(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】共重合体及びその製造方法、共重合体混合物、ドープ樹脂組成物、並びに樹脂成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/12 20060101AFI20240418BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240418BHJP
B29C 41/12 20060101ALI20240418BHJP
B29C 41/36 20060101ALI20240418BHJP
C08F 224/00 20060101ALI20240418BHJP
C08F 2/06 20060101ALI20240418BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C08F220/12
C08L33/04
B29C41/12
B29C41/36
C08F224/00
C08F2/06
C08K5/07
(21)【出願番号】P 2021540990
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2020031644
(87)【国際公開番号】W WO2021033768
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019152204
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019185398
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020056024
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】井本 慎也
(72)【発明者】
【氏名】北村 倫明
(72)【発明者】
【氏名】寳來 健介
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀高
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-227787(JP,A)
【文献】特開2010-179640(JP,A)
【文献】特開平09-012645(JP,A)
【文献】特開2009-041007(JP,A)
【文献】特表2009-517538(JP,A)
【文献】特開2011-046805(JP,A)
【文献】特開平08-231648(JP,A)
【文献】国際公開第2008/081863(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/115659(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0108488(KR,A)
【文献】特開2008-163187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/12
C08L 101/00
C08L 33/04
B29C 41/12
B29C 41/36
C08F 224/00
C08F 2/06
C08K 5/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む共重合体の製造方法であって、
溶媒の存在下、前記α-メチレンラクトン及び前記(メタ)アクリル酸アルキルを含む単量体を重合させる重合工程を備え、
前記溶媒が下記条件(B)を満たす溶媒である、共重合体の製造方法。
条件(B):100℃未満の沸点を有する第1の溶媒及び100℃以上の沸点を有する第2の溶媒からなる混合溶媒であって、前記第1の溶媒がケトンであり、前記第2の溶媒が環状ケトン、環状エステル、及びアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、沸点が70~120℃である混合溶媒である。
【請求項2】
前記第1の溶媒がアセトンである、請求項1に記載の共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の溶媒が環状ケトンである、請求項1又は2に記載の共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記環状ケトンがシクロヘキサノンである、請求項3に記載の共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の溶媒が環状エステル
及びアミ
ドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記第2の溶媒がγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、
及びN,N’-ジメチルイミダゾリジノ
ンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記重合工程が前記単量体を還流状態で重合させる工程である、請求項1~6のいずれか一項に記載の共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記重合工程において、反応器への前記単量体の各成分の投入方法が、重合開始剤投入と同時に前記単量体の全量を連続的に滴下して投入する方法、初めに前記単量体の一部を投入して重合開始後に前記単量体の残りを滴下して投入する方法、又は、初めに投入する前記単量体の組成中の前記α-メチレンラクトンの含有割合と重合開始後に投入する前記単量体の組成中の前記α-メチレンラクトンの含有割合とを変更して投入する方法のいずれかである、請求項1~7のいずれか一項に記載の共重合体の製造方法。
【請求項9】
α-メチレン-γ-ブチロラクトン由来の構成単位及びメタクリル酸メチル由来の構成単位を含む共重合体であって、
前記共重合体における前記α-メチレン-γ-ブチロラクトン由来の構成単位の含有量が5~40質量%であり、
前記共重合体における前記メタクリル酸メチル由来の構成単位の含有量が60~95質量%であり、
前記共重合体の重量平均分子量が220000以上1000000以下であり、
フィルムにしたときの厚さ100μm当たりの内部ヘイズが2.5%未満である、共重合体(ただし、下記式(1)で表される化合物由来の構成単位を含む場合、又は、シアン化ビニル化合物由来の構成単位を含む場合を除く。)。
【化1】
[式(1)中、Z
1環はγ-ブチロラクトン上の2つの炭素原子とともに形成する任意の位置に酸素原子を有していても良い炭素数3~10の環構造を表す。R
1は水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。]
【請求項10】
フィルムにしたときのL
*a
*b
*表色系の厚さ100μm当たりの内部b
*値が1.6未満である、請求項9に記載の共重合体。
【請求項11】
前記共重合体が前記α-メチレン-γ-ブチロラクトン由来の構成単位及び前記メタクリル酸メチル由来の構成単位以外のその他の単量体の構成単位をさらに含み、
前記共重合体における前記その他の単量体の構成単位の含有量が30質量%以下である、請求項9又は10に記載の共重合体。
【請求項12】
前記共重合体の数平均分子量が20000以上である、請求項9~11のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項13】
前記共重合体の分散度が3.0以下である、請求項9~12のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項14】
前記共重合体は、当該共重合体の15%クロロホルム溶液としたときのJIS Z 8729の規定に準拠して測定される黄色度が1以下である、請求項9~13のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項15】
前記共重合体のJIS K 7121の規定に準拠して測定されるガラス転移温度が110℃以上である、請求項9~14のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項16】
前記共重合体の5%重量減少温度が280℃以上である、請求項9~15のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項17】
請求項9~16のいずれか一項に記載の共重合体と、環状アミド、環状エステル、及び環状ケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有する、共重合体混合物。
【請求項18】
前記化合物の含有量が、前記共重合体の全量を基準として、10~3000質量ppmである、請求項17に記載の共重合体混合物。
【請求項19】
請求項9~16のいずれか一項に記載の共重合体と、分散媒とを含有するドープ樹脂組成物であって、
前記共重合体の含有量が、前記ドープ樹脂組成物の全量を基準として、5質量%以上である、ドープ樹脂組成物。
【請求項20】
請求項9~16のいずれか一項に記載の共重合体又は請求項17若しくは18に記載の共重合体混合物を含有する、樹脂成形体。
【請求項21】
請求項9~16のいずれか一項に記載の共重合体又は請求項17若しくは18に記載の共重合体混合物を含有する樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程を備える、樹脂成形体の製造方法。
【請求項22】
請求項19に記載のドープ樹脂組成物を塗工する工程と、
塗工された前記ドープ樹脂組成物から前記分散媒を除去して樹脂成形体を得る工程とを備える、樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体及びその製造方法、共重合体混合物、ドープ樹脂組成物、並びに樹脂成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体は、透明性、耐熱性、光学等方性に優れ、光学用途への適用が期待されている。例えば、特許文献1には、所定のα-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体(樹脂)の成形体であるフィルム等が、光学用部材の用途に適することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般にα-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体は、溶媒に対する溶解性が低い傾向にあることから、無溶媒又はジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒で重合が行われる。しかし、無溶媒での重合では重合熱を除熱することができず、DMSO溶媒での重合では溶媒自体が加熱により分解して有害物質が発生すること、また特定の条件で爆発性を有していることから、安全面に課題があり、工業化に適していない。また、本発明者らの検討によると、DMSO溶媒で重合を行うと、得られるα-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体が着色してしまい、透明性が低下してしまう傾向にあることを見出した。
【0005】
そこで、本発明は、溶媒を用いた重合によるα-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体の製造方法であって、得られる共重合体の透明性を改善することが可能な製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[8]に記載の共重合体の製造方法、[9]~[11]に記載の共重合体、[12]~[14]に記載の共重合体混合物、[15]に記載のドープ樹脂組成物、[16]に記載の樹脂成形体、及び[17]、[18]に記載の樹脂成形体の製造方法を提供する。
[1]α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む共重合体の製造方法であって、溶媒の存在下、α-メチレンラクトン及び(メタ)アクリル酸アルキルを含む単量体を重合させる工程を備え、溶媒が、下記条件(A)又は下記条件(B)のいずれかを満たす溶媒である、共重合体の製造方法。
条件(A):環状アミド及び環状エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である。
条件(B):100℃未満の沸点を有する第1の溶媒及び100℃以上の沸点を有する第2の溶媒からなる混合溶媒であって、第1の溶媒がケトン及び塩化アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、第2の溶媒が環状ケトン、環状エステル、アミド、及びスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、沸点が70~120℃である混合溶媒である。
[2]溶媒が、条件(A)を満たす溶媒である、[1]に記載の共重合体の製造方法。
[3]溶媒が、条件(B)を満たす溶媒である、[1]に記載の共重合体の製造方法。
[4]第1の溶媒がアセトンである、[3]に記載の共重合体の製造方法。
[5]第2の溶媒が環状ケトンである、[3]又は[4]に記載の共重合体の製造方法。
[6]環状ケトンがシクロヘキサノンである、[5]に記載の共重合体の製造方法。
[7]第2の溶媒が環状エステル、アミド、及びスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[3]又は[4]に記載の共重合体の製造方法。
[8]第2の溶媒がγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[7]に記載の共重合体の製造方法。
[9]α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含み、フィルムにしたときの厚さ100μm当たりの内部ヘイズが2.5%未満である、共重合体。
[10]α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含み、かつ重量平均分子量が200000以上1000000以下である、共重合体。
[11]フィルムにしたときのL*a*b*表色系の厚さ100μm当たりの内部b*値が1.6未満である、[9]又は[10]に記載の共重合体。
[12][9]~[11]のいずれかに記載の共重合体と、環状アミド、環状エステル、及び環状ケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有する、共重合体混合物。
[13]α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む共重合体と、環状アミド、環状エステル、及び環状ケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有する、共重合体混合物。
[14]化合物の含有量が、共重合体の全量を基準として、10~3000質量ppmである、[12]又は[13]に記載の共重合体混合物。
[15][9]~[11]のいずれかに記載の共重合体と、分散媒とを含有するドープ樹脂組成物であって、共重合体の含有量が、ドープ樹脂組成物の全量を基準として、5質量%以上である、ドープ樹脂組成物。
[16][9]~[11]のいずれかに記載の共重合体又は[12]~[14]のいずれかに記載の共重合体混合物を含有する、樹脂成形体。
[17][9]~[11]のいずれかに記載の共重合体又は[12]~[14]のいずれかに記載の共重合体混合物を含有する樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程を備える、樹脂成形体の製造方法。
[18][15]に記載のドープ樹脂組成物を塗工する工程と、塗工されたドープ樹脂組成物から分散媒を除去して樹脂成形体を得る工程とを備える、樹脂成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、溶媒を用いた重合によるα-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体の製造方法であって、得られる共重合体の透明性を改善することが可能な製造方法が提供される。いくつかの形態に係る共重合体の製造方法は、還流下で重合反応を行うことが容易となる。また、本発明によれば、このような製造方法によって得られる共重合体及び当該共重合体を含有する共重合体混合物を提供する。いくつかの形態に係る共重合体混合物は、形成されるフィルムへの加工負荷の低減、形成されるフィルムの強度等においても優れる傾向にある。さらに、本発明によれば、当該共重合体又は当該共重合体混合物を用いたドープ樹脂組成物並びに樹脂成形体及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本明細書において、「樹脂(組成物)」は、「(共)重合体」よりも広い概念である。樹脂は、例えば、1種又は2種以上の(共)重合体から構成されていてもよいし、必要に応じて、(共)重合体以外の酸化防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0010】
[共重合体の製造方法]
一実施形態に係る共重合体の製造方法は、α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む共重合体の製造方法である。
【0011】
α-メチレンラクトン由来の構成単位は、α位の炭素にメチレン基が結合したα-メチレンラクトンの重合により形成される。α-メチレンラクトン由来の構成単位の具体的な構造は特に限定されない。ラクトンの環員数は、特に限定されないが、環構造の安定性が高く、この高い安定性に基づいてより高い表面強度が得られることから、好ましくは5員環(γ-ラクトン)又は6員環(δ-ラクトン)である。
【0012】
5員環又は6員環であるα-メチレンラクトンの具体例は、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-δ-バレロラクトンである。これらは置換基を有するものであってもよい。
【0013】
α-メチレンラクトン由来の構成単位は、好ましくは以下の式(1)に示す構造を有する構成単位である。
【0014】
【0015】
式(1)におけるR1~R4は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。
【0016】
式(1)に示す構造を有する構成単位は、以下の式(2)に示すα-メチレン-γ-ブチロラクトンを含む単量体の重合により形成できる。
【0017】
【0018】
式(2)におけるR1~R4は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。
【0019】
炭化水素基は、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は、例えば、アルキル基である。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。アルキル基は直鎖でも分岐を有していてもよく、環状でもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0020】
芳香族炭化水素基は特に限定されず、例えば、複素環構造を含んでいてもよい。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0021】
R1~R4は、好ましくは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基、より好ましくは全て水素原子である。
【0022】
共重合体におけるα-メチレンラクトン由来の構成単位の含有量は、耐熱性等をより向上させる観点から、好ましくは5~40質量%、より好ましくは7.5~35質量%、更に好ましくは10~30質量%である。なお、共重合体における各構成単位の含有量は、共重合体を重溶媒に溶解させ、1H-NMRを測定し各構成単位に対応するピークの面積比を算出することで求めることができる。
【0023】
炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位は、(メタ)アクリル酸アルキルの重合により形成される。(メタ)アクリル酸アルキルにおける炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、更に好ましくは1である。
【0025】
メタクリル酸アルキルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、更に好ましくは1である。
【0026】
共重合体における(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位の含有量は、耐熱性、透明性等をより向上させる観点から、好ましくは95~60質量%、より好ましくは92.5~65質量%、更に好ましくは90~70質量%である。
【0027】
共重合体は、α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位以外のその他の単量体の構成単位を含んでいてもよい。その具体例としては、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の単量体由来の構成単位が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0028】
共重合体におけるその他の構成単位の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0029】
本実施形態に係る共重合体の製造方法は、溶媒の存在下、α-メチレンラクトン及び(メタ)アクリル酸アルキルを含む単量体を重合させる工程を備える。溶媒は、下記条件(A)又は下記条件(B)のいずれかを満たす溶媒である。
条件(A):環状アミド及び環状エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である。
条件(B):100℃未満の沸点を有する第1の溶媒及び100℃以上の沸点を有する第2の溶媒からなる混合溶媒であって、第1の溶媒がケトン及び塩化アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、第2の溶媒が環状ケトン、環状エステル、アミド、及びスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、沸点が70~120℃である混合溶媒である。
【0030】
本実施形態に係る共重合体の製造方法によれば、得られる共重合体の透明性を改善することが可能となる。このような効果が奏する理由は、必ずしも明らかではないが、本発明者らは、着色(透明性の低下)の原因をα-メチレンラクトンの単独重合体(ホモポリマー)の生成にあると考えている。当該単独重合体は、DMSO溶媒単独には溶解するが、条件(A)を満たす溶媒又は条件(B)を満たす溶媒には溶解しない又は溶解し難い傾向にある。そのため、条件(A)を満たす溶媒又は条件(B)を満たす溶媒を用いて、α-メチレンラクトンを含む単量体を重合させることによって、α-メチレンラクトンの単独重合体の生成を抑制し、これによって、共重合体の着色を低減し、透明性を改善できると考えている。
【0031】
また、条件(B)を満たす溶媒を用いることによって、本実施形態に係る共重合体の製造方法は、α-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体を製造する際に、還流下で重合反応を行うことが容易となり、例えば、一般的な重合温度(例えば、70~120℃)において、還流状態で重合を実施することが可能となる。還流状態において、重合が実施されると、重合の際の重合熱を徐熱でき、重合温度を沸点付近で制御できることから、安全、安定的に重合を進行させることができる。混合溶媒の沸点が120℃以下であると、重合速度を制御し易く、また副生成物を抑制し、さらに(メタ)アクリル酸アルキルモノマーの沸点よりも重合温度が高くなり過ぎないといった点で有利である。また、混合溶媒の沸点が70℃以上であると、重合液粘度、重合速度等の生産性の点で有利である。
【0032】
条件(A)で表される溶媒は、環状アミド及び環状エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒であり、1種の単独溶媒であってもよく、2種以上を組み合わせた混合溶媒であってもよいが、好ましくは1種の単独溶媒である。溶媒の沸点(単独溶媒の沸点又は混合溶媒の沸点)は、共重合体混合物における溶媒(化合物)の含有量を制御し易いことから、好ましくは200℃を超え300℃以下である。
【0033】
環状アミドとしては、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)等が挙げられる。これらの中でも、環状アミドは、汎用性が高いことから、好ましくはNMPである。
【0034】
環状エステルとしては、例えば、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、環状エステルは、汎用性が高いこと観点から、好ましくはGBLである。
【0035】
条件(A)で表される溶媒を用いる場合、重合温度及び重合時間は、使用する単量体の種類、使用比率等によって異なるが、重合温度は、好ましくは0~150℃、より好ましくは50~150℃、更に好ましくは60~140℃である。また、重合時間は好ましくは0.5~20時間、より好ましくは1~10時間である。
【0036】
条件(B)で表される溶媒は、100℃未満の沸点を有する第1の溶媒及び100℃以上の沸点を有する第2の溶媒からなる混合溶媒であって、第1の溶媒がケトン及び塩化アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、第2の溶媒が環状ケトン、環状エステル、アミド、及びスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、(混合溶媒の)沸点が70~120℃である混合溶媒である。
【0037】
第1の溶媒は、100℃未満の沸点を有する溶媒であって、ケトン及び塩化アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である。このような第1の溶媒としては、例えば、アセトン(ACE)、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエタン等の塩化アルキルなどが挙げられる。第1の溶媒は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、第1の溶媒は、好ましくはアセトンである。
【0038】
第2の溶媒は、100℃以上の沸点を有する溶媒であって、環状ケトン、環状エステル、アミド、及びスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である。このような第2の溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン(アノン)、シクロペンタノン等の環状ケトン、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等の環状エステル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシドなどが挙げられる。第2の溶媒は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。第2の溶媒の一態様は、好ましくは環状ケトン、より好ましくはシクロヘキサノンである。第2の溶媒の他の一態様は、好ましくは環状エステル、アミド、及びスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくはγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0039】
第1の溶媒と第2の溶媒との組み合わせは、アセトンとシクロヘキサノンとの組み合わせであってもよい。本発明者らの検討によると、アセトン及びシクロヘキサノンは、それぞれ単独で共重合体を溶解し難い傾向にあるが、上述の共重合体を極めて特異的に溶解し易くなることを見出した。そのため、このような混合溶媒を用いることによって、還流下で重合反応を行うことが容易となり、得られる共重合体の透明性を改善することが可能となる。
【0040】
上述の共重合体は、第1の溶媒としての100℃未満の沸点を有する塩化アルキル、及び、第2の溶媒としての100℃以上の沸点を有する、環状エステル、アミド、及びスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解し易い傾向にある。そのため、第1の溶媒と第2の溶媒との組み合わせは、100℃未満の沸点を有する塩化アルキルと、100℃以上の沸点を有する溶媒であって、環状ケトン、環状エステル、アミド、及びスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒との組み合わせであってもよく、100℃未満の沸点を有する溶媒であって、ケトン及び塩化アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒と、環状エステル、アミド、及びスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒との組み合わせであってもよい。
【0041】
混合溶媒の沸点は、70~120℃であり、好ましくは75~115℃、より好ましくは80~110℃である。混合溶媒の沸点がこのような範囲にあることによって、還流下で重合反応を行うことが容易となる。なお、本明細書において、混合溶媒の沸点は、実施例に記載の方法で測定される値を意味する。
【0042】
第1の溶媒と第2の溶媒との混合割合は、混合溶媒の沸点が70~120℃であれば特に制限されず、任意の割合で調整することができる。第1の溶媒と第2の溶媒とを任意の割合で調整し、混合溶媒の沸点を70~120℃の範囲に調整することで、還流下で重合反応を行うことが容易となり、得られる共重合体の透明性を改善することが可能となる。例えば、第2の溶媒に対する第1の溶媒の質量比(第1の溶媒の質量/第2の溶媒の質量)は、好ましくは1/9以上、より好ましくは2/8以上であり、好ましくは9/1以下、より好ましくは8/2以下、更に好ましくは7/3以下、特に好ましくは6/4以下、最も好ましくは5/5以下である。
【0043】
条件(B)で表される溶媒を用いる場合、重合温度及び重合時間は、使用する単量体の種類、使用比率等によって異なるが、重合温度は、重合速度を制御し易く、また副生成物を抑制し、さらに(メタ)アクリル酸アルキルモノマーの沸点よりも重合温度が高くなり過ぎないという観点から、好ましくは120℃以下であり、重合液粘度、重合速度等の生産性の観点から好ましくは70℃以上である。重合温度は、より好ましくは75~115℃、更に好ましくは80~110℃である。また、重合時間は、好ましくは0.5~20時間、より好ましくは1~10時間である。
【0044】
重合工程において、反応器への単量体各成分(α-メチレンラクトン、(メタ)アクリル酸アルキル、その他の単量体等)の投入方法としては、特に限定されず、重合開始剤投入前に単量体全量を投入する方法、重合開始剤投入と同時に単量体全量を連続的に滴下して投入する方法、初めに単量体の一部を投入して重合開始後に単量体の残りを滴下して投入する方法、初めに投入する単量体組成中のα-メチレンラクトンの含有割合と重合開始後に投入する単量体組成中のα-メチレンラクトンの含有割合とを変更して投入する方法等が挙げられる。
【0045】
単量体を重合させる際には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物などが挙げられる。重合開始剤の含有割合は、用いる単量体の組み合わせ、反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、全単量体に対して、好ましくは10~10000質量ppm、より好ましくは100~3000質量ppm、更に好ましくは300~2000質量ppmである。
【0046】
単量体を重合させる際には、必要に応じて、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、β-メルカプトプロピオン酸等の単官能チオール化合物;両末端メルカプト変性ポリシロキサン等の2官能チオール化合物;側鎖がメルカプト変性された側鎖多官能メルカプト変性ポリシロキサンなどが挙げられる。連鎖移動剤の含有割合は、用いる単量体の組み合わせ、反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、全単量体に対して、好ましくは10~10000質量ppm、より好ましくは100~3000質量ppmである。
【0047】
単量体を重合させる際には、反応液の高粘度化を抑制するため、重合反応混合物中の共重合体の濃度を90質量%以下となるように制御することが好ましく、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。また、重合反応混合物中の共重合体の濃度が低すぎると生産性が低下するため、重合反応混合物中の重合体の濃度を10質量%以上となるように制御することが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。
【0048】
重合工程を経て得られる重合反応混合物中には、通常、目的物である共重合体以外に溶媒が含まれている。共重合体を溶媒から分離する方法としては、特に制限されず、再沈殿による方法、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置、ベント付き押出機を用いて脱溶媒する方法等が挙げられる。
【0049】
[共重合体]
一実施形態に係る共重合体は、α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含み、フィルムにしたときの厚さ100μm当たりの内部ヘイズが2.5%未満である。本実施形態の共重合体は、上記製造方法によって得られる共重合体であり得る。上記製造方法は、得られる共重合体の透明性を改善することが可能であることから、当該製造方法を用いることによって、フィルムにしたときの厚さ100μm当たりの内部ヘイズ、フィルムにしたときのL*a*b*表色系の厚さ100μm当たりの内部b*値等を所定の範囲にすることが可能となり得る。
【0050】
共重合体は、フィルムにしたときの厚さ100μm当たりの内部ヘイズが2.5%未満である。当該内部ヘイズは、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1.0%以下、特に好ましくは0.8%以下である。なお、共重合体におけるフィルムにしたときの厚さ100μm当たりの内部ヘイズは、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。また、共重合体を熱プレス成形する際の温度は、例えば、200~270℃であってよく、より具体的には240℃とすることができる。
【0051】
他の実施形態に係る共重合体は、α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含み、かつ重量平均分子量(Mw)が200000以上1000000以下である。本実施形態の共重合体を用いることによって、透明性、耐熱性、及び柔軟性に優れるフィルムを形成することが可能となる。
【0052】
共重合体は、上記製造方法で使用される溶媒を実質的に含まない状態のものである。ここで「実質的に含まない」とは、溶媒の含有量が、共重合体の全量を基準として、10質量ppm未満であってよいことを意味する。なお、溶媒の含有量は、共重合体又は共重合体混合物から形成されるフィルムを用いて、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0053】
共重合体は、フィルムにしたときのL*a*b*表色系の厚さ100μm当たりの内部b*値が好ましくは1.6未満である。当該内部b*値は、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下、最も好ましくは0.4以下である。なお、共重合体におけるフィルムにしたときのL*a*b*表色系の厚さ100μm当たりの内部b*値は、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。また、共重合体を熱プレス成形する際の温度は、例えば、200~270℃であってよく、より具体的には240℃とすることができる。
【0054】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100000以上、より好ましくは150000以上、更に好ましくは200000以上、特に好ましくは220000以上、最も好ましくは240000以上である。共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000000以下、より好ましくは750000以下、更に好ましくは500000以下である。共重合体のMwが上記所定の範囲であると、フィルムの柔軟性をより向上させることができる。なお、共重合体のMwは、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0055】
共重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは20000以上、より好ましくは50000以上、更に好ましくは100000以上である。共重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500000以下、より好ましくは400000以下、更に好ましくは300000以下である。なお、共重合体のMnは、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。また、共重合体の分散度(Mw/Mn)は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.8以下、更に好ましくは2.5以下である。
【0056】
共重合体は、当該共重合体の15%クロロホルム溶液としたときのJIS Z 8729の規定に準拠して測定される黄色度(YI)が、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1以下である。共重合体のYIがこのような範囲であると、低着色な樹脂成形体を得ることができる。
【0057】
共重合体のJIS K 7121の規定に準拠して測定されるガラス転移温度(Tg)は、耐熱性等をより向上させる観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、更に好ましくは120℃以上である。共重合体のガラス転移温度の上限は、特に限定されないが、例えば、160℃以下とすることができる。
【0058】
共重合体の5%重量減少温度は、耐熱性等をより向上させる観点から、好ましくは280℃以上、より好ましくは290℃以上、更に好ましくは300℃以上である。共重合体の5%重量減少温度の上限は、特に限定されないが、例えば、400℃以下とすることができる。なお、5%重量減少温度は、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0059】
[共重合体混合物]
一実施形態に係る共重合体混合物は、α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む共重合体と、環状アミド、環状エステル、及び環状ケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有する。共重合体混合物の一態様は、上述の共重合体と、環状アミド、環状エステル、及び環状ケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有するものである。
【0060】
環状アミド、環状エステル、及び環状ケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物は、上述の共重合体の製造方法において溶媒として例示したものを使用することができる。当該化合物の含有量は、共重合体の全量を基準として、好ましくは10~3000質量ppmである。当該化合物の含有量は、共重合体の全量を基準として、より好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは300質量ppm以上であり、より好ましくは2500質量ppm以下、更に好ましくは2000質量ppm以下である。当該化合物の含有量がこのような範囲にあると、樹脂の加工性、形成されるフィルムへの加工負荷の低減、形成されるフィルムの強度等に優れる傾向にある。なお、化合物の含有量は、共重合体又は共重合体混合物から形成されるフィルムを用いて、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0061】
共重合体混合物は、上述の共重合体の製造方法において、共重合体を溶媒から分離する際に、化合物の含有量が所定の範囲になるように、溶媒(化合物)を残留させることによって得ることができ、また、単離後の共重合体に化合物の含有量が所定の範囲になるように、化合物を添加することによっても得ることができる。
【0062】
[ドープ樹脂組成物]
一実施形態に係るドープ樹脂組成物は、上述の共重合体と、分散媒とを含有する。ドープ樹脂組成物は、樹脂成形体の製造に好適に用いることができる。
【0063】
分散媒の一態様としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等の塩化アルキル系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール等のアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、NMP、GBLなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてよい。ただし、2種以上を組み合わせて用いる場合、上述の条件(B)で表される溶媒を除くものとする。
【0064】
分散媒の他の一態様は、上述の条件(B)で表される溶媒である。混合溶媒(条件(B)で表される溶媒)の沸点は、好ましくは70~120℃である。混合溶媒の第1の溶媒と第2の溶媒との組み合わせ、混合溶媒の沸点、第1の溶媒と第2の溶媒との混合割合等は、上述の第1の溶媒と第2の溶媒との組み合わせ、混合溶媒の沸点、第1の溶媒と第2の溶媒との混合割合等と同様である。したがって、ここでは、重複する説明を省略する。なお、上述の混合溶媒には、第1の溶媒をさらに添加してもよい。上述の混合溶媒に第1の溶媒をさらに添加した際の分散媒の沸点は、好ましくは30~110℃、より好ましくは40~100℃である。
【0065】
ドープ樹脂組成物における共重合体の含有量は、樹脂成形体を効率よく製造する観点から、ドープ樹脂組成物の全量を基準として、5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。共重合体の含有量は、製造設備で安定的に生産するために、流動性を確保する観点から、ドープ樹脂組成物の全量を基準として、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0066】
ドープ樹脂組成物は、後述の樹脂成形体におけるその他の重合体を含有していてもよい。その他の重合体の含有量は、ドープ樹脂組成物の全量を基準として、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~40質量%、更に好ましくは0~30重量%、特に好ましくは0~20質量%、最も好ましくは0~10質量%である。
【0067】
ドープ樹脂組成物は、後述の樹脂成形体におけるその他の添加剤を含有していてもよい。ドープ樹脂組成物は、1種又は2種以上のその他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤の含有量は、ドープ樹脂組成物の全量を基準として、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~2質量%、更に好ましくは0~0.5質量%である。
【0068】
ドープ樹脂組成物のJIS Z 8729の規定に準拠して測定される黄色度(YI)は、低着色な樹脂成形体を得る観点から、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1以下である。
【0069】
ドープ樹脂組成物の25℃における粘度は、樹脂成形体の生産性を向上させる観点から、好ましくは0.001Pa・s以上、より好ましくは0.01Pa・s以上、更に好ましくは0.1Pa・s以上であり、好ましくは10Pa・s以下、より好ましくは5Pa・s以下、更に好ましくは1Pa・s以下である。なお、25℃における粘度は、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0070】
ドープ樹脂組成物のJIS K7136の規定に準拠して測定されるヘイズは、高透明な樹脂成形体を得る観点から、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1以下である。
【0071】
[樹脂成形体及びその製造方法]
一実施形態に係る樹脂成形体は、上述の共重合体又は上述の共重合体混合物を主成分として含有する。本実施形態に係る樹脂成形体は、上述の共重合体若しくは上述の共重合体混合物を含有する樹脂組成物、又は、上述の共重合体若しくは上述の共重合体混合物を含有するドープ樹脂組成物を用いて製造することができる。
【0072】
共重合体又は共重合体混合物の含有量は、樹脂成形体の全量を基準として、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100重量%、特に好ましくは80~100質量%、最も好ましくは90~100質量%である。樹脂成形体において、共重合体又は共重合体混合物の含有量が50質量%以上であると、透明性により優れる樹脂成形体を得ることができる。
【0073】
樹脂成形体は、上述の共重合体以外の重合体(その他の重合体)を含有していてもよい。その他の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム等の弾性有機微粒子;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂、ASA樹脂等のゴム質重合体などが挙げられる。その他の重合体の含有量は、樹脂成形体(樹脂組成物)の全量を基準として、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~40質量%、更に好ましくは0~30重量%、特に好ましくは0~20質量%、最も好ましくは0~10質量%である。
【0074】
樹脂成形体は、その他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラー又は無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤又は無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;流動化剤;相溶化剤などが挙げられる。樹脂成形体は、1種又は2種以上のその他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤の含有量は、樹脂成形体の全量を基準として、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~2質量%、更に好ましくは0~0.5質量%である。
【0075】
樹脂成形体は、好ましくはフィルム状の樹脂成形体又はシート状の樹脂成形体の面状の樹脂成形体である。なお、本明細書において、フィルム状の樹脂成形体(フィルム)は膜厚が350μm未満であるものを意味し、シート状の樹脂成形体(シート)は膜厚が350μm以上であるものを意味する。
【0076】
樹脂成形体の製造方法の一態様は、上述の共重合体又は上述の共重合体混合物を含有する樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程を備える。樹脂組成物を成形する方法としては、特に制限されないが、例えば、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等の従来公知の方法が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物を成形する方法は、好ましくは溶融押出法である。
【0077】
樹脂組成物は、所望の樹脂成形体に合わせて、上述の共重合体又は上述の共重合体混合物に加えて、上述のその他の重合体、上述のその他の添加剤等を含有していてもよい。なお、樹脂組成物における共重合体又は共重合体混合物、その他の重合体、その他の添加剤等の含有量は、樹脂成形体で例示した各成分の含有量と同様であってよい。
【0078】
溶融押出法の具体例としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。樹脂成形体の成形温度は、好ましくは150~350℃、より好ましくは200~300℃である。
【0079】
樹脂成形体の製造方法の他の一態様は、上述のドープ樹脂組成物を塗工する工程と、塗工されたドープ樹脂組成物から分散媒を除去して樹脂成形体を得る工程とを備える。ドープ樹脂組成物を塗工する方法としては、特に制限されないが、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)等の従来公知の方法が挙げられる。溶液キャスト法(溶液流延法)は、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーター等の装置を用いることができる。
【0080】
ドープ樹脂組成物から分散媒を除去する方法としては、特に制限されないが、例えば、ドープ樹脂組成物を加熱して分散媒を揮発させる方法等が挙げられる。加熱温度は、使用される分散媒に合わせて適宜設定することができる。
【0081】
フィルム状の樹脂成形体(フィルム)は、延伸することによって延伸フィルムとすることができる。フィルムは、可とう性に優れる点、場合によっては位相差を付与できる点で、好ましくは延伸フィルムである。
【0082】
フィルムを延伸する方法としては、従来公知の延伸方法が適用でき、例えば、自由幅一軸延伸、定幅一軸延伸等の一軸延伸;逐次二軸延伸、同時二軸延伸等の二軸延伸等が挙げられる。フィルム面内の任意の直交する二方向に対する耐折れ曲げ性が向上するという点で、フィルムを延伸する方法は好ましくは二軸延伸である。
【0083】
フィルムを延伸する際の延伸温度は、好ましくは上述の共重合体のガラス転移温度近辺である。より具体的には、好ましくは(ガラス転移温度-30)℃~(ガラス転移温度+100)℃、より好ましくは(ガラス転移温度-20)℃~(ガラス転移温度+50)℃、更に好ましくは(ガラス転移温度-10)℃~(ガラス転移温度+30)℃である。
【0084】
フィルムを延伸する際の延伸倍率は、例えば、縦横方向それぞれ1.05~10倍の範囲であってよい。
【0085】
フィルム状の樹脂成形体(フィルム)の膜厚は、好ましくは1μm以上350μm未満、より好ましくは10μm以上300μm以下である。シート状の樹脂成形体(シート)の膜厚は、好ましくは350μm以上10mm以下、より好ましくは350μm以上5mm以下である。
【0086】
樹脂成形体がフィルムである場合、フィルムのJIS K7136に準じた方法で測定される全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上である。全光線透過率は、透明性の目安であり、85%以上であると、フィルムの透明性が充分なものとなり得る。
【0087】
樹脂成形体がフィルムである場合、フィルムの弾性率は、フィルムの強度をより向上させる観点から、好ましくは4GPa以上、より好ましくは4.5GPa以上、更に好ましくは5GPa以上である。フィルムの弾性率の上限は特に限定されないが、例えば、15GPa以下とすることができる。なお、フィルムの弾性率は、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0088】
樹脂成形体がフィルムである場合、フィルムのヤング率は、フィルムの強度をより向上させる観点から、好ましくは4GPa以上、より好ましくは4.5GPa以上、更に好ましくは5GPa以上である。フィルムのヤング率の上限は特に限定されないが、例えば、15GPa以下とすることができる。なお、フィルムのヤング率は、例えば、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0089】
樹脂成形体がフィルムである場合、フィルムの鉛筆硬度は、フィルムの強度をより向上させる観点から、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上、更に好ましくは3H以上である。
【0090】
樹脂成形体がフィルムである場合、フィルムは、所定の条件でフィルムをU字型に折り曲げて戻すことを繰り返す屈曲試験(フォルダブル試験)において、折り曲げる回数が100000回を超えても折り曲げ部分に破断が生じないことが好ましい。なお、所定の条件とは、例えば、実施例に記載の条件とすることができる。
【0091】
本実施形態の樹脂成形体は、種々の用途に適用でき、例えば、光学用途に好適に適用することができる。具体的な用途の例としては、例えば、導光部材、フィルム用途、レンズ(光学レンズ等)、カバー、発泡体用途(例えば、緩衝材、保温・断熱材、制振材、防音材、シール材、パッキング材等)などの各種用途が挙げられる。
【0092】
本実施形態の樹脂成形体(特に、フィルム状の樹脂成形体)は、光学用途に好適に用いることができる。また、本実施形態の樹脂成形体(特に、フィルム状の樹脂成形体)は、透明性、耐熱性、柔軟性、及び表面硬度に優れるので、フレキシブルディスプレイ用途に好適に用いることができ、特に、最表面のカバーウィンドウとしてより一層好適に用いることができる。フレキシブルディスプレイの具体例としては、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイ、折り畳み又は巻き取りが可能なスマートフォン等が挙げられる。また、フィルム状の樹脂成形体は低位相差であることから、フレキシブルディスプレイの各層の保護フィルム等として用いることも可能である。さらにフィルム状の樹脂成形体を用いて偏光板又はタッチパネルを作製することが可能である。
【0093】
フィルム状の樹脂成形体(フィルム)を、フレキシブルディスプレイ用カバーウィンドウとして適用する際には、例えば、ハードコート層等の他の層を有する積層体として用いてもよい。また、フィルムから形成されるフレキシブルディスプレイ用カバーウィンドウは、例えば、接着層等を介して、フレキシブルディスプレイの表面に配置することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を意味する。また、各種物性は、次のようにして測定・評価した。
【0095】
<実施例A>
[重合反応率及び重合体組成分析]
重合反応時の反応率及び共重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応液中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所製、装置名:GC-2014)を用いて測定して求めた。
【0096】
[重量平均分子量及び数平均分子量]
共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置及び測定条件は、以下のとおりである。
システム:東ソー製GPCシステムHLC-8220
測定側カラム構成:
・ガードカラム(東ソー製、TSKguardcolumn SuperHZ-L)
・分離カラム(東ソー製、TSKgel SuperHZM-M) 2本直列接続
リファレンス側カラム構成:
・リファレンスカラム(東ソー製、TSKgel SuperH-RC)
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS-オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
【0097】
[共重合体中のML含有量]
共重合体中のML含有量(α-メチレンラクトン由来の構成単位の含有量)は、1H-NMRにより求めた。具体的には、重溶媒として重DMSO又は重クロロホルムを使用し、核磁気共鳴分光計(BRUKER製、AV300M)を用いて1H-NMR測定を行い、得られた1H-NMRプロファイルの面積比から求めた。
【0098】
[ガラス転移温度(Tg)]
共重合体のガラス転移温度は、JIS K 7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、Thermo plus EVO DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α-アルミナを用いた。
【0099】
[5%重量減少温度]
共重合体の5%重量減少温度はJIS K 7120の規定に準拠して求めた。具体的には、差動型示差熱天秤装置(リガク製、Thermo plus2 Tg-8120)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から400℃まで10℃/分で昇温した。このとき、昇温中のサンプルの質量が5%減少した時点での温度を測定することにより求めた。
【0100】
[フィルムの厚さ]
フィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ製)により求めた。
【0101】
[フィルムの全光線透過率]
フィルムの全光線透過率はJIS K7361の規定に準拠して求めた。具体的には、ヘイズメーター(日本電色工業製、NDH-1001DP)を用いて測定した。
【0102】
[フィルムの引張試験(弾性率測定)]
延伸フィルムを90mm×20mmの大きさに切り出して試験片とし、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下で、JIS K7127に準拠し、オートグラフ(島津製作所製:AG-X)を用いて引張試験を実施した。条件は引張速度を歪0.5%まで0.25mm/分、それ以降は1mm/分とし、チャック間距離を55mm、変位計での測定する標線間隔を25mmとして、25℃で3回試験を行い、その平均値を測定値とした。変位は非接触伸び幅計(島津製作所製:TRViewX)を用いて計測し、弾性率は歪が0.05%から0.25%までの間の傾きとして評価した。
【0103】
[フィルムのヤング率]
フィルムのヤング率は、延伸フィルム(厚さ4μm)に対して、超微小硬度計(フィッシャーインストルメンツ製、フィッシャースコープHM-2000)を用い、ISO-14577-1に準拠した方法により評価した。評価は、未延伸フィルムをガラス基板に固定した状態で実施した。測定条件は、四角錐型のビッカース圧子(対面角a=136°)を使用し、最大試験荷重3mN;荷重付加時のアプリケーション時間20秒;クリープ時間5秒;荷重減少時のアプリケーション時間20秒;測定温度室温(25℃)とし、3回測定した値を平均化して求めた。
【0104】
[フィルムの鉛筆硬度]
フィルムの鉛筆硬度は、JIS-S-6006が規定する試験用鉛筆を用い、安田精機製作所製 鉛筆引っかき硬度試験機No.533を用いて、JIS K5600-5-4(1999)に準拠して、750g荷重下で評価を行い、傷がつかない最も高い鉛筆の硬度を鉛筆硬度とした。
【0105】
[フィルムのフォルダブル試験]
延伸フィルムを15mm×80mmの大きさに切り出して試験片とし、Tension-FreeFolding Clamshell-type(ユアサシステム機器製、DMLHP-CS)にテープで固定した。また、試験片を長辺の半分の位置で折り曲げ、折り畳まれた状態の試験片の長辺の両端部間の距離が5mmとなり、試験片の折り曲げ部分の曲率半径が2.5mmとなるように折り畳まれた状態を設定した。その後、25℃の環境下で、平坦に開いた状態から折り畳まれた状態にすることを1回の屈曲として、1分間に30回の屈曲回数で、10万回屈曲を繰り返した。試験後の折り畳まれた部分のフィルムが破断していなかった場合を「良好」、破断していた場合を「不良」として評価した。
【0106】
(実施例A1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸メチル(MMA)9部、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)0.75部、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)10部を仕込み、これに窒素を通じつつ105℃まで昇温させた。その後、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス(登録商標)570、以下「開始剤570」ともいう。)を0.003部加えるとともに、0.2部のNMPで希釈した0.005部の開始剤570と0.25部のMLを2時間かけて一定速度で滴下しながら105-115℃で溶液重合を6時間行った。重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ98.8%、99.3%であった。次に得られた重合反応液を240℃で2時間真空乾燥(1mmHg)することで、白色の共重合体を得た。得られた共重合体の物性を表1に示す。次に得られた共重合体を240℃で熱プレス成形して、厚さ約160μmの未延伸プレスフィルムを得た後、得られた未延伸キャストフィルムを96mm×96mmの大きさに切り出し、逐次二軸延伸機(東洋精機製作所製、X6-S)を用いて、延伸温度140℃(Tg+18℃)にて300%/分の延伸速度で縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の順にそれぞれ延伸倍率が2.0倍となるように逐次二軸延伸を行い、冷却することにより、厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表1に示す。
【0107】
【0108】
<試験例B、実施例B、及び比較例B>
[静置重合における重合反応率]
静置重合における重合反応率は、重合液をクロロホルムで希釈後、メタノール中に滴下して再沈殿により共重合体を取り出し、共重合体を240℃で1時間乾燥した後に得られた共重合体量により簡易的に求めた。
【0109】
[撹拌重合における重合反応率及び共重合体の組成分析]
撹拌重合における重合反応時の反応率及び共重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応液中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所製、装置名:GC-2014)を用いて測定して求めた。
【0110】
[共重合体の重量平均分子量及び数平均分子量]
共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、<実施例A>の共重合体の重量平均分子量及び数平均分子量と同様にして求めた。
【0111】
[共重合体中のML含有量]
共重合体中のML含有量(α-メチレンラクトン由来の構成単位の含有量)は、<実施例A>の共重合体中のML含有量と同様にして求めた。
【0112】
[共重合体のガラス転移温度(Tg)]
共重合体のガラス転移温度は、<実施例A>の共重合体のガラス転移温度と同様にして求めた。
【0113】
[共重合体の5%重量減少温度]
共重合体の5%重量減少温度は、<実施例A>の共重合体の5%重量減少温度と同様にして求めた。
【0114】
[共重合体の内部ヘイズ]
共重合体の内部ヘイズはJIS K7136の規定に準拠して求めた。具体的には、共重合体を240℃、40MPaで10分間熱プレス成形して得られた未延伸フィルムを用意し、ヘイズメーター(日本電色工業製、NDH-1001DP)を用いて、光路長10mmの石英セルに1,2,3,4-テトラヒドロナフタリン(テトラリン)を満たし、その中にフィルムを浸漬して測定し、100μm当たりの内部ヘイズ値として算出した。
【0115】
[共重合体の内部b*値]
共重合体を240℃、40MPaで10分間熱プレス成形して得られた未延伸フィルムを用意し、分光光度計(日本電色工業製、Colormeter ZE6000)を用いて、光路長10mmの石英セルに1,2,3,4-テトラヒドロナフタリン(テトラリン)を満たし、その中にフィルムを浸漬して測定し、L*a*b*表色系の厚さ100μm当たりのb*値として算出した。
【0116】
[共重合体又は共重合体混合物中の溶媒(化合物)含有量]
共重合体又は共重合体混合物中の溶媒(化合物)含有量は、共重合体又は共重合体混合物をジメチルアセトアミドに溶解させた後、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、装置名:GC-2014)を用いて測定して求めた。
【0117】
[ドープ樹脂組成物の粘度]
ドープ樹脂組成物の粘度は、BHII型粘度計(東機産業製)を用いて25℃にて測定した。
【0118】
[ドープ樹脂組成物の黄色度(YI)]
ドープ樹脂組成物の黄色度(YI)はJIS Z 8729の規定に準拠して求めた。具体的には分光色差計(日本電色工業製:Colormeter ZE6000)の透過モードで、光路長10mmの石英セルを用いて測定した。
【0119】
[ドープ樹脂組成物のヘイズ]
ドープ樹脂組成物のヘイズはJIS K7136の規定に準拠して求めた。具体的には、ヘイズメーター(日本電色工業製、NDH-1001DP)を用いて、光路長10mmの石英セルを用いて測定した。
【0120】
[フィルムの厚さ]
フィルムの厚さは、<実施例A>のフィルムの厚さと同様にして求めた。
【0121】
[フィルムの全光線透過率]
フィルムの全光線透過率は、<実施例A>のフィルムの全光線透過率と同様にして求めた。
【0122】
[フィルムの引張試験(弾性率測定)]
<実施例A>のフィルムの引張試験と同様にしてフィルムの引張試験(弾性率測定)を行い、弾性率を測定した。
【0123】
[フィルムの鉛筆硬度]
フィルムの鉛筆硬度は、<実施例A>のフィルムの鉛筆硬度と同様にして求めた。
【0124】
[フィルムのフォルダブル試験]
<実施例A>のフィルムのフォルダブル試験と同様にしてフィルムのフォルダブル試験を行い、<実施例A>と同様に、試験後の折り畳まれた部分のフィルムの破断の有無を評価した。
【0125】
[フィルムの位相差]
延伸フィルムの波長589nmの光に対する面内位相差Re及び厚さ方向位相差Rthを、全自動複屈折計(王子計測機器製「KOBRA-WR」)を用いて入射角40°の条件で測定した。具体的には、フィルムの面内における遅相軸方向の屈折率をnx、フィルムの面内における進相軸方向の屈折率をny、フィルムの厚さ方向の屈折率をnz、フィルムの厚さをdとして、下記式から面内位相差Re及び厚さ方向位相差Rthをそれぞれ求めた。なお、下記の実施例においては、フィルムの厚さdを40μmとして、面内位相差Re及び厚さ方向位相差Rthを求めた。
面内位相差Re=(nx-ny)×d
厚さ方向位相差Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d
【0126】
<静置重合による共重合体の合成>
(試験例B1)
密閉できる反応容器内に、メタクリル酸メチル(MMA)7部、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)3部、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)10部、及び開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.03部仕込み、これに窒素を2分間バブリングして容器内を窒素置換後、蓋を締めて密閉した。その後、反応容器を75℃のオイルバスに2時間漬けて重合を行った。重合後クロロホルムで希釈した後、メタノール中に加えて再沈殿を行い、白色固体を取り出した。その後240℃で1時間真空乾燥をして、白色の共重合体を約6部得た。得られた共重合体の物性を表2に示す。
【0127】
(試験例B2)
溶媒をNMPからγ-ブチロラクトン(GBL)に変更した以外は、試験例B1と同様にして重合、再沈殿、乾燥を行い、白色の共重合体を6.5部得た。得られた共重合体の物性を表2に示す。
【0128】
(試験例B3)
溶媒をNMPからジメチルスルホキシド(DMSO)に変更した以外は、試験例B1と同様にして重合、再沈殿、乾燥を行い、白色の共重合体を6部得た。得られた共重合体の物性を表2に示す。
【0129】
(試験例B4)
溶媒をNMPからトルエンに変更した以外は、試験例B1と同様にして重合を行った。しかし、重合の途中で固体が析出し固化したため重合を終了した。
【0130】
(試験例B5)
NMP等の溶媒を用いなかった以外は、試験例B1と同様にして重合を行った。しかし、重合の途中で固体が析出し固化したため重合を終了した。
【0131】
試験例B1~B5から、重合反応率が50%以上であったNMP、GBL、及びDMSOを良好と判定し、これらの溶媒を用いて、以下の撹拌重合を行った。
【0132】
<撹拌重合による共重合体の合成及びフィルムの作製>
(実施例B1-1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸メチル(MMA)8部、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)1.5部、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン(nDM)0.005部、及び溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)10部を仕込み、これに窒素を通じつつ105℃まで昇温させた。その後、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス(登録商標)570、以下「開始剤570」ともいう。)を0.003部加えるとともに、0.2部のNMPで希釈した0.005部の開始剤570及び0.5部のMLを105~115℃で2時間かけて一定速度で滴下した。滴下後、4部のNMPを加え、さらに105~115℃で4時間溶液撹拌重合を行った。重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ99.1%、99.5%であった。得られた重合反応液を240℃で2時間真空乾燥(133Pa(1mmHg))することで、白色の共重合体を得た。得られた共重合体の物性を表3に示す。
【0133】
次に得られた実施例B1-1の共重合体を240℃で熱プレス成形して、厚さ約160μmの未延伸プレスフィルムを得た。得られた未延伸フィルムを96mm×96mmの大きさに切り出し、逐次二軸延伸機(東洋精機製作所製、X6-S)を用いて、Tg+18℃の延伸温度(146℃)にて300%/分の延伸速度で縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の順にそれぞれ延伸倍率が2.0倍となるように逐次二軸延伸を行い、冷却することにより、厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表3に示す。
【0134】
(実施例B1-2)
溶媒をNMPからγ-ブチロラクトン(GBL)に変更した以外は、実施例B1-1と同様にして、共重合体及び厚さ40μmの延伸フィルムを得た。なお、重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ98.5%、99.0%であった。得られた共重合体の物性及び延伸フィルムの物性を表3に示す。
【0135】
(実施例B1-3)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、MMAを9部、MLを0.75部、nDMを0.005部、及び溶媒としてGBLを10部仕込み、これに窒素を通じつつ105℃まで昇温させた。その後開始剤570を0.003部加えるとともに、0.2部のGBLで希釈した0.005部の開始剤570及び0.25部のMLを105~115℃で2時間かけて一定速度で滴下した。滴下後4部のGBLを加え、さらに105~115℃で4時間溶液撹拌重合を行った。重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ98.4%、99.2%であった。得られた重合反応液を実施例B1-1と同様にして、共重合体及び厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた共重合体の物性及び延伸フィルムの物性を表3に示す。
【0136】
(実施例B1-4)
nDMを0.005部から0.03部、溶媒としてGBLを10部から15部に変更し、滴下後に加えていた4部のGBLを加えなかった以外は、実施例B1-3と同様にして、共重合体及び厚さ40μmの延伸フィルムを得た。なお、重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ98.0%、98.5%であった。得られた共重合体の物性及び延伸フィルムの物性を表3に示す。
【0137】
(実施例B1-5)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、MMAを7部、MLを2.2部、及び溶媒としてGBLを10部仕込み、これに窒素を通じつつ105℃まで昇温させた。その後開始剤570を0.003部加えるとともに、0.2部のGBLで希釈した0.005部の開始剤570及び0.8部のMLを105~115℃で2時間かけて一定速度で滴下した。滴下後4部のGBLを加え、さらに105~115℃で4時間溶液撹拌重合を行った。重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ99.1%、99.2%であった。得られた重合反応液を実施例B1-1と同様にして、共重合体及び厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた共重合体の物性及び延伸フィルムの物性を表3に示す。
【0138】
(比較例B1-1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、MMAを7部、MLを3部、及び溶媒としてDMSOを10部仕込み、これに窒素を通じつつ105℃まで昇温させた。その後、開始剤570を0.02部加え、105~115℃で6時間溶液撹拌重合を行った。重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ99.1%、99.5%であった。得られた重合反応液を実施例B1-1と同様にして、共重合体及び厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた共重合体の物性及び延伸フィルムの物性を表3に示す。
【0139】
<ドープ樹脂組成物の調製及びフィルムの作製>
(実施例B2-1)
実施例B1-2で得られた共重合体1部及び分散媒としてのジクロロメタン7部を混合し、1分間手振り後、60分間撹拌混合して、固形分12.5質量%のドープ樹脂組成物を作製した。ドープ樹脂組成物の粘度は0.3Pa・s、YIは0.9、ヘイズは0.3%であった。ドープ樹脂組成物を目視で確認したところ、均一に分散しており、その後一晩静置してもドープ樹脂組成物の外観に変化は見られなかった。
【0140】
次にPETフィルムにドープ樹脂組成物を滴下し、アプリケーターを使用して膜厚800μmに塗り広げた。その後、PETフィルムごと乾燥機に入れ40℃で30分、60℃で30分乾燥させた後、塗布したフィルムをPETから剥離した。得られたフィルムがカールしないように上下に広幅の山型クリップを取り付け乾燥機に吊るした後、100℃で12時間乾燥させ、厚さ160μmの未延伸キャストフィルムを得た。得られた未延伸キャストフィルムを実施例B1-1と同様にして逐次二軸延伸機を用いて延伸することで厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表3に示す。
【0141】
【0142】
【0143】
<試験例C、実施例C、及び比較例C>
[混合溶媒の沸点測定]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた1Lのセパラブルフラスコに、500mlの混合溶媒を加え、これに窒素を通じつつ撹拌しながら昇温を行い、冷却管から還流がかかったときの内温を、混合溶媒の沸点として測定した。
【0144】
[静置重合における重合反応率]
静置重合における重合反応率は、<試験例B、実施例B、及び比較例B>の静置重合における重合反応率と同様にして簡易的に求めた。
【0145】
[撹拌重合における重合反応率及び共重合体の組成分析]
撹拌重合における重合反応時の反応率及び共重合体中の特定単量体単位の含有率は、<試験例B、実施例B、及び比較例B>の撹拌重合における重合反応時の反応率及び共重合体中の特定単量体単位の含有率と同様にして求めた。
【0146】
[共重合体の重量平均分子量及び数平均分子量]
共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、<実施例A>の共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)と同様にして求めた。
【0147】
[共重合体中のML含有量]
共重合体中のML含有量(α-メチレンラクトン由来の構成単位の含有量)は、<実施例A>の共重合体中のML含有量と同様にして求めた。
【0148】
[共重合体のガラス転移温度(Tg)]
共重合体のガラス転移温度は、<実施例A>の共重合体のガラス転移温度と同様にして求めた。
【0149】
[共重合体の5%重量減少温度]
共重合体の5%重量減少温度は、<実施例A>の共重合体の5%重量減少温度と同様にして求めた。
【0150】
[共重合体の内部ヘイズ]
共重合体の内部ヘイズは、<試験例B、実施例B、及び比較例B>の共重合体の内部ヘイズと同様にして求めた。
【0151】
[共重合体の内部b*値]
共重合体の内部b*値は、<試験例B、実施例B、及び比較例B>の共重合体の内部b*値と同様にして求めた。
【0152】
[共重合体中の溶媒(化合物)含有量]
共重合体中の溶媒(化合物)含有量は、<試験例B、実施例B、及び比較例B>の共重合体中の溶媒(化合物)含有量と同様にして求めた。
【0153】
[ドープ樹脂組成物の粘度]
ドープ樹脂組成物の粘度は、<試験例B、実施例B、及び比較例B>のドープ樹脂組成物の粘度と同様にして求めた。
【0154】
[ドープ樹脂組成物の黄色度(YI)]
ドープ樹脂組成物の黄色度(YI)は、<試験例B、実施例B、及び比較例B>のドープ樹脂組成物の黄色度(YI)と同様にして求めた。
【0155】
[ドープ樹脂組成物のヘイズ]
ドープ樹脂組成物のヘイズは、<試験例B、実施例B、及び比較例B>のドープ樹脂組成物のヘイズと同様にして求めた。
【0156】
[フィルムの厚さ]
フィルムの厚さは、<実施例A>のフィルムの厚さと同様にして求めた。
【0157】
[フィルムの全光線透過率]
フィルムの全光線透過率は、<実施例A>のフィルムの全光線透過率と同様にして求めた。
【0158】
[フィルムの引張試験(弾性率測定)]
<実施例A>のフィルムの引張試験と同様にしてフィルムの引張試験(弾性率測定)を行い、弾性率を測定した。
【0159】
[フィルムの鉛筆硬度]
フィルムの鉛筆硬度は、<実施例A>のフィルムの鉛筆硬度と同様にして求めた。
【0160】
[フィルムのフォルダブル試験]
<実施例A>のフィルムのフォルダブル試験と同様にしてフィルムのフォルダブル試験を行い、<実施例A>と同様に、試験後の折り畳まれた部分のフィルムの破断の有無を評価した。
【0161】
[フィルムの位相差]
フィルムの位相差は、<試験例B、実施例B、及び比較例B>のフィルムの位相差と同様にして求めた。
【0162】
<静置重合による共重合体の合成>
(試験例C1)
密閉できる反応容器内に、メタクリル酸メチル(MMA)7部、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)3部、溶媒としてトルエン(tol)10部、及び開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.03部仕込み、これに窒素を2分間バブリングして容器内を窒素置換後、蓋を締めて密閉した。その後、反応容器を75℃のオイルバスに2時間漬けて重合を行った。しかし重合の途中で固体が析出し固化したため重合を終了した。重合後クロロホルムで希釈した後、メタノール中に加えて再沈殿を行い、白色固体を取り出した。
【0163】
(試験例C2)
溶媒をトルエンからアセトン(ACE)に変更した以外は、試験例C1と同様にして重合を行った。しかし、重合の途中で固体が析出し固化したため重合を終了した。
【0164】
(試験例C3)
溶媒をトルエンからシクロヘキサノン(アノン)に変更した以外は、試験例C1と同様にして重合を行った。しかし、重合の途中で固体が析出し固化したため重合を終了した。
【0165】
(試験例C4)
溶媒をトルエンからアセトン(ACE)とシクロヘキサノン(アノン)との混合溶媒(1:1(質量比))に変更した以外は、試験例C1と同様にして重合を行った。重合後クロロホルムで希釈した後、メタノール中に加えて再沈殿を行い、白色固体を取り出した。その後240℃で1時間真空乾燥をして、白色の共重合体を約6部得た。得られた共重合体の物性を表4に示す。
【0166】
試験例C1~C4から、重合の途中で固体が析出しなかった試験例C4の混合溶媒を良好と判定し、このような混合溶媒を中心にして、以下の撹拌重合の検討を行った。
【0167】
<撹拌重合による共重合体の合成及びフィルムの作製>
(実施例C1-1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸メチル(MMA)7.5部、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)2部、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン(nDM)0.005部、及び溶媒としてアセトン(ACE)とシクロヘキサノン(アノン)とを1:1(質量比)で混合した混合溶媒10部を仕込み、これに窒素を通じつつ70℃まで昇温させた。その後、重合開始剤としてAIBNを0.004部加えるとともに、0.2部のACEとアノンとを1:1(質量比)で混合した混合溶媒で希釈した0.011部の開始剤AIBN及び0.5部のMLを70~75℃で3時間かけて一定速度で滴下した。滴下後、4部のACEとアノンとを1:1(質量比)で混合した混合溶媒を加え、さらに70~75℃で4時間溶液撹拌重合を行った。重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ92.1%、95.5%であった。得られた重合反応液を240℃で2時間真空乾燥(133Pa(1mmHg))することで、白色の共重合体を得た。得られた共重合体の物性を表5に示す。
【0168】
次に得られた実施例C1-1の共重合体を240℃で熱プレス成形して、厚さ約160μmの未延伸プレスフィルムを得た。得られた未延伸フィルムを96mm×96mmの大きさに切り出し、逐次二軸延伸機(東洋精機製作所製、X6-S)を用いて、Tg+18℃の延伸温度(146℃)にて300%/分の延伸速度で縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の順にそれぞれ延伸倍率が2.0倍となるように逐次二軸延伸を行い、冷却することにより、厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表5に示す。
【0169】
(実施例C1-2)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸メチル(MMA)6部、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)3部、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン(nDM)0.005部、及び溶媒としてアセトン(ACE)とシクロヘキサノン(アノン)とを3:7(質量比)で混合した混合溶媒10部を仕込み、これに窒素を通じつつ85℃まで昇温させた。その後、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス(登録商標)575、以下「開始剤575」ともいう。)を0.004部加えるとともに、0.2部のACEとアノンとを3:7(質量比)で混合した混合溶媒で希釈した0.009部の開始剤575及び1部のMLを85~90℃で3時間かけて一定速度で滴下した。滴下後、4部のACEとアノンとを3:7(質量比)で混合した混合溶媒を加え、さらに85~90℃で4時間溶液撹拌重合を行った。重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ93.1%、95.5%であった。得られた重合反応液を240℃で2時間真空乾燥(133Pa(1mmHg))することで、白色の共重合体を得た。得られた共重合体の物性を表5に示す。
【0170】
次に得られた実施例C1-2の共重合体を240℃で熱プレス成形して、厚さ約160μmの未延伸プレスフィルムを得た。得られた未延伸フィルムを96mm×96mmの大きさに切り出し、逐次二軸延伸機(東洋精機製作所製、X6-S)を用いて、Tg+18℃の延伸温度(146℃)にて300%/分の延伸速度で縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の順にそれぞれ延伸倍率が2.0倍となるように逐次二軸延伸を行い、冷却することにより、厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表5に示す。
【0171】
(実施例C1-3)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸メチル(MMA)6部、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)3部、及び溶媒としてアセトン(ACE)とγ‐ブチロラクトン(GBL)を2:8(質量比)で混合した混合溶媒10部を仕込み、これに窒素を通じつつ100℃まで昇温させた。その後、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス(登録商標)570、以下「開始剤570」ともいう。)を0.004部加えるとともに、0.2部のACEとGBLとを2:8(質量比)で混合した混合溶媒で希釈した0.009部の開始剤570及び1部のMLを100~110℃で3時間かけて一定速度で滴下した。滴下後、4部のACEとGBLとを2:8(質量比)で混合した混合溶媒を加え、さらに100~110℃で4時間溶液撹拌重合を行った。重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ92.2%、96.5%であった。得られた重合反応液を240℃で2時間真空乾燥(133Pa(1mmHg))することで、白色の共重合体を得た。得られた共重合体の物性を表5に示す。
【0172】
次に得られた実施例C1-3の共重合体を240℃で熱プレス成形して、厚さ約160μmの未延伸プレスフィルムを得た。得られた未延伸フィルムを96mm×96mmの大きさに切り出し、逐次二軸延伸機(東洋精機製作所製、X6-S)を用いて、Tg+18℃の延伸温度(146℃)にて300%/分の延伸速度で縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の順にそれぞれ延伸倍率が2.0倍となるように逐次二軸延伸を行い、冷却することにより、厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表5に示す。
【0173】
(実施例C1-4)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸メチル(MMA)5部、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)3.2部、及び溶媒としてアセトン(ACE)とN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)とを3:7(質量比)で混合した混合溶媒10部を仕込み、これに窒素を通じつつ85℃まで昇温させた。その後、開始剤575を0.004部加えるとともに、0.2部のACEとDMAcとを3:7(質量比)で混合した混合溶媒で希釈した0.009部の開始剤575及び1.8部のMLを85~90℃で3時間かけて一定速度で滴下した。滴下後、4部のACEとDMAcとを3:7(質量比)で混合した混合溶媒を加え、さらに85~90℃で4時間溶液撹拌重合を行った。重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ90.2%、95.5%であった。得られた重合反応液を240℃で2時間真空乾燥(133Pa(1mmHg))することで、白色の共重合体を得た。得られた共重合体の物性を表5に示す。
【0174】
次に得られた実施例C1-4の共重合体を240℃で熱プレス成形して、厚さ約160μmの未延伸プレスフィルムを得た。得られた未延伸フィルムを96mm×96mmの大きさに切り出し、逐次二軸延伸機(東洋精機製作所製、X6-S)を用いて、Tg+18℃の延伸温度(146℃)にて300%/分の延伸速度で縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の順にそれぞれ延伸倍率が2.0倍となるように逐次二軸延伸を行い、冷却することにより、厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表5に示す。
【0175】
(比較例1-1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、MMAを7部、MLを3部、及び溶媒としてDMSOを10部仕込み、これに窒素を通じつつ105℃まで昇温させた。その後、開始剤570を0.02部加え、105~110℃で6時間溶液撹拌重合を行った。重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ99.1%、99.5%であった。得られた重合反応液を実施例C1-1と同様にして、共重合体及び厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた共重合体の物性及び延伸フィルムの物性を表5に示す。
【0176】
<ドープ樹脂組成物の調製及びフィルムの作製>
(実施例C2-1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸メチル(MMA)7.5部、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)2部、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン(nDM)0.005部、及び溶媒としてアセトン(ACE)とシクロヘキサノン(アノン)とを3:7(質量比)で混合した混合溶媒10部を仕込み、これに窒素を通じつつ85℃まで昇温させた。その後、開始剤575を0.004部加えるとともに、0.2部のACEとアノンとを3:7(質量比)で混合した混合溶媒で希釈した0.009部の開始剤575及び0.5部のMLを85~90℃で3時間かけて一定速度で滴下した。滴下後、4部のACEとアノンとを3:7(質量比)で混合した混合溶媒を加え、さらに85~90℃で4時間溶液撹拌重合を行った。重合反応液中の未反応単量体量より算出したMMA、MLの転化率はそれぞれ93.1%、97.5%であった。得られた重合反応液をACEとアノンとを3:7(質量比)で混合した混合溶媒55部で希釈し、共重合体含有量12.5質量%のドープ樹脂組成物を作製した。ドープ樹脂組成物は、3μmのメンブレンフィルターで加圧濾過した。ドープ樹脂組成物の物性を表5に示す。ドープ樹脂組成物を目視で確認したところ、均一に分散しており、その後一晩静置してもドープ樹脂組成物の外観に変化は見られなかった。
【0177】
次にガラス基板に実施例C2-1のドープ樹脂組成物を塗布して、150℃で2時間真空乾燥して、厚さ120μmの未延伸キャストフィルムを得た。得られた未延伸キャストフィルムを実施例C1-1と同様にして逐次二軸延伸機を用いて延伸することで厚さ30μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表5に示す。
【0178】
(実施例C2-2)
実施例C1-2で得られた共重合体1部及び分散媒としてのジクロロメタン7部を混合し、1分間手振り後、60分間撹拌混合して、固形分12.5質量%のドープ樹脂組成物を作製した。ドープ樹脂組成物の物性は表5に示す。ドープ樹脂組成物を目視で確認したところ、均一に分散しており、その後一晩静置してもドープ樹脂組成物の外観に変化は見られなかった。
【0179】
次にPETフィルムに実施例C2-2のドープ樹脂組成物を滴下し、アプリケーターを使用して膜厚800μmに塗り広げた。その後、PETフィルムごと乾燥機に入れ40℃で30分、60℃で30分乾燥させた後、塗布したフィルムをPETから剥離した。得られたフィルムがカールしないように上下に広幅の山型クリップを取り付け乾燥機に吊るした後、100℃で12時間乾燥させ、厚さ160μmの未延伸キャストフィルムを得た。得られた未延伸キャストフィルムを実施例C1-1と同様にして逐次二軸延伸機を用いて延伸することで厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表5に示す。
【0180】
【0181】