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  • 特許-インサートを有するタフティングツール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】インサートを有するタフティングツール
(51)【国際特許分類】
   D05C 15/22 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
D05C15/22
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022522955
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 SE2020051014
(87)【国際公開番号】W WO2021091451
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】1951277-1
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】516307644
【氏名又は名称】ヴァンドヴィル・スウェーデン・アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Vandewiele Sweden AB
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ボデュアン,シャルル
(72)【発明者】
【氏名】シュテルンフェルト,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ホルムデン,ミーケル
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-106425(JP,A)
【文献】特開2012-31561(JP,A)
【文献】特開2016-172904(JP,A)
【文献】国際公開第2019/013334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05C 1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タフティング機用のインサートを有するタフティングツールを製造する方法であって、
第1材料においてタフティングツールを形成すること(51)と、
インサートがタフティングツールに設けられる、タフティングツールにおける位置に空洞を形成すること(53)と、
空洞を第2材料で充填すること(55)と、ここで第2材料は、粒状材料又はペーストである、
第1材料より硬いインサートを形成するために、空洞に充填された第2材料を溶融すること(57)と、
を備えた、方法。
【請求項2】
溶融することは、レーザービーム又は電子ビームによって行われる、請求項に記載の方法。
【請求項3】
インサートの外面において、溶融された第2材料によって形成されたインサートを有するタフティングツールを機械加工すること(59)をさらに備えた、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
空洞は、0.2-0.8mmの深さである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法
【請求項5】
空洞は、0.3-0.6mmの深さである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法
【請求項6】
第1材料は、焼入れ鋼材料である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法
【請求項7】
第1材料は、非焼入れ鋼材料である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法
【請求項8】
第2材料は、超硬合金、タングステン/ウォルフラムカーバイド、チタン又はクロムのうちの1つ又は複数である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法
【請求項9】
第2材料は、非金属材料である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法
【請求項10】
第2材料は、セラミック材料と組み合わされた結合材料である、請求項に記載の方法
【請求項11】
タフティングツールは、フックである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法
【請求項12】
タフティングツールは、LCL(レベルカットルーパー)フックである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法
【請求項13】
複数のタフティングツール(20)を提供することをさらに備え、複数のタフティングツールがベースブロックに固定されている請求項1から12のいずれか一項に記載の方法
【請求項14】
空洞は材料で過剰充填されている請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タフティング、特にタフティングツールに関する。本開示はまた、タフティングツールを製造する方法、及びタフティングツールモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
タフティング(tufting:房付け)では、テキスタイル(textile)は、一次基布に糸が挿入されるテキスタイルプロセスによって製造される。房状のテキスタイルを製造するために特殊な機械が使用可能である。このような機械は通常、説明された方法で糸を適用するために、及び一次基布に糸を挿入するために、タフティングツールを使用することができる。タフティングツールは通常、鋼材で作製されている。一部の適用では、タフティングツールは、異なる適用向けの機械の再構成を容易にするために、タフティングツールモジュールで提供される。タフティングツールモジュールでは、複数のツールが、並んだ構成で共通の鋳造ボディ部材内に組み込まれている。ループ形成の良好な働き及び房状の織物(fabric)の良好な品質を確保するために、異なるタフティングツールが非常に高い精度で互いに整列されることが不可欠となる。典型的にタフティング機は、2000本の針、フック、ナイフを保持することができ、10分の1ミリメートル、場合によっては百分の1ミリメートルの精度で互いに調和させる必要がある。
【0003】
既知のタフティングツールモジュールは、例えば、US4303024及びUS5860373に記載されている。
【0004】
一部のタフティングツールは、いわゆるインサートを設けている。例えば、タフティング機における織り糸ループをナイフで切断するときに、鋼材で作製されたタフティングツールの刃先では摩滅が存在する。いくつかの織り糸では、この摩滅は過度であり、これらの場合、硬質の金属/材料のインサートが摩滅の起こるタフティングツールにおいて設けられる。硬質の金属/材料は、例えば、タングステン材料であることができる。このインサートは典型的に、ヒーター及びろう付けペーストを使用するろう付けプロセスにより固定される。したがってインサートは、典型的に、タフティングツールにおける摩滅に耐えるために、タフティングツールの残りの部分よりも硬い材料で作製された部品であることができる。
【0005】
既知のインサートは、US 2012/0024208、EP 1 953290Bl、及びUS 4155318に記載されている。
【0006】
タフティング機、及びそのような機械で使用される部品を含むテキスタイル機械を改善することの絶え間ない要望がある。したがって、タフティング機で使用可能な改良されたタフティングツールに関する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、タフティング機を改良すること、特に、改良されたタフティングツール、タフティングツールモジュール、及びタフティングツールを製造する方法を提供することである。
【0008】
この目的及び/又は他のものは、添付の特許請求の範囲に記載されるような、タフティングツール、タフティングツールモジュール、及びタフティングツールを製造する方法によって得られる。
【0009】
認識されているように、ろう付けプロセス又は他の既知のプロセスにより、鋼と硬質金属(hard metal 超硬合金)とを接合する場合、いくつかの問題及び制限がある。例えば、ろう付けプロセスでは、鋼、ろう付けペースト、及び硬質金属は、数百℃まで加熱される。その後、すべての材料は、熱膨張により伸長するが、異なる材料の異なる物理的特性に起因して、鋼は、硬質金属よりもより長く伸長する。そのため、材料が冷えて収縮するときに、鋼材料と硬質金属/材料との間の接合部に、高い張力が組み込まれるというリスクがある。このことは、次に、インサートを形成する硬質金属/材料部品に亀裂を引き起こす可能性がある。
【0010】
さらに、ろう付けプロセス中に、鋼と硬質金属とを接合するために使用されるペーストは、高濃度の希土類金属に起因して高価であり、加熱されたときに危険な煙を放出し、作業者及び環境に有害をもたらす。さらに、ペースト材料は、鋼及び硬質金属よりもはるかに柔らかい。このことは、ろう付けプロセス後でさえ、ろう付け材料の接合部は、摩耗及び引裂しやすくなる。接合部は、通常、0.1-0.2mmの厚さであり、織り糸による摩耗にさらされ、よって硬質金属インサートの鋭いエッジを露出する。この鋭いエッジは、房織り糸の繊維を損傷可能である。
【0011】
タフティングツールにインサートを設けるためのろう付けプロセスに関するさらに別の問題は、ろう付けプロセスを制御することの複雑さに起因して、欠陥部品の不必要な大量廃棄に関するリスクがあるということである。例えば、塗布されるろう付けペースト量が正しくない場合、又はろう付けペーストが毛細管現象により充填されるための硬質金属と鋼との間の隙間が誤っている場合には、接合部に細孔、亀裂、及び空洞を引き起こす可能性がある。
【0012】
インサートを有するタフティングツールを製造するための既知のプロセスの問題を低減又は排除するために、インサートは、鋼材料における、充填される空洞によって形成される。
【0013】
本発明に従い、タフティングツールが提供される。タフティングツールは、タフティング機において使用されるように適合可能である。タフティングツールは、第1材料によって形成されている。タフティングツールは、第2材料のインサートを備え、ここで第2材料は、第1材料よりも硬い。インサートは、第1材料における空洞で、該空洞を充填する第2の、溶融された材料で充填される空洞によって形成される。これにより、インサートを有するタフティングツールは、堅牢かつ効率的な方法で作製可能である。また、本明細書の記述から明らかなように、他の利点も達成することができる。
【0014】
第1材料における空洞は、有利には、深さ0.2-0.8mmの深さ、特に0.3-0.6mmの深さであることができる。
【0015】
タフティングツールが作製される第1材料は、いくつかの実施形態によれば、焼入れ鋼材料であることができる。他の実施形態によれば、第1材料は、焼入れされていない鋼材料である。
【0016】
第2材料は、例えば、超硬合金(Hard metal alloy)、タングステン/ウォルフラムカーバイド、チタン又はクロムのうちの1つ又は複数であることができる。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、第2材料は、非金属材料である。例えば、第2材料は、セラミック材料、CBN立方晶窒化ホウ素又はHPHTダイヤモンド又はCVDダイヤモンドの1つ又は複数と組み合わされた結合材料であることができる。
【0018】
タフティングツールは、いくつかの実施形態によれば、フックであり得る。タフティングツールは、いくつかの実施形態によれば、レベルカットルーパー(Level Cut Looper)、LCL、フックであり得る。
【0019】
本発明はまた、タフティング機用のタフティングツールモジュールに拡張され、ここでタフティングツールモジュールは、上述による複数のタフティングツール、及びベースブロックを備え、ここでタフティングツールは、例えば鋳造によってベースブロックに固定される。
【0020】
本発明はまた、タフティング機用のインサートを有するタフティングツールを製造する方法にも広げられる。この方法は、第1材料においてタフティングツールを形成すること、及びタフティングツールにおいてインサートが設けられる場所でタフティングツールに空洞を形成すること、を備える。該空洞は、第2材料で満たされ、第2材料は、第1材料よりも硬い材料である。第2材料は、粒状の材料又はペーストであることができる。第2材料は、溶解されインサートを形成する。溶融は、レーザービーム又は電子ビームなどの集中されたエネルギーを使用することによって行うことができる。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、その後、インサートの外側は、機械加工される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、空洞を有するタフティングツールの斜視図である。
図2図2は、充填された空洞を有するタフティングツールの斜視図である。
図3a図3aは、充填された空洞を有するタフティングツールの断面図である。
図3b図3bは、充填された空洞を有するタフティングツールの断面図である。
図4図4は、タフティングツールモジュールの斜視図である。
図5図5は、充填された空洞を有するタフティングツールを製造するときに実行されるいくつかのステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、制限するものではない例によって、及び添付の図面を参照して、より詳細に記述されるだろう。
【0024】
以下では、例示的なタフティングツールが記述されるだろう。複数の図において、同じ参照番号は、いくつかの図を通して同一の又は対応する要素を示している。これらの図は、例示のみのためであり、本発明の範囲を制限するものではないことが理解されよう。また、特定の実施ニーズを満たすために、記述された異なる実施形態からの特徴を組み合わせることが可能である。さらに、本明細書の記述において、空洞は、冷却される、溶融された硬質の材料で満たされる。その結果、硬質材料の充填された空洞を有するタフティングツールとなる。硬質材料で充填された空洞は、本明細書ではインサートと呼ばれる。
【0025】
図1では、例示的なタフティングツール20が示されている。タフティングツール20は、図1ではフックであるが、他の実施形態では、インサートを設けることが有利である可能性があるところの、LCLフック又は他のタフティングツールなどの他のタフティングツールを想定可能である。タフティングツール20は、本体22を備える。本体22は、焼入れされた(硬化)又は焼入れされていない(非硬化)鋼材料などの鋼材料で作製可能である。本体22は、通常、1-2.5mmの厚さであることができる。本体22は、そこに形成された空洞23を有する。
【0026】
空洞は、いくつかの例示的な実施形態によれば、約0.2-0.8mmの深さを有することができる。特に、空洞23は、0.3-0.6mmの深さであることができる。空洞23は、本体22を製造するときに形成可能である。例えば、本体22は、放電加工を使用して鋼材料から形成することができる。空洞23は、フライス加工、研削、放電加工、又は他のタイプの機械加工を使用して形成することができる。
【0027】
空洞23は、タフティングツールにおいてインサートが設けられる場所で機械加工される。
【0028】
次に、空洞23は、材料、特に粒状の材料で満たされる。空洞23を満たす材料は、本体22を形成するのに使用される材料よりも硬い。次に、空洞における材料が溶融される。空洞23内の材料は、本体22の材料よりも硬い。空洞23内の材料は、例えば、硬質金属合金(超硬合金)、タングステン/ウォルフラムカーバイド、チタン又はクロム、又はいくつかの他の硬質金属であることができる。いくつかの実施形態によれば、空洞内の材料は、非金属材料である。例えば、空洞内の材料は、セラミック材料、CBN立方晶窒化ホウ素(cubic boron nitride)又はHPHTダイヤモンド又はCVDダイヤモンドの1つ又は複数と組み合わせた結合材料であることができる。
【0029】
図2では、図1のフック20の斜視図が、本体22の空洞における溶融材料24とともに示されている。
【0030】
図3aでは、図2のフック20の前部断面図が、溶融された材料24で空洞が過剰充填されたときの製造状態において示されている。フック20は、本体22の空洞に溶融材料24を有する。図3bでは、図2のフック20の前部断面図は、溶融材料24で過剰充填された空洞が、記述されるように、機械加工されたときの製造状態において示されている。
【0031】
図4では、タフティングツールモジュール10の斜視図が示されている。タフティングツールモジュール10は、上述のように複数のタフティングツール20を備える。タフティングツール20は、ベースブロック12に鋳造される。ベースブロック12は、通常、亜鉛ブロックであることができる。
【0032】
図5では、上の記載に従ってタフティングツールを製造するときに実行されるいくつかのステップを示すフローチャートが示されている。最初に、ステップ51において、タフティングツールの本体が形成される。タフティングツールの本体は、例えば、鋼材料などのいくつかの適切な材料の放電加工によって形成することができる。鋼材料は、例えば、焼入れ鋼又は非焼入れ鋼材料であることができる。次に、ステップ53において、空洞は、本体において機械加工される。空洞の機械加工は、いくつかの実施形態によれば、フライス加工又は研削によって次のステップで行うことができる。空洞の機械加工は、他のいくつかの実施形態によれば、本体が機械加工されるときに同時に行うことができる。次に、ステップ55において、本体よりも硬い硬質材料が空洞に充填される。空洞を充填する材料は、通常、粒状の材料であることができ、又はそれは、セラミック材料又は他の適切な材料と混合された結合材料などのペーストであることができる。粒状材料は、コンピューター制御の経路に沿って走るノズルを介して充填することができる。いくつかの実施形態によれば、空洞は、材料によって過剰に充填される。空洞が充填されると、空洞内の材料は、ステップ57で溶融される。いくつかの実施形態によれば、溶融は、集中エネルギー、例えば、レーザービーム、電子ビーム又は同様のものを使用して実行することができる。次に、粒状材料が溶融され、周囲の鋼よりもはるかに硬い固体材料で空洞を満たす。これにより、異なる特性を有するタフティングツールの領域が形成される。結果として得られるタフティングツールは、異なる特性の組み合わせを有するであろう。刃先の耐摩耗性は、空洞における溶融された粒状材料によって達成され、タフティングツール全体の柔軟性は、周囲の鋼で可能にされる。
【0033】
さらに、粒状材料を溶融するのに必要とされる集中エネルギーは、加熱されるのに必要な領域のみを対象に集中させることができる。結果として、硬質材料の溶融は、インサートを提供するための既存の方法における亀裂又は変形などの不利な点を、典型的に引き起こすことはない。また、ろう付けペーストなどの余分な材料も存在しない。このことは、接合部における細孔、亀裂、空洞などのろう材によって引き起こされる欠点を低減する。
【0034】
空洞における材料が冷却されたとき、インサートは、タフティングツールに形成される。その後、インサートを有するタフティングツールの側面は、ステップ59において機械加工することができる。タフティングツールの意図する形状を提供するために、例えば、平面研削及び/又は輪郭(profile)研削を行うことができる。例えば、切断ナイフと接触している縁は、鋭いエッジを与えられることが可能である。タフティングツールの意図される使用に応じて、さらに他の機械加工も行うことができる。
【0035】
上の記述では、フックが例として示されている。しかしながらインサートは、インサートがLCLフックなどに望まれる、任意のタフティングツールにおいて設けられることが可能である。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5