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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ホウ素を含む変性イオン液体
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/04 20060101AFI20240418BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240418BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240418BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20240418BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240418BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240418BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20240418BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20240418BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20240418BHJP
   H01G 11/14 20130101ALN20240418BHJP
【FI】
C07F5/04 A CSP
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/054
H01M10/052
H01M10/0567
H01G11/62
H01G11/60
H01G11/64
H01G11/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021536164
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 US2019067910
(87)【国際公開番号】W WO2020132479
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】62/783,380
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518343040
【氏名又は名称】ノームズ テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モガンティー、シュリヤ、エス.
(72)【発明者】
【氏名】アッバッテ、ルイジ
(72)【発明者】
【氏名】トーレス、ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、ケビン
(72)【発明者】
【氏名】スティール、デイビッド
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-160676(JP,A)
【文献】国際公開第2005/063773(WO,A1)
【文献】特開平02-003030(JP,A)
【文献】Matsumi, Noriyoshi et al.,Molten salts bearing anion receptor,Chemical Communications,2004年,(2004), (24),2852-2853
【文献】Matsumi, Noriyoshi et al.,Polymerized Ionic Liquids via Hydroboration Polymerization as Single Ion Conductive Polymer Electrolytes,Macromolecules,2006年,(2006), 39(20), 6924-6927
【文献】De Giorgio et al.,Effect of lithium ions on oxygen reduction in ionic liquid-based electrolytes,Electrochemistry Communications,2011年,(2011), 13(10), 1090-1093
【文献】Zhu, Yinghuai et al.,Ionic Liquids: Recent Advances and Applications in Boron Chemistry,European Journal of Inorganic Chemistry,2017年,(2017), 2017(38-39), 4369-4377
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
H01M
H01G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハリドである陰イオンと、
次式によりホウ素部分に結合した陽イオンと、を含む、イオン液体化合物であって、
【化1】

式中、
CATが、エチルメチルピロリジニウムであり、
及びR がC り、
、X、及びXが、独立して、O、S、又はCである、
上記イオン液体化合物。
【請求項2】
電気エネルギー貯蔵装置の電解質であって、
a)非プロトン性有機溶媒系と、
b)金属塩と、
c)添加剤と、
d)請求項1に記載のイオン液体化合物と、を含む、
上記電気エネルギー貯蔵装置の電解質。
【請求項3】
非プロトン性有機溶媒が、鎖状又は環状カルボナート、カルボン酸エステル、ニトリット、エーテル、スルホン、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グリム、クラウンエーテル、シロキサン、リン酸エステル、ホスファート、ホスフィット、モノ又はポリホスファゼンあるいはそれらの混合物を含む、請求項に記載の電解質。
【請求項4】
金属塩の陽イオンが、アルミニウム又はマグネシウムを含む、請求項に記載の電解質。
【請求項5】
金属塩の陽イオンが、アルカリ金属塩を含む、請求項に記載の電解質。
【請求項6】
アルカリ金属塩の陽イオンが、リチウム又はナトリウムを含む、請求項に記載の電解質。
【請求項7】
添加剤が、硫黄含有化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物、窒素含有化合物、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含有する化合物、カルボン酸無水物又はそれらの混合物を含む、請求項に記載の電解質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年12月21日に出願された米国仮特許出願第62/783,380号の出願日の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、陽イオンがホウ素部分を含むイオン液体、及びイオン液体を含む電気化学セル用の電解質に関する。
【背景技術】
【0003】
室温イオン液体(IL)の合成及び電気化学分析における最近の進歩は、次世代リチウムイオン電池用の電解質としてのこの独特のクラスの材料の有望性を確立している。ILは、100℃未満の融点を有する有機塩であり、一般に嵩高い陽イオン及び無機陰イオンからなる。陽イオンサイズが大きいと、電荷の非局在化及びスクリーニングが可能になり、その結果、格子エネルギーが減少し、それによって融点又はガラス転移温度が低下する。ILは、無視できる蒸気圧、非燃焼性、良好な室温イオン伝導性、広い電気化学窓、並びに好ましい化学的及び熱的安定性などの固有の物理化学的特性を有する。これらの特性は、リチウム電池用のIL系電解質を提供するために望ましい。
【0004】
しかし、乱用条件下又は更には通常条件下でのリチウムイオン電池の可燃性などの安全上の課題が依然として存在する。Yoonらによる米国特許第8,304,118号は、ホウ素系非水溶媒を含有する電解質組成物の使用を教示しているが、イオン液体、又はホウ素を含有する部分に共有結合したイオン液体の使用については言及していない。したがって、難燃性を有する新規なイオン液体をリチウムイオン電池に組み込む必要がある。また、Liイオン陰極からより多くの容量を引き出すために動作電圧を上げる必要がある。しかし、電流発生電解質は4.2Vを超えると安定しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、陰イオン及び陽イオンを含むイオン液体に関し、陽イオンは少なくとも1つのホウ素部分を有する。
【0006】
本開示の一態様によれば、蓄電装置で使用するための電解質が提供され、電解質は、非プロトン性有機溶媒、金属塩、添加剤、及び少なくとも1つのホウ素部分を含むイオン液体化合物を含み、金属塩の陽イオンは、アルミニウム又はマグネシウム、あるいはリチウム又はナトリウムなどのアルカリ金属塩である。
【0007】
本開示の別の態様によれば、電気エネルギー貯蔵装置内の電解質が提供され、電解質は、非プロトン性有機溶媒、金属塩、添加剤、及び少なくとも1つのホウ素部分を含むイオン液体化合物を含み、有機溶媒は、鎖式又は環状カルボナート、カルボン酸エステル、ニトリット、エーテル、スルホン、スルホキシド、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グリム、クラウンエーテル、シロキサン、リン酸エステル、ホスファート、ホスフィット、モノ又はポリホスファゼン、あるいはそれらの混合物であり、金属塩の陽イオンは、アルミニウム又はマグネシウム、あるいはリチウム又はナトリウムなどのアルカリ金属塩である。
【0008】
本開示の別の態様によれば、電気エネルギー貯蔵装置内の電解質が提供され、電解質は、非プロトン性有機溶媒、金属塩、添加剤、及び少なくとも1つのリン部分を含むイオン液体化合物を含み、金属塩の陽イオンは、アルミニウム又はマグネシウム、あるいはリチウム又はナトリウムなどのアルカリ金属塩である。
【0009】
本開示の別の態様によれば、電気エネルギー貯蔵装置内の電解質が提供され、電解質は、非プロトン性有機溶媒、金属塩、添加剤、及び少なくとも1つのリン部分を含むイオン液体化合物を含み、添加剤は、硫黄含有化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含有する化合物、カルボン酸無水物又はそれらの混合物を含み、金属塩の陽イオンは、アルミニウム又はマグネシウム、あるいはリチウム又はナトリウムなどのアルカリ金属塩である。
【0010】
本開示のこれらの態様及び他の態様は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を検討することによって明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、少なくとも1つの陽イオン及び少なくとも1つの陰イオンを含み、少なくとも1つの陽イオンが少なくとも1つのホウ素部分に共有結合しているイオン液体化合物に関する。
【0012】
一実施形態では、電気エネルギー貯蔵装置の電解質は、a)非プロトン性有機溶媒系、b)金属塩、c)添加剤、d)少なくとも1つの陽イオン及び少なくとも1つの陰イオンを含むイオン液体化合物を含み、少なくとも1つの陽イオンは、少なくとも1つのホウ素部分に共有結合しており、金属塩の陽イオンは、アルミニウム又はマグネシウム、あるいはリチウム又はナトリウムなどのアルカリ金属塩である。
【0013】
一実施形態では、イオン液体化合物は陰イオン、及び式に従ってホウ素部分に結合した陽イオンを含み、
【化1】

式中、CATは、ピロリジニウム、ピペルジニウム、アゼパニウム、オニウム、スルホニウム、ホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジン、あるいは窒素、酸素、ケイ素又は硫黄を含む環員として1~3個のヘテロ原子を有する5又は6員の複素環であり、R及びRは、独立して、CAT、メチル、又はC~Cアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、アルキニル、アルキルシロキシ、フェニル、ベンジル、シリル、チオエーテル、スルホキシド、アゾ、アミノ又はシラン基であり、その中の炭素原子又は水素原子のいずれかは、ハリド、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、アルキニル、アルキルシロキシ、フェニル、ベンジル、シリル、チオエーテル、スルホキシド、アゾ、アミノ又はシランで更に置換されていてもよく、X、X、及びXは、独立して、(a)メチレン、C~Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、エステル、カルボニレン、フェニル、チオエーテル、スルホキシド、アゾ又はアリール基を含むリンカーであって、その中の炭素原子又は水素原子のいずれかは、ハリドで更に置換されていてもよいリンカー、(b)O、S、N、又はC、あるいは(c)リンカーに結合したO、S、N、又はCである。
【0014】
本開示による適切な陰イオンには、ハリド(例えば、Cl、Br)、ニトラート(例えば、NO)、ホスファート(例えば、PF、TFOP)、イミド(例えば、TFSI、BETI)、ボラート(例えば、BOB、BF)、アルミナート、アルセニド、シアニド、チオシアナート、ニトリット、ベンゾアート、カルボナート、クロラート、クロリット、クロマート、スルファート、スルフィット、シリカート、チオスルファート、カルコゲニド、ニクトゲニド、オキサラート、アセタート、ホルマート、又はヒドロキシドが含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
本開示は、ホウ素陽イオンを合成する方法、及び電気化学セル用のイオン液体中でのそのような官能化イオン液体の使用を更に含む。これらの化合物は、より大きな熱安定性を電解質に与える。
【0016】
いくつかの実施形態では、電解質は、イオン液体に加えてリチウム塩を含む。例えば、Li[CFCO]、Li[CCO]、Li[ClO]、Li[BF]、Li[AsF]、Li[PF]、Li[PF(C]、Li[PF]、Li[CFSO]、Li[N(CPSO]、Li[C(CFSO]、Li[N(SO]、リチウムアルキルフルオロホスファート、Li[B(C]、Li[BF]、Li[B1212-j]、Li[B1010-j’j’]、又はZが各出現時に独立してハロゲンであり、jが0~12の整数であり、j’が1~10の整数である、その任意の2種以上の混合物を含む様々なリチウム塩を使用することができる。
【0017】
リチウムイオン電池用製剤などの本電解質のいくつかの用途では、非プロトン性溶媒を本イオン液体と組み合わせて、電解質の粘度を低下させ、導電性を増加させる。最も適切な非プロトン性溶媒は、交換可能なプロトンを欠き、環状炭酸エステル、直鎖状炭酸エステル、リン酸エステル、オリゴエーテル置換シロキサン/シラン、環状エーテル、鎖状エーテル、ラクトン化合物、鎖状エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン化合物、シロキサン、リン酸エステル、ホスファート、ホスフィット、モノ又はポリホスファゼンなどを含む。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。電解質系を形成するための非プロトン性溶媒又は担体の例としては、ジメチルカルボナート、エチルカルボナート、ジエチルカルボナート、メチルプロピルカルボナート、エチルプロピルカルボナート、ジプロピルカルボナート、ビス(トリフルオロエチル)カルボナート、ビス(ペンタフルオロプロピル)カルボナート、トリフルオロエチルメチルカルボナート、ペンタフルオロエチルメチルカルボナート、ヘプタフルオロプロピルメチルカルボナート、ペルフルオロブチルメチルカルボナート、トリフルオロエチルエチルカルボナート、ペンタフルオロエチルエチルカルボナート、ヘプタフルオロプロピルエチルカルボナート、ペルフルオロブチルエチルカルボナートなど、フッ素化オリゴマー、メチルプロピオナート、エチルプロピオナート、ブチルプロピオナート、ジメトキシエタン、トリグリム、ジメチルビニレンカルボナート、テトラエチレングリコール、ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、トリフェニルホスファート、トリブチルホスファート、ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン、2-エトキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-1,3,5,2-5,4-5,6-5トリアザトリホスフィニン、トリフェニルホスフィット、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、エチルビニルスルホン、アリルメチルスルホン、ジビニルスルホン、フルオロフィネルメチルスルホン及びγ-ブチロラクトンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
いくつかの実施形態では、電解質は、電極を劣化から保護するための添加剤を更に含む。したがって、本技術の電解質は、負極の表面上で還元又は重合して、負極の表面上に不動態化膜を形成する添加剤を含んでもよい。同様に、電解質は、正極の表面上で酸化又は重合して、正極の表面上に不動態化膜を形成することができる添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、本技術の電解質は、2種の添加剤の混合物を更に含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、添加剤は、少なくとも1つの酸素原子及び少なくとも1つのアリール、アルケニル又はアルキニル基を含む置換又は非置換の直鎖、分岐又は環状炭化水素である。このような添加剤から形成される不動態化膜はまた、添加剤が少なくとも1つの酸素原子を含む置換アリール化合物あるいは置換又は非置換ヘテロアリール化合物から形成されてもよい。あるいは、2種の添加剤を組み合わせて使用してもよい。いくつかのそのような実施形態では、1つのイオン及び他の添加剤は、アノードでの金属イオンの還元を防止又は低減するためにアノード表面を不動態化するために選択的であってもよい。
【0020】
代表的な添加剤としては、グリオキサールビス(ジアリルアセタール)、テトラ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、1,2-ジビニルフロアート、1,3-ブタジエンカルボナート、1-ビニルアゼチジン-2-オン、1-ビニルアジリジン-2-オン、1-ビニルピペリジン-2-オン、1ビニルピロリジン-2-オン、2,4-ジビニル-1,3-ジオキサン、2-アミノ-3-ビニルシクロヘキサノン、2-アミノ-3-ビニルシクロプロパノン、2アミノ-4-ビニルシクロブタノン、2-アミノ-5-ビニルシクロペンタノン、2-アリールオキシ-シクロプロパノン、2-ビニル-[1,2]オキサゼチジン、2ビニルアミノシクロヘキサノール、2-ビニルアミノシクロプロパノン、2-ビニルオキセタン、2-ビニルオキシ-シクロプロパノン、3-(N-ビニルアミノ)シクロヘキサノン、3,5-ジビニルフロアート、3-ビニルアゼチジン-2-オン、3ビニルアジリジン-2-オン、3-ビニルシクロブタノン、3-ビニルシクロペンタノン、3-ビニルオキサジリジン、3-ビニルオキセタン、3-ビニルピロリジン-2-オン、2-ビニル-1,3-ジオキソラン、アクロレインジエチルアセタール、アクロレインジメチルアセタール、4,4-ジビニル-3-ジオキソラン-2-オン、4-ビニルテトラヒドロピラン、5-ビニルピペリジン-3-オン、アリルグリシジルエーテル、ブタジエンモノオキシド、ブチル-ビニル-エーテル、ジヒドロピラン-3-オン、ジビニルブチルカルボナート、ジビニルカルボナート、ジビニルクロトナート、ジビニルエーテル、ジビニルエチレンカルボナート、ジビニルエチレンシリカート、ジビニルエチレンスルファート、ジビニルエチレンスルフィット、ジビニルメトキシピラジン、ジビニルメチルホスファート、ジビニルプロピレンカルボナート、エチルホスファート、メトキシ-o-テルフェニル、メチルホスファート、オキセタン-2-イルビニルアミン、オキシラニルビニルアミン、ビニルカルボナート、ビニルクロトナート、ビニルシクロペンタノン、ビニルエチル-2-フロアート、ビニルエチレンカルボナート、ビニルエチレンシリカート、ビニルエチレンスルファート、ビニルエチレンスルフィット、ビニルメタクリラート、ビニルホスファート、ビニル-2-フロアート、ビニルシクロプロパノン、ビニルエチレンオキシド、β-ビニル-γ-ブチロラクトン又はそれらの任意の2つ以上の混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、添加剤は、F、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、メトキシ、アリルオキシ基又はそれらの組み合わせで置換されたシクロトリホスファゼンであってもよい。例えば、添加剤は、(ジビニル)-(メトキシ)(トリフルオロ)シクロトリホスファゼン、(トリビニル)(ジフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン、(ビニル)(メトキシ)(テトラフルオロ)シクロトリホスファゼン、(アリールオキシ)(テトラフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン又は(ジアリールオキシ)(トリフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン化合物あるいは2つ以上のそのような化合物の混合物であってもよい。いくつかの実施形態では、添加剤は、ビニルエチレンカルボナート、ビニルカルボナート、又は1,2-ジフェニルエーテル、あるいは任意の2つ以上のそのような化合物の混合物である。
【0021】
他の代表的な添加剤としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピロリル、オキサゾリル、フラニル、インドリル、カルバゾリル、イミダゾリル、チオフェニル、フッ素化カルボナート、スルトン、スルフィド、無水物、シラン、シロキシ、ホスファート又はホスフィット基を有する化合物が挙げられる。例えば、添加剤は、フェニルトリフルオロメチルスルフィド、フルオロエチレンカルボナート、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、1-プロペン1,3-スルトン、1,3-プロパンスルトン、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-[(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メチル]、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-[[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エトキシ]メチル]-、メチル2,2,2-トリフルオロエチルカルボナート、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、オクタメチルトリシロキサン、メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、トリス(1H.1H-ヘプタフルオロブチル)ホスファート、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(3,3,3-トリフルオロプロピルジメチルシロキシ)シラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、トリス(トリメチルシリル)ボラート、トリプロピルホスファート、ビス(トリメチルシリルメチル)ベンジルアミン、フェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,3-ビス(トリフルオロプロピル)テトラメチルジシロキサン、トリフェニルホスファート、トリス(トリメチルシリル)ホスファート、トリス(1H.1H,5H-オクタフルオロペンチル)ホスファート、トリフェニルホスフィット、トリラウリルトリチオホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィット、トリ-p-トリルホスフィット、トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)ホスファート、無水コハク酸、1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラヒドロフラン、トリプロピルトリチオホスファート、アリールオキシピロール、アリールオキシエチレンスルファート、アリールオキシピラジン、アリールオキシ-カルバゾールトリビニルホスファート、アリールオキシ-エチル-2-フロアート、アリールオキシ-o-テルフェニル、アリールオキシ-ピリダジン、ブチル-アリールオキシ-エーテル、ジビニルジフェニルエーテル、(テトラヒドロフラン-2-イル)-ビニルアミン、ジビニルメトキシビピリジン、メトキシ-4-ビニルビフェニル、ビニルメトキシカルバゾール、ビニルメトキシピペリジン、ビニルメトキシピラジン、ビニルメチルカルボナート-アリルアニソール、ビニルピリダジン、1-ジビニルイミダゾール、3-ビニルテトラヒドロフラン、ジビニルフラン、ジビニルメトキシフラン、ジビニルピラジン、ビニルメトキシイミダゾール、ビニルメトキシピロール、ビニル-テトラヒドロフラン、2,4-ジビニルイソオキサゾール、3,4ジビニル-1-メチルピロール、アリールオキシオキセタン、アリールオキシ-フェニルカルボナート、アリールオキシ-ピペリジン、アリールオキシ-テトラヒドロフラン、2-アリール-シクロプロパノン、2-ジアリールオキシ-フロアート、4-アリルアニソール、アリールオキシ-カルバゾール、アリールオキシ-2-フロアート、アリールオキシ-クロトナート、アリールオキシ-シクロブタン、アリールオキシ-シクロペンタノン、アリールオキシ-シクロプロパノン、アリールオキシ-シクロホスファゼン、アリールオキシ-エチレンシリカート、アリールオキシ-エチレンスルファート、アリールオキシ-エチレンスルフィット、アリールオキシ-イミダゾール、アリールオキシメタクリラート、アリールオキシホスファート、アリールオキシピロール、アリールオキシキノリン、ジアリールオキシシクロトリホスファゼン、ジアリールオキシエチレンカルボナート、ジアリールオキシフラン、ジアリールオキシメチルホスファート、ジアリールオキシ-ブチルカルボナート、ジアリールオキシ-クロトナート、ジアリールオキシ-ジフェニルエーテル、ジアリールオキシ-エチルシリカート、ジアリールオキシ-エチレンシリカート、ジアリールオキシ-エチレンスルファート、ジアリールオキシ-エチレンスルフィット、ジアリールオキシ-フェニルカルボナート、ジアリールオキシ-プロピレンカルボナート、ジフェニルカルボナート、ジフェニルジアリールオキシシリカート、ジフェニルジビニルシリカート、ジフェニルエーテル、ジフェニルシリカート、ジビニルメトキシジフェニルエーテル、ジビニルフェニルカルボナート、メトキシカルバゾール、又は2,4-ジメチル-6-ヒドロキシ-ピリミジン、ビニルメトキシキノリン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ピリジン、ビニルピリジン、インドール、ビニルインドール、トリエタノールアミン、1,3-ジメチルブタジエン、ブタジエン、ビニルエチレンカルボナート、ビニルカルボナート、イミダゾール、ビニルイミダゾール、ピペリジン、ビニルピペリジン、ピリミジン、ビニルピリミジン、ピラジン、ビニルピラジン、イソキノリン、ビニルイソキノリン、キノキサリン、ビニルキノキサリン、ビフェニル、1,2-ジフェニルエーテル、1,2-ジフェニルエタン、o-テルフェニル、N-メチルピロール、ナフタレン、あるいは任意の2つ以上のそのような化合物の混合物であってもよい。
【0022】
いくつかの他の実施形態では、本技術の電解質は、非プロトン性ゲルポリマー担体/溶媒を含む。適切なゲルポリマー担体/溶媒としては、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファジン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリエーテルグラフトポリシロキサン、前述のものの誘導体、前述のもののコポリマー、前述のものの架橋構造及び網目構造、前述のもののブレンドなどが挙げられ、これに適切なイオン性電解質塩が添加される。他のゲルポリマー担体/溶媒としては、ポリプロピレンオキシド、ポリシロキサン、スルホン化ポリイミド、過フッ素化膜(ナフィオン樹脂)、ジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-ビス-(メチルアクリラート)、ポリエチレングリコール-ビス(メチルメタクリラート)、前述のものの誘導体、前述のもののコポリマー並びに前述のものの架橋及び網目構造から誘導されるポリマーマトリックスから調製されるものが挙げられる。
【0023】
機能性イオン液体及び塩含有電解液は、導電性及び有機溶媒への溶解性が高いため、電気化学デバイス用の電解液としての使用に適している。電気化学デバイスの例は、電気二重層コンデンサ、二次電池、顔料増感剤型の太陽電池、エレクトロクロミック素子及びコンデンサであり、このリストは限定的ではない。電気化学デバイスとして特に適しているのは、電気二重層コンデンサ及び二次電池、例えばリチウムイオン電池である。
【0024】
更に別の態様では、陰極、陽極、及び本明細書に記載のイオン液体を含む電解質を含む電気化学デバイスが提供される。一実施形態では、電気化学デバイスは、リチウム二次電池である。いくつかの実施形態では、二次電池は、リチウム電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、ナトリウムイオン電池又はマグネシウム電池である。いくつかの実施形態では、電気化学デバイスは、コンデンサなどの電気化学セルである。いくつかの実施形態では、コンデンサは非対称コンデンサ又は超コンデンサである。いくつかの実施形態では、電気化学セルは一次電池である。いくつかの実施形態では、一次電池は、リチウム/MnO電池又はLi/ポリ(一フッ化炭素)電池である。いくつかの実施形態では、電気化学セルは太陽電池である。
【0025】
適切なカソードとしては、リチウム金属酸化物、スピネル、橄欖石、炭素被覆橄欖石、LiFePO、LiCoO、LiNiO、LiNi1xCoMet、LiMn0.5Ni0.5、LiMn0.3Co0.3Ni0.3、LiMn、LiFeO、Li1+x’NiαMnβCoγMet’δ2-z’z’、An’(XO(NASICON)、酸化バナジウム、過酸化リチウム、硫黄、多硫化物、リチウム一フッ化炭素(LiCFxとしても知られる)又はそれらの任意の2つ以上の混合物などが挙げられるが、これらに限定されず、MetはAl、Mg、Ti、B、Ga、Si、Mn又はCoであり、Met’は、Mg、Zn、Al、Ga、B、Zr又はTiであり、Aは、Li、Ag、Cu、Na、Mn、Fe、Co、Ni、Cu又はZnであり、Bは、Ti、V、Cr、Fe又はZrであり、Xは、P、S、Si、W又はMoであり、式中、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦x’≦0.4、0≦α≦1、0≦β≦1、0≦γ≦1、0≦δ≦0.4、0≦z’≦0.4、0≦h’≦3である。いくつかの実施形態によれば、スピネルは、Li1+xMn2-zMet’’’4-mX’の式を有するスピネルマンガン酸化物であり、式中、Met’’’は、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Ni又はCoであり、X’は、S又はFであり、式中、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦m≦0.5、0≦n≦0.5である。他の実施形態では、橄欖石は、Li1+xFe1zMet’’PO4-mX’の式を有し、式中、Met’’は、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Ni、Mn又はCoであり、X’はS又はFであり、式中、0≦x≦0.3、0 0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦m≦0.5及び0≦n≦0.5である。
【0026】
適切なアノードとしては、リチウム金属、黒鉛材料、無定形炭素、LiTi12、スズ合金、ケイ素合金、金属間化合物、又は任意の2つ以上のそのような材料の混合物などのアノードが挙げられる。適切な黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)及び黒鉛繊維、並びに任意の非晶質炭素材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、アノード及びカソードは、多孔質セパレータによって互いに分離される。
【0027】
リチウム電池用セパレータは、微多孔性の高分子フィルムであることが多い。フィルムを形成するためのポリマーの例としては、ナイロン、セルロース、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、あるいは任意の2つ以上のそのようなポリマーのコポリマー又はブレンドが挙げられる。いくつかの例では、セパレータは、電子ビーム処理された微多孔性ポリオレフィンセパレータである。電子処理により、セパレータの変形温度を改善することができ、セパレータの高温性能を向上させることができる。追加的又は代替的に、セパレータはシャットダウンセパレータであってもよい。シャットダウンセパレータは、電気化学セルが約130℃までの温度で動作することを可能にするために、約130℃を超えるトリガ温度を有することができる。
【0028】
本明細書では様々な実施形態を詳細に図示及び説明したが、本開示の趣旨から逸脱することなく様々な修正、追加、置換などを行うことができ、したがって、これらは以下の特許請求の範囲に定義される開示の範囲内にあると見なされることは当業者には明らかであろう。
【0029】
本開示は、以下の具体例を参照して更に説明される。この例は例示として与えられており、本開示又は以下の特許請求の範囲を限定することを意味しないことが理解される。
【実施例
【0030】
例-(メチルヒドロキシエチルピロリジン-ヨウ化物)3-ボラートの合成
【化2】

【表1】
【0031】
DS2-54で調製したトリスエチルピロリジンボラートを200mlのジクロロメタンに溶解し、窒素入口、添加漏斗及び熱伝対を備えた1000mlの三口丸底フラスコに入れた。反応物を磁気的に撹拌し、3当量のヨウ化メチル(34.5グラム)で滴加処理した。添加中、温度は22℃~40.7℃に上昇し、穏やかな還流を生じさせ、これは添加中持続した。添加中に透明な溶液も濁った。混合物を3時間、又は温度が室温に低下するまで磁気的に撹拌した。
【0032】
3時間後、撹拌を停止した。生成物は、ジクロロメタンから溶出し、2つの層を形成した。反応物を分液漏斗に移し、2つの層を分離した。
【0033】
下層をロート蒸発器に入れ、濃縮して、依然として存在する溶媒を除去した。83グラムの淡橙色油状物(量は理論値より多いので、依然として溶媒が存在する)を得た。
【0034】
NMRは予想される構造と一致する。
【0035】
NMR:(CDCl3)δppm3.83(b,2H)3.50(m,4H)3.43(t,2H)3.05(s,2H)2.08(m,4H)及びいくらかの溶媒及び微量の不純物。
【0036】
本明細書では様々な実施形態を詳細に図示及び説明したが、本開示の趣旨から逸脱することなく様々な修正、追加、置換などを行うことができ、したがって、これらは以下の特許請求の範囲に定義される開示の範囲内にあると見なされることは当業者には明らかであろう。