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特許7474778臨床状態における酸素飽和度を監視するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】臨床状態における酸素飽和度を監視するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
A61B5/1455
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021551896
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2020055706
(87)【国際公開番号】W WO2020178346
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】62814890
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】パティル メル アダグーダ
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-507465(JP,A)
【文献】特開2007-203090(JP,A)
【文献】特表2019-502422(JP,A)
【文献】特開2010-200911(JP,A)
【文献】特表2011-526819(JP,A)
【文献】特開2003-102694(JP,A)
【文献】特開2019-010437(JP,A)
【文献】特開2009-254522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0172691(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1455
A61B 5/02-5/03
G01N 21/17
G01N 21/27
G01N 21/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素飽和度モニタであって、
第1のクランプ部及び第2のクランプ部を持つクランプと、
前記第1のクランプ部に配置された光源のアレイであって、各前記光源は、(i)オフ、(ii)赤色光を発すること、(iii)赤外光を発すること、及び(iv)前記赤色光及び前記赤外光の両方を発すること、との間で切り換え可能である、光源のアレイと、
前記光源のアレイに面する前記第2のクランプ部に配置された光検出器のアレイであって、前記光検出器のアレイの各光検出器は、前記光源の対応する光源から発せられた光を検出するよう位置合わせされる、光検出器のアレイと、
電子プロセッサと
を有し、前記電子プロセッサは、
前記光源のアレイの他の全ての光源がオフである状態で、前記光源のアレイの単一のアクティブな光源により、切り換えられた赤色光及び赤外光を発するよう、前記光源のアレイを制御し、
対応する中央光源から発せられた前記単一のアクティブな光源から発せられた光を検出するよう位置合わせされた前記光検出器のアレイの光検出器を用いて、切り換えられた赤色光及び赤外光を検出し、
前記単一のアクティブな光源から発せられた光を検出するよう位置合わせされた前記光検出器以外の前記光検出器のアレイの光検出器を用いて、周囲光を検出する
ようプログラムされた、酸素飽和度モニタ。
【請求項2】
前記電子プロセッサは更に、
前記検出された切り換えられた赤色光及び赤外光について赤色/赤外光強度比を計算し、
前記検出された周囲光に基づいて前記赤色/赤外光強度比を補正し、
前記補正された赤色/赤外光強度比を酸素飽和度値に変換する
ようプログラムされた、請求項1に記載の酸素飽和度モニタ。
【請求項3】
前記電子プロセッサは、
前記単一のアクティブな光源から発せられた光を検出するよう位置合わせされた前記光検出器からのそれぞれの検出器のユークリッド距離に基づいてスケーリングされた前記単一のアクティブな光源から発せられた光を検出するよう位置合わせされた光検出器以外の、前記光検出器のアレイの光検出器により検出された前記周囲光から補正因子を算出すること、及び
前記赤色/赤外光強度比から前記補正因子を減算することにより、前記赤色/赤外光強度比を補正すること
を含む動作によって、前記赤色/赤外光強度比を補正するようプログラムされた、請求項2に記載の酸素飽和度モニタ。
【請求項4】
前記補正因子は、
κ=Σαβ
であり、ここで
=log(Ist1)λ/log(Ist2)λ
であり、ここでκは前記補正因子であり、αは検出器jについての寄与因子であり、βは検出器jと対応する光源から赤色光及び赤外光を受けた検出器との間のユークリッド距離であり、λ及びλは前記光の波長であり、Ist1及びIst2は所与の対応する検出器について光源のいずれもが動作せずに測定された光強度である、請求項3に記載の酸素飽和度モニタ。
【請求項5】
前記電子プロセッサは更に、
機械学習されたモデルを用いて、前記検出された周囲光に基ついて前記赤色/赤外光強度比を補正する
ようプログラムされた、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の酸素飽和度モニタ。
【請求項6】
前記光源のアレイ及び前記光検出器のアレイは、ともに3×3マトリクスで配置された、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の酸素飽和度モニタ。
【請求項7】
前記第1のクランプ部及び前記第2のクランプ部の少なくとも一方の動きを測定するよう構成された少なくとも1つの動きセンサと、
前記光源のアレイにより出力され、前記光検出器のアレイにより測定された、前記赤色光及び前記赤外光に少なくとも基づいて、更に前記測定された動きに基づいて、酸素飽和度値を決定するよう構成された、少なくとも1つの電子プロセッサと、
を更に含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の酸素飽和度モニタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者監視技術、酸素飽和度モニタ技術、パルスオキシメトリー技術、動き補償技術、及び関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスオキシメータは、臨床環境で使用される一般的な装置である。パルスオキシメータは、患者の血液酸素飽和度(SpO)レベルをモニタリングするために使用される。典型的には、臨床環境設定では、パルスオキシメータを患者に取り付ける(即ち引っ掛ける)ことができ、パルスオキシメータはSpOレベルを連続的に測定する。パルスオキシメータは患者に連続的に取り付ける必要があるため、パルスオキシメータは患者の身体部分にきつく取り付けすぎないように設計されている。この装置は、成人患者の人差し指(又は他の指)のいずれかに引っ掛けるのが一般的である。小児科使用では、該装置は、患者の脚に引っ掛けられるように設計される。パルスオキシメータは使用期間が長いため、患者に苦痛や不快感を与えない程度に十分緩む。しかしながら、この種の設計は、該装置を、患者の身体が動くときに損傷を受け易いものにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
パルスオキシメータは、ヘモグロビン(Hb)及び酸化ヘモグロビン(HbO)による赤色光及び赤外光の吸収の測定された差に基づいて、また組織の測定領域における動脈血の体積に基づいて、SpOレベルを決定するように構成される。吸収の測定された差、又は測定された体積の測定された差に対するいかなる変化又は妨害も、パルスオキシメータからの最終的なSpO読み取りに影響を及ぼす。例えば、患者による運動は、SpO領域の測定位置の変化を引き起こすことがある。この変化は、体組織の全ての領域が同じ体積の動脈血を有するわけではないので、SpO読み取り値の差につながり得る。SpOの測定精度を支配するもう1つの要因は、装置の光源であり、これは赤色及び赤外線(IR)波長又は範囲における吸収の測定差の精度に影響を与える可能性があるためである。しかしながら、パルスオキシメータは、典型的には、(例えば指、耳たぶ、幼児の足などに取り付けられるクリップを使用して)外部から適用され、これらの配置では、光検出器センサと患者の皮膚との間に間隙が一般に存在する。
この間隙は、周囲光が装置の光検出器に当たることを可能にし、SpO測定の精度に悪影響を及ぼす可能性があるノイズに寄与する。
【0004】
以下は、これらの問題を克服するための新規で改善されたシステム及び方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示された一態様では、酸素飽和度モニタは、対向する第1のクランプ部及び第2のクランプ部を持つクランプを含む。光源のアレイが、該第1のクランプ部に配置される。各光源は、(i)オフ、(ii)第1の波長又はスペクトル範囲の光を発すること、(iii)該第1の波長又はスペクトル範囲とは異なる第2の波長又はスペクトル範囲の光を発すること、及び(iv)該第1及び第2の波長又はスペクトル範囲の両方で光を発すること、との間で切り換え可能である。光検出器のアレイは、該光源のアレイに面する該第2のクランプ部に配置される。該光検出器のアレイの各光検出器は、前記光源の対応する光源から発せられた光を検出するよう位置合わせされる。
【0006】
別の開示された態様では、酸素飽和度モニタは、対向する第1のクランプ部及び第2のクランプ部を持つクランプを含む。光源のアレイは、第1のクランプ部に配置される。光検出器のアレイは、第2のクランプ部に配置される。少なくとも1つの動きセンサが、前記第1のクランプ部及び前記第2のクランプ部の少なくとも一方に配置され、前記第1のクランプ部及び前記第2のクランプ部の少なくとも一方の動きデータを検出するよう構成される。少なくとも1つの電子プロセッサが、前記少なくとも1つの動きセンサから動きデータを受信し、前記検出された周囲光を除去して前記動きデータを補償するよう前記受信された光データを補正し、前記補正された光データから酸素飽和度信号を算出する、ようプログラムされる。
【0007】
別の開示された態様では、酸素飽和度モニタは、対向する第1のクランプ部及び第2のクランプ部を持つクランプを含む。光源のアレイは、前記第1のクランプ部に配置される。光検出器のアレイは、前記第2のクランプ部に配置される。前記光検出器のアレイの各光検出器は、対応する光源から発せられた光のみを検出するよう構成される。加速度計は、前記第1のクランプ部及び前記第2のクランプ部の少なくとも一方の変位を測定するよう構成される。ジャイロスコープは、前記第1のクランプ部及び前記第2のクランプ部の少なくとも一方の回転を測定するよう構成される。少なくとも1つの電子プロセッサが、受信された赤色光データ、赤外光データ、及び前記光検出器により検出された周囲光を補正して、前記検出された周囲光を除去し、補正された光信号を生成し、前記加速度計により測定された変位データと、前記ジャイロスコープにより測定された変位データと、を合計し、前記合計された変位データ及び前記補正された光信号を用いて、前記赤色光データ及び前記赤外光データを測定するため、前記光源のアレイの光源及び前記光検出器のアレイの光検出器を決定し、前記決定された光源及び前記決定された光検出器を用いて、赤色光及び赤外光を検出し、前記検出された赤色光及び前記検出された赤外光から、酸素飽和度信号を算出する、ようプログラムされる。
【0008】
ひとつの利点は、改善された精度で、患者の血中酸素飽和度レベルの測定を提供する点に存する。
【0009】
他の利点は、血中酸素飽和度レベル測定における患者の動きの影響を低減させることに存する。
【0010】
他の利点は、血中酸素飽和度レベル測定における周囲光の影響を低減させることに存する。
【0011】
他の利点は、血中酸素飽和度レベル測定における動きにより引き起こされるアーティファクトを補償することに存する。
【0012】
他の利点は、患者の動き及び周囲光の変化にあまり影響を受けないパルスオキシメータを提供することに存する。
【0013】
示される実施例は、本開示を読んで理解すると当業者に明らかになるように、前述の利点のいずれも提供しない、1つ、2つ、より多く又は全てを提供することができ、及び/又は他の利点を提供することができる。
【0014】
本開示は、様々な構成要素及び構成要素の配置、並びに様々なステップ及びステップの配置の形成をとることができる。図面は、単に好ましい実施例を例示する目的のものであり、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一態様による酸素飽和度モニタを模式的に示す。
図2図1の酸素飽和度モニタの異なる実施例を模式的に示す。
図3図1の酸素飽和度モニタの異なる実施例を模式的に示す。
図4】酸素飽和度モニタの例示的なフロー図動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
従来のクリップオン式パルスオキシメータは、1つのクランプ片に赤色光源と赤外光源があり、対向するクランプ片に光検出器があるクランプ設計となっている。装置は、指先、耳たぶ、幼児の場合は足、又は光源からの光が光検出器で検出されるように身体組織を透過するのに十分に薄い他の身体部分にクランプされる。透過赤外線(例えば950nm)対赤色光(例えば650nm)の比に基づいて、周辺SpOレベルが測定される。しかしながら、SpO測定は、光検出器によってピックアップされる迷光によって悪影響を受ける可能性がある。
【0017】
ここで開示される幾つかの実施例では、迷光に対する堅固さを向上させるために、IR/R光源/光検出器対のアレイが採用され、各IR/R光源(それ自体、実際には、赤色光を放射する1つの光源と、他のIR光を放射する1つの光源)が、光検出器のうちの1つを照らすように配置される。例示的なアレイは3×3であるが、他のサイズも考えられる。SpO測定中、単一のIR/R光源/光検出器ペアのみを使用して、(未補正の) SpO信号を測定する。SpO信号を測定するために使用される対に隣接する検出器は、あらゆる迷光を検出するために使用される。以下に、隣接する検出器によって測定された強度に基づいて、測定されたSpO信号を補正するための補正係数κの式を開示する。
【0018】
ここで開示される他の実施例では、パルスオキシメータは、加速度計と、装置に搭載されたジャイロスコープとを含む変位測定ユニットを備えることができる。並進運動と回転運動の両方をこの組み合わせで検出することができる。変位測定は、装置が動いているときに測定休止をトリガする、迷光補正係数κの新しい計算をトリガする(装置を動かすと迷光に対して異なる露光を受ける可能性があるため)、又は(補正されていない)SpO信号を測定するために使用されるIR/R光源/光検出器対の選択を更新するなど、様々な方法で使用することができる。
【0019】
代替実施例では、機械学習(ML)を使用して、迷光補正係数κ、変位補正、又はその両方をトレーニングすることができる。
【0020】
図1を参照すると、酸素飽和度モニタ10の例示的な実施例が示されている。幾つかの実施例では、酸素飽和度モニタ10は、1つ以上のバイタルサインが酸素飽和度モニタから得られた測定値から導出されるパルス酸素濃度計であっても良い。酸素飽和度モニタ10は、第1のクランプ部14と、付勢バネを備えたヒンジのようなクランプ機構17によって互いに結合された対向する第2のクランプ部16と、を有するクランプ12として構成することができる。動作中、クランプ機構17は、クランプ12が身体部分に取り付けられたときに、それぞれの第1及び第2のクランプ片14、16の対向面14F、16Fを互いに向かって付勢する。クランプ機構17は、身体部分(例えば指F)が対向面14F、16Fによってしっかりと保持されることを確実にするために、2つの対向面14F、16Fを互いに十分に近接させるように動作可能である。これらの面は、身体部分の予想される幾何学的形状に基づいて任意に輪郭付けられても良く、クランプ機構17は、過剰なクランプ圧力によって患者に不快感を引き起こすことなく、モニタ10を身体部分に保持するための十分なクランプ力を提供するように設計されることが理解されるであろう。図1に示されるように、クランプ12は、患者の指Fに取り付け可能な指クランプとして構成される(しかし、クランプは、光源18からの光が患者の身体組織を通って(例えば指Fを通って)透過し、光検出器20によって検出されるのに十分に薄い、足首、手首などのような、患者の任意の適切な部分に取り付けられても良い)。図示の例では、第1クランプ部14は、指の「頂部」部分に配置され、第2クランプ部16は、指の「底部」部分に配置される。
【0021】
光源18及び光検出器20は、典型的には、それぞれのクランプ部14、16のそれぞれの面14F、16Fに埋め込まれており、従って、モニタ10がフィンガFにクランプされるときに、視界から遮ることができることに留意されたい。このことは、光源18及び光検出器20を破線を用いて示すことによって、図1に示される。また、図1に示すように、光源18及び/又は光検出器20と指Fとの間には、ある程度の間隙又は空間が存在し得ることに留意されたい。これらの間隙又は空間は、迷光が検出器20に到達することができる進入経路を提供することができることが理解されるであろう。加えて、このような間隙が存在しない場合であっても、光源18からの光が光検出器20に到達するためには、モニタ10がクランプされる本体部分(例えば指F)が赤色及び赤外線で光学的に半透明でなければならず、従って、迷光は半透明体部分を通過して光検出器20に到達することができる。
【0022】
図1を引き続き参照すると、今度は、図2を参照して、光源18は、第1のクランプ部分14上に配置される光源18のアレイを含み、光検出器20のアレイは、図1に見られるように、光源のアレイに対向する第2のクランプ部分16上に配置される。光検出器20のアレイの各光検出器は、光源18のアレイの対応する光源からの放射光を検出するように位置合わせされる。図2に示すように、光源18の例示的なアレイは、9個の光源18.1乃至18.9を含み、光検出器20の例示的なアレイは、9個の対応する光検出器20.1乃至20.9を含む。光検出器20.1乃至20.9は、対応する光源18.1乃至18.9からの赤色光及び/又は赤外光のみを検出するように配置される(例えば光検出器20.1は、光源18.1から放射される光のみを検出し、光検出器20.2は、光源18.2から放射される光のみを検出する等)。図2に示すように、光源18のアレイ及び光検出器20のアレイは、いずれも3×3マトリクスで配置されるが、任意の適切な構成が可能である。更に、光源18のアレイにおける光源の数(及び同様に光検出器20のアレイにおける光検出器の数)は、光源の数が光検出器の数と同じである限り、9以外の任意の適切な数であり得る。
【0023】
光源18のアレイの光源18.1乃至18.9の各々は、(i)オフ、(ii)第1の波長又はスペクトル範囲の光を放出すること、(iii)第1の波長又はスペクトル範囲とは異なる第2の波長又はスペクトル範囲の光を放出すること、及び(iv)第1及び第2の波長又はスペクトル範囲の両方で光を放出すること、を含む、複数の動作モード間で切り換え可能である。例えば、一実施例では、第1の波長又はスペクトル範囲は赤色光であり、スペクトル範囲の第2の波長は赤外線(IR)光である。このために、各光源18.1乃至18.9は、赤色光源及び赤外光源を含む。このことは、図2に模式的に示されており、構成光源は、IR光源18IR及び赤色光源18Rとして標識されている(このラベル付けは、例示の便宜上、光源18.3についてのみ行われるが、光源18.1乃至18.9の各々は、同様に2つの構成光源を含む)。
【0024】
これらの複数の動作モード間の光源18.1乃至18.9の動作を制御するために、酸素飽和度モニタは、光源のアレイ18を制御するようにプログラムされた少なくとも1つの電子プロセッサ22(例えばマイクロプロセッサ)を更に含み、光源のアレイの全ての他の光源(例えば光源18.1乃至18.2及び18.4乃至18.9)をオフにした状態で、光源のアレイの単一のアクティブな光源(例えば光源18.3)によって切り換えられた赤色光及び赤外光を放射する。このことは、赤外光を出力するために赤外光源18IRを起動すること;赤色光源18Rを起動して赤色光を出力すること;又はオフのときに光源18IR又は18Rのいずれかを起動しないこと、によって適切に行われる。電子プロセッサ22はまた、光検出器20のアレイの動作を制御するようにプログラムされている。例えば、電子プロセッサ22は、光検出器20のアレイを制御(又は選択的に読み取る)するようにプログラムされており、対応する中央光源から放射された単一の活性光源から放射された放射光を検出するように位置合わせされた光検出器20.1乃至20.9を用いて、切り換えられた赤色光及び赤外光を検出する(例えば中央光源18.5は光を放射するように構成され、対応する光検出器20.5は中央光源からの放射光を検出する唯一の光検出器となるように制御される)。更に、他の光検出器(例えば光検出器20.1乃至20.4及び20.6乃至20.9、又はこれらの他の光検出器の幾つかのサブセット)は、周囲光(例えば対応する光源18.1乃至18.4及び18.6乃至18.9から放射されない光)を検出するために、電子プロセッサ22によって制御される(又は読み取られる)。
【0025】
酸素飽和度モニタ10は、患者の酸素飽和度値(及び任意選択で、赤色光及び/又は赤外光の拍動性変動から決定される心拍数などの1つ又は複数のバイタルサイン)を決定するように構成される。幾つかの実施例では、電子プロセッサ22は、検出された切り換えられた赤色光及び赤外光に対する赤色/赤外光強度比を計算し、検出された環境光に基づいて赤色/赤外光強度比を補正し、補正された赤色/赤外光強度比を酸素飽和値に変換するようにプログラムされる。
【0026】
赤外IR(例えばλ=950nm)光に対する透過赤R(例えばλ=650nm)光の比率に基づいて、周辺酸素飽和度(SpO)レベルが測定される。例えば、比率:
R=log(Iac1)λ/log(Iac2)λ
が計算されても良く、
ここで、Iac1、Iac2は、赤色光(即ち屈折率ac1)及びIR光(即ち屈折率ac2)それぞれに対する強度のac成分である。信号Rは、完全な酸素飽和レベル(例えばSpO=100%)を有する健康な患者について決定された適切な較正ルックアップテーブル又は較正関数を使用して、百分率(ここで、SpO=100%は完全に酸素化された血液である)の単位で、SpO読み取り値に変換される。パルス(即ち心拍数)は、検出された光の強度振動の周期性として検出され得る。
【0027】
しかしながら、SpO測定(又は同等に、上記の例における比Rの値)は、1つ以上の光検出器(例えば非中心光検出器20.1乃至20.4及び20.6乃至20.9)によってピックアップされる迷光によって悪影響を受ける可能性がある。迷光に一対する堅固さを改善するために、光源18のアレイ及び光検出器20のアレイは、対として配置される。図2に示すように、また、例示的な光源18.3についてラベル付けしたように、光源18.1乃至18.9は、それぞれ、一対の切り換え光源として配置され、一方の光源18Rは赤色光を放射し、他方の光源18IRはIR光を放射する。光源18.1乃至18.9は、対応する光検出器20.1乃至20.9を照らす。SpO測定中、信号比Rの測定には、単一のIR/R光源/光検出器対(例えば光源18.5及び光検出器20.5)のみが使用されるが、隣接する対(例えば光検出器20.1乃至20.4及び20.6乃至20.9)の検出器は、任意の迷光を検出するように動作する。選択された対によって測定された信号Rは、補正Rcorrected=R-κを使用して、隣接する検出器(ここではインデクスj)によって測定された強度値に基づいて補正することができる。ここで、補正κは、式(1)によって与えられる:
κ=Σαβ (1)
ここで、I=log(Ist1)λ/log(Ist2)λ
補正κでは、インデクスjは、信号Rを測定するために使用されるペア(例えば光源18.5及び光検出器20.5)に隣接する検出器のセット上を走り、因子aは、検出器j(例えば図2に示されるように、検出器20.3、20.6、20.9は、検出器20.1、20.4、20.7と比較してより高い迷光を受信し、従ってより高いα値を有する)に対する寄与因子であり、因子βは、信号Rを測定するために使用されるペアに対する検出器jのユークリッド距離に比例する。強度Ist1及びIst2は、所与の光源検出器20.1乃至20.9の組み合わせに対して動作する光源18.1乃至18.9のいずれもなしで測定される。強度Ist1は、検出器jによって観察される迷光の赤色光成分に対する強度のAC成分に対応し、同様に強度Ist2は、検出器jによって観察される迷光のIR強度成分のAC成分に対応する。
【0028】
他の実施例では、電子プロセッサ22は、機械学習(ML)モデルを使用して、検出された周囲光に基づいて赤色/赤外光強度比を補正するようにプログラムされる。MLモデルは、過去の酸素飽和度測定値に基づいてトレーニングされる。例えば、SpO=100%を有する健康な被験者について、完全な暗所(例えば迷光が存在しない暗室に置かれた)で取得されたグラウンドトゥルース測定値を用いてデータを収集することができる。次に、一組の光源18の全ての光源をオフにした状態で、他の検出器による測定値と共に、SpO測定値中に迷光の様々な強度レベル及び空間配向を適用することができる。MLモデル(例えばサポートベクトルマシン(SVM)、ニューラルネットワーク等であっても良い)は、これらを入力として受け取り、測定値を補正するκ値を出力して、先験的に知られているグラウンドトゥルースSpO=100%を出力するようにトレーニングされる。
【0029】
次に図3を参照し、引き続き図1を参照すると、酸素飽和度モニタ10は、任意に、第1クランプ部14及び第2クランプ部16のうちの少なくとも1つの動きを測定するように構成された少なくとも1つの動きセンサを更に含む。電子プロセッサ22は、これらの実施例では、検出された赤色光及び赤外光に基づいて、検出された動きと共に酸素飽和値を決定するようにプログラムされる。
【0030】
少なくとも1つの運動センサは、(i)第1のクランプ部分14及び第2のクランプ部分16のうちの少なくとも1つの変位を測定するように構成された加速度計24と、(ii)第1のクランプ部分及び第2のクランプ部分のうちの少なくとも1つの回転を測定するように構成されたジャイロスコープ26と、を含む。図3に示すように、加速度計24は、第1のクランプ部14上に配置され(かつ、変位を測定するように構成され)、ジャイロスコープ26は、反対側の構成が実装されても良いが、第2のクランプ部16上に配置される(かつ、回転を測定するように構成される)。なお、第1及び第2のクランプ部14,16は、クランプ機構17によって機械的に連結されているので、第1及び第2のクランプ部14,16(クランプ機構17とともに)は、単一の剛体ユニットとして変位又は回転することが期待される。
【0031】
加速度計24は、第1クランプ部14の3次元(例えばx軸、y軸及びz軸に沿った)の動き(例えば横方向の動き)データを測定するように構成される。第1の変位値は、加速度計24によって測定された運動データから電子プロセッサ22によって決定される。第1の変位値は、式2:
変位(加速度計)=V(本来の位置)-V(新しい位置) (2)
によって計算される。ここで、Vは、加速度計24のx、y及びz方向の位置の和である。
【0032】
ジャイロスコープ26は、第2クランプ部16の3軸(例えばピッチ軸、ロール軸、ヨー軸に沿った)の動き(例えば回転動き)データを測定するように構成される。第2の変位値は、ジャイロスコープ26によって測定された移動データから電子プロセッサ22によって決定される。第2の変位値は、式3:
【数1】
によって決定される。ここで、
【数2】
は、ジャイロスコープ26のロール軸に沿った回転データである。指は、ロール軸に対して横断方向であるジャイロスコープのピッチ軸又はヨー軸に沿って回転しないので、ジャイロスコープ26のロール軸に沿った動き(例えば時計回り/時計回り方向の指Fの回転)のみが収集されることが理解されるであろう。酸素飽和値を決定する際、電子プロセッサ22は、第1の変位値(例えば式2に従って加速度計24によって収集されたデータから)と第2の変位値(例えば式3に従ってジャイロスコープ26によって収集されたデータから)とを合計することによって、最終変位値を決定するようにプログラムされる。
【0033】
他の実施例では、電子プロセッサ22は、機械学習(ML)モデルを使用して変位値を決定するようにプログラムされる。MLモデルは、変位値を補償した過去の酸素飽和度測定値についてトレーニングされる。例えば、データは、SpO=100%を有する健康な被験者について収集され得、グラウンドトゥルーステストは、モニタが完全に不動である状態で取得され得る。次いで、加速度計及びジャイロスコープによる測定値とともに、SpO測定値中に様々な変位及び/又は回転運動を適用することができる。MLモデルは、例えばSVM、ニューラルネットワーク等であっても良く、これらを入力として受け取り、測定値を動き補正値を出力して、先験的に知られているグラウンドトゥルースSpO=100%を出力するようにトレーニングされる。
【0034】
また、運動センサ24、26は、様々な方法で周囲光補正と併せて使用することができることも理解されよう。例えば、計算負荷を軽減するために、周囲光補正係数κを断続的にのみ計算することができる。このことは、酸素飽和度モニタ10の動きを伴う場合を除いて、周囲光が変化することが予想されないという予想に基づいている。例えば、モニタ10によって見られる周囲光は、モニタ10が移動又は回転されるときはいつでも変化し得るが、その理由は、そのような場合、ベッドサイドランプ又は他の周囲光源に対するモニタ10の位置及び/又は向きが変化し得るからである。一方、モニタ10が静止している限り、モニタ10によって「見える」周囲光は、急激に変化する可能性は低い。ベッドサイドランプが消灯されている場合、例えば、消灯されている場合であっても、このことは、しばしば、患者のいくらかの動きを伴うことになる。それ故、幾つかの想定される実施例では、周囲光補正κは、比較的まれに、例えば3分間隔で再測定され、再計算されるが、モニタ10の検出された動きは、即座の再測定及びκの再計算をトリガする。
【0035】
図1に戻って参照すると、酸素飽和度モニタ10はまた、計算装置28(例えば典型的にはワークステーションコンピュータ又はより一般的にはコンピュータであるが、タブレット、スマートフォンなどの別のフォーム因子も企図される)を含む(又はそれにより制御される)。ワークステーション28は、少なくとも1つの電子プロセッサ22(クランプ12に埋め込むことができる)、少なくとも1つのユーザ入力装置(例えばマウス、キーボード、トラックボールなど)30、及び表示装置32などの典型的な構成要素を有するコンピュータ又は他の電子データ処理装置を備える。幾つかの実施例では、表示装置32は、コンピュータ28とは別個の構成要素とすることができる。
【0036】
1つ以上の非一時的記憶媒体34はまた、ここで開示されるような酸素飽和値測定処理を実行するためにコンピューティング装置28によって読み取り可能かつ実行可能であり、及び/又は酸素飽和値を測定するために酸素飽和度モニタ10を制御するためにワークステーション又は他のコントローラ18によって実行可能であるデータ及び命令(例えばソフトウェア)を記憶するために提供される(例えば上記のような最終変位値及び補正された赤色/赤外光強度比を決定し、使用することによる)。非一時的記憶媒体34は、非限定的な例示的な例として、磁気ディスク、RAID、又は他の磁気記憶媒体、ソリッドステートドライブ、フラッシュドライブ、電子的消去可能読み取り専用メモリ(EEROM)又は他の電子メモリ、光ディスク又は他の光ストレージ、それらの様々な組合せなどのうちの1つ又は複数を含むことができる。記憶媒体34は、任意に異なるタイプの複数の異なる媒体を含むことができ、様々に分散させることができる。記憶媒体34は、酸素飽和度値決定方法又はプロセス100を実行するために電子プロセッサ22によって実行可能な命令を記憶することができる。最終変位値及び補正された赤色/赤外光強度比から、電子プロセッサ22は、酸素飽和値決定方法を使用して酸素飽和値を決定するようにプログラムされる。
【0037】
図4を参照すると、酸素飽和度方法100の例示的な実施例がフロー図として模式的に示されている。102において、クランプ12が患者に固定されると、電子プロセッサ22は、中央光源/検出器対(例えば光源18.5及び光検出器20.5)を制御して赤色及び赤外光を測定し、残りの光源/検出器対を制御して周囲光を測定するようにプログラムされる。
【0038】
104において、電子プロセッサ22は、測定された光から周囲光の寄与を差し引くことによって、測定された赤色及び赤外光データを補正して、補正された酸素飽和値を生成するようにプログラムされる。この補正は、式(1)を用いて電子プロセッサ22によって実行することができる。幾つかの例では、補正された酸素飽和度値は、コンピューティング装置28の表示装置32上に表示することができる。
【0039】
106において、電子プロセッサ22は、加速度計24及びジャイロスコープ26を制御して、それぞれの横方向の移動及び回転の移動データを測定するようにプログラムされている。動作106は、動作102(即ち光の検出)の前、後、又は同時に実行することができることが理解されよう。
【0040】
108において、電子プロセッサ22は、加速度計24及びジャイロスコープ26によって測定された運動データから最終変位値を計算するようにプログラムされる。最終変位値を用いて、電子プロセッサは、患者上のクランプ12の変位を計算するようにプログラムされる。例えば、(動作102において)クランプ12の元の位置は、(0,0,0)の直交座標を有するように較正され得る。変位座標は、(δt1、δt2、δt3)として計算することができる。
【0041】
110において、電子プロセッサ22は、変位座標(δt1、δt2、δt3)を、最初に測定されたものと同じ解剖学的領域(例えばクランプ12が取り付けられている)に対応する最良の可能な光源/光検出器対にマッピングするようにプログラムされる。「最良の」光源/光検出器対は、式1を用いて決定された、最少量の周囲光を検出する(従って、赤色光及び/又は赤外光の大部分の量を検出する)対である。そうするために、電子プロセッサ22は、マッピングされた変位座標(δt1、δt2、δt3)から周囲光を測定するために、式1から検出器20.1乃至20.9の新しいα値及びβ値を決定するようにプログラムされる。例えば、クランプが取り付けられている患者領域に対するクランプ12の動きは、光検出器20.1乃至20.9のうちの1つに対して異なる重量(例えばα及び/又はβ)を引き起こすことがある。一例では、光源/検出器対18.5/20.5は、SpO値を記録するために使用される。指Fの時計回りの回転運動は、クランプ12の同様の動きを引き起こし、これはジャイロスコープ26によって検出される。この検出された動きは、新しい光源/検出器対(例えば光源/検出器対18.8/20.8)が、動きの前にSpO値を測定するために使用される指Fの対応する同じ解剖学的領域(例えば光源/検出器対18.5/20.5によって覆われる指の部分)に対応するマップであるべきであることを決定するために、電子プロセッサ22をトリガすることができる。この検出された指Fの動きは、光源18のアレイ及び光検出器20のアレイのレイアウトに変化を生じさせ、このことは、電子プロセッサ22が、全ての検出器について新しいα値及びβ値を計算することを要求する。例えば、新しい計算では、検出器20.9は、検出器20.9が新たな光源/検出器ペア20.8に近いほど、検出器20.6が検出された回転運動より前に有していたものと類似した新たなα及びβ値を、同様の線上で、光源/検出器ペア18.1乃至18.9/20.1乃至20.9について計算することができる。
【0042】
別の例では、光源/検出器対18.5/20.5は、再びSpO値を記録するために使用される。検出器20.6のα値は高く、そのβ値は検出器20.5に近接しているために低い。患者が(例えば指Fに沿ってクランプを摺動させることによって)クランプ12を手首に向かって調節する場合、この並進運動は加速度計24によって検出される。線源/検出器対18.4/20.4は、線源/検出器対18.5/20.5によって以前にカバーされた指Fの同じ解剖学的領域をカバーし始める。電子プロセッサ22は、線源/検出器対18.4/20.4がSpO値を測定するために使用されるべきであることを決定するために、全ての検出器20に対する新たなα及びβ値を決定する。
【0043】
112において、電子プロセッサ22は、新しい光源/検出器対18.5/20.5としてこの新しいセットをマークするために、光源アレイ18の新しい光センサセットを使用するようにプログラムされ、患者内の酸素飽和値を決定するために、赤色及びIR光信号を検出する。
【0044】
本開示は、好適な実施例を参照して説明されてきた。前述の詳細な説明を読み、理解すると、修正及び変更が他に思い浮かぶ可能性がある。本開示は、添付の特許請求の範囲又はその均等物の範囲内に入る限り、斯かる全ての修正及び変更を含むものと解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4