(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ペレット、熱可塑性樹脂組成物及び高周波アンテナ関連部材
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20240418BHJP
B29B 9/12 20060101ALI20240418BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20240418BHJP
【FI】
C08J3/12 A CES
B29B9/12
B29K23:00
(21)【出願番号】P 2022004607
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2023-11-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】坂田 稔
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-026891(JP,A)
【文献】特開2018-135459(JP,A)
【文献】特開2018-070856(JP,A)
【文献】特開2005-290384(JP,A)
【文献】特開平02-004845(JP,A)
【文献】国際公開第2021/023560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
B29B 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)高密度ポリエチレン樹脂5.5~38.5質量%、
(b)水添ブロック共重合体7.5~38.5質量%、
(c)二酸化チタン、炭酸カルシウム及びタルクからなる群から選択される少なくとも一種の無機充填剤45~75質量%、
を含み、
前
記(a)高密度ポリエチレン樹脂のメルトフローレートが5~30g/10分である、
ことを特徴とするペレット
の、ポリフェニレンエーテル樹脂の機械特性向上のための使用。
【請求項2】
前記(b)水添ブロック共重合体の結合スチレン含量が30~60%である、請求項1に記載の
使用。
【請求項3】
前記(b)水添ブロック共重合体の数平均分子量が54,000~120,000である、請求項1又は2に記載の
使用。
【請求項4】
前記(c)無機充填剤の平均粒子径が0.1~30μmである、請求項1又は2に記載の
使用。
【請求項5】
前記ペレット100質量%に対する、前記(a)高密度ポリエチレン樹脂、前記(b)水添ブロック共重合体、及び前記(c)無機充填剤の合計質量割合が、65~95質量%である、請求項1又は2に記載の
使用。
【請求項6】
前記(a)高密度ポリエチレン樹脂を5.5~30.0質量%含む、請求項1又は2に記載の
使用。
【請求項7】
前記(b)水添ブロック共重合体が、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとを含むブロック共重合体を、水素添加してなる水添ブロック共重合体である、請求項1又は2に記載の
使用。
【請求項8】
前記重合体ブロックB中に含まれる脂肪族系二重結合の水素添加率が80%以上である、請求項7に記載の
使用。
【請求項9】
前記(c)無機充填剤の平均粒子径が0.1~20μmである、請求項1又は2に記載の
使用。
【請求項10】
前記二酸化チタンが、平均粒子径0.1~1.5μmの粒子状二酸化チタン、及び/又は、平均繊維径0.2~1.0μm、平均繊維長1~10μmの繊維状二酸化チタンである、請求項1又は2に記載の
使用。
【請求項11】
前記炭酸カルシウムは、平均粒子径が0.1~10μmである、請求項1又は2に記載の
使用。
【請求項12】
前記タルクは、平均粒子径が1~20μmである、請求項1又は2に記載の
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット、熱可塑性樹脂組成物及び高周波アンテナ関連部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性樹脂に充填剤を添加する場合、多量添加、粒子径が微小、かさ密度が非常に小さい、単軸押出機を使用するなどの理由から広く樹脂組成物用マスターバッチが用いられている。このような状況において、耐衝撃性の観点からポリスチレン、ポリプロピレン及びエラストマー添加の樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。更にマスターバッチ中の充填剤の分散性を向上させる観点から特殊な製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
マスターバッチは通常、溶融粘度が低い樹脂を用いて、分散助剤を添加したものが広く市販されているが、これら市販品は溶融粘度が低い(すなわち、分子量が小さい)樹脂を用いているため、樹脂に練り込んだ場合、靭性が極端に低下することがある。さらに、練り込む相手樹脂との溶融粘度差の影響で分散不良が発生する等の問題がある。
【0004】
近年、情報通信機器樹脂部品の通信速度高速化、部品の小型集積化のための耐熱性向上及び部品形状複雑化による折れ・割れを防止するための耐衝撃性・剛性の向上が強く要求されており、従来の技術では対応できない状況が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-257140号公報
【文献】特開平2-105861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、熱可塑性樹脂組成物製造時に無機充填剤を好適に分散可能であり、かつ機械特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得られる樹脂組成物用マスターバッチとして使用可能なペレットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のポリエチレン樹脂、水添ブロック共重合体を特定割合で添加したペレットが、樹脂組成物用マスターバッチとして用いた際に、他の一般的なポリプロピレンやポリスチレンを用いた樹脂組成物用マスターバッチと比べ、無機充填剤を好適に分散可能であり、かつ機械特性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
(a)高密度ポリエチレン樹脂5.5~38.5質量%、
(b)水添ブロック共重合体7.5~38.5質量%、
(c)二酸化チタン、炭酸カルシウム及びタルクからなる群から選択される少なくとも一種の無機充填剤45~75質量%、
を含むことを特徴とするペレット。
[2]
前記(a)高密度ポリエチレン樹脂のメルトフローレートが5~30g/10分である、[1]に記載のペレット。
[3]
前記(b)水添ブロック共重合体の結合スチレン含量が30~60%である、[1]又は[2]に記載のペレット。
[4]
前記(b)水添ブロック共重合体の数平均分子量が54,000~120,000である、[1]~[3]のいずれかに記載のペレット。
[5]
前記(c)無機充填剤の平均粒子径が0.1~30μmである、[1]~[4]のいずれかに記載のペレット。
[6]
熱可塑性樹脂と、[1]~[5]のいずれかに記載のペレットとを含む、熱可塑性樹脂組成物。
[7]
前記熱可塑性樹脂がポリフェニレンエーテル系樹脂を含む、[6]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8]
[6]又は[7]に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、高周波アンテナ関連部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明のペレットを樹脂組成物用マスターバッチとして用いて熱可塑性樹脂組成物を製造することで、無機充填材を好適に分散可能であり、かつ機械特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0011】
〔ペレット〕
本実施形態のペレットは、(a)高密度ポリエチレン樹脂5.5~38.5質量%、(b)水添ブロック共重合体7.5~38.5質量%、及び(c)無機充填剤45~75質量%を含むものである。本実施形態のペレットは、熱可塑性樹脂組成物を製造するための樹脂組成物用マスターバッチ(以下、単に「マスターバッチ」と言うこともある)であることが好ましい。
本実施形態のペレットは、(a)高密度ポリエチレン樹脂、(b)水添ブロック共重合体、及び(c)無機充填剤のみからなる組成物であってもよいし、さらにその他の成分を含んでいてもよい。
本実施形態のペレット100質量%に対する、(a)高密度ポリエチレン樹脂、(b)水添ブロック共重合体、及び(c)無機充填剤の合計質量割合としては、60質量%以上であり、60~100質量%であることが好ましく、65~95質量%、70~90質量%であることができる。
【0012】
((a)高密度ポリエチレン樹脂)
上記(a)高密度ポリエチレン樹脂としては、広く市販されているものを用いることができる。
上記高密度ポリエチレン樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
(a)成分の高密度ポリエチレン樹脂は、MFRが5~30g/10分であることが好ましく、5~25g/10分であることがより好ましく、8~20g/10分であることがさらにより好ましい。
MFRが5g/10分以上である場合には、分子量が適度に高いため、本実施形態のペレットを用いて得られる樹脂組成物に優れた耐衝撃性を与える。また、MFRが30g/10分以下であれば、本実施形態のペレットを用いて得られる樹脂組成物に極端な耐衝撃性低下がなく、優れた流動性を与える。
なお、上記MFRは、ISO1 133:2005、コードDに準拠して測定された値である。
【0014】
上記高密度ポリエチレン樹脂は、密度が930kg/m3以上であることが好ましく、942~975kg/m3であってよい。
上記密度は、JIS K7112に準拠して測定した値である。
【0015】
上記高密度ポリエチレン樹脂としては、例えば、エチレンに由来する構造単位単独からなる重合体、エチレンに由来する構造単位と他の構造単位(例えば、炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位)とからなる共重合体等が挙げられる。他の構造単位は、1種であってもよいし2種以上であってもよい。
エチレンと共重合させる炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1、ドデセン-1、テトラデセン-1、ヘキサデセン-1、オクタデセン-1、エイコセン-1、3-メチル-ブテン-1、4-メチル-ペンテン-1、6-メチル-ヘプテン-1などが挙げられる。共重合割合は、エチレンに対する他の構造単位のもととなる化合物(例えば、炭素数3~20のα-オレフィン)のモル比率が0.01~1.00%であることが好ましく、より好ましくは0.2~0.7%である。
【0016】
本実施形態のペレット100質量%に対する上記高密度ポリエチレンの質量割合は、生産性の観点から、5.5~38.5質量%であり、好ましくは7.5~35.0質量%、より好ましくは8.0~32.0質量%であり、さらに好ましくは10.0~30.0質量%である。
【0017】
((b)水添ブロック共重合体)
上記(b)水添ブロック共重合体は、上記(a)高密度ポリエチレン樹脂と併用することで(特に、上記範囲の質量割合の(a)高密度ポリエチレン樹脂と併用することで)、ペレット製造時に靭性を付与し、さらにはマスターバッチとして用いた場合、得られる熱可塑性樹脂組成物に耐衝撃性を付与するものである。
【0018】
上記(b)水添ブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとを含むブロック共重合体を、水素添加してなる水添ブロック共重合体であることが好ましく、少なくとも2個の上記重合体ブロックAと少なくとも1個の上記重合体ブロックBのみからなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体であってもよい。
【0019】
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAにおける「主体とする」とは、当該重合体ブロック100質量%において、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物に由来する構造単位であることを意味し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0020】
また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物に由来する構造単位であることを意味し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0021】
例えば、重合体ブロックA中に、ランダムに共役ジエン化合物または他の化合物に由来する構造単位が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%以上がビニル芳香族化合物に由来する構造単位より形成されていれば、ビニル芳香族化合物を主体とするブロック共重合体Aとみなす。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの場合においても同様である。
【0022】
上記ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、特にスチレンが好ましい。
上記重合体ブロックAは、マスターバッチを使用した最終組成物の耐熱性に一層優れる観点から、ビニル芳香族化合物としてスチレンのみを含むブロックであることが好ましい。
【0023】
上記共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましく、特にブタジエンが好ましい。
上記重合体ブロックBは、マスターバッチを使用した最終組成物の耐衝撃性に一層優れる観点から、共役ジエン化合物としてブタジエンのみを含むブロックであることが好ましい。
【0024】
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおける1,2-ビニル結合量は、本実施形態のマスターバッチペレットと熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物中の高密度ポリエチレン樹脂と熱可塑性樹脂(例えば、PPE)を乳化分散させ、かつ該熱可塑性樹脂組成物を成形することにより得られる成形体の剥離を抑制し、高い耐衝撃性を発現するための観点から、下限は5%が好ましく、10%がより好ましく、さらに好ましくは20%であり、さらにより好ましくは30%である。上限については、60%が好ましく、50%がより好ましく、さらに好ましくは40%である。
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおける1,2-ビニル結合量は、重合体ブロックBのミクロ構造の1,2-ビニル結合量又は1,2-ビニル結合量と3,4-ビニル結合量との合計量のことである。
【0025】
重合体ブロックA及び重合体ブロックBで構成される水添ブロック共重合体(b)の構造は、例えばA-B型、A-B-A型、A-B-A-B型、(A-B-)n-X型(ここでnは1以上の整数、Xは四塩化ケイ素、四塩化スズなどの多官能カップリング剤の反応残基又は多官能性有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。)、A-B-A-B-A型等のブロック単位が結合した構造を有するスチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物である。
【0026】
(b)成分である水添ブロック共重合体は、乳化分散性の観点から、重合体ブロックAを2個以上有することが好ましい。
【0027】
上記水添ブロック共重合体(b)中に結合したスチレン量は、10~70質量%であることが好ましく、より好ましくは10~65質量%、さらに好ましくは10~60質量%、特に好ましくは30~60質量%である。
結合スチレン含量が10質量%以上の場合には、本実施形態のペレットに優れた靭性を与え、マスターバッチとして用いた場合、得られた熱可塑性樹脂組成物に高い耐衝撃性を与える。また、結合スチレン含量が70質量%以下であれば、本実施形態のペレットに極端な靭性低下がなく、マスターバッチとして用いた場合、得られた熱可塑性樹脂組成物に高い耐衝撃性を与える。
【0028】
上記重合体ブロックAは、スチレンのホモ重合体ブロック又はスチレンに由来する構造単位を50質量%超(好ましくは70質量%以上)含有するスチレンとブタジエンとの共重合体ブロックであることが好ましい。上記重合体ブロックBは、ブタジエンのホモ重合体ブロック又はブタジエンに由来する構造単位を50質量%超(好ましくは70質量%以上)含有するブタジエンとスチレンとの共重合体ブロックであることが好ましい。
【0029】
スチレンを主体とする重合体ブロック等の上記重合体ブロックA、ブタジエンを主体とする重合体ブロック等の上記重合体ブロックBの構造は、それぞれの重合体ブロックにおける分子鎖中のスチレン等のビニル芳香族化合物に由来する構造単位、又はブタジエン等の共役ジエン化合物に由来する構造単位の分布が、ランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)であってもよく、一部がスチレン等のビニル芳香族化合物100質量%のブロック構造又は一部がブタジエン等の共役ジエン化合物100質量%のブロック構造の任意の組み合わせから構成されていてもよい。
【0030】
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA及び/又は共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBが、それぞれ2個以上含まれる場合は、各重合体ブロックはそれぞれ同一構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
【0031】
上記重合体ブロックの一例として、ブタジエンを主体とする重合体ブロックBについて言及すると、(b)水添ブロック共重合体の水素添加前における、ブタジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBは、ブタジエンの1,2-ビニル結合量が5~60%の中から選ばれる単一の重合体ブロックであってもよく、1,2-ビニル結合量が5~60%であるブタジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックB1と1,2-ビニル結合量が1%以上5%未満であるブタジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックB2を併せ持つブタジエンを主体とする重合体ブロックBであってもよい。このようなブロック構造を示すブロック共重合体は、例えば、A-B2-B1-Aで示され、調整された各モノマー単位のフィードシーケンスに基づいて1,2-ビニル結合量を制御した公知の重合方法によって得ることができる。ただし、この場合、ブロックBにおける1,2-ビニル結合量は、{(B2ビニル結合量)×(B2の数平均分子量)+(B1ビニル結合量)×(B1の数平均分子量)}/{(B2の数平均分子量)+(B1の数平均分子量)}で与えられ、60%以下であることが好ましい。
【0032】
上述したブタジエン等の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの脂肪族系二重結合は、水素添加反応を行い、(b)水添ブロック共重合体(例えば、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物)成分として用いることができる。上記重合体ブロックB中に含まれる脂肪族系二重結合の水素添加率は80%以上であることが好ましい。そして、この水素添加率は通常、赤外分光光度計やNMR等によって知ることができる。
【0033】
上記(b)水添ブロック共重合体は、上記の構造を有する他に、本実施形態のペレットを用いて得られる樹脂組成物の層剥離が防止でき、耐熱性、耐衝撃性及び加工性の観点から、数平均分子量(Mnc)が250,000以下であることが好ましく、スチレン等のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの数平均分子量(MncA)が8000以上を満たすことが好ましい。
(b)水添ブロック共重合体の数平均分子量(Mnc)の測定は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
なお、(b)水添ブロック共重合体の、スチレンを主体とする重合体ブロックAの数平均分子量(MncA)は、例えば、A-B-A型構造の場合、(b)水添ブロック共重合体の数平均分子量(Mnc)を基に、(b)水添ブロック共重合体の分子量分布が1、更にスチレンを主体とする重合体ブロックAが、2つが同一分子量として存在することを前提として、(MncA)=(Mnc)×結合スチレン量の割合÷2の計算式で求めることができる。
同様に、A-B-A-B-A型の(b)水添ブロック共重合体の場合は、(MncA)=(Mnc)×結合スチレン量の割合÷3の計算式で求めることができる。
なお、スチレン-ブタジエンブロック共重合体を合成する段階で、上記した重合体ブロックAのブロック構造及び重合体ブロックBのブロック構造のシーケンスが明確になっている場合は、上記計算式に依存せずに、測定した(b)水添ブロック共重合体の数平均分子量(Mnc)をベースに、重合体ブロックAの割合から算出してもよい。
【0034】
(b)成分の水添ブロック共重合体は、数平均分子量が5万以上25万以下であることが好ましく、5万以上12万以下であることがより好ましく、5.4万~12万であることがさらに好ましい。
数平均分子量が5万より高いことで、本実施形態のペレットに優れた靭性と(a)高密度ポリエチレン樹脂との混和性を与え、マスターバッチとして用いた場合、得られた熱可塑性樹脂組成物に高い耐衝撃性を付与する。また、数平均分子量が25万以下であれば、本実施形態のペレットに優れた靭性を付与し、マスターバッチとして用いた場合、得られた熱可塑性樹脂組成物に極端な耐衝撃性低下が起こらない。
【0035】
上記(b)水添ブロック共重合体は、上述した構造を有するものであれば、どのような製造方法で得られるものであってもかまわない。
【0036】
公知の製造方法としては、例えば、特開昭47-11486号公報、特開昭49-66 743号公報、特開昭50-75651号公報、特開昭54-126255号公報、特開昭56-10542号公報、特開昭56-62847号公報、特開昭56-100840 号公報、特開2004-269665号公報、英国特許第1130770号、米国特許第3281383号及び同第3639517号に記載された方法や、英国特許第1020720号、米国特許第3333024号及び同第4501857号に記載された方法が挙げられる。
【0037】
また、(b)水添ブロック共重合体は、上述した水添ブロック共重合体のほかに、当該水添ブロック共重合体とα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体(エステル化合物や酸無水物化合物、例えば無水マレイン酸)とを、ラジカル発生剤の存在下あるいは非存在下で溶融状態、溶液状態、スラリー状態で80~350℃の温度下で反応させることによって得られる変性(前記α,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体が0.01~10質量%グラフト又は付加)水添ブロック共重合体であってもよく、さらに上記水添ブロック共重合体と変性水添ブロック共重合体との任意の割合の混合物であってもよい。
【0038】
本実施形態のペレット100質量%に対する上記水添ブロック共重合体の質量割合は、生産性の観点から、7.5~38.5質量%であり、好ましくは8.0~38.0質量%、より好ましくは10~38.0質量%である。
【0039】
((c)無機充填剤)
(c)二酸化チタン、炭酸カルシウム及びタルクからなる群から選択される少なくとも一種以上の上記無機充填剤について説明する。
上記(c)無機充填剤としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルクが挙げられ、これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
上記無機充填剤は、表面処理されていてもよいし、されていなくてもよい。
無機充填剤に対する表面処理は、特に限定されるものではないが、例えば、シラン系やチタネート系等の種々のカップリング剤で表面処理を施したものが挙げられる。中でもアミノシラン又はエポキシシランで表面処理を施したものが、樹脂との密着性の観点から好ましい。
樹脂と無機充填剤が密着することで、樹脂組成物の耐衝撃強度が優れる。
【0041】
無機充填剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~30μmである。平均粒子径が30μmを超えると、樹脂組成物としたときの機械物性(衝撃強さ)、表面外観、着色性が低下し、0.1μm未満であると、機械物性(曲げ弾性率)や着色性が低下する。
(c)無機充填剤の平均粒子径は、0.1~30μmであることが好ましく、0.1~25μmであることがより好ましく、0.1~20μmであることがさらに好ましい。
無機充填剤の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、島津製作所社製、商品名:SALD-2000)を用い、水中に無機充填剤を分散させ測定解析する事が出来る。水への無機充填剤の分散方法は、超音波拡散機及び/又は攪拌機を備えた攪拌槽へ水及び無機充填剤を加える事で可能である。この分散液をポンプを介してレーザー回折粒度分布計の測定セルへ送液し、レーザー回折により粒子径を測定する。測定によって得られる、粒子径と粒子数の頻度分布より数平均粒子径として計算する事が出来る。
【0042】
ペレット中の(c)無機充填剤の含有量は、機械強度や着色性の観点から、ペレット100質量%に対して45~75質量%であり、50~75質量%であることが好ましく、50~70質量%であることがさらに好ましい。
【0043】
-二酸化チタン-
上記二酸化チタンとしては、特に限定されるものではなく、公知の二酸化チタンを使用できる。
二酸化チタンは、乾式法、又は湿式法により製造することができる。また、二酸化チタンの結晶構造は、ルチル型、アナターゼ型のいずれでもよいが、本実施形態においてペレットをマスターバッチとして用いた際の熱可塑性樹脂組成物の白色着色性及び熱安定性の観点からルチル型が好ましい。
また、二酸化チタンの粒子形状は粒子状、繊維状であっても構わない。
【0044】
二酸化チタンの1次粒径は、粒子状であれば、平均粒径0.1~1.5μm、繊維状の場合、平均繊維径0.2~1.0μm、平均繊維長1~10μmの繊維状二酸化チタンを用いることが出来る。さらに、上記平均繊維長は、分散性、白色着色性と製造時のハンドリング性のバランスの観点から、好ましくは0.1~10μmであり、より好ましくは0.1~8μmであり、さらに好ましくは0.1~6μmである。
【0045】
平均粒径、平均繊維径が上記の範囲であることで、常用の2軸混練機で、添加ホッパー内でラットホールが発生することを防止でき、かつ同伴した空気や窒素が押出機原料投入口で逆流することが防止でき安定的に添加できることで、溶融混練により均一なマスターバッチとすることが容易となる傾向にあり好ましい。また、吐出量が低下することを防止でき生産性を向上できる傾向にある。また、二酸化チタンの比表面積も比較的小さい為、樹脂材料の劣化を防止できる傾向にある。
【0046】
また、粒径、繊維径分布が狭いことで、ブロッキングが防止でき、二酸化チタンの添加が安定して行え、溶融混練により均一なマスターバッチとするのが容易となる傾向にある。また常用の2軸混練機で、吐出量が低下することを防止でき生産性を向上できる傾向にある。
【0047】
なお本明細書において、用いる二酸化チタンの平均粒径は、以下の手法で求めることができる。たとえば、レーザー粒度計を用いてフローセルにて測定する、走査型電子顕微鏡で倍率10,000倍で観察し、100個の二酸化チタンの直径を測定する、二液硬化型エポキシ樹脂(アラルダイト)に混練し、硬化後薄膜切片を作成し透過型電子顕微鏡で倍率10,000倍で観察し、100個の二酸化チタンの直径を測定する方法が挙げられる。
【0048】
また、二酸化チタン製造時の分散性及びペレット中での分散性を向上させる目的で、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニアチタン、錫等の含水酸化物及び/又は酸化物や有機珪素化合物の少なくとも一種を表面処理剤として含んでいてもよい。
【0049】
シリカは吸水性が高く、樹脂組成物とした際、樹脂成分の分解、成形品外観不良等の水分の影響を受けやすいので、無機処理をする場合にはアルミナ、ジルコニアが好ましく、シリカを併用する場合はシリカが少量であることが好ましい。これら無機処理剤の使用量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、二酸化チタンに対して2~10質量%である。無機処理剤の含有量が二酸化チタンに対して多すぎると、二酸化チタン表面の無機処理層に含まれる吸着水により、樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の強度低下や外観不良が問題となる場合がある。逆に少なすぎても分散性が不十分となるなど、改良効果が不十分である場合がある。 有機処理剤としては、アルコキシ基、エポキシ基、アミノ基もしくはSi-H結合を有する有機シラン化合物又は有機シリコーン化合物等が挙げられる。好ましいのは、樹脂組成物中の分散性、樹脂成分との密着性等の観点から、Si-H結合を有する有機シリコーン化合物である。中でもハイドロジェンポリシロキサンが特に好ましい。これら有機処理剤の使用量は、二酸化チタンに対して、通常、0.5~5重量%、好ましくは1~3重量%である。
【0050】
(c)成分の上記二酸化チタンにおいては、二酸化チタン100質量%としたときそれら処理剤の含有量は8質量%以下が好ましい。
【0051】
-炭酸カルシウム-
上記炭酸カルシウムは、特に限定されないが、平均粒径が0.1~10μmの範囲内である炭酸カルシウムが好ましく、0.5~5μmが更に好ましい。平均粒径が上記範囲にあることで、分散性、白色着色性と製造時のハンドリング性及び耐衝撃性のバランスの点で好ましい。
平均粒径は、上記二酸化チタン同様の電子顕微鏡やレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0052】
-タルク-
上記タルクは、一般的に、含水ケイ酸マグネシウム(SiO2:58~64%、MgO:28~32%、Al2O3:0.5~5%、Fe2O3:0.3~5%)を主成分とする板状結晶である。
【0053】
上記タルクの平均粒子径は1~30μmであることが好ましく、より好ましくは1~25μm、さらに好ましくは1~20μmである。平均粒径がこの範囲であることにより、着色性が向上する。
なおタルクの平均粒子径も、上記二酸化チタン同様の電子顕微鏡やレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0054】
(c)成分であるタルクは、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、インターカレーション法によりアンモニウム塩等を用いて有機化処理を施してもよく、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を用いてバインダー処理を施してもよい。
【0055】
(その他の成分)
本実施形態のペレットは、上述した(a)成分、(b)成分及び(c)成分の他に、本発明の特徴および効果を損なわない範囲で必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
【0056】
その他の成分の含有量は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量を100質量%としたときに、20質量%以下としてよく、10質量%以下としてよく、5質量%以下としてよく、0質量%であってもよい。
【0057】
上記その他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性エラストマー(ブロック共重合体やポリオレフィン系エラストマー等)、熱安定剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、結晶核剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系化合物、シリコーン系難燃剤等)、可塑剤(低分子量ポリエチレン等)、耐候(光)性改良剤、スリップ剤、無機又は有機の充填剤や強化材(ガラス繊維、炭素繊維、ポリアクリロニトリル繊維、アラミド繊維等)、各種着色剤、離型剤等が挙げられる。
【0058】
中でも、分散剤(例えば脂肪酸、脂肪酸アミド、樹脂酸、珪酸、燐酸、アルキルアリールスルホン酸またはその塩、ミネラルオイル)の合計含有量は、本実施形態のペレット100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以下であることが特に好ましく、0質量部であってもよい。当該合計含有量が10質量部以下であることで、加工時のガス発生や、マスターバッチとして用いた際に、樹脂組成物の成形時のモールドデポジットを好適に防止することができる傾向にある。
【0059】
〔ペレットの製造方法〕
本実施形態のペレットは、上述の(a)成分、(b)成分及び(c)成分、さらに必要に応じてその他の成分を溶融混練することにより製造することができる。
【0060】
溶融混練を行う溶融混練機としては、以下に限定されないが、例えば、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられるが、特に、生産性、混練性の観点から、二軸押出機が好ましい。具体的には、コペリオン社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等が挙げられる。
【0061】
押出機を用いた好ましい製造方法を以下に述べる。
押出機のL/D(バレル有効長/バレル内径)は、20以上60以下であることが好ましく、より好ましくは30以上50以下である。
【0062】
押出機の構成については、特に限定されないが、例えば、原料の流れ方向に対し、上流側に第1原料供給口、該第1原料供給口より下流に第1真空ベント、該第1真空ベントの下流に第2原料供給口を設け(必要に応じて、第2原料供給口の下流に、さらに第3、第4原料供給口を設けてもよい)、さらに該第2原料供給口の下流に第2真空ベントを設けたものが好ましい。特に、第1真空ベントの上流にニーディングセクションを設け、第1真空ベントと第2原料供給口との間にニーディングセクションを設け、第2~第4原料供給口と第2真空ベントとの間にニーディングセクションを設けたものがより好ましい。
上記第2~第4原料供給口への原材料供給方法は、特に限定されるものではないが、押出機第2~第4原料供給口の開放口よりの単なる添加供給よりも、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する方法がより安定して供給できる傾向にあるため好ましい。
【0063】
特に、原料に粉体が含まれ、樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減したい場合は、押出機サイドから供給する強制サイドフィーダーを用いた方法がより好ましく、強制サイドフィーダーを第2~第4原料供給口に設け、これら原料の粉体を分割して供給する方法がさらに好ましい。
【0064】
また、液状の原材料を添加する場合は、プランジャーポンプ、ギアポンプ等を用いて押出機中に添加する方法が好ましい。
【0065】
そして、押出機第2~第4原料供給口の上部開放口は、同搬する空気を抜くための開放口として使用することもできる。
【0066】
ペレット製造の際の溶融混練工程における溶融混練温度、スクリュー回転数に関しては、特に限定されないが、結晶性樹脂においてはその結晶性樹脂の融点温度以上、非結晶性樹脂においてはそのガラス転移温度以上で加熱溶融して無理なく加工できる温度を選ぶことができ、通常200~370℃の中から任意に選び、スクリュー回転数を100~1200rpmとする。
【0067】
二軸押出機を用いた、本実施形態のペレットの具体的な製法態様の一つとして、例えば、(a)高密度ポリエチレン樹脂及び(b)水添ブロック共重合体を二軸押出機の第1原料供給口に供給し、加熱溶融ゾーンを樹脂の溶融温度に設定し、スクリュー回転数100~1200rpm、好ましくは200~500rpmにて溶融混練し、さらに第2原料供給口から(c)無機充填剤を溶融状態の樹脂に添加し溶融混練する方法が挙げられる。また、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を二軸押出機に供給する位置は、上記したように第2原料供給口、第3原料供給口を設けてそれぞれの成分を分割して供給しても良く、全成分一括して押出機の第1原料供給口から供給しても構わない。
さらに、樹脂の酸素存在下における熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減化させる場合、各原材料の押出機への添加経路における個々の工程ラインの酸素濃度を1.0体積%未満に保持することが好ましい。上記添加経路としては、特に限定されないが、具体例としては、ストックタンクから順に、配管、リフィルタンクを保有した重量式フィーダー、配管、供給ホッパー、二軸押出機、といった構成を挙げることができる。上記のような低い酸素濃度を維持するための方法としては、特に限定されないが、気密性を高めた個々の工程ラインに不活性ガスを導入する方法が有効である。通常、窒素ガスを導入して酸素濃度1.0体積%未満に維持することが好ましい。
【0068】
上述したペレットの製造方法は、原料成分にパウダー状(体積平均粒径が10μm未満)の成分を含む場合、本実施形態のペレットを二軸押出機を用いて製造する際に、二軸押出機のスクリューにおける残留物をより低減する効果をもたらし、さらには上述した製造方法で得られたペレットにおいて、黒点異物や炭化物等の発生を低減化する効果をもたらす。
【0069】
本実施形態のペレットの具体的な製造方法としては、各原料供給口の酸素濃度を1.0体積%未満に制御した押出機を用い、かつ下記1~3のいずれかの方法を実施することが好ましい。
【0070】
1.本実施形態のペレットに含まれる(a)成分、(b)成分及び(c)成分の一部を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた溶融状態の混練物に対し、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の残量を供給し、続けて溶融混練を行う(第二混練工程)、製造方法。
2.本実施形態のペレットに含まれる(a)成分及び(b)成分を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた溶融状態の混練物に対し、(c)無機充填剤を供給し、続けて溶融混練を行う(第二混練工程)、製造方法。
3.本実施形態のペレットに含まれる(a)成分、(b)成分及び(c)成分の全量を溶融混練する方法。
以上から、上記1~2の製造方法で得られるペレットは、3の製造方法で得られるペレットと比較して、各成分の混合性に優れ、熱劣化による分解、架橋物や炭化物の発生を低減化させることができ、ペレットの時間当たりの生産量を上げることができ、生産性、品質が優れた樹脂組成物用マスターバッチとして使用できるため、より好ましい。
【0071】
本実施形態のペレットは、樹脂組成物用のマスターバッチとして用いることができる。上記樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂及び上記マスターバッチを少なくとも含む熱可塑性樹脂組成物等が挙げられる。本実施形態のマスターバッチと熱可塑性樹脂とを混合して熱可塑性樹脂組成物を製造することで、機械特性(例えば、耐熱性、耐衝撃性、耐モールデポジット性)に優れる熱可塑性樹脂組成物を得ることができる
【0072】
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、上述の本実施形態のペレットと熱可塑性樹脂とを含む。
【0073】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、ポリスチレン系樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、上述の(a)成分、(b)成分と同じ熱可塑性樹脂であってもよいし、(a)成分、(b)成分以外の熱可塑性樹脂であってもよい。中でも、ポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましい。
【0074】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して、ペレットの含有量が0.5~90質量%、熱可塑性樹脂の含有量が10~99.5質量%であることが好ましい。より好ましくは、ペレットの含有量が0.5~85質量%、熱可塑性樹脂の含有量が15~99.5質量%、さらに好ましくは、ペレットの含有量が1~80質量%、熱可塑性樹脂の含有量が20~99質量%である。上記構成により、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、着色性、耐衝撃性及び耐熱性において一層優れた物性バランスを発揮することができる。
【0075】
以下、上記熱可塑性樹脂の具体例について説明する。
(1.ポリフェニレンエーテル系樹脂)
上記熱可塑性樹脂として、ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂を用いることが出来る。
【0076】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、特に限定されることなく、例えば、ポリフェニレンエーテルのみからなる樹脂、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂とからなる混合樹脂(変性ポリフェニレンエーテル樹脂)であってもよい。
【0077】
上記ポリフェニレンエーテルとしては、特に限定されることなく、例えば、下記式(1)で表される繰り返し単位構造からなるホモ重合体、下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有する共重合体が挙げられる。
上記PPEは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化1】
上記式(1)中、R1、R2、R3、及びR4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7の第1級アルキル基、炭素数1~7の第2級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、及び少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される一価の基である。
【0078】
ポリフェニレンエーテル系樹脂に含まれるポリスチレン系樹脂としては、アタクチックポリスチレン、ゴム補強されたポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン、HIPS)、スチレン含有量が50重量%以上のスチレン-アクリロニトリル共重合体(AS)、及び該スチレン-アクリロニトリル共重合体がゴム補強されたAS樹脂等が挙げられ、アタクチックポリスチレン及び/又はハイインパクトポリスチレンが好ましい。
上記ポリスチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
(2.ポリスチレン系樹脂)
上記熱可塑性樹脂として、ポリスチレン(PS)系樹脂を用いることが出来る。
上記ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系化合物を含む単量体成分を重合して得られる重合体が挙げられる。上記単量体成分には、スチレン系化合物と共重合可能な化合物が含まれていてもよい。
上記ポリスチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
上記ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系樹脂100質量%に対してスチレン系化合物に由来する構成単位を60質量%超含むものが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましい。
【0081】
上記スチレン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。特に原材料の実用性の観点から、スチレンが好ましく使用される。
【0082】
また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられる。
【0083】
スチレン系化合物と共重合可能な化合物の使用量は、スチレン系化合物とスチレン系化合物と共重合可能な化合物との合計量に対して、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0084】
上記ポリスチレン系樹脂としては、アタクチックポリスチレン、ゴム補強されたポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン、HIPS)等が挙げられ、アタクチックポリスチレン及び/又はハイインパクトポリスチレンが好ましい。
【0085】
(3.ポリオレフィン系樹脂)
上記熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を用いることが出来る。
【0086】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂等が挙げられ、特にポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
上記ポリエチレン系樹脂としては一般的に市場に供給されているものの中から選択し、使用することができる。
【0087】
上記エチレン系樹脂はエチレン単独からなる重合体であってもエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとからなる共重合体であってもよく、エチレンと共重合させる炭素数3~20のα-オレフィンとしてはプロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1、ドデセン-1、テトラデセン-1、ヘキサデセン-1、オクタデセン-1、エイコセン-1、3-メチル-ブテン-1、4-メチル-ペンテン-1、6-メチル-ヘプテン-1などが挙げられ、その共重合割合は、α-オレフィンとエチレンとのモル比が0.001%以上、1.0%以下、好ましくは0.2%以上、0.7%以下である。また、これらを2種類以上、任意の比率でドライブレンド、あるいはメルトブレンドしたものであってもよい。
【0088】
また、上記プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンホモポリマー、プロピレンと他のモノマーとの共重合体、これらの変性物等が挙げられる。
【0089】
プロピレン系樹脂は、結晶性であることが好ましく、結晶性プロピレンホモポリマー又は結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体であることがより好ましい。また、プロピレン系樹脂は、結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体との混合物であってもよい。
プロピレン系樹脂は、一種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
プロピレンと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、ブテン-1、ヘキセン-1等のα-オレフィン等が挙げられる。その重合形態は、特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体等であってもよい。
【0091】
(その他の成分)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、上述した成分の他に、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導性、電気抵抗値、流動性、低揮発成分、耐熱性及び難燃性を損なわない範囲で、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
【0092】
上記その他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性エラストマー(ポリオレフィン系エラストマー等)、熱安定剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、結晶核剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系化合物、シリコーン系難燃剤、フォスファゼン系難燃剤等)、可塑剤(低分子量ポリエチレン等)、耐候(光)性改良剤、スリップ剤、無機又は有機の充填剤や強化材(ガラス繊維、炭素繊維、ポリアクリロニトリル繊維、アラミド繊維等)、各種着色剤、離型剤等が挙げられる。
【0093】
熱可塑性樹脂組成物中の上記その他の成分の含有量は、熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して30質量%以下としてよい。
【0094】
〔熱可塑性樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、本実施形態のペレット(樹脂組成物用マスターバッチ)および熱可塑性樹脂、さらに必要に応じてその他の成分を溶融混練することにより製造することができる。
【0095】
溶融混練を行う溶融混練機としては、以下に限定されないが、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられるが、特に、生産性、混練性の観点から、単軸押出機、二軸押出機が好ましい。具体的には、コペリオン社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等が挙げられる。
【0096】
押出機を用いた好ましい製造方法を以下に述べる。
押出機のL/D(バレル有効長/バレル内径)は、20以上60以下であることが好ましく、より好ましくは30以上50以下である。
押出機の構成については、特に限定されないが、例えば、原料の流れ方向に対し、上流側に第1原料供給口、該第1原料供給口より下流に第1真空ベント、該第1真空ベントの下流に第2原料供給口を設け(必要に応じて、第2原料供給口の下流に、さらに第3、第4原料供給口を設けてもよい)、さらに該第2原料供給口の下流に第2真空ベントを設けたものが好ましい。特に、第1真空ベントの上流にニーディングセクションを設け、第1真空ベントと第2原料供給口との間にニーディングセクションを設け、第2~第4原料供給口と第2真空ベントとの間にニーディングセクションを設けたものがより好ましい。
【0097】
上記第2~第4原料供給口への原材料供給方法は、特に限定されるものではないが、押出機第2~第4原料供給口の開放口よりの単なる添加供給よりも、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する方法がより安定して供給できる傾向にあるため好ましい。
【0098】
特に、原料に粉体が含まれ、樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減したい場合は、押出機サイドから供給する強制サイドフィーダーを用いた方法がより好ましく、強制サイドフィーダーを第2~第4原料供給口に設け、これら原料の粉体を分割して供給する方法がさらに好ましい。
【0099】
また、液状の原材料を添加する場合は、プランジャーポンプ、ギアポンプ等を用いて押出機中に添加する方法が好ましい。
【0100】
そして、押出機第2~第4原料供給口の上部開放口は、同搬する空気を抜くための開放口として使用することもできる。
【0101】
熱可塑性樹脂組成物の溶融混練工程における溶融混練温度、スクリュー回転数に関しては、特に限定されないが、結晶性樹脂においてはその結晶性樹脂の融点温度以上、非結晶性樹脂においてはそのガラス転移温度以上で加熱溶融して無理なく加工できる温度を選ぶことができ、通常200~370℃の中から任意に選び、スクリュー回転数を100~1200rpmとする。
【0102】
二軸押出機を用いた、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の具体的な製法態様の一つとして、例えば、熱可塑性樹脂及びペレットを二軸押出機の第1原料供給口に供給し、加熱溶融ゾーンを樹脂の溶融温度に設定し、スクリュー回転数100~1200rpm、好ましくは200~500rpmにて溶融混練し、さらに第2原料供給口から必要に応じて樹脂用充填剤を溶融状態の樹脂に添加し溶融混練する方法が挙げられる。また、熱可塑性樹脂及びペレットを二軸押出機に供給する位置は、上記したように第2原料供給口、第3原料供給口を設けてそれぞれの成分を分割して供給しても良く、全成分一括して押出機の第1原料供給口から供給しても構わない。
さらに、樹脂の酸素存在下における熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減化させる場合、各原材料の押出機への添加経路における個々の工程ラインの酸素濃度を1.0体積%未満に保持することが好ましい。上記添加経路としては、特に限定されないが、具体例としては、ストックタンクから順に、配管、リフィルタンクを保有した重量式フィーダー、配管、供給ホッパー、二軸押出機、といった構成を挙げることができる。上記のような低い酸素濃度を維持するための方法としては、特に限定されないが、気密性を高めた個々の工程ラインに不活性ガスを導入する方法が有効である。通常、窒素ガスを導入して酸素濃度1.0体積%未満に維持することが好ましい。
【0103】
上述した熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂がパウダー状(体積平均粒径が10μm未満)の成分を含む場合、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を二軸押出機を用いて製造する際に、二軸押出機のスクリューにおける残留物をより低減する効果をもたらし、さらには上述した製造方法で得られた熱可塑性樹脂組成物において、黒点異物や炭化物等の発生を低減化する効果をもたらす。
【0104】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の具体的な製造方法としては、各原料供給口の酸素濃度を1.0体積%未満に制御した押出機を用い、かつ下記1~3のいずれかの方法を実施することが好ましい。
【0105】
1.本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の一部を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた溶融状態の混練物に対し、熱可塑性樹脂の残量及び本実施形態のペレット(樹脂組成物用マスターバッチ)を供給し、続けて溶融混練を行う(第二混練工程)、製造方法。
2.本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた溶融状態の混練物に対し、本実施形態のペレット(樹脂用マスターバッチ)を供給し、続けて溶融混練を行う(第二混練工程)、製造方法。
3.本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂、本実施形態のペレット(樹脂組成物用マスターバッチ)の全量を溶融混練する方法。
【0106】
以上から、上記1~2の製造方法で得られる熱可塑性樹脂組成物は、3の製造方法で得られる熱可塑性樹脂組成物と比較して、各成分の混合性に優れ、熱劣化による分解、架橋物や炭化物の発生を低減化させることができ、樹脂の時間当たりの生産量を上げることができ、生産性、品質が優れた熱可塑性樹脂組成物が得られるため、より好ましい。
【0107】
〔成形品〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品は、高周波アンテナ関連部材(例えば、アンテナ、振り子)として用いることができる。また、上記成形品は、光学機器機構部品、光源ランプ周り部品、金属フィルム積層基板用シート又はフィルム、ハードディスク内部部品、光ファイバー用コネクタフェルール、プリンター部品、コピー機部品、水周りポンプ・配管部材、自動車ラジエタータンク部品等の自動車エンジンルーム内部品や自動車ランプ部品等として広く使用することができる。
【実施例】
【0108】
以下、本実施形態について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0109】
<実施例1~22、比較例1~6>
実施例及び比較例に用いた物性の測定方法を以下に示す。
【0110】
(1)生産性
後述の実施例、比較例で樹脂組成物用マスターバッチペレットを製造したときの問題点の有無を確認した。
評価基準:
○(良好):問題なく生産可能
△(問題あり):生産はできるが問題があり、鼻切り後の収率が低い(90~95%)
×(不良):生産できない。鼻切り後の収率<90%
原因 :A カール(ストランドのねじれ)
B サージング(脈動)
C ストランド切れ
D 目ヤニ(紡口への樹脂劣化物の付着)
E ガスの吹き出し(バックフロー)による噛み込み不良
F トルク上昇
G 剥離(ストランドカット不良)
H 固化不足(ストランドカット不良)
【0111】
(2)分散性
後述の実施例及び比較例で得られた樹脂組成物用マスターバッチペレットを樹脂流動方向に切削・面出しし、電界放射走査型電子顕微鏡(FE-SEM/EDX)(日本電子株式会社製 JSM-6700F)を用いて、観察した。下記評価基準にて評価した。
評価基準:
○(良好):無機充填剤が均一に樹脂に分散している。
×(不良):凝集した無機充填剤が観察された。
【0112】
実施例及び比較例に用いた原材料を以下に示す。
【0113】
<(a)成分:高密度ポリエチレン樹脂>
(a1):高密度ポリエチレン (MFR=3g/10分)
(a2):高密度ポリエチレン 旭化成株式会社製サンテック(商標)HD J240(MFR=5g/10分)
(a3):高密度ポリエチレン 旭化成株式会社製サンテック(商標)HD J320(MFR=12g/10分)
(a4):高密度ポリエチレン 旭化成株式会社製サンテック(商標)HD J311(MFR=26g/10分)
(a5):高密度ポリエチレン 旭化成株式会社製サンテック(商標)HD J300(MFR=42g/10分)
【0114】
<(b)成分:水添ブロック共重合体>
(b1)ポリスチレン-水素添加されたポリブタジエン-ポリスチレンのブロック構造を持ち、結合スチレン量が13%、水素添加前のポリブタジエンブロックにおける1,2-ビニル結合量が35%、数平均分子量が120,000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.2%の水添ブロック共重合体。
(b2)ポリスチレン-水素添加前のポリブタジエン-ポリスチレンのブロック構造を持ち、結合スチレン量が30%、水素添加されたポリブタジエンブロックにおける1,2-ビニル結合量が36%、数平均分子量が120,000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.3%の水添ブロック共重合体。
(b3)ポリスチレン-水素添加前のポリブタジエン-ポリスチレンのブロック構造を持ち、結合スチレン量が30%、水素添加されたポリブタジエンブロックにおける1,2-ビニル結合量が36%、数平均分子量が81,000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.3%の水添ブロック共重合体。
(b4)ポリスチレン-水素添加前のポリブタジエン-ポリスチレンのブロック構造を持ち、結合スチレン量が60%、水素添加前のポリブタジエンブロックにおける1,2-ビニル結合量が36%、数平均分子量が88,000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.3%の水添ブロック共重合体。
(b5)ポリスチレン-水素添加前のポリブタジエン-ポリスチレンのブロック構造を持ち、結合スチレン量が67%、水素添加前のポリブタジエンブロックにおける1,2-ビニル結合量が36%、数平均分子量が74,000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.3%の水添ブロック共重合体。
(b6)ポリスチレン-水素添加前のポリブタジエン-ポリスチレンのブロック構造を持ち、結合スチレン量が30%、水素添加前のポリブタジエンブロックにおける1,2-ビニル結合量が36%、数平均分子量が235,000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.3%の水添ブロック共重合体。
(b7)ポリスチレン-水素添加前のポリブタジエン-ポリスチレンのブロック構造を持ち、結合スチレン量が31%、水素添加されたポリブタジエンブロックにおける1,2-ビニル結合量が35%、数平均分子量が54,000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.3%の水添ブロック共重合体。
(b8)ポリスチレン-水素添加前のポリブタジエン-ポリスチレンのブロック構造を持ち、結合スチレン量が30%、水素添加されたポリブタジエンブロックにおける1,2-ビニル結合量が36%、数平均分子量が50,000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.5%の水添ブロック共重合体。
【0115】
<(c)成分:無機充填剤>
(c1)粒子状二酸化チタン VENATOR社製 RTC-30 平均粒子径0.2μm。
(c2)繊維状二酸化チタン 石原産業株式会社製 タイペーク(商標)PFR-404直径0.4μm、繊維長3.0μm。
(c3)炭酸カルシウム 竹原化学工業社製 SL-2200 平均粒子径 1.3μm。
(c4)タルク 竹原化学工業社製 ハイトロンA 平均粒子径 3.0μm。
【0116】
<(d)成分:その他成分>
(d1):低密度ポリエチレン 旭化成株式会社製サンテック(商標)LD L6810(MFR=11g/10分)
(d2):ホモポリプロピレン 日本ポリプロ株式会社製ノバテック(商標)PP MA3(MFR=11g/10分)
(d4)ハイインパクトポリスチレン(PSジャパン株式会社製H9405)
(d5)エチレンビスステアリルアマイド(花王株式会社製 花王ワックスEB-FF)
【0117】
(実施例1~22、比較例1~6)
(a)~(d)成分を表1に示した組成で配合し、二軸押出機ZSK-40(COPERION WERNER&PFLEIDERER社製、ドイツ国)を用いて樹脂組成物用マスターバッチペレットの製造を行った。この二軸押出機において、原料の流れ方向に対して上流側に第1原料供給口を設け、これより下流に第1真空ベント、その下流に第2原料供給口、さらにその下流に第2真空ベントを設けた。
上記のように設定した押出機を用い、表1に示す組成及び添加方法で各成分を添加し、押出温度230~320℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量70Kg/Hrにて溶融混練し、ペレットを製造した。
得られた樹脂組成物用マスターバッチペレットを用いて、上述の(1)及び(2)の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0118】
<実施例23~40、比較例7~14>
[熱可塑性樹脂組成物]
<樹脂組成物用マスターバッチペレット>
実施例1~22、比較例1~6にて作製した樹脂組成物用マスターバッチペレットを用いた。
<熱可塑性樹脂>
<(d)成分:その他成分>
(d1):低密度ポリエチレン 旭化成株式会社製サンテック(商標)LD L6810(MFR=11g/10分)
(d2):ホモポリプロピレン 日本ポリプロ株式会社製ノバテック(商標)PP MA3(MFR=11g/10分)
(d3)ポリフェニレンエーテル(濃度0.4g/dlのクロロホルム溶液で30℃で測定した還元粘度:0.40dl/g)
(d4)ハイインパクトポリスチレン(PSジャパン株式会社製H9405)
【0119】
実施例及び比較例に用いた物性の測定方法を以下に示す。
【0120】
(1)生産性
実施例、比較例で熱可塑性樹脂組成物を製造したときの問題点の有無を確認した。
評価基準:
○(良好):問題なく生産可能
△(問題あり):生産はできるが問題があり、鼻切り後の収率が低い(90~95%)
×(不良):生産できない。鼻切り後の収率<90%
原因 :A カール(ストランドのねじれ)
B サージング(脈動)
C ストランド切れ
D 目ヤニ(紡口への樹脂劣化物の付着)
E ガスの吹き出し(バックフロー)による噛み込み不良
F トルク上昇
G 剥離(ストランドカット不良)
H 固化不足(ストランドカット不良)
【0121】
(2)分散性
後述の実施例及び比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物を樹脂流動方向に切削・面出しし、電界放射走査型電子顕微鏡(FE-SEM/EDX)(日本電子株式会社製 JSM-6700F)を用いて、観察した。下記評価基準にて評価した。
評価基準:
○(良好):無機充填剤が均一に樹脂に分散している。
×(不良):凝集した無機充填剤が観察された。
【0122】
(3)耐熱性
後述の実施例及び比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物を、記載の条件に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、ISO 10724-1に従い試験片タイプAを成形した。このテストピースを用いて、JIS K7191-1に準拠し、荷重たわみ温度(℃)を測定した。値が高いほど耐熱性が優れていると評価した。
【0123】
(4)耐衝撃性
後述の実施例及び比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物を、記載の条件に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、ISO 10724-1に従い試験片タイプAを成形した。このテストピースを用いて、JIS K7111-1に準拠し、ノッチ付きシャルピー衝撃強さ(kJ/m2)を測定した。値が高いほど耐衝撃性が優れていると評価した。
【0124】
(5)耐モールドデポジット性
実施例及び比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物を用いてシリンダー温度220~300℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度40~80℃の条件で、特にガス抜け部を設けていないウェルド金型(縦38mm、横79mm、厚み5mmの板状で横中央にウェルド部を有し、そのウェルド部より左右8mmの位置にゲート部を有する)を用いて連続成形を行った。高光沢グロスチェッカ IG-410((株)堀場製作所製)(レンジ1,000モード)を用いて金型のウェルド部分の光沢を測定し、成形後の光沢から成形前の光沢を引いた差が100になるまでの成形ショット数を求め、金型汚染の評価とした。また、樹脂の剥離が激しく、金型にはがれた樹脂が張り付いてしまうものに関しては、張り付きが発生したショット数とした。
成形ショット数が多いものほど金型汚染が少ない熱可塑性樹脂組成物であると判断した。
【0125】
【0126】
【0127】
表1に示すように、実施例1~21の樹脂組成物用マスターバッチペレットは、生産性に優れていることが分かった。
また、表1に記載の実施例8、11、12、15、16、18に示したマスターバッチペレットは分散不良が認められたにもかかわらず、表2に示すように、それらを用いた実施例32~37の熱可塑性樹脂組成物では分散性が改善されていた。更に本実施形態のマスターバッチペレットとそれを使用しない同一樹脂組成の熱可塑性樹脂組成物とを比べると、分散性、機械物性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本実施形態の樹脂用充填剤を含む熱可塑性樹脂組成物は、成形時、金型汚染が低減できるため、生産性を向上できる。さらにその成形品は、色ムラが無く、高い耐衝撃性を有することから、樹脂成形品の設計の自由度を上げることができる。このため、電気・電子機器、自動車機器、化学機器、光学機器、アンテナにおける各種部品として利用でき、例えば、デジタルバーサタイルディスク等のシャーシーやキャビネット、光ピックアップスライドベース等の光学機器機構部品、光源ランプ周り部品、金属フィルム積層基板用シート又はフィルム、ハードディスク内部部品、光ファイバー用コネクタフェルール、レーザービームプリンター内部部品(トナーカートリッジなど)、インクジェットプリンター内部部品、コピー機内部部品、水周りポンプ・配管部材、自動車ラジエタータンク部品等の自動車エンジンルーム内部品、自動車ランプ部品、高周波アンテナ関連部材等として、産業上の利用可能性を有している。