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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】流体リザーバ付きステント装填装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240418BHJP
   A61F 2/962 20130101ALI20240418BHJP
【FI】
A61F2/24
A61F2/962
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021512386
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 US2019049412
(87)【国際公開番号】W WO2020051164
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】62/726,614
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/558,897
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517290947
【氏名又は名称】4シー メディカル テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピータスン,アレックス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ディダリング,ジェイソン エス.
(72)【発明者】
【氏名】クマール,サラヴァナ ビー.
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0143852(US,A1)
【文献】特表2009-514561(JP,A)
【文献】特表2014-518697(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0277403(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61F 2/962
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内への送達および移植に備えて、水分保持を必要とする材料を含むステントを折り畳むための装填装置であって、前記装填装置は、
湾曲した内面を含む流体リザーバであり、前記装填装置の近位端と動作可能に接続されて、前記装填装置の内部管腔と流体連通している流体リザーバと、
流体と
を備え、
前記流体リザーバは、前記流体で少なくとも部分的に満たされるように構成されており
前記流体リザーバは、上面を有する開放したカップ形状を備え、
前記カップ形状は、前記上面の周りに延在し、かつ前記流体リザーバの前記湾曲した内面上に部分的に延在する縁を含む、
装填装置。
【請求項2】
前記流体は生体適合性である、請求項1に記載の装填装置。
【請求項3】
前記ステントは、人工心臓弁フレームを含む、請求項1に記載の装填装置。
【請求項4】
前記ステントは、人工僧帽弁フレームを含む、請求項2に記載の装填装置。
【請求項5】
前記ステントは、血管内ステントを含む、請求項1に記載の装填装置。
【請求項6】
前記水分保持を必要とする材料は、生物学的材料または生体適合性材料を含む人工弁尖を含み、
前記人工弁尖は、前記流体リザーバ内に浸漬される、
請求項2に記載の装填装置。
【請求項7】
前記内部管腔は、前記管腔の近位端から前記管腔の遠位端に向って内径が縮小する2つの領域を備える、請求項1に記載の装填装置。
【請求項8】
前記ステントは、前記装填装置の前記内部管腔内で少なくとも部分的に折り畳まれるように適合されており、
前記水分保持を必要とする材料は、前記流体リザーバの前記流体内に浸漬される、
請求項に記載の装填装置。
【請求項9】
前記内部管腔は、一定な内径の2つのセクションを含む、請求項に記載の装填装置。
【請求項10】
前記一定な内径の2つのセクションは、同一の内径ではない、請求項に記載の装填装置。
【請求項11】
定な内径の最も遠位の領域は、装填装置の前記管腔の最小内径である、請求項に記載の装填装置。
【請求項12】
折り畳み可能なステント用の装填装置であって、
前記装填装置は、ハウジングによって画定される内部管腔を備え、
前記内部管腔は、近位端と、遠位端と、直径が縮小する2つの内径セクションと、一定径の2つの内径セクションとを備え、
前記内部管腔の前記遠位端は、最小内径を備え、
前記内部管腔の前記近位端は、最大内径を備え
前記装填装置は、
湾曲した内面を含む流体リザーバであり、前記装填装置の近位端と動作可能に接続されて、前記内部管腔と流体連通している流体リザーバと、
流体と
を備え、
前記流体リザーバは、前記流体で少なくとも部分的に満たされるように構成されており、
前記流体リザーバは、上面を有する開放したカップ形状を備え、
前記カップ形状は、前記上面の周りに延在し、かつ前記流体リザーバの前記湾曲した内面上に部分的に延在する縁を含む、
装填装置。
【請求項13】
解剖学的標的内での折り畳み、送達、および移植のためにステントを装填する方法であって、前記方法は、
折り畳み可能かつ拡張可能なステントを提供することと、
装填装置を提供することであって、前記装填装置は、湾曲した内面を含む流体リザーバであり、前記装填装置の近位端と動作可能に接続されて、前記装填装置の内部管腔と流体連通している流体リザーバと、流体とを含み、前記流体リザーバは、流体で少なくとも部分的に満たされるように構成されており、前記装填装置の前記内部管腔は、近位から遠位の方向において内径が縮小する2つのセクションと、一定な内径の2つのセクションとを備え、前記流体リザーバは、上面を有する開放したカップ形状を備え、前記カップ形状は、前記上面の周りに延在し、かつ前記流体リザーバの前記湾曲した内面上に部分的に延在する縁を含むことと、
前記折り畳み可能かつ拡張可能なステントを前記装填装置の前記内部管腔内に並進移動させて、前記折り畳み可能かつ拡張可能なステントの少なくとも一部が前記流体リザーバの流体内に浸漬されることを保証しながら、前記内部管腔内で前記ステントの折り畳みを開始することと、
圧力を加えて、前記内部管腔を通って前記ステントをさらに並進移動させることであって、前記折り畳まれたステントは、並進移動、送達、および移植のための所定の形状および直径を達成することと、
圧力を加えて、前記折り畳まれたステントを、並進移動、送達、および移植のために、動作可能に接続された送達シースの管腔内にさらに並進移動させることと
を含む、方法。
【請求項14】
解剖学的標的内での後続の並進移動および移植に備えて、ステントを折り畳まれた構成に事前に装填する方法であって、前記方法は、
水分保持を必要とする材料を含む折り畳み可能かつ拡張可能なステントを提供することと、
装填装置を提供することであって、前記装填装置は、湾曲した内面を含む流体リザーバであり、前記装填装置の近位端と動作可能に接続されて、前記装填装置の内部管腔と流体連通している流体リザーバと、流体とを含み、前記流体リザーバは、流体で少なくとも部分的に満たされるように構成されており、前記装填装置の内部管腔は、近位から遠位の方向において内径が縮小する2つのセクションと、一定な内径の2つのセクションとを備え、前記流体リザーバは、上面を有する開放したカップ形状を備え、前記カップ形状は、前記上面の周りに延在し、かつ前記流体リザーバの前記湾曲した内面上に部分的に延在する縁を含むことと、
前記折り畳み可能かつ拡張可能なステントを前記装填装置の前記内部管腔内に部分的に並進移動させて、前記折り畳み可能かつ拡張可能なステントの少なくとも一部が前記流体リザーバの流体内に浸漬されて、前記水分保持を必要とする材料を湿らせることを保証しながら、前記内部管腔内で前記ステントの部分的な折り畳みを開始することと、
後に、部分的に折り畳まれたステントを前記装填装置の内部管腔内にさらに並進移動させて、解剖学的標的への並進移動、送達、および移植のために、動作可能に接続された送達シースの管腔を通って並進移動するための所定の折り畳まれた形状および直径を達成することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者
Alex A.Peterson、ミネソタ州メープルグローブ、米国市民
Jason S.Diedering、ミネソタ州ミネアポリス、米国市民
Saravana B.Kumar、ミネソタ州ミネトンカ、米国市民
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月3日に出願され「STENT LOADING DEVICE WITH FLUID RESERVOIR」と題された米国特許本出願(Non-Provisional Patent Application)第16/558897号に対する優先権を主張し、また、2018年9月4日に出願され「STENT LOADING DEVICE WITH FLUID RESERVOIR」と題された米国特許仮出願第62/726,614号の便益を主張する。これらの出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当せず
【0002】
本発明は、心腔内に装置を移植するための装置および方法に関する。より具体的には、本発明は、ステント、例えば、人工心臓弁フレームを、送達シースまたはカテーテルの管腔を介して送達シースまたはカテーテルの遠位端に並進移動(translation)させるために、送達シースまたはカテーテルの管腔内に装填するように構成された装置に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
一般的なステント、ならびに特に人工心臓弁および左心耳閉鎖装置は、当技術分野でよく知られている。生来の心臓弁、例えば大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、僧帽弁は、心臓血管系を通る適切な血液供給の順方向のみの流れを確保する上で重要である。これらの心臓弁は、とりわけ、先天性、炎症性、感染性の疾患または症状の結果として機能性を失うことがある。初期の介入では、開心術中に機能不全の弁を修復または置換していた。より最近では、上記の開心外科的アプローチに加えて、目的の弁へのアクセスを得ることは、少なくとも以下の既知のアクセス経路、すなわち、経心尖送達技術、経大腿送達技術、経心房送達技術、および経中隔送達技術、総称して経カテーテル技術のうちの1つによって、経皮的に行われ得る。
【0004】
一般に、経カテーテル技術では、人工弁は、折り畳まれた状態および拡張した状態を達成することができるステント付きフレーム内に取り付けられる。装置は、折り畳まれ、患者の血管に配置されたシースまたは送達カテーテルを通って、移植部位に到達するまで進められる。ステント付きフレームは、一般に、カテーテルまたはシースから解放され、様々な手段によって、弁とともに、心臓内で拡張した機能的なサイズおよび向きに拡張される。重要な課題の1つは、ステントフレームおよび弁を含む人工弁の送達が容易であることである。より具体的には、カテーテル内における折り畳まれた装置の外径が非常に重要である。本発明はこの課題に対処する。
【0005】
関連技術の説明
【0006】
ヒトの心臓は、心臓を通る血液の順方向(順行性)の流れを助ける4つの心腔と4つの心臓弁とを備えている。心腔には、左心房、左心室、右心房、および右心室が含まれる。4つの心臓弁には、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、肺動脈弁が含まれる。概して図1を参照されたい。
【0007】
僧帽弁は左心房と左心室との間に位置し、左心房への逆流を防ぐための一方向弁として機能することにより、左心房から左心室への血流の制御を助ける。同様に、三尖弁は右心房と右心室との間に位置し、一方、大動脈弁および肺動脈弁は、心臓から血液を流す動脈内に位置する半月弁である。弁はすべて一方向弁であり、順方向(順行性)の血流を可能にするように開放する弁尖を有する。正常に機能している弁尖は、逆流した血液によって加えられる圧力を受けて閉鎖し、血液が流出したばかりの心腔内への血液の逆流(逆行)を防止する。例えば、僧帽弁は、適切に機能している場合、左心房と左心室との間に一方向の弁を提供し、この弁は、左心房から左心室への順行性の流れを可能にするように開放し、左心室から左心房への逆行した流れを防ぐように閉鎖する。この逆行した流れは、存在する場合には、僧帽弁逆流症(mitral regurgitation、またはmitral valve regurgitation)として知られている。
【0008】
生来の心臓弁は、疾患、外傷、先天性奇形、および加齢を含むがこれらに限定されない様々な理由および/または状態のために機能不全であるか、または機能不全になる可能性がある。この種の状態により、弁構造が適切に閉鎖することができなくなり、僧帽弁不全の場合には、左心室から左心房への逆流性の逆行した血流を生じる可能性がある。
【0009】
僧帽弁逆流症は、右心房から左心房へ戻る少なくともいくらかの逆行した血流を許容する、僧帽弁の機能不全に起因する特定の問題である。場合により、機能不全は、僧帽弁尖が、逆行した流れを阻止するために接続または接合するのではなく、左心房腔、すなわち、弁輪の上面の上方に逸脱することに起因する。この血液の逆流は、僧帽弁逆流症の長期の臨床経過中にかなり変化する、心室腔の大きさおよび形状のリモデリングを含む、一連の左心室の代償的適応および調整につながり得る体積負荷で左心室に負担をかける。
【0010】
逆流は、一般に、三尖弁、大動脈弁、および肺動脈弁、ならびに僧帽弁を含む生来の心臓弁で問題になる可能性がある。
【0011】
したがって、一般に、僧帽弁などの生来の心臓弁は、部分的または完全な置換を含む、機能的修復および/または補助を必要とすることがある。そのような介入は、開心術および置換心臓弁の開心移植を含むいくつかの形態をとり得る。侵襲性が高く、患者のリスクを伴い、長期の入院だけでなく非常に痛みを伴う回復期間も必要とする処置については、例えば、米国特許第4,106,129号(Carpentier)を参照されたい。
【0012】
機能不全の心臓弁を置換するための低侵襲性の方法および装置も知られており、経皮的アクセスおよび置換弁のカテーテル促進送達(catheter-facilitated delivery)が含まれる。これらの解決策のほとんどは、当技術分野で一般に知られているステントなどの構造的支持体、または送達カテーテルからの解放時に拡張するように設計された他の形態のワイヤネットワークに取り付けられた置換心臓弁を含む。例えば、米国特許第3,657,744号(Ersek)、米国特許第5,411,552号(Andersen)を参照されたい。支持ステントの自己拡張型の変形例は、対象となる心腔または血管内において、弁を配置し、拡張した装置を適所に保持するのを助ける。この自己拡張形態はまた、よくあることだが、最初の配置の試みで装置が適切に配置されず、したがって装置を再捕捉して位置を調整する必要がある場合に問題を呈する。完全にまたは部分的にでも拡張した装置の場合のこの再捕捉プロセスは、操作者が折り畳まれた装置を送達シースまたはカテーテルに引き戻し、装置の到着位置を調整し、次いで位置調整された装置を送達シースまたはカテーテルから遠位に再展開することにより、適切な位置に再拡張できるようになる程度に、装置を再び折り畳むことを必要とする。拡張したステントまたはワイヤネットワークは、一般に、収縮力または折り畳み力にも耐える拡張状態を達成するように設計されているため、すでに拡張した装置を折り畳むことは困難である。
【0013】
上記の開心外科的アプローチに加えて、目的の弁へのアクセスを得ることは、少なくとも以下の既知のアクセス経路、すなわち、経心尖送達技術、経大腿送達技術、経心房送達技術、および経中隔送達技術のうちの1つによって、経皮的に行われる。
【0014】
一般に、当技術分野は、上述の公知のアクセス経路のうちの1つを使用して、折り畳まれた弁装置の部分的な送達を可能にするシステムおよび方法に焦点を合わせており、
この場合、装置の一端は送達シースまたはカテーテルから解放され、初期の配置のために拡張され、その後、適切な配置が行われると完全に解放され拡張される。例えば、米国特許第8,852,271号(Murray、III)、米国特許第8,747,459号(Nguyen)、米国特許8,814,931号(Wang)、米国特許9,402,720号(Richter)、米国特許8,986,372号(Murray、III)および米国特許9,277,991号(Salahieh)、ならびに米国特許出願公開第2015/0272731号(Racchini)および米国特許出願公開第2016/0235531号(Ciobanu)を参照されたい。
【0015】
加えて、既知の「置換」人工心臓弁は、生来の心臓弁の完全な置換を目的としている。したがって、これらの置換心臓弁は、環状スロート(annular throat)内、すなわち、環状平面(annular plane)および上部環状面(upper annular surface)の下方の組織、および/または弁尖に物理的に係合し、それによって生来の弁の残りのすべての機能性を排除し、患者を置換弁に完全に依存させる。一般的に言えば、心臓弁の生来の機能を維持および/または保持することが好ましい解決策であり、よって完全な置換よりも弁の補完が好ましい。明らかに、生来の弁が介入的移植処置前に実質的に完全に機能性を失ったか、または生来の弁が移植処置後に機能性を失ったままである場合があるであろう。好ましい解決策は、補助的および/または補完的な機能弁として機能するだけでなく、その機能のほとんどもしくはすべてを失ったか、または失うであろう弁の生来の機能を完全に置き換えることができる弁装置の送達および移植である。しかしながら、以下に記載する本発明の解決策は、特に明記しない限り、一般にすべての種類および形態の心臓弁装置に適用される。本開示はまた、当業者が認識するように、一般にステントにも適用される。
【0016】
さらに、例えば、僧帽弁置換システム、僧帽弁置換装置、および僧帽弁置換法のための既知の解決策は、二腔解決策(2-chamber solutions)、すなわち、左心房および左心室において移植された置換弁装置の関与および係合があることを必要とする。一般に、これらの解決策は、左心房内において半径方向に拡張するステントを含み、固定または係留は(生来の弁輪または環状スロートを通って下向きに配置され)、ステント装置から環状スロートを下向きに通って、左心室内の弁輪下面(sub-annular surface)、左心室腱索、および左心室壁面内にさえ接続される。例えば、Abbott Groupによって販売されており、現在米国で承認されている唯一の修復装置であるMitraClip(登録商標)を参照されたい。MitraClip(登録商標)では、MitraClip(登録商標)を含むカテーテルが大腿静脈に挿入される。装置は、下大静脈を通って心臓に入って右心房に進入し、経中隔的に送達される。MitraClip(登録商標)は、弁輪を通過して左心室に入り、弁尖の下に着座して、弁尖を挟み込んで逆流を低減する。
【0017】
このような二腔および生来の弁輪の解決策は、不必要に嵩高いので、厳密な構造の観点から、送達および配置/再捕捉/再配置がより困難になる。さらに、二腔解決策は、位置を保持するために必要とされる心室の固定接続および/または係留接続を行うという点で困難を呈する。さらに、これらの解決策は、左心室内に配置される装置部分が、生来の弁輪および/または環状スロート、ならびに生来の僧帽弁を通過しなければならず、それにより生来の弁尖の残っている接合能力を損なうため、上述のような生来の弁の機能性を妨げてしまう。加えて、二腔解決策は、一般に、生来の組織の一部の侵襲的な固定を必要とし、不必要な外傷および潜在的な合併症を生じる。
【0018】
さらに、二腔僧帽弁解決策は、装置の心房部分が、それ自体を心房腔および/または弁輪の上部に適切に固定することができないため、アンカー、テザーなどとの正確な弁輪下係合および/または心室係合を必要とすることが認識されるであろう。この場合にも、本明細書に記載の実施形態のいくつかまたはその一部が、特に明記しない限り、単腔解決策または二腔解決策に容易に適用可能である。
【0019】
最後に、既知の人工心臓弁は、一方向弁として機能するように配された2つまたは3つの弁尖からなり、流体が弁尖を通って順行方向に流れるのを許容する一方で、逆行した流れを防止する。生来の僧帽弁は、第4肋軟骨の胸骨後方に位置し、前尖および後尖、腱索、乳頭筋、心室壁、ならびに心房に接続された弁輪からなる。各生来の弁尖は、乳頭筋に付着している腱索によって支持されており、乳頭筋が心室収縮のたびに緊張して、弁の機能を維持する。生来の弁の前尖および後尖の双方が、一次腱索、二次腱索、三次腱索を介して、前外側乳頭筋および後内側乳頭筋の双方に付着している。心筋損傷の状況でいずれかの乳頭筋が破壊されることにより、僧帽弁の前尖または後尖のいずれかの機能不全が生じる可能性がある。他の機構によって、生来の僧帽弁尖の一方または双方の障害が生じることもある。単一の僧帽弁尖の障害の場合、逆流は、左心房に戻る非中心の偏心した血液の噴流の形をとることがある。他の弁尖の障害は、より中心に集中した逆流噴流を含み得る。既知の人工弁置換は、一般に、生来の弁構造を模倣するように配された弁尖を含み、このような弁尖は、時間とともに、同様の逆流の結果を生じ易くなる可能性がある。
【0020】
折り畳み可能かつ拡張可能なステントの用途は、人工心臓弁インプラントに限定されない。血管ステントは、一般的に使用されており、送達カテーテルの管腔を介した作用部位への送達を容易にするために一般に折り畳み可能であり、作用部位において、ステントはカテーテルの管腔から外に並進移動され、ステントは、自己拡張手段によって、または特に拡張可能なバルーンなどの拡張機構によって拡張される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】米国特許第4,106,129号明細書
【文献】米国特許第3,657,744号明細書
【文献】米国特許第5,411,552号明細書
【文献】米国特許第8,852,271号明細書
【文献】米国特許第8,747,459号明細書
【文献】米国特許8,814,931号明細書
【文献】米国特許9,402,720号明細書
【文献】米国特許8,986,372号明細書
【文献】米国特許9,277,991号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0272731号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0235531号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記で論じたように、既知の送達方法および装置は、送達カテーテルを介した送達中に折り畳まれる、拡張可能な人工弁ステントおよび血管ステントを含む。そのような折り畳み構造および拡張構造に関する問題は、折り畳み状態および拡張状態に対応するために曲がらなければならない、構造、例えばステント、の領域に負担をかけることを含む。さらに、既知の装置の折り畳まれた幾何形状は、制御または予測できない可能性があり、折り畳まり、かつ拡張する構造要素上に負担を加える。よって、送達カテーテルまたはシースの管腔内で折り畳み状態を達成するための構造および方法は、折り畳み構造の完全性を維持および保持するために、予測可能かつ繰り返し可能な折り畳みを可能にしなければならない。さらに、ステント、例えば、人工心臓弁または血管ステントは、乾燥させることができない生物学的材料および/または生体適合性材料を含み得る。したがって、対象のステントが存在し得る流体リザーバを保持することが重要である。
【0023】
本発明の様々な実施形態は、特に、これらの課題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
拡張および移植のための心臓弁または血管内位置などの解剖学的標的への送達シース管腔を通る後続の並進移動のために、折り畳み可能かつ拡張可能なステントの折り畳みを予測可能に制御するための装置および方法。装填装置は、送達シースの内径に達するまで、縮小する直径と一定の直径とが交互になった、近位から遠位方向に連続的に縮小する内径を備える内部管腔を画定する。直径が縮小する少なくとも2つのセクションと、直径が一定の少なくとも2つのセクションとが存在する。流体で満たされたリザーバは、装填装置の近位端に設けられており、ステントに関連付けられているか、または取り付けられた水分保持を必要とする材料に水分を与えるか、またはそのような材料を湿らせるように構成されている。したがって、ステントが装填装置によって折り畳まれているときに、ステントの少なくとも一部が流体リザーバに浸漬されて、対象の材料を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】心臓の特定の特徴を示す断面図である。
図2】例示的なステントの斜視図である。
図3A図2の例示的なステントの移行セクションの一実施形態の底面図である。
図3B図2の例示的なステントの移行セクションの一実施形態の底面図である。
図3C図2の例示的なステントの移行セクションの一実施形態の底面図である。
図4A図2の例示的なステントの折り畳まれた移行セクションの一実施形態の底面図である。
図4B図2の例示的なステントの折り畳まれた移行セクションの一実施形態の底面図である。
図5】本発明の一実施形態の側面破断図である。
図6】本発明の一実施形態の斜視図である。
図7】本発明の一実施形態の側面断面および切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
一般に、本発明の様々な実施形態は、折り畳み可能かつ拡張可能な支持構造またはステントの予測可能な折り畳まれた構成または状態を達成するため、
ならびに折り畳みステップ中に折り畳み可能かつ拡張可能な支持構造に取り付けられるか、または他の場合には一体化され得る生物学的材料内における水分保持を保証する機構を提供するための装置および方法に関する。
【0027】
支持構造またはステントは、心臓弁逆流症(僧帽弁または三尖弁)の治療を援助するための複数の機能を有する。これらの機能には、機能する4C弁の足場としてのその機能、心房の解剖学的構造への並置、心房拡張に追従するための最適化された半径方向の力、低侵襲の送達システムへ装填する能力および同システムから展開する能力、ならびに弁周囲漏出(paravalvular leak:PVL)の軽減を支援する幾何形状が含まれる。ステントの設計上の特徴は、上記で特定された機能のうちの1つまたは複数を満たすように適合されている。例示的なステントの特定の設計上の特徴および属性について、漏斗状の装填装置および関連する方法の有用性の理解を助けるために、以下で詳細に議論する。上記で論じたように、本発明は、ステント支持構造を含む人工心臓弁に限定されるものではなく、血管内処置に一般的に使用されるような折り畳み可能かつ拡張可能なステントにも適用され得る。
【0028】
特定の例示的な実施形態のステント設計概念は、僧帽弁、三尖弁、および/またはその他の弁逆流症の治療のための低侵襲的処置を支援することを意図している。ステントは、自己拡張可能(例えば、ニチノールまたは同様の材料)であってもよいし、またはバルーン拡張可能(例えば、コバルトクロムまたは同様の材料)であってもよい。ステントは、典型的には、開放したセルのダイヤモンド様構造または作用セル要素を有する連続構造であり得るセルで形成されている。ステントはまた、チューブ、ワイヤ、ブレードまたは同様の構造を用いて構築されてもよい。ステントの機能を援助する特定の設計上の特徴について、以下で詳細に説明する。
【0029】
ステント「アイリス(Iris)」移行セル
【0030】
ここで図2図3Bを参照すると、本発明のステント100の一実施形態は、完全におよび/または部分的に拡張されたときに完全に丸い円形構造である必要はないが、概して円形であり得る外側セクション102と、円筒形であり得るが、一定径の円筒である必要はない内側弁支持セクション104とを備える。内側弁支持セクション104は、最も好ましくは生来の弁輪、例えば僧帽弁弁輪の上方に位置する地点で、内側弁支持セクション104内において人工弁尖(図2には図示せず)を支持および保持するように適合されているが、人工弁尖の他の取り付け点は本発明の範囲内にある。さらに、上記で論じたように、ステント100は、三尖弁の機能を補完および/または置換するように構成され得る。好ましい構造は、生来の弁尖の上に配置された人工弁尖を含み、人工弁尖は、生来の弁尖と物理的に干渉または相互作用しないように、生来の弁尖から(上方に)十分に離れて、取り付けられ、間隔を置かれる。しかしながら、特定の実施形態は、生来の弁尖との何らかの相互作用を企図している。
【0031】
ステント100の外側セクション102を形成する個々のセルCは、図2では、拡張可能なステント100を形成するために使用される材料によって画定されるオープンセル領域として見ることができる。
【0032】
内側弁支持セクション104を形成する個々のセルCもまた、外側セクション102によって画定される内側領域R内に形成されたオープンセル領域として示されており、内側弁支持セクションは、内側領域R内に半径方向上方に延びている。
示したように、個々のセルCは、個々のセルCのそれとは、異なるサイズのものであり、異なる形状を備え得る。
【0033】
ステント100の外側セクション102から内側セクション104へのステント100の半径方向内側への移行を容易にするステント100の領域は、移行セル領域106である。移行セル領域106は、外側セクションセルCおよび/または内側セクションセルCのいずれかと、異なるサイズおよび/または形状を備え得るセルCを含み得る。ステント100の外側領域および/もしくは内側領域102、104、ならびに/または移行セル領域106は、1つの連続した構造から構築されてもよいし、または2つ以上の構造を組み合わせて、意図した設計目標を達成してもよい。移行セル領域106は、図2に示すように、内側弁支持セクション104が内側領域102内に存在することができるように、概して半径方向上向きの転回を含む。いくつかの実施形態では、内側弁支持セクション104の下部、すなわち、移行セル領域106のセルCと接続している内側弁支持セクション104の部分はまた、内側領域102への半径方向上向きの転回を容易にするため、および/または完了するための湾曲形状を備えてもよい。
【0034】
移行セルCの幾何形状および/または形状は、以下の図3Aのように、拡張時に実質的に直線状のセグメントになってもよく、または図3Bに示すように、拡張時にステントセルパターンに偏倚またはねじれを組み込んで、制御されたステントの圧縮を可能にしてもよい。図3Aおよび図3Bには、ステント100の底部から見た移行セル領域106の例示的な断面幾何形状が概略的に表されている。
【0035】
ステント100のこの移行セル領域106は、支柱、完全なセルセクション、または部分的なセルセクションであり得る。移行セル領域106は、設計上の必要性を満たすために一般的に必要とされるような、任意の数の支柱(最低3つ)またはセルセクションを有し得る。移行セルCまたは支柱は、図3Aに示すように、等間隔に配置され、実質的に直線状の等間隔に離れて配置された支柱108によって形成され得る。
支柱108は、支柱108の両側において等しい角度αで内側弁支持セクション104から離れ、外側支持セクション102とのその交差または融合に関して支柱108の両側において等しい角度βとなるように延びている。
【0036】
好ましい実施形態では、移行セクション106の支柱108は、図3Aのように直線状であるが、図3Cに示すように、内側弁支持セクション104および外側支持セクション102に対する角度が等しくなくてもよい。そこでは、直線状の支柱108は、内側弁支持セクション104に対してより小さな角度αとより大きな角度α’とが与えられるように傾斜している。同様に、外側支持セクション102に対して、より小さな角度β’とより大きな角度βとが与えられる。これにより、移行セクション106の傾斜した支柱108を入れ子状に圧縮することができる。
【0037】
別の好ましい実施形態では、移行セル領域106は、偏倚を有する、すなわち直線状ではなく、ねじれている、かつ/または曲線である支柱108’によって形成された移行セルCTを含む移行セル支柱108’を備えてもよい。支柱108’の偏倚および/またはねじれおよび/または湾曲の程度と、したがって、結果として生じる拡張したセルCTのサイズおよび/または形状とは、移行セル領域106内のセル/支柱の数、ステントが折り畳まれたときの充填密度(packing density)、および移行セル領域106の応力/ひずみ分布の制限に応じて変化し得る。
【0038】
図3Bおよび図3Cの構造は、いくつかの理由で、図3Aの直線状移行セル領域106の構造よりも好ましい。図4Aは、選択された支柱108の間に望ましくない隙間Gを有する、図3Aの実質的に直線状の支柱108を用いた折り畳まれた形態にある移行セル領域106を示している。この結果として生じた隙間のある折り畳まれた移行セル領域106は機能するが、それは最適ではない。
【0039】
よって、例えば、図3Bの偏倚した複数の支柱108’、および/もしくはねじれた複数の支柱108’、および/もしくは湾曲した複数の支柱108’、または図3Cの傾斜した直線状の支柱108を用いた、図4Bの移行セクション106は、支柱108’の間に隙間がない、ステントの制御された予測可能な折り畳み形態を可能にする。ひいては、これにより、対象の心臓領域への拡張可能なステント100の送達に必要とされるような折り畳み中のステント100の下部領域における応力/ひずみ集中の量が最小限にされる。加えて、セルの折り畳みも対称的かつ均一となり、ステントセルに取り付けられたときの弁組織またはファブリックへの損傷を軽減するのを援助することができる。移行支柱セクションの全体的な応力/ひずみの減少は、ステントおよび弁組織の耐久性に恩恵をもたらし得る。
【0040】
図3Bおよび図3Cならびに図4Bに示すような、すなわち、偏倚した支柱108’、ねじれた支柱108’、および/もしくは湾曲した支柱108’、または傾斜した直線状の支柱108を有する移行セル領域106の特定の実施形態の特徴は、図3Bに最もよく示されるように、支柱108’が、それぞれ、同一の偏倚、ねじれ、および/または湾曲を含むことである。ひいては、これにより、ステント100が送達および後続の拡張のために折り畳まれるときに、隣接した支柱108’を密接して入れ子状にすることが可能となる。
よって、ステントが送達システムに装填するために折り畳まれる際に、移行セクションの設計により、ステントの制御された圧縮が可能となり、移行支柱セクションのステントセルにおける応力集中を低減して、ステントおよび弁組織の耐久性に恩恵をもたらし得る。
【0041】
当業者が上記から認識するように、例示的なステントの支柱の幾何形状は、拡張した状態から折り畳まれた状態への移行を可能にする。
【0042】
図5および図6は、例示的なステント、ならびに他の折り畳み可能かつ拡張可能な支持構造ステントの、拡張した状態から折り畳まれた状態への移行を開始し得る例示的な装填装置200を示しており、
折り畳まれた状態または構成は、送達カテーテルまたはシースへの並進移動、および送達カテーテルまたはシースに沿った標的の解剖学的位置までの並進移動のために準備され、またそのような並進移動に十分である。
【0043】
よって、ステント装填装置200は、近位から遠位に向って直径が縮小する近位移行セクション201を含んでおり、近位移行セクション201は、一定径の実質的に円筒形の近位セクション202と流体連通しており、近位セクション202は縮径セクション204に移行し、次に縮径セクション204は遠位一定径セクション206に移行する。縮径セクション204は、円錐形として示されているが、様々な実施形態は、曲線および/または凹状の輪郭を含み得る。いずれの場合も、寸法要件は、縮径セクション204の内径が、実質的に円筒形の一定径セクション202から遠位一定径セクション206に実質的に滑らかに移行して縮小する直径を与えることであり、遠位一定径セクション206は次に送達シース207の近位端に動作可能に取り付けられ、送達シース207の近位端と流体連通する。ここで、近位とは、患者の身体の外側に位置する送達シース207の部分を意味する。管腔は、装填装置200内に画定され、すなわち、一定径セクション206において、送達シース207の管腔と実質的に同一の直径となり、一定径セクション206を通り、送達シース207の管腔内へ、さらにその管腔を通って折り畳まれたステント構造を並進移動させる間に、一定径セクション206と送達シース207との間の滑らかな移行を提供することが容易に理解されよう。
【0044】
装置200は、組み合わせられる1つまたは複数のセクションを備えてもよいし、または装置200は、単一の装置として製造されてもよく、いずれの実施形態も、送達シース207の近位端と流体が流れるように(fluidly)接続され得る。
【0045】
加えて、流体リザーバ208は、装置の近位表面の少なくとも一部と動作可能に接続かつ連通して設けられている。示したように、流体リザーバ208は、装置内にステントを装填するプロセス中に液体を保持および保存するように設計された曲線形状を備え、これにより、ひいては、ステントに一体化された、または取り付けられた生物学的材料および/または生体適合性材料の完全性が保持される。
【0046】
ここで説明した装填装置の構造により、当業者は、ステントを拡張したサイズから所定の直径を有する所定の折り畳まれたサイズに移行させる際の有用性を認識するであろう。よって、上記に示した例示的なステントは、一定径の円筒形セクション202を通って、縮径セクション204に沿ってゆっくりと並進移動され得る。ステントが進められるにつれて、円筒部分202および/または縮径セクション204の内壁は、ステントの周りに周方向に等しい力を及ぼし、よって、ステントが最小の抵抗および最小の応力の地点に沿って折り畳まることができるようにする。上記で論じたように、円形および/またはらせん状の支柱は、所定の、予測可能かつ繰り返し可能な折り畳み動作を可能にし、遠位一定径セクション206の内径によって少なくとも部分的に決定される直径および/または折り畳み形状を含む、所定の、予測可能かつ繰り返し可能な折り畳み形状をもたらす。ステントが徐々に折り畳まれ、最終的に遠位一定径セクション206に到達すると、折り畳まれたステントは、遠位一定径セクション206に沿って、または遠位一定径セクション206と同一または同様の内径の接続された送達シースまたはカテーテル207に沿って、目的の解剖学的位置に並進移動され得る。折り畳まれたステントが拘束構造の遠位端から解放されると、ステントは付勢拡張する(biasingly expand)ことが可能になり、折り畳み動作を効果的に逆転させて、拡張した状態または構成に到達する。
【0047】
一般に、図5図6および図7に示すように、装填装置200は、装填装置200を通って画定された、内径が変化する管腔Lを備える。よって、近位から遠位方向に向って、近位移行セクション201は、その近位端では装置200の最大内径である径D1を備え、径D1は近位移行セクション201の遠位端でD1よりも小さい内径D2に移行する。近位移行セクション201の遠位端は、近位移行セクション201の遠位端のそれと同一の内径D2である一定な内径D2の円筒形セクション202の近位端と、動作可能かつ流体が流れるように係合している。一定径セクション202の遠位端は、縮径セクション204の近位端と動作可能かつ流体が流れるように係合しており、縮径セクション204の近位端は、その近位において、一定径の円筒形セクションの内径D2と同一である内径D2を備える。縮径セクション204は、近位端から遠位端までその長さに沿って縮小する内径を画定し、遠位端では、内径は、装置200の管腔L全体に対して最小でD3である。遠位一定径セクション206は、縮径セクションの遠位端と流体が流れるように、かつ動作可能に係合しており、縮径セクション204の遠位端と同一の内径D3を備え、この内径D3は、遠位一定径セクションの遠位端が動作可能かつ流体が流れるように係合する送達シース207によって定義される管腔と同一の内径D3である。
【0048】
上記の装填装置はさらに、装填中に必要とされる水分を保持するために湿らせておく必要がある生物学的材料または他の材料を含むステントを可能にする。加えて、湿った状態に保たれなければならない生物学的材料または他の材料を含むステントは、将来の使用のために事前に装填され得る。よって、ステントは、流体リザーバ208によって捕捉された流体とともに、折り畳まれ、装填装置の管腔に装填され、生物学的材料および/または生体適合性材料を、装填の直後の、またはその後の、すなわち事前装填で、並進移動、送達、および移植に備えて、適切に湿らせた状態に保つことができる。流体リザーバ208は、内側曲面209と、リザーバ208の上部212を取り囲む縁210とを備えるものとして示されており、いくつかの実施形態では示したように、上部が開放したカップの形態をとり得る。縁210は、流体および/または折り畳まれたステントもしくは部分的に折り畳まれたステントを流体リザーバ208内に保持するのを助けるために、内側曲面209の一部を横切って内側に延在し得る。実際には、生体適合性流体を流体リザーバ208に加えて、折り畳みステント構造および/または折り畳まれたステント構造の少なくとも一部、例えば、折り畳まれたステントの外面および/または内面上に配置された人工弁尖および/またはスカート材料が流体内に配置されるようにすることができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、事前装填は、流体リザーバ208内の流体への浸漬によりステントに関連付けられた重要な生物学的材料または生体適合性材料を継続的に湿らせながら、ステントを近位移行セクション201内および/または一定径の円筒形セクション202内のいずれかで少なくとも部分的に折り畳むことを含み得る。他の場合には、事前装填は、流体リザーバ208内への浸漬によりステントに関連付けられた重要な生物学的材料または生体適合性材料を継続的に湿らせながら、ステントを遠位一定径セクション206内において少なくとも部分的な折り畳むことを含み得る。
【0050】
本明細書に記載の本発明およびその用途の説明は例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。様々な実施形態の特徴は、本発明の企図の範囲内において他の実施形態と組み合わせることができる。本明細書に開示される実施形態の変形および修正が可能であり、実施形態の様々な要素の実際的な代替物および均等物は、この特許文献を検討することにより当業者には理解されよう。本明細書に開示される実施形態のこれらおよび他の変形および修正は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7