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特許7474813可変屈折率を有する累進眼鏡レンズ並びにその設計及び製造の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】可変屈折率を有する累進眼鏡レンズ並びにその設計及び製造の方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
G02C7/06
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022136512
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2021502931の分割
【原出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2022174134
(43)【公開日】2022-11-22
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/069806
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507062222
【氏名又は名称】カール ツァイス ヴィジョン インターナショナル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト ケルシュ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ メンケ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ヴィートショーク
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507649(JP,A)
【文献】特表2010-517089(JP,A)
【文献】特表2010-507834(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0348538(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0069095(KR,A)
【文献】特表2008-537177(JP,A)
【文献】特表2005-532598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 ― 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面、後面及び空間的に変化する屈折率を有する累進屈折力眼鏡レンズを設計するコンピュータ実施方法であって、
前記前面は、累進面として実施され、及び/又は前記後面は、累進面として実施される、コンピュータ実施方法において、
- 前記累進屈折力眼鏡レンズの光学特性は、可視光が前記累進屈折力眼鏡レンズを通る複数の評価点においてレイトレーシング方法によって計算され、
- 前記累進屈折力眼鏡レンズの少なくとも1つの意図される光学特性は、前記それぞれの評価点において設定され、
- 前記累進屈折力眼鏡レンズの設計設定され、前記設計は、前記評価点を通る各視覚的ビーム路における前記累進面の局所表面ジオメトリ及び前記累進屈折力眼鏡レンズの局所屈折率の設計データを含み、
- 前記累進屈折力眼鏡レンズの前記設計は、前記累進屈折力眼鏡レンズの前記少なくとも1つの意図される光学特性の近似に鑑みて変更され、前記変更することは、前記評価点を通る前記それぞれの視覚的ビーム路における前記累進面の前記局所表面ジオメトリ及び前記累進屈折力眼鏡レンズの前記局所屈折率の前記設計データを変更することを含み、前記少なくとも1つの意図される光学特性は、前記累進屈折力眼鏡レンズの意図される残余乱視を含み、前記累進面及び前記局所屈折率は、以下の仕様の群:
(i)前記累進面は、2つの空間次元において自由に変更され、及び前記局所屈折率は、少なくとも2つの空間次元において自由に変更されること、
(ii)前記累進面は、1つ又は2つの空間次元において自由に変更され、及び前記局所屈折率は、3つの空間次元において自由に変更されること、
(iii)前記累進面は、2つの空間次元において自由に変更され、及び前記局所屈折率は、2つの空間次元において自由に変更されること、
(iv)前記累進面は、2つの空間次元において自由に変更され、及び前記局所屈折率は、3つの空間次元において自由に変更されること
からの仕様の少なくとも1つに従って変更されることを特徴とするコンピュータ実施方法。
【請求項2】
- 前記累進面は、点対称又は軸対称のいずれも有さない自由曲面が生じるように変更されることと、
- 前記局所屈折率は、
(a)前記屈折率が、第1の空間次元及び第2の空間次元における前記屈折率の分布が点対称又は軸対称のいずれも有さないように、前記第1の空間次元及び前記第2の空間次元でのみ変化し、且つ第3の空間次元では一定であるか、又は
(b)前記屈折率が、第3の空間次元に直交する全ての平面における第1の空間次元及び第2の空間次元での前記屈折率の分布が点対称又は軸対称のいずれも有さないように、前記第1の空間次元において、且つ前記第2の空間次元において、且つ前記第3の空間次元において変化するか、又は
(c)前記屈折率が、前記累進屈折力眼鏡レンズにおける前記屈折率の分布が全く点対称を有さず、且つ軸対称を有さないように、第1の空間次元において、且つ第2の空間次元において、且つ第3の空間次元において変化する
ように変更されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記累進屈折力眼鏡レンズの前記少なくとも1つの意図される光学特性は、
(i)空間的に変化しない屈折率を有する累進屈折力眼鏡レンズの対応する意図される光学特性から、及び/又は
(ii)空間的に変化しない屈折率を有する累進屈折力眼鏡レンズの対応する光学特性から
導出されること、又は累進屈折力眼鏡レンズの前記意図される残余乱視は、
(i)空間的に変換しない屈折率を有する累進屈折力眼鏡レンズの意図される残余乱視から、及び/又は
(ii)空間的に変化しない屈折率を有する累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視から
導出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
遠用部と近用部との間の中央中間部における前記累進屈折力眼鏡レンズの前記少なくとも1つの意図される光学特性は、
(i)空間的に変化しない屈折率を有する前記累進屈折力眼鏡レンズの前記対応する意図される光学特性、又は
(ii)空間的に変化しない屈折率を有する前記累進屈折力眼鏡レンズの前記対応する光学特性
に関して低減されること、又は遠用部と近用部との間の中央中間部における前記累進屈折力眼鏡レンズの前記意図される残余乱視は、
(i)空間的に変換しない屈折率を有する前記累進屈折力眼鏡レンズの前記意図される残余乱視、又は
(ii)空間的に変化しない屈折率を有する前記累進屈折力眼鏡レンズの前記残余乱視
に関して低減されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
遠用部と近用部との間の中央中間部における前記累進屈折力眼鏡レンズの前記意図される残余乱視は、主視線の周囲の領域において低減され、前記領域は、両側において、群
(a)前記主視線から5mm、
(b)前記主視線から10mm、
(c)前記主視線から20mm
からの水平距離を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記累進屈折力眼鏡レンズの前記設計の前記変更は、目的関数
【数1】
に鑑みて実施され、式中、
【数2】
、評価点mにおける光学特性nの重みを表し、
【数3】
は、前記評価点mにおける前記光学特性nの意図される値を表し、及び
【数4】
は、前記評価点mにおける前記光学特性nの実際の値を表すことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記意図される残余乱視は、少なくとも1つの評価点について予め決定され、前記意図される残余乱視は、対照累進屈折力眼鏡レンズであって、等価球面度数の同じ分布及び累進屈折力眼鏡装用者の目の前での前記対照累進屈折力眼鏡レンズの同じ構成を有するが、空間的に変化しない屈折率を有する対照累進屈折力眼鏡レンズ上の少なくとも1つの対応する評価点における理論的に達成可能な最小の残余乱視未満であることと、前記評価点を通る前記それぞれの視覚的ビーム路における前記累進面の前記局所表面ジオメトリ及び前記累進屈折力眼鏡レンズの前記局所屈折率の前記設計データを変更することは、前記設計される累進屈折力眼鏡レンズについて達成される、前記少なくとも1つの評価点における前記残余乱視が、前記対照累進屈折力眼鏡レンズ上の前記少なくとも1つの対応する評価点における前記理論的に達成可能な残余乱視未満である場合にのみ終了されることとを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記評価点を通る前記それぞれの視覚的ビーム路における前記累進面の前記局所表面ジオメトリ及び前記累進屈折力眼鏡レンズの前記局所屈折率の前記設計データを変更することは、前記累進屈折力眼鏡レンズの前記残余乱視の最大値が、対照累進屈折力眼鏡レンズであって、等価球面度数の同じ分布及び累進屈折力眼鏡装用者の目の前での対照累進屈折力眼鏡レンズの同じ構成を有するが、空間的に変化しない屈折率を有する対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視の最大値未満であるという規定を用いて実施されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータにロードされ、且つ/又はコンピュータ上で実行されると、請求項1~8のいずれか一項に記載の全ての方法ステップを実行するプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムを含むコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
加法的方法により、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を使用して設計される累進屈折力眼鏡レンズを生成する方法。
【請求項12】
累進屈折力眼鏡レンズを生成する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を含み、且つ前記設計に従って前記累進屈折力眼鏡レンズを製造する方法。
【請求項13】
前記累進屈折力眼鏡レンズは、加法的方法を使用して製造されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
プロセッサと、請求項9に記載のコンピュータプログラムが記憶されるメモリとを含むコンピュータであって、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されるコンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
可変屈折率を有する累進眼鏡レンズ並びにその設計及び製造の方法である。
【0002】
本発明は、特許請求項1及び13の前文による、累進屈折力眼鏡レンズ又はデータ媒体
に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズの表現を含む製品、請求項25の前文による、
累進屈折力眼鏡レンズを設計するコンピュータ実施方法、請求項36及び37に記載され
る、累進屈折力眼鏡レンズを製造する方法並びに特許請求項34に記載のコンピュータプ
ログラム及び特許請求項35に記載のコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
眼鏡レンズ光学系では、累進屈折力眼鏡レンズが知られており、何十年にもわたり広く
行き渡っている。多焦点眼鏡レンズ(一般に二焦点及び三焦点眼鏡レンズ)のように、こ
れらは、近くの物体を観測する目的のために、例えば読書時、レンズの下部に老眼ユーザ
のための追加の光学屈折力を提供する。この追加の光学屈折力は、年齢が進むにつれて、
目の水晶体が近くの物体に焦点を合わせることができる特性を一層失うために必要とされ
る。これらの多焦点レンズと比較して、累進屈折力レンズは、鮮鋭視が、遠く及び近くの
みならず、全ての中間距離でも保証されるような遠用部から近用部への光学屈折力の連続
増加を提供するという利点を提供する。
【0004】
DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション14.1.1によれ
ば、遠用部とは、遠見視のための屈折度数を有する多焦点又は累進屈折力眼鏡レンズの部
分である。したがって、この規格のセクション14.1.3による近用部とは、近見視用
屈折度数を有する多焦点又は累進屈折力眼鏡レンズの部分である。
【0005】
これまで、累進屈折力眼鏡レンズは、通常、均一な一定の屈折率を有する材料から製造
されてきた。これは、眼鏡レンズの屈折度数が、眼鏡レンズの空気に隣接する2つの表面
(DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション5.8及び5.9に
提供される定義によれば、前面又は物体側表面及び後面又は目側表面)の適宜整形によっ
てのみ設定されることを意味する。DIN EN ISO 13666:2013-10
のセクション9.3によれば、屈折度数とは、眼鏡レンズの合焦屈折力及びプリズム屈折
力の総称である。
【0006】
均一な一定の屈折率を有する材料で作られた累進屈折力眼鏡レンズで合焦屈折力の連続
した増大をもたらすために、これもDIN EN ISO 13666:2013-10
規格のセクション8.3.5において反映されるように、「累進屈折力眼鏡レンズ」とい
う用語を、「少なくとも1つの累進面を有し、眼鏡装用者が下を見るにつれて増大する(
正の)屈折力を有する眼鏡レンズ」として定義する表面曲率の対応する連続変化が2つの
眼鏡レンズ表面の少なくとも一方に存在しなければならない。セクション7.7によれば
、累進面とは、一般に加入度数の増大又は屈折力の低下を提供することを意図される累進
面の一部又は全てにわたる曲率の連続変化を有する回転対称ではない表面である。
【0007】
所定の処方では、使用状況、厚さ規定等を考慮に入れ、一定の屈折率を有する材料を使
用した特定の設計に繋がる累進屈折力眼鏡レンズは、上述した上記の従来技術に従って最
適化することができる。ここで、設計という用語は、レンズ全体にわたる眼鏡装用者の残
余球面収差及び残余非点収差の分布を示す。
【0008】
この累進屈折力眼鏡レンズでは、主視線を決定することが可能であり、主視線は、目の
注視が遠用領域から近用領域に眼鏡装用者の直線方向に前の物体点に移動する際、2つの
表面の一方、例えば前面又は後面、特に累進面を通る全ての視点の全体を表し、主視線に
ついて特に中間部において小さい残余非点収差を達成することができる。中間部とは、遠
用部(遠見視のための領域;DIN EN ISO 13666:2013-10の14
.1.1:遠見視のための屈折度数を有する多焦点又は累進屈折力眼鏡レンズの部分を参
照されたい)と近用部(近見視のための領域;DIN EN ISO 13666:20
13-10の14.1.3:近見視のための屈折度数を有する多焦点又は累進屈折力眼鏡
レンズの部分を参照されたい)との間の遷移領域全体である。DIN EN ISO 1
3666:2013-10の14.1.2では、中間部は、遠用領域と近見領域との間に
ある距離を見るための屈折度数を有する三焦点眼鏡レンズの部分として定義されている。
【0009】
しかしながら、ミンクウィッツの法則により、残余非点収差は、主視線と並んで水平方
向において増大する(垂直方向における屈折力の増大により)。
【0010】
国際公開第89/04986 A1号パンフレットは、まず、冒頭に記載したタイプの
累進屈折力眼鏡レンズ(この文献は、「累進眼鏡レンズ」という表現を使用する)から進
展する。文献の第1頁の第2及び第3セクションから、累進屈折力眼鏡レンズの累進面の
「製造プロセス、より詳細には研磨」は、「球形から非常に大きくずれた」累進面の表面
形態を考慮して「困難」であり、製造された表面は、計算された意図する形態から大きく
ずれることを知ることが可能である。「更に、- 少なくとも1つの累進面を用いて -
イメージング収差、より詳細には非点収差及び歪みをレンズ全体にわたり小さく維持す
ることは可能ではない。」
【0011】
国際公開第89/04986 A1号パンフレットの第2頁において、変化する屈折率
を有する眼鏡レンズが既知であるが、累進面の複雑な表面形態を、変化する屈折率で置換
することによる累進眼鏡レンズの実現は、恐らく同様に予期される複雑な屈折率関数によ
り従来失敗してきたことが更に説明されている。
【0012】
国際公開第89/04986 A1号パンフレットは、「[...]中間部において少
なくとも主視線に沿って変化するレンズ材料の屈折率が光学屈折力の増大に少なくとも部
分的に寄与する場合、同等のイメージング特性で簡易化された製造」を達成すると主張し
ている。しかしながら、これは、「第1に、累進面を製造する目的で球面境界面を有する
ブランクの加工が低減されるように遠用部と近用部との間の曲率半径の差を低減し」、且
つ「第2に、従来技術による累進眼鏡レンズでの球面レンズの研磨手順に実質的に対応す
る研磨手順が簡易化され、研磨プロセスの結果が改善される」という目標下で実現される
。これは、研磨面が、概ね研磨する累進面のサイズを有する大面積研磨器具の使用が、国
際公開第89/04986 A1号パンフレットの出願日の時点で通常のものであったた
めである。
【0013】
更に、第5頁15ff行において、この文献は、以下のように説明している:乱視が更
に屈折率の変動の結果として主経線に沿って低減する場合、これは、主経線又は主視線に
沿って小さい必要がある表面非点収差の眼鏡レンズを形成する場合の制限がなくなり、し
たがって[...]眼鏡レンズがミンクウィッツ定理を受けず、眼鏡レンズが他の態様下
ではるかに費用効率的に形成され得ることを意味する。
【0014】
この文献の宣言された目標は、対応して複雑な形態を有する屈折率変化により、研磨可
能な表面を簡易に取得することである。第6頁の最後から2番目の段落は、「極端な場合
、ここで、累進眼鏡レンズの両面が球面であることさえ可能である。しかしながら、回転
対称非球面を使用することも当然可能である」と明確に説明している。他方、この文献は
、屈折率関数の複雑性に関する制限に言及しておらず、これは、第6頁の最後の文章によ
れば、「例えば、一次元関数n(y)[...]の場合、スプライン関数により記述する
」ことができる。
【0015】
この文献は、2つの例示的な実施形態を開示している。第2の例示的な実施形態では、
「前面及び目側表面は、両方とも球面である[...]」(同書第11頁の最後の文章を
参照されたい)。第1の例示的な実施形態では、前面は、円の形態の主経線を有し(同書
第10頁6~13行目を参照されたい)、それに垂直に円錐セクションの形態を有する(
同書第11頁6~14行目を参照されたい)。第1の例示的な実施形態では、後面は、球
面である。
【0016】
第1の例示的な実施形態に関して、この文献は、[...]「最適化中、イメージング
収差の補正が考慮に入れられておらず、それにも関わらず、側方領域で非常に良好なイメ
ージング特性を有するレンズが出現した。主経線の側方領域におけるイメージング特性の
更なる改良は、屈折率関数の更なる最適化により得られる」という事実に明確に言及して
いる。
【0017】
国際公開第89/12841 A1号パンフレットは、前面境界面及び目側境界面を有
し、イメージング収差の補正に寄与する変化する屈折率を有する眼鏡レンズである。
【0018】
国際公開第99/13361 A1号パンフレットは、累進屈折力レンズの全ての機能
特徴、特に遠用部、近用部及び累進ゾーンを有するが、縁領域は、非点収差を有するべき
でないことが意図された、いわゆる「MIV」レンズ物体を記載している。この文献は、
そのようなレンズ物体が球面前面及び球面後面を含み得ることを記載している。レンズ物
体は、遠用部から近用部に連続して増大する屈折率を有する累進ゾーンを含むべきである
。しかしながら、一般に、そのような実施形態では、望まれる全ての加入屈折力を実現す
ることは、可能ではない。したがって、この文献は、「必要に応じて、加入屈折力の範囲
は、可変屈折率のみで不可能な場合、上述したように可変屈折率材料の未加工塊を用いて
前記レンズを製造し、従来の累進レンズとして可変ジオメトリ曲線を形成し、そうして従
来の累進レンズと比較してはるかに高い性能を有する結果を得ることによっても橋渡しす
ることができ、なぜなら、異なるエリアで異なる屈折率を有するレンズは、遠見視と近見
視との間に分化がはるかに少ない曲線を使用し、収差エリアを低減し、有用視エリアを増
大させることにより、所望の加入屈折率を提供するためである」と説明している。
【0019】
それから本発明が進展している米国特許出願公開第2010/238400 A1号明
細書には、それぞれの場合に複数の層からなる累進屈折力眼鏡レンズが記載されている。
層の少なくとも1つは、互いに直交して延びる2つの経線に関して説明される、変化する
屈折率を有し得る。更に、複数の層の1つの表面の少なくとも1つは、累進表面形態を有
し得る。この明細書は、水平方向における屈折率プロファイルを表面のジオメトリによる
それの完全補正に使用することができると記載している。
【0020】
Yuki Shitanoki et al.:“Application of G
raded-Index for Astigmatism Reduction in
Progressive Addition Lens”,Applied Phys
ics Express,Vol.2,March 1,2009,page 0324
01は、同じ成形金型を用いて成形された2つの累進屈折力眼鏡レンズの比較により、屈
折率勾配を有する累進屈折力眼鏡レンズの場合の乱視が、屈折率勾配のない累進屈折力眼
鏡レンズと比較して低減することができるいう事実を記載している。
【0021】
特に米国特許出願公開第2010/238400 A1号明細書に記載される多層眼鏡
レンズからの本発明の趣旨の区別に関して、眼鏡レンズは、通常、1つ又は複数の仕上げ
プロセスを受けるという文章をここに提供する。特に、機能層が片面又は両面に塗布され
る。そのような機能層は、所定の特性を眼鏡レンズに備えさせる層であり、所定の特性は
、眼鏡装用者にとって有利であり、これは、眼鏡レンズが、必要に応じて機能層が塗布さ
れるベース又はキャリア材料の特性及び成形に純粋に基づいて有さないであろうものであ
る。そのような有利な特性には、反射防止被膜、銀めっき、偏光、着色、自己色味付け等
の光学特性に加えて、硬化、埃付着の低減若しくは曇り低減等の機械的特性及び/又は電
磁放射線からのシールド、電流の導通等の電気特性並びに/或いは他の物理的又は化学的
特性もある。機能被膜の例は、例えば、文献国際公開第10/109154 Al号パン
フレット、国際公開第01/55752 Al号パンフレット及び独国特許出願公開第1
0 2008 041 869 Al号明細書から分かる。これらの機能層は、本特許出
願の範囲内で考察される眼鏡レンズのジオプタ特性に影響しないか又はごく僅かに影響す
る。これとは対照的に、米国特許出願第2010/238400 A1号明細書に記載さ
れる層は、累進屈折力眼鏡レンズの屈折度数に無視できない影響を有する。
【0022】
欧州特許公開第2 177 943 A1号明細書は、対象者の視覚的印象に影響する
基準リストからの少なくとも1つの基準に従った光学系、例えば眼科レンズの最適化によ
って計算する方法を記載している。この文献は、目標値及び基準値を考慮に入れて費用関
数を最小化することを提案している。そのような費用関数の一般公式が指定されている。
特に、以下の2つの例が指定されている。
段落[0016]:一実施形態では、最適化される光学作業系は、少なくとも2つの光
学表面を含み、変更されるパラメータは、少なくとも光学作業系の2つの光学表面の式の
係数である。
段落[0018]:最適化される光学系が少なくとも2つの光学表面を含む一実施形態
では、光学作業系の変更は、少なくとも光学作業系の屈折率が変更されるように実行され
る。屈折率に勾配が存在する不均質材料からレンズ(GRINレンズとして知られている
)を製造することが可能である。例として、最適化される屈折率の分布は、軸方向分布又
は径方向分布であり得、且つ/又は波長に依存する。
【0023】
国際公開第2011/093929 A1号パンフレットは、2つの累進屈折力表面を
有するが、屈折率が変化しない累進屈折力眼鏡レンズであって、後面は、後面の平均曲率
の絶対値の最小が中間累進帯にあるような様式である、累進屈折力眼鏡レンズを開示して
いる。
【0024】
欧州特許出願公開第3 273 292 A1号明細書は、加法的な製造方法を使用し
た眼鏡レンズの製造を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ここで、本発明の目的は、従来技術から既知の累進屈折力眼鏡レンズと比較して、眼鏡
装用者にとって更に改良された光学特性を有する累進屈折力眼鏡レンズを提供し、且つ更
に改良された光学イメージング特性を有する累進屈折力眼鏡レンズを設計及び製造するた
めに使用することができる方法を提供するものとして考慮される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この目的は、特許請求項1及び13の特徴を有する製品並びに特許請求項25の特徴を
有する方法によって達成される。
【0027】
有利な実施形態及び発展形態は、従属請求項の主題である。
【0028】
国際公開第89/04986 A1号パンフレットは、複雑であるが、初期仮定とは逆
に、技術的に実現可能な屈折率分布を導入することにより、求められる表面ジオメトリの
複雑性を低減して、その製造を簡易化し(同書第2頁第4段落最後の行;第4頁第1段落
最後の文章;第5頁第1段落;第5頁第2段落;第5頁最後の段落、最後の文章;第6頁
最後から2番目の段落を参照されたい)、したがって計算された表面から製造された表面
の、光学特性を損なう大きいずれを低減する(同書第1頁第3段落を参照されたい)こと
を提案しているが、本発明者らは、この手順が、必ずしも眼鏡装用者にとって改良された
光学特性を有する累進屈折力眼鏡レンズをもたらすわけではないことを認識した。本発明
者らは、累進面のジオメトリの複雑性の程度と、屈折率分布の複雑性の程度との相互作用
が決定的であることを認識した。したがって、国際公開第89/04986 A1号パン
フレットに記載されている解決策から外れて、本発明者らは、累進屈折力眼鏡レンズ若し
くはデータ媒体に配置された累進屈折力眼鏡レンズの表現又は累進屈折力眼鏡レンズの仮
想表現を有するデータ媒体を含む製品を提案する。本累進屈折力眼鏡レンズは、前面及び
後面並びに空間的に変化する屈折率を有する。前面若しくは後面又は前面及び後面は、累
進面として実施される。本発明による累進屈折力眼鏡レンズは、累進面として実施された
前面が自由形態表面として実施されるか、累進面として実施された後面が自由形態表面と
して実施されるか、又は累進面として実施された両面が自由形態表面として実施されるこ
とにより区別される。したがって、これは、両面、すなわち前面及び後面が累進面として
実施される場合も、2つの表面の1つのみが自由形態表面として存在する場合も含む。
【0029】
本発明の範囲内において、「データ媒体に配置された累進屈折力眼鏡レンズの表現」と
いう表現は、例えば、コンピュータのメモリに記憶された累進屈折力眼鏡レンズの表現を
意味するものとして理解される。
【0030】
累進屈折力眼鏡レンズの表現は、特に、累進屈折力眼鏡レンズの幾何学的形態及び媒体
の記述を含む。例として、そのような表現は、前面、後面、互いに対するこれらの表面の
配置(厚さを含む)、累進屈折力眼鏡レンズの縁境界及び累進屈折力眼鏡レンズを構成す
べき媒体の屈折率分布の数学的記述を含み得る。眼鏡レンズの幾何学的形態の上記の表現
は、特定の構造基準点、心取り点及びレンズを位置合わせするための印(永久的な印)の
位置も含み、これに関して、DIN EN ISO 13666:2012のセクション
14.1.24を参照されたい)。表現は、符号化形態又は暗号化形態で存在することが
できる。ここで、媒体は、累進屈折力眼鏡レンズの製造に使用される1つの材料/複数の
材料又は物質を意味する。
【0031】
詳細に上述した累進屈折力眼鏡レンズの幾何学的形態及び累進屈折力眼鏡レンズを形成
する媒体の表現、特に記述は、累進屈折力眼鏡レンズを製造するために、製造データへの
変換により変換可能でもあり得る。表現は、代替又は追加として、累進屈折力眼鏡レンズ
を製造するための変換された製造データを含むことができる。
【0032】
本発明では、製造データは、本発明による幾何学的形態を有する累進屈折力眼鏡レンズ
及び媒体を製造するために、(i)製造機械のドライブ装置、又は(ii)製造機械の1
つ若しくは複数のドライブ装置にロードすることができるデータを意味するものとして理
解される。
【0033】
本発明に関連して、仮想表現は、累進屈折力眼鏡レンズの幾何学的形態及び媒体の記述
、特に屈折率プロファイルの記述を意味するものとして理解される。例として、そのよう
な表現は、前面、後面、互いに対するこれらの表面の配置(厚さを含む)、累進屈折力眼
鏡レンズの縁及び累進屈折力眼鏡レンズを構成すべき媒体の屈折率分布の数学的記述を含
み得る。表現は、符号化形態又は暗号化形態で存在することができる。ここで、媒体は、
累進屈折力眼鏡レンズの製造に使用される1つの材料/複数の材料又は物質を意味する。
【0034】
DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション5.8によれば、眼
鏡レンズの前面又は物体側表面とは、眼鏡の目から離れる方に面することが意図される眼
鏡レンズの表面である。したがって、この規格のセクション5.9によれば、後面は、目
側表面、すなわち眼鏡の目に面することが意図される眼鏡レンズの表面である。
【0035】
DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション7.7によれば、累
進面とは、増大する加入又は逆加入屈折力の増大を提供することが一般に意図される表面
の部分又は全てにわたり曲率が連続変化する、回転対称ではない表面である。この定義に
よれば、任意の自由形態表面は、累進面であるが、逆は、当てはまらない。連続変化は、
ジャンプのような変化を除外する。一般に言えば、特に本発明の範囲内において、加入又
は逆加入屈折力は、提供することができるが、これが当てはまる必要はない。特に、空間
的に変化する屈折率は、本発明の範囲内でこのタスクを少なくとも部分的に負うことがで
きる。「空間的に変化する屈折率は、加入又は逆加入屈折力を少なくとも部分的に提供す
ることができる」による表現は、以下の3つの場合を含む:
(1)空間的に変化する屈折率は、加入若しくは増大する屈折力又は逆加入屈折力若し
くは低減する屈折力に全く寄与しない。
(2)空間的に変化する屈折率は、加入又は逆加入屈折力に部分的に寄与する。
(3)空間的に変化する屈折率は、全体的に加入又は逆加入屈折力を提供する。
【0036】
広義では、自由形態表面は、特に、(特に区分)多項式関数(特に例えば双三次スプラ
イン、四次以上の高次スプライン、ゼルニケ多項式、フォーブス面、チェビシェフ多項式
、フーリエ級数、多項式非一様有理Bスプライン(NURBS)等の多項式スプライン)
により専ら表現することができる複雑な表面を意味するものとして理解される。これらは
、例えば、球面、回転対称非球面、円柱面、トーリック面又は円として記載される、国際
公開第89/04986 A1号パンフレットに記載される少なくとも主経線に沿う表面
(同書第12頁6~13行目を参照されたい)等の単純な表面から区別されるべきである
。別の言い方をすれば、自由形態表面は、例えば、球面、非球面、円柱面、トーリック面
又は国際公開第89/04986 A1号パンフレットに記載される表面(例えば、20
18年1月18日に検索されたhttps://www.computerwoche.
de/a/die-natur-kennt-auch-nur-freiformfl
aechen,1176029;2018年1月18日に検索されたhttp://ww
w.megacad.de/kennenlernen/megacadschulun
gen/schulungsinhalte/schulung-freiformfl
aechen.htmlを参照されたい)等の従来の正多面体の形態で表現することがで
きないが、例えば(特に区分)多項式関数(特に例えば双三次スプライン、四次以上の高
次スプライン、ゼルニケ多項式、フォーブス面、チェビシェフ多項式、フーリエ級数、多
項式非一様有理Bスプライン(NURBS)等の多項式スプライン)により専ら表現する
ことができる。したがって、自由形態表面は、正幾何学に対応しない表面(例えば、20
18年1月18日に検索されたhttps://www.infograph.de/d
e/nurbs;2018年1月18日に検索されたhttps://books.go
ogle.de/books?id=QpugBwAAQBAJ&pg=PA101&l
pg=PA101&dq=regelgeometrie+definition&so
urce=bl&ots=CJjmQwghvo&sig=MvsGv0sqbAVEy
gCaWJQhfJ99jw&hl=de&sa=X&ved=0ahUKEwi_jc
D5yHYAhXDXCwKHUaQCBw4ChDoAQgsMAI#v=onepa
ge&q=regelgeometrie%20definition&f=false
を参照されたい)又は解析幾何学の形態により記述可能ではない表面(例えば、2018
年1月18日に検索されたhttps://books.google.de/book
s?id=LPzBgAAQBAJ&pg=PA26&lpg=PA26&dq=reg
elgeometrie+definition&source=bl&ots=e1u
pL5jinn&sig=hUNimu8deH5x8OvCiYsa242ddn8&
hl=de&sa=X&ved=0ahUKEwi_jcD5yHYAhXDXCwKH
UaQCBw4ChDoAQgvMAM#v=onepage&q=regelgeom
etrie%20definition&f=falseを参照されたい)である。
【0037】
本発明によれば、自由形態の表面は、2015年12月付けのDIN SPEC 58
194のセクション2.1.2に対応するより狭義の自由形態表面、特に微分幾何学の限
度内で数学的に記述され、点対称又は軸対称のいずれも有さない自由形態技術を使用して
製造された眼鏡レンズ表面であるものとして規定される。
【0038】
更に特に、有利な一実施形態変形では、自由形態表面は、点対称及び軸対称を有さない
だけでなく、回転対称及び対称面に関する対称も有さないことがあり得る。表面ジオメト
リに関して全ての制限をなくすことが好都合であるにも関わらず、累進屈折力眼鏡レンズ
の光学特性への現在普通の要件に鑑みて、高度に複雑な自由形態表面のみを累進面として
認めることで十分である。更に、同じ程度の複雑性が、正確には少なくとも2つ又は好ま
しくは3つの空間次元における累進屈折力眼鏡レンズにわたる屈折率分布について認めら
れる場合、これらの累進屈折力眼鏡レンズは、可能な限り最大限に光学特性に関して眼鏡
装用者の要件を満たすことになる。
【0039】
本発明によれば、累進屈折力眼鏡レンズは、空間的に変化する屈折率を有し、前面及び
後面を有する均一な基板を備えることが更に提供される。意図される使用中、基板の前面
及び後面は、累進屈折力眼鏡レンズ自体の外面を形成するか、又はこれらの表面の一方若
しくは両方:前面及び/又は後面には、累進屈折力眼鏡レンズの屈折度数の等価球面度数
に寄与する/全く寄与しないか若しくは各点で累進屈折力眼鏡レンズの屈折度数の等価球
面度数に寄与する/0.004dpt未満だけ寄与する1つ若しくは複数の機能被膜を排
他的に提供される。
【0040】
本発明によれば、「均一」という用語は、基板自体が、離散した境界面を形成する複数
の個々の部分からならないことを意味する。
【0041】
したがって、本発明は、以下の代替形態の1つを特徴とする。
(a)屈折率は、第1の空間次元及び第2の空間次元でのみ変わり、且つ第3の空間次
元では一定であり、第1の空間次元及び第2の空間次元における屈折率分布は、点対称又
は軸対称のいずれも有さない。
(b)屈折率は、第1の空間次元において、且つ第2の空間次元において、且つ第3の
空間次元において変化する。第3の空間次元に直交する全ての平面における第1の空間次
元及び第2の空間次元での屈折率の分布は、点対称又は軸対称のいずれも有さない。
(c)屈折率は、第1の空間次元において、且つ第2の空間次元において、且つ第3の
空間次元において変化する。屈折率の分布は、全く点対称を有さず、且つ軸対称を有さな
い。
【0042】
本発明の好ましい一実施形態変形では、(a)又は(b)の場合、第3の空間次元は、
- 意図される使用中、ゼロ視線方向から5°以下だけ異なるか、又は
- 意図される使用中、ゼロ視線方向から10°以下だけ異なるか、又は
- 意図される使用中、ゼロ視線方向から20°以下だけ異なるか、又は
- 意図される使用中、主視線方向から5°以下だけ異なるか、又は
- 意図される使用中、主視線方向から10°以下だけ異なるか、又は
- 意図される使用中、主視線方向から20°以下だけ異なるか、又は
- 累進屈折力眼鏡レンズの幾何学中心における前面の法線ベクトルの方向から5°以
下だけ異なるか、又は
- 累進屈折力眼鏡レンズの幾何学中心における前面の法線ベクトルの方向から10°
以下だけ異なるか、又は
- 累進屈折力眼鏡レンズの幾何学中心における前面の法線ベクトルの方向から20°
以下だけ異なるか、又は
- プリズム測定点における法線ベクトルの方向から5°以下だけ異なるか、又は
- プリズム測定点における法線ベクトルの方向から10°以下だけ異なるか、又は
- プリズム測定点における法線ベクトルの方向から20°以下だけ異なるか、又は
- 心取り点における法線ベクトルの方向から5°以下だけ異なるか、又は
- 心取り点における法線ベクトルの方向から10°以下だけ異なるか、又は
- 心取り点における法線ベクトルの方向から20°以下だけ異なる
方向に延在する。
【0043】
プリズム測定点とは、DIN EN ISO 13666:2013-10-14.2
.12(累進屈折力眼鏡レンズ又は累進屈折力眼鏡レンズブランクの場合)に従って製造
業者により指定され、完成レンズのプリズム屈折力が特定されなければならない前面上の
点である。心取り点の定義は、DIN EN ISO 13666:2013-10のセ
クション5.20において見出される。
【0044】
本発明の更なる実施形態変形では、
(i)自由形態表面として実施される前面は、前面の平均曲率の絶対値の最大が中間累
進帯にあるような様式であり、及び/又は
(ii)自由形態表面として実施される後面は、後面の平均曲率の絶対値の最小が中間
累進帯にあるような様式であるか、又は
(iii)後面は、球面、回転対称非球面若しくはトーリック面ジオメトリを有し、及
び自由形態表面として実施される前面は、前面の平均曲率の絶対値の最大が中間累進帯に
あるような様式であるか、又は
(iv)前面は、球面、回転対称非球面若しくはトーリック面ジオメトリを有し、及び
自由形態表面として実施される後面は、後面の平均曲率の絶対値の最小が中間累進帯にあ
るような様式であるか、又は
(v)後面は、自由形態表面として実施されず、及び自由形態表面として実施される前
面は、前面の平均曲率の絶対値の最大が中間累進帯にあるような様式であるか、又は
(vi)前面は、自由形態表面として実施されず、及び自由形態表面として実施される
後面は、後面の平均曲率の絶対値の最小が中間累進帯にあるような様式であることが提供
される。
【0045】
ここで、DIN EN ISO 13666:2013-10、セクション14.1.
25によれば、中間累進帯とは、遠用部と近用部との間の中間領域で明確視を提供する累
進屈折力眼鏡レンズの領域である。
【0046】
そのような表面は、現在利用可能な製造プロセスを使用して非常に高精度で製造するこ
とができる。製造中の利点は、特にこの表面ジオメトリが前面に選択される場合に出現す
る。少なくとも概ね球面研磨表面が研磨される眼鏡レンズ表面の概ね1/3に対応する現
在の従来の研磨器具が使用される場合、研磨に起因した摩耗は、計算された眼鏡レンズジ
オメトリからのずれが比較的小さいように、研磨される眼鏡レンズ表面にわたり十分に均
一に維持することができる。したがって、眼鏡レンズの計算された光学特性からの実際の
光学特性のずれは、非常に小さい。
【0047】
本発明の更なる変形形態は、本発明による累進屈折力眼鏡レンズが、空間屈折率変動を
有さず、等価球面度数の同一分布を有する対照累進屈折力眼鏡レンズに関連して、累進屈
折力眼鏡装用者に対して後述するより有利な光学特性を有するように形成されることを特
徴とする。
【0048】
眼鏡レンズが、眼鏡レンズ装用者の目の前の所定の配置及び眼鏡レンズ装用者が合焦し
た状態で物体を知覚する1つ又は複数の所定の物体距離について設計されるという文章は
、例示目的で提供される。眼鏡装用者の目の前で所定の配置からずれた配置及び他の物体
距離の場合、眼鏡レンズは無価値であるか、又は眼鏡装用者にとって光学品質が非常に制
限される。これは、累進屈折力眼鏡レンズに更に当てはまる。したがって、累進屈折力眼
鏡レンズは、眼鏡装用者の目の前の所定の配置を知ることによってのみ特徴付けられる。
別の言い方をすれば、目に関する空間における位置及び位置合わせに関して眼鏡レンズの
配置を知ることは、必要であるが、眼鏡装用者への光学屈折力に関して1対1で上記の眼
鏡レンズを特徴付けるのに十分でもある。更に、眼鏡技師は、眼鏡装用者の目に関連する
位置及び位置合わせに関して眼鏡レンズの配置を認識している場合、正確な位置決めでの
み眼鏡レンズを眼鏡フレームに挿入することができる。したがって、累進屈折力眼鏡レン
ズが、意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置
の表現は、「累進屈折力眼鏡レンズ」の製品又は商品の切り離せない構成要素である。
【0049】
眼鏡技師による累進屈折力眼鏡レンズにおける正確な位置及び向きでの配置を保証する
ために、製造業者は、永久的に存在する印を添える。DIN EN ISO 13666
:2013-10のセクション14.1.24から、これらは、位置合わせのための印又
は永久的な印と呼ばれ、これらは、眼鏡レンズの水平向きを確立する[...]か、又は
他の基準点を再確立するために製造業者により添えられたことを知ることが可能である。
DIN EN ISO 14889:2009のセクション6.1によれば、カットされ
ていない完成眼鏡レンズの製造業者は、個々の包装又は添付書類における文章により識別
を促進しなければならない。特に、使用状況に向けた補正値、近用加入屈折力、タイプ名
称又はブランド及び加入屈折力を測定するために必要な情報があるべきである。累進屈折
力眼鏡レンズの製造業者が使用する基本の物体距離モデルは、タイプ名称又はブランド名
から現れる。遠用領域又は近用領域の物体距離は、恐らく、眼鏡技師により指定すること
ができるか又は指定されなければならない注文パラメータでもある。この規格の3.1に
よれば、製造業者とは、カットされていない完成眼鏡レンズを商業的に流通させる自然人
又は法人であると理解すべきである。
【0050】
本発明によるこの変形形態では、製品は、データ媒体に配置されている、累進屈折力眼
鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の
配置の表現を更に含む。既に説明したように、この変形形態における(この変形形態のみ
ならず)本発明により実施される累進屈折力眼鏡レンズは、累進屈折力眼鏡レンズが意図
される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての
等価球面度数の分布を有する。更に、本発明により実施される累進屈折力眼鏡レンズは、
幅を有する中間累進帯を有する。本発明のこの変形形態により設計された累進屈折力眼鏡
レンズは、累進屈折力眼鏡レンズの中間累進帯の幅が、少なくとも一部において(例えば
、水平セクションにおいて、又は屈折力の増大が加入度数の25%~75%である中間累
進帯の領域において、又は全長にわたり;中間累進帯の始まり及び終わりにおける中間累
進帯の幅は、ときに遠用部又は近用部の構成にも依存する)又は中間累進帯の全長にわた
り、累進屈折力眼鏡装用者の目の前の対照累進屈折力眼鏡レンズの同じ配置の場合、等価
球面度数の同じ分布を有する同じ物体距離モデルの場合であるが、空間的に変化しない屈
折率を有する、同じ処方の対照累進屈折力眼鏡レンズの中間累進帯の幅よりも大きいよう
に空間的に変化する屈折率を有する。
【0051】
ここで、「等価球面度数」という用語は、例えば、Albert J.Augusti
n:Augenheilkunde.3rd,completely reworked
and extended edition.Springer,Berlin et
al.2007,ISBN 978-3-540-30454-8,p.1272又は
Heinz Diepes,Ralf Blendowske:Optik und T
echnik der Brille.1st edition,Optische F
achveroeffentlichung GmbH,Heidelberg 200
2,ISBN 3-922269-34-6,page 482から現れたフォーカス屈
折力の算術平均として定義される。
【数1】
【0052】
DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション9.2によれば、フ
ォーカス屈折力とは、眼鏡レンズの球面屈折力及び非点収差屈折力の総称である。式中、
球面屈折力は、「球面」と省略され、非点収差屈折力は、「円柱」で表される。平均球面
屈折力という用語も等価球面度数という用語に使用される。
【0053】
DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション14.1.25によ
れば、中間累進帯 - 既に上述した - とは、遠用部と近用部との間の領域で明確視
を提供する累進屈折力眼鏡レンズの領域である。遠くから近くへの眼鏡装用者の直線方向
に前の物体点上の目の注視移動中の累進屈折力眼鏡レンズの2つの区切り表面、すなわち
前面又は後面の一方を通る全ての視点の合計を表す主視線は、中間累進帯の中心を通して
延びる。主視線は、通常、前面において仮定される。別の言い方をすれば、主視線は、遠
見視及び近見視で累進屈折力レンズを通る主視点を相互接続し、中間距離での視覚光線の
交点が「直線方向に前の」方向にある眼鏡レンズの前面上の線を示す(備考:主視線があ
る基準面としての後面の使用は、むしろ稀である)。通常、主視線は、遠用部及び近用部
において概ね垂直に延びる線及び中間累進帯、すなわち遠くと近くとの間の中間領域での
視覚に向けた屈折度数を有する累進屈折力眼鏡レンズの部分において捻れて延びる線であ
る。例として、中間累進帯の長さは、遠用及び近用部設計基準点の位置又は遠用部及び近
用部基準点の位置から生じることができる。DIN EN ISO 13666:201
3-10の5.13によれば、遠用部設計基準点とは、遠用部の設計仕様が適用される、
完成したレンズの前面上又はレンズブランクの完成表面上の製造業者により規定される点
である。したがって、この規格の5.14によれば、近用部設計基準点とは、近用部の設
計仕様が適用される、完成したレンズの前面上又はレンズブランクの完成表面上の製造業
者により規定される点である。5.15によれば、遠用部基準点又は主基準点とは、遠用
部の屈折度数を達成しなければならない眼鏡レンズの前面上の点であり、5.17によれ
ば、近見視点とは、所与の状況下で近見視に使用されるレンズの視点の仮定位置である。
【0054】
原理上、累進屈折力眼鏡レンズの特性は、先に提供した使用に基づいて対照累進屈折力
眼鏡レンズに関連して1対1で設定し決定することができる。少なくとも1つのセクショ
ンが、群:
- 水平セクション、
- 半加入屈折力における(より詳細には主視線上の)セクション、
- 半加入屈折力における(より詳細には主視線上の)水平セクション、
- 半加入屈折力における(より詳細には主視線上の)水平セクション及び加入屈折力
の25%における(より詳細には主視線上の)水平セクション、
- 半加入屈折力における(より詳細には主視線上の)水平セクション及び加入屈折力
の75%における(より詳細には主視線上の)水平セクション、
- 半加入屈折力における(より詳細には主視線上の)水平セクション、及び加入屈折
力の25%における(より詳細には主視線上の)水平セクション、及び加入屈折力の75
%における(より詳細には主視線上の)水平セクション
の変形であると仮定される場合、単純な基準が生じる。
【0055】
セクション14.2.1において、DIN EN ISO 13666:2013-1
0は、指定された条件下で測定される近用部の頂点屈折力と遠用部の頂点屈折力との差と
して加入屈折力を定義する。この規格は、対応する測定方法が眼鏡レンズの決定的規格に
含まれることを指定する。決定的規格として、DIN EN ISO 13666:20
13-10はDIN EN ISO 8598-1:2012:“Optics and
optical instruments-Focimeters-Part 1:G
eneral purpose instruments”を参照する。DIN EN
ISO 13666:2013-10のセクション9.7では、頂点屈折力は、以下のよ
うに定義される。メートル単位で測定される近軸後面頂点焦点距離の逆数として定義され
る後面頂点屈折力と、メートル単位で測定される近軸前面頂点焦点距離の逆数として定義
される前面頂点屈折力とが区別される。なお、眼科慣例によれば、後面焦点屈折力は、眼
鏡レンズの「屈折力」として指定されるが、前面頂点屈折力も、特定の目的のため、例え
ば幾つかの多焦点及び累進屈折力眼鏡レンズで加入屈折力を測定するに当たり必要とされ
ることに留意されたい。
【0056】
予め決定可能な1対1である特性、すなわち同じ物体距離モデルに基づいて同じ累進屈
折力眼鏡装用者の目の前で同じ位置の眼鏡レンズ下においてレンズにわたる等価球面度数
の同じ分布を有する対照累進屈折力眼鏡レンズの特性との比較により、累進屈折力眼鏡の
特性を定義する更なる変形は、
(i)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼
鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての残余乱視分布の表現
、及び/又は
(ii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての、完全矯正に必要
な残余乱視分布の表現、及び/又は
(iii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折
力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての処方及び物体距
離モデルの表現、及び/又は
(iv)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数の分
布の表現
を更に含む製品からなる。
【0057】
遠用部及び近用部を含む本発明による累進屈折力眼鏡レンズのこの変形形態では、中間
累進帯の幅は、残余乱視の絶対値が、所定の限度値であって、以下に指定される群:
(a)限度値は、0.25dpt~1.5dptの範囲内にあること、
(b)限度値は、0.25dpt~1.0dptの範囲内にあること、
(c)限度値は、0.25dpt~0.75dptの範囲内にあること、
(d)限度値は、0.25dpt~0.6dptの範囲内にあること、
(e)限度値は、0.25dpt~0.5dptの範囲内にあること、
(f)限度値は、0.5dptであること
からの範囲内で選択される所定の限度値未満である、遠用部と近用部との間で延びる中間
累進帯の長手方向を横断する寸法によって定義される。
【0058】
残余乱視は、累進屈折力眼鏡レンズの非点収差又は非点収差屈折力が、累進屈折力眼鏡
装用者が累進屈折力眼鏡レンズを意図するように(所定の様式で累進屈折力眼鏡装用者の
目の前に配置されるように)装用する場合、累進屈折力眼鏡レンズが意図された累進屈折
力眼鏡装用者についてこの位置で累進屈折力眼鏡レンズと交わるビームについて、累進屈
折力眼鏡レンズ表面上の各位置で完全矯正に必要な非点収差屈折力からずれる非点収差(
絶対値及び軸方向による)であると理解される。「分布」という用語は、この残余乱視が
眼鏡レンズにわたり局所的に異なることができ、一般に実際に異なることを明らかにする
【0059】
別の言い方をすれば、残余乱視は、絶対値及び軸位置に関する「予測」された非点収差
屈折力からの累進屈折力眼鏡レンズの非点収差屈折力(実際の非点収差屈折力)のずれを
意味するものとして理解される。別の言い方をすれば、残余乱視は、視線方向に応じた、
使用位置における累進屈折力眼鏡レンズの装用者の実際の非点収差屈折力と、意図される
非点収差屈折力との間の差である。使用位置において、意図されるように使用された場合
の目に関する眼鏡レンズの位置及び向きが考慮に入れられる。非点収差屈折力の視点依存
の方向は、特に、物体距離の視線依存方向及び目の非点収差屈折力の視線依存方向から生
じ得る。したがって、「処方された屈折力」という表現は、広義には、各視線方向及び眼
鏡装用者がこの視線方向で物体をピントが合った状態で見るべき距離について、目に関連
した基本の位置及び向きを考慮して眼鏡レンズが有するべき意図される屈折力として理解
すべきである。
【0060】
残余乱視分布(又は例えば球面収差分布若しくは例えば欧州特許第2 115 527
B1号明細書に記載されるより高次の他の収差分布等の他の収差分布又は例えば実際の
非点収差屈折力、実際の球面屈折率若しくは実際のプリズム屈折力等の実際の屈折率分布
)の特定の計算について、例えば頂点間距離、瞳孔間距離、眼鏡レンズの前掲角、眼鏡レ
ンズのそり角並びに例えば特に厚さ及び/又は縁(縁プロファイル)を含む眼鏡レンズサ
イズも通常考慮に入れられる。更に、これは、通常、装用者の目の回転中心に関する眼鏡
装用者の視野における物体点の位置を記述する物体距離モデルに基づく。
【0061】
残余乱視分布は、計算された数学的記述として既に存在することができる((i)の場
合のように)か、又は処方及び物体距離モデルから((iii)の場合のように)若しく
は完全矯正について既に計算された非点収差屈折力分布から((ii)の場合のように)
確認することができる。
【0062】
従来の屈折値に加えて、処方は、眼鏡装用者に固有の生理学的パラメータ(すなわち一
般に眼鏡装用者に固有のパラメータ)及び処方された累進屈折力眼鏡レンズが装用される
べき使用状況(すなわち一般に眼鏡装用者の周囲に割り当て可能なパラメータ)を更に含
むこともできる。固有の生理学的パラメータは、特に、眼鏡装用者の屈折異常、調節能力
及び(恐らく単眼)瞳孔間距離を含む。使用状況は、目の前のレンズのシートについての
情報及び例えば物体、特に画面の遠用視線方向での無限遠からずれた距離に基づく、画面
の前で作業するための眼鏡であるべきか否か等、物体距離モデルを特徴付けるデータを含
む。個々の測定又は特定された処方が特定の使用状況を含まない場合、特定の標準値(例
えば、標準前掲角9度)が仮定される。
【0063】
物体距離モデルは、眼鏡装用者が、ピントが合った状態で物体を見るべき空間における
距離の仮定を意味するものと理解される。物体距離モデルは、例えば、異なる視線方向又
は前面を通る光線の交点にわたる眼鏡レンズの前面からの物体距離の分布を特徴とするこ
とができる。物体位置は、一般に、既に上述したように物体距離モデルにおける目の回転
中心に関連する。
【0064】
モデル計算は、異なる物体距離及び視線方向の場合、目の屈折力及び軸位置が変わるこ
とを考慮に入れることができる。特に、モデル計算は、リスティングの法則を考慮に入れ
ることができる。例として、モデル計算は、例えば、独国特許出願公開第10 2015
205 721 A1号明細書に記載されるように、近く及び遠くでの目の非点収差屈
折力の変化を考慮に入れることもできる。
【0065】
本発明の範囲内において、完全矯正は、処方により表される目の視覚特性を考慮に入れ
て、累進屈折力眼鏡装用者が、物体距離モデルが基づいた距離に配置された物体をピント
が合った状態で見られるようにする、意図されるように累進屈折力眼鏡を装用することに
より生じる矯正を記述する。
【0066】
完全性のために、所定の表現が配置されるデータ媒体は、例えば、コンピュータのメモ
リの代わりに紙であり得ることに言及する。これは、特に、処方が紙に記されることもあ
る事例(iii)に関連する。
【0067】
本発明による製品の更なる実施形態は、以下の構成部分:
- データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡
装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置の表現と、
- データ媒体における以下の表現:
(i)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼
鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての残余乱視分布の表現
、及び/又は
(ii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての、完全矯正に必要
な非点収差屈折力分布の表現、及び/又は
(iii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折
力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての処方及び物体距
離モデルの表現、及び/又は
(iv)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数の分
布の表現
の1つ又は複数と
を備える。
【0068】
この実施形態による累進屈折力眼鏡レンズは、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進
屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度
数の分布を有する。この実施形態では、累進屈折力眼鏡レンズの屈折率は、累進屈折力眼
鏡レンズの残余乱視の最大値が、対照累進屈折力眼鏡レンズであって、累進屈折力眼鏡装
用者の目の前での対照累進屈折力眼鏡レンズの同じ構成の場合、等価球面度数の同じ分布
を有し、同じ物体距離モデルを有するが、空間的に変化しない屈折率を有する同じ処方の
対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視の最大値未満であるように空間において変化する。
【0069】
本発明のこの実施形態により、眼鏡装用者により知覚可能な累進屈折力眼鏡レンズの光
学特性は、全ての従来の累進屈折力眼鏡レンズよりも改良される。
【0070】
本発明による製品の別の変形形態は、以下に指定される構成部分:
- データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡
装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置の表現と、
- データ媒体における以下の表現:
(i)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼
鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての残余乱視分布の表現
、及び/又は
(ii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての、完全矯正に必要
な非点収差屈折力分布の表現、及び/又は
(iii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折
力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての処方及び物体距
離モデルの表現、及び/又は
(iv)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数の分
布の表現
の少なくとも1つと
を備える。
【0071】
この実施形態変形による累進屈折力眼鏡レンズは、累進屈折力眼鏡レンズが意図される
累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球
面度数の分布を有する。本累進屈折力眼鏡レンズは、中間累進帯を備える。本累進屈折力
眼鏡レンズの屈折率は、中間累進帯の最狭点(例えば、1dptの等非点収差線が互いか
ら最小距離を有する場所)における水平セクション上の所定の残余乱視値Ares,li
であって、群
(a)残余乱視値Ares,limは、0.25dpt~1.5dptの範囲内にある
こと、
(b)残余乱視値Ares,limは、0.25dpt~1.0dptの範囲内にある
こと、
(c)残余乱視値Ares,limは、0.25dpt~0.75dptの範囲内にあ
ること、
(d)残余乱視値Ares,limは、0.25dpt~0.6dptの範囲内にある
こと、
(e)残余乱視値Ares,limは、0.25dpt~0.5dptの範囲内にある
こと、
(f)残余乱視値Ares,limは、0.5dptであること
の所定の残余乱視値Ares,limについて又は半加入屈折力が達成される主視線上の
点を通る水平セクションについて、以下の関係式:
【数2】

が、主視線の両側で10mmの水平距離を有する領域内で当てはまるように空間において
変化し、式中、grad Wは、主視線上の中間累進帯の最狭点における累進屈折力眼鏡
レンズの主視線の方向又は半加入屈折力が達成される主視線上の点における等価球面度数
の屈折力勾配を記述し、Bは、残余乱視がAres≦Ares,limである累進屈折力
眼鏡レンズにおける領域の幅を記述し、cは、群:
(a)1.0<c、
(b)1.1<c、
(c)1.2<c、
(d)1.3<c
から選択される定数である。
【0072】
本発明のこの実施形態により、眼鏡装用者により知覚可能な累進屈折力眼鏡レンズの光
学特性は、全ての従来の累進屈折力眼鏡レンズよりも改良される。
【0073】
本発明による製品の更なる変形形態は、(i)累進屈折力眼鏡レンズ、(ii)データ
媒体に配置されている累進屈折力眼鏡レンズの表現、又は(iii)累進屈折力眼鏡レン
ズの仮想表現を有するデータ媒体を含み、累進屈折力眼鏡レンズは、前面及び後面と、空
間的に変化する屈折率とを有する。前面若しくは後面又は両面は、累進面として実施され
る。累進面として実施される前面は、本発明によれば自由形態表面として実施され、且つ
/又は累進メントして実施される後面は、本発明によれば自由形態表面として実施される
【0074】
本累進屈折力眼鏡レンズは、基板であって、個々の層を含まず、前面及び後面並びに空
間的に変化する屈折率と、1つ若しくは複数の個々の層を含む、基板の前面上の前面被膜
及び/又は1つ若しくは複数の個々の層を含む、基板の後面上の後面被膜とを有する基板
からなる。基板のみが空間的に変化する屈折率を有する。
【0075】
本発明によれば、前面被膜及び/又は後面被膜を有する累進屈折力眼鏡レンズの前面に
おける各点で測定された透過球面度数と、対照累進屈折力眼鏡レンズであって、前面被膜
及び後面被膜を有さないが、同一の基板(同一のジオメトリ及び同一の屈折率を有する)
を有する対照累進屈折力眼鏡レンズの前面における対応する各点で測定された透過球面度
数との差は、以下に指定される群:
(a)差の値は、0.001dpt未満であること、
(b)差の値は、0.002dpt未満であること、
(c)差の値は、0.003dpt未満であること、
(d)差の値は、0.004dpt未満であること
からの値未満である。
【0076】
当然ながら、この変形形態は、上述した特徴の1つ又は複数を有することもできる。
【0077】
直前に説明した製品の第1の発展形態は、自由形態表面の少なくとも1つが点対称又は
軸対称のいずれも有さないか、又は自由形態表面の少なくとも1つが点対称を有さず、且
つ軸対称を有さず、且つ回転対称を有さず、且つ対称面に関して対称を有さないことを特
徴とする。
【0078】
任意選択的に第1の発展形態と組み合わされる第2の発展形態は、
(a)屈折率が第1の空間次元及び第2の空間次元でのみ変化し、且つ第3の空間次元
では一定であり、第1の空間次元及び第2の空間次元における屈折率の分布が点対称又は
軸対称のいずれも有さないか、又は
(b)屈折率が第1の空間次元において、且つ第2の空間次元において、且つ第3の空
間次元において変化し、第3の空間次元に直交する全ての平面における第1の空間次元及
び第2の空間次元での屈折率の分布が点対称又は軸対称のいずれも有さないか、又は
(c)屈折率が第1の空間次元において、且つ第2の空間次元において、且つ第3の空
間次元において変化し、屈折率の分布が全く点対称を有さず、且つ軸対称を有さないこと
を特徴とする。
【0079】
(a)の場合又は(b)の場合、第3の空間次元は、好ましくは、
- 意図される使用中、ゼロ視線方向から5°以下だけ異なるか、又は
- 意図される使用中、ゼロ視線方向から10°以下だけ異なるか、又は
- 意図される使用中、ゼロ視線方向から20°以下だけ異なるか、又は
- 意図される使用中、主視線方向から5°以下だけ異なるか、又は
- 意図される使用中、主視線方向から10°以下だけ異なるか、又は
- 意図される使用中、主視線方向から20°以下だけ異なるか、又は
- 累進屈折力眼鏡レンズの幾何学中心における前面の法線ベクトルの方向から5°以
下だけ異なるか、又は
- 累進屈折力眼鏡レンズの幾何学中心における前面の法線ベクトルの方向から10°
以下だけ異なるか、又は
- 累進屈折力眼鏡レンズの幾何学中心における前面の法線ベクトルの方向から20°
以下だけ異なるか、又は
- プリズム測定点における法線ベクトルの方向から5°以下だけ異なるか、又は
- プリズム測定点における法線ベクトルの方向から10°以下だけ異なるか、又は
- プリズム測定点における法線ベクトルの方向から20°以下だけ異なるか、又は
- 心取り点における法線ベクトルの方向から5°以下だけ異なるか、又は
- 心取り点における法線ベクトルの方向から10°以下だけ異なるか、又は
- 心取り点における法線ベクトルの方向から20°以下だけ異なる
方向に延びる。
【0080】
更なる構成では、本累進屈折力眼鏡レンズは、中間累進帯を有する。本累進屈折力眼鏡
レンズでは、
(i)自由形態表面として実施される前面は、平均曲率が中間累進帯に最大を有する様
式であり、及び/又は
(ii)自由形態表面として実施される後面は、平均曲率が中間累進帯に最小を有する
様式であるか、又は
(iii)後面は、球面、回転対称非球面又はトーリック面ジオメトリを有し、自由形
態表面として実施される前面は、前面の平均曲率の絶対値の最大が中間累進帯にあるよう
な様式であるか、又は
(iv)前面は、球面、回転対称非球面若しくはトーリック面ジオメトリを有し、及び
自由形態表面として実施される後面は、後面の平均曲率の絶対値の最小が中間累進帯にあ
るような様式であるか、又は
(v)後面は、自由形態表面として実施されず、及び自由形態表面として実施される前
面は、前面の平均曲率の絶対値の最大が中間累進帯にあるような様式であるか、又は
(vi)前面は、自由形態表面として実施されず、及び自由形態表面として実施される
後面は、後面の平均曲率の絶対値の最小が中間累進帯にあるような様式であることが当て
はまり得る。
【0081】
上述した製品は、
- 製品が、(i)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される
累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置の表現、(ii)
累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レ
ンズの所定の配置に関するデータを有するデータ媒体を更に含むこと、
- 累進屈折力眼鏡レンズが、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用
者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数の分布を有す
ること、
- 累進屈折力眼鏡レンズが、幅を有する中間累進帯を有することと、累進屈折力眼鏡
レンズの屈折率が、累進屈折力眼鏡レンズの中間累進帯の幅が中間累進帯の少なくともセ
クションにおいて又は全長にわたり、対照累進屈折力眼鏡レンズであって、累進屈折力眼
鏡装用者の目の前での対照累進屈折力眼鏡レンズの同じ構成の場合、等価球面度数の同じ
分布を有するが、空間的に変化しない屈折率を有する対照累進屈折力眼鏡レンズの中間累
進帯の少なくともセクションにおける又は全長にわたる中間累進帯の幅よりも大きいよう
に空間において変化すること
を更に特徴とすることもできる。
【0082】
更なる構成では、製品の最後に述べた構成は、群の変形:
- 水平セクション、
- 半加入屈折力におけるセクション、
- 半加入屈折力における水平セクション、
- 半加入屈折力における水平セクション及び加入屈折力の25%における水平セクシ
ョン、
- 半加入屈折力における水平セクション及び加入屈折力の75%における水平セクシ
ョン、
- 半加入屈折力における水平セクション、及び加入屈折力の25%における水平セク
ション、及び加入屈折力の75%における水平セクション
が少なくとも1つのセクションのために選択されることを特徴とすることができる。
【0083】
代替又は追加として、製品は、
(i)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼
鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての残余乱視分布の表現
、及び/又は
(ii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての、完全矯正に必要
な残余乱視分布の表現、及び/又は
(iii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折
力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての処方及び物体距
離モデルの表現、及び/又は
(iv)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数の分
布の表現、及び/又は
(v)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折
力眼鏡レンズの所定の配置についての残余乱視分布に関するデータを有するデータ媒体、
及び/又は
(vi)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈
折力眼鏡レンズの所定の配置についての、完全矯正に必要な非点収差屈折力分布に関する
データを有するデータ媒体、及び/又は
(vii)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進
屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての処方及び物体距離モデルに関するデータを有す
るデータ媒体、及び/又は
(viii)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累
進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数の分布に関するデータを有する
データ媒体
を更に含むことができ、
- 累進屈折力眼鏡レンズは、遠用部及び近用部を有し、
- 中間累進帯の幅は、残余乱視の絶対値が、以下に指定される群:
(a)限度値は、0.25dpt~1.5dptの範囲内にあること、
(b)限度値は、0.25dpt~1.0dptの範囲内にあること、
(c)限度値は、0.25dpt~0.75dptの範囲内にあること、
(d)限度値は、0.25dpt~0.6dptの範囲内にあること、
(e)限度値は、0.25dpt~0.5dptの範囲内にあること、
(f)限度値は、0.5dptであること
からの範囲内で選択される所定の限度値未満である、遠用部と近用部との間で延びる中間
累進帯の長手方向を横断する次元に対応する。
【0084】
製品の上述した更なる変形形態及び任意選択的に上述したその発展形態は、
- 製品が、(i)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される
累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置の表現、又は(i
i)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼
鏡レンズの所定の配置に関するデータを有するデータ媒体を更に含み、
- 累進屈折力眼鏡レンズが、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用
者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数の分布を有し

- 製品が、
(i)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼
鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての残余乱視分布の表現
、及び/又は
(ii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての、完全矯正に必要
な非点収差屈折力分布の表現、及び/又は
(iii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折
力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての処方及び物体距
離モデルの表現、及び/又は
(iv)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数の分
布の表現、及び/又は
(v)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折
力眼鏡レンズの所定の配置についての残余乱視分布に関するデータを有するデータ媒体、
及び/又は
(vi)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈
折力眼鏡レンズの所定の配置についての、完全矯正に必要な非点収差屈折力分布に関する
データを有するデータ媒体、及び/又は
(vii)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進
屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての処方及び物体距離モデルに関するデータを有す
るデータ媒体、及び/又は
(viii)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累
進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数の分布に関するデータを有する
データ媒体
を更に含み、
- 累進屈折力眼鏡レンズの屈折率が、累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視の最大値が、
累進屈折力眼鏡装用者の目の前での同じ配置の対照累進屈折力眼鏡レンズの場合と同じ等
価球面度数の分布を有するが、空間的に変化しない屈折率を有する対照累進屈折力眼鏡レ
ンズの残余乱視の最大値未満であるように空間において変化する
ことを特徴とすることができる。
【0085】
製品の上述した更なる変形形態及び任意選択的に上述したその発展形態は、
- 製品が、(i)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される
累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置の表現、又は(i
i)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼
鏡レンズの所定の配置に関するデータを有するデータ媒体を更に含み、
- 累進屈折力眼鏡レンズが、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用
者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数(W)の分布
を有し、
- 製品が、
(i)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼
鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての残余乱視分布の表現
、及び/又は
(ii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての、完全矯正に必要
な非点収差屈折力分布の表現、及び/又は
(iii)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折
力眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての処方及び物体距
離モデルの表現、及び/又は
(iv)データ媒体に配置されている、累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力
眼鏡装用者の目の前での累進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数の分
布の表現、及び/又は
(v)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈折
力眼鏡レンズの所定の配置についての残余乱視分布に関するデータを有するデータ媒体、
及び/又は
(vi)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進屈
折力眼鏡レンズの所定の配置についての、完全矯正に必要な非点収差屈折力分布に関する
データを有するデータ媒体、及び/又は
(vii)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累進
屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての処方及び物体距離モデルに関するデータを有す
るデータ媒体、及び/又は
(viii)累進屈折力眼鏡レンズが意図される累進屈折力眼鏡装用者の目の前での累
進屈折力眼鏡レンズの所定の配置についての等価球面度数の分布に関するデータを有する
データ媒体
を更に含み、
- 累進屈折力眼鏡レンズが、中間累進帯及び主視線を有し、累進屈折力眼鏡レンズの
屈折率が、中間累進帯の最狭点における水平セクション上の所定の残余乱視値Ares,
limであって、群
(a)残余乱視値Ares,limは、0.25dpt~1.5dptの範囲内にある
こと、
(b)残余乱視値Ares,limは、0.25dpt~1.0dptの範囲内にある
こと、
(c)残余乱視値Ares,limは、0.25dpt~0.75dptの範囲内にあ
ること、
(d)残余乱視値Ares,limは、0.25dpt~0.6dptの範囲内にある
こと、
(e)残余乱視値Ares,limは、0.25dpt~0.5dptの範囲内にある
こと、
(f)残余乱視値Ares,limは、0.5dptであること
の所定の残余乱視値Ares,limについて又は半加入屈折力が達成される主視線上の
点を通る水平セクションについて、以下の関係式:
【数3】

が、主視線の両側で10mmの水平距離を有する領域内で当てはまるように空間において
変化し、式中、grad Wは、主視線上の中間累進帯の最狭点における累進屈折力眼鏡
レンズ又は半加入屈折力が達成される主視線上の点における等価球面度数の屈折力勾配を
記述し、Bは、残余乱視がAres≦Ares,limである累進屈折力眼鏡レンズにお
ける領域の幅を記述し、cは、群:
(a)1.0<c、
(b)1.1<c、
(c)1.2<c、
(d)1.3<c
から選択される定数である
ことを特徴とすることもできる。
【0086】
累進面のジオメトリの複雑性の程度と、屈折率分布の複雑性の程度との相互作用が決定
的であることを認識した本発明者らの効果についての文章が上記にある。したがって、国
際公開第89/04986 A1号明細書に記載される解決策から外れて、本発明者らは
、前面及び後面並びに空間的に変化する屈折率を有する累進屈折力眼鏡レンズを設計する
、レイトレーシング方法の形態のコンピュータ実施方法を提案し、この方法では、前面、
後面又は両面は、累進面として実施される。累進屈折力眼鏡レンズの光学特性は、視覚的
光線が累進屈折力眼鏡レンズを透過する複数の評価点においてレイトレーシング方法によ
って計算される。このレイトレーシング方法では、累進屈折力眼鏡レンズの少なくとも1
つの意図される光学特性は、各評価点において設定される。まず、累進屈折力眼鏡レンズ
の設計が設定され、この設計は、評価点を通るそれぞれの視覚的ビーム路における累進面
の局所表面ジオメトリ及び累進屈折力眼鏡レンズの局所屈折率の表現を含む。累進屈折力
眼鏡レンズの設計は、累進屈折力眼鏡レンズの少なくとも1つの意図される光学特性の近
似に鑑みて変更される。本発明によれば、変更することは、累進面の局所表面ジオメトリ
の表現を変更することのみならず、評価点を通るそれぞれの視覚的ビーム路における累進
屈折力眼鏡レンズの局所屈折率を変更することも含み、少なくとも1つの意図される光学
特性は、累進屈折力眼鏡レンズの意図される残余乱視を含む。
【0087】
一般に、変更される累進面の逆にある表面は、固定して処方される。一般に、変更され
た累進面の逆にある表面は、例えば、球面、回転対称非球面又はトーリックジオメトリ等
の単純な表面ジオメトリを有する。トーリック面の場合、表面ジオメトリ及び軸位置は、
多くの場合、累進屈折力眼鏡装用者の目の残余屈折欠陥を補償する(不要な残余乱視を別
として)ように選択される。変更される累進面の逆にある表面は、固定された処方表面ジ
オメトリを有する累進面、任意選択的に自由形態表面でもあり得る。変更される累進面の
逆にある表面は、加入度数の提供に必要な屈折力の増大に寄与することができる。変更さ
れる累進面も加入度数の提供に必要な屈折力の増大に寄与することができる。意図される
残余乱視分布に近似するための屈折率分布でもって両面、具体的には前面及び後面を一緒
に変更することも可能である。
【0088】
累進屈折力眼鏡レンズを設計する際に使用するレイトレーシング方法が既知である。特
に、Werner Koeppen:Konzeption und Entwickl
ung von Progressivglaesern,Deutsche Opti
ker Zeitung DOZ 10/95,42-46頁、欧州特許第2 115
527 B1号明細書及びそこで指定されている文献を参照し且つ考慮する。光学計算プ
ログラム、例えばZemax,LLCによる計算プログラムZEMAXによる最適化され
た空間依存屈折率分布の計算が同様に既知である。例として、http://www.z
emax.com/におけるZemax,LLCのインターネット存在を参照する。
【0089】
眼鏡レンズの意図される特性の設定は、眼鏡レンズのいわゆる設計に関連する。眼鏡レ
ンズの設計は、通常、1つ又は複数のイメージング収差に意図される値の分布を含み、1
つ又は複数のイメージング収差に意図される値は、好ましくは、目標値として眼鏡レンズ
の最適化に含まれるか又は目標値を決定する際に含まれる。特に、眼鏡レンズ設計は、屈
折異常(すなわち使用位置でのビーム路における累進屈折力眼鏡レンズの等価球面度数と
、屈折の特定により確認される等価球面度数との差)の分布及び/又は残余乱視(すなわ
ち眼鏡レンズの非点収差と、屈折の特定により確認される非点収差との差)の分布を特徴
とする。残余乱視分布という用語の代わりに、文献は、非点収差分布及び乱視偏差という
用語も使用する。更に、眼鏡レンズ設計は、同様に、倍率、歪み又は他のイメージング収
差、より具体的には欧州特許第2 115 527 B1号明細書に記載されるようによ
り高次のイメージング収差に意図される値の分布を含み得る。ここで、これらは、表面値
又は好ましくは使用値、すなわち眼鏡レンズの使用位置における使用値に関連し得る。
【0090】
本発明によれば、累進屈折力眼鏡レンズの設計は、所定の意図される残余乱視に可能な
限り近づくという目標で変更される。例として、意図される残余乱視は、全ての評価点で
ゼロに設定することができる。好ましくは、空間的に変化しない屈折率を有するが、自由
形成された後面(及び/又は前面)を有する従来の累進屈折力眼鏡レンズによりそもそも
理論的に達成可能な値又はそのような累進屈折力眼鏡レンズを最適化するために予め決定
された値よりもはるかに小さい値を有する残余乱視分布を予め決定することも可能である
。Werner Koeppen:Konzeption und Entwicklu
ng von Progressivglaesern,Deutsche Optik
er Zeitung DOZ 10/95,42-46頁による評価点の数は、通常、
1000個~1500個の範囲である。欧州特許第2 115 527 B1号明細書は
、8000個を超えるその評価点数を提案している。
【0091】
この目標に可能な限り近づけるために、本発明によれば、評価点において局所的に変更
されるのは、(続く)累進面の表面ジオメトリのみならず、評価点においてビーム路が通
る累進屈折力眼鏡レンズの媒体における局所屈折率でもある。媒体という用語は、累進屈
折力眼鏡レンズを構成する1つ又は複数の材料を意味するものと理解される。
【0092】
本発明によれば、累進面は2つの空間次元において自由に変更され、局所屈折率も少な
くとも2つの空間次元において自由に変更される。
【0093】
目標に可能な限り近づくために、一般にこの変更手順を複数回、すなわち反復して実行
しなければならない。ここでも、変更中、特に反復中、局所表面ジオメトリ及び局所屈折
率の両方を自由に変更することができ、局所表面ジオメトリも局所屈折率も固定されない
ことを明らかにしなければならない。これとは対照的に、国際公開第89/04986
A1号パンフレットは、前面及び後面に同等に単純なジオメトリの処方並びに加入度数の
提供に必要な屈折力増大を確立し、任意選択的に主視線に沿った(残余)乱視を全体的又
は部分的に正し、必要な場合、主経線のサイドへのイメージング収差の補正を更に行うた
めに適した屈折率分布の探索を教示している。
【0094】
屈折率は、一般に波長依存であるが、分散は、一般に考慮されず、計算は、いわゆる設
計波長に関して実施される。しかしながら、例えば欧州特許第2 383 603 B1
号明細書に記載されるように、異なる設計波長を考慮に入れた最適化プロセスは、除外さ
れない。
【0095】
変更は、意図される光学特性に可能な限り近づけるという目標をもって実行されるため
、当業者は、最適化についても論じる。変更は、終了基準が満たされるまで実行される。
理想的な場合、終了基準は、所定の意図される光学特性を有する設計された累進屈折力眼
鏡レンズからなる。残余乱視が全ての評価点でゼロに設定される場合、この理想的な事例
は、計算された眼鏡レンズの残余乱視が実際に全ての評価点でゼロであることである。し
かしながら、これは、通常、当てはまらないため、特に上述した場合では、例えば意図さ
れる1つの特性(複数の特性)の前後の1つ又は複数の限度値に達した後又は所定の反復
数に達した後、計算は、終了される。
【0096】
通常、意図される特性の特定及び実際の特性の計算は、使用状況、特に例えば目の前の
眼鏡レンズのシート及び物体距離モデル並びに眼鏡装用者の生理学的パラメータ、特に例
えば屈折異常、調節能力及び瞳孔間距離を考慮に入れたモデル計算に基づく。詳細につい
ては、既に上述した。
【0097】
一般に、局所屈折率及び局所表面ジオメトリを変更することによる、累進屈折力眼鏡レ
ンズの少なくとも1つの意図される1つの光学特性(複数の光学特性)の近似の結果、累
進面として実施される前面は、自由形態表面として実施され、及び/又は累進面として実
施される後面は、自由形態表面として実施される。
【0098】
冒頭で述べられた目的は全体的に、上述した本発明による方法により達成される。
【0099】
本発明による方法の有利な一構成では、累進面は、点対称又は軸対称のいずれも有さな
い自由形態表面が生じるように変更される。局所屈折率の変更は、
(a)屈折率が、第1の空間次元及び第2の空間次元における屈折率の分布が点対称又
は軸対称のいずれも有さないように、第1の空間次元及び第2の空間次元でのみ変化し、
且つ第3の空間次元では一定であるか、
(b)屈折率が、第3の空間次元に直交する全ての平面における第1の空間次元及び第
2の空間次元での屈折率の分布が点対称又は軸対称のいずれも有さないように、第1の空
間次元において、且つ第2の空間次元において、且つ第3の空間次元において変化するか
、又は
(c)屈折率が、累進屈折力眼鏡レンズにおける屈折率の分布が全く点対称を有さず、
且つ軸対称を有さないように、第1の空間次元において、且つ第2の空間次元において、
且つ第3の空間次元において変化する
ように更に行われる。
【0100】
本発明の目的は、主視線と並んで(すなわち中間部の中心領域において)残余非点収差
及を低減し、任意選択的に残余球面収差も低減することである。(i)空間的に一定の屈
折率を有する従来の累進屈折力眼鏡レンズの設計、又は(ii)空間的に一定の屈折率を
有する従来の累進屈折力眼鏡レンズのターゲット設計(すなわち一定の屈折率を有する累
進屈折力眼鏡レンズの最適化に使用されたターゲット設計)から進展して、前の分布の残
余球面収差及び残余非点収差を含むが、残余非点収差が特に中央中間部において低減され
た、空間的に変化する屈折率を有する累進屈折力眼鏡レンズの新しいターゲット設計を生
成することができる。この場合、残余非点収差は、好ましくは、改良されたターゲット設
計を得るために、例えば0.5~0.8の係数で乗算されることにより、主視線の周囲の
領域(例えば、主視線から5.10~20mmの距離における領域)において低減する。
【0101】
本発明によるこの方法の一実施形態変形は、累進屈折力眼鏡レンズの設計の変更が目的
関数の最小化に鑑みて実施されることを特徴とする。そのような目的関数は、独文の文献
では「Kostenfunktion」[「費用関数」]とも呼ばれ、英文の文献ではメ
リット関数とも呼ばれる。累進屈折力眼鏡レンズを設計する際、例えば欧州特許第0 8
57 993 B2号明細書、欧州特許出願公開第2 115 527 B1号明細書又
はWerner Koeppen:Konzeption und Entwicklu
ng von Progressivglaesern,Deutsche Optik
er Zeitung DOZ 10/95,42-46頁において実施されるように、
目的関数を最小化する方法として最小二乗法が非常に頻繁に適用される。本発明による実
施形態変形は、この方法を以下に再現される目的関数と共に適用する。
【数4】
【0102】
この目的関数Fでは、Pは、評価点mにおける重みであり、Wは、光学特性nの重
みであり、Tは、各評価点mにおける光学特性nの意図される値であり、Aは、評価
点mにおける光学特性nの実際の値である。
【0103】
この方法の適用は、従来のタイプの累進屈折力眼鏡レンズの設計に有価値であることが
証明されている。本発明は、この方法を本発明による勾配屈折率(GRIN)累進屈折力
眼鏡レンズの設計にも使用することを提案する。
【0104】
ターゲット設計は、例えば、レンズ全体の全面にわたり分布する多くの点における残余
光学収差、特に球面収差及び非点収差の規定化によって固定することもできる。
【0105】
この場合、眼鏡装用者が眼鏡レンズを通して見ているときの眼鏡装用者の屈折力及び/
又は残余球面収差及び残余非点収差が特定される物体の距離についての仕様があり得る。
【0106】
更に、累進面上の更なる点での表面曲率、更なる点での厚さ要件(特に累進屈折力眼鏡
レンズの幾何学中心及び縁における)及びプリズム要件規定があり得る。
【0107】
個々の重みを前記点のそれぞれにおけるこれらの光学規定及び幾何学的規定に割り当て
ることができる。したがって、点における規定の残余収差、表面曲率、プリズム屈折力及
び厚さが開始レンズ(例えば、一定の屈折率に対して最適化された累進屈折力眼鏡レンズ
)に対して決定される場合、上記に示されるものに従って合計収差Fを特定することが可
能である。光学レンズ特性及び幾何学的レンズ特性に依存するこの関数値Fは、表面ジオ
メトリ及び屈折率分布を同時に変更することにより、既知の数学的方法によって最小化す
ることができる。先に指定した要件に関して特性を改善した累進屈折力眼鏡レンズは、こ
のようにして得られる。
【0108】
代替的に、可変屈折率を有する材料を有する累進屈折力眼鏡レンズを最適化するために
、元のターゲット設計、すなわち一定の屈折率を有するレンズの最適化に使用されたター
ゲット設計を使用することも可能である。
【0109】
この場合、元の設計での最適化に使用された重みを使用又は変更することができる。特
に、累進領域における累進屈折力眼鏡レンズの特性改善を得るために、中間累進帯におけ
る残余非点収差及び球面収差の重みを増大させることができる。しかしながら、中間累進
帯における重みの増大は、本明細書では、一定の屈折率を有する材料を有する最適化され
たレンズの非点収差及び球面収差が(新しい)ターゲット設計の規定に依然として対応し
ていない場合にのみ好都合である。
【0110】
元の設計が眼鏡装用者によって既に承認されている場合、残余光学収差は、新しい設計
を用いて低減されるため、この手順は、いずれにしても眼鏡装用者にとってより快適な設
計をもたらす。
【0111】
全体的に達成されるのは、一定の屈折率を有する材料を用いて達成可能ではなく、この
ターゲット設計を用いて、自由形態表面及び非一定屈折率を有する材料の屈折率分布の同
時最適化によって取得可能な新しい改善されたターゲット設計であり、特により広い中間
累進部、中間領域におけるより低い最大残余非点収差、したがって中間領域におけるより
低い歪みを有する改善された累進屈折力眼鏡レンズ設計を達成することが可能である。
【0112】
この新しい累進屈折力眼鏡レンズ設計は、元の使用状況、厚さ規定等を考慮に入れて本
明細書において実現することができる。
【0113】
本発明による方法の特に有利な一実施形態変形は、少なくとも1つの評価点に意図され
る残余乱視が予め決定されることを特徴とし、上記の意図される残余乱視は、同じ処方及
び同じ物体距離モデルのものであるが、等価球面度数の同じ分布及び累進屈折力眼鏡装用
者の目の前での対照累進屈折力眼鏡レンズの同じ配置を有するが、空間的非可変の屈折率
を有する対照累進屈折力眼鏡レンズ上の少なくとも1つの対応する評価点において理論的
に達成可能な最小の残余乱視よりも小さく、評価点を通るそれぞれの視覚的ビーム路にお
ける累進面の局所表面ジオメトリ及び累進屈折力眼鏡レンズの局所屈折率の表現を変更す
ること、計画される累進屈折力眼鏡レンズで達成される、少なくとも1つの評価点におけ
る残余乱視が、対照累進屈折力眼鏡レンズ上の少なくとも1つの対応する評価点における
理論的に達成可能な残余乱視未満である場合にのみ終了することを特徴とする。
【0114】
全ての評価点で意図される残余乱視をゼロに設定することが可能である - 既に上述
したように。表面全体にわたり、従来の対照累進屈折力眼鏡レンズよりも良好な光学特性
を有する累進屈折力眼鏡レンズを計画するために、全ての評価点における意図される残余
乱視は、対照累進屈折力眼鏡レンズを計画する際に通常設定される値よりも少なくとも有
意な割合、例えば10~50%低いように選択される。一般に、少なくとも評価点におい
て、続く中間累進帯内に存在すべき対照累進屈折力眼鏡レンズにおける少なくとも対応す
る評価点において理論的に達成可能な残余乱視未満である意図される残余乱視が予め決定
される。これは、中間累進帯の広化が常に望まれるためである。
【0115】
上述した有利な実施形態変形への代替又は追加として、一方法変形形態は、累進屈折力
眼鏡レンズの残余乱視の最大値が、等価球面度数の同じ分布及び累進屈折力眼鏡装用者の
目の前での対照累進屈折力眼鏡レンズの同じ配置を有するが、空間的に非可変の屈折率を
有する同じ処方の対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視の最大値未満であるという規定を
用いて、評価点を通るそれぞれの視覚的ビーム路における累進屈折力表面の局所表面ジオ
メトリ及び累進屈折力眼鏡レンズの局所屈折率の表現の変更を実行することを含む。原理
上、本発明により計画された累進屈折力眼鏡レンズにおける残余乱視の最大値は、対照累
進屈折力眼鏡レンズにおける残余乱視の最大値と「同じ」場所又は「同じ」評価点に配置
される必要はない。しかしながら、これは、方法を実行する際に制約として考慮されるこ
ともある。これらの処方の結果として、本発明による累進屈折力眼鏡レンズの光学特性は
、従来の方法で製造された対照累進屈折力眼鏡レンズに関連して更に改良される。
【0116】
一実施形態変形では、本発明による方法は、累進屈折力眼鏡レンズを計画する際、上述
したタイプに対応する累進屈折力眼鏡レンズが生じるように実行することができる。これ
らの製品の利点については、既に詳細に上述した。
【0117】
本発明による更なる方法変形形態では、上述したタイプのいずれか1つによる製品によ
る累進屈折力眼鏡レンズを製造する規定を用いて精密に累進屈折力眼鏡レンズを計画する
ことさえ提供される。この更なる変形形態において意図される特性及び終了条件は、上述
した光学特性を有する対応する累進屈折力眼鏡レンズが、必ず、計画を実行する際、表現
により予め決定されるように、将来の眼鏡装用者の目の前での配置において生じるように
選択される。
【0118】
更に、本発明は、コンピュータプログラムがコンピュータにロードされ、且つ/又はコ
ンピュータで実行されると、上述した方法のいずれか1つによるプロセスステップの全て
を実行するプログラムコードを有するコンピュータプログラムを提供する。コンピュータ
プログラムは、任意のコンピュータ可読媒体、特にコンピュータのハードディスクドライ
ブ、USBスティック又はクラウドに保存することができる。
【0119】
したがって、本発明は、上述したタイプのコンピュータプログラムを有するコンピュー
タ可読媒体の保護も求める。
【0120】
本発明は、加法的方法により、上述した製品の任意の1つによる累進屈折力眼鏡レンズ
又は上述したタイプの変形形態を使用して計画された累進屈折力眼鏡レンズを製造する方
法にも関する。
【0121】
加法的方法とは、累進屈折力眼鏡レンズが順次構築される方法である。特に、この状況
では、いわゆるデジタルファブリケータは、特に、従来の研磨方法を使用して実現可能で
はないか又は困難さを伴ってのみ実現可能な略あらゆる構造の製造選択肢を提供すること
が分かっている。デジタルファブリケータ機械クラス内において、3Dプリンタは、加法
、すなわち累積の構築ファブリケータの最も重要なサブクラスを表す。3Dプリントの最
も重要な技法は、金属のための選択的レーザ溶融(SLM)及び電子ビーム溶融、ポリマ
ー、セラミックス及び金属のための選択的レーザ焼結、液体人工樹脂のためのステレオリ
ソグラフィ(SLA)及びデジタル光処理並びにプラスチック及び部分的に人工樹脂のた
めのマルチジェット又は又はポリジェット成形(例えば、インクジェットプリンタ)及び
溶融堆積成形(FDM)である。更に、例えば、2017年1月12日に検索されたht
tp://peaknano.com/wp-content/uploads/PEA
K-1510-GRINOptics-Overview.pdfに記載されているよう
な、ナノポリマーを用いた構築も既知である。
【0122】
3Dプリントによって製造するソース材料及び3D製造法自体の選択肢は、例えば、欧
州特許出願公開第16195139.7号明細書から収集することができる。
【0123】
本発明の発展形態は、累進屈折力眼鏡レンズを製造する方法であって、上述したような
累進屈折力眼鏡レンズを計画し、且つ計画に従って累進屈折力眼鏡レンズを製造する方法
を含む方法を含む。
【0124】
計画に従って累進屈折力眼鏡レンズを製造することは、本発明によれば、ここでもまた
加法的方法によって実施され得る。
【0125】
本発明の別の発展形態は、上述したタイプ又は変形形態のいずれか1つによる累進屈折
力眼鏡レンズを計画する方法を実行するように構成されたプロセッサを含むコンピュータ
を含む。
【0126】
本発明について図面を参照して以下に更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0127】
図1】本発明の第1の例示的な実施形態による対称の垂直面を有するGRIN累進屈折力眼鏡レンズに関連する屈折率n=1.600を有する材料で作られた従来の構築の対照累進屈折力眼鏡レンズの光学特性を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの平均球面屈折力、 b:対照累進屈折力眼鏡レンズ、物体側自由形態表面の平均表面光学屈折力、 c:図1aの対照累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面の表面非点収差。
図2】第1の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの光学特性を示す: a:平均球面屈折力、 b:物体側自由形態表面で一定の屈折率n=1.600の場合に計算された平均表面光学屈折力、 c:図2aのGRIN累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面n=1.600の場合の表面非点収差。
図3】第1の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの屈折率の分布を示す。
図4】対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布との第1の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布の比較を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布、 b:第1の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布。
図5図4によるy=0におけるセクションに沿った対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイルとの第1の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイルの比較を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイル、 b:第1の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイル。
図6】対照累進屈折力眼鏡レンズの前面の輪郭線との第1の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの前面の輪郭線の比較を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの前面のサジタル高さ、 b:第1の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの前面のサジタル高さ。
図7】本発明の第2の例示的な実施形態による対称の垂直面を有するGRIN累進屈折力眼鏡レンズに関連する屈折率n=1.600を有する材料で作られた従来の構築の対照累進屈折力眼鏡レンズの光学特性を示す: a:平均球面屈折力、 b:平均表面光学屈折力、物体側自由形態表面、 c:図7aの対照累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面の表面非点収差。
図8】第2の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの光学特性を示す: a:平均球面屈折力、 b:物体側自由形態表面の屈折率n=1.600の場合に計算された平均表面光学屈折力、 c:図8aのGRIN累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面n=1.600の場合の表面非点収差。
図9】第2の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの屈折率の分布を示す。
図10】対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布との第2の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布の比較を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布、 b:第2の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布。
図11図10によるy=-5mmにおけるセクションに沿った対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイルとの第2の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイルの比較を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイル、 b:第2の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイル。
図12】対照累進屈折力眼鏡レンズの前面の輪郭線との第2の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの前面の輪郭線の比較を示し、サジタル高さは水平軸の周りで-7.02°傾斜した平面に関連して指定される: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの前面のサジタル高さ、 b:第2の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの前面のサジタル高さ。
図13】本発明の第3の例示的な実施形態によるいかなる対称も有さないGRIN累進屈折力眼鏡レンズに関連する屈折率n=1.600を有する材料で作られた従来の構築の対照累進屈折力眼鏡レンズの光学特性を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの平均球面屈折力、 b:対照累進屈折力眼鏡レンズ、物体側自由形態表面の平均表面光学屈折力、 c:図13aの対照累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面の表面非点収差。
図14】第3の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの光学特性を示す: a:平均球面屈折力、 b:物体側自由形態表面で一定の屈折率n=1.600の場合に計算された平均表面光学屈折力、 c:図14aのGRIN累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面n=1.600の場合の表面非点収差。
図15】第3の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの屈折率の分布を示す。
図16】対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布との第3の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布の比較を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布、 b:第3の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布。
図17図16によるy=-5mmにおけるセクションに沿った対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイルとの第3の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイルの比較を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイル、 b:第3の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイル。
図18】対照累進屈折力眼鏡レンズの前面の輪郭線との第3の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの前面の輪郭線の比較を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの前面のサジタル高さ、 b:第3の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの前面のサジタル高さ。
図19】本発明の第4の例示的な実施形態によるいかなる対称も有さないGRIN累進屈折力眼鏡レンズに関連する屈折率n=1.600を有する材料で作られた従来の構築の対照累進屈折力眼鏡レンズの光学特性を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの平均球面屈折力、 b:対照累進屈折力眼鏡レンズ、目側自由形態表面の平均表面光学屈折力、 c:図19aの対照累進屈折力眼鏡レンズの目側自由形態表面の表面非点収差。
図20】第4の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの光学特性を示す: a:平均球面屈折力、 b:目側自由形態表面で一定の屈折率n=1.600の場合に計算された平均表面光学屈折力、 c:図20aのGRIN累進屈折力眼鏡レンズの目側自由形態表面n=1.600の場合の表面非点収差。
図21】第4の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの屈折率の分布を示す。
図22】対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布との第4の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布の比較を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布、 b:第4の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布。
図23図22によるy=-4mmにおけるセクションに沿った対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイルとの第4の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイルの比較を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイル、 b:第4の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視プロファイル。
図24】対照累進屈折力眼鏡レンズの後面の輪郭線との第4の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの後面の輪郭線の比較を示す: a:対照累進屈折力眼鏡レンズの後面のサジタル高さ、 b:第4の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの後面のサジタル高さ。
図25】処方値球面-4dpt、円柱2dpt、軸90度に向けて設計された第5の例示的な実施形態によるいかなる対称も有さないGRIN累進屈折力眼鏡レンズの光学特性を示す: a:平均球面屈折力、 b:屈折率n=1.600で計算された目側自由形態表面の平均表面光学屈折力、 c:図25aのGRIN累進屈折力眼鏡レンズの目側自由形態表面のn=1.600での表面非点収差。
図26】第5の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの屈折率の分布を示す。
図27】第5の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視を示す: a:第5の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの残余乱視分布、 b:第5の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズのy=-4mmにおけるセクションに沿った残余乱視プロファイル。
図28】第5の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの後面のサジタル高さを示す。
【発明を実施するための形態】
【0128】
最初の5つの例示的な実施形態は、本発明によるタイプの製品によるGRIN累進屈折
力眼鏡レンズ又はコンピュータのメモリ内のその表現に関する。第6の例示的な実施形態
は、例示的に、GRIN累進屈折力眼鏡レンズを計画する本発明による方法を示す。
【0129】
第1の例示的な実施形態
第1の例では、特に単純な表面ジオメトリを有する累進屈折力眼鏡レンズが選択されて
いる。図面の平面に直交する平面に関連して鏡面対称様式で構築され、実質的に、中央領
域に配置され、上から下に垂直に延びる連続増加屈折力を有するゾーンのみからなる。
【0130】
図1aは、いわゆる双三次スプラインにより記述される、物体側自由形態表面を有する
標準材料(屈折率n=1.600)で作られた累進屈折力眼鏡レンズの、眼鏡装用者にと
ってのビーム路における平均球面屈折力の分布を示す。この累進屈折力眼鏡レンズは、以
下では、空間的に変化する屈折率を考慮してGRIN累進屈折力眼鏡レンズと呼ばれる本
発明により実施される累進屈折力眼鏡レンズの対照累進屈折力眼鏡レンズとして機能する
【0131】
対照累進屈折力眼鏡レンズの後面は、半径120mmを有する球面であり、目の回転中
心は、後面から25.5mmの距離の、レンズの幾何学中心の背後にある。レンズは、中
心厚2.5mm及び幾何学中心におけるプリズム屈折力0を有する。後面は、非傾斜であ
り、すなわち、前面及び後面は、両方とも幾何学中心における水平に直線方向に前を見る
視線方向の方向において法線を有する。
【0132】
プロットされた座標軸x及びyは、この表面上の点を特定するように機能する。レンズ
の垂直中心軸上では、屈折力は、概ねy=25mmの高さにおいて0.00ジオプタを超
え、概ねy=-25mmにおいて屈折力2.25dpt(ジオプタ)に達する。したがっ
て、レンズ屈折力は、この50mm長さに沿って2.25ジオプタ増大する。したがって
、累進屈折力眼鏡レンズは、遠用部では球面屈折力(球面=0)及び乱視屈折力(円柱=
0)を有さず、意図される使用位置では眼鏡装用者に対して加入2.25dptを有する
。DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション11.1によれば、
球面屈折力を有する眼鏡レンズは、平行光の近軸光束を1つの焦点にもっていくレンズで
ある。DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション12.1によれ
ば、乱視屈折力を有する眼鏡レンズは、平行光の近軸光束を相互に直角の2つの別個の線
焦点にもっていき、したがって2つの主経線でのみ頂点屈折力を有するレンズである。こ
の規格のセクション14.2.1は、近用部の頂点屈折力と遠用部の頂点屈折力との差と
して加入を定義する。
【0133】
図1bは、図1aの対照累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面のn=1.600
での平均表面光学屈折力を示す。表面曲率は、上から下に連続して増加し、平均表面屈折
力値は、y=15mmにおける約5.3dptからy=-25mmにおける約7.0dp
tに増大する。
【0134】
図1cは、図1aの対照累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面のn=1.600
での表面非点収差を示す。
【0135】
図2a、図2b及び図2cは、GRIN材料を使用した対照累進屈折力眼鏡レンズの複
製品を示す。これに関して、図2aは、平均球面屈折力の分布を示す。図1aと図2aと
の比較から、2つの累進屈折力眼鏡レンズの屈折力分布が同じであることを知ることが可
能である。図2bは、平均表面光学屈折力のプロファイルを示し、図2cは、本発明によ
り実施されたGRIN累進屈折力眼鏡レンズの前面の表面非点収差のプロファイルを示す
。平均曲率に関して図1b及び表面非点収差に関して図1cと比較できるように、平均表
面屈折力及び表面非点収差を計算する際に使用されたのは、GRIN材料ではなく、前の
ように屈折率n=1.600を有する材料であった。
【0136】
平均表面光学屈折力及び表面非点収差は、Heinz Diepes,Ralf Bl
endowske:Optik und Technik der Brille;2n
d edition,Heidelberg 2005,page 256に従って定義
される。
【0137】
図1b及び図1cとの図2b及び図2cの比較は、自由形態表面の形態が大きく変化し
たことを示す:平均表面光学屈折力(n=1.600を用いて計算された)は、ここで、
上から下に低下し、すなわち、表面の平均曲率は、上から下に低下する。表面非点収差の
プロファイルは、もはや典型的な中間累進帯を示さない。
【0138】
図3は、本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズにわたる屈折率の分布を示す。こ
こで、屈折率は、上から下に約n=1.48から下部領域における約n=1.75に増加
する。
【0139】
図4a及び図4bは、標準レンズと比較した、中間累進帯の幅に対する特定の屈折率分
布を有するGRIN材料を使用することの効果及びこのGRIN累進屈折力眼鏡レンズの
自由形態表面の設計の効果を表す。図は、球面のみの処方を有する眼鏡装用者での、眼鏡
装用者のビーム路における残余非点収差の分布を示す。
【0140】
この例では、ここで、1dptの等非点収差線により画定される中間累進帯は、17m
mから22mmに、すなわち約30パーセント広化している。
【0141】
図5a及び図5bは、図4a及び図4bからの残余乱視分布を通る断面を示す。ここで
、屈折力の増大と、それにより誘導される非点収差における側方増大との従来の関係(ミ
ンクウィッツ定理による表面非点収差への平均表面光学屈折力の関係に類似する)は、特
に明確になる。中間累進帯の中心(y=0)の周囲における非点収差の増大は、標準レン
ズと同じ屈折力増大が存在するにもかかわらず、GRINレンズではるかに低い。正確に
は、この増大は、累進屈折力レンズの光学系の理論におけるミンクウィッツの陳述により
説明される。
【0142】
図6は、サジタル高さ表現を用いて第1の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折力
眼鏡レンズの前面の輪郭線を対照累進屈折力眼鏡レンズの前面の輪郭線と比較する。図6
bは、第1の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの前面
のサジタル高さを示し、それと比較して、図6aは、対照累進屈折力眼鏡レンズの前面の
サジタル高さを示す。
【0143】
第2の例示的な実施形態
以下の図の全ての趣旨及びシーケンスは、第1の例示的な実施形態の趣旨及びシーケン
スに対応する。
【0144】
図7aは、物体側自由形態表面を有する、標準材料(屈折率n=1.600)で作られ
た対照累進屈折力眼鏡レンズでの累進屈折力眼鏡装用者のビーム路における平均球面屈折
力の分布を示す。後面は、ここでも、半径120mmを有する球面であり、目の回転中心
は、後面から25.8mmの水平距離における対照累進屈折力眼鏡レンズの幾何学中心の
4mm上にある。対照累進屈折力眼鏡レンズは、中心厚2.6mm及びプリズム屈折力1
.0cm/m基底270°、幾何学中心の下2mmを有する。後面は、水平軸の周りの-
8°を通して傾斜する。
【0145】
プロットされた座標軸は、この表面上の点を特定するように機能する。対照累進屈折力
眼鏡レンズの垂直中心軸上では、屈折力は、概ねy=6mmの高さにおいて0.00ジオ
プタ線を越え(すなわち、眼鏡装用者は、水平に直線方向に前を注視しているとき、実質
的に屈折力0dptを得る)、概ねy=-14mmにおいて屈折力2.00ジオプタに達
する。したがって、レンズ屈折力は、この20mm長に沿って2.00dpt増大する。
【0146】
図7bは、図7aの対照累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面のn=1.600
の場合における平均表面光学屈折力を示す。表面曲率は、上から下に連続して増加し、平
均表面屈折力値は、y=2mmにおける5.00dptからy=-18mmにおける6.
75dptに増加する。
【0147】
図7cは、図7aの対照累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面のn=1.600
の場合における表面非点収差を示す。
【0148】
図8a、図8b及び図8cは、GRIN材料を使用した対照累進屈折力眼鏡レンズ(本
発明による累進屈折力眼鏡レンズ)の複製品を示す。これに関して、図8aは、平均球面
屈折力の分布を示す。図7aと図8aとの比較から、2つのレンズの垂直中心線に沿った
屈折率増大が同じであることを知ることが可能である。図8bは、平均表面光学屈折力の
プロファイルを示し、図8cは、本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの前面の表
面非点収差のプロファイルを示す。平均曲率に関して図7b及び表面非点収差に関して図
7cと比較できるように、計算中に使用されたのは、GRIN材料ではなく、前のように
屈折率n=1.600を有する材料であった。
【0149】
図7b及び図7cとの図8b及び図8cの比較は、自由形態表面の形態が大きく変化し
たことを示す:平均表面光学屈折力(n=1.600を用いて計算された)は、ここで、
レンズ中心から縁に不規則に低下する。表面非点収差のプロファイルは、もはや典型的な
中間累進帯を示さない。
【0150】
図9は、眼鏡レンズにわたる屈折率の分布を示す。ここで、屈折率は、レンズ中心にお
ける約1.60から下部領域における約n=1.70に増加する。
【0151】
図10a及び図10bは、対照累進屈折力眼鏡レンズと比較した、中間累進帯の幅に対
する特定の屈折率分布を有するGRIN材料を使用することの効果及びこのGRIN累進
屈折力眼鏡レンズの自由形態表面の設計の効果を表す。図は、球面のみの処方を有する眼
鏡装用者での、眼鏡装用者のビーム路における残余非点収差の分布を示す。
【0152】
この例では、ここで、1dptの等非点収差線により画定される中間累進帯は、8.5
mmから12mmに、すなわち約41パーセント広化している。
【0153】
図11a及び図11bは、図10a及び図10bからの残余乱視分布を通る断面を示す
。ここで、屈折力の増大と、それにより誘導される非点収差における側方増大との従来の
関係(ミンクウィッツ定理による表面非点収差への平均表面光学屈折力の関係に類似する
)は、特に明確になる。中間累進帯の中心(y=-5mm)の周囲における非点収差の増
大は、対照累進屈折力眼鏡レンズと同じ屈折力増大が存在するにもかかわらず、本発明に
よるGRIN累進屈折力眼鏡レンズではるかに低い。第1の例示的な実施形態と同様に、
ミンクウィッツにより予測される挙動からの、GRIN累進屈折力眼鏡レンズの非点収差
勾配の有意なずれがある。中間累進帯は、有意に広くなる。
【0154】
図12は、サジタル高さ表現を用いて第2の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折
力眼鏡レンズの前面の輪郭線を対照累進屈折力眼鏡レンズの前面の輪郭線と比較する。図
12bは、第2の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの
前面のサジタル高さを示し、それと比較して、図12aは、対照累進屈折力眼鏡レンズの
前面のサジタル高さを示し、それぞれ水平軸の周りで-7.02を通して傾斜した座標系
(すなわち、この系の垂直Y軸は、空間における垂直に関連して-7.02°を通して傾
斜する)に関する。
【0155】
第3の例示的な実施形態
以下の図の全ての趣旨及びシーケンスは、第2の例示的な実施形態の趣旨及びシーケン
スに対応する。
【0156】
第3の例示的な実施形態は、2つの累進屈折力レンズを示し、眼鏡装用者の目の前の直
線方向に前にある、中間距離における物体及び近い物体を注視しているときの目の収束運
動が考慮される。この収束運動は、これらの点を注視しているとき、眼鏡レンズの前面を
通る視点を厳密に垂直な直線上ではなく、鼻に向かって旋回する垂直線に沿って置かれる
ようにし、上記の線は、主視線と呼ばれる。
【0157】
したがって、これらの例では、近用部の中心も鼻方向に水平に変位する。例は、この主
視線が、残余非点収差が0.5dpt(これに関して図16a及び図16bを参照された
い)である前面上の線間の中心において中間累進帯にあるように計算された。
【0158】
図13aは、物体側自由形態表面を有する、標準材料(屈折率n=1.600)で作ら
れた対照累進屈折力眼鏡レンズでの累進屈折力眼鏡装用者のビーム路における平均球面屈
折力の分布を示す。後面は、ここでも、半径120mmを有する球面であり、目の回転中
心は、後面から25.5mmの水平距離における対照累進屈折力眼鏡レンズの幾何学中心
の4mm上にある。対照累進屈折力眼鏡レンズは、中心厚2.5mm及びプリズム屈折力
1.0cm/m基底270°、幾何学中心の下2mmを有する。後面は、水平に直線方向
に前を注視しているとき、目側光線が後面に垂直であるように傾斜する。
【0159】
水平に直線方向に前を注視する場合(すなわち幾何学中心の4mm上のレンズを通る視
点の場合)、眼鏡装用者は、平均屈折力0dptを受け、幾何学中心の13mm下の点を
通り、鼻方向において-2.5mmを水平に注視する場合、前記眼鏡装用者は、平均屈折
力2.00dptを受ける。したがって、すなわち、レンズ屈折力は、長さ17mmに沿
って概ね2.00dptだけ増大する。
【0160】
図13bは、図13aに示されるような平均屈折力の分布を生じさせる、第3の例示的
な実施形態の対照累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面の屈折率n=1.600の
場合における平均表面光学屈折力の分布を示す。表面曲率は、上から下に連続して増加し
、平均表面屈折力値は、y=約2mmにおける5.00dptからy=-12mmにおけ
る6.50dptに増加する。
【0161】
図13cは、図13aの対照累進屈折力眼鏡レンズの物体側自由形態表面のn=1.6
00の場合における表面非点収差を示す。
【0162】
図14a、図14b及び図14cは、GRIN材料を使用した対照累進屈折力眼鏡レン
ズ(本発明による累進屈折力眼鏡レンズ)の複製品を示す。これに関して、図14aは、
平均球面屈折力の分布を示す。図13aと図14aとの比較から、中間累進帯における主
視線に沿った屈折力増大が同じであることを知ることが可能である。図14bは、平均表
面光学屈折力のプロファイルを示し、図14cは、本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡
レンズの前面の表面非点収差のプロファイルを示す。平均曲率に関して図13b及び表面
非点収差に関して図13cと比較できるように、計算中に使用されたのは、GRIN材料
ではなく、前のように屈折率n=1.600を有する材料であった。
【0163】
図14b及び図14cとの図13b及び図13cの比較は、自由形態表面の形態が大き
く変化したことを示す:平均表面光学屈折力(n=1.600を用いて計算された)は、
ここで、レンズ中心から縁に不規則に低下し、周縁領域において再び増大する。表面非点
収差のプロファイルは、もはや典型的な中間累進帯を示さない。
【0164】
図15は、眼鏡レンズにわたる屈折率の分布を示す。ここで、屈折率は、レンズの上部
領域における約1.48から下部領域におけるy=-13の高さにおける約1.70に増
加する。
【0165】
図16a及び図16bは、対照累進屈折力眼鏡レンズと比較した、中間累進帯の幅に対
する特定の屈折率分布を有するGRIN材料を使用することの効果及びこのGRIN累進
屈折力眼鏡レンズの自由形態表面の設計の効果を表す。図は、球面のみの処方を有する眼
鏡装用者での、眼鏡装用者のビーム路における残余非点収差の分布を示す。
【0166】
この第3の例では、ここで、1dptの等非点収差線により画定される中間累進帯は、
6mmから9mmに、すなわち約50パーセント広化している。
【0167】
図17a及び図17bは、図16a及び図16bからの残余乱視分布を通る断面を示す
。これらの図は、ここでも、屈折力の増大と、それにより誘導される非点収差における側
方増大との従来の関係(ミンクウィッツ定理による表面非点収差への平均表面光学屈折力
の関係に類似する)を明らかにする。中間累進帯の中心(y=-5mm)の周囲における
残余非点収差の増大は、ここでも、対照累進屈折力眼鏡レンズと同じ屈折力増大が存在す
るにもかかわらず、本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズではるかに低い。
【0168】
図18は、サジタル高さ表現を用いて第3の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折
力眼鏡レンズの前面の輪郭線を対照累進屈折力眼鏡レンズの前面の輪郭線と比較する。図
18bは、第3の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの
前面のサジタル高さを示し、それと比較して、図18aは、対照累進屈折力眼鏡レンズの
前面のサジタル高さを示し、それぞれ水平に直線方向に前の視線方向に垂直な平面に関す
る。
【0169】
第4の例示的な実施形態
以下の図の全ての趣旨及びシーケンスは、第3の例示的な実施形態の趣旨及びシーケン
スに対応する。
【0170】
第4の例示的な実施形態は、2つの累進屈折力レンズを示し、眼鏡装用者の目の前の直
線方向に前にある、中間距離における物体及び近い物体を注視しているときの目の収束運
動が考慮される。この収束運動は、これらの点を注視しているとき、眼鏡レンズの前面を
通る視点を厳密に垂直な直線上ではなく、鼻に向かって旋回する垂直線に沿って置かれる
ようにし、上記の線は、主視線と呼ばれる。
【0171】
したがって、これらの例では、近用部の中心も鼻方向に水平に変位する。例は、この主
視線が、残余非点収差が0.5dpt(これに関して図22a及び図22bを参照された
い)である前面上の線間の中心において中間累進帯にあるように計算された。
【0172】
図19aは、目側自由形態表面を有する、標準材料(屈折率n=1.600)で作られ
た対照累進屈折力眼鏡レンズでの累進屈折力眼鏡装用者のビーム路における平均球面屈折
力の分布を示す。前面は、半径109.49mmを有する球面であり、目の回転中心は、
後面から25.1mmの水平距離における対照累進屈折力眼鏡レンズの幾何学中心の4m
m上にある。対照累進屈折力眼鏡レンズは、中心厚2.55mm及びプリズム屈折力1.
5cm/m基底270°、幾何学中心の下2mmを有する。前掲傾斜は、9°であり、そ
り角は、5°である。
【0173】
直線方向に前を水平に注視しているとき(すなわち幾何学中心の4mm上のレンズを通
る視点の場合)、眼鏡装用者は、平均屈折力0dptを受け、幾何学中心の11mm下且
つ鼻方向に水平に-2.5mmの点を通して注視する場合、上記の眼鏡装用者は、平均屈
折力2.50dptを受ける。したがって、すなわち、レンズ屈折力は、15mm長に沿
って約2.50dpt増大する。
【0174】
図19bは、図19aに示されるような平均屈折力の分布を生じさせる、第4の例示的
な実施形態の対照累進屈折力眼鏡レンズの目側自由形態表面の屈折率n=1.600の場
合における平均表面光学屈折力の分布を示す。表面曲率は、上から下に連続して増加し、
平均表面屈折力値は、y=約2mmにおける-5.50dptからy=-15mmにおけ
る-3.50dptに増加する。
【0175】
図19cは、図19aの対照累進屈折力眼鏡レンズの目側自由形態表面のn=1.60
0の場合における表面非点収差を示す。
【0176】
図20a、図20b及び図20cは、GRIN材料を使用した対照累進屈折力眼鏡レン
ズ(本発明による累進屈折力眼鏡レンズ)の複製品を示す。これに関して、図20aは、
平均球面屈折力の分布を示す。図19aと図20aとの比較から、中間累進帯における主
視線に沿った屈折力増大が同じであることを知ることが可能である。図20bは、平均表
面光学屈折力のプロファイルを示し、図20cは、本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡
レンズの後面の表面非点収差のプロファイルを示す。平均曲率に関して図19b及び表面
非点収差に関して図19cと比較できるように、計算中に使用されたのは、GRIN材料
ではなく、前のように屈折率n=1.600を有する材料であった。
【0177】
図20b及び図20cとの図19b及び図19cの比較は、自由形態表面の形態が大き
く変化したことを示す:平均表面光学屈折力の分布及び表面非点収差の分布(n=1.6
00を用いて計算された)は、両方とももはや典型的な中間累進帯を示さない。
【0178】
図21は、眼鏡レンズにわたる屈折率の分布を示す。ここで、屈折率は、レンズの上部
側方領域における約1.55から下部領域における概ねn=1.64に増加する。
【0179】
図22a及び図22bは、対照累進屈折力眼鏡レンズと比較した、中間累進帯の幅に対
する特定の屈折率分布を有するGRIN材料を使用することの効果及びこのGRIN累進
屈折力眼鏡レンズの自由形態表面の設計の効果を表す。図は、球面のみの処方を有する眼
鏡装用者での、眼鏡装用者のビーム路における残余非点収差の分布を示す。主視線は、両
図に示されている。
【0180】
図23a及び図23bは、図22a及び図22からの残余乱視分布を通る断面を示す。
これらの図は、ここでも、屈折力の増大と、それにより誘導される非点収差における側方
増大との従来の関係(ミンクウィッツ定理による表面非点収差への平均表面光学屈折力の
関係に類似する)を明らかにする。中間累進帯の中心(y=-4mm)の周囲における残
余非点収差の増大は、ここでも、対照累進屈折力眼鏡レンズと同じ屈折力増大が存在する
にもかかわらず、本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズではるかに低い。この第4
の例では、ここで、1dptの等非点収差線により画定される中間累進帯は、4.5mm
から6mmに、すなわち約33パーセント広化している。
【0181】
図24は、サジタル高さ表現を用いて第4の例示的な実施形態によるGRIN累進屈折
力眼鏡レンズの後面の輪郭線を対照累進屈折力眼鏡レンズの後面の輪郭線と比較する。図
24bは、第4の例示的な実施形態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの
後面のサジタル高さを示し、それと比較して、図24aは、対照累進屈折力眼鏡レンズの
後面のサジタル高さを示し、それぞれ水平に直線方向に前の視線方向に垂直な平面に関す
る。
【0182】
第5の例示的な実施形態
以下の図は、趣旨として第4の例示的な実施形態のものに対応する。
【0183】
第5の例示的な実施形態は、球面-4dpt、円柱2dpt、軸90度の処方値に向け
て設計されたレンズを示す。処方において規定される処方値は、眼鏡装用者の視覚障害を
矯正するように機能する。
【0184】
第4の例示的な実施形態と同様に、第5の例示的な実施形態でも、眼鏡装用者の目の前
の直線方向に前にある、中間距離における物体及び近い物体を注視しているときの目の収
束運動が考慮される。この収束運動は、これらの点を注視しているとき、眼鏡レンズの前
面を通る視点を厳密に垂直な直線上ではなく、鼻に向かって旋回する垂直線に沿って置か
れるようにし、上記の線は、主視線と呼ばれる。
【0185】
したがって、これらの例では、近用部の中心も鼻方向に水平に変位する。例は、この主
視線が、残余非点収差が0.5dpt(これに関して図27aを参照されたい)である前
面上の線間の中心において中間累進帯にあるように計算された。
【0186】
図25aは、目側自由形態表面を有する、GRIN材料を使用した本発明による累進屈
折力眼鏡レンズでの累進屈折力眼鏡装用者のビーム路における平均球面屈折力の分布を示
す。球面-4dpt、円柱2dpt、軸90度の処方値が設計において考慮されている。
前面は、ここでも、半径109.49mmを有する球面であり、目の回転中心は、後面か
ら25.5mmの水平距離における累進屈折力眼鏡レンズの幾何学中心の4mm上にある
。本発明による累進屈折力眼鏡レンズは、中心厚2.00mm及びプリズム屈折力1.5
cm/m基底270°、幾何学中心の下2mmを有する。前掲傾斜は、9°であり、そり
角は、5°である。
【0187】
直線方向に前を水平に注視しているとき(すなわち幾何学中心の4mm上のレンズを通
る視点の場合)、眼鏡装用者は、平均屈折力0dptを受け、幾何学中心の11mm下且
つ鼻方向に水平に-2.5mmの点を通して注視する場合、上記の眼鏡装用者は、平均屈
折力2.50dptを受ける。したがって、すなわち、レンズ屈折力は、15mm長に沿
って約2.50dpt増大する。
【0188】
図25bは、平均表面光学屈折力のプロファイルを示し、図25cは、第5の例示的な
実施形態の本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの後面の表面非点収差のプロファ
イルを示す。計算中に使用されたのは、GRIN材料ではなく、前のように屈折率n=1
.600を有する材料であった。
【0189】
図26は、眼鏡レンズにわたる屈折率の分布を示す。ここで、屈折率は、レンズの上部
側方領域における約1.55から下部領域における概ねn=1.64に増加する。
【0190】
図27a及び図27bは、球面-4dpt、円柱2dpt、軸90度の処方を有する眼
鏡装用者での眼鏡装用者のビーム路における残余非点収差の分布を示す。主視線は、図2
7aに示されている。図は、特定の屈折率分布を有するGRIN材料の使用及びこのGR
IN累進屈折力眼鏡レンズの自由形態表面の設計を通して、乱視処方であっても、対照累
進屈折力眼鏡レンズと比較して中間累進帯の幅を増大させることが可能であることを明ら
かにする。
【0191】
図27bは、図27aからの残余乱視分布を通る中間累進帯の中心(y=-4mm)に
おける断面を示す。同じ屈折力の増大に伴い、乱視処方を有する本発明によるGRIN累
進屈折力眼鏡レンズでは、球面のみの処方を有する対照累進屈折力眼鏡レンズと比較して
、ここで、1dptの等非点収差線により画定される中間累進帯は、4.5mmから6m
mに、すなわち約33パーセント広化している。
【0192】
図28は、水平に直線方向に前の視線方向に垂直な平面に関する第5の例示的な実施形
態による本発明によるGRIN累進屈折力眼鏡レンズの後面のサジタル高さを示す。
【0193】
第6の例示的な実施形態
GRIN累進屈折力眼鏡レンズを計画する本発明による方法の基本ステップを以下に概
説する。
【0194】
第1のステップにおいて、眼鏡装用者の個々のユーザデータ又はアプリケーションデー
タが捕捉される。これは、眼鏡装用者に割り当て可能な(生理学的)データの捕捉と、眼
鏡装用者が計画された累進屈折力眼鏡を装用する使用状況の捕捉とを含む。
【0195】
例として、眼鏡装用者の生理学的データは、屈折測定により特定され、球面、円柱、軸
、プリズム、基底及び加入の処方値の形態で処方に通常含まれる屈折異常及び調節能力を
含む。更に、例えば瞳孔間距離及び瞳孔サイズが異なる光条件で特定される。例として、
眼鏡装用者の年齢が考慮され、これは、予期される調節能力及び瞳孔サイズに影響する。
目の収束挙動は、異なる視線方向及び物体距離での瞳孔間距離から現れる。
【0196】
使用状況は、目の前の眼鏡レンズのシート(通常、目の回転中心に関連して)と、眼鏡
装用者が合焦して見るべきである異なる視線方向での物体距離とを含む。目の前の眼鏡装
用者のシートは、例えば、頂点間距離、前掲傾斜及び側方傾斜を捕捉することにより特定
することができる。これらのデータは、レイトレーシング方法を実行することができる物
体距離モデルに含まれる。
【0197】
続くステップにおいて、多数の評価点を有する眼鏡レンズの設計計画は、これらの捕捉
されたデータに基づいて設定される。設計計画は、各評価点における累進屈折力眼鏡レン
ズに意図される光学特性を含む。例として、意図される特性は、正確に言えば、目の前の
眼鏡レンズの配置及び基本的な距離モデルにより予め決定されるように累進屈折力眼鏡レ
ンズ全体にわたり正確に分布するように、加入を考慮した処方された球面屈折力及び非点
収差屈折力からの許容可能なずれを含む。
【0198】
更に、前面及び後面の表面ジオメトリの計画並びに眼鏡レンズ全体にわたる屈折率分布
の計画が設定される。例として、前面は、球面であるように選択することができ、後面は
、累進面であるように選択することができる。更に、両面をまず球面として選択すること
ができる。一般に、最初の計画での表面ジオメトリの選択は、単に以下の適用される最適
化方法の収束(速度及び成功)を決めるのみである。例として、前面は、球面形態を維持
すべきであり、後面は、累進面の形態を受けると仮定すべきである。
【0199】
眼鏡装用者ビーム路による多数の評価点を通る主光線のプロファイルが更なるステップ
において決定される。任意選択的に、各主光線の周囲において各主光線の局所波面を設定
することが可能である。
【0200】
続くステップにおいて、主光線のビーム路への眼鏡レンズの影響及び各評価点による主
光線の周囲における局所波面を特定することにより、評価点における眼鏡レンズの上記の
光学特性が確認される。
【0201】
更なるステップにおいて、眼鏡レンズの計画は、確認された光学特性及び個々のユーザ
データに応じて評価される。次に、眼鏡レンズの計画の後面及び屈折率分布は、目的関数
【数5】

の最小化に鑑みて変更され、式中、
【数6】

は、評価点mにおける光学特性nの重みを表し、
【数7】

は、評価点mにおける光学特性nの意図される値を表し、及び
【数8】

は、評価点mにおける光学特性nの実際の値を表す。
【0202】
別の言い方をすれば、後面の局所表面ジオメトリ及び累進屈折力眼鏡レンズの局所屈折
率は、終了基準が満たされるまで、評価点を通して各視覚ビーム路において変更される。
【0203】
次に、本発明により計画されたGRIN累進屈折力眼鏡レンズをこの計画に従って製造
することができる。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図9
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図13a
図13b
図13c
図14a
図14b
図14c
図15
図16a
図16b
図17a
図17b
図18a(1)】
図18a(2)】
図18b(1)】
図18b(2)】
図19a
図19b
図19c
図20a
図20b
図20c
図21
図22a
図22b
図23a
図23b
図24a(1)】
図24a(2)】
図24b(1)】
図24b(2)】
図25a
図25b
図25c
図26
図27a
図27b
図28(1)】
図28(2)】