細には、低空気比で未燃ガスを燃焼させると、燃焼が不安定となり、COの発生が増加したり、火炎温度が局所的に上昇してNOxが急増したり、煤が大量に発生したりして、排ガス中の有害物が増加するという問題が生じる。また、ごみ焼却炉では、火格子を介して一次燃焼室内に供給する空気の供給量を、ボイラにおける発生蒸気量等に応じて増減する制御が行われる。このような制御において、一次燃焼室12に投入されるごみのごみ質が高く(例えば、単位重量当たりの発生熱量が高く)、ボイラ48における発生蒸気量が大きくなる場合には、火格子27、28、29を介して供給される空気の量が減少され、このため一次燃焼室12から二次燃焼室13に流入する排ガスにおいて未燃ガスの濃度が高くなる。この場合、二次燃焼室13に配置されたノズル44から噴出される空気により、二次燃焼室13へと到達した未燃ガスが一気に燃焼し、当該ノズル44の近傍において高温域が形成される。その結果、二次燃焼室13から排出される排ガスにおけるNOx濃度が上昇してしまうという問題が生じる。
【0065】
この問題を解決するための、一次燃焼室用後部供給ノズル40から、空気と、EGRガスと、空気とEGRガスの混合ガスとのうちの少なくとも一つを供給する場合の、一次燃焼室用後部供給ガスの供給量の制御方法について説明する。
【0066】
まず、二次燃焼用ガス供給ノズル44からの燃焼用の二次空気の供給量の制御について説明する。二次燃焼用ガス供給ノズル44からの燃焼用の二次空気の供給量は、酸素濃度計52の測定結果にもとづいて、制御装置54によって制御する。具体的には、酸素濃度計52により測定される酸素濃度が3~5%となるように、燃焼用の二次空気の供給量を制御する。二次空気の供給量を減らすことで、焼却炉からの排ガスの量を減らすことができる。
【0067】
各火格子27、28、29を介して供給される一次空気の供給量の制御について説明する。一次空気の供給量は、ボイラ48からの蒸気量を目標蒸気量に近づけるように、制御装置54によって制御される。例えば、ボイラ48からの蒸気量が目標蒸気量よりも多い場合には、プッシャ19によるごみ送り速度の指令値が現在の値から低減される。あわせて、乾燥用火格子27、燃焼用火格子28、後燃焼用火格子29が前後方向に移動してごみを後側に順送りすることができる構成である場合には、その送り速度を遅くするように制御される。そして、一次空気供給量の指令値が、現在の値から低減される。
【0068】
一次燃焼室用後部供給ノズル40からの空気の供給量の制御について説明する。一次燃焼室用後部供給ノズル40からの空気の供給量は、一次燃焼室12の内部で発生した未燃ガスを燃焼させるために必要な量とする。具体的には、一次燃焼室12の内部における空気比(以下、「一次燃焼室空気比」と称する)が所定の値(例えば、0.7~1.2、好ましくは0.95~1.10)となるように、酸素濃度計52にて測定された酸素濃度に応じて制御装置54にて一次燃焼室用後部供給ノズル40からの空気の供給量を制御する。
【0069】
一次燃焼室空気比は、下記(1)式にて算出される。
一次燃焼室空気比[-]
=火格子下空気比[-]+後燃天井空気比[-]・・・(1)
ここで、火格子下空気比は、下記(2)式にて定義されるものである。後燃天井空気比は、下記(3)式にて定義されるものである。
【0070】
【0071】
【0072】
上記の(3)式において、後燃天井空気流量は、一次燃焼室用後部供給ノズル40から噴出されるガスに含まれる空気の流量のことである。また上記の(2)式および(3)式において、総流入空気量は、火格子下空気流量と、後側天井の一次燃焼室用後部供給ガス流量と、二次燃焼室13における二次空気流量との合計である。
【0073】
一次燃焼室12における後燃焼段26すなわち後燃焼用火格子29の上部の空間65において、未燃ガスを燃焼させる際には、一次燃焼室12の内部の酸素濃度を制御することが好ましい。一次燃焼室12の内部の酸素濃度を制御することで、燃焼が不安定となって、COの発生が増加したり、火炎温度が局所的に上昇してNOxが急増したり、煤が大量に発生したりして排ガス中の有害物が増加するという問題を最適化することができる。
【0074】
(本発明を実施するための他の形態)
図1では一次燃焼室用後部供給ノズル40を後側の天井壁23に設置したものを例示したが、これを後壁22に設置することもできる。
【0075】
焼却炉が大型である場合や、空気流量および/またはEGRガス流量が不足する場合には、ノズルから供給される流速が低下することがある。そのような場合には、流路すなわち一次燃焼室12の出口15(二次燃焼室13の入口)に絞りなどを設置して、この絞りのエゼクタ効果により、燃焼排ガスの流速を増加させて必要流速を達成できるようにすることが望ましい。
【0076】
図1に示す焼却炉では、二次燃焼室13においては、二次燃焼用ガス供給ノズル44が前壁42と後壁43との両方に設置されている。この場合には、前壁42に設けられた二次燃焼用ガス供給ノズル44からのガス流と後壁43に設けられた二次燃焼用ガス供給ノズル44からのガス流とが互いに干渉することを避けるために、これらの二次燃焼用ガス供給ノズル44を平面視において互い違い(千鳥状)に配置することが好ましい。すなわち、前壁42に設けられた二次燃焼用ガス供給ノズル44と、後壁43に設けられた二次燃焼用ガス供給ノズル44とが、
図1における紙面に垂直な方向に沿った別個の位置にそれぞれ設置されていることが好ましい。
【0077】
なお、焼却炉において、二次燃焼室13の前壁42に設けられた二次燃焼用ガス供給ノズル44から、二次燃焼室13の後壁43に向けて水平方向に噴出されたガスによって、一次燃焼室12の前側の天井壁21に設けられた供給装置から後方に向けて再循環排ガスなどを供給したときと同様の動作を行わせるためには、その動作を行うことができるように、二次燃焼用ガス供給ノズル44の設置位置や、特に一次燃焼室12の前側の天井壁21によって形成される空間形状や、一次燃焼室12におけるその他の構成などを、適宜のものとすることが出来る。