(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】成形システム
(51)【国際特許分類】
B21D 26/041 20110101AFI20240418BHJP
B21D 26/033 20110101ALI20240418BHJP
【FI】
B21D26/041
B21D26/033
(21)【出願番号】P 2021515847
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020008886
(87)【国際公開番号】W WO2020217716
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019080796
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 啓
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167315(JP,A)
【文献】特開2016-190252(JP,A)
【文献】特開2008-006463(JP,A)
【文献】特開2005-009466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/041
B21D 26/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された金属パイプ材料を膨張させて金属パイプを成形する成形システムであって、
加熱された前記金属パイプ材料に気体を供給して、前記金属パイプ材料を膨張させる気体供給部と、
前記金属パイプ材料を膨張させた後で前記気体を排出する排出部と、
前記排出部を流れる気体を冷却する冷却部と、を備え、
前記気体供給部は、前記気体を供給する供給口を有するノズルと、前記ノズルから前記供給口に対して反対側へ延びて、前記ノズルを支持する支持部と、
前記支持部の延伸方向の一部が挿入されると共に、前記延伸方向に沿って当該支持部を進退移動させる駆動部と、を有し、
前記冷却部は、前記ノズル及び前記支持部の少なくとも一方に設けられ、
前記ノズル、及び前記支持部には、前記金属パイプ材料から高温になった前記気体を前記排出部側へ流通させるように延びる流路が形成され
、前記支持部の内部において前記流路は前記延伸方向に延びる、成形システム。
【請求項2】
前記冷却部は、前記ノズルの内部に設けられる、請求項1に記載の成形システム。
【請求項3】
前記流路は、前記気体を供給口側へ流通させ、
前記気体供給部には、前記流路を流通する高温になった前記気体を冷却する前記冷却部が設けられ、
前記冷却部は、前記ノズルとは別部材として、少なくとも前記駆動部よりも前記延伸方向における前記供給口側の位置に設けられる、請求項1に記載の成形システム。
【請求項4】
前記流路は、前記気体を供給口側へ流通させ、
前記気体供給部には、前記流路を流通する前記気体を冷却する前記冷却部が設けられ、
前記冷却部は、少なくとも前記駆動部よりも前記延伸方向における前記供給口側の位置に設けられ、前記流路の一部の区間の前記延伸方向に対する横断面積を前記流路の他の区間の前記延伸方向に対する横断面積と比較して縮小させることで前記気体を冷却する、請求項1に記載の成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属パイプ材料に流体を供給する際のシール性を向上することができる成形システムが記載されている。成形システムは、金属パイプ材料の端部を加熱する加熱部と、金属パイプ材料内に流体を供給して膨張させる流体供給部と、加熱部及び流体供給部を制御する制御部と、を備える。制御部は、流体供給部による流体の供給より前段階で、金属パイプ材料の端部を加熱するように加熱部を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の記載の成形システムにおいては、金属パイプ材料内に供給された気体は、金属パイプ材料の加熱に伴い高温化する。成形システムにおける金属パイプ材料の成形が完了した後に高温化した気体が放出されることで、流体が流通する流路の周辺の部材が熱の影響を受けるおそれがある。
【0005】
上記事情に鑑み、本開示は、流路の周辺の部材への熱の影響を抑制することができる成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態は、加熱された金属パイプ材料を膨張させて金属パイプを成形する成形システムである。この成形システムは、加熱された金属パイプ材料に気体を供給して、金属パイプ材料を膨張させる気体供給部と、金属パイプ材料を膨張させた後で気体を排出する排出部と、排出部を流れる気体を冷却する冷却部と、を備える。
【0007】
この成形システムでは、気体は、気体供給部により加熱された金属パイプ材料に供給され、金属パイプ材料を膨張させる。気体は、加熱された金属パイプ材料により高温になった気体となる。高温となった気体は、金属パイプ材料を膨張させた後で排出部で排出される。ここで、成形システムは、排出部を流れる気体を冷却する冷却部を備える。これにより、高温の流体が成形システム内の流路を流れることを抑制できる。以上より、流路の周辺の部材への熱の影響を抑制することができる。
【0008】
気体供給部は、気体を供給する供給口を有するノズルと、ノズルから供給口に対して反対側へ延びて、ノズルを支持する支持部と、支持部の延伸方向に沿って、当該支持部を移動させる駆動部と、を有し、ノズル及び支持部には、気体を供給口側へ流通させると共に、金属パイプ材料から高温になった気体を排出部側へ流通させるように延びる流路が形成され、気体供給部には、流路を流通する高温になった気体を冷却する冷却部が設けられ、冷却部は、ノズルとは別部材として、少なくとも駆動部よりも延伸方向における供給口側の位置に設けられてよい。
【0009】
この成形システムでは、高圧の気体は、気体供給部により加熱された金属パイプ材料に供給され、金属パイプ材料を膨張させる。高圧の気体は、加熱された金属パイプ材料により高温になった気体となる。高温になった気体は、ノズル及び支持部内に設けられた流路を流通する。冷却部は、少なくとも駆動部よりも延伸方向における供給口側の位置において流路を冷却するように配置される。このため、流路を流通する高温になった気体は、冷却部により、少なくとも駆動部よりも延伸方向における供給口側の位置において冷却される。少なくとも駆動部よりも延伸方向における供給口側の範囲は、駆動部及び駆動部よりも延伸方向における供給口側とは反対側の範囲と比較して熱の影響をうけにくいため、高温になった気体による熱の影響を当該範囲に抑えることができる。従って、流路の周辺の部材への熱の影響を抑制することができる。
【0010】
気体供給部は、気体を供給する供給口を有するノズルと、ノズルから供給口に対して反対側へ延びて、ノズルを支持する支持部と、支持部の延伸方向に沿って、当該支持部を移動させる駆動部と、を有し、ノズル及び支持部には、気体を供給口側へ流通させると共に、金属パイプ材料から気体を排出部側へ流通させるように延びる流路が形成され、気体供給部には、流路を流通する気体を冷却する冷却部が設けられ、冷却部は、少なくとも駆動部よりも延伸方向における供給口側の位置に設けられ、流路の一部の区間の延伸方向に対する横断面積を流路の他の区間の延伸方向に対する横断面積と比較して縮小させることで高温になった気体を冷却してよい。
【0011】
この成形システムでは、高圧の気体は、気体供給部により加熱された金属パイプ材料に供給され、金属パイプ材料を膨張させる。高圧の気体は、加熱された金属パイプ材料により高温になった気体となる。高温になった気体は、ノズル及び支持部内に設けられた流路を流通する。少なくとも駆動部よりも延伸方向における供給口側の位置において流路に設けられた冷却部は、流路の一部の区間を縮小させている。流路を流通する高温になった気体には、冷却部を通過することで、断熱変化が生じる。したがって、高温になった気体は、少なくとも駆動部よりも延伸方向における供給口側の位置において冷却される。少なくとも駆動部よりも延伸方向における供給口側の範囲は、駆動部及び駆動部よりも延伸方向における供給口側とは反対側の範囲と比較して熱の影響をうけにくいため、高温になった気体による熱の影響を当該範囲に抑えることができる。従って、簡易な構成で効率良く流路の周辺の部材への熱の影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の成形システムによれば、流路の周辺の部材への熱の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る成形システムに含まれる膨張成形装置の概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す右側のパイプ保持機構の正面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る成形システムの主要部を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る成形システムの冷却部を示す詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
[膨張成形装置の概要]
図1は、本実施形態に係る成形システムに含まれる膨張成形装置の概略図である。
図1に示すように、成形システム200は、ブロー成形によって金属パイプを成形する膨張成形装置10を含む。この膨張成形装置10は、水平面上に設置される。そして、膨張成形装置10が設置される水平面に対して鉛直上方を「上」、鉛直下方を「下」とし、当該水平面に平行な一方向の片側(
図1の紙面左側)を「左」、逆側(
図1の紙面右側)を「右」とする。また、
図1の紙面に垂直であって手前側を「前」、奥側を「後」とする。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0016】
膨張成形装置10は、互いに対となる下型11及び上型12からなる金型13と、上型12を移動させる上型駆動機構80と、下型11及び上型12を挟んで左右両側で金属パイプ材料Pの右端部と左端部とをそれぞれ保持する一対のパイプ保持機構20と、金型13を強制的に水冷する水循環機構14と、上記各構成を制御する制御装置100と、装置のほぼ全体構成を上面で支持する基台15とを備えている。金型13はブロー成形金型である。なお、膨張成形装置10は、基台15の上面が水平となるように設置される。
【0017】
下型11は、鋼鉄製ブロックで構成され、その上面に成形形状に応じた凹部111を備え、内部には冷却水通路112が形成されている。上型12は、鋼鉄製ブロックで構成され、その下面に成形形状に応じた凹部121を備え、内部には冷却水通路122が形成されている。冷却水通路112,122には水循環機構14が接続され、ポンプにより冷却水が供給される。
【0018】
下型11と上型12は、互い密接した状態で、各々の凹部111と凹部121とが金属パイプ材料Pを成形すべき目標形状の空間を形成する。この目標形状は、左右方向に平行な直線的な形状に対して、途中で湾曲又は屈曲し、左右の両端部が下方に傾斜した向きとなる形状である。金属パイプ材料Pは、この目標形状と同じように屈曲又は湾曲しているが、目標形状よりも全長に渡って外径が小さくなっており、膨張成形の過程で目標形状に成形される。従って、金属パイプ材料Pは、その両端部が、下型11及び上型12による目標形状と同じ向きとなるように一対のパイプ保持機構20に保持される。具体的には、金属パイプ材料Pの右端部は、右方向に対して幾分下方に傾斜した右斜め下方向に向けられて右側のパイプ保持機構20に保持される。また、金属パイプ材料Pの左端部は、左方向に対して幾分下方に傾斜した左斜め下方向に向けられて左側のパイプ保持機構20に保持される。
【0019】
下型11の下側には、下方に向かって順番に積層された下ダイホルダ97、下ダイベースプレート98及びスライド92が設けられている。
【0020】
上型駆動機構80は、上型12の上側から上方に向かって順番に積層された第1の上ダイホルダ86、第2の上ダイホルダ87及び上ダイベースプレート88を備えている。さらに、上型駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド82と、上記スライド82を上側へ引き上げる力を発生させるアクチュエータとしての引き戻しシリンダ85と、スライド82を下降加圧する駆動源としてのメインシリンダ84と、メインシリンダ84に圧油を供給する油圧ポンプ81と、油圧ポンプ81に対する流体量を制御するサーボモータ83と、引き戻しシリンダ85に圧油を供給する図示しない油圧ポンプ及びその駆動源となる図示しないモータとを備えている。上記スライド82には、上下方向の位置及び移動速度を検出するためのリニアセンサ等の位置センサ、上型12の荷重を検出するロードセルなどの荷重センサが装備されている。
【0021】
なお、上型駆動機構80の位置センサや荷重センサは必須ではなく省略することが可能である。また、上型駆動機構80で油圧を利用する場合には、荷重センサに替えて油圧を測定する測定装置を利用することができる。
【0022】
また、膨張成形装置10は、金属パイプ材料Pの温度を測定するための放射温度計102を備えている。ただし、放射温度計102は温度検出部の一例を示したに過ぎず、熱電対のような接触型温度センサを設けてもよい。
【0023】
パイプ保持機構20は、基台15上において、金型13の左右両側に一基ずつ配置されている。右側のパイプ保持機構20は、金型13により向きが定められている金属パイプ材料Pの右斜め下方向に向けられた一端部の保持を行い、左側のパイプ保持機構20は、金型13により向きが定められている金属パイプ材料Pの左斜め下方向に向けられた他端部の保持を行う。右側のパイプ保持機構20と左側のパイプ保持機構20は、各々の構成が、保持を行う金属パイプ材料Pの端部の傾斜に応じた向きに角度が調整されて基台15上に固定されている点を除けば、同一構造であることから、以下の説明は、主に右側のパイプ保持機構20について行う。
【0024】
図2は、
図1に示す右側のパイプ保持機構の正面図である。なお、右側のパイプ保持機構20は、前述したように、保持する金属パイプ材料Pの右端部の傾斜角度に応じて、その全体構成が傾斜した状態で基台15の上面に設置されるが、
図2では、説明の容易化、明確化のために、パイプ保持機構20の全体構成が傾斜を生じていない状態、つまり、左右方向に平行な金属パイプ材料Pの右端部を保持する向きで図示している。
【0025】
パイプ保持機構20は、金属パイプ材料Pの右端部を把持する一対の電極である下側電極21及び上側電極22と、金属パイプ材料Pの右端部から内部に圧縮気体を供給するノズル23と、下側電極21及び上側電極22を支持する電極搭載ユニット30と、ノズル23を支持するノズル搭載ユニット40と、下側電極21及び上側電極22とノズル23とを昇降させる昇降機構50と、これら全体の構成を支持するユニットベース24とを備えている。ノズル23、ノズル搭載ユニット40、後述の油圧回路43及び後述の空圧回路44は、気体供給部及び排出部の一例である。
【0026】
ユニットベース24は、昇降機構50を介して電極搭載ユニット30及びノズル搭載ユニット40を上面に支持する平面視で矩形の板状ブロックである。ユニットベース24は、水平面である基台15の上面にボルト等の固定手段により取り付けられ、取り外しが可能となっている。パイプ保持機構20は、上面の傾斜角度が異なる複数のユニットベース24を有し、これらを交換することにより、下側電極21及び上側電極22、ノズル23、電極搭載ユニット30、ノズル搭載ユニット40、昇降機構50の傾斜角度を一括的に変更調節することを可能としている。
【0027】
そして、これにより、ユニットベース24は、金型13によって向きが規定される金属パイプ材料Pのそれぞれの端部の延出方向に沿って、電極搭載ユニット30が下側電極21及び上側電極22を移動させることができるように調整する。なお、「端部の延出方向」とは、金属パイプ材料Pの片側の端部における中心線を直線的に延長した方向、或いは、金属パイプ材料Pの片側の端部が向いている方向に沿ったベクトル方向をいう。また、同様に、ユニットベース24は、金型13によって向きが規定される金属パイプ材料Pのそれぞれの端部の延出方向に沿って、ノズル搭載ユニット40がノズル23を移動させることができるように調整する。つまり、ユニットベース24は、電極調整部及びノズル調整部として機能する。
【0028】
前述したように、金型13によって規定される金属パイプ材料Pの右端部の中心線の延出方向が右斜め下方向(前後方向の傾斜はなし)の場合には、ユニットベース24の上面は、水平面に対して前後方向に沿った軸回りに右側が下がる方向に傾斜した傾斜平面であり、その傾斜角度は金属パイプ材料Pの右端部の延出方向の傾斜角度と一致する。
【0029】
昇降機構50は、ユニットベース24の上面に取り付けられる前後一対の昇降フレームベース51,52と、これらの昇降フレームベース51,52によってユニットベース24の上面に対する垂直方向に沿って昇降可能に支持された電極搭載ユニット30の昇降フレーム31に対して昇降動作を付与する昇降用アクチュエータ53とを備えている。
【0030】
昇降フレームベース51,52は、ユニットベース24の上面に対して、ボルト等の締結手段により着脱可能に取り付けられている。そして、前側の昇降フレームベース51と後側の昇降フレームベース52は、上下方向及び左右方向に平行な平面を対称面とする互いに面対称な立体形状である。これらの昇降フレームベース51,52は、枠状をなし、これらの間で昇降フレーム31をユニットベース24の上面に対する垂直方向に沿って昇降可能に支持している。また、昇降フレームベース51,52は、いずれも、左側と右側とに、板状のライナー54,55を、前側と後側とに、板状のライナーを備えている。これらのライナー54,55は、昇降フレーム31の前側部分と後側部分とに対して、ユニットベース24の上面垂直方向に沿った昇降動作を安定的にガイドする。また、前側と後側とに設けられたライナーは、左右方向に対する動作を安定的にガイドする。
【0031】
また、昇降用アクチュエータ53は、ユニットベース24の上面垂直方向に沿った往復動作を昇降フレーム31に付与する直動式のアクチュエータであり、例えば、油圧シリンダ等を使用することが出来る。
【0032】
下側電極21と上側電極22は、いずれも絶縁板で板状導体を挟んだ矩形の平板状電極である。下側電極21の中央上端部と上側電極22の中央下端部とには、それぞれ、平板面を垂直に貫通するように半円状の切り欠きが形成されている。そして、下側電極21と上側電極22とを同一平面上に配置して、下側電極21の上端部と上側電極22の下端部とを密接させると、相互の半円状の切り仮が合致して円形の貫通孔となる。この円形の貫通孔は、金属パイプ材料Pの端部の外径と略一致しており、金属パイプ材料Pへの通電の際には、その端部を円形の貫通孔に嵌合させた状態で下側電極21と上側電極22とにより把持される。
【0033】
また、下側電極21は、制御装置100によって制御される電源101に電気的に接続されている。上側電極22は、下側電極21を介して金属パイプ材料Pへの通電が行われる。電源101は、制御装置100により制御され、左右のパイプ保持機構20の下側電極21に通電を行い、金属パイプ材料Pをジュール加熱により急速に加熱することができる。
【0034】
なお、金属パイプ材料Pの端部の外形は、円形に限られない。従って、下側電極21と上側電極22のそれぞれの切り欠きは、それぞれ、金属パイプ材料Pの端部の外形を半割した形状とされる。
【0035】
電極搭載ユニット30は、下側電極21と上側電極22の平板面が前述した金属パイプ材料Pの右端部の延出方向に対して垂直となる向きを維持してこれらを支持している。例えば、ユニットベース24の上面が水平である場合には、電極搭載ユニット30は、下側電極21と上側電極22の平板面が上下方向及び前後方向に平行となる向きで支持する。
【0036】
電極搭載ユニット30は、前述した昇降機構50によってユニットベース24の上面に対して垂直な方向に沿って昇降動作が付与される昇降フレーム31と、昇降フレーム31の左端部において下側電極21を保持する下側電極フレーム32と、下側電極フレーム32の上側に設けられ、上側電極22を保持する上側電極フレーム33とを備えている。
【0037】
下側電極フレーム32は、下側電極21の上端部を除いた外周を保持する枠体である。この下側電極フレーム32は、前後に設けられた二つのリニアガイドを介して、平面視で左右方向に平行且つユニットベース24の上面に平行な方向に沿って移動可能となるように昇降フレーム31の左端部に支持されている。また、下側電極フレーム32には、各リニアガイドによる移動方向に沿って移動動作を付与する下側電極移動用アクチュエータが併設されている。この下側電極移動用アクチュエータは、例えば、油圧シリンダ等を使用することが出来る。なお、下側電極フレーム32には、各リニアガイドによる移動方向における位置を検出するリニアセンサ等の位置センサが併設されている。下側電極21は、これらの構成により、金属パイプ材料Pの右端部の延出方向に沿って往復移動を行うことができる。
【0038】
下側電極フレーム32の前端部及び後端部の上面には、リニアガイドを介して、平面視で左右方向に平行且つユニットベース24の上面に平行な方向に沿って移動可能なスライドブロックが個別に設けられている。また、スライドブロックには、各リニアガイドによる移動方向に沿って移動動作を付与する片側電極移動用アクチュエータとしての上側電極移動用アクチュエータが併設されている。この上側電極移動用アクチュエータは、例えば、油圧シリンダ等を使用することが出来る。なお、スライドブロックには、各リニアガイドによる移動方向における位置を検出するリニアセンサ等の位置センサが併設されている。
【0039】
上側電極フレーム33は、上側電極22の下端部を除いた外周を保持する枠体である。この上側電極フレーム33は、各スライドブロックの上部に前後に設けられた二つずつのリニアガイドを介して、ユニットベース24の上面に垂直な方向に沿って移動可能となるように、各スライドブロックに支持されている。また、上側電極フレーム33と各スライドブロックとの間には、上側電極浮上用バネが介挿されており、上側電極フレーム33は、各スライドブロックに対して、常に上方に押圧されている。
【0040】
上側電極フレーム33は、各スライドブロックに対してユニットベース24の上面に垂直な方向(上下方向)に移動可能である。そして、各スライドブロックは下側電極フレーム32に対して平面視で左右方向に平行且つユニットベース24の上面に平行な方向(左右方向)に移動可能である。このため、上側電極フレーム33は、下側電極フレーム32に対して、昇降可能且つ金属パイプ材料Pの端部延出方向(左右方向)に沿って移動可能となっている。
【0041】
そして、下側電極フレーム32には、上側電極フレーム33をユニットベース24の上面に垂直な方向に沿って昇降させるクランプ用アクチュエータが前後に一つずつ設けられている。各クランプ用アクチュエータは、例えば、油圧シリンダ等を使用することが出来る。なお、各クランプ用アクチュエータのプランジャの先端部は、上側電極フレーム33に対して、金属パイプ材料Pの端部延出方向(左右方向)に沿って移動可能に連結されている。従って、下側電極フレーム32に対する上側電極フレーム33の金属パイプ材料Pの端部延出方向(左右方向)に沿った移動動作は妨げない。
【0042】
ノズル23は、金属パイプ材料Pの端部を挿入可能な円筒である。ノズル23の中心線は、金属パイプ材料Pの端部の延出方向に平行となるようにノズル搭載ユニット40に支持されている。金属パイプ材料P側のノズル23の端部(以下、「供給口」と記載)の内径は、膨張成形後の金属パイプ材料Pの外径に略一致している。なお、ノズル23には、金属パイプ材料Pの当接の押圧力を検出する押圧力センサが併設されている。
【0043】
ノズル搭載ユニット40は、電極搭載ユニット30の昇降フレーム31の右端部に搭載されている。従って、昇降機構50による昇降動作が行われた場合には、ノズル搭載ユニット40は電極搭載ユニット30と一体的に昇降する。ノズル搭載ユニット40は、電極搭載ユニット30の下側電極21と上側電極22とが金属パイプ材料Pの端部を把持した状態において、当該金属パイプ材料Pの端部とノズル23とが同心となる位置にノズル23を支持している。例えば、ユニットベース24の上面が水平である場合には、ノズル搭載ユニット40は、ノズル23の中心線が左右方向に平行となる向きで支持する。
【0044】
ノズル搭載ユニット40は、ノズル23を金属パイプ材料Pの端部の延出方向に沿って移動させるノズル移動用アクチュエータとして、油圧シリンダ機構を有している。この油圧シリンダ機構は、ノズル23を保持するピストン41(支持部の一例)と、ピストン41に進退移動を付与するシリンダ42(駆動部の一例)とを備えている。シリンダ42は、ピストン41を金属パイプ材料Pの端部の延出方向に平行に進退移動させる向きで昇降フレーム31の右端部に固定的に搭載されている。このシリンダ42は、油圧回路43(
図1参照)に接続され、内部に作動流体である圧油の供給と排出が行われる。油圧回路43は、制御装置100によってシリンダ42への圧油の供給と排出が制御される。なお、油圧回路43は、左側のパイプ保持機構20にも接続されているが、
図1では接続を示す経路の図示は省略している。
【0045】
ピストン41は、シリンダ42内に格納された本体部411と、シリンダ42の左端部(下側電極21及び上側電極22側)から外部に突出する頭部412と、シリンダ42の右端部から外部に突出する管状部413とを備えている。本体部411と頭部412と管状部413とは、いずれも円筒状であって、同心で一体的に形成されている。本体部411は、外径がシリンダ42の内径に略一致している。そして、シリンダ42内では、本体部411の両側に油圧が供給されて、ピストン41の進退移動が行われる。
【0046】
頭部412は、本体部411よりも小径であって、当該頭部412の左側(下側電極21及び上側電極22側)の先端部にはノズル23が同心で固定装備されている。管状部413は、本体部411及び頭部412よりも小径な円管である。この管状部413は、シリンダ42の右端部を貫通してシリンダ42の外側に突出している。
【0047】
ピストン41は、頭部412から本体部411を通じて管状部413の先端まで、全長に渡って中心を貫通する圧縮気体の流路414が形成されている。そして、管状部413の先端部(右端部)は、ノズル23への圧縮気体の供給と排出を行う空圧回路44(
図1参照)に接続されている。なお、空圧回路44は、左側のパイプ保持機構20にも接続されているが、
図1では接続を示す経路の図示は省略している。また、頭部412の先端部に装備されたノズル23は、圧縮気体の流路414に連通している。つまり、ノズル搭載ユニット40は、ノズル23に対して、ピストン41を通じて、ノズル23とは反対側から圧縮気体の供給を行うことができる構造となっている。圧縮気体は、例えば圧縮空気である。
【0048】
[膨張成形装置による金属パイプの成形方法]
上記構成からなる膨張成形装置10の膨張成形の動作は、制御装置100の動作制御に基づいて行われる。そして、制御装置100は、動作制御に関する処理プログラムと各種の情報を記憶する記憶部と、処理プログラムに基づいて動作制御を実行する処理装置とを備えている。
【0049】
まず、最初に、金型13によって定まる目標形状による金属パイプ材料Pの端部の延出方向に対応する方向に上面が傾斜したユニットベース24が選択され、各パイプ保持機構20に装着される。そして、各パイプ保持機構20は、基台15の上面に固定される。
【0050】
そして、制御装置100は、左右のパイプ保持機構20の下側電極移動用アクチュエータを制御して、下側電極21が下型11に当接する位置まで進出移動させる。また、制御装置100は、左右のパイプ保持機構20の上側電極移動用アクチュエータを制御して、上側電極22を下側電極21に対して、金属パイプ材料Pの端部から離間した位置に退避移動させる。このように配置された左右の下側電極21に対して、金属パイプ材料Pが半円状の切り欠きに嵌まるように載置される。また、上側電極22は、退避しているので、金属パイプ材料Pの載置作業の妨げとはならない。なお、下側電極21に載置された金属パイプ材料Pは、下型11よりも幾分上方に位置しており、下型11には接触していない。
【0051】
次いで、制御装置100は、上側電極移動用アクチュエータを制御して、上側電極22を下側電極21の上方の把持位置に移動させる。上側電極22の把持位置とは、上側電極22を下側電極21側に下降させることで、これらにより金属パイプ材料Pの端部を把持することが可能な位置である。
【0052】
次いで、制御装置100は、クランプ用アクチュエータを制御して、上側電極22を下側電極21に向かって下降させる。これにより、金属パイプ材料Pの端部が上側電極22の半円状の切り欠きに嵌まり、下側電極21と上側電極22とにより把持される。
【0053】
金属パイプ材料Pの両端部が左右のパイプ保持機構20の下側電極21及び上側電極22により個別に把持された状態で、制御装置100は、電源101を制御してそれぞれの下側電極21に通電を行う。これにより、金属パイプ材料Pはジュール加熱が行われる。このとき、制御装置100は、放射温度計102による金属パイプ材料Pの温度を監視し、規定の目標温度の範囲で規定時間の加熱を行う。
【0054】
ジュール加熱により、金属パイプ材料Pは熱膨張を生じ、その端部はその延出方向に向かって延びが生じる。制御装置100は、金属パイプ材料Pの温度と熱延び量との相関をデータとして記憶しており、この相関データを参照して、放射温度計102による金属パイプ材料Pの検出温度に基づいて金属パイプ材料Pの熱延び量を取得する。さらに、制御装置100は、取得した熱延び量から下側電極移動用アクチュエータを制御して、各パイプ保持機構20の下側電極21及び上側電極22を金属パイプ材料Pに応力を加えない位置又は応力が十分に低減される位置に移動させる。この電極位置制御を行うことにより、制御装置100は、電極位置制御部として機能する。なお、この電極位置制御は、左右のパイプ保持機構20の下側電極21に通電が行われている間は、周期的に繰り返し実行される。
【0055】
なお、電極位置制御は、金属パイプ材料Pの温度と熱延び量との相関データを使用せずに、下側電極21及び上側電極22が金属パイプ材料Pの端部に対してその延出方向に向かって伸長する方向に金属パイプ材料Pに変形を与えない程度の弱い張力を付与しながら移動する制御を行っても良い。その場合、下側電極移動用アクチュエータが例えば油圧シリンダの場合には、油圧を前述した低圧力にして延出方向に向かって伸長する方向に下側電極21及び上側電極22を移動させても良い。
【0056】
金属パイプ材料Pに対する通電が終わると、下側電極21は、電極位置制御により、下型11から離間を生じて隙間S1が発生する。このため、制御装置100は、クランプ用アクチュエータを制御して、上側電極22を上昇させ、さらに、下側電極移動用アクチュエータを制御して、下側電極21及び上側電極22を金型13側に寄せて、下側電極21を下型11に当接させる。そして、上側電極22を下降させて再び把持する。これにより、制御装置100は、再把持動作制御を行う再把持動作制御部として機能する。
【0057】
次いで、制御装置100は、昇降用アクチュエータ53を制御して、金属パイプ材料Pが下型11の凹部111に接触又は近接する位置まで下降させる。このとき、ユニットベース24の上面が金属パイプ材料Pの延出方向に対応して水平面に対して傾斜している場合には、昇降用アクチュエータ53による下降動作を行うと、昇降フレーム31上の構成は全て左右方向に位置変動を生じる。例えば、右側のパイプ保持機構20は右に移動し、左側のパイプ保持機構20は左に移動する。
【0058】
その結果、下側電極21は、下型11から離間を生じて隙間S2が発生する。このため、制御装置100は、クランプ用アクチュエータを制御して、上側電極22を上昇させ、さらに、下側電極移動用アクチュエータを制御して、下側電極21及び上側電極22を金型13側に当接するまで寄せるように移動させる。そして、上側電極22を下降させて金属パイプ材料Pの端部を再び把持する。つまり、制御装置100は、もう一度、再把持動作制御を行う。
【0059】
なお、上述のように、制御装置100が再把持動作制御を二回行う場合を例示したが、金属パイプ材料Pへの通電終了時の一回目の再把持動作制御は実行せず、昇降用アクチュエータ53の制御により下側電極21及び上側電極22を下降させてから再把持動作制御を一回だけ行っても良い。
【0060】
その後、制御装置100は、上型駆動機構80のサーボモータ83を制御して、上型12を下型11に接する位置まで下降させる。さらに、制御装置100は、油圧回路43を制御して左右のパイプ保持機構20のノズル搭載ユニット40を制御し、各ノズル23を金属パイプ材料Pのそれぞれの端部側に向かって進出移動させる。これにより、ノズル23の供給口に金属パイプ材料Pの端部が挿入される。そして、制御装置100は、空圧回路44を制御して、ノズル23から金属パイプ材料P内に圧縮気体を供給する。これにより、ジュール加熱で硬度が低下している金属パイプ材料Pは内圧によって金型13内で目標形状に成形される。
【0061】
一方、金属パイプ材料Pは、上記成形中は温度が徐々に低下することで収縮が生じ、その端部が金型13側に移動する。制御装置100は、前述したように、金属パイプ材料Pの温度と熱延び量との相関をデータとして記憶しているので、この相関データを参照して、放射温度計102による金属パイプ材料Pの検出温度に基づいて金属パイプ材料Pの収縮量を取得する。さらに、制御装置100は、取得した収縮量から、油圧回路43を制御してノズル搭載ユニット40を作動させ、ノズル23を金型13側に移動させる。より詳細には、金属パイプ材料Pの収縮量に応じて、金属パイプ材料Pの端部がノズル23から抜けないように、追従移動させる。このノズル位置制御を行うことにより、制御装置100は、ノズル位置制御部として機能する。なお、このノズル位置制御は、ノズル23から金属パイプ材料P内に圧縮気体を供給している間は、周期的に繰り返し実行される。
【0062】
なお、ノズル位置制御は、金属パイプ材料Pの温度と熱延び量との相関データを使用せずに、ノズル23が金属パイプ材料Pの端部に対して、座屈や変形等の影響を与えない範囲で予め上限値を定め、当該上限値を超えないように押圧力を付与しながら移動する制御を行っても良い。
【0063】
そして、一定期間、圧縮気体を供給して金属パイプ材料Pに膨張成形を行った後、制御装置100は、圧縮気体の供給を停止し、下側電極21及び上側電極22による把持状態を解除し、上型12を上昇させる。その後、制御装置100は、水循環機構14により金型13を介して金属パイプ材料Pの冷却を行う。次に、制御装置100は、金属パイプ材料Pの内部から圧縮気体(高温になった気体の一例)を排出させる。圧縮気体の排出後、制御装置100は、各パイプ保持機構20の上側電極移動用アクチュエータを制御し、上側電極22を金型13から離間する方向に退避移動させる。これにより、成形加工済みの金属パイプ材料Pを膨張成形装置10から容易に取り出すことが出来る。
【0064】
[成形システムの構成]
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る成形システム200について説明する。
図3は、本実施形態に係る成形システムの主要部を示す概略図である。
図3に示す成形システム200は、金属パイプ材料Pから高温になった気体を排出するノズル23、ノズル搭載ユニット40及び空圧回路44(気体供給部及び排出部の一例)を有する膨張成形装置10と、冷却部170と、を備える。高温になった気体とは、例えば加熱された金属パイプ材料P内で高温化し、金属パイプ材料Pから排出された気体である。金属パイプ材料Pから排出された高温になった気体は、ノズル23、ノズル搭載ユニット40の流路414、空圧回路44の順に流通し、空圧回路44内の排出口(不図示)に至る。
【0065】
空圧回路44は、例えば、流路414に先端を接続させて連通する連通チューブ、連通チューブに設けられる開閉弁、及び連通チューブの末端に位置する排出口を有する。連通チューブは、流路414に連通し、金属パイプ材料Pからの圧縮気体を排出口へと導く。開閉弁は、連通チューブの開放又は閉塞を行う弁である。制御装置100により金属パイプ材料P内に圧縮気体が供給される場合、制御装置100は、開閉弁により連通チューブを閉塞させる。金属パイプ材料P内から高温になった気体が排出される場合、制御装置100は、開閉弁により連通チューブを開放させる。排出口は、連通チューブを通じて導かれた、金属パイプ材料Pから排出された高温になった気体を成形システム200の外部へ排出する。排出口は、例えば排気マフラーである。
【0066】
冷却部170は、流路414を流通する高温になった気体を冷却する。冷却部170は、例えば、ノズル23及びノズル搭載ユニット40に含まれる部材とは別部材である。ここで、本実施形態の成形システム200に対する比較例として、ノズル23及びノズル搭載ユニット40から冷却部170を除き、真っ直ぐな流路414のみで構成される例を挙げる。このような比較例においても、流路414の周辺の部材における伝熱及び放熱によって、高温になった気体は若干冷却される。しかし、冷却部170には、比較例のような、真っ直ぐな流路414だけの構造は含まれない。冷却部170は、比較例のように伝熱及び放熱のみによって冷却を行う構造と比較して、高温になった気体に対する冷却能力が高い部分である。ここで、冷却能力とは、同条件で測定したときにおいて、金属パイプ材料Pから排出された高温になった気体の温度と排出口において排出された気体の温度との差分を大きくする能力を指す。制御装置100が金属パイプ材料Pから高温になった気体を排出するときに、冷却部170は排出された高温になった気体を冷却する機能を有する。
【0067】
冷却部170は、ノズル23及びノズル搭載ユニット40とは別部材として、少なくともシリンダ42よりも流路414の延伸方向におけるノズル23の供給口側の位置に設けられる。すなわち、冷却部170は、シリンダ42のノズル23側の面を境界47aとした場合、少なくとも境界47aよりも流路414の延伸方向におけるノズル23の供給口側の位置に設けられる。ピストン41がノズル23側に最も押し込まれた場合において、冷却部170は少なくともピストン41のシリンダ42に接触する部分である本体部411よりノズル23の供給口側に設けられる。当該状態において、境界47aよりも延伸方向におけるノズル23の供給口側の位置が、請求項における「前記駆動部よりも前記延伸方向における前記供給口側の位置」に該当するものとする。
【0068】
ここで、流路414に高温になった気体が流通することによって、高温になった気体の熱又は高温になった気体による伝熱で高温化した部材の熱が流路414の周囲の部材に伝熱し、流路414の周辺の部材が高温化するおそれがある。ノズル搭載ユニット40は、熱から保護される必要のある被保護部47を有する。被保護部47とは、耐熱性が低く、熱の影響を受けた場合に高圧の気体の供給又は高温になった気体の排気の機能に影響を受ける部分である。例えば、シリンダ42は、内部空間において作動油を有することから、漏出抑制のためにピストン41と接触する部分に例えばパッキンなどを有する。シリンダ42において、少なくともパッキン及び作動油を有する内部空間は、被保護部47に含まれる。被保護部47は、境界47aよりも流路414の延伸方向におけるシリンダ42側の部材を含む。冷却部170が少なくとも境界47aよりも流路414の延伸方向におけるノズル23の供給口側の位置に設けられることで、被保護部47の高温化を抑制することができる。
【0069】
ピストン41が最も引き込まれたときにおけるピストン41のシリンダ42に接触する位置を境界47bとした場合、冷却部170は少なくとも境界47bよりノズル23の供給口側に設けられてもよい。すなわち、ピストン41のうち、境界47aと境界47bとの間の領域は、排気中に直接的にシリンダ42と隣り合う部分ではない。しかし、当該領域は、高温になった気体が通過したと仮定したら、伝熱によって高温し、かつ、引き込み時にシリンダ42と隣り合う。従って、更なる安全性の向上のため、高温化する領域がシリンダ42に近接しないようにする場合、当該高温化する領域も被保護部47の一部と見なしてよい。この場合、被保護部47は、境界47bよりも流路414の延伸方向におけるシリンダ42側の部材を含むものと見なしてよい。これにより、冷却部170は、高温になった気体の熱又は高温になった気体による伝熱での部材の高温下をさらに抑えることができる。
【0070】
ピストン41がノズル23との接触する位置付近で広がっている拡径部を有する場合、冷却部170は、ピストン41の拡径部よりノズル23側に設けられてもよい。例えば、ピストン41において、シリンダ42側の拡径部に向かって拡径する始点を境界47cとした場合、冷却部170は少なくとも境界47cよりノズル23の供給口側に設けられてもよい。ピストン41のうち、境界47bと境界47cとの間の領域は、引き込み状態においても、シリンダ42と隣り合わない部分である。しかし、当該領域は、径が細くて材料が少ない箇所であるため、上述のような拡径部に比して、高温になったときに、シリンダ42側へ熱を伝達し易い。従って、更なる安全性の向上のため、高温化したときに、シリンダ42へ熱を伝達し易い領域も被保護部47の一部と見なしてよい。この場合、被保護部47は、境界47cよりも流路414の延伸方向におけるシリンダ42側の部材を含むものと見なしてよい。これにより、冷却部170は、高温になった気体の熱又は高温になった気体による伝熱で高温化した部材の熱による影響をさらに抑えることができる。
【0071】
なお、冷却部170は、境界47cよりさらにノズル23の供給口側に設けられてもよい。冷却部170は、例えばノズル23の供給口付近に設けられる。冷却部170は、被保護部47に該当する領域から遠ければ遠いほど熱の伝達の影響が小さくなるため、安全性を向上することができる。
【0072】
図4は、本実施形態に係る成形システムの冷却部を示す詳細断面図である。
図4に示すように、冷却部170は、流路414の一部の区間の延伸方向に対する横断面積を流路414の他の区間の延伸方向に対する横断面積と比較して縮小させる。ノズル23又はノズル搭載ユニット40が冷却部170として流路414の一部を縮小させる構成を有することで、高温になった気体は冷却される。すなわち、高温になった気体が冷却部170の横断面積が縮小した区間から再び横断面積が拡張する区間に至ることで、断熱膨張が生じ、高温になった気体は冷却される。この場合、冷却部170は、ノズル23及びノズル搭載ユニット40に含まれる部材とは別部材であってもよいし、ノズル23及びノズル搭載ユニット40に含まれる部材と境界なく連続して形成された部材であってもよい。冷却部170は、例えばオリフィスである。
【0073】
冷却部170は、例えば、オリフィス部171と、上流流路172と、下流流路173とを有する。冷却部170は、上流流路172と下流流路173との間において、オリフィス部171を設ける。オリフィス部171は、流路414において、延伸方向に対する横断面積を他の区間と比較して縮小させた部分である。上流流路172は、オリフィス部171よりノズル23側に設けられ、オリフィス部171と比較して横断面積が大きい。下流流路173は、オリフィス部171より被保護部47側に設けられ、オリフィス部171と比較して横断面積が大きい。上流流路172と下流流路173との横断面積は、例えば同一である。制御装置100が金属パイプ材料Pから高温になった気体を排出するときに、高温になった気体は、オリフィス部171を介して下流流路173へと流通することによって冷却される。
【0074】
冷却部170は、例えば、ノズル23に設けられる。この場合、ピストン41とノズル23との境界からノズル23内の流路414の一部の区間には、例えば、内面をねじ切りした雌ネジが設けられる。オリフィス部171と下流流路173とが境界なく連続して形成された一体物として形成されたオリフィス形成部材174が、当該一部の区間に係合される。オリフィス形成部材174は、例えば、中空の雄ネジの形を有する。これにより、冷却部170が流路414内に設けられる。なお、ノズル23の供給口から流路414において、オリフィス形成部材174が係合可能なねじ切りが設けられてもよい。冷却部170は、ピストン41に設けられてもよい。この場合、例えば、ピストン41はノズル23の供給口側にオリフィス形成部材174が係合可能なねじ切りが設けられる。
【0075】
[高温になった気体を冷却する方法]
ここで、制御装置100が金属パイプ材料Pの内部から高温になった気体を排出させる場合において、冷却部170が高温になった気体を冷却する方法を示す。金属パイプ材料Pの内部の高温になった気体の圧力を上流圧力P0(Pa)、温度を上流温度T0(K)とする。このため、金属パイプ材料Pの内部又は上流流路172における高温になった気体の圧力は上流圧力P0、温度は上流温度T0(K)となる。オリフィス部171における下流流路173との境界部分における気体の圧力をオリフィス圧力P1(Pa)、温度をオリフィス温度T1(K)とする。
【0076】
金属パイプ材料Pから排出された高温になった気体が、オリフィス部171を最高速度で通過するようにした場合、オリフィス圧力P
1(Pa)は、臨界圧P
c(Pa)となる。このときのオリフィス温度T
1を臨界時温度T
Cとする。臨界圧P
cのとき、ノズル23からの高温になった気体の排出速度が音速に達する。この場合、高温になった気体がオリフィス部171を介して下流流路173へと通過するとき、高温になった気体には断熱変化が生じるとみなすことができる。上流圧力P
0と臨界圧P
c(オリフィス圧力P
1)との関係式は、以下の式1で表される。
【数1】
【0077】
また、上流温度T
0と臨界時温度T
c(オリフィス温度T
1)との関係式は、以下の式2で表される。
【数2】
【0078】
ここで、κとは、比熱比であり、高温になった気体が例えば空気の場合、κは約1.4となる。このときのPc/P0は、約0.528となり、Tc/T0は、約0.833となる。すなわち、高温になった気体がオリフィス部171を通過することによって、絶対温度が約17%降下する。
【0079】
下流流路173の横断面積をA(m
2)とする。オリフィス部171が臨界圧P
cに達した場合の通過質量流量M
vc(kg/s)は、気体定数R、臨界定数ψ
cなどを用いて以下の式3で表される。
【数3】
【0080】
下流流路173の横断面積Aは、通過質量流量Mvcを調整しながら気体の排気上必要な流量となるように、調整される。例えば、オリフィス部171の横断面積は、下流流路173の横断面積Aの63%程度以下が好ましい。これは、Pc/P0が約0.528のときの流速比から算出される面積比である。下流流路173の横断面積Aに対するオリフィス部171の横断面積の面積比は、オリフィス部171の下流の排気能力に応じて値を小さく調整し、高温になった気体の通過質量流量Mvcを制限してもよい。なお、オリフィス圧力P1が、臨界圧Pc大きくなった場合でも上記と同様の効果が得られる。また、上記では空気を取り扱ったが、他の気体においても同様の効果が得られる。
【0081】
[成形システムの作用及び効果]
次に、本実施形態に係る成形システム200の作用及び効果について説明する。
【0082】
本実施形態に係る成形システム200において、高圧の気体は、ノズル23、ノズル搭載ユニット40及び空圧回路44により加熱された金属パイプ材料Pに供給され、金属パイプ材料Pを膨張させる。高圧の気体は、加熱された金属パイプ材料Pにより高温になった気体となる。高温になった気体は、金属パイプ材料を膨張させた後で排出部で排出される。ここで、成形システム200は、排出部を流れる気体を冷却する冷却部170を備える。これにより、高温の気体が成形システム200内の流路414を流れることを抑制できる。以上より、流路414の周辺の部材への熱の影響を抑制することができる。
【0083】
本実施形態に係る成形システム200において、高圧の気体は、ノズル23、ノズル搭載ユニット40及び空圧回路44により加熱された金属パイプ材料Pに供給され、金属パイプ材料Pを膨張させる。気体は、加熱された金属パイプ材料Pにより高温になった気体となる。高温になった気体は、ノズル23(ノズルの一例)及びピストン41(支持部の一例)内に設けられた流路414を流通する。冷却部170は、少なくともシリンダ42(駆動部の一例)よりも延伸方向における供給口側の位置において流路414を冷却するように配置される。このため、流路414を流通する高温になった気体は、冷却部170により、少なくともシリンダ42よりも延伸方向におけるノズル23の供給口側の位置において冷却される。少なくともシリンダ42よりも延伸方向におけるノズル23の供給口側の範囲は、シリンダ42及びシリンダ42よりも延伸方向におけるノズル23の供給口側とは反対側の範囲と比較して熱の影響をうけにくいため、高温になった気体による熱の影響を当該範囲に抑えることができる。従って、流路414の周辺の部材への熱の影響を抑制することができる。
【0084】
また、成形システム200において、冷却部170は、流路414の一部の区間を縮小させている。流路414を流通する高温になった気体には、冷却部170を通過することで、断熱変化が生じる。したがって、高温になった気体は、少なくともシリンダ42よりも延伸方向におけるノズル23の供給口側の位置において冷却される。従って、簡易な構成で効率良く流路の周辺の部材への熱の影響を抑制することができる。また、冷却部170のとしてオリフィス形成部材174を既存の流路414内に嵌合させることで、容易に流路414の一部の区間を縮小させることができ、容易に高温になった気体を冷却することができる。
【0085】
[変形例]
本開示は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、成形システム200及び膨張成形装置10の全体構成は
図1に示すものに限定されず、開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、パイプ保持機構20の全体構成は、傾斜を生じていない状態、つまり、左右方向に平行な金属パイプ材料Pの両端部を保持するように設けられてもよい。圧縮気体は、不活性ガスであってもよい。
【0086】
冷却部170は、別部材ではなく、ノズル23又はピストン41の少なくとも一方と境界なく連続して形成された一体物として形成されてもよい。すなわち、ノズル23又はピストン41の少なくとも一方において、流路414とオリフィス部171とは境界なく連続して形成されてもよい。オリフィス部171は、ノズル23又はピストン41の少なくとも一方の流路414の内部において固定されてもよい。この場合、オリフィス部171が、高圧の気体の圧力及び高温になった気体の熱によって脱離しなければ固定方法は問わない。
【0087】
冷却部170は、ノズル23の先端又はピストン41の先端に設けられてもよい。この場合、冷却部170の上流流路172は設けられなくてもよい。冷却部170は、ノズル23の末端に設けられてもよい。この場合、冷却部170の下流流路173は設けられなくてもよい。冷却部170は、断熱膨張を実現するスリット状又は格子状などの形状を有していてもよい。冷却部170は、オリフィスでなくてもよい。この場合、冷却部170は、流路414の周囲に設けられ、冷水を循環させるチューブを含む水冷機構であってもよい。冷却部170は、被保護部47よりも流路414の延伸方向におけるノズル23側の位置において複数設けられてもよい。
【0088】
また、ピストン41内の流路414を設けず、ノズル23に直接的に圧縮気体の供給を行う構成としても良い。この場合、冷却部170は、空圧回路44の連通チューブ及び排出口の劣化を抑制するために、ノズル23又は連通チューブ内に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10…膨張成形装置、11…下型、12…上型、13…金型、14…水循環機構、15…基台、20…パイプ保持機構、21…下側電極、22…上側電極、23…ノズル、24…ユニットベース、30…電極搭載ユニット、31…昇降フレーム、32…下側電極フレーム、33…上側電極フレーム、40…ノズル搭載ユニット、41…ピストン、42…シリンダ、43…油圧回路、44…空圧回路、47…被保護部、47a,47b,47c…境界、50…昇降機構、51,52…昇降フレームベース、53…昇降用アクチュエータ、54,55…ライナー、80…上型駆動機構、81…油圧ポンプ、82,92…スライド、83…サーボモータ、84…メインシリンダ、85…引き戻しシリンダ、86,87…上ダイホルダ、88…上ダイベースプレート、97…下ダイホルダ、98…下ダイベースプレート、100…制御装置、101…電源、102…放射温度計、111,121…凹部、112,122…冷却水通路、170…冷却部、171…オリフィス部、172…上流流路、173…下流流路、174…オリフィス形成部材、200…成形システム、411…本体部、412…頭部、413…管状部、414…流路、A…横断面積、P…金属パイプ材料。