(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
H04B 10/075 20130101AFI20240418BHJP
【FI】
H04B10/075
(21)【出願番号】P 2021575564
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004880
(87)【国際公開番号】W WO2021157068
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 芳行
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 秀範
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/091577(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/078969(WO,A1)
【文献】特開平04-232438(JP,A)
【文献】特開平03-235536(JP,A)
【文献】特開2016-031975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を実装する部品実装機であって、
実装機本体と、
前記実装機本体に対して移動して部品を実装す
る実装ヘッドと、
前記実装機本体と前記実装ヘッドとの間で光通信を行なう光通信装置であって、光通信時の光量を監視する監視部と、前記光量が第1閾値未満で且つ前記第1閾値よりも低い第3閾値以上のときには所定の情報を出力し、前記光量が前記第3閾値未満で且つ前記第3閾値よりも低い第2閾値以上のときには前記実装機本体と前記実装ヘッドとの間の通信を限定的に行ない、前記光量が前記第2閾値未満のときには前記実装機本体と前記実装ヘッドとの間の通信を遮断する制御装置と、を有する光通信装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記光量が前記第3閾値未満のときには前記実装ヘッドの動作を停止する、
部品実装機。
【請求項2】
請求項
1に記載の部品実装機であって、
前記制御装置は、前記実装機本体側に設けられ、前記限定的に行なう通信として、前記実装ヘッドに異常がないかをチェックするために通信する、
部品実装機。
【請求項3】
請求項
1または
2に記載の部品実装機であって、
前記実装機本体側に設けられ、電気信号と光信号とを変換する第1変換ユニットと、
前記実装ヘッド側に設けられ、電気信号と光信号とを変換する第2変換ユニットと、
前記第1変換ユニットと前記第2変換ユニットとを接続する光ファイバケーブルと、
前記第2変換ユニットから前記光ファイバケーブルを介して前記第1変換ユニットが受
信した光信号の受信光量を記憶する記憶部と、
を備える部品実装機。
【請求項4】
請求項
1ないし
3いずれか1項に記載の部品実装機であって、
前記実装ヘッドは、モータと、該モータの変位を検出するエンコーダとを有し、
前記実装機本体は、前記光通信装置を介して前記エンコーダから出力されるエンコーダ信号を受信すると共に前記光通信装置を介して前記モータへ制御信号を送信することにより該モータを駆動制御するモータ制御部を有し、
前記制御装置は、前記限定的な通信として、前記エンコーダに異常がないかをチェックするために通信する、
部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、光通信装置および部品実装機について開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定体と移動体との間で、光信号を送受信する送光器および受光器により相互に光伝送を行なうシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、固定体側には、送光器が設けられる。また、移動体側には、受光器と、受光器で受光した光信号の受光レベルを記録する記録手段とが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1には、光通信時の受光レベルを受信して記録することについては記載されているものの、光通信を適切に行なうことが困難なレベルまで受光レベルが低下したときの対応については何ら言及されていない。
【0005】
本開示は、光通信時の光量低下によって機器に誤作動が生じるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の光通信装置は、
第1機器と第2機器との間で光通信を行なう光通信装置であって、
光通信時の光量を監視する監視部と、
前記光量が第1閾値を下回ったときには所定の情報を出力し、前記光量が前記第1閾値よりも低い第2閾値を下回ったときには両機器間の通信を遮断する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本開示の光通信装置では、光通信時の光量が第1閾値を下回ると、所定の情報を出力するため、例えば、その情報を基に警告を受けたオペレータが必要なメンテナンスを行なうことで、装置を正常に保つことができる。また、本開示の光通信装置では、光量が第1閾値よりも低い第2閾値を下回ると、両機器間の通信を遮断するため、光通信時の光量低下によって機器が誤作動するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】光通信装置を含む部品実装機の上面図である。
【
図3】実装制御装置とヘッドとの電気的な接続関係を示すブロック図である。
【
図5】通信状態監視処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、部品実装機の概略構成図である。
図2は、光通信装置を含む部品実装機の上面図である。
図3は、実装制御装置とヘッドとの電気的な接続関係を示すブロック図である。
図4は、光通信部の機能ブロック図である。なお、
図1の左右方向がX軸方向であり、前(手前)後(奥)方向がX軸方向と概ね直交するY軸方向であり、上下方向がX軸方向およびY軸方向(水平面)に概ね直交するZ軸方向である。
【0012】
部品実装機10は、
図1に示すように、基台11上に設置される筐体12と、部品供給装置21と、基板搬送装置22とヘッド移動装置30と実装制御装置60(
図3参照)とを含む実装機本体と、実装ヘッド40と、を備える。また、部品実装機10は、これらの他に、パーツカメラ26や表示装置25なども備えている。パーツカメラ26は、部品供給装置21と基板搬送装置22との間に設けられ、実装ヘッド40の吸着ノズル41に吸着された部品Pを下方から撮像するためのものである。パーツカメラ26の周囲には、撮像対象としての部品Pを照らすための光源ユニット27が設けられている。表示装置25は、筐体12の正面に設置され、部品実装機10のステータス情報やエラー情報などを表示する。
【0013】
部品供給装置21は、例えば、リールに巻回されたテープをリールから引き出して送り出すことで、テープに収容された部品を供給するテープフィーダを有する。
【0014】
基板搬送装置22は、
図1の前後に間隔を開けて設けられX軸方向(左右方向)に架け渡された1対のコンベアベルトを有する。基板Sは、基板搬送装置22のコンベアベルトにより図中左から右へと搬送される。
【0015】
ヘッド移動装置30は、実装ヘッド40をXY方向(前後左右の方向)に移動させるものである。このヘッド移動装置30は、
図1に示すように、X軸スライダ32と、Y軸スライダ34と、を備える。X軸スライダ32は、Y軸スライダ34の前面にX軸方向(左右方向)に延在するように設けられた上下一対のX軸ガイドレール31に支持され、X軸モータ(サーボモータ)36(
図3参照)の駆動によってX軸方向に移動可能である。Y軸スライダ34は、筐体12の上段部にY軸方向(前後方向)に延在するように設けられた左右一対のY軸ガイドレール33に支持され、Y軸モータ(サーボモータ)38(
図3参照)の駆動によってY軸方向に移動可能である。なお、X軸スライダ32は、X軸エンコーダ37(
図3参照)によりX軸方向の位置が検知され、Y軸スライダ34は、Y軸エンコーダ39(
図3参照)によりY軸方向の位置が検知される。X軸スライダ32には実装ヘッド40が取り付けられている。このため、実装ヘッド40は、ヘッド移動装置30(X軸モータ36およびY軸モータ38)を駆動制御することにより、XY平面(水平面)に沿って移動可能である。また、X軸スライダ32には、基板Sに付された基準マークを上方から撮像して読み取るためのマークカメラ28も備える。なお、マークカメラ28は、X軸スライダ32に設置される図示しない基板に接続され、当該基板を介して実装制御装置60に接続される。
【0016】
実装ヘッド40は、例えば、周方向に等角度間隔で配列される複数のノズルホルダを備えるロータリヘッドとして構成される。各ノズルホルダの先端部には、吸着ノズル41が着脱可能に取り付けられる。吸着ノズル41の先端部には、図示しないが、電磁弁を介して負圧源と連通する吸引口が設けられている。吸着ノズル41は、電磁弁を開弁した状態で供給される負圧源からの負圧により部品Pを吸着する。
【0017】
実装ヘッド40は、各ノズルホルダ(吸着ノズル41)を周方向に旋回(公転)させるR軸モータ(サーボモータ)42と、各ノズルホルダを回転(自転)させるθ軸モータ(サーボモータ)43と、各ノズルホルダのうち所定の旋回位置にあるノズルホルダを昇降(上下)させるZ軸モータ(サーボモータ)44と、を備える。また、実装ヘッド40は、各ノズルホルダの旋回位置(公転位置)を検出するためのR軸エンコーダ45と、各ノズルホルダの回転位置(自転位置)を検出するθ軸エンコーダ46と、所定位置にあるノズルホルダの昇降位置(上下位置)を検出するZ軸エンコーダ47と、を備える。
【0018】
さらに、実装ヘッド40は、吸着ノズル41の先端を側方から撮像するための側面カメラ48も備える。側面カメラ48の周囲には、撮像対象である吸着ノズル41やこれに吸着される部品Pを照らすための光源ユニット49が設けられている。
【0019】
また、実装ヘッド40は、当該実装ヘッド40に設置され、光通信によって実装制御装置60(光通信部70)に各種信号を送信すると共に実装制御装置60(光通信部70)から各種信号を受信する光通信部50も備える。光通信部50には、送信する各種信号として、各軸エンコーダ(R軸エンコーダ45,θ軸エンコーダ46およびZ軸エンコーダ47)からの位置信号や側面カメラ48からの画像信号などが入力される。また、光通信部50からは、受信した各種信号として、各軸モータ(R軸モータ42,θ軸モータ43およびZ軸モータ44)への制御信号や、側面カメラ48への制御信号、光源ユニット49へ制御信号などが出力される。
【0020】
光通信部50は、
図4に示すように、光信号を送信する光送信部51と、光信号を受信する光受信部52と、光送信部51を介して送信する各種信号を多重化する多重化部53と、光受信部52を介して受信された信号を各種信号に分離させる分離部54と、各部を制御する通信制御部55と、を備える。光送信部51は、半導体レーザと、通信制御部55からの制御信号に基づいて半導体レーザを駆動するレーザ駆動回路と、を有する。光受信部52は、受信した光信号を電気信号に変換する光電変換回路を有する。
【0021】
部品実装機10は、基台11に設置され、実装機全体を制御する実装制御装置60を備える。この実装制御装置60は、
図3に示すように、CPU61と、記憶部62と、サーボアンプ63と、画像処理ボード64と、入出力インタフェース65と、光通信部70と、を備える。CPU61と記憶部62とサーボアンプ63と画像処理ボード64は、互いに電気的に接続されている。また、CPU61と記憶部62とサーボアンプ63と画像処理ボード64は、入出力インタフェース65に電気的に接続されると共に、光通信部70に電気的に接続される。記憶部62は、一時的にデータを記憶するRAMや、処理プログラムを記憶するROM,HDDなどを含む。入出力インタフェース65には、部品供給装置21や基板搬送装置22、ヘッド移動装置30の各軸エンコーダ(X軸エンコーダ37,Y軸エンコーダ39)および各軸モータ(X軸モータ36,Y軸モータ38)が電気的に接続される。さらに、入出力インタフェース65には、パーツカメラ26、光源ユニット27、表示装置25、マークカメラ28、マークカメラ28の周囲に配置される光源ユニット29なども電気的に接続される。
【0022】
サーボアンプ63は、各軸モータ(サーボモータ)をフィードバック制御するものである。このサーボアンプ63は、ヘッド移動装置30の各軸エンコーダ(X軸エンコーダ37およびY軸エンコーダ39)からの位置信号を入出力インタフェース65を介して入力し、入力した位置信号に基づいてヘッド移動装置30の各軸モータ(X軸モータ36およびY軸モータ38)の制御信号を生成すると共に生成した制御信号を入出力インタフェース65を介して当該各軸モータへ出力する。また、サーボアンプ63は、実装ヘッド40の各軸エンコーダ(R軸エンコーダ45,θ軸エンコーダ46およびZ軸エンコーダ47)からの位置信号を光通信部50,70を介して入力し、入力した位置信号に基づいて対応する実装ヘッド40の各軸モータ(R軸モータ42,θ軸モータ43およびZ軸モータ44)の制御信号を生成すると共に生成した制御信号を光通信部50,70を介して当該各軸モータへ出力する。
【0023】
画像処理ボード64は、各種カメラ(パーツカメラ26やマークカメラ28、側面カメラ48)で撮像された画像信号を処理するものである。この画像処理ボード64には、パーツカメラ26やマークカメラ28からの画像信号が入出力インタフェース65を介して入力され、側面カメラ48からの画像信号が光通信部50,70を介して入力される。
【0024】
光通信部70は、
図4に示すように、光信号を送信する光送信部71と、光信号を受信する光受信部72と、光送信部71を介して送信する各種信号を多重化する多重化部73と、光受信部72を介して受信された信号を各種信号に分離させる分離部74と、各部を制御すると共にCPU61との間で制御信号や必要なデータをやり取りする通信制御部75と、を備える。光送信部71は、光送信部51と同様の半導体レーザとレーザ駆動回路とを有し、光ファイバケーブル80を介してヘッド40の光受信部52と接続される。光受信部72は、光受信部52と同様の光電変換回路を有し、光ファイバケーブル80を介してヘッド40の光送信部51と接続される。通信制御部75は、光ファイバケーブル80を介した通信の状態を監視するために、光受信部72を介して受信された電気信号を入力し、入力した電気信号に基づいて推定される通信光量Q(光ファイバケーブル80を通過する光信号の光量)をCPU61へ出力する。
【0025】
次に、こうして構成された実施形態の部品実装機10の実装動作について説明する。実装制御装置60のCPU61は、まず、基板搬送装置22により基板Sが搬入され位置決めされた後、マークカメラ28が基板Sに付された基準マークの上方へ移動するようヘッド移動装置30を制御する。この制御は、CPU61からの制御指令に基づいてサーボアンプ63がX軸エンコーダ37およびY軸エンコーダ39からの位置信号を入出力インタフェース65を介して入力すると共に入力した位置信号に基づいて生成した制御信号を入出力インタフェース65を介してX軸モータ36およびY軸モータ38へ出力することにより行なわれる。続いて、CPU61は、基準マークが撮像されるようマークカメラ28およびその光源ユニット29を制御する。この撮像の制御は、CPU61がマークカメラ28および光源ユニット29へ各制御信号を送信することにより行なわれる。これにより、基板Sの基準マークがマークカメラ28により撮像される。マークカメラ28からの撮像信号は、画像処理ボード64へ出力される。画像処理ボード64は、入力した画像信号に基づいて画像中の基準マークを認識する画像処理を行なう。そして、CPU61は、画像処理ボード64の画像処理の結果に基づいて基板Sの位置を認識する。
【0026】
次に、CPU61は、部品供給装置21により供給される部品Pの上方に吸着ノズル41が移動するようヘッド移動装置30を制御する。なお、ヘッド移動装置30の制御については上述した。続いて、CPU61は、吸着ノズル41が下降するようZ軸モータ44を制御すると共に吸着ノズル41の吸引口に負圧を供給する。これにより、吸着ノズル41に部品Pが吸着される。Z軸モータ44の制御は、CPU61からの制御指令に基づいてサーボアンプ63がZ軸エンコーダ47からの位置信号を実装ヘッド40の光通信部50,光ファイバケーブル80,光通信部70を順に介して入力し、入力した位置信号に基づいて生成した制御信号を光通信部70,光ファイバケーブル80,実装ヘッド40の光通信部50を順に介してZ軸モータ44へ出力することにより行なわれる。なお、CPU61は、実装ヘッド40の複数の吸着ノズル41に予定数の部品Pが吸着されていなければ、予定数の部品Pが吸着されるまで、吸着ノズル41(ノズルホルダ)が所定量ずつ旋回するようR軸モータ42を制御し、次に吸着すべき吸着ノズル41への部品Pの吸着を繰り返す。R軸モータ42の制御は、CPU61からの制御指令に基づいてサーボアンプ63がR軸エンコーダ45からの位置信号を実装ヘッド40の光通信部50,光ファイバケーブル80,光通信部70を順に介して入力し、入力した位置信号に基づいて生成した制御信号を光通信部70,光ファイバケーブル80,実装ヘッド40の光通信部50を順に介してR軸モータ42へ出力することにより行なわれる。
【0027】
CPU61は、こうして吸着ノズル41に部品Pを吸着させる吸着動作を行なうと、吸着動作を行なう度に、当該吸着ノズル41の先端部が側方から撮像されるよう側面カメラ48および光源ユニット49を制御する。この撮像の制御は、CPU61が光通信部70,光ファイバケーブル80,実装ヘッド40の光通信部50を順に介して側面カメラ48および光源ユニット49へ各制御信号を送信することにより行なわれる。側面カメラ48からの撮像信号は、実装ヘッド40の光通信部50,光ファイバケーブル80,光通信部70を順に介して画像処理ボード64へ出力される。画像処理ボード64は、入力した画像信号に基づいて画像中の部品P(部品側面)を認識する画像処理を行なう。そして、CPU61は、画像処理ボード64の画像処理の結果に基づいて、吸着ノズル41に対する部品Pの吸着状態(例えば、吸着ミスの有無や吸着姿勢の良否など)を判定する。
【0028】
CPU61は、吸着すべき全ての吸着ノズル41への部品Pの吸着が完了すると、実装ヘッド40がパーツカメラ26の上方へ移動するようヘッド移動装置30を制御する。続いて、CPU61は、吸着ノズル41に吸着させた部品Pが撮像されるようパーツカメラ26および光源ユニット27を制御する。この撮像の制御は、CPU61が入出力インタフェース65を介してパーツカメラ26および光源ユニット27に各制御信号を送信することにより行なわれる。パーツカメラ26からの画像信号は、入出力インタフェース65を介して画像処理ボード64に出力される。画像処理ボード64は、入力した画像信号に基づいて画像中の部品P(部品下面)を認識する画像処理を行なう。CPU61は、画像処理ボード64の処理結果に基づいて各吸着ノズル41に吸着されている部品Pの位置ずれ量(吸着ずれ量)を算出し、算出した位置ずれ量に基づいて基板Sの実装位置および実装角度を補正する。CPU61は、実装位置および実装角度を補正すると、吸着ノズル41に吸着させた部品Pが補正した実装位置の上方へ移動するようヘッド移動装置30を制御する。そして、CPU61は、部品Pが補正した実装角度になると共に吸着ノズル41が下降するようθ軸モータ43およびZ軸モータ44を制御すると共に吸着ノズル41の吸引口への負圧の供給を解除する。θ軸モータ43の制御は、CPU61からの制御指令に基づいてサーボアンプ63がθ軸エンコーダ46からの位置信号を実装ヘッド40の光通信部50,光ファイバケーブル80,光通信部70を順に介して入力し、入力した位置信号に基づいて生成した制御信号を光通信部70,光ファイバケーブル80,実装ヘッド40の光通信部50を順に介してθ軸モータ43へ出力することにより行なわれる。Z軸モータ44の制御については上述した。これにより、部品Pが基板S上の実装位置および実装角度で実装される。CPU61は、実装ヘッド40が有する複数の吸着ノズル41のいずれかに未実装の部品Pが残っていれば、全ての部品Pが実装されるまで、次に実装すべき吸着ノズル41に吸着されている部品Pの実装を繰り返す。
【0029】
CPU61は、こうして部品Pを基板Sに実装する実装動作を行なうと、実装動作を行なう度に、当該吸着ノズル41の先端が側方から撮像されるよう側面カメラ48および光源ユニット49を制御する。側面カメラ48および光源ユニット49の制御については上述した。画像処理ボード64は、側面カメラ48からの撮像信号を光通信部50,光ファイバケーブル80,光通信部70を介して入力し、入力した画像信号に基づいて画像中の部品P(部品側面)を認識する画像処理を行なう。そして、CPU61は、画像処理ボード64の画像処理の結果に基づいて、吸着ノズル41が部品Pを基板Sに実装することなく持ち帰る持ち帰りエラーの有無を判定する。
【0030】
次に、実装ヘッド40と実装制御装置60との間で行なわれる光ファイバケーブル80を介した通信の状態を監視するための処理について説明する。ここで、実装制御装置60のCPU61および記憶部62と、光通信部50,70と、光ファイバケーブル80とが本開示の光通信装置に相当する。
図5は、実装制御装置60のCPU61により実行される通信状態監視処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、部品実装機10の実装動作中(生産中)に所定時間毎に繰り返し実行される。
【0031】
通信状態監視処理が実行されると、実装制御装置60のCPU61は、まず、光ファイバケーブル80を通過する光信号の光量(通信光量Q)を取得する(S100)。この処理は、光受信部72を介して受信した電気信号に基づいて推定されたものを取得することにより行なわれる。続いて、CPU61は、取得した通信光量Qが閾値ThrA(第1閾値)以上であるか否かを判定する(S110)。閾値ThrAは、通信状態が正常であるか否かを判断するための閾値であり、通信エラーが殆ど生じないと考えられる正常範囲の下限値よりも大きい値に定められる。CPU61は、通信光量Qが閾値ThrA以上であると判定すると、通信光量Qは十分なレベルにあり、通信状態は正常状態であると判定して(S120)、通信状態監視処理を終了する。
【0032】
CPU61は、S110において、取得した通信光量Qが閾値ThrA未満であると判定すると、通信光量Qが閾値ThrAよりも小さい値に定められた閾値ThrB(第3閾値)以上であるか否かを判定する(S130)。閾値ThrBは、正常範囲の下限値に定められる。CPU61は、通信光量Qが閾値ThrB以上(閾値ThrB以上閾値ThrA未満,第3閾値以上第1閾値未満)であると判定すると、通信状態は光ファイバケーブル80等のメンテナンスが必要な要メンテナンス状態であると判定し(S140)、その判定結果を表示装置25に出力する(S210)。
図6は、表示装置25の表示例を示す説明図である。図示するように、要メンテナンス状態と判定された場合には、表示装置25には、作業者に対して光ファイバケーブル80の清掃や交換を促すメッセージ等が表示される。作業者は、表示装置25に表示されたメッセージに従って必要な作業を行なうことにより、通信状態を正常状態に戻すことができる。そして、CPU61は判定結果(要メンテナンス状態)とS100で取得した通信光量Qとを対応付けて記憶部62に記憶して(S220)、通信状態監視処理を終了する。
【0033】
CPU61は、S130において、取得した通信光量Qが閾値ThrB未満(第3閾値未満)であると判定すると、通信不良の疑いがあると判断し、部品実装機10の実装動作(生産)を停止する(S150)。これは、通信不良が発生すると、CPU61は、実装ヘッド40(R軸モータ42やθ軸モータ43、Z軸モータ44を含む各軸モータや、側面カメラ48等)の制御を正常に実行できないためである。
【0034】
そして、CPU61は、取得した通信光量Qが閾値ThrBよりも更に小さい値に定められた閾値ThrC(第2閾値)以上であるか否かを判定する(S160)。閾値ThrCは、明らかな通信不良を判定するための閾値である。CPU61は、取得した通信光量Qが閾値ThrC以上(閾値ThrC以上閾値ThrB未満,第2閾値以上第3閾値未満)であると判定すると、通信状態は通信不良が疑われる不良被疑状態と判定して(S170)、限定的な通信のみを許可する(S180)。限定的な通信としては、例えば、各軸エンコーダ45~47や側面カメラ48に異常がないかのチェックや、信号線に断線がないかのチェック等のために、各軸エンコーダ45~47や側面カメラ48などと通信する場合を挙げることができる。また、限定的な通信は、例えば通信先にメモリ等が備えられている場合に、そのメモリをチェックし、過去に異常が生じていたかをチェックするために行なわれてもよい。続いて、CPU61は、判定結果(不良被疑状態)を表示装置25に表示する(S210)。
図7は、表示装置25の表示例を示す説明図である。異常被疑状態と判定された場合、表示装置25には、作業者に対して通信不良の疑いがある旨のメッセージと生産が停止される旨のメッセージ等が表示される。そして、CPU61は、判定結果(不良被疑状態)とS100で取得した通信光量Qとを対応付けて記憶部62に記憶して(S220)、通信状態監視処理を終了する。
【0035】
CPU61は、S160において、取得した通信光量Qが閾値ThrC未満(第2閾値未満)であると判定すると、通信状態は不良確定状態と判定し(S190)、一切の通信を禁止する(S200)。続いて、CPU61は、判定結果(不良確定状態)を表示装置25に表示する(S210)。
図8は、表示装置25の表示例を示す説明図である。異常確定状態と判定された場合、表示装置25には、作業者に対して通信不良が発生した旨のメッセージと生産が停止される旨のメッセージ等が表示される。そして、CPU61は、判定結果(不良確定状態)とS100で取得した通信光量Qとを対応付けて記憶部62に記憶して(S220)、通信状態監視処理を終了する。
【0036】
このように、本実施形態では、CPU61は、複数の閾値ThrA~ThrCを用いて通信光量Qの低下を段階的に判定することで、通信状態を判定すると共に判定結果を作業者に報知する。これにより、現在の通信状態に合わせた適切な対応を作業者に促すことができる。また、CPU61は、判定結果が正常状態以外(要メンテナンス状態,不良被疑状態,不良確定状態)の場合には、判定結果をそのときの通信光量Qと共に記憶部62に記憶する。これにより、後に開発担当者や整備担当者などが不良の発生要因などを解析する際には、解析が容易となる。
【0037】
ここで、実施形態の構成要素と請求の範囲に記載の本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。実施形態の基板搬送装置22とヘッド移動装置30と実装制御装置60とを含む実装機本体が本開示の第1機器に相当し、実装ヘッド40が第2機器に相当し、実装制御装置60の光通信部70の通信制御部75が監視部に相当し、実装制御装置60のCPU61が制御装置に相当する。また、光通信部70の光送信部71および光受信部72が第1変換ユニットに相当し、実装ヘッド40の光通信部50の光送信部51および光受信部52が第2変換ユニットに相当し、光ファイバケーブル80が光ファイバケーブルに相当し、実装制御装置60の記憶部62が記憶部に相当する。また、R軸モータ42,θ軸モータ43およびZ軸モータ44がモータに相当し、R軸エンコーダ45,θ軸エンコーダ46およびZ軸エンコーダ47がエンコーダに相当し、サーボアンプ63がモータ制御部に相当する。また、側面カメラ48が撮像装置に相当し、画像処理ボード64が画像処理部に相当する。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上述した実施形態では、CPU61は、S130において通信光量Qが閾値ThrB未満であると判定したときに更にS160において通信光量Qが閾値ThrC以上であるか否かを判定することにより、不良被疑状態と不良確定状態とを区別するものとした。しかし、CPU61は、S130において通信光量Qが閾値ThrB未満であると判定したときに、不良被疑状態と不良確定状態とを区別することなく不良状態と判定してもよい。この場合、CPU61は、一切の通信を禁止してもよい。
【0040】
上述した実施形態では、CPU61は、通信光量Qが閾値ThrA未満である場合(通信状態が正常状態以外の状態である場合)に取得した通信光量Qを記憶部62に記憶させるものとした。しかし、CPU61は、取得した通信光量Qを常時、記憶部62に記憶させてもよい。この場合、記憶部62の記憶容量が一杯になった場合には、CPU61は、古いデータから順に上書きするものとすればよい。また、CPU61は、通信光量Qを記憶部62に記憶させなくてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、実装ヘッド40は、複数の吸着ノズル41が円周方向に配列されると共にZ軸モータ44により所定の旋回位置にある吸着ノズル41が昇降可能なロータリヘッドとして構成されるものとした。しかし、実装ヘッド40は、Z軸モータにより個別に昇降が可能な複数の吸着ノズル41が直線方向に配列されてもよい。また、実装ヘッド40は、Z軸モータにより昇降可能な単一の吸着ノズルを備えるものであってもよい。
【0042】
上述した実施形態では、本開示の光通信装置を部品実装機10に適用して説明した。しかし、光通信装置は、これに限定されるものではなく、第1機器と第2機器との間で光通信を行なうものであれば、如何なる装置にも適用可能である。
【0043】
以上説明したように本開示の光通信装置は、第1機器と第2機器との間で光通信を行なう光通信装置であって、光通信時の光量を監視する監視部と、前記光量が第1閾値を下回ったときには所定の情報を出力し、前記光量が前記第1閾値よりも低い第2閾値を下回ったときには両機器間の通信を遮断する制御装置と、を備えることを要旨とする。
【0044】
この本開示の光通信装置では、光通信時の光量が第1閾値を下回ると、所定の情報を出力するため、例えば、その情報を基に警告を受けたオペレータが必要なメンテナンスを行なうことで、装置を正常に保つことができる。また、本開示の光通信装置では、光量が第1閾値よりも低い第2閾値を下回ると、両機器間の通信を遮断するため、光通信時の光量低下によって機器が誤作動するのを抑制することができる。ここで、「所定の情報を出力」には、所定の情報を記憶装置に出力(記録)するものや、所定の情報を表示するもの、その他、オペレータに対して警告または報知するためのものが含まれる。
【0045】
こうした本開示の光通信装置において、前記制御装置は、前記光量が前記第1閾値よりも低く前記第2閾値よりも高い第3閾値を下回ったときには両機器間の通信を限定的に行なうものとしてもよい。こうすれば、機器が誤作動するのを抑制しつつ、必要な通信を継続させることができる。この場合、前記制御装置は、前記第1機器側に設けられ、前記限定的に行なう通信には、前記第2機器に異常がないかをチェックするための通信が含まれるものとしてもよい。
【0046】
また、本開示の光通信装置において、前記第1機器側に設けられ、電気信号と光信号とを変換する第1変換ユニットと、前記第2機器側に設けられ、電気信号と光信号とを変換する第2変換ユニットと、前記第1変換ユニットと前記第2変換ユニットとを接続する光ファイバケーブルと、前記第2変換ユニットから前記光ファイバケーブルを介して前記第1変換ユニットが受信した光信号の受信光量を記憶する記憶部と、を備えるものとしてもよい。受信光量を記憶部に記憶しておくことで、後に不良の発生要因を解析する場合にその解析を容易とすることができる。なお、光量の記憶は、第1閾値を下回ったときのみ実行されてもよい。こうすれば、必要な記憶容量を少なくすることができる。
【0047】
さらに、本開示の光通信装置において、前記第1機器は、固定機器であり、前記第2機器は、可動機器であるものとしてもよい。
【0048】
本開示は、光通信装置の形態に限られる、部品実装機の形態とすることもできる。
すなわち、本開示の部品実装機は、部品を実装する部品実装機であって、上述した各態様のいずれかの本開示の光通信装置と、前記第1機器としての実装機本体と、前記実装機本体に対して移動して部品を実装する前記第2機器としての実装ヘッドと、を備え、前記実装ヘッドは、モータと、該モータの変位を検出するエンコーダとを有し、前記実装機本体は、前記光通信装置を介して前記エンコーダから出力されるエンコーダ信号を受信すると共に前記光通信装置を介して前記モータへ制御信号を送信することにより該モータを駆動制御するモータ制御部を有するものとしてもよい。この場合、前記実装ヘッドは、撮像装置を有し、前記実装機本体は、前記光通信装置を介して前記撮像装置から出力される画像信号を受信して処理する画像処理部を有するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、光通信装置や部品実装機の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 部品実装機、11 基台、12 筐体、21 部品供給装置、22 基板搬送装置、25 表示装置、26 パーツカメラ、27 光源ユニット、28 マークカメラ、29 光源ユニット、30 ヘッド移動装置、31 X軸ガイドレール、32 X軸スライダ、33 Y軸ガイドレール、34 Y軸スライダ、36 X軸モータ、37 X軸エンコーダ、38 Y軸モータ、39 Y軸エンコーダ、40 実装ヘッド、41 吸着ノズル、42 R軸モータ、43 θ軸モータ、44 Z軸モータ、45 R軸エンコーダ、46 θ軸エンコーダ、47 Z軸エンコーダ、48 側面カメラ、49 光源ユニット、50,70 光通信部、51,71 光送信部、52,72 光受信部、53,73 多重化部、54,74 分離部、55,75 通信制御部、60 実装制御装置、61 CPU、62 記憶部、63 サーボアンプ、64 画像処理ボード、65 入出力インタフェース、80 光ファイバケーブル、P 部品、S 基板。