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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/14 20060101AFI20240418BHJP
   F02B 23/02 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
F02M61/14 310U
F02M61/14 310A
F02B23/02 C
F02B23/02 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022191698
(22)【出願日】2022-11-30
(62)【分割の表示】P 2018138525の分割
【原出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2023022223
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】523216148
【氏名又は名称】株式会社三井E&S DU
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】青柳 享秀
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 孝行
(72)【発明者】
【氏名】山田 敬之
(72)【発明者】
【氏名】久下 喬弘
(72)【発明者】
【氏名】増田 裕
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/034796(WO,A1)
【文献】特開2014-101884(JP,A)
【文献】特開平07-208171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
F02B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンにより圧縮される2ストロークエンジンの燃焼室に向けてガス燃料を噴射する複数の燃料噴射ノズルを備えるガス燃料噴射装置であって、
少なくとも一対の前記ガス燃料噴射ノズルは、前記ピストンの摺動方向及び前記ピストンの摺動方向と直交する方向から見て、それぞれ異なる噴射角で前記ガス燃料を噴射し、
前記ガス燃料噴射ノズルは、前記ピストンの摺動方向においてそれぞれ異なる位置かつシリンダライナの中心を挟んで互いに対向しない位置に取り付けられることを特徴とすることを特徴とするガス燃料噴射装置。
【請求項2】
前記ピストンの摺動方向に直行する方向を0度とし、前記ピストンの圧縮方向を正とした場合における前記噴射角γ、εは、-30°以上0°未満に設定され、
前記噴射角γ、εの角度差は、-15°≦γ-ε<0、0<γ―ε≦10°に設定されることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
請求項1に記載のガス燃料噴射装置と、
前記ピストンと当該ピストンが摺動されると共に前記燃焼室を有するシリンダとを備える前記2ストロークエンジンとを備え、
前記燃焼室内では旋回流が形成されることを特徴とするエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、往復ピストン内燃機関(2ストロークエンジン)へのガス供給システムが開示されている。特許文献1のガス供給システムでは、シリンダに設けられるガス入口ノズル(燃料噴射ノズル)より、燃料ガスをシリンダ内の燃焼空間に供給している。このような燃料噴射ノズルを複数設ける場合、等しい噴射角でそれぞれ対向するように設ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-89836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の燃料噴射ノズルより等しい噴射角で燃料を噴射する場合、複数の燃料噴射ノズルから等しい位置に向けて燃料が噴射され、燃焼室内において燃料が一部に偏るため、燃焼室における燃料と空気との混合に不均一が生じる。燃焼室において燃料ガス濃度に濃淡が生じると、異常燃焼の原因となる可能性がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、燃焼室において燃料と空気とを均一に混合することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、ピストンにより圧縮される2ストロークエンジンの燃焼室に向けて燃料を噴射する複数の燃料噴射ノズルを備える燃料噴射装置であって、少なくとも一対の上記燃料噴射ノズルは、それぞれ異なる噴射角で上記燃料を噴射する、という構成を採用する。
【0007】
第2の手段として、上記第1の手段において、少なくとも一対の上記燃料噴射ノズルは、上記ピストンの摺動方向から見て、それぞれ異なる噴射角で上記燃料を噴射する、という構成を採用する。
【0008】
第3の手段として、上記第1または第2の手段において、少なくとも一対の上記燃料噴射ノズルは、上記ピストンの摺動方向と直交する方向から見て、それぞれ異なる噴射角で上記燃料を噴射する、という構成を採用する。
【0009】
第4の手段として、上記第3の手段において、少なくとも一対の上記燃料噴射ノズルは、上記ピストンの摺動方向と直交する方向を0°とし、上記ピストンの圧縮方向を正としたときに、上記噴射角が-30°以上0°以下である、という構成を採用する。
【0010】
第5の手段として、上記第3の手段において、全ての上記燃料噴射ノズルは、上記ピストンの摺動方向と直交する方向を0°とし、上記ピストンの圧縮方向を正としたときに、上記噴射角が0°以下である、という構成を採用する。
【0011】
第6の手段として、上記第1~5のいずれかの手段において、上記燃料噴射ノズルは、上記ピストンの摺動方向においてそれぞれ異なる位置に取り付けられる、という構成を採用する。
【0012】
第7の手段として、ピストンと上記ピストンが摺動されると共に燃焼室を有するシリンダとを有する2ストロークエンジンと、第1~6のいずれかの手段の燃料噴射装置とを備え、上記燃焼室内では、旋回流が形成される、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少なくとも一対の燃料噴射ノズルが、異なる噴射角で燃料を噴射する。これにより、燃焼室内のガスの流れに対して、各燃料噴射ノズルが異なる位置に向けて燃料を噴射することができ、燃焼室内において噴射された燃料が空気と混合しやすくなる。したがって、燃焼室において燃料と空気とを均一に混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムの断面図である。
図2】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの模式断面図であり、(a)がピストン摺動方向から見た図であり、(b)がピストン摺動方向と直交する方向から見た図である。
図3】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムの燃料の混合度合を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの変形例を示す模式断面図である。
図5】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの変形例を示す模式断面図である。
図6】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの変形例を示す模式断面図である。
図7】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの変形例を示す模式断面図である。
図8】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの変形例を示す模式断面図である。
図9】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの変形例を示す模式断面図である。
図10】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの変形例を示す模式断面図である。
図11】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの変形例を示す模式断面図である。
図12】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの変形例を示す模式断面図である。
図13】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの変形例を示す模式断面図である。
図14】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムが備えるシリンダライナの変形例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明におけるエンジンシステム100の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0016】
[第1実施形態]
本実施形態のエンジンシステム100は、例えば大型タンカなど船舶に搭載され、図1に示すように、エンジン1と、燃料噴射装置15と、過給機200と、制御部300と、とを有している。なお、本実施形態においては、過給機200を補機として捉え、エンジン1(主機)と別体として説明する。但し、過給機200をエンジン1の一部として構成することも可能である。
【0017】
エンジン1は、多気筒のユニフロー掃気ディーゼルエンジン(2ストロークエンジン)とされ、天然ガス等の気体燃料を重油などの液体燃料と共に燃焼させるガス運転モードと、重油などの液体燃料を燃焼させるディーゼル運転モードとを有している。なお、ガス運転モードでは、気体燃料のみを燃焼させても良い。このようなエンジン1は、架構2と、シリンダ部3と、ピストン4と、排気弁ユニット5と、ピストンロッド6と、クロスヘッド7と、連接棒9と、クランク角センサ10と、クランク軸11と、掃気溜12と、排気溜13と、空気冷却器14とを有している。また、シリンダ部3、ピストン4、排気弁ユニット5及びピストンロッド6により、気筒が構成されている。
【0018】
架構2は、エンジン1の全体を支持する強度部材であり、クロスヘッド7及び連接棒9が収容されている。また、架構2は、内部において、クロスヘッド7の後述するクロスヘッドピン7aが往復動可能とされている。
【0019】
シリンダ部3は、シリンダライナ3aと、シリンダヘッド3bとシリンダジャケット3cとを有している。シリンダライナ3aは、円筒状の部材であり、ピストン4との摺動面が内側に形成されている。このようなシリンダライナ3aの内周面とピストン4とにより囲まれた空間が燃焼室R1とされている。燃焼室R1内は、略円柱状の空間であり、内部のガスが燃焼室R1の中心の周りを一定の方向に旋回する流れが形成されている。なお、以下の説明においては、燃焼室R1におけるガスの旋回方向をスワール方向として説明している。また、シリンダライナ3aの下部には、複数の掃気ポートSが形成されている。掃気ポートSは、シリンダライナ3aの周面に沿って配列された開口であり、シリンダジャケット3c内部の掃気室R2とシリンダライナ3aの内側とを連通している。シリンダヘッド3bは、シリンダライナ3aの上端部に設けられた蓋部材である。シリンダヘッド3bは、平面視において中央部に排気ポートHが形成され、排気溜13と接続されている。また、シリンダヘッド3bには、不図示の燃料噴射弁が設けられている。シリンダジャケット3cは、架構2とシリンダライナ3aとの間に設けられ、シリンダライナ3aの下端部が挿入された円筒状の部材であり、内部に掃気室R2が形成されている。また、シリンダジャケット3cの掃気室R2は、掃気溜12と接続されている。
【0020】
ピストン4は、略円柱状とされ、後述するピストンロッド6と接続されてシリンダライナ3aの内側に配置されている。また、ピストン4の外周面には不図示のピストンリングが設けられ、ピストンリングにより、ピストン4とシリンダライナ3aとの間隙を封止している。ピストン4は、燃焼室R1における圧力の変動により、ピストンロッド6を伴ってシリンダライナ3a内を摺動する。
【0021】
排気弁ユニット5は、排気弁5aと、排気弁筐5bと、排気弁駆動部5cとを有している。排気弁5aは、シリンダヘッド3bの内側に設けられ、排気弁駆動部5cにより、シリンダ部3内の排気ポートHを閉塞する。排気弁筐5bは、排気弁5aの端部を収容する円筒形の筐体である。排気弁駆動部5cは、排気弁5aをピストン4のストローク方向に沿う方向に移動させるアクチュエータである。
【0022】
ピストンロッド6は、一端がピストン4と接続され、他端がクロスヘッドピン7aと連結された長尺状部材である。ピストンロッド6の端部は、クロスヘッドピン7aに固定され、連接棒9が回転可能となるように連結されている。
【0023】
クロスヘッド7は、クロスヘッドピン7aと、ガイドシュー7bと、を有している。クロスヘッドピン7aは、ピストンロッド6と連接棒9とを移動可能に連結する円柱状部材である。
【0024】
ガイドシュー7bは、クロスヘッドピン7aを回動可能に支持する部材であり、クロスヘッドピン7aに伴ってピストン4のストローク方向に沿って不図示のガイドレール上を移動する。ガイドシュー7bがガイドレールに沿って移動することにより、クロスヘッドピン7aは、回転運動と、ピストン4のストローク方向に沿う直線方向以外への移動が規制される。このようなクロスヘッド7は、ピストン4の直線運動を連接棒9へと伝達している。
【0025】
図1に示すように、連接棒9は、クロスヘッドピン7aと連結されると共にクランク軸11と連結されている長尺状部材である。連接棒9は、クロスヘッドピン7aに伝えられたピストン4の直線運動を回転運動に変換している。クランク角センサ10は、クランク軸11のクランク角を計測するためのセンサであり、制御部300へとクランク角を算出するためのクランクパルス信号を送信している。
【0026】
クランク軸11は、気筒に設けられる連接棒9に接続された長尺状の部材であり、それぞれの連接棒9により伝えられる回転運動により回転されることで、例えばスクリュー等に動力を伝える。掃気溜12は、シリンダジャケット3cと過給機200との間に設けられ、過給機200により加圧された空気が流入する。また、掃気溜12には、空気冷却器14が内部に設けられている。排気溜13は、各気筒の排気ポートHと接続されると共に過給機200と接続される管状部材である。排気ポートHより排出されるガスは、排気溜13に一時的に貯留されることにより、脈動を抑制した状態で過給機200へと供給される。空気冷却器14は、掃気溜12内部の空気を冷却する装置である。
【0027】
燃料噴射装置15は、不図示の燃料タンクに接続されると共に、図2(a)に示すように、シリンダライナ3aの内周面より、燃焼室R1に向けて燃料を噴射する装置である。本実施形態においては、燃料噴射装置15は、第1ノズル15a及び第2ノズル15bの2本(一対)のノズルを燃料噴射ノズルとして備えている。
【0028】
第1ノズル15a及び第2ノズル15bは、不図示の燃料ポンプと接続され、シリンダライナ3aの内側に向けて燃料を噴射する。第1ノズル15a及び第2ノズル15bは、シリンダライナ3aの中心を挟んで対向する位置より突出して設けられている。
第1ノズル15aは、ピストン4の摺動方向(上下方向)から見て、図2(a)に示すように、シリンダライナ3aの中心に対して、α°傾いた方向に向けて燃料を噴射する。また、第2ノズル15bは、上下方向から見て、図2(a)に示すように、シリンダライナ3aの中心に対して、噴射角がβ°(β≠α)傾いた方向に向けて燃料を噴射する。さらに、第1ノズル15aは、図2(b)に示すように、上下方向から直交する方向(水平方向)から見て、水平方向に対して噴射角がγ°傾いた方向に向けて燃料を噴射する。また、第2ノズル15bは、図2(b)に示すように、ピストン4の摺動方向と直交する方向(水平方向)から見て、水平方向に対してε°(ε≠γ)傾いた方向に向けて燃料を噴射する。
上述のように、第1ノズル15aと第2ノズル15bとは、燃焼室R1の中心から偏心した方向であって、互いに異なる噴射角で燃料を噴射可能とされている。
【0029】
過給機200は、排気ポートHより排出されたガスにより回転されるタービンにより、不図示の吸気ポートから吸入した空気を加圧して燃焼室R1に供給する装置である。
【0030】
制御部300は、船舶の操縦者による操作等に基づいて、燃料の供給量等を制御するコンピュータである。
【0031】
このようなエンジンシステム100は、不図示の燃料噴射弁より燃焼室R1に噴射された燃料を着火、爆発させることによりピストン4をシリンダライナ3a内で摺動させ、クランク軸11を回転させる装置である。詳述すると、燃焼室R1に供給された燃料は、掃気ポートSより流入した空気と混合された後、ピストン4が上死点方向に向けて移動することにより圧縮されて温度が上昇し、自然着火する。また、液体燃料の場合には、燃焼室R1において温度上昇することにより気化し、自然着火する。
【0032】
そして、燃焼室R1内の燃料が自然着火することで急激に膨張し、ピストン4には下死点方向に向けた圧力がかかる。これにより、ピストン4が下死点方向に移動し、ピストン4に伴ってピストンロッド6が移動され、連接棒9を介してクランク軸11が回転される。さらに、ピストン4が下死点に移動されることで、掃気ポートSより燃焼室R1へと加圧空気が流入する。排気弁ユニット5が駆動することで排気ポートHが開き、燃焼室R1内の排気ガスが、加圧空気により排気溜13へと押し出される。
【0033】
図3は、本実施形態におけるエンジンシステムの燃料の混合度合を示すグラフである。図3のグラフにおいて、混合度合は、グラフの下側に向かう程良好であるものとする。(a)は、上下方向における噴射角の変位(変位角γ,ε)を変えた際の混合度合を示している。なお、変位角は、水平方向を0とし、上方向(圧縮方向)を+としている。また、(b)は、上下方向における第1ノズル15a及び第2ノズル15bの角度差(γ-ε)を変えた際の混合度合を示している。変位角が-30°≦γ,ε≦0°の範囲において、特に混合度合が良好であることがわかる。同様に、角度差が-15°≦γ-ε≦10°の範囲において特に混合度合が良好であることがわかる。
【0034】
また、(c)は、水平方向における噴射角の変位(変位角α,β)を変えた際の混合度合を示している。なお、変位角は、中心軸方向を0とし、スワール方向を+としている。特に、変位角がγ,ε≦-7.5°及び12.5°≦γ,εの範囲において、混合度合が良好であることがわかる。
【0035】
また、本実施形態によれば、第1ノズル15a及び第2ノズル15bは、水平方向から見て異なる噴射角で燃料を噴射する。これにより、第1ノズル15a及び第2ノズル15bは、それぞれ上下方向において異なる位置に向けて燃料を噴射する。このため、各燃料噴射ノズルから噴射された燃料がそれぞれ異なる位置で周囲の空気と混合され、燃焼室R1において、燃料と空気とが均一に混合される。
【0036】
また、本実施形態によれば、第1ノズル15a及び第2ノズル15bは、上下方向から見て、異なる噴射角で燃料を噴射する。これにより、第1ノズル15a及び第2ノズル15bは、それぞれ水平方向において異なる位置に向けて燃料を噴射する。このため、噴射された燃料がそれぞれ異なる位置で周囲の空気と混合され、燃焼室R1において、燃料と空気とが均一に混合される。
【0037】
また、本実施形態によれば、燃焼室R1において旋回流が形成されているため、燃料と空気とがより均一に混合されやすくなる。
【0038】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0039】
図4~14は、上記実施形態の変形例である。図4~14における実線、一点鎖線、二点鎖線及び破線の矢印は燃料噴射ノズルの噴射方向を示しており、太い矢印はスワール方向を示す。図4(b)に示すように、2本の燃料噴射ノズルを上下方向において互いに異なる位置に設けることも可能である。この場合、2本の燃料噴射ノズルは、さらに互いに離れた位置に向けて燃料を噴射するため、燃料をより均一とすることができる。
また、図4(c)、(d)に示すように、2本の燃料噴射ノズルは、上下方向から見て、中心を挟んで互いに対向しない位置に設けられるものとしてもよい。すなわち、複数の燃料噴射ノズルを設ける際に、各燃料噴射ノズルは、シリンダライナ3aの周方向においてそれぞれ不均等な間隔で設けられるものとしてもよい。
【0040】
図4に示すように、2本の燃料噴射ノズルがスワール方向に向けて傾斜した噴射角で燃料を噴射してもよく、また、図5、6に示すように、2本の燃料噴射ノズルのうち少なくとも1本がスワール方向と反対の方向に向けて傾斜した噴射角で燃料を噴射するものとしてもよい。
【0041】
なお、燃料噴射ノズルをスワール方向に向けて傾斜させて噴射させる場合、シリンダライナ3aの内壁面近傍に燃料を案内することができ、従来の燃料噴射方法と比較して、燃焼室R1内の燃料の混合性を向上させることができる。
また、燃料噴射ノズルをスワール方向と反対の方向に傾斜させて噴射させる場合、燃焼室R1内の流れに速度差を生じさせ、乱流を発生させることができる。これにより、燃焼室R1内において燃料ガスが拡散され、混合性を向上させることができる。
【0042】
燃料噴射ノズルは、3本以上設けられるものとしてもよい。一例として図7~14に示すように、燃料噴射ノズルは、4本設けられるものとしてもよい。この場合、図7~9に示すように、燃料噴射ノズルは、2本ずつ等しい噴射角で燃料を噴射するものとしてもよい。また、図10~14に示すように、4本の燃料噴射ノズルは、それぞれシリンダライナ3aの内周面の1つの位置に2本ずつ設けられ、4本それぞれが異なる噴射角で燃料を噴射するものとしてもよい。
【0043】
また、本発明は、燃焼室R1内において旋回流を形成しない構成についても適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 エンジン
2 架構
3 シリンダ部
3a シリンダライナ
3b シリンダヘッド
3c シリンダジャケット
4 ピストン
5 排気弁ユニット
5a 排気弁
5b 排気弁筐
5c 排気弁駆動部
6 ピストンロッド
7 クロスヘッド
7a クロスヘッドピン
7b ガイドシュー
9 連接棒
10 クランク角センサ
11 クランク軸
12 掃気溜
13 排気溜
14 空気冷却器
15 燃料噴射装置
15a 第1ノズル
15b 第2ノズル
100 エンジンシステム
200 過給機
300 制御部
H 排気ポート
O 出口孔
R1 燃焼室
R2 掃気室
S 掃気ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14