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特許7474847脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システム、及びその製造方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システム、及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20240418BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240418BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20240418BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240418BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20240418BHJP
   B01J 13/08 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
A61K47/64
A61P25/28
A61P25/00
A61K38/13
A61K9/127
C07K14/00 ZNA
B01J13/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022529787
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2020128748
(87)【国際公開番号】W WO2021098606
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】201911157549.0
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522200317
【氏名又は名称】上海交通大学医学院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JIAOTONG UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE
【住所又は居所原語表記】No. 280, Chongqing South Road, Huangpu District, Shanghai 200025,China
(73)【特許権者】
【識別番号】522200328
【氏名又は名称】上海二医投▲資▼管理有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI SECOND MEDICAL INVESTMENT MANAGEMENT CO. LTD
【住所又は居所原語表記】Room 107, 5th Building, No. 227, Chongqingnan Road, Huangpu District Shanghai 200025, China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】高小玲
(72)【発明者】
【氏名】宋清香
(72)【発明者】
【氏名】江淦
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲楽▼培
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/017034(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104138600(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108451929(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102525935(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/64
A61P 25/28
A61P 25/00
A61K 38/13
A61K 9/127
C07K 14/00
B01J 13/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムであって、前記薬物送達システムは脂質、被送達薬物及び機能性膜透過ペプチドを含み、前記機能性膜透過ペプチドの配列は、末端基がアセチル化されたポリペプチドであるAc-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GAGA-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRRRRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EEEEEDDDDK、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EDDDDK、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GGGERGPPGPQGAARGFZGTPGL-EGGEGGEGG、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GPLGLLGC-EGGEGGEGGのいずれかであることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記機能性膜透過ペプチドと脂質の質量比が1:10~1:300であることを特徴とする、請求項1に記載の脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システム。
【請求項3】
前記機能性膜透過ペプチドと脂質の質量比が1:100である、請求項2に記載の脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システム。
【請求項4】
前記被送達薬物はシクロスポリンA、血管作動性ペプチド、エンケファリン、エンドルフィン、及びニューロテンシンを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システム。
【請求項5】
前記被送達薬物はシクロスポリンAであることを特徴とする、請求項4に記載の脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システム。
【請求項6】
前記シクロスポリンAと脂質の質量比が1:1~1:100であることを特徴とする、請求項5に記載の脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システム。
【請求項7】
脳損傷疾患を治療する薬物の製造における、請求項1に記載の脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムの使用。
【請求項8】
機能性膜透過ペプチドであって、
前記機能性膜透過ペプチドの配列は、末端基がアセチル化されたポリペプチドであるAc-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GAGA-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRRRRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EEEEEDDDDK、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EDDDDK、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GGGERGPPGPQGAARGFZGTPGL-EGGEGGEGG、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GPLGLLGC-EGGEGGEGGのいずれかであることを特徴とする、機能性膜透過ペプチド。
【請求項9】
脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムの製造における、請求項8に記載の機能性膜透過ペプチドの使用。
【請求項10】
請求項5に記載の脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムの製造方法であって、前記製造方法は多段階法又は一段階法を含み、前記多段階法は、
a)希釈誘導沈殿法によってシクロスポリンAの沈殿溶液を形成する工程、
b)シクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造する工程、
c)上記b)で製造されたナノ薬物送達システムの溶液に前記機能性膜透過ペプチドを入れて、機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造する工程を含み、
前記一段階法は、脂質、シクロスポリンA及び機能性膜透過ペプチドに、直接にマイクロ流体制御チップを通させて機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造するものであることを特徴とする方法。
【請求項11】
工程a)では、誘導沈殿法はマイクロ流体制御技術によって実現し、水相及びシクロスポリンAを含有するアルコール相がマイクロ流体制御チップを通ることで流路に沈殿が形成することを特徴とする、請求項10に記載の脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムの製造方法。
【請求項12】
工程b)で製造されるシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムはマイクロ流体制御技術の連続流体技術によって製造され、マイクロ流体制御流路を介して脂質含有相とマイクロ流体制御誘導沈殿法によって製造されたシクロスポリンAの沈殿を自己組織化させることにより、シクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造することを特徴とする、請求項10に記載の脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ生体医用材料技術-ナノ薬物及び薬物送達システムの分野に関し、特に頭蓋脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システム及びその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
外傷性脳損傷(Traumatic brain injury、TBI)は、神経外科においてよく見られる疾患で、その高い死亡率と障害率が患者の家庭に巨大な経済的、及び心理的負担をもたらす。現在、TBIの損傷は、原発性と続発性の2種類に分かれ、原発性損傷は主に外力の作用点で発生する、機械的損傷による脳実質損傷である。しかし、大脳が受ける損害は損傷の瞬間に発生するだけでなく、早期の機械的損傷はよく細胞興奮毒性、血管原性と細胞毒性浮腫、酸欠・虚血、ミトコンドリア機能障害、酸化ストレスや炎症などを含む元の損傷組織の損害を悪化させる続発性損傷のカスケード反応を誘発する。有効な治療手段が欠けているため、多くの脳損傷患者は意識が戻った後、異なる程度の神経機能障害が残り、一方、どのように外傷性脳損傷による神経機能障害を改善するかには、具体的な治療案が欠けている。
【0003】
TBIの神経機能障害の病理生理機序は多面的で複雑で、その核心がカルシウム恒常性の崩壊である。最初に機械的損傷は細胞膜及び細胞骨格エレメントの破壊を引き起こし、内部のカルシウムが増加し、過剰な細胞内におけるカルシウムの刺激によってミトコンドリア膜透過性遷移孔が開いてミトコンドリア膜の透過性が増加し、ミトコンドリアの腫れ、破裂につながり、細胞アポトーシスが生じる;カルシウム恒常性の崩壊も同時にグルタミン酸毒性、腫れ、マトリックスメタロプロテアーゼの大量発現及び炎症性サイトカインの放出を引き起こす。これらのカスケードイベントは最終的に脳実質の細胞アポトーシスにつながる。そのため、ミトコンドリアは細胞内環境の安定状態の維持及び細胞の病理的条件のいずれにおいても重要な役割を担う。近年、ミトコンドリアは続発性損傷のカスケード反応の核心媒体として、TBI後の細胞死及び機能障害を予防する有効な標的と見なされてきた。
【0004】
現在、既に数種類のミトコンドリアを標的とする神経保護性薬物が見出され、中では、シクロスポリンA(cyclosporine A、CsA)に対する研究が多く見られる。CsAは、真菌から単離された11個のアミノ酸を含む中性環状ポリペプチドで、FDAによって免疫阻害剤として承認されて幅広く臓器移植に使用されている。先の研究では、CsAがミトコンドリアのmPTPの開放を阻害してミトコンドリアの機能の完全性を維持し、興奮毒性が媒介するミトコンドリアのカルシウムの摂取及びROSの生成を減少することで、TBI損傷後の脳組織の酸素に対する利用を向上させることを発見して、潜在性のある神経保護薬と見なされ、臨床試験に入った。しかしながら、CsAは水溶性が劣り、血漿タンパク質との結合率が高く、血液脳関門を通過することが困難で、かつ治療域が狭く、経口投与の場合、神経保護作用のため高投与量で投与する必要がある。高投与量と慢性投与の場合、全身のシクロスポリンAのレベルによって例えば、免疫抑制、肝臓毒性や腎臓毒性等の制限的な副作用が生じるため、その臨床応用が制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第一の目的は、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムであって、機能性膜透過ペプチドの修飾により、脳損傷病巣を標的としてミトコンドリアに集中させる効果を果たすシステムを提供することにある。
【0006】
本発明の第二の目的は、脳損傷疾患を治療する薬物の製造における、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムの使用を提供することにある。
【0007】
本発明の第三の目的は、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムを修飾する機能性膜透過ペプチドであって、脳損傷病巣を標的とするペプチドを提供することにある。
【0008】
本発明の第四の目的は、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムにおける、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムを修飾する機能性膜透過ペプチドの使用を提供することにある。
【0009】
本発明の第五の目的は、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムの製造方法であって、被送達薬物はシクロスポリンAで、かつシクロスポリンAは誘導沈殿法によって製造されたものである方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記第一の目的を実現させるために、本発明は、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムであって、前記薬物送達システムは脂質、被送達薬物及び機能性膜透過ペプチドを含み、前記機能性膜透過ペプチドはナノ担体連結末端、アルギニンに富む膜透過ペプチド、マトリックスメタロプロテアーゼ-9感受性ペプチド及びポリアニオン阻害ペプチドのペプチド鎖が共役結合してなることを特徴とするシステムを提供する。
【0011】
一つの好適な形態として、前記機能性膜透過ペプチドの配列は、末端基がアセチル化されたポリペプチドであるAc-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号1)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GAGA-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号2)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号3)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRRRRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号4)、AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EEEEEDDDDK(配列番号5)、 AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EDDDDK(配列番号6)、AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GGGERGPPGPQGAARGFZGTPGL-EGGEGGEGG(配列番号7)、AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GPLGLLGC-EGGEGGEGG(配列番号8)のうちのいずれかで示される。
【0012】
一つの好適な形態として、前記機能性膜透過ペプチドと脂質の質量比が1:10~1:300、好ましくは1:100である。
【0013】
一つの好適な形態として、前記送達薬物はシクロスポリンA、血管作動性ペプチド、エンケファリン、エンドルフィン、ニューロテンシン及びサンディミュンネオーラルを含む。
【0014】
一つの好適な形態として、前記被送達薬物はシクロスポリンAであり、かつシクロスポリンAは誘導沈殿法によって製造されたものである。希釈誘導沈殿技術を利用して脂質ナノ粒子のコアでポリペプチド系薬物であるシクロスポリンAを包んで担持し、ミトコンドリアの修復を行うことにより、現在のシクロスポリンAが有効に脳の病巣に到達することが困難で治療ウィンドウが狭い障害を克服し、比較的に低い投与量(約16分の1の無修飾CsAの投与量に相当する)で脳損傷病巣の周辺の細胞を修復する能力を向上させる。
【0015】
さらに好適な形態として、前記シクロスポリンAと脂質の質量比は1:1~1:100、好ましくは1:4である。
【0016】
上記第二の目的を実現させるために、本発明は、脳損傷疾患を治療する薬物の製造における、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムの使用を提供する。
【0017】
上記第三の目的を実現させるために、本発明は、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムを修飾する機能性膜透過ペプチドであって、前記機能性膜透過ペプチドの配列は、末端基がアセチル化されたポリペプチドであるAc-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号1)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GAGA-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号2)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号3)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRRRRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号4)、AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EEEEEDDDDK(配列番号5)、 AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EDDDDK(配列番号6)、AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GGGERGPPGPQGAARGFZGTPGL-EGGEGGEGG(配列番号7)、AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GPLGLLGC-EGGEGGEGG(配列番号8)であることを特徴とする機能性膜透過ペプチドを提供する。
【0018】
上記第四の目的を実現させるために、本発明は、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムにおける、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムを修飾する機能性膜透過ペプチドの使用を提供する。
【0019】
上記第五の目的を実現させるために、本発明は、脳損傷病巣を標的とする脂質ナノ薬物送達システムの製造方法であって、前記製造方法は多段階法又は一段階法を含み、前記多段階法は以下の工程を含むことを特徴とする方法を提供する:
a)希釈誘導沈殿法によってシクロスポリンAの沈殿溶液を形成する;
b)シクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造する;
c)上記b)で製造されたナノ薬物送達システムの溶液に前記の機能性膜透過ペプチドを入れることにより、機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造する。
【0020】
前記一段階法は、脂質、シクロスポリンA及び機能性膜透過ペプチドに、直接マイクロ流体制御チップを通させて機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造するものである。
【0021】
一つの好適な形態として、工程a)では、誘導沈殿法はマイクロ流体制御技術によって実現し、水相及びシクロスポリンAを含有するアルコール相がマイクロ流体制御チップを通ることで沈殿が形成し、ここで、アルコール相と水相の体積比が好ましくは1:1~1:100で、中でも、好適な比率が1:8である。
【0022】
一つの好適な形態として、工程b)で製造されるシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムはマイクロ流体制御技術の連続流体技術によって製造され、マイクロ流体制御流路を介して脂質含有相とマイクロ流体制御誘導沈殿法によって製造されたシクロスポリンAの沈殿を自己組織化させることにより、シクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造する。
【0023】
前記ナノ担体連結末端とは、脂質ナノ薬物送達システムと連結するためのアミノ酸配列であり、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG(配列番号9)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GAGA(配列番号10)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GG(配列番号11)を含むが、これらに限定されない。
【0024】
前記アルギニンに富む膜透過ペプチドとは、アルギニンに富むアミノ酸配列であり、RRRRRRRRR(配列番号12)、RRRRRRRRRRRRRRRRRR(配列番号13)を含むが、これらに限定されない。
【0025】
前記マトリックスメタロプロテアーゼ-9感受性ペプチドとは、脳損傷部位において特異的に発現量が向上したMMP-9によって加水分解して切断されるアミノ酸配列であり、PVGLIG(配列番号14)、GGGERGPPGPQGAARGFZGTPGL(配列番号15)、GPLGLLGC(配列番号16)を含むが、これらに限定されない。
【0026】
前記ポリアニオン抑制ペプチドとは、酸性アミノ酸に富むアミノ酸配列であり、EGGEGGEGG(配列番号17)、EDDDDK(配列番号18)、EEEEEDDDDK(配列番号19)を含むが、これらに限定されない。
【0027】
前記脂質はレシチン、大豆リン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン、リゾリン脂質、スフィンゴシン、セラミド、スフィンゴリン脂質、セレブロシド、モノシアロテトラヘキソシルガングリオシド及びその誘導体のうちの1つ又は複数である。
【0028】
前記誘導沈殿はマイクロ流体制御技術、逆相マイクロエマルション、塩析でもよい。本願において、マイクロ流体制御技術により、水相及びシクロスポリンAを含有する油相がマイクロ流体制御チップの流路を通ることで沈殿が形成することが好ましい。
【0029】
本発明では、脂質ナノ担体を使用し、希釈誘導沈殿の技術によってコアにCsAを包んで担持して脳部への薬物送達を実現することで、有効にCsAが水に難溶で、かつ血液脳関門を通過することが困難という問題を解決することができる。ナノ担体の脳損傷部位への標的到達を実現させるために、本発明は、さらに、マトリックスメタロプロテアーゼ-9感受性を有する機能性膜透過ペプチドを設計してCsAを担持した脂質ナノ担体を修飾する。当該機能性膜透過ペプチドは、下記のいくつかの部分で構成される:先端のαヘリックスペプチドはナノ担体と機能性膜透過ペプチドを連結する;その後の数個のアルギニンからなるアルギニンに富む膜透過ペプチドは、ナノ担体を細胞に持ち込む;アルギニンのオリゴペプチドの高い正電荷によって細胞に特異性が欠けているため、膜透過ペプチドの後にマトリックスメタロプロテアーゼ-9感受性ペプチドが連結しているように設計することにより、脳損傷部位において特異的に発現量が向上したマトリックスメタロプロテアーゼ-9によって加水分解して切断され、アルギニンに富む膜透過ペプチドが露出し、さらにナノ担体を損傷部位の細胞内に連れ込むことで、脳損傷標的性がある;最後にポリアニオン抑制ペプチドが連結しており、正負電荷の作用で、アルギニンのオリゴペプチドの正電荷が循環の過程で遮断されたままで、機能性膜透過ペプチドの安定性が向上する。
【0030】
本発明の利点は、機能性膜透過ペプチドの修飾により、脳損傷病巣を標的としてミトコンドリアを集中させる効果を果たすことである。希釈誘導沈殿技術を利用して脂質ナノ粒子のコアでポリペプチド系薬物であるシクロスポリンAを包んで担持し、ミトコンドリアの修復を行うことにより、現在のシクロスポリンAが有効に脳の病巣に到達することが困難でウィンドウが狭い障害を克服し、比較的に低い投与量(約16分の1の無修飾CsAの投与量に相当する)で脳損傷病巣の周辺の細胞を修復する能力を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1Aは透過型電子顕微鏡によって観察されたシクロスポリンAで、BはシクロスポリンAを担持していないリポソームの電子顕微鏡における形態で、縮尺:50nmである。Cは異なる量の膜透過ペプチドを含有するリポソームの星状膠細胞への取り込みの違いである。D及びEはシクロスポリンAの投入比率のシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムのナノ構造及び薬物担持量に対する影響である。F及びGは製造時の無水エタノール相と水相のナノ構造に対する影響である。
図2図2は機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システム(GCAP)が初代星状膠細胞に取り込まれ、かつミトコンドリアのマーカーと共局在したことを示す。標尺:50μmである。
図3図3は機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システム(GCAP)の小膠細胞(A)及びニューロン(B)に対する体外保護作用で、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001である。
図4図4は機能性膜透過ペプチドで修飾された脂質ナノ薬物送達システム(GNCP)の脳損傷病巣に対する体内ターゲティング効果で、縮尺:400μmと500μmである。
図5図5は機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システム(GCAP)の脳損傷に対する体内薬効学の評価で、縮尺:500μmである。
図6図6は機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システム(GCAP)のマウスの認知機能に対する改善の評価で、*p<0.05である。
図7図7は機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システム(GCAP)の安全性の評価で、縮尺:100μmである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、具体的な実施形態を合わせて本発明の技術を詳しく説明する。なお、以下の具体的な実施形態は当業者に本発明が理解できるようにするためのもので、本発明に対する制限ではない。
【0033】
実施例1.機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムの製造と特徴付け
【0034】
(1)製造
薄膜水和法によってブランクのリポソームを製造した。2mgのガングリオシド(GM1)を秤取し、2mlのクロロホルム:メタノール=2:1の混合液を入れて溶解させ、1mg/mLのガングリオシドのストック液を調製した。3.6mgの脂質(たとえばDMPC)を500ml丸底フラスコに秤取し、400μlのガングリオシドのストック液を入れ、さらに3mLのクロロホルムを入れ、ロータリーエバポレーターにおいて1h真空吸引した。1mg、2mg及び4mgの異なる質量のシクロスポリンA(CsA)を秤取し、2ml~4mlの無水エタノールを入れて溶解させ、1mg/mlのCsAのストック液を調製した。40μl~4mlのCsAストック液を吸い取り、超純水で4mlに希釈し、CsAポリペプチド沈殿液を調製した。上記脂質薄膜を含有する丸底フラスコに上記で調製されたCsAポリペプチド沈殿液を入れて脂質を水和させ、シェーカーにおいて200rpm、37℃で2h振とうして、薄膜が水和して離脱してCsA固体コアを担持したリポソームを得、水浴において超音波プローブ(出力1%、5min)でさらにリポソームの粒子径を小さくした。0.22μmの親水PTFE針型フィルターで分離・ろ過してGCAのうちのリポソームに包まれなかったCsAポリペプチド沈殿顆粒を除去した。全脂質の重量の1/100で1mg/mlの機能性膜透過ペプチドを、CsA固体コアを担持したリポソームに入れ、シェーカーにおいて200rpm、4℃で一晩培養し、CsA固体コアを担持した機能性膜透過ペプチドで修飾されたリポソーム(GCAP)を製造した。
【0035】
固相ポリペプチド合成法を使用し、機能性ポリペプチドであるAc-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号1)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GAGA-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号2)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号4)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRRRRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号4)、AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EEEEEDDDDK(配列番号5)、AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EDDDDK(配列番号6)、AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GGGERGPPGPQGAARGFZGTPGL-EGGEGGEGG(配列番号7)、AC-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GPLGLLGC-EGGEGGEGG(配列番号8)を合成した。
【0036】
具体的な方法:クロロメチルポリスチレン樹脂に相応するアミノ酸を結合させ、トリフルオロ酢酸の保護下でアミノ基の保護基を脱離させた。その後、フッ化水素で分割し、エーテル氷浴において沈殿させ、アセトニトリルに溶解させた後、回転蒸留し、そしてアセトニトリル-水系でさらに精製した。
【0037】
(2)特徴付け
機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムをリンタングステン酸で5分間ネガティブ染色し、透過型電子顕微鏡によって80kVで形態を観察した。図1に示すように、電子顕微鏡において、CsAを含む機能性膜透過ペプチドで修飾された脂質ナノ薬物送達システム(A)は薬物を担持していない機能性膜透過ペプチドで修飾された脂質ナノ薬物送達システム(B)よりも、外観が丸く整い、粒子径が明らかに大きくなって均一で、分散性が良かったことから、CsA薬物の担持に成功したことが示された。
【0038】
(3)膜透過ペプチドと脂質の比率のスクリーニング
本実施例の工程(1)と同様に膜透過ペプチド(配列番号1)と脂質の比率が1:5、1:10、1:100、1:300及び1:1000のシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造し、そして脂質の膜形成時に赤色蛍光マーカーであるDiI(脂質質量の1%を占める)を添加した。
【0039】
96ウェルプレートにおいて初代星状膠細胞を培養し、上記異なる比率の膜透過ペプチドを含む脂質ナノ薬物送達システムを投与し、37℃で3時間培養した後、3.7%ホルムアルデヒドで10分間固定し、DAPIで核を染色した後、ハイコンテント薬物分析システムによって細胞の各製剤を取り込んだ量を分析し、図1Cに示すように、星状膠細胞が膜透過ペプチドと脂質の比率が1:10~1:300のナノ薬物送達システムを多く取り込み、中でも、1:100が最適な比率である。
【0040】
(4)シクロスポリンAと脂質の比率のスクリーニング
本実施例の工程(1)と同様にシクロスポリンと脂質の比率が1:0.5、1:1、1:4、1:20、1:100及び1:300のシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造し、レーザー粒度計によって各配合の粒子径を分析したところ、1:1~1:100は粒子径が比較的に小さいナノ構造であったことが示された(図1Dに示すように)。高速液体クロマトグラフィーによってシクロスポリンAの封入率を測定したところ、1:1~1:300では、いずれも良い封入率を示したが(図1Eに示すように)、1:300の場合、薬物担持量がわずか約0.27%で、低すぎる薬物担持量は当該配合では後続の体内実験において十分な薬物濃度に満足しないため、1:1~1:100が好適な比率で、中でも、1:4が最適である。
【0041】
(5)無水エタノール相と水相の比率のスクリーニング
本実施例の工程(4)と同様にシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造するとき、シクロスポリンを含む無水エタノール相とリポソーム溶液の水相の比率を1:0.5、1:1、1:4、1:20、1:8、1:100及び1:300とし、レーザー粒度計によって各配合の粒子径及び粒子径多分散指数を分析したところ、1:1~1:100の場合、粒子径が比較的に小さくて均一のナノ構造で(図1F、Gに示すように)、中でも、1:8が最適な比率であった。
【0042】
実施例2.機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムの初代星状膠細胞による取り込み及びミトコンドリアとの共局在
【0043】
(1)製造
実施例1と同様に薄膜水和法によって薬物を担持した一般的なリポソームを製造し、脂質薄膜を製造するときに蛍光色素DiI(20-100μg)を500ml丸底フラスコに入れ、後は実施例1と同様に機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造し、全脂質の重量の1/30及び1/100の比率で1mg/mlの機能性膜透過ペプチド(配列番号3)を、CsA固体コアを担持したリポソームに入れ、シェーカーにおいて200rpm、4℃で一晩培養し、蛍光で標識された機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを得、そして異なる比率の機能性膜透過ペプチドのターゲティング効果に対する影響を評価した。
【0044】
(2)クリーンベンチ内において初代星状膠細胞の抽出を行った。24h内の新生SDラットを取り、エタノール綿で消毒し、頸椎脱臼し、脳正中線に沿って大脳を半分に分け、頭蓋骨及び髄膜を剥ぎ、海馬組織を取り出した。顕微鏡において慎重に血管膜及びほかの付属脳組織を剥離した。取り出された海馬組織を細かく切り、消化液を入れて37℃で10~15min消化させた。消化終了後、消化液を10mlの完全培養液の入った遠心管に移して消化を停止させ、20μlのDNA酵素を入れ、細胞が分散するように軽く吹いて15~20回かき混ぜた。その後、1500rpm、常温で15min遠心分離した。上清を捨て、沈殿を残し、完全培養液を入れ、沈殿を吹いて分散させて均一に混合し、細胞懸濁液を調製した。顕微鏡において計数し、完全培養液で適切な濃度に希釈し、ポリリジンがコーティングされた96ウェルプレートに接種密度が1×10細胞/ウェルになるように接種した。5%CO細胞インキュベーターにおいて、37℃で培養した。
【0045】
初代膠細胞をプレートに接種し、脂質質量が20μg/mlの蛍光プローブDiIを担持した異なる比率の機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを入れ、3時間培養した後、500ng/mlのMMPタンパク質及びミトコンドリア指示薬であるMitotrackerを入れ、PBSで1回洗浄した後、パラホルムアルデヒドで固定した。核を染色した後、細胞に対して共焦点レーザー顕微鏡においてそれに取り込まれた製剤の蛍光強度及びミトコンドリアとの共局在の状況を検出した。
【0046】
結果は図2に示すように、蛍光プローブを担持した機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムはミトコンドリア指示薬であるMitotrackerと高度に共局在したことから、機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムは有効にミトコンドリアに送達することができることが示された。
【0047】
実施例3.体外における機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムの小膠細胞及びニューロンに対する保護作用
【0048】
(1)製造
マイクロ流体制御技術によって機能性膜透過ペプチド(配列番号8)で修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムの製造を最適化した。それぞれ3.6mgのDMPC脂質及び0.4mgのガングリオシドを含む無水エタノール相を40μl~4ml、1mg、2mg及び4mgのシクロスポリンAを含むエタノールを4~10ml、ならびに機能性膜透過ペプチドを含む水相を10ml用意し、流速比を設定し、全流速5ml/minの速度でマイクロ流体制御チップに入らせ、機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを含む溶液を得、透析によって水溶液に置換した後、ろ過した。
【0049】
(2)小膠細胞(BV2細胞)を96ウェルプレート内において培養した。酸欠環境において2h培養し(37℃、5%のCO、95%のN)、培地を、グルコースを含まないアール(Earle’s)平衡塩溶液に交換した。2h後、正常のニューロン培養液に交換し、酸素-グルコース欠乏細胞モデルを構築し、脳損傷後の脳内細胞状態をシミュレーションした。培養液-DMEM、CsA低濃度群2.5μg/ml、CsA高濃度群12.5μg/ml、機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システム(GCAP)低濃度投与群2.5μg/ml及びGCAP高濃度投与群12.5μg/mlを投与し、各濃度に6個の複製ウェルで、3時間投与した。ミトコンドリアを抽出し、細胞を収集し、PBSで1回洗浄し、トリプシンで細胞を消化し、室温で5~10分間遠心分離して細胞を収集した。氷浴で冷却しておいたPBSで軽く細胞沈殿を再懸濁させ、少量の細胞を取って計数に用い、残りの細胞は600gで、4℃で5分間遠心して細胞を沈殿させた。上清を捨てた。1~2.5mlのミトコンドリア分離試薬、あるいは使用直前にプロテアーゼ阻害剤(PMSF)を添加したミトコンドリア分離試薬を2000~5000万の細胞に入れ、軽く細胞を懸濁させ、氷浴に10~15分間置いた。細胞懸濁液をガラス製ホモジナイザーに移し、10~30回程度均質化した。細胞均質化液を4℃、600gで10分間遠心分離した。上清を別の遠心管に移し、4℃、11000gで10分間遠心分離した。慎重に上清を除去し、沈殿が分離された細胞のミトコンドリアであった。調製されたJC-1染色作業液をJC-1染色緩衝液で5倍希釈した。0.9mlの5倍希釈されたJC-1染色作業液に0.1mlの全タンパク質量が10~100μgの精製されたミトコンドリアを入れた。蛍光マイクロプレートリーダーによる検出:JC-1単量体を検出する場合、励起光/放出光を490nm/530nmに、JC-1重合体を検出する場合、励起光/放出光を525nm/590nmにした。
【0050】
NMDA(100μmol/L)及びグリシン(10μmol/L)溶液を初代ニューロンに2h作用させた後、ニューロンの活力が明らかに低下し、NMDA毒性細胞モデルを構築した。細胞毒性評価実験CCK-8によってCsA及びGCAPの投与3時間後の細胞活力を回復させる効果を考察した。37℃において薬物で3時間処理した後、10μlのCCK-8を入れ、波長450nmでマイクロプレートリーダーによって数値を読み取った。
【0051】
結果は図3に示すように、GCAPは、低濃度の場合、顕著にミトコンドリアの膜電位レベルを安定化させ、かつ有効に損傷ニューロンの細胞活力を回復させることができたことから、機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムが小膠細胞及びニューロンに対して保護作用があることが示された。
【0052】
実施例4.機能性膜透過ペプチドで修飾された脂質ナノ薬物送達システム(GNCP)の脳損傷病巣に対する体内ターゲティング効果
【0053】
(1)製造
実施例2と同様に蛍光マーカーDiRを担持した機能性膜透過ペプチド(配列番号1)で修飾された脂質ナノ薬物送達システムを製造した。
【0054】
(2)マウス制御皮質衝撃モデル(CCI)の構築:1)マウスを腹腔から麻酔(5%の抱水クロラール、0.1mL/10g)した後、後頭を脳定位固定装置に固定し、前頭縫合及び右側頭頂骨を露出させ、骨ドリルで前頭縫合点の後方1mmで、矢状縫合の右側に直径が約4mmの骨孔を開け、骨弁を除去し、硬膜を完全に露出させた。2)CCI脳定位固定衝撃装置で衝撃を実施し、パラメーターを、衝撃ヘッド直径3mm、衝撃速度3m/s、衝撃深さ1mm、停留時間85msのように設置した。3)脳定位固定装置の操作アームを調節し、衝撃ヘッドと髄膜表面が密接すると、アラーム音が鳴り、衝撃ボタンを推し、衝撃を行った。4)衝撃終了後、すぐに頭皮を縫合し、マウスを動物集中治療チャンバーに入れ、37℃に維持し、マウスの蘇生を待った。偽手術群(Sham)では、衝撃過程を実施しなかった以外、ほかは同様の麻酔及び手術操作の手順を使用した。
【0055】
小動物生体イメージング実験によるGNCPの体内分布の観察:8匹の健康のC57BL/6オスマウスを取って無作為数字表法によって投与群及び偽手術群に分け、それぞれCCI術後の7日目に尾静脈からDiRで標識された機能性膜透過ペプチドで修飾された脂質ナノ担体を注射した。投与プランは下記の通りである。投与群:GNCP、GNC(投与量はいずれも5mg/kgのDMPCであった)、偽手術群であり;各群のマウスは、投与3h後、麻酔して殺処分し、心臓、肝臓、脾臓、肺臓、腎臓及び脳組織全体を取り出した。生理食塩水で洗浄した後、小動物生体イメージング装置にセットし、画像を採取した。
【0056】
凍結切片による機能性膜透過ペプチドで修飾された脂質ナノ担体の脳組織における分布の観察:健康なC57BL/6オスマウスを無作為で投与群及び偽手術群に分け、それぞれCCI術後の7日目に尾静脈から蛍光標識されたGNCP担体を注射した。投与プランは上記と同様である。投与の3h後、麻酔して殺処分し、大脳全体を取り出し、4%のパラホルムアルデヒドに置き、4℃で24h固定した。固定された脳組織を順に15%及び30%のショ糖-PBSに置いて沈むまで勾配脱水を行い、脱水された脳組織を組織包埋液(O.C.T)で包埋して-20℃で凝固させた。凍結切片機で脳組織を連続的に冠状切片にし、厚さ20μmであった。切片を室温で自然乾燥し、PBSで洗浄した後、100ng/mLのDAPIで光を避けて培養して核を30min染色し、PBSで洗浄し、水を拭き取り、封止液で封じ、光を避けて保存した。共焦点レーザー顕微鏡において切片のデータを採取し、励起光の波長が405nmと568nmであった。
【0057】
結果は図4に示すように、機能性膜透過ペプチドを含むGNCP製剤は機能性膜透過ペプチドを含まないGCPよりも多く脳損傷部位に分布し(A)、かつ周囲の主要な臓器における分布が少なかった(B)。GNCPは損傷側の脳実質における蛍光量が明らかにGNCよりも高かったことから、GNCPナノ担体は損傷部位により集中し(C)、全脳の切片でさらにGNCPの脳損傷病巣における集中が実証された(D)。
【0058】
実施例5.脳損傷に対する機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システム(GCAP)の体内薬効学の評価
【0059】
(1)製造
製造方法は実施例1と同様で、機能性膜透過ペプチドは配列番号1であった。
【0060】
(2)CCIモデルC57BL/6マウス偽手術群(sham)では、生理食塩水を、損傷モデル群(CCI)では、生理食塩水を、CsA溶液群では、20mg/kg/d、GNCP群では、GNCP溶液16mg/kg/d(脂質濃度)を、GCAP群では、GCAP溶液16mg/kg/d(脂質濃度、相応するCsA濃度は:1.26mg/kg/d)を投与した。各群に3匹ずつで、連続して7日投与した。7日後、マウスを麻酔し、0.9%の生理食塩水で灌流した後、さらに4%のパラホルムアルデヒド溶液で灌流して固定し、大脳全体を取り出し、4%のパラホルムアルデヒドにおいて4℃で一晩固定し、ワックスに浸漬し、パラフィンで包埋し、切片し、切片の厚さは5μmであった。
【0061】
グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)抗体による免疫組織化学染色で投与後のCCIモデルマウスの脳内における星状膠細胞の活性化状況が示され、顕微鏡において切片を観測して撮影した。
【0062】
ニッスル染色法(Nissl staining)によって投与後のCCIモデルマウスの脳内ニューロンの病理的変化を検出した。パラフィン切片を脱ろうしてニッスル染色を行い、トルイジンブルー染色液で3min染色し、95%のアルコールで分化し、最後に切片乾燥装置で加熱して乾燥し、中性バルサムで切片を封じた。顕微鏡において切片を観測して撮影した。
【0063】
ミクログリア特異的抗体(IBA1)による免疫組織化学染色で投与後のマウスの脳内の小膠細胞の活性化状況が示され、顕微鏡において切片を観測して撮影した。
【0064】
結果は図5に示すように、GCAPは有効にGFAPで標識された星状膠細胞の活性化(A)及びIBA1で標識された小膠細胞の活性化(C)を低下させ、同時にニューロンの病理的変化に明らかな治療効果があり、損傷側の大脳ニューロンの病理的変化は生理食塩水群よりも明らかに改善され、同時に反対側の正常マウスの海馬及び皮質ニューロンの形態を維持したが、CsA溶液群では、投与の週の後、細胞の配列がまだ乱れ、組織の水腫が明らかであったことから、ニューロンの病理的変化に明らかな抑制及び修復作用がなかった(B)ことが示された。GCAP薬物に対応するCsA薬物濃度は1.26mg/kg/dで、対照の単独CsA製剤群の十六分の一のみであるが、治療効果はより強かった。
【0065】
実施例6.マウスの認知機能に対する機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システム(GCAP)の改善の評価
【0066】
(1)製造
製造方法は実施例1と同様で、機能性膜透過ペプチドは配列番号1であった。
【0067】
(2)CCIモデルC57BL/6マウスを無作為で群を分け、群あたり6匹で、下記のように尾静脈から投与し、連続して14d投与した:偽手術群(sham)では、生理食塩水を、損傷モデル群(CCI)では、生理食塩水を、CsA溶液群では、20mg/kg/d、GNCP群では、GNCP溶液16mg/kg/d(脂質濃度)を、GCAP群では、GCAP溶液16mg/kg/d(脂質濃度、相応するCsA濃度:1.26mg/kg/d)を投与した。
【0068】
モリス水迷路実験:
各群のマウスは、投与の14日後、モリス水迷路によってマウスに対して行動学の訓練及び試験を行った。水迷路は、円形のプール、プラットフォーム及び記録システムの3つの部分からなる。円形のプールは、直径150cm、高さ50cmで、プールはI、II、III及びIVの4つの象限に分かれ、プールに入った水の深さは30cmで、不透明になるように白色の食用二酸化チタンを入れ、水温を25℃程度に維持し、マウスが位置を認識し、そして学習してプラットフォームの位置を記憶するように、プールの周囲に空間参照物を設置して位置を固定した(ドア、カメラ及び壁における標識など)。円柱形の透明のプラットフォームは、直径9cm、高さ28cmで、白い布で覆ってIV象限に置き、平面が水面下2cmに沈んでいた。カメラはプール中央の上方に置き、モリス水迷路動画分析システム2.0によってモニタリングしてマウスが泳いだ軌跡を記録した。行動学の試験の過程において室内が静かで、光線が柔らかくて均一で、各参照物の位置が変わらないようにした。
【0069】
ポジショニングナビゲーション実験:マウスの連続投与の9日目から、5日かかった。毎日の訓練は、ランダム順の原則でそれぞれI、II、III、IV
象限の入水点からマウスをプールの壁に向かうように水に入れ、連続する2日は入水順が異なり、コンピューター動画分析システムによってリアルタイムでモニタリングし、そしてマウスの入水点からの水中で泳いだ軌跡及びプラットフォームまで必要な時間(潜伏時間)などを記録した。各マウスは、毎日4回訓練を受け、毎回の訓練では、潜伏時間を90sとし、マウスが90s内でプラットフォームにたどり着けなかった場合、プラットフォームに誘導する必要があり、そして30s停留させ、その場合の潜伏時間を90sと記した。
【0070】
空間探索実験:5日のポジショニングナビゲーション実験後、6日目にプラットフォームを撤去し、それぞれI、III象限の入水点からマウスをプールの壁に向かうように水に入れ、マウスが60s内でプラットフォームが位置する象限の領域にいた時間の百分率及びマウスがプラットフォームを探索した軌跡とプラットフォームを通過した回数を記録した。
【0071】
結果は図6に示すように、ポジショニングナビゲーション実験の結果から、偽手術群及びGCAP群では、2日目からほかの4群よりも早くプラットフォームにたどり着き(A)、空間探索実験において、マウスのプラットフォーム通過回数(B)、目的プラットフォーム象限停留時間百分率(C)及び水泳軌跡(D)から、偽手術群及びGCAP群では、マウスの探索経路がよりプラットフォームの位置に近かったことが示された。GCAPが脳損傷モデルCCIマウスの空間学習記憶能力に明らかな改善作用があることが示された。
【0072】
実施例7.機能性膜透過ペプチドで修飾されたシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システム(GCAP)の安全性の評価
【0073】
(1)製造
製造方法は実施例1と同様で、機能性膜透過ペプチドは配列番号1であった。
【0074】
(2)モリス水迷路実験終了後、マウスの心臓、肝臓、脾臓、肺臓及び腎臓を取り出し、パラフィンブロックにして切片した。組織・器官の切片に対してHE染色を行い、顕微鏡において観察して撮影した。初歩的にGCAPの体内における安全性を評価した。
【0075】
結果は図7に示すように、ナノ担体が集中しやすい肝臓、脾臓の組織において、肝細胞に混濁腫脹がなく、小葉内に炎症がなく、白脾髄及び赤脾髄の構造が明白で、顕微鏡において見える形態学の変化が現れなかった;分布が少ない心、肺組織において、心筋線維に異常が見られず、肺組織に肺胞の構造が正常であった。腎組織において、糸球体及び尿細管の構造が正常で、顕微鏡において見える形態学の変化が現れなかった。結果から、CCIモデルマウスに尾静脈から連続してGCAPを投与して14日後、外周の主要な組織・器官に明らかな損傷がなかったことがわかる。
【0076】
実施例8.マイクロ流体制御の製造方法
二段階法:7.2mgのDMPC及び0.5mgのシクロスポリンAを秤取し、1mlの無水エタノールを入れて溶解させ、アルコール相に調製した。7mlの超純水は水相であった。エタノール:水の体積比が1:7になるようにマイクロ流体制御チップを通させ、シクロスポリンAを担持したナノ脂質溶液を調製した。得られた脂質ナノ溶液にさらに膜透過ペプチド水溶液を入れ、1:1の体積比でマイクロ流体制御システムを通させてシクロスポリンAを担持したMMP感受性脂質ナノ薬物送達システムを組み立てた(処方1)。製造された処方1に対して分画分子量が10kDaの限外ろ過遠心管で溶媒におけるエタノールを除去し、超純水で2mlまで再懸濁させた。Zetasizerによって光散乱粒子径及びZeta電位を測定した。
【0077】
一段階法:7.2mgのDMPC及び0.5mgのシクロスポリンAを秤取し、1mlの無水エタノールを入れて溶解させ、アルコール相に調製した。40μlの1mg/ml膜透過ペプチド水溶液を取り、6960μlの超純水に溶解させて水相とした(総体積7ml)。エタノール:水の体積比が1:7になるようにマイクロ流体制御チップを通させ、シクロスポリンAを担持したMMP感受性脂質ナノ薬物送達システムを調製した(処方2)。製造された処方1に対して分画分子量が10kDaの限外ろ過遠心管で溶媒におけるエタノールを除去し、超純水で2mlまで再懸濁させた。Zetasizerによって光散乱粒子径及びZeta電位を測定した。
【0078】
結果、処方1、処方2は、粒子径がそれぞれ28.03±2.35nmと29.69±1.92nmで、多分散指数PDIがそれぞれ0.13と0.23で、Zeta電位がそれぞれ-8.26±0.27と-1.36±0.74mVであったことから、二段階法と一段階法のマイクロ流体制御製造技術のいずれを使用しても得られる製剤の粒子径及びその分布に影響が大きくないことが示された。
【0079】
実施例9.機能性膜透過ペプチドの最適化
固相ポリペプチド合成法を使用して、機能性ポリペプチドを合成した。具体的な方法:クロロメチルポリスチレン樹脂に相応するアミノ酸を結合させ、トリフルオロ酢酸の保護下でアミノ基の保護基を脱離させた。その後、フッ化水素で分割し、エーテル氷浴において沈殿させ、アセトニトリルに溶解させた後、回転蒸留し、そしてアセトニトリル-水系でさらに精製した。
【0080】
本実施例8の一段階法と同様に膜透過ペプチドと脂質の比率が1:100のシクロスポリンAを担持した脂質ナノ薬物送達システムを製造し(表1に示すように)、そして脂質の膜形成時に赤色蛍光マーカーDiI(脂質質量の1%を占める)を添加した。機能性ポリペプチドは末端基がアセチル化されたαヘリックス膜透過ペプチドであるAc-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号1)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GAGA-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号2)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号3)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRRRRRRRRRRR-PVGLIG-EGGEGGEGG(配列番号4)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EEEEEDDDDK(配列番号5)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-PVGLIG-EDDDDK(配列番号6)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GGGERGPPGPQGAARGFZGTPGL-EGGEGGEGG(配列番号7)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GPLGLLGC-EGGEGGE GG(配列番号8)及びAc-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG(配列番号9)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GAGA(配列番号10)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GG(配列番号11)、RRRRRRRRR(配列番号12)、RRRRRRRRRRRRRRRRRR(配列番号13)、PVGLIG(配列番号14)、GGGERGPPGPQGAARGFZGTPGL(配列番号15)、GPLGLLGC(配列番号16)、EGGEGGEGG(配列番号17)、EDDDDK(配列番号18)、EEEEEDDDDK(配列番号19)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR-GERGPPGPQGAARGFZGTPGL-EGGEGGEGG(配列番号20)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GSG-RRRRRRRRR(配列番号21)、Ac-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GAGA-RRRRRRRRRRRRRRRRRR(配列番号22)及びAc-FAEKFKEAVKDYFAKFWD-GG-RRRRRRRRRRRRRRRRRR-PVGLIG(配列番号23)であった。
【0081】
レーザー粒度計によってその粒子径及び表面電位を測定した。96ウェルプレートにおいて初代星状膠細胞を培養し、MMP-9(500ng/mL)の存在下でそれぞれ上記異なる膜透過ペプチドを含む脂質ナノ薬物送達システムを入れ、37℃で3時間培養した後、3.7%のホルムアルデヒドで10分間固定し、DAPIで核を染色した後、ハイコンテント薬物分析システムによって細胞の各製剤を取り込んだ量を分析した。結果から、機能性膜透過ペプチド(配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8)を含む脂質ナノ薬物送達システムの細胞に取り込まれた量はいずれも顕著に機能性膜透過ペプチドで修飾されていない処方よりも高かったことが示された。
【0082】
【表1】
【表2】
【0083】
上記は本発明の好適な実施形態に過ぎず、当業者には、本発明の原理を逸脱しない限り、少し改良及び潤色ができ、これらの改良及び潤色も本発明の保護範囲と見なされることに注意されたい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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