(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】排水管継手
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
E03C1/12 D
E03C1/12 E
(21)【出願番号】P 2022211055
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2019043526の分割
【原出願日】2019-03-11
【審査請求日】2023-01-10
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】八木 博史
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-355260(JP,A)
【文献】特開2000-144838(JP,A)
【文献】特開2001-26955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/122
F16L 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に形成される上管接続部と下端部に形成される下管接続部とを有する縦筒状の管本体、および前記管本体から側方に分岐する横管接続部を備え
、前記下管接続部にベンド管が接続される排水管継手であって、
前記管本体の内周面から突出する
複数の偏流板を備え、
前記偏流板は、前記横管接続部の軸中心よりも上方であって、かつ前記上管接続部に接続される上部立て管の下端よりも下方に配置され、
前記偏流板は、平面視で前記管本体の軸中心に向かって膨らむ形状を有し、
前記偏流板の上面は、基端中央部が最も高く、突出端に向かって低くなる凸状に形成され、
前記偏流板の突出端と下面との境界周縁に所定角度のエッジ部が形成され、
前記エッジ部の所定角度は、直角または鋭角であ
り、
前記管本体の径方向における前記偏流板の最大部分の突出長さは、5mm以上25mm以下であり、
前記管本体の径方向と直交する方向における前記偏流板の最大部分の幅は、10mm以上85mm以下であり、
当該排水管継手は、合成樹脂製であって、複数の部材を組み合わせることで構成されている(但し、前記偏流板が形成されている円筒部の下端が、前記横管接続部の基端側開口の上縁よりも下方に垂れ下がる場合を除く)、排水管継手。
【請求項2】
上端部に形成される上管接続部と下端部に形成される下管接続部とを有する縦筒状の管本体、および前記管本体から側方に分岐する横管接続部を備え
、前記下管接続部にベンド管が接続される排水管継手であって、
前記管本体の内周面から突出する
複数の偏流板を備え、
前記偏流板は、前記横管接続部の軸中心よりも上方であって、かつ前記上管接続部に接続される上部立て管の下端よりも下方に配置され、
前記偏流板は、平面視で前記管本体の軸中心に向かって膨らむ形状を有し、
前記偏流板の上面は、基端中央部が最も高く、突出端に向かって低くなる凸状に形成され、かつ前記管本体の径方向における前記偏流板の最大部分の縦断面において凸曲
線を有し、
前記偏流板の突出端と下面との境界周縁に所定角度のエッジ部が形成され、
前記エッジ部の所定角度は、直角または鋭角であ
り、
前記管本体の径方向における前記偏流板の最大部分の突出長さは、5mm以上25mm以下であり、
前記管本体の径方向と直交する方向における前記偏流板の最大部分の幅は、10mm以上85mm以下であり、
当該排水管継手は、合成樹脂製であって、複数の部材を組み合わせることで構成されている(但し、前記偏流板が形成されている円筒部の下端が、前記横管接続部の基端側開口の上縁よりも下方に垂れ下がる場合を除く)、排水管継手。
【請求項3】
前記偏流板の下面は、略水平面状に形成される、請求項1または2記載の排水管継手。
【請求項4】
前記管本体の径方向における前記偏流板の最大部分の突出長さは、前記管本体の径方向と直交する方向における前記偏流板の最大部分の幅よりも小さい、請求項1から3のいずれかに記載の排水管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水管継手に関し、特にたとえば、排水立て管と排水横枝管との合流部分に設けられる、排水管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排水管継手の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の排水集合管(排水管継手)は、筒状胴部(管本体)の上下端部に縦排水管を接続する縦接続口(上管接続部および下管接続部)を有し、筒状胴部の周壁に横枝管を接続する横接続口(横管接続部)を有する。また、筒状胴部の内部に、縦排水管から流下してくる排水流を一方に偏らせるべく縦管軸線に対して傾斜して設けられた偏流板と、偏流板の下方において排水流に旋回を与えるべく設けられた旋回羽根とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、偏流板が縦管軸線に対して傾斜する平板状に形成されるので、排水は偏流板によって直線的に偏流される。しかし、偏流させた排水が直線的に流れると、偏流板の対面側の横管接続部などに排水が流入し易くなってしまう。また、横管接続部への排水の流入を防ぐために邪魔板を設置すると、排水が邪魔板に勢いよく衝突してそこで乱流が発生する。すると、洗濯排水などが泡立ち、排水管内が閉塞して封水の跳ね出し等のトラブルが発生してしまう恐れがある。このため、より排水性能を向上させた排水管継手が望まれる。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、排水管継手を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、排水性能に優れる、排水管継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上端部に形成される上管接続部と下端部に形成される下管接続部とを有する縦筒状の管本体、および管本体から側方に分岐する横管接続部を備え、下管接続部にベンド管が接続される排水管継手であって、管本体の内周面から突出する複数の偏流板を備え、偏流板は、横管接続部の軸中心よりも上方であって、かつ上管接続部に接続される上部立て管の下端よりも下方に配置され、偏流板は、平面視で管本体の軸中心に向かって膨らむ形状を有し、偏流板の上面は、基端中央部が最も高く、突出端に向かって低くなる凸状に形成され、偏流板の突出端と下面との境界周縁に所定角度のエッジ部が形成され、エッジ部の所定角度は、直角または鋭角であり、管本体の径方向における偏流板の最大部分の突出長さは、5mm以上25mm以下であり、管本体の径方向と直交する方向における偏流板の最大部分の幅は、10mm以上85mm以下であり、当該排水管継手は、合成樹脂製であって、複数の部材を組み合わせることで構成されている(但し、偏流板が形成されている円筒部の下端が、横管接続部の基端側開口の上縁よりも下方に垂れ下がる場合を除く)、排水管継手である。
第2の発明は、上端部に形成される上管接続部と下端部に形成される下管接続部とを有する縦筒状の管本体、および管本体から側方に分岐する横管接続部を備え、下管接続部にベンド管が接続される排水管継手であって、管本体の内周面から突出する複数の偏流板を備え、偏流板は、横管接続部の軸中心よりも上方であって、かつ上管接続部に接続される上部立て管の下端よりも下方に配置され、偏流板は、平面視で管本体の軸中心に向かって膨らむ形状を有し、偏流板の上面は、基端中央部が最も高く、突出端に向かって低くなる凸状に形成され、かつ管本体の径方向における偏流板の最大部分の縦断面において凸曲面を有し、偏流板の突出端と下面との境界周縁に所定角度のエッジ部が形成され、エッジ部の所定角度は、直角または鋭角であり、管本体の径方向における偏流板の最大部分の突出長さは、5mm以上25mm以下であり、管本体の径方向と直交する方向における偏流板の最大部分の幅は、10mm以上85mm以下であり、当該排水管継手は、合成樹脂製であって、複数の部材を組み合わせることで構成されている(但し、偏流板が形成されている円筒部の下端が、横管接続部の基端側開口の上縁よりも下方に垂れ下がる場合を除く)、排水管継手である。
【0008】
第1の発明では、排水管継手は、上管接続部および下管接続部を有する縦筒状の管本体と、管本体から側方に分岐する横管接続部とを備える。下管接続部には、ベンド管が接続される。管本体の内周面には、横管接続部の軸中心よりも上方であって、かつ上管接続部に接続される上部立て管の下端よりも下方において、複数の偏流板が設けられる。この偏流板は、平面視で管本体の軸中心に向かって膨らむ形状を有する。また、偏流板の上面は、基端中央部が最も高く、突出端に向かって低くなる凸状に形成される。さらに、偏流板の突出端と下面との境界周縁には、直角または鋭角であるエッジ部が形成される。また、管本体の径方向における偏流板の最大部分の突出長さは、5mm以上25mm以下であり、管本体の径方向と直交する方向における偏流板の最大部分の幅は、10mm以上85mm以下である。さらに、この排水管継手は、合成樹脂製であって、複数の部材を組み合わせることで構成されている。但し、偏流板が形成されている円筒部の下端が、横管接続部の基端側開口の上縁よりも下方に垂れ下がる場合は除かれる。
第2の発明では、排水管継手は、上管接続部および下管接続部を有する縦筒状の管本体と、管本体から側方に分岐する横管接続部とを備える。下管接続部には、ベンド管が接続される。管本体の内周面には、横管接続部の軸中心よりも上方であって、かつ上管接続部に接続される上部立て管の下端よりも下方において、複数の偏流板が設けられる。この偏流板は、平面視で管本体の軸中心に向かって膨らむ形状を有する。また、偏流板の上面は、基端中央部が最も高く、突出端に向かって低くなる凸状に形成され、かつ管本体の径方向における偏流板の最大部分の縦断面において凸曲線を有している。さらに、偏流板の突出端と下面との境界周縁には、直角または鋭角であるエッジ部が形成される。また、管本体の径方向における偏流板の最大部分の突出長さは、5mm以上25mm以下であり、管本体の径方向と直交する方向における偏流板の最大部分の幅は、10mm以上85mm以下である。さらに、この排水管継手は、合成樹脂製であって、複数の部材を組み合わせることで構成されている。但し、偏流板が形成されている円筒部の下端が、横管接続部の基端側開口の上縁よりも下方に垂れ下がる場合は除かれる。
【0009】
第1または第2の発明によれば、偏流板の下面に排水が回り込むことが防止されるので、排水をより適切に偏流させることができる。したがって、排水性能に優れる排水管継手を提供できる。また、管本体の流路断面積が小さくなり過ぎることなく、偏流板によって排水を適切に偏流できる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、偏流板の下面は、略水平面状に形成される。
【0014】
第3の発明においても、偏流板の下面に排水が回り込むことが防止され、排水をより適切に偏流させることができる。
【0017】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明に従属し、管本体の径方向における偏流板の最大部分の突出長さは、管本体の径方向と直交する方向における偏流板の最大部分の幅よりも小さい。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、偏流板の下面に排水が回り込むことが防止されるので、排水をより適切に偏流させることができる。したがって、排水性能に優れる排水管継手を提供できる。
【0021】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明の一実施例である排水管継手を示す正面図である。
【
図3】
図2のIII-III線で切断した排水管継手の縦断面を示す第1縦断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線で切断した排水管継手の縦断面を示す第2縦断面図である。
【
図5】(A)は
図1の排水管継手が備える偏流板を示す平面図であり、(B)は偏流板を示す正面図であり、(C)は(B)のV(C)-V(C)線で切断した偏流板の縦断面を示す縦断面図である。
【
図6】偏流板によって偏流させた排水の流れを模式的に示す図解図である。
【
図7】この発明の他の実施例である排水管継手を示す縦断面図である。
【
図8】
図7の排水管継手の偏流板周辺部分の縦断面を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1および
図2を参照して、この発明の一実施例である排水管継手10は、マンションおよび商業ビル等の多層階の建物において、排水立て管100と排水横管102との合流部分に設けられる集合管継手である。この実施例では、内径が100mmの排水立て管100に対して、内径が75mmの3つの排水横管102を合流させる排水管継手10を例示して説明する。詳細は後述するように、排水管継手10は、管本体12の内周面に旋回羽根30および偏流板32を有し、偏流板32で偏流させた排水を旋回羽根30で旋回させることによって強い旋回流を発生させ、高層の建物にも対応可能な排水能力を発揮する。
【0024】
図1-
図4に示すように、排水管継手10は、縦管状の管本体12を備える。この実施例では、排水管継手10は、鋳鉄などの金属製であって、その表面(内面および外面)にはエポキシ樹脂粉体などの塗装が施されている。
【0025】
管本体12の上端部には、上流側の排水立て管(上部立て管)100が接続される受口形状の上管接続部14が形成される。管本体12の内周面には、上管接続部14の基端部分において周方向に延びる断面略矩形状の環状突起部16が形成されており、この環状突起部16の上に、上管接続部14の内周面に沿うゴム輪18が装着される。管本体12の環状突起部16の内径は、排水立て管100の内径とほぼ同じまたは少し大きい大きさに設定される。
【0026】
管本体12下端部には、下流側の排水立て管(図示せず)が接続される差口形状の下管接続部20が形成される。下管接続部20の内径は、排水立て管100の内径とほぼ同じまたは少し小さい大きさに設定される。ただし、下管接続部20は、受口形状を有していてもよいし、下管接続部20に接続される排水立て管は、ベンド管などであってもよい。
【0027】
また、管本体12は、上管接続部14の下側に、他の部分よりも拡径された拡径部22を有している。この管本体12の拡径部22には、側方に分岐する3つの横管接続部24が周方向に並ぶように形成される。3つの横管接続部24のそれぞれは、受口形状を有しており、各横管接続部24には、内周面に沿ってゴム輪26が装着される。また、拡径部22の内周面には、各横管接続部24の基端側開口の両側に、管本体12の軸方向(上下方向)に沿って延びるリブ状の逆流防止板28が形成される。この逆流防止板28は、排水横管102から管本体12内に流入した排水が横管接続部24を介して他の排水横管102に逆流することを防止する。ただし、逆流防止板28は、必ずしも設けられる必要はない。
【0028】
さらに、管本体12の内周面には、横管接続部24よりも下方において1つの旋回羽根30が設けられる。旋回羽根30は、管本体12の軸方向に対して斜め方向に延びる略平板状に形成される。このような旋回羽根30は、管本体12内を流下する排水に旋回力を
与えて、旋回流を発生させることで排水能力を向上させる。
【0029】
さらにまた、管本体12の内周面には、横管接続部24の軸中心よりも上方(好ましくは横管接続部24よりも上方)であって、かつ上管接続部14に接続される排水立て管(上部立て管)100の下端よりも下方において、周方向に沿って延びる1つの偏流板32が設けられる。この実施例では、偏流板32は、環状突起部16の内周面から突出するように形成される。偏流板32は、排水立て管100から管本体12内に流入した排水を偏流および減速させることによって、排水能力を向上させるものである。以下、偏流板32の構成について具体的に説明する。
【0030】
図2-
図4と共に
図5を参照して、偏流板32は、鏡餅の外縁部を切り取ったような形状を有する。具体的には、偏流板32の突出端32aは、平面視で中央部が管本体12の軸中心に向かって膨らむ凸曲面状に形成され、その上面32bは、基端から突出端32aに向かうに従って低くなる凸曲面状に形成される。すなわち、偏流板32は、上面32bから突出端32a(側面)にかけて全体に丸みを帯びた形状を有している。より具体的には、偏流板32の突出端32aは、平面視で曲率が一定の円弧である凸曲面状に形成され、縦断面においてほぼ下向き(略鉛直方向)に延びる。また、
図5(C)からよく分かるように、偏流板32の上面32bは、管本体12の径方向における偏流板32の最大部分の縦断面において、曲率が一定の円弧である凸曲面状に形成される。
【0031】
また、偏流板32の下面32cは、略水平面状に形成され、偏流板32の突出端32aと下面32cとの境界周縁に所定角度のエッジ部(角部)32dが形成される。エッジ部32dの所定角度は、90度以下、つまり直角または鋭角であることが好ましい。このようなエッジ部32dは、水切り部として作用し、エッジ部32dを直角または鋭角に形成しておくことで、偏流板32の上面32bで受けられた排水が下面32cに回り込むことが防止され、排水を適切に偏流させることができる。
【0032】
偏流板32を形成する周方向位置は、旋回羽根30とずれた位置であれば、つまり旋回羽根30の真上以外であれば特に限定されないが、平面視で旋回羽根30の上端部側の側方にずれた位置に形成することが好ましい。旋回羽根30の上端部側の側方にずれた位置に偏流板32を形成しておくことで、偏流板32によって排水を偏流させる方向と旋回羽根30によって排水を旋回させる方向とが概ね一致するようになり、より適切に旋回流を発生させることができる。
【0033】
偏流板32の大きさは適宜変更可能であるが、管本体12の径方向における偏流板32の最大部分の突出長さXは、管本体12の径方向と直交する方向における偏流板32の最大部分の幅Yよりも小さいことが好ましく、幅Yの2分の1未満であることがより好ましい。その中でも、突出長さXは、5mm以上25mm以下であることが好ましく、幅Yは、10mm以上85mm以下であることが好ましい。また、管本体12の軸方向における偏流板32の最大部分の厚みZは、突出長さXと同程度あることが好ましい。偏流板32が小さ過ぎると、適切に排水を偏流させることができず、偏流板32が大き過ぎると、管本体12の流路断面積が小さくなり過ぎて排水能力が低下する恐れがあるからである。この実施例では、偏流板32の突出長さXは12mmであり、幅Yは50mmであり、厚みZは12mmである。
【0034】
このような偏流板32を備える排水管継手10では、上流側の排水立て管100から管本体12内に流入した排水は、偏流板32によって偏流される。この実施例の偏流板32は、上述のように上面32bから突出端32aにかけて全体に丸みを帯びた形状を有しているので、
図6に示すように、偏流させた排水の流れ方は、丸く広がりを持った滑らかなものとなる。滑らかに流れる排水は、角が立ち難く、泡の発生も抑制される。したがって
、管本体12および排水立て管100内が閉塞することを防止でき、封水の跳ね出し等のトラブルの発生を防止できる。また、直線的に偏流させる場合と比較して、丸く広がった分だけ排水の膜が薄くなるので、管本体12内において空気が上下に流通し易くなり、排水能力を発揮させるのに好適である。
【0035】
また、偏流板32の突出端32aが縦断面において略鉛直方向に延びるので、上面32bで受けられた排水は、突出端32aに沿って流れて下向きに案内される。したがって、偏流板32によって偏流させた排水が横管接続部24に入り込むことを防止できる。
【0036】
さらに、偏流板32は、平面視で中央部が管本体12の軸中心に向かって膨らむ形状を有しているので、偏流板32を大きくし過ぎることなく、管本体12の内周面から離れた位置を流れる排水も偏流させることができる。偏流板32が大きくなり過ぎると、管本体12の流路断面積が小さくなり、空気が上下に流通し難くなるが、偏流板32を平面視で中央部が膨らむ形状とすることで、この不具合が防止され、排水能力が阻害されることもない。
【0037】
以上のように、この実施例によれば、偏流板32の突出端32aを平面視で中央部が膨らむ凸曲面状に形成し、その上面32bを突出端32aに向かうに従って低くなる凸曲面状に形成したので、偏流板32によって偏流させた排水の流れ方は、丸く広がりを持った滑らかなものとなる。これにより、泡の発生が抑制されると共に、排水の膜が薄くなって管本体12内で空気が上下に流通し易くなるので、排水管継手10の排水性能を向上させることができる。したがって、排水性能に優れる排水管継手10を提供できる。
【0038】
なお、上述の実施例では、排水管継手10を鋳鉄などの金属製としたが、排水管継手10は、硬質塩化ビニルなどの合成樹脂によって形成することもできる。また、複数の部材を組み合せることで排水管継手10を構成することもできる。
図7には、合成樹脂製の排水管継手10の一例を示す。合成樹脂製の排水管継手10であっても、基本構成は金属製のものと同じであるので、同様の部分については同じ参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0039】
また、
図7および
図8に示すように、偏流板32の下面32cには、肉盗み部(窪み部)32eを形成することもできる。偏流板32が下面32cに肉盗み部32eを有することによって、材料を少なくすることができ、製造時のひけを防止することができる上、排水の下面32cへの回り込みをより確実に防止できる。
【0040】
また、上述の実施例では、排水管継手10は、周方向に並ぶ3つの横管接続部24を備えるようにしたが、横管接続部24の数は特に限定されず、1つまたは2つ等でも構わない。また、複数の横管接続部24を設ける場合には、必ずしも同じ高さ位置に配置する必要はなく、高さ位置を異ならせて横管接続部24を配置しても構わない。なお、高さ位置を異ならせて横管接続部24を配置する場合には、偏流板32は、最上段の横管接続部24の軸中心よりも上方に配置され、好ましくは最上段の横管接続部24よりも上方に配置される。
【0041】
さらに、上述の実施例では、旋回羽根30および偏流板32をそれぞれ1つずつ設けたが、旋回羽根30を2つ以上設けることもできるし、偏流板32を2つ以上設けることもできる。
【0042】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 …排水管継手
12 …管本体
14 …上管接続部
20 …下管接続部
24 …横管接続部
30 …旋回羽根
32 …偏流板
32a …偏流板の突出端
32b …偏流板の上面
32c …偏流板の下面
32d …偏流板のエッジ部
32e …偏流板の肉盗み部
100 …排水立て管
102 …排水横管