IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エアバス ディーエス ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7474823水素タンク、水素タンクを冷却する方法、水素駆動部及び水素タンクを有する乗り物
<>
  • 特許-水素タンク、水素タンクを冷却する方法、水素駆動部及び水素タンクを有する乗り物 図1a
  • 特許-水素タンク、水素タンクを冷却する方法、水素駆動部及び水素タンクを有する乗り物 図1b
  • 特許-水素タンク、水素タンクを冷却する方法、水素駆動部及び水素タンクを有する乗り物 図1c
  • 特許-水素タンク、水素タンクを冷却する方法、水素駆動部及び水素タンクを有する乗り物 図1d
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】水素タンク、水素タンクを冷却する方法、水素駆動部及び水素タンクを有する乗り物
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
F17C13/00 302Z
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022175419
(22)【出願日】2022-11-01
(65)【公開番号】P2023068653
(43)【公開日】2023-05-17
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】10 2021 128 436.8
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516077644
【氏名又は名称】アリアーネグループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴェント
(72)【発明者】
【氏名】アルミン イッセルホルスト
(72)【発明者】
【氏名】マルティン コノプカ
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-525903(JP,A)
【文献】特開2021-011948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0302933(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004035319(DE,A1)
【文献】米国特許第03304728(US,A)
【文献】特開2007-071221(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103836334(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102004011653(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
F17C 3/10
F16J 12/00
F16L 59/065
F16L 59/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク室(T)を少なくとも部分的に画定するタンク構造体(10)であって、軽量構造で設計された以下では冷却シールドと称される領域(11)を含むタンク構造体(10)を有し、
前記冷却シールドには、前記タンク室(T)からガス状水素を排出するための圧力除去装置(20)の、前記タンク室(T)に接続した導管装置(21)が形成されている、水素タンク(100)であって、
パラ水素をオルト水素に促進して変換するための少なくとも1つのパラ-オルト触媒が前記導管装置に配置されており、
前記冷却シールド(11)が少なくとも2つの別個の材料層(14a,14b,14c)を有し、その間に少なくとも1つの中空隙間(Z)が形成されており、当該隙間が前記導管装置(21)の少なくとも一部を形成し、
少なくとも1つの前記材料層(14c)が、前記少なくとも1つの中空隙間(Z)を少なくとも部分的に画定する、ひだ及び/又は互いに屈曲した表面を有する、水素タンク(100)。
【請求項2】
タンク室(T)を少なくとも部分的に画定するタンク構造体(10)であって、軽量構造で設計された以下では冷却シールドと称される領域(11)を含むタンク構造体(10)を有し、
前記冷却シールドには、前記タンク室(T)からガス状水素を排出するための圧力除去装置(20)の、前記タンク室(T)に接続した導管装置(21)が形成されている、水素タンク(100)であって、
パラ水素をオルト水素に促進して変換するための少なくとも1つのパラ-オルト触媒が前記導管装置に配置されており、
前記タンク構造体(10,10’)がさらに、前記タンク室を断熱するための少なくとも1つの排気可能な又は排気される中空ボリュームが形成された部分構造体(16,18)を有する、水素タンク(100)。
【請求項3】
前記パラ-オルト触媒が、前記導管装置(21)の境界の少なくとも一部の内面コーティングとして少なくとも部分的に形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素タンク。
【請求項4】
前記タンク構造体が、少なくとも部分的に、プラスチック、繊維強化複合材料、アルミニウム及び/又は少なくとも1つのアルミニウム合金から作られている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素タンク。
【請求項5】
水素駆動部に供給するために請求項1又は2に記載の少なくとも1つの水素タンク(100)を含む、水素駆動部を有する乗り物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の水素タンク(100)のタンク構造体を冷却する方法であって、
前記水素タンク(100)の前記タンク室(T)からガス状水素(W)を、前記少なくとも1つのパラ-オルト触媒を含有する前記導管装置(21)に貫流させ、前記水素を前記水素タンク(100)の環境に排出する、方法。
【請求項7】
30K~70Kの範囲の温度を有する前記ガス状水素(W)を前記タンク室から前記導管装置(21)に導入する、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素タンクに関する。本発明はさらに、水素駆動部及びこれに供給するための水素タンクを有する乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、特にエネルギー担体として、工業及び技術において様々な使用・用途を有する。それは通常、オルト水素及びパラ水素から成り、そのそれぞれの分子はそれらの原子核内の異なるスピンによって識別される。時間をかけて自然に確立される平衡比は温度依存性を有する:パラ水素比は約20Kの通常の沸点までの温度でほぼ100%である一方、オルト水素の割合は温度増加と共に増大し、約250Kの温度より上では約75%である。この点について、パラ水素からオルト水素への変換は吸熱性であり、したがって逆変換は発熱性である。両方の変換とも自然にゆっくり生じるが、触媒によって加速され得る。通常、タンクは殆ど専門的にパラ水素を貯蔵する。
【0003】
しかしながら、他の低温流体のケースと同様に、可搬タンク及び固定タンクへの液体水素の貯蔵は問題になる、というのも熱がそれぞれのタンクに入力されると、液体水素が蒸発し、するとタンク内の圧力が上昇するからである。
【0004】
これは普通は、特に様々なタンク断熱手段によって部分的に防止される。例えば、特許文献1が、真空断熱のための排気可能なサンドウィッチ構造を備えた繊維強化プラスチック被覆を含む液体物質又はガス状物質を貯蔵するタンクを開示している。
【0005】
自動車部門では、蒸発損を低減するために、吸熱性のパラ-オルト変換のための触媒が使用される;このタイプのタンク装置は特許文献2、特許文献3、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3から知られている。触媒は、タンク外部の冷却シールドにおける通気装置の追加的な導管として設計され得る。このような用途・適用では、タンク圧力は一般に水素の臨界圧力よりかなり高い。ここで、水素は物理吸着によってタンクの内部の多孔インサートに結合され得る。
【0006】
燃料タンクのための冷却シールドの使用もまた航空宇宙分野で知られている。例えば、非特許文献4の論文、非特許文献5の刊行物及び非特許文献6の記事が、パラ水素ガスを供給される液体水素タンクであって、吸熱性のパラ-オルト変換のための触媒を有する液体水素タンクのための冷却シールドを記載している。非特許文献7の刊行物では、追加の金属導管により実現可能な、宇宙領域における液体水素タンクのための冷却シールドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】DE 10 2019 118 323 A1
【文献】US 2009/0199574 A1
【文献】US 2011/0302933 A1
【非特許文献】
【0008】
【文献】“Physikalische und technische Aspekte der Ortho-Para Umwandlung von Wasserstoff” by J. Essler (University of Dresden, 2013)
【文献】“Enhanced dormancy due to para-ortho hydrogen conversion in insulated cryogenic pressure vessels for automotive applications” by K. Peng and R. K. Ahluwalia (in: International Journal of Hydrogen Energy, 38, (2013))
【文献】“Effect of para-ortho conversion on hydrogen storage system performance” by S. Ubaid et al. (in: International Journal of Hydrogen Energy, 39, (2014))
【文献】“Parahydrogen-Orthohydrogen Conversion for Boil-Off Reduction from Space Stage Fuel Systems” by R. M. Bliesner (Master Thesis, Washington State University, (2013))
【文献】“Parahydrogen-Orthohydrogen Conversion for Enhanced Vapor-Cooled Shielding of Liquid Oxygen Tanks” by R. M. Bliesner, J. W, Leachman and P. M. Adam (in Journal of Thermophysics and Heat Transfer, 28 (4), (2014))
【文献】“Parahydrogen-Orthohydrogen Conversion on Catalyst-Loaded Scrim for Vapor-Cooled Shielding of Cryogenic Storage Vessels” by B. P. Pedrow et al. (in: Journal of Thermophysics and Heat transfer, 35 (1), (2021))
【文献】“Space-based LH2 propellant storage system: subscale ground testing results” by. M.W. Liggett (in: Cryogenics, 33 (4), (1993))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、液体水素の貯蔵が改良され得る技術を提供する目的に基づいている。本発明はさらに、水素駆動部を有する乗り物を改良する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これら目的は、請求項1,2に従う水素タンク、請求項に従う乗り物及び請求項に従う方法に従って実現される。有利な実施形態は従属請求項、明細書及び図面に開示されている。
【0011】
本発明に従う水素タンクは、水素のためのタンク室(タンクスペース)を少なくとも部分的に画定し及び軽量構造で設計された領域を含むタンク構造体を有し、そこには圧力除去装置の導管装置が形成されており、当該導管装置は、タンク室に接続しており、タンク室からガス状水素を排出する機能を有する。ここで、パラ水素をオルト水素に促進して変換するための少なくとも1つのパラ-オルト触媒が導管装置に配置されている。
【0012】
熱がこのような吸熱反応により生じる変換の間に環境から吸収されるので、導管装置を含むタンク構造体の軽量構造で設計された領域はその周囲・環境を冷却するために使用され、これが、それを以下でタンク構造体の「冷却シールド」と呼ぶ理由である。
【0013】
冷却シールドに形成されるパラ-オルト触媒を有する導管装置により、本発明は、吸熱性のパラ-オルト変換のためにそこに含まれる熱エネルギーを追加的に利用し、それをタンク構造体から除去することでタンク構造体の効果的な冷却を可能とする。このようにして、外側からタンク室への熱流が最小化され得、したがって必要な圧力除去のために要する水素タンクから排出すべき水素の量が比較的少なく保たれ得る。よって、蒸発損が最小化される。
【0014】
ゆえに、特に、本発明に従う水素タンクの冷却シールドは断熱効果を有する。
【0015】
本発明の有利な実施形態によれば、タンク構造体は、タンク室を隔絶(断熱)するための少なくとも1つの排気可能な又は排気される中空ボリュームが形成された少なくとも1つの部分構造体を含む。好ましくは、このような中空ボリュームを画定する壁が、中空ボリュームにおける0.0001hPa~0.01hPaの範囲の内圧に耐える。特に、前記少なくとも1つの部分構造体は、前記少なくとも1つの中空ボリュームを排気するための真空ポンプへの接続を含む。前記少なくとも1つの部分構造体は(冷却シールドのような)軽量構造で設計され得る。
【0016】
特に、(少なくとも1つの排気可能な又は排気される中空ボリュームを有する)このような部分構造体は、タンク室に向いた側において(すなわち冷却シールドとタンク室の間に)少なくとも部分的に配置され得、及び/又はこのような部分構造体は、タンク室から離れる冷却シールドの側において(すなわち冷却シールドと水素タンクの外部環境の間に)少なくとも部分的に配置され得る。
【0017】
冷却シールドの軽量構造及び/又は(対応する実施形態における)少なくとも1つの部分構造体の軽量構造は、(それぞれに)特に少なくとも部分的に実施され得、それで領域及び部分構造体がそれぞれ、少なくとも部分的に発泡材料で作られ、及び/又は領域及び部分構造体がそれぞれ、例えば、少なくとも部分的に互いに離間した複数の(好ましくは力吸収性の)材料層を含み、それらの間に少なくとも1つのキャビティ及び/又はさらなる材料層が配置され、その材料はその隣接する材料層の少なくとも1つより低い密度を有する;対応する実施形態では、少なくとも1つのこのようなキャビティが上述した少なくとも1つの排気される又は排気可能な中空ボリュームであり得る/形成する。
【0018】
このような実施形態では、好ましくは、1又は複数の材料層が少なくとも部分的に(或る領域に)連続的なシート状構造物として形成され得る。特に、複数の材料層がサンドウィッチ構造を形成し得る。材料層は、少なくとも部分的に、それらの材料組成が互いに異なってもよく、又は少なくとも部分的に同じ材料で構成されてもよい。それらが互いに接触する場合、それらはそれらの接触領域において材料移行部の不均質性によって識別され得る(それにより材料層は別個の、すなわち単に抽象的な境界によって互いに画定されない層である);それらは特に互いに接着剤により結合され又は溶接されてもよい。
【0019】
冷却シールドは好ましくは一体化された支持構造体により形成されており、すなわちそれはその冷却機能又は断熱機能に加えて耐荷重機能をも有する。これは、乗り物に使用される際に別個の支持構造体が少なくとも部分的に省略され得ることを意味する。ゆえに、他の水素タンクと比べて、このような実施形態は、構造質量の軽減と燃料損失の最小化を可能にする。
【0020】
本発明に従う乗り物は、水素駆動部(すなわち、少なくとも燃料成分として水素を使用する駆動部)と、そこに水素を供給するために、本発明の実施形態に従う少なくとも1つの水素タンクを含む。
【0021】
本発明に従う方法が、本発明の実施形態に従う水素タンクのタンク構造体を冷却するために使用される。それは、水素タンクのタンク室からガス状水素を導管装置を通過させること、及び水素を水素タンクの環境に排出することを含む。
【0022】
タンク室のタンク内容物が、好ましくは、ガス状水素に加えて、少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の(オルト水素と比較した)パラ水素含有量を有する液体水素をも含む。タンク構造体の冷却シールドの導管装置を通って流れるとき、導管装置に配置されたパラ-オルト触媒は、吸熱反応においてパラ水素の一部をオルト水素に変換する。結局、熱が冷却シールドから取り去られ、タンク構造体はこのようにして冷却される。
【0023】
それが導管装置に導入されるとき、ガス状水素は好ましくは30K~70Kの範囲の温度を有する。好ましくは、導管装置に存在する水素が50K~200Kの範囲の温度を有するまで(すなわち、このような温度まで加熱されるまで)、ガス状水素を導管装置を通って冷却シールドに通すことが行われる。このようにして、タンク室における約20Kの温度での液体水素の少なくともほぼ損失の無い貯蔵が実現され得る。
【0024】
したがって、特に、本発明に従う方法は水素タンクの圧力除去(減圧)を含む。このようにして、低い蒸発損によって、タンク室におけるガス状水素が、外側から水素タンクに作用する熱入力にもかかわらず、低レベルに繰り返しもたらされ得、そこで安定化され得る。圧力除去は、水素タンクから水素によって動力供給される水素駆動部の操作の間複数回繰り返されてもよく、又はそれは連続的に実行されてもよい。
【0025】
好ましくは、本発明に従う水素タンクの冷却シールドは、それぞれの(それぞれの温度Tに依存する)平衡比G(T)から最大10%だけ又は最大5%だけ相違する(それる)オルト水素のパラ水素に対する比Vが実現されるまで、少なくとも、50K~200Kの範囲の冷却シールドの温度で触媒によりパラ水素を返還するように構成されている。同様に、本発明に従う方法によって排出される水素も好ましくは、(それぞれの温度Tに依存する)それぞれの平衡比G(T)から最大10%だけ又は最大5%だけ異なるオルト水素のパラ水素に対する比Vを有する。したがって、このような実施形態では、それはそれぞれ0.9G(T)≦V又は0.95G(T)≦Vである。
【0026】
本発明に従う水素タンクは特に、(少なくとも燃料成分として水素を使用するように構成された)水素駆動部を有する乗り物(例えば、航空機、宇宙船、陸上車及び/又は水上車)において使用されるよう構成され得るか、又はそれはこのような乗り物に既に取り付けられ得る。
【0027】
有利な実施形態によれば、本発明に従う水素タンクのタンク室は(抽象的な)中央軸の周りに実質的に回動対称又は回転対称であるように形成される。それは、例えば、タンク構造体の一部であってプリズム又は円筒に沿って形成されているタンク壁によって、及び/又はタンク構造体の一部であって中央軸が通って延びる、少なくとも1つの回動対称又は回転対称に形成されたタンクドームによって画定され得る。このような実施形態では、冷却シールドは、タンク壁及び/又は少なくとも1つのこのようなタンクドームを少なくとも一部に含んでよく;特に、その際、導管装置は少なくとも部分的にタンク壁に及び/又は少なくとも1つのタンクドームに形成されてもよい。
【0028】
導管装置は、冷却剤として作用するガス状水素をタンク構造体に効率的に案内する機能を有する。それは、1又は複数の連続的な(分岐していない)冷却流路を含み得るか、少なくとも1つの分岐を形成し得る。冷却シールドの複数の材料層が(上述のように)サンドウィッチ構造を形成する実施形態では、このような分岐した導管装置はサンドウィッチに含まれるセルの境界ストリップ(縁)によって形成され得る。
【0029】
パラ-オルト触媒は好ましくは、導管装置の境界の少なくとも1つの領域の内面コーティングとして少なくとも部分的に形成されている。特に、それは、酸化鉄、ニッケル-ケイ素、三酸化クロム及び/又は多孔性磁性材料を含んでもよい。
【0030】
冷却シールド(断面)の材料厚さに関して、導管装置は、タンク構造体の中央の及び/又は外側の(すなわち、タンク室から離れる)断面領域を通って少なくとも部分的に延び得る。結局、効率的な熱除去が蒸発ガスのための最小要件と構造質量のための最小要件によって実現され得、従って外側からタンク構造体への熱入力が特に効率的に減少され得る。特に、少なくとも一部の導管装置は好ましくは、上述したプリズムの又は円筒のタンク壁を有する実施形態では中央の断面領域を通って延び、中央軸が通って延びる少なくとも1つの回動対称又は回転対称なタンクドームを有する実施形態では中央の又は外側の断面領域を通って延び得る。
【0031】
好ましくは、導管装置は、冷却シールドの2以上の(別個の)材料層によって少なくとも部分的に画定されており、よって少なくとも2つの材料層の間の中空隙間として形成されている。特に、好ましくは、少なくとも1つの材料層が波形及び/又は互いに曲がった(特にプリズムに沿って延在する)表面を有してもよく、それらは導管装置の少なくとも1つの領域を少なくとも部分的に画定する。
【0032】
有利な実施形態によれば、タンク構造体、特に好ましくはその冷却シールドは、少なくとも部分的に、例えばプラスチック、繊維強化複合材料、アルミニウム及び/又は少なくとも1つのアルミニウム合金などの軽量材料で作られている。
【0033】
したがって、タンク構造体は特に低質量を有し、それによりその輸送(特に水素駆動部を有する乗り物において、その供給に水素タンクが役立つ)が特に省エネルギーで実行され得る。
【0034】
複数の材料層を有する対応する実施形態では、特に少なくとも1つの材料層が好ましくは、少なくとも部分的に繊維強化複合材料から成ってもよい。繊維強化複合材料のこのような層は特に支持構造として機能でき、したがって、少なくとも部分的に冷却シールドの有利な耐荷重設計をもたらし得る。
【0035】
以下では、本発明の好ましい例示の実施形態を図面に則してより詳細に説明する。個々の要素及び構成部品は示されたものとは異なって組み合わされ得ると理解される。一致する要素のための参照番号は図面を通して使用され、場合によっては各々の図のために新たに記載しない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1a】推進フェーズの間の宇宙船のタンクとして本発明に従う水素タンクの例示の実施形態を示す縦断面図である。
図1b】宇宙船の弾道飛行フェーズの間の図1の水素タンクを示す図である。
図1c図1a、1bの本発明に従う水素タンクを示す横断面図である。
図1d】本発明の例示の実施形態に従う有利な水素タンクを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1aは、図式化して本発明の例示の実施形態に従う水素タンク100を示す。水素タンク100は、タンク室Tを取り囲み画定するタンク構造体10を含む。タンク構造体10は、圧力除去装置20の導管装置21が形成された冷却シールド11を含む。その入口22を介して、ガス状水素Wがタンク室から導管装置21に流れることができ、次いで導管装置21を貫流し、圧力除去装置20の出口23を通って水素タンク100の環境・周囲に排出され得る。パラ水素をオルト水素へ促進して変換するためのパラ-オルト触媒(図面では見えない)が、導管装置21に配置されている。パラ-オルト触媒は好ましくは、冷却シールド11における導管装置21の教会の少なくとも1つの領域のコーティングとして形成されている。特に、触媒は、例えば、酸化鉄、ニッケル-ケイ素、三酸化クロム及び/又は多孔性磁性材料を含んでもよく、それは、導管装置21を通って流れるガス状水素W内のパラ水素が部分的にオルト水素に変換されることを保証する。吸熱変換が冷却シールド11から熱を除去するので、タンク構造体10はこのようにしてさらに冷却され、ゆえに、外側から水素タンク100に作用する熱流束φが少なくとも部分的に補償される。このようにして、タンク圧力を調節するために必要な圧力除去(減圧)が効率的な冷却のために使用でき、それで蒸発損が最小化され得る。
【0038】
本ケースでは、タンク室は、(抽象的な)中央軸Xの周りに回転対称に構成されており、それに沿って水素タンク100は図1aにおいて断面図で示されている。
【0039】
タンク室Tはここでタンク壁12とタンクドーム13a,13bによって画定されている。タンク壁12は中央軸Xの周りを円筒に沿って形成されている。タンクドーム13a,13bはそれぞれ球状セクションとして形成されており、球状セクションを通って中央軸Xが延びている。圧力除去装置20の入口22は、そのタンクドーム13aを通って中央軸Xの延在領域に配置されている。タンクドーム13aは、乗り物(不図示)における水素タンクの意図される取り付け配向において、液体水素Wが地球の重力の影響で又は-乗り物が宇宙用途のために備えられる場合-推進中の慣性の影響で蓄積するタンク室領域の反対側にある:この状況は図1aに示されている。
【0040】
これとは異なり、図1bは、宇宙船が弾道フェーズの間に中央軸Xに沿って回転する状況において、宇宙船(不図示)に意図される取り付け配向で取り付けられた水素タンク100を示す:この状況では、液体水素Wは遠心力のために中央軸Xに関して半径方向外側に、従ってタンク壁12に対して押し付けられている。
【0041】
両方の状況とも、液体水素Wは圧力除去装置20の導管装置21への入口22から離間しており、それが導管装置に入ることが防止される。
【0042】
タンク構造体10は図1a及び1bにおいてそれぞれ、2つの平坦な材料層14a,14bを備えた単純化形式で示されており、それらの間には少なくとも1つの隙間Zが形成されている。よって、タンク構造体の軽量構造が実現される。好ましくは、平坦な材料層の少なくとも1つのが、少なくとも部分的に、例えばプラスチック、繊維強化複合材料、アルミニウム及び/又は少なくとも1つのアルミニウム合金などの軽量材料から成る。好ましくは、材料層の少なくとも1つが冷却シールド11に耐荷重機能を与え得る。
【0043】
さらに図1a及び1bから分かるように、隙間Zは図示の実施形態において導管装置21の少なくとも一部を形成する。
【0044】
図1cは、中央軸Xと垂直に、タンク壁12の領域で切断された(及び構造を示すために変更された寸法を有する)水素タンク100を図式的に示す。この図から、材料層14a及び14bの間に波形材料層14cがさらなる材料層として配置されていることが明らかであり、そのひだ・皺はさらに外側に配置される材料層14aと接触して複数の隙間Zを画定し、その2つだけが明瞭性のために図2において参照符号を備えている。(タンク室T又は中央軸Xに関して)さらに内側に配置される材料層14bと接触して、波形材料層14cはさらなる隙間Zを画定する。
【0045】
それぞれの外側隙間Zは、パラ-オルト触媒(不図示)を有する導管装置21の少なくとも一部を形成する。ガス状のパラ水素が導管装置21を通過するとき、外側材料層14bが特に冷却され、従って外側からの熱流束φが少なくとも部分的に補償される。それに代えて又は加えて、さらなる隙間Zがパラ-オルト触媒(不図示)を有する導管装置21の一部を形成し得る。
【0046】
特に、パラ-オルト触媒は、それが隙間Z及び/又は隙間Zの1又は複数のそれぞれの壁の少なくとも一部のそれぞれのコーティングとして形成されている1又は複数の領域を含んでもよい。
【0047】
波形形状に代えて、材料層14cは、互いに屈曲したセクション、特にギザギザに形成されるセクションを含んでもよい(不図示)。
【0048】
図1dは、本発明のさらなる例示の実施形態に従う特に有利な水素タンク100’を横断面図にて図式的に示す。水素タンク100’は、特に球状であってよく又は円筒状のタンク壁を有してもよい;図示の横断面は本ケースではその中央軸Xと垂直に描かれている。
【0049】
水素タンク100’は、図1cに示されるタンク構造体100の冷却シールド11と同様に形成された冷却シールド11を有するタンク構造体10’を有し、ゆえにここでは同じ方法で指定・表記されており、再び記載しない。
【0050】
さらに、水素タンク100’のタンク構造体10’はそれぞれ、タンク室Tに面する冷却シールド11の側に(よって、タンク室Tと冷却シールド11の間に)材料層15a及び15bを、タンク室Tから離間する冷却シールド11の側に(よって、タンク室に関して冷却シールド11よりさらに外側に)材料層17a及び17bを含む。
【0051】
本ケースでは材料層15a及び17bはそれぞれ波形に形成されており、それでそれらの層はそれぞれの隣接する材料層14a,15b又は14b,17aと接触しており、これらのそれぞれの材料層と共にキャビティH,Hを画定する。その2つだけが明瞭性のために図1dにおいて参照符号を付されている。タンク構造体10’はしたがってそれぞれ、(タンク室Tに関して)冷却シールド11の内側及び外側において、冷却シールド11のような軽量構造の部分構造体16及び18を有する。特に、図1dに示されるタンク構造体10’は本ケースでは3つの波板コアを含み、そのうち断面で真ん中のものが冷却シールド11を形成する。
【0052】
波形形状に代えて、1又は複数の材料層14c,15a,17bが、互いに屈曲したセクション、特にギザギザに形成されるセクションを含んでもよい(不図示)。
【0053】
有利な実施形態によれば、1又は複数のキャビティH及び/又は1又は複数のキャビティHが真空ポンプに接続しており、それによりそれぞれに排気可能な中空ボリュームを形成する。結局、特に良好な断熱効果が実現され得る。
【0054】
タンク室Tを少なくとも部分的に画定し、軽量構造で設計された冷却シールド11を含むタンク構造体10を有する水素タンク100が開示されている。タンク室Tからガス状水素Wgを排出するための圧力除去装置20の、タンク室Tに接続した導管装置21が、冷却シールド11に形成されている。パラ水素をオルト水素に促進して変換するための少なくとも1つのパラ-オルト触媒が導管装置に配置されている。
【0055】
さらに、水素駆動部及びこのような水素タンク100を有する乗り物と、このような水素タンクのタンク構造体を冷却する方法も開示されている。
【符号の説明】
【0056】
10 タンク構造体
11 冷却シールド
12 タンク壁
13a,13b タンクドーム
14a,14b,14c 材料層
15a,15b 材料層
16 タンク室Tに向かう冷却シールド11の側における部分構造体
17a,17b 材料層
18 タンク室Tから離れる冷却シールド11の側における部分構造体
20 圧力除去装置
21 導管装置
22 入口
23 出口
100 水素タンク
φ 熱流束(熱流)
,H キャビティ
液体水素
ガス状水素
T タンク室
X 中央タンク室軸
Z 隙間
内側隙間
図1a
図1b
図1c
図1d