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特許7474764移動センサシステムを有する薬剤送達アセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】移動センサシステムを有する薬剤送達アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021531682
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2019083468
(87)【国際公開番号】W WO2020115031
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】18209976.2
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボム, ラース モーテン
(72)【発明者】
【氏名】モウリトスン, ブリーアン
(72)【発明者】
【氏名】ホホルト, イェスパ
(72)【発明者】
【氏名】ピーダスン, ベニー ピーザ スミゼク
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517502(JP,A)
【文献】特表2017-500090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達アセンブリであって、
-ハウジング(101、601、801)と、
-薬剤貯蔵部(113)または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、
-薬剤排出手段であって、
ユーザが前記薬剤貯蔵部から排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする、用量設定部材(180、680、880)、
近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材(190、690、890)であって、前記近位位置が、投与量を設定することを可能にし、前記遠位位置は、前記薬剤排出手段が設定された用量を排出することを可能にする、解放部材(190、690、890)
-用量設定中に変形されるように配設され、かつ前記解放部材によって解放され、それにより前記薬剤貯蔵部からある量の薬剤が排出されることを駆動する、駆動ばね(155、655)、および
ある投与量の薬剤の排出中に、基準軸に対応して、かつ前記ハウジングに対して回転するように適合されたインジケータ(160、160M、660M)であって、回転量が、排出された投与量のサイズを示しており、前記インジケータは、前記解放部材がその遠位位置に移動したときに、初期インジケータ近位位置と作動済インジケータ遠位位置との間で軸方向に移動する、インジケータ(160、160M、660M)を含む、薬剤排出手段と、
-初期近位位置と、前記解放部材がその近位位置に係合する中間位置と、前記解放部材がその遠位位置に移動した作動遠位位置との間で移動可能である、作動可能な解放アセンブリ(460、760、960)と、
-センサシステム(765)であって、
前記インジケータの回転位置および/または回転移動を示す前記インジケータの特性を測定するように適合されたセンサ構成要素(766M)、および
前記センサ構成要素からの測定値に基づいて、前記インジケータの回転位置および/または回転移動の量を決定するように構成されたプロセッサ(766C)、を含む、センサシステム(765)と、を含み、
前記インジケータ(160、160M、660M)を、前記初期インジケータ近位位置と、前記作動可能な解放アセンブリ(460、760、960)が前記中間位置にあるときのインジケータ中間位置と、前記作動済インジケータ遠位位置との間で軸方向に移動するように作動させることができ、
前記インジケータが、前記インジケータ中間位置にあるときに回転を開始するように適合されており、
前記センサ構成要素が、前記解放アセンブリに結合され、かつ前記解放アセンブリと軸方向に移動し、これにより、前記センサ構成要素は、前記インジケータが前記初期インジケータ近位位置と前記作動済インジケータ遠位位置との間で軸方向に移動される際に、前記インジケータと一緒に軸方向に移動することが可能になる、薬剤送達アセンブリ。
【請求項2】
-前記センサシステムが、前記インジケータ中間位置と前記作動インジケータ遠位位置との間の前記インジケータの軸方向移動中、前記インジケータの回転位置および/または回転移動を示す前記インジケータ(160、160M、660M)の特性を測定するように適合されており、前記センサ構成要素が、前記インジケータと軸方向に一緒に移動する、請求項に記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項3】
-第1の回転位置を示す前記インジケータの特性が、前記初期近位位置と前記中間位置との間に軸方向に位置付けられた前記センサ構成要素で測定され、
-第2の回転位置を示す前記インジケータの特性が、前記中間位置と前記遠位位置との間に軸方向に位置付けられた前記センサ構成要素で測定される、請求項またはに記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項4】
-前記センサシステムが、複数のセンサ構成要素(766M)を含み、
-前記プロセッサが、前記複数のセンサ構成要素からの測定値に基づいて、前記インジケータの回転位置および/または回転移動の量を決定するように構成されている、請求項1~のいずれかに記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項5】
-前記センサシステムは、前記解放アセンブリが前記初期近位位置から前記中間位置まで作動されたときにオフ状態からオン状態まで作動されて、それにより、前記センサシステムを動作可能状態に通電するように配設されている、スイッチを含む、請求項1~のいずれかに記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項6】
-前記スイッチは、前記解放アセンブリが前記解放部材をその近位位置に係合させるときに作動するように配設されている、請求項に記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項7】
-前記センサシステムが、前記解放アセンブリに結合され、かつ前記解放アセンブリと軸方向に移動する、請求項1~のいずれかに記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項8】
前記インジケータが、磁気部品(160M、660M)を含み、少なくとも1つのセンサ構成要素(766M)が、磁界の1つ以上の成分を測定するように適合された磁気センサである、請求項1~のいずれかに記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項9】
薬剤送達装置(100、600、800)と、前記薬剤送達装置上に取り外し可能に装着されるように適合されたアドオン装置(400、700、900)と、を含み、前記薬剤送達装置が、
-前記ハウジング(101、601、801)と、
-前記薬剤貯蔵部(113)または薬剤貯蔵部を受容するための前記手段と、
-前記薬剤排出手段と、を含み、
前記アドオン装置が、
-前記解放アセンブリ(460、760、960)と、
-前記センサシステム(765)と、を含む、請求項1~のいずれかに記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項10】
前記用量設定部材(180、680、880)が、回転可能であり、前記アドオン装置が、
-前記薬剤送達装置の前記ハウジングに取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオンハウジング(610、710、901)と、
-直接的または間接的に、前記用量設定部材と係合するように適合されたアドオン用量設定部材(411、680、780、911)と、
-前記解放アセンブリに結合されており、
(i)前記アドオン装置が前記薬剤送達装置に装着された状態で、前記アドオン用量設定部材(680、780)を動作して、前記用量設定部材を回転させて、用量を設定することができる、近位用量設定位置と、
(ii)前記アドオン装置が前記薬剤送達装置に装着された状態で、前記解放部材が、その遠位位置に移動して、設定された用量を解放する、遠位用量排出位置との間で、前記アドオンハウジングに対して軸方向に移動可能である、作動可能なアドオン解放部材(490、690、790、998)と、をさらに含む、請求項
記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項11】
請求項に記載の薬剤送達装置(100、600、800)上に取り外し可能に装着されるよう適合されたアドオン装置(400、700、900)であって、前記アドオン装置が、
-作動可能な解放アセンブリ(460、760、960)と、請求項に記載のセンサシステムと、を含む、
アドオン装置(400、700、900)。
【請求項12】
前記用量設定部材(180、680、880)が、回転可能であり、前記アドオン装置が、
-前記薬剤送達装置の前記ハウジングに取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオンハウジング(610、710、901)と、
-直接的または間接的に、前記用量設定部材と係合するように適合されたアドオン用量設定部材(411、680、780、911)と、
-前記解放アセンブリに結合されており、
(i)前記アドオン装置が前記薬剤送達装置に装着された状態で、前記アドオン用量設定部材(680、780)を動作して、前記用量設定部材を回転させて、用量を設定することができる、近位用量設定位置と、
(ii)前記アドオン装置が前記薬剤送達装置に装着された状態で、前記解放部材が、その遠位位置に移動して、設定された用量を解放する、遠位用量排出位置との間で、前記アドオンハウジングに対して軸方向に移動可能である、作動可能なアドオン解放部材(490、690、790、998)と、をさらに含む、請求項11に記載のアドオン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、インジケータの回転特性が測定され、かつインジケータが同時に軸方向に移動する薬剤送達アセンブリに関する。特定の態様では、本発明は、データの生成、収集、および保存に関係のある医療装置に関する。特定の実施形態では、本発明は、信頼性の高い、そして効果的な方式で薬剤送達用量データを捕捉するための装置、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、回転駆動部材によって駆動されるねじピストンロッドを含む薬剤送達装置が主に参照され、このような装置は、例えば、インシュリン送達による糖尿病の治療において使用されるが、これは本発明の単なる例示的使用である。
【0003】
薬剤注射装置は、薬剤および生物学的薬剤を自己投与する必要がある患者の生活を大幅に改善した。薬剤注射装置は、注射手段を有するアンプルにすぎない単純な使い捨て装置を含む多くの形態を取る場合があり、または予め充填されたカートリッジと併用するように適合された耐久性のある装置であってもよい。それらの形態およびタイプに関わらず、注入可能な薬剤および生物学的薬剤を自己投与するための患者の補助においては大きな助けであることが証明されている。また、それらは、介護者が自己注入を実施することができない者に注入可能な医薬品を投与するのを大いに支援する。
【0004】
必要量のインスリン注入を適切な時点に適切なサイズで実施することは、糖尿病を管理するために必要不可欠であり、すなわち指定されたインスリンレジメンを遵守することが重要である。医療従事者が、処方された用量パターンの有効性を決定することを可能にするために、糖尿病患者は各注入のサイズおよび時間のログを保持することを推奨される。しかしながら、こうしたログは通常手書きのノートに記録され、そしてログされた情報はデータ処理のためにコンピュータに簡単にはアップロードされない場合がある。さらに、患者によって記載されるイベントのみがログされるため、ノートシステムは、ログされた情報が患者の糖尿病の治療において何らかの価値を持つとすれば、患者は各注入をログすることを覚えておく必要がある。ログ中の欠如した記録または誤った記録は、注射履歴の実態が誤ったものとなり、ひいては、将来の薬剤治療に関する医療従事者の意思決定の土台が誤ったものとなる。したがって、医薬送達システムからの注入情報のログを自動化することが望ましい場合がある。
【0005】
一部の注射装置は、例えば、US2009/0318865およびWO2010/052275に開示されるように、このモニタリング/取得機構を装置自体に統合するが、今日のほとんどの装置はそれがない。最も広く使用されている装置は、耐久性があるかまたは予め充填されたかのいずれかである、単なる機械的な装置である。後者の装置は、空になった後に廃棄されるため、安価であり、装置自体内に内蔵電子データ取得機能を構築することはコスト的に見合わない。この問題に対処するため、所与の医療用装置の使用を表すデータをユーザが生成、収集、および分散するのに役立つであろう多くの解決策が提案されてきた。
【0006】
例えば、WO2014/037331は、ペンタイプの薬剤送達装置に取り外し可能に取り付けられるように適合された電子補助装置(「アドオンモジュール」または「アドオン装置」とも称される)を第1の実施形態で説明する。装置は、カメラを含み、薬剤送達装置の投薬ウィンドウを通して見える回転スケールドラムから捕捉された画像の光学文字認識(OCR)を実施し、それにより薬剤送達装置にダイヤルされている薬剤の用量を決定するように構成される。WO2014/037331はまた、設定用量に対応する装置から近位側に延びる打込みねじを含むペンタイプの薬剤送達装置に取り外し可能に取り付けられるように適合された電子補助装置の第2の実施形態を記述する。補助装置は、打込みねじの軸方向延長を決定するためのセンサ手段、ならびに近位側送達ボタンの動作を検出するためのセンサ手段を含む。WO2014/020008は、ペンタイプの薬剤送達装置に取り外し可能に取り付けられるように適合された電子補助装置を開示する。装置は、カメラを含み、OCRに基づいてスケールドラム値を決定するように構成される。排出された用量のサイズを適正に決定するために、補助装置は、用量サイズが設定、修正、または送達されているかどうかを決定するための追加的な電気機械的センサ手段をさらに備える。ペン式装置用のさらなる外部装置が、WO2014/161952に示される。
【0007】
上記に関して、本発明の目的は、排出された薬剤の量のサイズを決定するためのセンサ手段を含む薬剤送達アセンブリの信頼性があり、かつ効率的な動作を可能にする装置および方法を提供することである。センサ手段は、例えば、薬剤送達装置に組み込まれてもよく、またはユーザが取り付け可能なアドオン装置として提供されてもよい。軸移動インジケータの回転特性を信頼性のある安全な方式で測定することができるセンサアセンブリを提供することは、本発明の一般的な目的である。
【0008】
課題を解決するための手段
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処する、または下記の開示だけでなく例示的な実施形態の説明からも明らかな目的に対処する、実施形態および態様が説明される。
【0009】
インジケータ要素、例えば、インスリンの単位の回転移動を測定することによって薬剤送達装置から外部投薬の量を決定する場合、これは、回転構成要素と軸方向に移動させるために測定システムを取り付けるか、または薬剤送達装置のハウジングに移動不可能な測定システムを取り付けるという、本質的に2つの異なる方式で行われる。
【0010】
本発明は、所与の回転構成要素が本質的に回転のみであるとみなされ得るが、これは固定測定システムの使用を可能にし、一部の回転構成要素が、測定システムの精度に影響を与え得る、その動作中に軸方向に移動された小さな度合いであるという認識に基づく。
【0011】
それ故に、本発明の第1の態様では、ハウジング、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容するための手段、薬剤排出手段、作動可能な解放アセンブリ、およびセンサシステムを含む、薬剤送達アセンブリが提供される。薬剤排出手段は、ユーザが薬剤貯蔵部から排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする用量設定部材と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材であって、近位位置が投与量を設定することを可能にし、遠位位置が、薬剤排出手段が設定された用量を排出することを可能にする、解放部材と、ある投与量の薬剤の排出中に、基準軸に対応して、かつハウジングに対して回転するように適合されたインジケータであって、回転量が、排出された投与量のサイズを示しており、インジケータが、解放部材がその遠位位置に移動したときに、近位位置と遠位位置との間で軸方向に移動する、インジケータと、を含む。作動可能な解放アセンブリは、初期近位位置と、解放部材がその近位位置に係合する中間位置と、解放部材がその遠位位置に移動した作動遠位位置との間で移動可能である。センサシステムは、インジケータの回転位置および/または回転移動を示すインジケータの特性を測定するように適合されたセンサ構成要素と、センサ構成要素からの測定値に基づいて、インジケータの回転位置および/または回転移動の量を決定するように構成されたプロセッサと、を含む。
【0012】
センサ構成要素が解放アセンブリに結合され、かつ解放アセンブリと軸方向に移動し、これにより、センサ構成要素は、インジケータがその近位位置とその遠位位置との間で軸方向に移動される際に、インジケータと一緒に軸方向に移動することが可能になり、それにより、インジケータの回転位置および/または回転移動量を正確かつ効率的に決定することができる。
【0013】
例示的な実施形態では、薬剤送達アセンブリは、用量設定中に変形されるように配設され、かつ解放部材によって解放され、これにより、薬剤貯蔵部からある量の薬剤を排出することを駆動する駆動ばねを含む。こうした配設では、インジケータは、初期インジケータ近位位置と、インジケータ中間位置と、作動インジケータ遠位位置との間で軸方向に移動するように作動されてもよく、インジケータは、インジケータ中間位置にあるときに回転を開始するように適合される。
【0014】
例示的な実施形態では、センサシステムは、インジケータ中間位置と作動インジケータ遠位位置との間のインジケータの軸方向移動の間のインジケータの回転位置および/または回転移動を示すインジケータの特性を測定するように適合されており、センサ構成要素は、インジケータと軸方向に一緒に移動する。
【0015】
第1の回転位置を示すインジケータの特性は、初期近位位置と中間位置との間に軸方向に位置付けられたセンサ構成要素で測定されてもよく、第2の回転位置を示すインジケータの特性は、中間位置と遠位位置との間に軸方向に位置付けられたセンサ構成要素で測定されてもよい。
【0016】
センサシステムは、複数のセンサ構成要素を含んでもよく、プロセッサは、複数のセンサ構成要素からの測定値に基づいて、インジケータの回転位置および/または回転移動の量を決定するように構成される。
【0017】
センサシステムは、解放アセンブリが初期近位位置から中間位置まで作動されたときにオフ状態からオン状態まで作動されて、それにより、センサシステムを動作可能状態に通電するように配設された、スイッチを備えてもよい。スイッチ、例えば、機械的、磁気的、または光学的スイッチは、解放アセンブリが解放部材をその近位位置に係合させるときに作動されるように配設されてもよい。センサシステムは、例えば、自己完結型電子モジュールの形態で、解放アセンブリに結合され、かつ解放アセンブリと軸方向に移動してもよい。
【0018】
例示的な実施形態では、インジケータは、磁気部品を含み、少なくとも1つのセンサ構成要素は、磁界の1つ以上の構成要素を測定するように適合された磁気センサである。
【0019】
特定の実施形態では、薬剤送達アセンブリは、薬剤送達装置と、薬剤送達装置上に取り外し可能に装着されるように適合されたアドオン装置と、を含む。薬剤送達装置は、ハウジング、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容するための手段、および薬剤排出手段を含む。アドオン装置は、解放アセンブリおよびセンサシステムを含む。
【0020】
用量設定部材は、回転可能であってもよく、アドオン装置は、薬剤送達装置ハウジングに解放可能に取り付けられるように適合されたアドオンハウジングと、直接的または間接的に、用量設定部材と係合するように適合されたアドオン用量設定部材と、解放アセンブリに結合されており、(i)アドオン装置が薬剤送達装置に装着された状態で、アドオン用量設定部材(680、780)を動作して、用量設定部材を回転させて、用量を設定することができる、近位用量設定位置と、(ii)アドオン装置が薬剤送達装置に装着された状態で、解放部材が、その遠位位置に移動して、設定された用量を解放する、遠位用量排出位置との間で、アドオンハウジングに対して軸方向に移動可能である、作動可能なアドオン解放部材と、をさらに含み得る。
【0021】
アドオン装置および薬剤送達装置の異なる構成要素は、一般的なアセンブリについて上記に開示されるように設計され得る。
【0022】
本発明の第2の態様では、上記のように、そして記載されたタイプの薬剤送達装置に解放可能に取り付けられるように適合されたアドオン装置自体が提供される。
【0023】
特定の実施形態では、アドオン装置は、薬剤送達装置ハウジングに解放可能に取り付けられるように適合されたアドオンハウジングと、直接的または間接的に、回転可能な装置の用量設定部材と係合するように適合されたアドオン用量設定部材と、 解放アセンブリに結合されており、(i)アドオン装置が薬剤送達装置に装着された状態で、アドオン用量設定部材(680、780)を動作して、用量設定部材を回転させて、用量を設定することができる、近位用量設定位置と、(ii)アドオン装置が薬剤送達装置に装着された状態で、解放部材が、その遠位位置に移動して、設定された用量を解放する、遠位用量排出位置との間で、アドオンハウジングに対して軸方向に移動可能である、作動可能なアドオン解放部材と、をさらに含む。
【0024】
本発明のさらなる態様では、薬剤送達アセンブリから用量関連データを捕捉するための方法が、提供される。方法は、(i)ユーザが薬剤貯蔵部から排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする用量設定部材と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材であって、近位位置が投与量を設定することを可能にし、遠位位置が、薬剤排出手段が設定された用量を排出することを可能にする、解放部材と、用量設定中に変形されるように配設され、かつ解放部材によって解放され、これにより、薬剤貯蔵部からある量の薬剤を排出することを駆動する駆動ばねと、ある投与量の薬剤の排出中に、基準軸に対応して、かつハウジングに対して回転するように適合されたインジケータであって、回転量が、排出された投与量のサイズを示しており、インジケータは、解放部材がその遠位位置に移動したときに、近位位置と遠位位置との間で軸方向に移動する、インジケータと、を含む、薬剤排出手段と、初期近位位置と、解放部材がその近位位置に係合する中間位置と、解放部材がその遠位位置に移動した作動遠位位置との間で移動可能である、作動可能な解放アセンブリと、センサシステムであって、解放アセンブリに結合され、解放アセンブリと軸方向に移動するセンサ構成要素であって、インジケータの回転位置および/または回転移動を示すインジケータの特性を測定するように適合されたセンサ構成要素と、センサ構成要素からの測定値に基づいて、インジケータの回転位置および/または回転移動の量を決定するように構成されたプロセッサと、を含む、センサシステムと、を含む、薬剤送達アセンブリを提供するステップを含む。方法は、(ii)解放アセンブリを解放部材と係合するように移動させるステップと、(iii)解放アセンブリを移動させて、薬剤排出手段を解放して、設定された用量を排出するステップと、(iv)インジケータが、薬剤排出手段が解放された後に、解放アセンブリによって軸方向に移動している間に、センサシステムを動作して、インジケータの回転位置および/または回転移動の量を決定するステップと、をさらに含む。
【0025】
本発明のさらにより一般的な態様では、インジケータおよびセンサシステムを含む、センサアセンブリが提供される。インジケータは、基準構成要素に対して、かつ基準軸に対応して軸方向に回転および移動するように配設されており、センサシステムは、インジケータの回転位置および/または回転移動を示すインジケータの特性を測定するように適合されたセンサ構成要素を含む。センサ構成要素は、インジケータと一緒に軸方向に移動するように適合される。センサのタイプおよびセンサシステムの特定の設計に応じて、追加のセンサ構成要素が、組み込まれてもよい。
【0026】
インジケータが並進移動する際に、センサ構成要素がインジケータに軸方向に追従することを可能にすることによって、信号生成インジケータ間の距離を一定に保持することができ、または距離の変動を最小化することができ、後者は、アセンブリの実際の設計および測定戦略によって異なる。
【0027】
例示的な実施形態では、インジケータは、初期近位位置と作動遠位位置との間で軸方向に移動するように作動されてもよい。測定された特性に基づいて、センサシステムは、初期軸方向位置でのインジケータの初期回転位置を決定し、作動軸方向位置でのインジケータの作動回転位置を決定するように適合される。
【0028】
インジケータは、作動中に回転するように適合されてもよく、センサシステムは、測定された特性に基づいて、インジケータの回転に関連する特性、例えば、度数または全回転数で表される回転の量を決定するように適合される。
【0029】
例示的な実施形態では、インジケータは、初期近位位置と、中間位置と、作動遠位位置との間で軸方向に移動するように作動されてもよく、インジケータは、中間軸方向位置にあるときに回転を開始するように適合される。そのようなセットアップでは、センサシステムは、中間位置と作動遠位位置との間のインジケータの軸方向移動の間のインジケータの回転移動を示すインジケータの特性を測定するように適合されてもよく、センサ構成要素は、インジケータと軸方向に一緒に移動し、これは、インジケータの回転移動を本質的に一定の条件下で測定および決定し得ることを確実にする。
【0030】
例示的な実施形態では、センサ構成要素は、初期近位位置と、中間位置と、作動遠位位置との間で軸方向に移動するように適合されてもよく、センサ構成要素は、中間位置と作動遠位位置との間でインジケータと一緒に軸方向に移動する。示されるように、そのようなセットアップでは、センサ構成要素は、後者の軸移動の一部分のインジケータについて一緒に軸方向にのみ移動することになる。セットアップに応じて、センサ構成要素およびインジケータが一緒に移動するときに、測定のすべてまたは一部が行われ得る。例えば、回転移動を示すインジケータの特性は、その軸方向移動中に、インジケータと一緒にセンサ構成要素によって測定され得る。
【0031】
一方で、第1の回転位置を示すインジケータの特性は、初期近位位置と中間位置との間に軸方向に位置付けられたセンサ構成要素で測定されてもよく、第2の回転位置を示すインジケータの特性は、中間位置と遠位位置との間に軸方向に位置付けられたセンサ構成要素で測定される。このセットアップでは、センサ構成要素とインジケータとの間の軸方向距離は、2つの測定間で変化するが、センサ構成要素が軸方向移動の一部分についてインジケータと一緒に移動するので、測定条件間の差を低減することができる。あるいは、第1の回転位置は、センサ構成要素およびインジケータが一緒に軸方向に動き始めるときまたはその後に決定されてもよく、これにより、両方の回転位置が、本質的に同一の測定条件下で決定されることが可能になる。
【0032】
例示的な実施形態では、センサシステムは、それ自体として、インジケータと軸方向に一緒に移動するように適合されてもよい。インジケータは、磁気部品を含んでもよく、センサ構成要素(複数可)は、磁界の1つ以上の構成要素を測定するように適合された磁気センサである。
【0033】
本発明のさらなる態様では、薬剤送達装置と、薬剤送達装置上に取り外し可能に装着されるように適合されたアドオン装置と、を含む、上述のようなセンサアセンブリを含む薬剤送達システムが提供される。薬剤送達装置は、基準構成要素を形成するハウジングと、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容する手段と、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材を含む薬剤排出手段と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材であって、近位位置は投与量の設定を可能にし、遠位位置は薬剤排出手段が設定用量を排出することを可能にする、解放部材と、用量設定中に変形されるように配設され、かつ解放部材によって解放され、これにより薬剤貯蔵部からある量の薬剤が排出されることを駆動する駆動ばねと、インジケータと、を含む。インジケータは、解放部材が近位位置と遠位位置との間で作動されるときに、初期軸方向位置と作動軸方向位置との間で軸方向に移動し、インジケータは、ある量の薬剤の排出中に回転する。アドオン装置は、センサシステムを含み、インジケータの測定される特性は、ある量の薬剤の排出の終わりのそれぞれ開始時の回転位置に対応する。
【0034】
インジケータの測定される特性は、ある量の薬剤の排出の開始と終了の間の回転の量にさらに対応してもよく、これは、例えば、センサシステムが、インジケータが360度を超えて回転したかどうかを決定することを可能にする。
【0035】
アドオン装置には、近位位置と遠位位置との間で解放部材を軸方向に係合および移動するように適合された解放構造が提供されてもよく、センサシステムは、解放構造に結合され、かつ解放構造とともに軸方向に移動している。あるいは、統合センサを含む単一な薬剤送達装置が提供される。
【0036】
本発明のさらなる態様において、上述のようなセンサアセンブリを含む薬剤送達装置が提供され、装置は、基準構成要素を形成するハウジングと、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容する手段と、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材を含む薬剤排出手段と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材であって、近位位置は投与量の設定を可能にし、遠位位置は薬剤排出手段が設定用量を排出することを可能にする、解放部材と、用量設定中に変形されるように配設され、かつ解放部材によって解放され、これにより薬剤貯蔵部からある量の薬剤が排出されることを駆動する駆動ばねと、インジケータと、センサシステムと、を含む。インジケータは、解放部材が近位位置と遠位位置との間で作動されるときに、初期軸方向位置と作動軸方向位置との間で軸方向に移動し、インジケータは、ある量の薬剤の排出中に回転し、インジケータの測定された特性は、ある量の薬剤の排出の開始時および終了時の回転位置に対応する。
【0037】
上述の説明において、用語「の間(between)」が使用される場合、これは、構成要素または構造が移動する間の終点を含み、すなわち、所与のイベントが点AまたはBで発生し得ることを意味する。上記において、用語「部材(member)」が使用される場合、この用語はまた、いくつかの構成要素を含むアセンブリを包含する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「インシュリン」という用語は、液体、溶液、ゲルまたは微細懸濁液などの制御された様式でカニューレまたは中空針などの送達手段を通過することができ、血糖コントロール効果を有する任意の薬剤含有流動性医薬品を包含することを意味する。例えば、ヒトインシュリンおよびその類似物、ならびにGLP-1およびその類似物などの非インシュリンである。例示的な実施形態の説明では、インスリンの使用に対して参照がなされるが、しかし説明されるモジュールは、その他のタイプの薬剤(例えば成長ホルモン)のログを作り出すためにも使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
以下では、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1A】ペン式装置を示す。
図1B】ペンキャップを取り外した図1Aのペン式装置を示す。
図2図1Aのペン式装置の構成要素の分解組立図を示す。
図3A-3B】2つの状態における排出機構の断面図を示す。
図4A-4B】アドオン装置および薬剤送達装置の概略図を示す。
図5】薬剤送達装置のハウジング上に設置されたアドオン装置を断面図で示す。
図6】薬剤送達装置と組み合わせたアドオン装置の第2の実施形態を示す。
図7A-7B】図6のアドオン装置の断面図を示す。
図7C図7Aのアドオン装置に組み込まれた電子センサ回路の詳細を示す。
図8A-8D】薬剤送達装置上に設置された図6のアドオン装置を含むアセンブリを、断面図で、かつ異なる動作状態で示す。
図9】アドオン装置の第3の実施形態の構成要素の分解組立図を示す。
図10A-10B】ペン式装置上に設置された図9のアドオン装置の、異なる状態における構成要素を示す。
図11A-11B】図10Aおよび図10Bに示す装置の断面図を示す。
図12A-12B】組み立てられた状態の第3の実施形態を部分切り欠き図で示す。
図13A-13F】一連の動作状態における第3の実施形態を断面図で示す。
図14】リング形態のトレーサー構成要素内に等距離で配設された個別の双極子磁石を示す。
図15A】個別の磁石の間に組み合わせて配設された、磁化可能な材料から製造されたトレーサー構成要素を示す。
図15B】多極電磁場内に配設された磁化可能な材料から製造されたトレーサー構成要素を示す。
図16】トレーサー構成要素に対して配設された磁気計を含むセンサシステムの異なる実施形態を示す。
図17A】第1のセンサセットアップと組み合わせた双極トレーサー磁石に対する角度測定値を示す。
図17B】第2のセンサセットアップと組み合わせた四重極トレーサー磁石の角度測定値を示す。
図18】磁石の完全な一回転にわたる四重極磁石からの信号を示す。
図19図18からの信号の周波数成分のマップを示す。
図20】四重極磁石および7つの磁気計のアセンブリを示す。
図21】薬剤送達装置上に取り付けられたアドオン装置のさらなる実施形態を示す。
図22】薬剤送達装置上に取り付けられたアドオン装置のまたさらなる実施形態を示す。
図23A-23B】静的サンプリング戦略の第1および第2の実施例を示す。
図24】動的サンプリング戦略の一実施例を示す。 図面において、同様の構造物は、主として同様の参照番号によって識別される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の用語、「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」、または類似の相対表現などが使用されるとき、これらは単に添付の図のみを参照し、そして必ずしも実際の使用状況を示すわけではない。示された図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成だけでなくそれらの相対的寸法は、図示的な目的を果たすことのみが意図される。部材または要素という用語が所与の構成要素に対して使用されるとき、これは一般的に、説明される実施形態においてこの構成要素が単一の構成要素であることを表すが、代替的に、説明される構成要素のうちの2つ以上が単一の構成要素として提供される可能性があるように、例えば、単一の射出成形部品として製造される可能性があるように、同一の部材または要素がいくつかの副構成要素を含んでもよい。「アセンブリ」という用語は、説明された構成要素が所与の組立手順中に単一の、または機能的なアセンブリを提供するために組み立てられる必要があることを暗示せず、機能的により密接に関連するものとしてともにグループ化される構成要素を説明するために使用されるにすぎない。
【0041】
本発明それ自体の実施形態へ戻る前に、予め充填された薬剤送達の一実施例が説明され、このような装置は本発明の例示的な実施形態の基盤を提供する。図1図3に示されるペン型の薬剤送達装置100は、「一般的な」薬剤送達装置を表す場合があり、実際に示される装置は、Novo Nordisk A/S,Bagsvaerd,Denmarkによって製造および販売される、FlexTouch(登録商標)の予め充填された薬剤送達ペンである。
【0042】
ペン式装置100は、キャップ部品107と、薬剤排出機構がその中に配設または統合されるハウジング101を有する近位本体または駆動アセンブリ部分を有する主要部分と、遠位の針貫通可能な隔壁を有する薬剤充填透明カートリッジ113が、近位部分に付着された取り外し不可能なカートリッジホルダーによって定位置に配設され保持される遠位カートリッジホルダー部分とを備え、カートリッジホルダーは、カートリッジの一部分が検査されるのを可能にする開口部、ならびに針アセンブリが取り外し可能に設置されるのを可能にする遠位連結手段115を有する。カートリッジには、排出機構の一部を形成するピストンロッドによって駆動されるピストンが提供されており、例えば、インスリン、GLP-1または成長ホルモン製剤を含有してもよい。多数の軸方向に向けられた溝182を有する最も近位の回転可能な用量設定部材180は、表示ウィンドウ102に示される望ましい用量の薬剤を手動で設定し、その後、ボタン190が作動されたときにこれを排出することができるように機能する。下記の説明から明らかとなるように、示される軸方向に向けられた溝182は、「駆動溝」と称されてもよい。用量設定部材180は、概して円筒状の外表面181を有し(すなわち、用量設定部材はわずかにテーパー状であってもよい)、示された実施形態では、外表面は、用量設定中の指のつまみを改善するために、複数の軸方向に向けられた微細溝を含むことによって質感が与えられる。ウィンドウは、面取りされた縁部分109および用量ポインタ109Pによって囲まれたハウジング内の開口部の形態であり、ウィンドウは、螺旋状に回転可能なインジケータ部材170(スケールドラム)の一部分を観察することを可能にする。薬剤送達装置内に具体化される排出機構のタイプに応じて、排出機構は、実施形態に示されるように、用量設定中に変形され、その後、解放ボタンが作動したときに解放されてピストンロッドを駆動するばねを含んでもよい。別の方法として、排出機構は完全に手動であってもよく、その場合、例えば、Novo Nordisk A/Sによって製造および販売されるFlexPen(登録商標)のように、設定された用量サイズに対応する用量設定中に、用量部材および作動ボタンを近位に移動し、次に、設定用量を排出するためにユーザによって遠位に移動される。
【0043】
図1は、予め充填されたタイプの薬剤送達装置を示し、すなわち、これは予め設置されたカートリッジを有して供給され、カートリッジが空になったとき廃棄されるが、代替的な実施形態では、薬剤送達装置は、充填されたカートリッジと交換することが可能であるように、例えば、カートリッジホルダーが装置主要部分から取り外されるように適合された「後方装填式」薬剤送達装置の形態で、または別の方法として、カートリッジが遠位開口部を通して装置の主要部分に取り外し不可能に取り付けられたカートリッジホルダー内に挿入される、「前方充填式」装置の形態で設計されてもよい。
【0044】
本発明は、薬剤送達装置と相互作用するように適合された電子回路に関するため、このような装置の例示的な実施形態を、本発明をより良好に理解するために説明する。
【0045】
図2は、図1に示すペン型の薬剤送達装置100の分解組立図を示す。より具体的には、ペンは、ウィンドウ開口部102を有する管状ハウジング101を備え、そしてその上にカートリッジホルダー110が固定的に取り付けられ、薬剤充填済みカートリッジ113がカートリッジホルダー内に配設される。カートリッジホルダーには、針アセンブリ116が取り外し可能に設置されることを可能にする遠位連結手段115と、キャップ107が、カートリッジホルダーおよび取り付けられた針アセンブリを覆って、取り外し可能に設置されることを可能にする2つの対向する突出部111の形態の近位連結手段と、例えばテーブルの上面上でペンが転がるのを防止する突出部112と、が提供される。ハウジング遠位端には、ナット要素125が固定的に取り付けられ、ナット要素は中央ねじ穴126を備え、またハウジング近位端には中央の開口部を有するばね基部部材108が固定的に取り付けられる。駆動システムは、対向する2つの長軸方向の溝を有し、ナット要素のねじ穴内に受容されるねじピストンロッド120と、ハウジング内に回転可能に配設されたリング形態のピストンロッド駆動要素130と、駆動要素(下記参照)と回転係合し、その係合がクラッチ要素の軸方向移動を可能にするリング形態のクラッチ要素140とを含む。クラッチ要素には、ハウジング内表面上の対応するスプライン104(図3Bを参照)と係合するように適合された外側スプライン要素141が提供され、これは、スプラインが係合する回転方向に係止された近位位置とスプラインが係合から外れている回転方向に自由な遠位位置との間でクラッチ要素が移動することを可能にする。今まさに述べたように、両方の位置では、クラッチ要素は駆動要素に対して回転方向に係止される。駆動要素は、ピストンロッドの溝と係合する2つの対向する突出部131を有する中央の穴を備え、それにより駆動要素の回転は、ピストンロッドとナット要素との間のねじ係合のために、ピストンロッドの回転をもたらし、それにより遠位の軸方向移動をもたらす。駆動要素は、ハウジング内表面上に配設された対応するラチェット歯105に係合するように適合された、一対の対向する円周方向に延びる可撓性のラチェットアーム135をさらに含む。駆動要素およびクラッチ要素は、それらを一緒に回転方向に係止するが、クラッチ要素が軸方向に移動することを可能にする協働する連結構造を備え、これはクラッチ要素が、回転することができるその遠位位置へと軸方向に移動することを可能にし、それによりダイヤルシステム(下記参照)から駆動システムへと回転移動を伝達する。クラッチ要素、駆動要素、およびハウジング間の相互作用は、図3Aおよび図3Bを参照しながらより詳細に示され、かつ説明される。
【0046】
ピストンロッド上には、内容量終了(EOC)部材128が螺着されており、また遠位端上にはワッシャー127が回転可能に取り付けられる。EOC部材は、リセットチューブと係合するための一対の対向する半径方向の突出部129を含む(下記参照)。
【0047】
ダイヤルシステムは、ラチェットチューブ150と、リセットチューブ160と、外側に螺旋状に配設された用量を示す列を形成するパターンを有するスケールドラム170と、排出される薬剤の用量を設定するためにユーザ操作されるダイヤル部材180と、解放ボタン190と、トルク駆動ばね155とを含む(図3参照)。ダイヤル部材には、リセットチューブ上に配設された多数の対応する外側歯161に係合する円周の内側歯構造181が提供され、これは、リセットチューブが用量設定中に近位位置にあるときに係合状態にあり、リセットチューブが用量排出中に遠位側に移動するときに係脱状態にあるダイヤル連結を提供する。リセットチューブはラチェットチューブの内側に軸方向に係止されて取り付けられるが、数度回転することができる(下記参照)。リセットチューブは、その内表面上に、EOC部材の半径方向突出部129と係合するように適合された2つの対向する長軸方向の溝169を含み、それによってEOCはリセットチューブによって回転することができるが、軸方向に移動することが可能である。クラッチ要素は、ラチェットチューブ150の外側遠位端部分上に軸方向に係止されて設置されており、これにより、ラチェットチューブは、クラッチ要素を介してハウジングと回転係合に入り、かつ回転係合から外れるように、軸方向に移動することができる。ダイヤル部材180は軸方向に係止されて取り付けられるが、ハウジング近位端上で回転方向に自由であり、ダイヤルリングは,通常動作の下では、リセットチューブに回転方向に係止され(下記参照)、それによってダイヤルリングの回転はリセットチューブ160の、かつこれによりラチェットチューブの対応する回転をもたらす。解放ボタン190は、リセットチューブに対して軸方向に係止されるが、自由に回転することができる。戻りばね195は、ボタン上およびそこに取り付けられたリセットチューブに対して近位に方向付けられた力を提供する。スケールドラム170は、ラチェットチューブとハウジングとの間の円周方向の空間内に配設され、ドラムは協働する長軸方向スプライン151、171を介してラチェットチューブに回転方向に係止され、かつ協働するねじ構造103、173を介してハウジングの内表面と回転ねじ係合となっており、それによってドラムがラチェットチューブによってハウジングに対して回転するときに数字の列がハウジング内のウィンドウ開口部102を通る。トルクばねは、ラチェットチューブとリセットチューブとの間の円周方向の空間内に配設され、その近位端において、ばね基部部材108に固定され、かつその遠位端において、ラチェットチューブに固定され、それによってラチェットチューブがダイヤル部材の回転によってハウジングに対して回転されたときにばねは変形される。ラチェットチューブとクラッチ要素との間に可撓性のラチェットアーム152を有するラチェット機構が提供され、クラッチ要素には円周方向の内側歯構造142が提供され、各歯は、用量が設定されたときにリセットチューブを介してユーザによって回転された位置にラチェットチューブが保持されるように、ラチェット停止部を提供する。設定用量の低減を可能にするため、ラチェット解放機構162がリセットチューブ上に提供され、かつラチェットチューブに作用し、これにより、ダイヤル部材を反対方向に回転することにより、1つ以上のラチェット増分だけ設定用量を低減することが可能になり、リセットチューブがラチェットチューブに対して上述の数度だけ回転されるとき、解放機構が作動される。
【0048】
排出機構の異なる構成要素およびそれらの機能的関係について説明してきたが、次に機構の動作について、主として図3Aおよび図3Bを参照しながら説明する。
【0049】
ペン式機構は、上述のとおり、用量システムおよびダイヤルシステムの2つの相互作用システムと見なすことができる。用量設定中、ダイヤル機構は回転し、ねじりばねに負荷がかけられる。用量機構はハウジングに係止され、移動することができない。押しボタンが押下されたとき、用量機構はハウジングから解放され、かつダイヤルシステムへの係合に起因して、ねじりばねはここでダイヤルシステムを開始点に戻すように回転させ、また用量システムをそれとともに回転させる。
【0050】
用量機構の中央部分はピストンロッド120であり、ピストンの実際の変位はピストンロッドによって行われる。用量送達中、ピストンロッドは、駆動要素130によって回転し、かつハウジングに固定されたナット要素125とのねじの相互作用によって、ピストンロッドが遠位方向で前方に移動する。ゴムピストンとピストンロッドとの間に、ピストンワッシャー127が定置され、これは回転ピストンロッドの軸方向軸受として機能し、かつゴムピストン上の圧力を均一にする。ピストンロッドは、ピストンロッド駆動要素がピストンロッドと係合する非円形断面を有するため、駆動要素はピストンロッドに対して回転方向に係止されるが、ピストンロッド軸に沿って自由に移動する。結果として、駆動要素の回転は、ピストンの直線的に前方に移動をもたらす。駆動要素には、駆動要素が(押しボタンの端から見て)時計回りに回転することを防止する小さいラチェットアーム134が提供される。したがって、駆動要素との係合に起因して、ピストンロッドは前方にのみ移動することができる。用量送達中、駆動要素は反時計回りに回転し、ラチェットアーム135は、ラチェット歯105と係合することに起因してユーザに小さなクリック音、例えば、排出されたインスリン一単位あたり1クリック音を提供する。
【0051】
ダイヤルシステムに目を移すと、ダイヤル部材180を回転することによって用量が設定され、かつリセットされる。ダイヤルを回すとき、リセットチューブ160、EOC部材128、ラチェットチューブ150、およびスケールドラム170は、ダイヤル連結が係合状態にあることに起因して、すべてそれとともに回転する。ラチェットチューブはトルク駆動ばね155の遠位端に接続されるため、ばねに負荷がかかる。用量設定中に、ラチェットのアーム152は、クラッチ要素の内側歯構造142との相互作用に起因して、ダイヤルされる各単位に対してダイヤルクリックを実施する。示された実施形態では、クラッチ要素には、ハウジングに対して360度の完全な回転に対して24回のクリック(増分)を提供する24個のラチェット停止部が提供される。ばねは組立中に予め負荷がかけられており、これにより機構は小用量および大用量の両方を許容可能な速度間隔内で送達することが可能になる。スケールドラムはラチェットチューブと回転可能に係合するが、軸方向に移動可能であり、かつスケールドラムはハウジングとねじ係合するため、ダイヤルシステムが回転されたとき、スケールドラムは螺旋状パターンで移動し、設定用量に対応する数字がハウジングウィンドウ102に示される。
【0052】
ラチェットチューブとクラッチ要素140との間のラチェット152、142は、ばねが部品の回転を戻すことを防止する。リセット中、リセットチューブはラチェットアーム152を移動させ、これによりクリックごとにラチェットを解放し、1つのクリックは、説明した実施形態ではインスリンの1単位IUに対応する。より具体的には、ダイヤル部材が時計回りに回転されたとき、リセットチューブは単にラチェットチューブを回転させ、ラチェットのアームがクラッチ要素の歯構造142と自由に相互作用することを可能にする。ダイヤル部材が反時計回りに回転されたとき、リセットチューブはラチェットクリックアームと直接相互作用し、クラッチ内の歯から離れてペンの中心に向かってクリックアームを押し、それゆえにラチェット上のクリックアームが、負荷がかけられたばねによって生じるトルクに起因して「1クリック」後方に移動することを可能にする。
【0053】
設定用量を送達するために、図3Bに示すように、押しボタン190はユーザによって遠位方向に押される。ダイヤル連結161、181は係脱され、またリセットチューブ160はダイヤル部材から連結が外され、その後クラッチ要素140はハウジングスプライン104と係脱される。ここで、ダイヤル機構は、駆動要素130とともに「ゼロ」に戻り、これが排出される薬剤の用量につながる。薬剤送達中いつでも押しボタンを解放または押すことにより、いつでも用量を停止し開始することが可能である。ゴムピストンが非常に迅速に圧縮されるとゴムピストンの圧縮につながり、その後、ピストンが元の寸法に戻るときにインスリンの送達が行われるため、通常、5IU未満の用量は一時停止することができない。
【0054】
EOC機能は、ユーザがカートリッジ内に残されているより大きい用量を設定することを防止する。EOC部材128は、リセットチューブに対して回転方向に係止され、これは用量設定中、リセット中、および用量送達中にEOC部材を回転させ、その間、ピストンロッドのスレッドのねじに従い、軸方向に前後に移動することができる。ピストンロッドの近位端に達すると、停止が提供され、これはダイヤル部材を含むすべての接続された部品が用量設定方向にさらに回転するのを防止する。すなわち、ここで設定用量はカートリッジ内の残りの薬剤含有量に対応する。
【0055】
スケールドラム170には、ハウジング内表面上の対応する停止表面と係合するように適合された遠位停止表面174が提供され、これは、スケールドラムに対する最大用量での停止を提供し、ダイヤル部材を含むすべての接続された部品が用量設定方向にさらに回転されることを防止する。示された実施形態では、最大用量は80IUに設定される。これに応じて、スケールドラムには、ばね基部部材上の対応する停止表面と係合するように適合された近位停止表面が提供され、これは、ダイヤル部材を含むすべての接続された部品が、用量排出方向にさらに回転されることを防止し、これにより排出機構全体に「ゼロ」停止を提供する。
【0056】
ダイヤル機構に何か障害があり、スケールドラムがゼロ位置を越えて移動することを可能にする場合、偶発的な過剰投薬を防止するために、EOC部材はセキュリティシステムを提供するように機能する。より具体的には、満杯のカートリッジを有する初期状態では、EOC部材は、駆動要素と接触する軸方向で最遠位側の位置に位置付けられる。所与の用量が排出された後、EOC部材は再び駆動要素と接触するように位置付けられる。これに応じて、機構がゼロ位置を越えて用量を送達しようとする場合には、EOC部材は駆動要素に対して係止する。機構の様々な部品の許容誤差および可撓性に起因して、EOCは短距離を移動し、薬剤の少量の「過剰用量」(例えば、3~5IUのインスリン)が排出されることがある。
【0057】
排出機構は、排出用量の終了時に明確なフィードバックを提供して、薬剤の全量が排出されたことをユーザに知らせる用量終了(EOD)クリック機能をさらに含む。より具体的には、EOD機能は、ばね基部とスケールドラムとの間の相互作用によってなされる。スケールドラムがゼロに戻ると、ばね基部上の小さいクリックアーム106は、前進するスケールドラムによって後向きに強制される。「ゼロ」の直前に、アームが解放され、アームはスケールドラム上の皿穴面を打つ。
【0058】
示された機構には、ダイヤル部材を介してユーザによって加えられる過負荷から機構を保護するために、トルクリミッターがさらに提供される。この機能は、ダイヤル部材とリセットチューブとの間の境界面によって提供され、これは上述のように、相互に回転方向に係止される。より具体的には、ダイヤル部材にはいくつかの対応する外側歯161と係合する円周の内側歯構造181が提供され、この内側歯構造は、リセットチューブの可撓性の担体部分上に配設される。リセットチューブ歯は、所与の指定された最大サイズのトルク(例えば、150~300Nmm)を伝達し、それを上回ると、可撓性の担体部分および歯が内向きに曲がり、ダイヤル機構の残りの部分を回転させることなく、ダイヤル部材を回転させるように設計される。したがって、ペンの内側の機構は、トルクリミッターが歯を介して伝達するよりも高い負荷でストレスを受けることはない。
【0059】
機械式薬剤送達装置の作動原理を説明してきたので、本発明の実施形態について説明する。
【0060】
図4Aおよび図4Bは、予め充填されたペン形状の薬剤送達装置200の第1のアセンブリ、およびそのために適合されたアドオン用量ログ装置300の概略図を示す。アドオン装置は、ペン式装置ハウジングの近位端部分上に設置されるように適合され、図4Bに示すように取り付けられた状態でのペン式装置上の対応する手段を覆う用量設定および用量解放手段380が提供される。示される実施形態で、アドオン装置は、薬剤送達ハウジング上に軸方向に取り付けられ回転方向に係止されるように適合された連結部分385を含む。アドオン装置は、回転可能な用量設定部材380を備え、これは、用量設定中に、アドオン用量設定部材の回転移動がいずれの方向でもペン式用量設定部材に伝達されるように、ペン式用量設定部材280に直接的または間接的に連結される。用量排出中および用量サイズ決定中に外部からの影響を低減するために、外側アドオン用量設定部材380は、図5の実施形態を参照しながらより詳細に説明されるように、用量排出中、ペン式用量設定部材280から回転方向に連結を外されてもよい。アドオン装置は、遠位側に移動し、これによりペン式解放部材290を作動させることができる用量解放部材390をさらに含む。図5を参照して以下でより詳細に説明されるように、ユーザによってつかまれ回転されるアドオン用量設定部材は、それと回転方向で係合するペン式ハウジングに直接取り付けられてもよい。
【0061】
別の方法として、示された構成は、主に薬剤の用量を設定および解放するための器用さが低下した人のための補助として機能するように適合されてもよく、それゆえに任意の用量感知および用量ロギング機能は省いてもよい。こうした構成では、用量の排出中に、外側アドオン用量設定部材がペン式用量設定部材280から回転方向で連結を外されていることはそれほど重要でない。これに応じて、外側アドオン用量設定部材は、ペン式用量設定部材280と永久的に回転係合してもよい。
【0062】
図5に目を移すと、ペン型の薬剤送達装置100上に設置されるように適合されたアドオン用量ロギング装置400の第1の例示的な実施形態をより詳細に説明する。薬剤送達装置は、図1図3を参照しながら説明した薬剤送達装置に本質的に対応し、それゆえにハウジング101と、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材180と、近位用量設定位置と遠位用量解放位置との間で作動可能な解放部材190と、スケールドラム170と、リセットチューブ160とを含む。アドオンロギング装置と協働するために、薬剤送達装置は、リセットチューブ近位端に取り付けられるかまたはリセットチューブ近位端と一体的に形成される概してリング形態のトレーサー磁石160Mを含むように修正され、磁石は投与量の排出中に回転するインジケータとして機能し、回転移動の量は排出された投与量のサイズを示すものである。さらに、ハウジングには、用量設定部材のすぐ遠位に円周方向の溝101Gが提供され、アドオン装置のための連結手段として機能する。
【0063】
アドオン装置は、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付け可能な外側アセンブリ410だけでなく内側アセンブリ480も含む。内側アセンブリおよび外側アセンブリは、用量設定中に相互に回転方向に係止されるが、用量排出中は相互から回転方向で連結を外される。示された実施形態は実験的なプロトタイプに基づき、そのため構造の一部は多数の組み立てられた部品から形成される。
【0064】
外側アセンブリ410は、アドオン装置に対する一般軸を画定し、かつアドオン用量設定部材として機能する概して円筒状のハウジング部材411と、ペン式ハウジングの連結溝101Gと係合するように適合された遠位に配設された連結手段415と、ハウジング部材411に連結され、かつ初期の近位位置と作動した遠位位置との間で軸方向に移動可能な近位に配設された用量解放部材490とを含む。示された実施形態では、連結手段415は、アドオン装置が薬剤送達装置100の近位端の上にスライドしたときに、スナップ作用によってハウジング溝101G内に取り外し可能に受容されるように適合された多数のばね付勢連結部材の形態であり、これにより連結手段はアドオン装置をペン式装置へと軸方向に係止する。連結手段は、例えば、引く動作または解放機構の作動によって解放されてもよい。ハウジングは、近位部分に、内円周フランジ412および軸方向に向けられた多数の案内溝413を含む。用量解放部材490は、案内溝413内に受容された、周辺に配設され軸方向に配向された多数のフランジ493を備え、溝は近位停止部を提供し、これに対して用量解放部材は、ハウジングフランジ412と用量解放部材490との間に支持された第1の戻りばね418によって付勢される。用量解放部材は、遠位内側フランジ部分494を有する内側の円筒状スカート部分492を備え、内側フランジ部分は遠位円周リップ495および軸方向に配向された係止スプライン496の近位アレイを含む。
【0065】
内側アセンブリ480は、内側ハウジング481と、その中に配設されたセンサモジュール460の形態の軸方向に移動可能なセンサシステムとを含む。内側ハウジングは、そこから中空の伝達チューブ483が近位に延びる近位壁部分482と、第2の付勢ばね468のための支持として機能する内円周フランジ部分484と、ペン式用量設定部材の駆動溝182(図1Aを参照)内に受容されるように適合された、軸方向に配向された多数の内側突出部が提供される遠位に延びる円周方向のスカート部分487とを備え、これにより2つの部材を相互に回転方向に係止し、係合はアドオン装置の設置および動作中にいくらかの軸方向の遊びを可能にする。別の方法として、スカート部分487には、下記に説明するタイプの半径方向内向きに付勢された駆動構造が提供されてもよい。中空のチューブ483は、近位端に、円周リップ495と係合するように適合された遠位に面する停止表面を有するディスク型の部分と、用量解放部材490上の係止スプライン496と係合し、これにより内側アセンブリを用量解放部材に回転方向に係止し、それにより外側アセンブリを回転方向に係止するように適合された、軸方向に配向されたスプライン486の円周方向アレイとを含む。
【0066】
センサモジュール460は、センサ部分および近位に延びる作動ロッド部分462を含む。センサ部分は、概して円筒状のセンサハウジング461を備え、その中に電子回路465が配設される(図5に概略的に示す)。センサハウジングは、ペン式作動部材190と係合するように適合された遠位作動表面を含む。初期用量設定モード(すなわち、用量解放部材490が初期近位位置にある)では、センサハウジングは、内側ハウジング近位壁部分482と係合するように第2の付勢ばね468によって近位に付勢され、かつ作動ロッド462は、伝達チューブ483から用量解放部材490の内部へと延び、作動ロッドの近位端463と用量解放部材の内側作動表面との間に軸方向の間隙が形成される。
【0067】
電子回路465は、プロセッサ手段と、1つ以上のセンサと、1つ以上のスイッチと、無線送信機/受信機手段と、エネルギー源と含む電子部品を含む。センサは、ペントレーサー磁石160Mによって生成される磁場を測定するように適合された1つ以上の磁力計を備え、これにより、ペンリセットチューブの回転移動が可能になり、したがって、排出用量サイズが決定される(例えば、WO2014/161952を参照)。装置のタイプを認識することを可能にするさらなるセンサ手段が提供されてもよく、例えば、発光体およびペン解放部材の色を判断するように適合された色センサであり、色は、予め充填されたペン式装置に含有された薬剤タイプの識別子の役割を果たす。プロセッサ手段は、一般的マイクロプロセッサまたはASIC、埋め込みプログラムコードのための記憶装置を提供するROMなどの不揮発性プログラムメモリ、データのためのフラッシュメモリおよび/またはRAMなどの書き込み可能メモリ、ならびに送信機/受信機用のコントローラの形態であってもよい。
【0068】
図5に示すペン式薬剤送達装置100上に設置されたアドオン装置400とともに使用する状況では、ユーザは、ハウジング部材411(すなわち、アドオン用量設定部材)およびそれとともに用量解放部材490も回転させることによって望ましい用量の設定を開始する。用量設定中に、用量解放部材はその初期近位位置に向かって付勢され、それによって、係止スプライン486、496を介して内側アセンブリ480に回転方向に係止され、これはアドオン用量設定部材の回転移動を内側ハウジング461へと、それゆえにペン式用量設定部材180へと伝達することを可能にする。
【0069】
用量が設定されると、ユーザは、第1の付勢ばね418の力に逆らって用量解放部材を遠位に移動することによって、用量解放部材490を作動させる。初期解放移動中に、係止スプライン486、496は係脱され、これは内側アセンブリ480が用量解放部材から、それゆえに、アドオン用量設定ハウジング部材411から回転方向に連結を外される。さらなる解放移動中に、用量解放部材490は作動ロッド近位端463と係合し、それによってさらなる解放移動中に、センサモジュール460はペン式用量解放部材190に向かって遠位に移動し、その後ペン式解放部材と接触する。作動ロッド462およびアドオン用量解放部材490の係合表面は、回転移動の最小限の伝達のために最適化される。最後に、アドオン解放部材490のさらなる遠位移動がペン式解放部材190の作動をもたらし、これにより設定用量が排出され、これによりセンサモジュール460はアクチュエータとして機能する。
【0070】
排出された用量サイズを決定するために、トレーサー磁石160M、それゆえにリセットチューブ160の回転の量が決定される。より具体的には、センサモジュールの初期移動はセンサスイッチ(図示せず)を起動させ、これが次にセンサ電子機器465を起動し、磁気計からのデータのサンプリングを開始させ、これにより排出機構の解放前にトレーサー磁石160Mの回転開始位置を決定することが可能になる。この間、ペン解放部材の色、したがってカートリッジに含有された薬剤のタイプも決定され得る。リセットチューブは、薬剤の用量の排出中に360度を超えて回転し得るので、排出中の回転移動が検出され、完全回転の数(ある場合)が決定される。リセットチューブの回転が停止したことが検出されたとき、例えば、設定用量を完全に排出したとき、またはユーザによって外部投薬が一時停止されたとき、回転終了位置が決定され、これは排出された用量のサイズを決定することを可能にする。別の方法として、回転終了位置は、センサモジュール460がその初期位置に戻ったことをセンサスイッチが検出したときに決定されてもよい。
【0071】
示されるように、薬剤排出中に外側アセンブリ480から内側アセンブリ460の回転方向で連結が外れることに起因して、アドオン装置の外側部品の移動がリセットチューブ160の回転移動および回転位置の正確な決定に悪影響を与えることが高度に防止される。
【0072】
決定された用量サイズ(または用量サイズを後で計算することができるデータ)は、タイムスタンプおよび薬剤タイプ識別子(検出された場合)とともにログメモリに保存される。次いで、ログメモリの内容は、NFC、Bluetooth(登録商標)またはその他の無線手段によって、アドオンロギング装置とペアリングされた外部装置(例えば、スマートフォン)に送信されてもよい。好適なペアリングプロセスの一例は、欧州特許出願第17178059.6号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
図6を参照すると、ペン型の薬剤送達装置600上に設置するように適合されたアドオン用量ロギング装置700の第2の例示的な実施形態をより詳細に説明する。薬剤送達装置は、図1図3を参照しながら説明した薬剤送達装置に本質的に対応し、それゆえにハウジング601と、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材680と、近位用量設定位置と遠位用量解放位置との間で作動可能な解放部材690と、スケールドラム670と、リセットチューブ660とを含む。アドオンロギング装置700と協働するために、薬剤送達装置は、リセットチューブ近位端に取り付けられているかまたはリセットチューブ近位端と一体的に形成された概してリング形態の磁石660Mを含むように修正されており、磁石は投与量の排出中に回転するインジケータとして機能し、回転移動の量は排出された投与量のサイズを示すものである。さらに、ハウジング近位部分602には、用量設定部材のすぐ遠位に多数の突起601Pが提供され、アドオン装置のための連結手段として機能する。示された実施形態では、3つの連結突出部がハウジング上に等距離で位置する。
【0074】
アドオン装置700は、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付け可能な外側アセンブリ710だけでなく、内側アセンブリも備える(下記参照)。外側アセンブリ710は、アドオン装置の一般軸を画定する概して円筒状の遠位連結部分719(図4Aの実施形態にあるように)を備え、連結部分は、薬剤送達ペンの対応する概して円筒状の連結部分を受容するように適合された概して円筒状の穴702を有し、ペン式ハウジング上の対応する連結突起601Pと係合し、かつ係合へと取り外し可能にスナップ留めされるように適合された多数のバヨネット連結構造715によって、薬剤送達ハウジング上で軸方向および回転方向に係止されて設置されるように適合される。アドオン装置は、連結部分上で自由に回転可能に設置された近位用量設定部材711をさらに備え、これは図5の実施形態にあるように、アドオン用量設定部材711の回転移動がいずれの方向でもペン式用量設定部材に伝達されるように、ペン式用量設定部材680に連結される。アドオン装置は、用量設定中に用量設定部材とともに回転する用量解放部材790をさらに含む。用量設定部材上の内円周フランジ712上に支持された第1の付勢ばね718は、用量解放部材上に近位に方向付けられた付勢力を提供する。図5の実施形態にあるように、内側アセンブリおよび外側アセンブリは、用量設定中に相互に回転方向に係止されているが、用量排出中は相互に回転方向に連結を外される。
【0075】
内側アセンブリ780は、概して、図5の実施形態の内側アセンブリ480に対応し、それゆえに概して、同一の機能を提供する同じ構造を含む。これに応じて、内側アセンブリは(図7Aを参照)、内側ハウジング781およびその中に配設された軸方向に移動可能なセンサモジュール760を含む。内側ハウジングは、中空の伝達チューブ構造783がそこから近位に延びる近位壁部分782と、第2の付勢ばね768のための支持として機能する遠位内円周フランジ部分784と、ペン式用量設定部材の駆動溝682(図6を参照)に係合するように適合された遠位に延びる周囲のスカート部分787とを備え、これにより2つの部材は相互に回転方向に係止し、係合はアドオン装置の設置および動作中にいくらかの軸方向の遊びを可能にする。示される実施形態では、用量設定部材の駆動溝682を係合する構造は、可撓性の指751の形態であり、以下でより詳細に説明するように設置を容易にすることができる。指は、示されるように、例えば、金属板部材の一部として形成された、スカート部分787に設置されてもよく、またはスカート部分と一体的に形成されてもよい。中空チューブ783は、近位端に、用量解放部材790の円周内側フランジ795と係合するように適合された遠位に面する停止表面を有する多数のフランジ部分788だけでなく、用量解放部材790上の係止スプライン796と係合し、これにより内側アセンブリを用量解放部材に、それにより外側アセンブリに回転方向で係止するように適合された、軸方向に配向された多数のスプラインも含む。
【0076】
センサモジュール760は、センサ部分および近位に延びる作動ロッド部分762を含む。センサ部分は、概して円筒状のセンサハウジング761を備え、その中に電子回路765(下記参照)が配設される。センサハウジングは、磁石センサを覆い、かつペン式作動部材690と係合するように適合された遠位スペーサーキャップ764を含む。初期用量設定モード(すなわち、用量解放部材790が初期近位位置にある)では、センサハウジングは、内側ハウジング近位壁部分782と係合するように第2の付勢ばね768によって近位に付勢され、作動ロッド762は、伝達チューブ783から用量解放部材790の内部へと延び、作動ロッドの近位端763と用量解放部材の内側作動表面との間に軸方向の間隙が形成される。
【0077】
電子回路765は、プロセッサ手段、センサ、起動スイッチ(例えば、作動ロッド部分762上に加えられる軸方向力によって作動するドームスイッチ)、無線送信機/受信機手段およびエネルギー源を含む電子部品を含む。より具体的には、示された実施形態では、電子回路765は、遠位端から、その上に多数のセンサ構成要素(例えば、磁気計766M)が配設された第1のPCB 766A、一対のコインセルのための一対の電池コネクタディスク766B、その上に電子部品の大部分が取り付けられる第2のPCB 766C(例えば、プロセッサ、送信機/受信機およびメモリ)、および作動ロッド部分762がPCBに取り付けられた起動スイッチ766Sに接触して作動させることを可能にするスロットを有する上部ディスク766Dを含む、層状構造を備え、5つの部材は可撓性のリボンコネクタによって相互接続される。
【0078】
センサは、ペン磁石660Mによって生成される磁場を測定するように適合された多数の磁気計を備え、これにより、ペンリセットチューブの回転移動が可能になり、したがって、排出用量サイズが決定される(例えば、WO2014/0161952を参照)。装置のタイプを認識することを可能にするさらなるセンサ手段が提供されてもよく、例えば、発光体およびペン解放部材の色を判断するように適合された色センサなどであり、色は、予め充填されたペン式装置に含有された薬剤タイプの識別子の役割を果たす。色センサおよび発光体は、(ヒトの目に対する)可視光または可視スペクトルの完全に外または部分的に外の光で作動し得る。プロセッサ手段は、一般的マイクロプロセッサまたはASIC、埋め込みプログラムコードのための記憶装置を提供するROMなどの不揮発性プログラムメモリ、データのためのフラッシュメモリおよび/またはRAMなどの書き込み可能メモリ、ならびに送信機/受信機用のコントローラの形態であってもよい。
【0079】
ペン式薬剤送達装置600上に設置されたアドオン装置700と使用する状況では、ユーザは、用量設定部材711(すなわち、アドオン用量設定部材)およびそれとともに用量解放部材790も回転させることによって望ましい用量の設定を開始する。用量設定中に、用量解放部材はその初期近位位置に向かって付勢され、それによって、係止スプライン786、796を介して内側アセンブリ780に回転方向に係止され、これはアドオン用量設定部材の回転移動を内側ハウジング761へと、それゆえにペン式用量設定部材680へと伝達することを可能にする。
【0080】
用量が設定されると、ユーザは、第1の付勢ばね718の力に逆らって用量解放部材を遠位に移動することによって、用量解放部材790を作動させる。初期解放移動中に、係止スプライン786、796は係脱され、これは電子機器を有する内側アセンブリ780を用量解放部材790から、それゆえにアドオン用量設定部材711から回転方向の連結を外される。さらなる解放移動中、用量解放部材790は、作動ロッド近位端763と係合し(図8Aを参照)、それによってさらなる解放移動中にセンサモジュール760がペン式解放部材690に向かって遠位に移動し、その後ペン式解放部材と接触する(図8B参照)。作動ロッド762およびアドオン用量解放部材790の係合表面は、回転移動の最小限の伝達のために最適化される。最後に、アドオン解放部材790のさらなる遠位の移動がペン式解放部材690の作動をもたらし(図8C参照、ここではリセットチューブ外側歯661が遠位に移動されている)、これにより設定用量が排出され(図8D参照)、これによりセンサモジュール760はアクチュエータとして機能する。
【0081】
排出された用量サイズを決定するために、磁石660M、それゆえにリセットチューブ660の回転の量が決定される。より具体的には、センサモジュールの初期移動は、センサスイッチ起動させ、これが次にセンサ電子機器765を起動させ、磁気計からのデータのサンプリングを開始し、これにより排出機構の解放前に、磁石計660Mの回転開始位置を決定することができる。この間、ペン解放部材の色、したがってカートリッジに含有された薬剤のタイプも決定され得る。リセットチューブ660は、薬剤の用量の排出中に360度を超えて回転するので、排出中の回転移動が検出され、(ある場合は)完全回転の数が決定される。リセットチューブの回転が停止したことが検出されたとき、例えば、設定用量を完全に排出したとき、またはユーザによって外部投薬が一時停止されたとき、回転終了位置が決定され、これは排出された用量のサイズを決定することを可能にする。別の方法として、回転終了位置は、センサモジュール760がその初期位置に戻ったことはセンサスイッチが検出したときに決定されてもよい。
【0082】
上述の説明から分かるように、いくつかのイベントは、センサモジュールの軸方向移動中、ならびにその後のセンサモジュールおよびリセットチューブの組み合わされた軸方向移動中に発生する。センサモジュールは、最初に、その初期近位位置から離れて移動する。比較的短い移動の後、センサスイッチが起動し、センサ電子機器がオンになり、これにより、センサシステムがリセットチューブの移動を示す値の測定を開始することが可能になる。その後、センサモジュールは、センサモジュールとリセットチューブが軸方向に一緒に移動する点からペン式解放部材と接触するように移動する。ペン解放部材のさらなる軸移動は、ばね駆動の排出機構を解放し、リセットチューブは回転を開始する(その軸方向位置は中間位置と称され得る)。排出機構が安全に解放されることを確実にするために、センサモジュールおよびリセットチューブは、リセットチューブが遠位停止部に到達するまでさらに遠くまで移動する。したがって、リセットチューブは、リセットチューブの回転移動の大部分を行う位置である遠位停止部に向かって移動するにつれて、回転を開始したことになる。ユーザが設定用量を完全に排出することを許可する場合、リセットチューブは、その最も遠位の位置にあるときに、その回転終了位置に到達する。回転移動が停止したことが検出されているときに、リセットチューブの回転終了位置を決定することができる。ユーザが排出を一時停止することを望む場合、ユーザは、アドオン解放部材上の圧力を解放し、リセットチューブは、近位に動き始めるが、リセットチューブが中間軸方向位置に到達するまで、回転し続ける。
【0083】
最初に開示されたように、本発明の態様は、移動の測定中に、センサ構成要素(または上述の実施形態で、センサモジュール全体として)が、インジケータ(例えば、上述の実施形態で磁石が提供されたリセットチューブ)と軸方向に一緒に移動することを提供する。システムの実際の機械的および電子的な設計に応じて、2つの構造は、移動の測定中に軸方向に完全にまたは部分的に一緒に移動し得る。例示的な実施形態の上記の説明から分かるように、センサモジュールは、リセットチューブの回転中にリセットチューブと一緒に移動し、これは、回転中にセンサシステムについての本質的に一定の測定条件を提供する。リセットチューブの回転開始位置および回転終了位置を測定する際に、センサシステムについて相当する本質的に一定の条件を提供するために、これらの位置は、センサモジュールがペン式解放部材と接触し、したがって、それとともに移動している間に測定されなければならない。これを確実にするために、センサモジュールは、センサモジュールとペン式解放部材との間の接触を可能にするスイッチまたは検出手段を備えてもよい。実際に、リセットチューブの初期回転位置は、排出機構が解放されて、リセットチューブが回転し始める前に決定されなければならない。あるいは、センサモジュールは、センサモジュールがペン式解除部材と係合する前に、リセットチューブの初期回転位置を測定するように設計されてもよい。これは、リセットチューブの回転開始位置および終了位置を測定する際に、センサシステムについてわずかに異なる条件をもたらすが、こうしたセットアップは、リセットチューブが回転を開始する前に回転開始位置が適切に決定されるためのより多くの時間を提供するであろう。
【0084】
示されるように、薬剤排出中に外側アセンブリ780から内側アセンブリ760の回転方向で連結が外れることに起因して、アドオン装置の外側部品の移動がリセットチューブ660の回転移動および回転位置の正確な決定に悪影響を与えることが高度に防止される。
【0085】
図9を参照すると、ペン型の薬剤送達装置800上に設置するように適合されたアドオン用量ロギング装置900の第3の例示的な実施形態をより詳細に説明する。わずかに修正された薬剤送達ペン式装置800を、図10Aおよび図10Bを参照しながら説明する。
【0086】
アドオン用量ロギング装置900は、図6図8を参照しながら説明したアドオン用量ロギング装置600に本質的に対応し、それゆえに、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付け可能な外側アセンブリ、センサモジュールを有する内側アセンブリだけでなく、解放部材アセンブリも含む。上述の実施形態とは対照的に、図9の分解組立図は、アセンブリが形成される個別の構成要素を示す。
【0087】
外側アセンブリは、遠位ハウジング連結部分901と、そこに取り付け可能な近位ハウジング部分919と、近位ハウジング部分上に自由に回転可能に取り付けられるように適合されたアドオン用量設定部材911と、用量設定部材に設置されて解放部材アセンブリを封入するように適合された係止リング916とによって形成される。係止アセンブリは、解放スライダー908、捕捉部材905、付勢ばね906だけでなく、スライダーのための一対の戻りコイルばね909を備え、係止アセンブリ構成要素はハウジング連結部分901内に設置されるように適合される。
【0088】
より具体的には、遠位ハウジング連結部分901は、薬剤送達ペン式装置の対応する円筒状連結部分を滑り嵌めで受容するように適合された円筒状の穴902を含む(下記参照)。穴には、アドオン装置がペン式装置上に軸方向に取り付けられたときに、ペン式ハウジング係止突起805を受容するように適合された、遠位に面しかつ軸方向に配向された溝が、提供される。遠位ハウジング連結部分の近位部分は、より大きい直径へと外向きにテーパー状であり、かつ各々が近位に面する端面を有する複数の長軸方向のリブ907を備え、端面は内側アセンブリのための遠位停止部として機能する。連結部分901は、取り付けられたときにペン式装置表示ウィンドウを覆うように適合されており、それゆえに表示ウィンドウを観察することを可能にし、それゆえにスケールドラムを観察することを可能にするウィンドウ開口部904を含む。ウィンドウ開口部の反対側には、係止アセンブリ構成要素を受容するように適合された第2の開口部903が提供される。捕捉部材905は、第2の開口部内に旋回可能に設置され、かつ付勢ばね906によって内向きに付勢され、これはアドオン装置がペン式装置上に軸方向に設置されたときに、捕捉部材がペン式ハウジング係止突起805の遠位の定位置にスナップ止めすることを可能にする。係止手段はウィンドウ開口部904の反対側に配設されるので、ユーザが設置中にアドオン装置を簡単に回転方向に配向し得ることを確実にする。解放スライダー908は、第2の開口部内に摺動可能に設置され、戻りばね909によって遠位方向に付勢される。ユーザが解放スライダーを近位に動かすと、これは捕捉部材905を持ち上げてハウジング係止突起805との係合が外れ、アドオン装置を近位方向に移動し、それゆえにペン式装置から取り外すことが可能になる。近位ハウジング部分919は、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によって連結部分901に固定的に取り付けられ、また用量設定部材911をスナップ作用によって自由に回転可能に設置することを可能にする円周の隆起部917を含む。用量設定部材は、組み立てられた状態では、内側アセンブリの近位停止部および解放部材戻りばね918の遠位停止部として機能する円周の内側フランジ912だけでなく、解放部材アセンブリのための多数のガイドトラック913を形成する多数の軸方向に延びる内側フランジとを含む。係止リング916は、示されるように例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によって用量設定部材に軸方向に固定されて設置され、これにより用量設定部材911とキャップ部材998との間の間隙をシールするように適合される。
【0089】
内側アセンブリは、概して円筒状の内側ハウジング部材981と、内側ハウジング部材上に設置されるように適合された円筒状の係止部材950と、内側ハウジング部材に取り付けられてそこに設置されたセンサモジュールを封入するように適合された近位壁または蓋部材982とを含む。壁部材は、近位フランジ部材988を受容するように適合された近位に延びるチューブ部分983を含む。
【0090】
より具体的には、内側ハウジング部材981は、多数の開口部989を有するより大きい直径の遠位スカート部分987と、センサモジュールのための多数のガイドトラックを形成する多数の軸方向に延びる壁セクション985を有するより小さい直径の近位部分とを含む。2つの部分間の移行部は、センサばね968のための外円周遠位サポート984を形成する(下記参照)。示された実施形態では、円筒状の係止部材950は金属板の単一片から形成され、その中に、半径方向に内向きに延びる近位自由端部分を各々が有する、第1の複数の軸方向に延びる可撓性のダイヤル係止アーム951、および半径方向に内向きに延びる近位自由端部分を各々が有する、第2の複数の軸方向に延びる可撓性の設置アーム955が形成される。設置アームは、係止部材が内側ハウジング部材981上に設置されたときに、対応する設置開口部989との係合へとスナップ留めされるように機能し、これは2つの部材を軸方向および回転方向に係止する。ダイヤル係止アーム951の遠位端は、内向きに丸みが付けられ、かつペン式用量設定部材の駆動溝882と係合するように適合される(下記参照)。近位壁部材982は、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によって内側ハウジングフランジに固定的に取り付けられるように適合され、そして組み立てられた状態でセンサモジュールのための近位停止部として機能する。近位方向に延びるチューブ部分983は、近位端において、組み立てられた状態で解放部材上の対応するスプラインと係合するように適合された複数の軸方向に向けられた係止スプライン986を各々が含む、一対の対向する半径方向の延長部を含む。近位フランジ部材988は、示されるように、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によってチューブ部分983に固定的に取り付けられるように適合される。フランジ部材は、作動ロッド962のより大きな直径の遠位端よりも小さい直径を有する中央の穴を備え(下図参照)、これは、作動ロッドの近位停止部を提供する。
【0091】
センサモジュール960は、遠位に面するセンサ構成要素966M(図12Bを参照)を有する電子回路965が取り付けられた概して円筒形のセンサハウジング961と、センサモジュールハウジング遠位端に取り付けられて、センサ構成要素を覆って封入するように適合されたスペーサーキャップ964と、壁部材チューブ部分983内に配設されるように適合された作動ロッド962とを含む。センサモジュールの戻りばね968は、内側ハウジング部材981とセンサハウジング961との間に配設されて、センサモジュールに近位方向への付勢力を提供するように適合される。
【0092】
より具体的には、スペーサーキャップ964は、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によってセンサハウジングに固定的に取り付けられるように適合されており、組み立てられた状態ではセンサ構成要素を保護し、かつペン式装置解放部材890と係合するように適合された遠位に面する接触面として機能する(図13Aを参照)。センサハウジングは、内側ハウジング部材ガイドトラック内に、回転可能ではないが軸方向に自由に受容されるように適合された、多数の半径方向に突出する遠位および近位ガイドフランジ967を含む。遠位ガイドフランジはまた、センサばね968のための近位停止表面を提供する。センサモジュールのための遠位停止部は、ガイドトラックの遠位端および/または圧縮されたセンサばねに対応する内側ハウジングによって提供される。作動ロッド962は、ロッドがチューブ部分983内に自由に受容されるのを可能にするより大きい直径の遠位部分と、フランジ部材988の穴を通して突出するように適合されたより小さい直径の近位部分とを含む。作動ロッドは、丸みを付けられた近位端963を備え、作動ロッドおよびキャップ部材998の係合表面は回転移動の最小限の伝達のために最適化される。センサモジュールは、作動ロッドによって作動されるように適合された、近位に面する中央に配設された作動スイッチ966(例えば、ドームスイッチ)を含む。
【0093】
解放部材アセンブリは、本体部材990およびその上に設置可能なキャップ部材998を含む。解放部材の戻りばね918は、用量設定部材フランジ912と解放本体部材990との間に配設されて、解放本体部材上に近位に方向付けられた付勢力を提供するように適合される。
【0094】
より具体的には、解放本体部材990は、組み立てられた状態でチューブ部分983上の係止スプライン986と係合するように適合された軸方向に向けられたスプライン996の内円周方向アレイを有する遠位リング部分994だけでなく、用量設定部材ガイドトラック913内に回転可能ではないが軸方向に自由に受容されるように適合された多数の半径方向に突出するガイドフランジ993も含む。キャップ部材998は、示されるように、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段995によって本体部材に軸方向に固定的に取り付けられるように適合される。組み立てられた状態で、フランジ部材988は、解放本体部材990のための近位停止部として機能し、かつ解放部材の戻りばね918はリング部分遠位表面上に作用する。
【0095】
図10Aおよび図10Bに目を移すと、わずかに修正されたペン式薬剤送達装置800の近位部分が、アドオン装置とペン式用量設定部材との間に回転方向の係合を提供するアドオン装置の内側アセンブリの部品と組み合わせて示される。
【0096】
より具体的には、ペン式ハウジング801は概して図6の実施形態に対応するが、しかしわずかにテーパー状のハウジングの代わりに、ウィンドウ809を含むハウジングの近位連結部分802は、アドオン装置の円筒状の穴の中に受容されるように適合された「真の」円筒状の形態を有する。別の方法として、両方の構造は軽いテーパーを有してもよい。さらに、連結手段は、軸方向の簡単な設置のために、捕捉部材905と協働するように適合された単一の係止突起805の形態である。また、概して円筒状の外表面881を有し(すなわち、用量設定部材はわずかにテーパー状であってもよい)、示された実施形態では、外表面が、用量設定中の指のつまみを改善するために、複数の軸方向に向けられた微細溝を含むことによって質感が与えられる用量設定部材880だけでなく、図6の実施形態に対応する多数の軸方向に向けられた駆動溝882も示される。
【0097】
図9Aおよび図9Bを参照しながら上述したように、内側アセンブリは、多数の開口部989を有する遠位スカート部分987を有するハウジング部材981だけでなく、その上に設置された円筒状の係止部材950も備え、係止部材は多数の可撓性のダイヤル係止アーム951および多数の可撓性の設置アームを含む(後者は図10Aおよび図10Bには示されない)。
【0098】
図10Aでは、内側ハウジング981は、その軸方向に設置された位置で示される(アドオン装置の図示されない部分によって決定されるように)。外側アドオンハウジング901が回転方向で所定の位置に設置される一方で、設置されない状態で外側ハウジングに対して自由に回転することが可能である内側ハウジングアセンブリの場合はそうではなく、これは、内側ハウジング、それゆえに係止アーム951が用量設定部材の駆動溝882と回転方向に位置合わせされないように、「無作為な」回転位置に取り付けられるものと仮定する。さらに、用量設定部材880は、用量が設定されていないことに対応する初期の「駐車している」回転「ゼロ」位置を有するが、ランダム位置に設定されてもよい。さらに、ゼロ位置に駐車している場合でも、用量設定機構のゆるみが、用量設定部材の駆動溝の回転位置のわずかな変動をもたらす場合がある。
【0099】
それゆえに、アドオン装置がペン式装置上に設置されたとき、可撓性のダイヤル係止アーム951は、用量設定部材の駆動溝882と回転方向に位置合わせされない場合がある。しかしながら、ダイヤル係止アームは可撓性であることに起因して、用量設定部材によってこれらは外向きに移動され、かつ図10Aに示すように、駆動溝と平行に用量設定部材の外周上で軸方向にスライドする。可撓性の係止アームによって提供される抵抗は小さいので、ユーザはほとんどの場合、アドオン装置の設置中に何が起こったかに気付かず、アドオン装置がまだペン式装置の用量設定部材と回転方向に係合していないという事実に気付かないであろう。示された実施形態では、係止アーム951の自由端は近位側に向けられるが、しかし別の方法として、それらは遠位に配向されてもよく、係止アームの自由端およびペン式装置の用量設定部材880の近位縁は、アドオン装置の設置中に係止アームを外向きに移動させるように構成されてもよい。
【0100】
その後、ユーザが用量を設定することを希望する場合、ユーザは、アドオン装置用量設定部材911を回転し始め、これにより内側ハウジングが係止アーム951とともに回転して次に用量設定部材の駆動溝882と位置合わせされ、それゆえに図10Bに示すように、内向きに曲がって駆動溝と回転方向に係合することができる。係止アームが駆動溝と簡単に係合することを確実にするために、それらは駆動溝よりもわずかに狭く形成される。アドオン装置の用量設定部材911のさらなる移動は、次にペン式装置の用量設定部材をこれに応じて回転させ、これはユーザが通常どおり用量を設定および調整することを可能にする。実際、多くの事例では、係止アームは駆動溝の中へと直接移動される。
【0101】
係止アーム951の数および機械的特性は、アドオン装置の安全かつ堅牢な動作を可能にするように寸法形成されるべきである。これを確実にするため、組み合わせアセンブリ、すなわちペン式装置およびアドオン装置は、ユーザがゼロを下回る、または最大設定可能投与量を上回るようにダイヤルしようとした場合に備えて、オーバートルク機構を含んでもよい。アドオン装置については、内側ハウジングアセンブリとアドオン用量設定部材との間のスプライン係合にオーバートルク機構を組み込んでもよいが、しかしほとんどの場合、アドオン装置のためのこうした機構は、ペン式装置には一般的にはオーバートルク保護機構(例えば、FlexTouch(登録商標)薬剤送達ペンで知られているように)が提供されるので、省くことができる。実際、係止アーム951および用量設定部材の駆動溝882は、ペン式装置オーバートルク機構に対する制限を上回るトルクに耐えるように設計および寸法設定されるべきである。
【0102】
図11Aおよび図11Bは、係止アーム951がそれぞれ、ペン式装置の用量設定部材880の外円周と係合したとき、ペン式装置の用量設定部材の駆動溝882と係合したときを断面図で示す。
【0103】
図12Aおよび図12Bを参照すると、図9Aの構成要素が、初期の非設置および非作動状態に対応する組み立てられた状態で示される。
【0104】
より具体的には、図12Aは、内側アセンブリの内側に配設され、かつ内側ハウジングばねサポート984とセンサハウジングの遠位ガイドフランジ967との間に作用するセンサばね968によってその最も近位の位置に向かって付勢されているセンサモジュール960を示す。ダイヤル係止アーム951は、内側ハウジングスカート部分987の内部へと突出しているのが分かる。解放本体部材990は、用量設定部材の内側フランジ912と解放本体部材のリング部分994との間に作用する解放部材の戻りばね918によって、その最も近位の位置に向かって付勢される。作動ロッド962は、内側ハウジングチューブ部分983の内側に配設され、フランジ部材988によって軸方向に定位置に保持され、軸方向のギャップが作動ロッド近位端963とキャップ部材998の遠位表面との間に形成される。内側ハウジングおよび解放部材アセンブリは、チューブ部分983と解放本体部材990との間のスプライン係合を介して相互に回転方向に係止される(図12Aではわからない)。
【0105】
図13A図13Fを参照して、ペン型の薬剤送達装置800と組み合わせたアドオン用量ロギング装置900の第3の例示的な実施形態の異なる動作状態を説明する。示されるペン式装置は、Novo Nordisk A/S社製のFlexTouch(登録商標)の予め充填された薬剤送達装置の形態である。
【0106】
図13Aは、ペン型の薬剤送達装置800上に設置される前のアドオン用量ロギング装置900を示す。上述のように、薬剤送達装置は、アドオン装置の円筒状の穴に受容されるように適合された「真の」円筒状形態を有する近位連結部分802と、ウィンドウ809と、アドオン装置の捕捉部材905と協働するように適合された係止突起805と、軸方向に向けられた多数の駆動溝882を持つ概して円筒状の外表面881を有する用量設定部材880と、近位に配設された解放部材890とを含む。アドオン装置900は、ペン式装置の円筒状連結部分802を受容するように適合された円筒状の穴902と、係止突起805と係合するように適合された捕捉部材905と、ペン式装置のウィンドウ809と位置合わせして設置されるように配設されたウィンドウ開口部904と、用量設定部材911と、用量解放部材998とを含む。穴902の中へとダイヤル係止アーム951が突出しているのがわかる。図12Aに対応して、アドオン装置は、その初期の非設置かつ非作動状態にある。
【0107】
図13Bでは、アドオン装置900はペン式装置800上に設置されており、捕捉部材905は、係止突起805の遠位側に位置し、また2つのウィンドウ904、809は整列している。図10Aに示す状況に対応して、ダイヤル係止アーム951はまだ駆動溝882と係合していない。
【0108】
図13Cでは、アドオン用量設定部材911、およびこれにより内側アセンブリが回転されており、ダイヤル係止アーム951は駆動溝882と係合しており、用量が設定されている。
【0109】
図13Dでは、アドオン用量解放部材998が部分的に作動して、
作動ロッドの丸みを持つ近位端963と係合し、この状態では、解放本体部材990上の軸方向に配向されたスプライン996の内周アレイは、チューブ部分983のロッキングスプライン986と係脱されており、これにより用量設定部材911を内側アセンブリから回転方向に分離し、したがってセンサモジュール960から回転方向に分離する。アドオン用量解放部材998のさらなる遠位方向移動は、作動ロッド962を遠位方向に移動し始め、これにより最初は、近位に面して中央に配設された作動スイッチ966(図9参照)が作動ロッドによって作動し、これによりセンサモジュールがその動作状態に変化する。
【0110】
図13Eでは、アドオン用量解放部材998がさらに作動されて、センサモジュールスペーサーキャップ964が移動してペン式装置解放部材890と係合している。
【0111】
図13Fでは、アドオン用量解放部材998は完全に作動されており、またセンサモジュールおよびこれによりペン式装置の解放部材890は最も遠位の動作位置へと移動しており、これが排出機構を解放し、それにより薬剤充填済みカートリッジ上に設置された中空針を通して設定用量の薬剤が排出される。図8A図8Dを参照しながら上述したように、排出された用量のサイズの決定が行われてもよい。設定用量が排出されているとき、ユーザはアドオン用量解放部材998上の圧力を解放してもよく、戻りばね968、918によって構成要素がその初期の軸方向位置に戻る。
【0112】
示されるように、互いに対するセンサモジュールおよびリセットチューブによって実行される軸方向移動は、図13A図13Fを参照して説明した実施形態について、図8A図8Dを参照して説明した実施形態と同じであり、そのため、移動の測定中にリセットチューブと一緒に、完全にまたは部分的に軸方向に一緒に移動するセンサモジュールに関しても同じ考慮事項が適用される。
【0113】
図5図7A、および図12Aのアドオン用量ログ装置の機械的概念および作動原理について説明してきたが、センサおよびトレーサーシステム自体をより詳細に説明する。基本的に、センサおよびトレーサーシステムは移動する磁気トレーサー構成要素と、1つ以上の磁気計(例えば3Dコンパスセンサ)を含むセンサシステムとを含む。
【0114】
例示的な実施形態では、磁気トレーサー構成要素は、4つの極を有する多重極磁石(すなわち、四重極磁石)の形態である。図14では、4つの双極子標準磁石661は、リング型のトレーサー構成要素660M内に等距離で配設され、4つの別個の双極子磁石は、90度ごとの四重極オフセットを有する組み合わされた四重極磁石を提供する。実際に、双極子磁石の各々は、同じ方向に向けられた非常に多くの個々の磁性粒子によって形成される。個々の磁石は、同じ平面内に配設されてもよく、または相互に軸方向にオフセットされてもよい。
【0115】
別の方法として、多重極磁石660Mは、図15Aに示すように、個々の強力な磁石の使用、または図15Bに示すように、電磁場の使用を通していずれかによって磁化可能な材料を磁化することによって作り出すことができる。
【0116】
所与のセンサシステムは、図16に図示されるようにトレーサー構成要素660Mに対して配設された、例えば4、5、6、または8個の磁気計766Mを使用してもよい。センサは、例えば、図7Bに示すように同一の平面内に配設されてもよく、または相互に軸方向にオフセットされてもよい。センサがより多く、センサ間の間隔がより小さいと、それゆえにより良好な信号対雑音比を有するより多くのデータを収集することができる。しかしながら、センサがより多いと、より多くのデータ処理が必要となり、そしてより多くの電力が消費される。
【0117】
一部の事例では、取り扱いが必要なのは外部場からの妨害だけではない。上述のような使い捨て装置内の用量排出モーターを駆動するためのトルク提供ばねは、外部磁場を受けたときに磁化される場合があり、それゆえに内部妨害磁場をもたらす。
【0118】
外部妨害はすべてのセンサに多かれ少なかれ等しくかつ同じ方向で影響するので、外部妨害が信号処理アルゴリズムによって大幅に相殺され得る場合、磁化されたトルクばねは、トレーサー磁石と同じようにセンサに影響を与え、したがって測定値をオフセットし、誤差を発生させる可能性がより高い。
【0119】
しかしながら、図17Aおよび図17Bから分かるように、双極子トレーサー磁石の代わりに四重極トレーサー磁石を使用すると、トレーサー磁石の位置を決定する上で誤差を著しく低減する。
【0120】
より具体的には、図17Aおよび図17Bは、磁化の4つの異なるレベル(TS1~TS4)における磁化されたトルクばねの、投与設定(DS)および外部投薬(D)の両方に対する影響のシミュレーションを示す。図17Aは、4個のセンサセットアップと組み合わせた双極子トレーサー磁石の計算された角度測定誤差(すなわち、計算された角度と真の角度との差)を図示し、図17Bは、8個のセンサセットアップと組み合わせた四重極トレーサー磁石の計算された角度測定誤差を図示する。外部投薬中はセンサがトレーサー磁石により近いため(例えば、図8Aおよび図8Cを参照)、角度誤差は外部投薬中の方がわずかにより小さい。つまり、上述の実施形態では、センサ測定は外部投薬中にのみ行われる。四重極トレーサー磁石における個々の極間のより小さい円周方向の間隔は、センサシステムへのより高い入力率を提供し、これは4個センサの代わりに8個のセンサによってより正確に捕捉することができるので、四重極トレーサー磁石については8個のセンサが使用されたが、しかし4個のセンサセットアップと組み合わせた四重極トレーサー磁石に対しても同等の結果が予期されることになる。示されるように、四重極トレーサー磁石の使用は、角度誤差を約4~8度から約0.5~1度へと、およそ8倍低減した。
【0121】
示されたFlexTouch(登録商標)薬剤送達装置では、リセットチューブ660、そしてそれゆえにトレーサー磁石660Mは、排出されるインスリンの各単位に対して15度回転する。それゆえに、4~8度の範囲で起こる可能性がある角度誤差は、排出された投与量の誤った決定をもたらす場合がある。
【0122】
それゆえに、四重極トレーサー磁石は、外部場からだけでなく内部場からの妨害に対するシステムの感受性も低減する。これは多重極トレーサー磁石の使用の重要な側面であるが、その理由は、鉄含有金属シートを使用することによる外部ソースの従来の磁気遮蔽を、外部場の影響を減少するために使用する場合があるが、トレーサー磁石と内部妨害磁場との間に適合することはできない場合があるからである。さらに、磁気シールドを組み込むことは場所を取り、追加費用が発生することになる。
【0123】
別の方法として磁化可能でない材料のばねを使用することによって、これを軽減できる場合があるが、しかし今日市販されている現在のばね駆動ペンは、磁化可能なトルクばねを備えており、ばねの他の要件に起因して取り換えは実現可能ではない場合がある。
【0124】
回転する四重極トレーサー磁石を組み込んだセンサアセンブリに対する構造セットアップについて説明してきたが、以下ではこうしたアセンブリに対して実際の移動を決定する例示的な方法が説明される。
【0125】
四重極磁石からの信号は定期的であり、一周期に磁石の1回の完全回転にわたって2回の信号がある。これは、接線方向、半径方向、および軸方向の磁場レベルが描写される図18から見ることができる。
【0126】
信号の周波数成分をマッピングすると、磁石からのほとんどの信号が周波数の2つの信号に適合することが分かる(図19参照)。
【0127】
四重極場で使用する用量サイズを決定するには、四重極磁石の静的開始角度および終了角を決定する必要がある。磁石は用量が送達される前および後は静的であるため、磁場は経時的にサンプリングされる代わりに、空間にわたってサンプリングされる。例示的な実施形態では、測定システムは、円形状のレイアウトおよび等間隔を用いるN=7個のセンサで構成され、図20を参照すると、四重極磁石660Mに対するセンサ766Mの配置を示す。
【0128】
磁石の向きを決定するために、離散フーリエ変換(DFT)がセンサで測定された磁場について計算された。
【0129】
ここでBjkは、k番目のセンサのj番目のチャネルの磁場であり、j=1は接線方向磁場であり、j=2は半径方向であり、またj=3は軸方向であり、
は仮想単位であり、そして
は、j番目のチャネルの信号のn番目の周波数成分である。
【0130】
上述のように、四重極磁石からの信号は一周期n=2個の信号であり、したがって
の位相を見ることにより、センサボードに対する磁石の向きを決定することができる。
【0131】
異なる周波数でのサインおよびコサインのサンプルは直交するので、例えば、周期n=0、1、または3である信号に対するあらゆる妨害は、フーリエ変換によって除去される。
【0132】
これは、外部妨害および内部妨害の両方に関連する。自動用量ペン式注射器内の内部構成要素は、用量機構を駆動するための金属ねじりばねである。これが磁化されている場合、ばね磁場は主に、センサ位置で周期1信号のように見える。センサの付近にある双極子磁石のような外部妨害もまた、周期0または1の信号を有する傾向にある。DFTを使用して、その他の周波数からの妨害を除去し、かつ周波数2信号からのみ磁石の向きを決定することが可能である。
【0133】
したがって、四重極磁石とDFTとの組み合わせは、その周期1信号が共通妨害の周波数と類似している双極子磁石と比較して優れている。
【0134】
DFTベースのアルゴリズムを使用すると、ルックアップベースのアルゴリズムと比較して、任意の数のセンサを選ぶより大きい自由度が与えられる。選ばれるセンサの数は、ナイキストの標本化定理により、少なくとも5であることが好ましい。それ以外に、エイリアシング効果を防止することを目的として信号の特定の周波数を除去するために、センサの数を自由かつ積極的に使用することができる。
【0135】
上記の例示的な実施形態を参照して、センサモジュールの初期移動はセンサスイッチを起動し、これは次にセンサ電子機器を起動し、そして磁気計からのデータのサンプリングを開始させ、これは排出機構の解放前に磁石の回転方向の開始位置を決定することを可能にすることを説明してきた。リセットチューブの回転が停止したことが検出されたとき、例えば、設定用量を完全に排出したとき、またはユーザによって外部投薬が一時停止されたとき、回転終了位置が決定され、これは排出された用量のサイズを決定することを可能にする。別の方法として、回転終了位置は、センサモジュールがその初期位置に戻ったことはセンサスイッチが検出したときに決定されてもよい。
【0136】
サンプリング周波数は、回転移動を確実に検出し、可能な限り電力効率が良いように選択されなければならない。しかしながら、ばね駆動装置における外部投薬中の回転速度の分析は、リセットチューブの回転速度が一定ではないことを示した。特に、排出イベントの開始において、リセットチューブの回転速度が非常に高い場合があることが見出された。高速回転速度の2つの理由が特定されている。第1の理由は、カートリッジゴムピストンが、外部投薬開始前に非圧縮状態にあることである。駆動ばね内のエネルギーが突然解放されると、ゴムピストンは、カートリッジ内で遠位に動き始める前に圧縮され始める。カートリッジに十分な圧力が蓄積すると、ピストンが動き始め、カートリッジの内容物が針から流れ出始める。プランジャーの圧縮は、非常に速く起こるが、圧縮中に速度が低下する。
【0137】
さらなる理由は、ピストンロッドとカートリッジピストンとの間にエアギャップが存在する場合である。これは、例えば、ユーザが使用後に薬剤送達装置上に針を放置した場合、またはそれがサイクル温度に起因する場合などに発生する場合がある。ゴムピストンからの反力がないため、ピストンロッドがピストンに当たった後、上述のピストンの圧縮が開始されるまで、排出機構は非常に速く回転する。
【0138】
排出用量体積を推定するために構成要素の回転を検出する場合、すべての回転を正確に計数することが重要である。そうでない場合、これは、より少ない用量を推定することにつながる可能性があり、これにより、ユーザは、別の用量を摂取し、重度の過剰摂取を負うことを引き起こす可能性がある。
【0139】
アクティブセンサを使用して、例えば、磁界の変化を測定することによって、構成要素の位置をサンプリングする場合、高い回転速度は、すべての回転を見るために、高いサンプリング周波数を必要とする。しかしながら、高いサンプリング周波数を使用すると、非常に多くの電力が消費され得、保存する必要のある大量のデータを収集することができる。これにより、高電力使用およびメモリ不足の問題が発生する可能性がある。これは特に、代替不可能なエネルギー源が提供されているメモリデバイスにとって問題である。対照的に、周波数が低すぎる場合、1つ以上の信号サイクルが検出されない可能性がある。2つの状況が、それぞれ図23Aおよび図23Bに示される。
【0140】
この問題に対処するために、動的サンプリングスキームは、(i)システム挙動に関する知識、および(ii)測定された構成要素の実際の回転速度の検知に基づいて使用され得る。システムは、以下のように動作することが予期され得る。排出機構の高速回転の期間で、その後、正常/中程度の回転速度の期間で開始し、設定された用量が完全に排出されたときに、または排出がユーザによって停止されたときに、回転のない状態で終了する。したがって、回転速度が変化して、高いサンプリング周波数で開始する際にモードを適合させる適応サンプリングスキームを実施することができる。
【0141】
上述の実施形態に対応する例示的な使用シナリオを、図24に示す。より具体的には、排出される薬剤の投与量を設定した後、ユーザは、アドオン解放ボタンを押して、センサモジュールの連続的なの軸移動がセンサスイッチをトリガーし、サンプリング周波数を最初に「高」に設定した状態で、連続サンプリングおよび回転速度の評価を開始する。センサモジュールはその後、ペン解放ボタンと係合し、ペン排出機構を解放する。プランジャーの圧縮および/またはピストンとピストンロッドとの間のエアギャップのため、排出機構は、初期段階で、より短いまたはより長い期間にわたって高速で回転し得る。排出機構がその後減速すると、回転速度が第1の閾値(閾値)よりも低いことが検出され得、これにより、サンプル周波数を「低」に調整することができる。最終的に、回転が停止していること、すなわち、回転速度が第2の閾値(閾値)よりも低いことが検知されると、電力を節約するためにサンプリングは停止する。他の実施形態では、2つより多くの閾値を使用してもよい。
【0142】
実際に、他の適応サンプリングスキームを利用してもよい。例えば、サンプリング周波数は、所定の範囲の回転速度に対して回転速度とともに連続的に変化し得る。
【0143】
上記の開示では、外部妨害磁場とペン式装置のトルクばねからの内部妨害磁場との両方の問題は、多数の磁気計を含むセンサアレイと組み合わせた四重極トレーサー磁石の使用によって対処された。以下において、この問題は異なるアプローチによって対処され、これは上述の四重極設計の代替として、または上述の四重極設計に加えて使用されてもよい。
【0144】
磁気システムを外側干渉から遮蔽するために磁気シールドを使用することは一般的に知られており、使用される。通常、シールドは磁場を封じ込めて磁場がその他のシステムに影響を与えることを防止するためのバリアとして、またはシステムを封じ込めて外部の(遮蔽されていない)磁場によって影響を受けないように保護するバリアとして使用される。妨害磁場をもたらし得るシステムの内部構成要素は通常、システムの遮蔽された容積の外側に設置される。実際に、磁化可能な材料から製造された駆動ばねを含む薬剤送達装置内にシールドを組み込むことが可能である場合があるが、しかしこれはペン式装置の主要な再設計が必要となる場合があり、これは費用効果の高いオプションではない場合がある。
【0145】
それゆえに、解決すべき技術的問題は、磁気計に基づいて捕捉装置またはアセンブリの磁気センサの測定値を妨害する内部磁場を防止/低減する磁気シールドを提供することである。さらに、こうしたシールドは、「通常の」外部磁場からの妨害を防止/低減するためにも機能する場合がある。
【0146】
提示される解決策は、センサシステムを外部磁場から遮蔽するだけでなく、トルクばねによってもたらさせるあらゆる意図しない内部磁場もシールドに向かってそらし、かつトレーサー磁石の磁場の妨害を低減するために、ミューメタルのシールドを導入することである。トルクばねからの妨害磁場の強度を低減することによって、必要とされる精度および冗長性を得るためのより少ないセンサの使用、ひいてはより少ない信号処理要件が可能になる場合があり、これによりコストおよび電力消費量の両方を低減することが可能になる場合がある。
【0147】
ミューメタルは、非常に高い透磁率を有するニッケル鉄軟磁性合金である。これはいくつかの組成を有し、およそ80%のニッケル、15%数パーセントのモリブデンを含み、またいくつかの組成では少量の銅およびクロムを含む。ミューメタルは非常に延性があり、かつ加工可能であり、磁気シールドのために必要な薄いシートへと簡単に形成することができる。しかしながら、ミューメタル物品は、最終形態に加工された後に熱処理を必要とする。
【0148】
ミューメタルで作製された磁気シールドは、遮蔽された区域の周りに封鎖する代わりに磁力線のための経路を提供することによって機能する。ミューメタルは、ずっと低い比透磁性を有する空気を通るより「簡単な」経路のようなものを提供し、それゆえに磁場をわきにそらす。しかしながら、ミューメタルは非常に低い飽和レベルを有し、したがってより強力な磁場に対して遮蔽するのに好適でない。
【0149】
図21は、薬剤送達装置トルク駆動ばね655が示されているが、図8Aに示すアセンブリに本質的に対応するアセンブリを示しており、アドオン用量ロギング装置1000には、センサの軸方向長さおよびトレーサー磁石容積、ならびにトルク駆動ばね655の近位部分を覆う、ミューメタルで作製された円筒状のシールド1020が提供されている。円筒状のミューメタルシールドは本質的に、磁化されているトルクばねからの磁力線を吸収し、かつそれらを円周状のシールドに向かってガイドし、これにより軸方向、それによりセンサに向かうトルクばねの妨害磁場の程度を制限する。同時に、円筒状のシールドは、円筒容積の内部に配設されたセンサ電子機器上の外部磁場EMFの影響を低減させるのに役立つ。
【0150】
円筒状のミューメタルシールド1020は基本的にトレーサー磁石660Mからの磁力線も吸収するが、(i)トルク駆動ばね655はトレーサー磁石よりも磁気センサ1066Mから軸方向でより遠くに配設される、また(ii)トルクばねはトレーサー磁石よりもシールドに半径方向でより近くに配設されるので、これが測定性能に与える影響の程度はより小さい。このようにして、センサシステムは、磁場の小さい部分のみがシールドによって吸収されるので、トレーサー磁石からの磁場を測定することができる一方で、上述の幾何学的特性は、トルクばねからの磁場がシールドによって高度に吸収されることを可能にし、それゆえに、センサへの影響の程度がより小さくなる。
【0151】
図22は、飽和することなくより強力な磁場を取り扱うことができる鋼の外側シールド1121が適用されて、外部磁場に対する経路を提供する、アドオン用量ロギング装置1100の実施形態を示す。ミューメタルによる内側シールド1122は、強力な外部磁場によって飽和されることなく、トルクばねによってもたらされた比較的弱い内部磁場に経路を提供するように配設される。
【0152】
例示的実施形態の上記の説明では、異なる構成要素について記載された機能を提供する異なる構造および手段を、本発明の概念が当業者にとって明らかである程度まで、説明してきた。異なる構成要素に対する詳細な構築および仕様は、本明細書に記載されるラインに沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象とみなされる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図24