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特許7474864故障セルの識別方法、電子機器、及びコンピュータ読み取り可能な媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】故障セルの識別方法、電子機器、及びコンピュータ読み取り可能な媒体
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/08 20090101AFI20240418BHJP
【FI】
H04W24/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022560979
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 CN2021074431
(87)【国際公開番号】W WO2021203810
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】202010284448.6
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza,Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 力
【審査官】齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/034650(WO,A1)
【文献】特表2012-501573(JP,A)
【文献】国際公開第2010/090179(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109963301(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109995599(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第03525507(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0088502(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブネットの各セルの異常寄与度を決定するステップと、
サブネットの各セルの異常寄与度に基づいて、少なくとも1つのセルが故障セルであると決定するステップと、を含み、
各前記セルの異常寄与度は、サブネットの性能指標に異常が発生した場合に、当該セルの性能指標と当該異常との関連度であり、前記サブネットの性能指標に異常が発生することは、サブネットの性能指標が第1閾値範囲を超えることであり、前記サブネットの性能指標は、当該サブネット中の各セルのパラメータ統計量に基づいて決定され、前記セルの性能指標は、当該セルのパラメータ統計量に基づいて決定され、
前記性能指標は、第1パラメータ統計量と第2パラメータ統計量との比である比率型性能指標であり、
各前記セルの異常寄与度は、該セルがサブネットから除去された後に、サブネットの性能指標が除去前のサブネットの性能指標に対して第1閾値範囲内にずれる度合いを表す、
故障セルの識別方法。
【請求項2】
サブネットの各セルの異常寄与度に基づいて、少なくとも1つのセルが故障セルであると決定する前記ステップは、
異常寄与度が正のセルを降順に並べ、Nを1と決定するステップと、
サブネットの性能指標と、スクリーニングすべきシーケンスのうち最初のN個のセルが除去された後のサブネット中の残りのセルの全体の性能指標であるサブネットの一時的な性能指標との差である最適性能指標を決定するステップと、
最適性能指標が第1閾値範囲内にある場合、スクリーニングすべきシーケンスのうち最初のN個のセルを候補セルとして決定し、最適性能指標が第1閾値範囲を超える場合、Nを1増加させ、前記最適性能指標を決定する前記ステップに戻るステップと、
候補セルの少なくとも一部が故障セルであると決定するステップと、を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
候補セルの少なくとも一部が故障セルであると決定する前記ステップは、
各前記候補セルごとに、サブネットの性能指標に異常が発生する前の履歴時刻での当該セルの性能指標である複数の履歴性能指標を決定するステップと、
各前記候補セルごとに、該セルの全ての履歴性能指標のうち第1閾値範囲を超える履歴性能指標が占める割合である履歴異常割合を決定するステップと、
履歴異常割合が第2閾値よりも高いセルを候補セルから除去するステップと、を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
履歴異常割合が第2閾値よりも高いセルを候補セルから除去する前記ステップの後に、
残りの候補セルが存在する場合、残りの候補全てのセルが故障セルであると決定するステップと、
残りの候補セルがない場合、異常寄与度が最大となる最初から1番目の第1所定ビットのセルが故障セルであると決定するステップと、をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
サブネットの各セルの異常寄与度を決定するステップと、
サブネットの各セルの異常寄与度に基づいて、少なくとも1つのセルが故障セルであると決定するステップと、を含み、
各前記セルの異常寄与度は、サブネットの性能指標に異常が発生した場合に、当該セルの性能指標と当該異常との関連度であり、前記サブネットの性能指標に異常が発生することは、サブネットの性能指標が第1閾値範囲を超えることであり、前記サブネットの性能指標は、当該サブネット中の各セルのパラメータ統計量に基づいて決定され、前記セルの性能指標は、当該セルのパラメータ統計量に基づいて決定され、
前記性能指標は数値型性能指標であり、前記数値型性能指標はパラメータ統計量であり、
各前記セルの異常寄与度は、当該セルの性能指標ずれ値とサブネットの性能指標ずれ値との比に基づいて決定され、
各前記セルの性能指標ずれ値は、当該セルの性能指標と予測性能指標との差であり、前記サブネットの性能指標ずれ値は、サブネットの性能指標と予測性能指標との差であり、各前記セルの予測性能指標は、予測された当該セルの性能指標の正常値であり、前記サブネットの予測性能指標は、当該サブネット中の各セルの予測性能指標の和である、故障セルの識別方法
【請求項6】
各前記セルの予測性能指標は、サブネットの性能指標に異常が発生する前の所定時間内の当該セルの性能指標の平均値である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
サブネットの各セルの異常寄与度に基づいて、少なくとも1つのセルが故障セルであると決定する前記ステップは、
前記異常寄与度が正の全てのセルの異常寄与度に基づいて、正の値である第3閾値を決定するステップと、
前記異常寄与度が第3閾値を超えるセルが存在する場合、異常寄与度が第3閾値を超える全てのセルが故障セルであると決定するステップと、
前記異常寄与度が第3閾値を超えるセルがない場合、異常寄与度が最大となる最初から第2所定番目までのセルが故障セルであると決定するステップと、を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第3閾値は、以下の式により計算される、請求項に記載の方法。
第3閾値=異常寄与度が正の全てのセルの異常寄与度の平均値+k*異常寄与度が正の全てのセルの異常寄与度の標準偏差
(ここで、kは0よりも大きい値である。)
【請求項9】
前記第1閾値範囲は、第1閾値範囲の下限、及び/又は、第1閾値範囲の上限を含む、請求項1又は5に記載の方法。
【請求項10】
前記第1閾値範囲は動的閾値検出技術によって決定される、請求項1又は5に記載の方法。
【請求項11】
1つ又は複数のプロセッサと、
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、請求項1~1のいずれか1項に記載の故障セルの識別方法を前記1つ又は複数のプロセッサに実現させる1つ又は複数のプログラムが記憶されたメモリと、
前記プロセッサとメモリとの間に接続され、前記プロセッサとメモリとの情報交換を可能にするように構成される1つ又は複数のI/Oインタフェースと、を含む電子機器。
【請求項12】
前記プロセッサによって実行されると、請求項1~1のいずれか1項に記載の故障セルの識別方法を実現するコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施例は、移動通信ネットワークの技術分野に関し、特に、故障セルの識別方法、電子機器、及びコンピュータ読み取り可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信ネットワーク(例えば、移動ブロードバンドネットワークMBB)において、サブネットの接続率、ドロップコール率、輻輳率、ハンドオーバ成功率、トラフィック、レートなどの性能指標(KPI:Key Performance Indicator)が所定範囲を超える場合、サブネットに異常が発生したとする。サブネット異常は、通常、主に当該サブネット中の1つ又は複数のセルの故障によって引き起こされ、このようなセルは、故障セル、又はtopN不良セルと呼ばれ、通常、様々な性能指標が悪いセルである。
【0003】
そのため、異常を引き起こす故障セルを正確に特定することは、ネットワークの最適化、ユーザエクスペリエンスの改善などにとって非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の実施例は、故障セルの識別方法、電子機器、及びコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様では、本開示の実施例は、
サブネットの各セルの異常寄与度を決定するステップと、
サブネットの各セルの異常寄与度に基づいて、少なくとも1つのセルが故障セルであると決定するステップと、を含み、
各前記セルの異常寄与度は、サブネットの性能指標に異常が発生した場合に、当該セルの性能指標と当該異常との関連度であり、前記サブネットの性能指標に異常が発生することは、サブネットの性能指標が第1閾値範囲を超えることであり、前記サブネットの性能指標は、当該サブネット中の各セルのパラメータ統計量に基づいて決定され、前記セルの性能指標は、当該セルのパラメータ統計量に基づいて決定される、故障セルの識別方法を提供する。
【0006】
第2態様では、本開示の実施例は、
1つ又は複数のプロセッサと、
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、上記いずれかの故障セルの識別方法を前記1つ又は複数のプロセッサに実現させる1つ又は複数のプログラムが記憶されたメモリと、
前記プロセッサとメモリとの間に接続され、前記プロセッサとメモリとの情報交換を可能にするように構成される1つ又は複数のI/Oインタフェースと、を含む電子機器を提供する。
【0007】
第3態様では、本開示の実施例は、
プロセッサによって実行されると、上記いずれかの故障セルの識別方法を実現するコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
【0008】
図面は、本開示の実施例のさらなる理解を提供するために使用され、明細書の一部を構成し、本開示の実施例とともに本開示を解釈するために使用され、本開示の制限を構成するものではない。上記及び他の特徴や利点は、図面を参照して例示的な実施例を詳細に説明することによって、当業者にとってより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施例が適用される移動通信ネットワークの構成の概略ブロック図である。
図2】本開示の実施例におけるアップリンクレート性能指標のリアルタイム値及び第1閾値範囲の概略図である。
図3】本開示の実施例による故障セルの識別方法のフローチャートである。
図4】本開示の実施例による故障セルの別の識別方法のステップの一部のフローチャートである。
図5】本開示の実施例による故障セルの別の識別方法のステップの一部のフローチャートである。
図6】本開示の実施例による故障セルの別の識別方法のステップの一部のフローチャートである。
図7】本開示の実施例による故障セルの別の識別方法の論理プロセス図である。
図8】本開示の実施例による電子機器の構成ブロック図である。
図9】本開示の実施例によるコンピュータ読み取り可能な媒体の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施例の技術案を当業者により良く理解させるために、以下、本開示の実施例による故障セルの識別方法、電子機器、及びコンピュータ読み取り可能な媒体について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
以下、本開示の実施例は、図面を参照してより十分に説明されるが、示される実施例は、異なる形態で具現化されてもよく、本開示に記載された実施例に限定されるものとして解釈されるべきではない。もしろ、これらの実施例を提供する目的は、本開示を明瞭かつ完全にし、当業者に本開示の範囲を十分に理解させることである。
【0012】
本開示の実施例は、正面図及び/又は断面図を参照して、本開示の理想的な概略図を用いて説明することができる。したがって、例示的な図は、製造技術及び/又は許容範囲に応じて修正することができる。
【0013】
本開示の各実施例及び実施例の各特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わされてもよい。
【0014】
本開示で使用される用語は、特定の実施例を説明するためにのみ使用され、本開示を限定することは意図されていない。本開示で使用される用語「及び/又は」は、1つ又は複数の関連する列挙項目のいずれか及び全ての組み合わせを含む。本開示で使用される単数形「1つ」及び「該」は、文脈で別途明確に指摘されない限り、複数形も含むことを意図している。本開示で使用される用語「含む」、「から製造される」は、前記特徴、全体、ステップ、操作、要素、及び/又はコンポーネントの存在を示すが、1つ又は複数の他の特徴、全体、ステップ、操作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。
【0015】
特に限定されない限り、本開示で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。一般的な辞書で限定されているような用語は、関連する技術及び本開示のコンテキストにおけるそれと一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本開示が明示的にそのように限定しない限り、理想的又は過度の形式的な意味を有するものとして解釈されないことも理解される。
【0016】
本発明の実施例は、図面に示す実施例に限定されるものではなく、製造プロセスに基づく構成の変形を含む。したがって、図面に示された領域は概略的な属性を有し、図に示された領域の形状は、要素の領域の具体的な形状を示すものであるが、制限を意図したものではない。
【0017】
名詞の解釈
本開示の実施例において、特に断らない限り、以下の技術用語は、以下の説明に従って理解されるべきである。
【0018】
移動通信ネットワークとは、移動ユーザと固定ユーザとの間、又は移動ユーザ間の通信を可能にするネットワークを指す。移動通信ネットワークは、具体的には、グローバル移動通信ネットワーク(GSM(登録商標))、ユニバーサル移動通信ネットワーク(UMTS)、長期進化技術ネットワーク(LTE)、符号分割多元接続ネットワーク(CDMA)、ニューラジオネットワーク(NR)などであってもよい。
【0019】
セルとは、移動通信ネットワークにおいて独立して制御可能な最小領域を指す。例えば、セルは、1つの基地局によってカバーされる領域であってもよいし、基地局の1つのアンテナによってカバーされる領域などであってもよい。
【0020】
サブネットとは、統合管理のために複数のセルが統合された領域を指し、1つのネットワーク要素機器に対応する複数のセルを含んでもよい。
【0021】
性能指標とは、移動通信ネットワークにおけるパラメータ統計量に基づいて得られ、移動通信ネットワークの性能を表すことのできるパラメータを指す。例えば、性能指標は、接続率、ドロップコール率、輻輳率、ハンドオーバ成功率、トラフィック、レートなどを含んでもよい。
【0022】
パラメータ統計量とは、移動通信ネットワークの動作中に生成されたパラメータの直接統計値を指し、直接統計値に基づいて算出された更なる数値(例えば、比率型性能指標)は含まない。例えば、パラメータ統計量は、トラフィック、レート、接続回数、接続試行回数、ドロップコール回数、通話回数、輻輳回数、データ送信実行回数、ハンドオーバ成功回数、ハンドオーバ試行回数などを含んでもよい。
【0023】
適用環境
本開示の実施例は、移動通信ネットワーク環境で使用される。
【0024】
例示的には、図1に示すように、本開示の実施例が適用される移動通信ネットワークは、無線ネットワーク機器、コアネットワーク機器、ネットワーク機器のネットワーク管理サーバ、ネットワーク性能監視サーバなどを含んでもよい。
【0025】
ここで、本開示の実施例の具体的な演算は、ネットワーク性能監視サーバを介して実行されてもよい。ネットワーク性能監視サーバは、本開示の実施例を実施するために、サブネット及びセルの性能指標関連データをネットワーク機器のネットワーク管理サーバから定期的に取得してもよい。
【0026】
本開示の実施例
移動通信ネットワーク(例えば移動ブロードバンドネットワークMBB)では、主な管理領域はサブネットであり、各サブネットはさらに複数のセルに分割されている。これにより、各サブネットの接続率、ドロップコール率、輻輳率、ハンドオーバ成功率、トラフィック、レートなどの性能指標(KPI)は、実際には、当該サブネット中の全てのセルの性能指標を統合したものである。
【0027】
サブネットのある性能指標が所定範囲を超える場合、その性能指標が著しく不合理であることを示し、つまり、サブネットに異常が発生し、ユーザエクスペリエンスに重大な影響を与える可能性がある。サブネットの異常は、通常、当該サブネット中の1つ又は複数のセルの故障によって引き起こされ、このようなセルは、故障セル、又はtopN不良セルと呼ばれ、通常、様々な性能指標が悪いセルである。
【0028】
そのため、異常を引き起こす故障セルを正確に特定することは、ネットワークの最適化、ユーザエクスペリエンスの改善などにとって非常に重要である。
【0029】
いくつかの関連技術では、故障セルは性能指標の順位で直接決定される。例えば、ドロップコール率の高いセルを直接故障セルとすることができる。しかし、異なるセル間のトラフィック量(例えば通話量)には大きな差があり、トラフィック量の低いセルの性能指標は変動範囲が大きいため、単純な性能指標はしばしばセルの実際の性能を反映することができず、また、セルの性能指標だけでは、サブネット異常を引き起こす実際のセルを分析できるとは限らない。
【0030】
別の関連技術では、性能指標と人為的に設定された絶対回数を故障セルのスクリーニング条件とする。例えば、ドロップコール率を例にすると、作業者(例えば、現場のエンジニアや顧客)は、セルの地理的環境、頻繁に苦情が寄せられる問題などに基づいて、人為的に閾値を設定し、即ち、ドロップコール率が対応する閾値よりも大きく、かつドロップコール率が対応する閾値よりも大きいセルしか故障セルではないと規定する。しかし、この方法は人間の主観的な判断を必要とするので、人為的な要因が大きく、正確性が確保できず、時間がかかるため、汎用性が低い。
【0031】
第1態様では、図3に示すように、本開示の実施例は、ステップS101とステップS102と、を含む故障セルの識別方法を提供する。
【0032】
S101:サブネットの各セルの異常寄与度を決定する。
ここで、各セルの異常寄与度は、サブネットの性能指標に異常が発生した場合に、当該セルの性能指標と当該異常との関連度であり、サブネットの性能指標に異常が発生することは、サブネットの性能指標が第1閾値範囲を超えることであり、サブネットの性能指標は、当該サブネット中の各セルのパラメータ統計量に基づいて決定され、セルの性能指標は、当該セルのパラメータ統計量に基づいて決定される。
【0033】
サブネットのある性能指標に異常が発生した(即ちサブネット全体の性能指標が第1閾値範囲を超える)場合、このときのサブネットの性能指標と当該サブネット中の各セルの性能指標とに基づいて、各セルの異常寄与度、即ち各セルの性能指標とサブネットで発生した当該異常との関連度、言い換えれば、サブネットの各セルが当該異常を引き起こす可能性を決定することができる。
【0034】
もちろん、異なる性能指標について第1閾値範囲も異なり、即ち、各性能指標はそれぞれ対応する第1閾値範囲を有することが理解されるべきである。
【0035】
S102:サブネットの各セルの異常寄与度に基づいて、少なくとも1つのセルが故障セルであると決定する。
【0036】
サブネットの各セルが該異常を引き起こす可能性(異常寄与度)に基づいて、故障セル、つまり実際に該異常を引き起こすセルを特定することができる。
【0037】
もちろん、本開示の実施例の方法は、サブネットに異常が発生した場合について計算されるので、サブネットに異常が発生した場合にリアルタイムで計算することができるが、本開示の実施例の方法はリアルタイムで実行されなければならないわけではないことが理解されるべきである。例えば、サブネットに異常が発生した場合の関連データを保存しておき、後で本開示の実施例のように統一的に処理するようにしてもよい。
【0038】
本開示の実施例では、サブネットの各セルの異常寄与度、即ちサブネットの各セルが該異常を引き起こす可能性は、異常が発生したときのサブネット及びセルの性能指標(又は全てのセルのパラメータ統計量)に基づいて決定する。これによって、本開示の実施例の方式は、単にサブネットの各セルの性能指標自体に基づいて異常寄与度を決定する関連技術と比較して、異常寄与度に基づいて故障セル(即ち、実際に異常を引き起こすセル)をより正確に決定することができ、その後のネットワーク最適化を的確に行い、ユーザエクスペリエンスを改善することに有利である。
【0039】
また、本開示の実施例は、人間の介入を必要とせず、人為的要因に影響されずに、完全自動化方法で実現することができるので、高速、インテリジェントかつ正確である。
【0040】
いくつかの実施例では、第1閾値範囲は、第1閾値範囲の下限、及び/又は、第1閾値範囲の上限を含む。
【0041】
サブネットが異常であるか否かを判断するためによく使用される第1閾値範囲は、上限値及び下限値を含んでもよく、即ち、性能指標が大きすぎても、小さすぎても、異常である可能性がある。例えば、レートが大きすぎたり、小さすぎたりすると、正常ではないことを示す。
【0042】
或いは、第1閾値範囲は、上限値及び下限値のうちの1つのみを含んでもよく、即ち、性能指標は、大きすぎること及び小さすぎることのうちの1つのみによって異常が発生する。例えば、ドロップコール率が所定値よりも大きい場合は明らかに異常であるが、ドロップコール率が最小値0であっても、異常とはみなされない。
【0043】
いくつかの実施例では、第1閾値範囲は、動的閾値検出技術によって決定される。
つまり、上記第1閾値範囲は、動的閾値検出技術(例えば、自動学習holtwintersアルゴリズム)に基づいて算出されたリアルタイム値であってもよい。
【0044】
例えば、図2に示すように、濃い色の線は、アップリンクレート性能指標のリアルタイム値であり、その上下両側の明るい色の領域は、第1閾値範囲の様々な時間における値の範囲であり、このことから、この第1閾値範囲は時間に依存してリアルタイムに変化することが分かる。
【0045】
動的閾値検出技術によって性能指標の正常範囲(第1閾値範囲)を決定するプロセスは、いくつかの関連技術に従って実施されてもよいが、ここでは詳細に説明しない。
【0046】
本開示の実施例の1つの形態として、以下、比率型性能指標が異常である場合に故障セルを特定する具体的な方法を説明する。
【0047】
比率型性能指標とは、2つの異なるパラメータ統計量の比率であり、例えば、パーセンテージであり、即ち、比率型性能指標は、第1パラメータ統計量と第2パラメータ統計量との比である。
【0048】
例えば、比率型性能指標は、接続率、ドロップコール率、輻輳率、ハンドオーバ成功率などを含んでもよい。このような場合、接続率、ドロップコール率、輻輳率、ハンドオーバ成功率に対応する第1パラメータ統計量は、それぞれ、接続回数、ドロップコール回数、輻輳回数、ハンドオーバ成功回数などであり、一方、第2パラメータ統計量は、それぞれ、接続試行回数、通話回数、データ送信実行回数、ハンドオーバ試行回数などである。
【0049】
これにより、i番目のセルの性能指標(比率型性能指標)は以下の式により計算されてもよい。
【0050】
i番目のセルの性能指標=i番目のセルの第1パラメータ統計量/i番目のセルの第2パラメータ統計量。
【0051】
このような場合、各サブネットの性能指標(比率型性能指標)は、当該サブネット中の全てのセルの第1パラメータ統計量と第2パラメータ統計量との比に等しい。即ち、
【0052】
【数1】
【0053】
ここで、nはサブネット中のセルの総数である。
このように、比率型性能指標の場合は、サブネットの性能指標は、当該サブネット中の各セルの性能指標の和ではない。
【0054】
いくつかの実施例では、比率型性能指標の場合、各セルの異常寄与度は、該セルがサブネットから除去された後に、サブネットの性能指標が除去前のサブネットの性能指標に対して第1閾値範囲内にずれる度合いを表す。
【0055】
比率型性能指標の場合、各セルの異常寄与度は、次のことを示している。
サブネットから当該セルを除去した後、サブネット中の残りのセルは新たなサブネットの性能指標を取得し、この新たなサブネットの性能指標が除去前のサブネットの元の性能指標に対して第1閾値範囲内にずれる度合いは当該セルの異常寄与度になる。
【0056】
ここで、「第1閾値範囲内にずれる度合い」とは、除去後の新たな性能指標が除去前の元の性能指標よりも第1閾値範囲に近い場合、ずれ度合いが正(即ち、第1閾値範囲内にずれる)であり、逆に、除去後の新たな性能指標が除去前の元の性能指標よりも第1閾値範囲から離れている場合、ずれ度合いが負(即ち、第1閾値範囲から離れている方向にずれる)である。
【0057】
現在は異常状態であるため、サブネットの現在の性能指標は必ず第1閾値範囲を超える。したがって、上記除去後の新たな性能指標が除去前の元の性能指標よりも第1閾値範囲に近い場合、除去後の新たな性能指標が元の性能指標に対して第1閾値範囲内にずれる度合いは「正の値」であることを示す。即ち、あるセルが除去された後、性能指標は、第1閾値範囲に比較的近く、さらには第1閾値範囲内に入る(即ち正常に偏る)ようになり、それによって、この「除去された」セルの役割は、性能指標を第1閾値範囲から遠ざけることである。したがって、このときの当該セルの異常寄与度は「正の寄与」であり、言い換えれば、当該セルの役割はサブネットに異常を生じさせることである。
【0058】
一方、上記除去後の新たな性能指標が除去前の元の性能指標よりも第1閾値範囲から離れている場合、除去後の新たな性能指標が元の性能指標に対して第1閾値範囲内にずれる度合いは「負の値」であることを示す。即ち、あるセルが除去された後、性能指標は第1閾値範囲からさらに離れている(即ち、異常に偏る)ようになり、それによって、この「除去された」セルの役割は、性能指標を第1閾値範囲に近づけることである。したがって、このときのセルの異常寄与度は「負の寄与」であり、言い換えれば、当該セルの役割はサブネットの異常を回避することである。
【0059】
もちろん、上記除去後の新たな性能指標は元の性能指標に等しい可能性があり、このときの当該セルの異常寄与度は0であり、即ち、当該セルはサブネットに生じた異常に影響を与えないことになる。
【0060】
具体的には、このときのj番目のセルの異常寄与度は次の式により計算されてもよい。
【0061】
【数2】
【0062】
ここで、nはサブネット中のセルの総数であり、Dは異常の方向であり、次のように定義され、
サブネットの性能指標が第1閾値範囲の上限よりも大きい場合、D=1であり、
サブネットの性能指標が第1閾値範囲の下限よりも小さい場合、D=-1である。
【0063】
もちろん、第1閾値範囲が上限及び下限のうちの一方のみを有する場合、性能指標は、1つの方向からのみ第1閾値範囲を超え、したがって、異常方向は一定の値であってもよいことが理解されるべきである。
【0064】
また、異常方向の絶対値も1であるとは限らず、絶対値が同じ正負の2つの値であればよい。
【0065】
以上のアルゴリズムにより、比率型性能指標に異常が発生した場合、セルの異常寄与度は、当該セルの性能指標とパラメータ統計量(例えば回数)のみに基づいて算出されるのではなく、セル自体の第1パラメータ統計量、第2パラメータ統計量、及びサブネット中の他のセルの第1パラメータ統計量、第2パラメータ統計量に基づいて算出される。したがって、この異常寄与度はセルとサブネットの異常との関連度を的確に反映することができ、この異常寄与度に基づいて決定された故障セルもより正確で、より良いネットワーク最適化、ユーザエクスペリエンスの改善効果を実現することができる。
【0066】
図4に示すように、いくつかの実施例では、サブネットの各セルの異常寄与度に基づいて、少なくとも1つのセルが故障セルであると決定するステップS102は、ステップS1021~S1024を含む。
【0067】
S1021:異常寄与度が正のセルを降順に並べ、スクリーニングすべきシーケンスを得て、Nを1と決定する。
【0068】
S1022:サブネットの性能指標と、スクリーニングすべきシーケンスのうち最初のN個のセルが除去された後のサブネット中の残りのセルの全体の性能指標であるサブネットの一時的な性能指標との差である最適性能指標を決定する。
【0069】
S1023:最適性能指標が第1閾値範囲内にある場合、スクリーニングすべきシーケンスのうち最初のN個のセルを候補セルとして決定し、最適性能指標が第1閾値範囲を超える場合、Nを1増加させ、最適性能指標を決定するステップに戻る。
【0070】
S1024:候補セルの少なくとも一部が故障セルであると決定する。
サブネットの各セルの異常寄与度を決定した後、さらに故障セルを決定する必要がある。しかし、以上の異常寄与度は相対値であり、サブネットの各セルと異常との関連度を示すことはできるが、異常寄与度の大きさから具体的に何個のセルを故障セルとすべきかを直接決定することはできない。
【0071】
そのため、異常寄与度が正のセルを選択してスクリーニングすべきシーケンスを構成してもよい。異常寄与度が正のセルのみが異常を引き起こす可能性があり、他のセルは異常を除去する役割を果たすか、異常と無関係であるので、異常寄与度が正のセルのみが故障セルとなりうるためである。
【0072】
その後、異常寄与度の降順でセルの除外を開始し、除外セル数を増やしていき、即ち、1回目は異常寄与度が最大となるセル(N=1)、2回目は異常寄与度の最初の2つのセル(N=2)、3回目は異常寄与度の最初の3つのセル(N=3)を除外するようにする。
【0073】
セルを除外するたびに、サブネットの一時的な性能指標、即ち、除外されたセルを除去した後、サブネットに残った他のセルから構成される「小規模サブネット」が持つ性能指標を計算する。
【0074】
その後、サブネットの性能指標とサブネットの一時的な性能指標との差、即ち、「元のサブネット」の性能指標(全てのセル全体の性能指標)と、現在の数で現在セルを除外した後の「小規模サブネット」の性能指標(即ち、異常寄与度が最大となるN個のセルを除外した後の残りのセル全体の性能指標)との差を最適性能指標として計算する。
【0075】
例えば、N個のセルが除外された場合、最適性能指標は次の式により計算されてもよい。
【0076】
【数3】
【0077】
ここで、nはサブネット中のセルの総数であり、Nは現在除外されているセルの数である。
【0078】
一方、いずれかの除外後、以下の場合に分けて処理を行う。
(1)最適性能指標が上記第1閾値範囲内にない場合、セルをさらに1つ除外し(N=N+1)、最適性能指標を決定するステップ(S1022)に戻り、最適性能指標を再計算する。
【0079】
(2)最適性能指標が上記第1閾値範囲内にある場合、排除プロセスを終了し、現在排除されているN個のセル(即ち、異常寄与度が最大となるN個のセル)を「候補セル」とし、候補セルの少なくとも一部が故障セルであると決定する(S1024)。
【0080】
異常が実際には異常寄与度が正のセルのみによって引き起こされるので、最広域ネットワークが、異常寄与度が正のセル(即ち、スクリーニングすべきシーケンス中の全てのセル)を全て除外したとき、最適性能指標は必ず第1閾値範囲内にあり、即ち、候補セルはせいぜいスクリーニングすべきシーケンス中の全てのセルであることが理解されるべきである。
【0081】
いくつかの実施例では、図5に示すように、候補セルの少なくとも一部が故障セルであると決定するステップS1024は、ステップS10241~S10243を含む。
【0082】
S10241:各候補セルごとに、サブネットの性能指標に異常が発生する前の履歴時刻での当該セルの性能指標である複数の履歴性能指標を決定する。
【0083】
S10242:各候補セルごとに、該セルの全ての履歴性能指標のうち第1閾値範囲を超える履歴性能指標が占める割合である履歴異常割合を決定する。
【0084】
S10243:履歴異常割合が第2閾値よりも高いセルを候補セルから除去する。
以上で決定された候補セルは、異常寄与度だけでは異常を引き起こす故障セルであるが、この場合の候補セルは履歴状態を考慮していない。
【0085】
例えば、場合によっては、性能指標が長期間にわたって悪い状態にある(例えば性能指標が第1閾値範囲を超える場合が多い)セルがあり、このようなセルは「指標品質不良セル」と呼ばれる。指標品質不良セルに対しては、その異常寄与度は通常大きいため、候補セルとして決定され得る。
【0086】
しかし、指標品質不良セルの性能指標は長期間にわたって劣っているが、サブネットはずっと異常が現れておらず、このことは、このときの異常が、むしろ指標品質不良セルによるものではなく、他のセルの性能指標が突然「悪くなった」ことによるものである可能性を示唆している。つまり、最終的に決定された故障セルは、実際には、以上の指標品質不良セルを除外すべきである。
【0087】
そのため、各候補セルについて、サブネットの異常発生前の複数の履歴時刻(複数の履歴時刻の全てが異常発生前の所定時間範囲内であってもよい)での性能指標(履歴性能指標)を統計してもよい。例えば、異常前の5時間内に15分ごとに統計すると、合計20個の履歴時刻での20個の履歴性能指標が得られる。
【0088】
その後、各履歴性能指標が第1閾値範囲を超えるか否かをそれぞれ判断し、即ち、各履歴時刻においてセルの性能指標が悪いか否かを判断する。ここで、上記第1閾値範囲は、固定値であってもよいが、第1閾値範囲が上記リアルタイム値である場合、各履歴性能指標は、対応する履歴時刻での第1閾値範囲と比較されてもよい。
【0089】
いくつかの実施例では、各候補セルの全ての履歴性能指標のうち第1閾値範囲を超える履歴性能指標が占める割合、即ち履歴異常割合を決定してもよい。例えば、あるセルに20個の履歴性能指標があり、そのうち16個が第1閾値範囲を超える場合、そのセルの履歴異常割合は、18/20=90%である。
【0090】
明らかに、あるセルの履歴異常割合が大きいほど、セルの以前の全体的な性能指標が悪く、指標品質不良セルである可能性が高い。したがって、各候補セルの履歴異常割合を所定第2閾値(例えば80%)と比較し、あるセルの履歴異常割合(例えば90%)が第2閾値(例えば80%)よりも大きい場合、その候補セルは長期間にわたって性能指標が悪い指標品質不良セルであると決定され、候補セルからフィルタリングすることができる。
【0091】
以上のようにして、長期間にわたって性能指標が悪いセルをフィルタリングすると、残りの候補セルは、実質的に異常を引き起こす故障セルとなり、このように、より正確な故障セルが得られる。
【0092】
いくつかの実施例では、履歴異常割合が第2閾値よりも高いセルを候補セルから除去するステップS10243の後に、S10244をさらに含む。
【0093】
S10244:残りの候補セルが存在する場合、残りの候補セルの全てが故障セルであると決定し、残りの候補セルがない場合、異常寄与度が最大となる最初から1番目の第1所定ビットのセルが故障セルであると決定する。
【0094】
指標品質不良セルを除外した後、少なくとも1つの候補セルが残っている(即ちフィルタリングされていない)場合、残りの候補セルを直接故障セルとすることができる。
【0095】
しかし、指標品質不良セルを除外した後、残りの候補セルがなくなった場合、以上のフィルタリング過程が合理的でないことを示し、それによって、全てのセル(もちろんフィルタリング前の全てのセル)から直接異常寄与度が最大となる特定のセル(即ち最初から1番目の第1所定ビットのセル)を故障セルとし、例えば、異常寄与度が最大となる3つのセルを故障セル(即ち1番目の第1所定ビットは3ビット)とする。
【0096】
例えば、比率型性能指標の異常について故障セルを決定する具体例を以下に示す。
LTEネットワークのサブネット370801では、2019-12-05 02:15の時刻にセル利用率の性能指標の異常が発生し、即ち、次の表のように、セル利用率が第1閾値範囲の下限を下回ったと仮定する。
【0097】
【表1】
【0098】
ここで、セル利用率は、統計期間内の実際の利用可能時間長と統計期間の合計時間長との比に等しい。異常が発生したときに、実際の利用可能時間長は614700sであり、期間の合計時間長は722700sであることから、このときのセル利用率は0.85056であり、第1閾値範囲の下限を下回っていることが分かる。
【0099】
このような場合、サブネットの各セルの実際の利用可能時間と統計期間の合計時間を取得し、それらの異常寄与度を算出する。セル(210517,210517,12)の場合、このセルの実際の利用可能時間が0sであり、統計期間が900sであると、次のことが得られる。
【0100】
セル(210517,210517,12)の異常寄与度=-1*[614700/722700-(614700-0)/(722700-900)]=0.106055*10-2
【0101】
異常寄与度が0よりも大きいセルを残し、降順に並べると、次のようなスクリーニングすべきシーケンスを得る。
【0102】
【表2】
【0103】
以上のようにして、N=1からセルを除外し、異なる数のセルを除外して得られる一部の最適性能指標は、次のような順序である。
【0104】
.....、0.903225、0.904352、0.90548、.....、0.956639、0.957359、0.958079
66個のセルを除外した後、最適性能指標0.958079は、第1閾値範囲の下限0.957941よりも大きくなり、したがって、候補セルは合計66個得られる。
【0105】
以上の66個の候補セルのうち、一部のセルはセル利用率が0のままであるため、異常寄与度だけでは、これらのセルの異常への寄与を反映することができない。
【0106】
そのため、指標品質不良セルをフィルタリングする必要があり、異常時刻までの一定期間内に、各セルのセル利用率が第1閾値範囲内にない割合が第2閾値(例えば80%)を超えるか否かを判断し、超える場合、候補セルからセルを除去する。
【0107】
これにより、最後に残った候補セルが故障セルであると決定することができる。
さらに、これらの故障セルはほとんど、セル利用率が長期間にわたって悪いものではなく、サブネット異常時やサブネット異常直前の比較的近い時間にセル利用率が突然明らかに悪化したセル、つまり実際に今回のサブネットのセル利用率が第1閾値下限を下回った(今回の異常)セルである場合が多い。
【0108】
本開示の実施例の別の形態として、数値型性能指標が異常である場合に故障セルを特定する具体的な方法を以下に説明する。
【0109】
数値型性能指標はそのままパラメータ統計量であり、パラメータ統計量から計算されるものではない。
【0110】
例えば、数値型性能指標は、レート、トラフィックなどを含んでもよく、これに対応するパラメータ統計量はレート、トラフィックである。
【0111】
もちろん、比率型性能指標を計算するための第1パラメータ統計量と第2パラメータ統計量自体は、接続回数、ドロップコール回数、輻輳回数、ハンドオーバ成功回数、接続試行回数、通話回数、データ送信実行回数、ハンドオーバ試行回数などの数値型性能指標と見なすこともできる。
【0112】
これにより、このときのサブネットの性能指標は、当該サブネット中の全てのセルの性能指標の和に等しくなる。
【0113】
いくつかの実施例では、数値型性能指標について、各セルの異常寄与度は、当該セルの性能指標ずれ値とサブネットの性能指標ずれ値との比に基づいて決定される。
【0114】
ここで、各セルの性能指標ずれ値は、当該セルの性能指標と予測性能指標との差であり、サブネットの性能指標ずれ値は、サブネットの性能指標と予測性能指標との差であり、各セルの予測性能指標は、予測された当該セルの性能指標の正常値であり、サブネットの予測性能指標は、当該サブネット中の各セルの予測性能指標の和である。
【0115】
即ち、性能指標が数値型性能指標である場合、各セルの異常寄与度は以下のように計算されてもよい。
【0116】
予測されたセルの性能指標の「正常値」である予測性能指標をセル毎に設定する。このような場合、サブネット中の全てのセルの予測性能指標の和が、サブネットの予測性能指標、つまり予測されたサブネットの性能指標の「正常値」となる。
【0117】
明らかに、サブネットが異常である場合、サブネットの性能指標は必ずその予測性能指標からずれ(即ち正常値からずれる)、また、サブネット中の少なくとも一部のセルの予測性能指標もその予測性能指標からずれ、即ち、サブネットの性能指標が正常値からずれることは、必然的に、当該サブネット中のセルの性能指標がそれぞれの正常値からずれることに起因する。
【0118】
これにより、セルの性能指標と予測性能指標との差に基づいて、セルの性能指標が正常値からどの程度ずれているかというセルの性能指標ずれ値を得ることができる。また、サブネットの性能指標と予測性能指標との差に基づいて、サブネットの性能指標が正常値からどの程度ずれているかというサブネットの性能指標ずれ値を得ることができる。
【0119】
セルの性能指標ずれ値とサブネットの性能指標ずれ値との比は、サブネットの性能指標ずれに占めるセルの性能指標ずれの割合、言い換えれば、サブネットの性能指標ずれ(即ち異常)がどの程度そのセルによるものであるかを示すものであり、即ちセルの異常寄与度である。
【0120】
いくつかの実施例では、i番目のセルの異常寄与度は、以下の式により計算されてもよい。
【0121】
i番目のセルの異常寄与度=(i番目のセルの性能指標-i番目のセルの予測性能指標)/(サブネットの性能指標-サブネットの予測性能指標)。
【0122】
もちろん、セルとサブネットの性能指標がそれぞれの予測性能指標(正常値)からずれる方向が異なる(大きい場合と小さい場合がある)ので、以上で算出した異常寄与度も正、負、ゼロになることは理解されるべきである。
【0123】
このような場合、セルの異常寄与度が正であれば、セルは異常に対して「正の寄与」をしている、言い換えれば、セルの役割はサブネットに異常を生じさせることであることを示している。
【0124】
セルの異常寄与度が負であれば、セルが異常に対して「負の寄与」をしている、言い換えれば、セルの役割はサブネットに異常が生じないようにすることであることを示している。
【0125】
セルの異常寄与度が0であれば、セルはサブネットの異常に影響しないことを示している。
【0126】
いくつかの実施例では、各セルの予測性能指標は、サブネットの性能指標に異常が発生する前の所定時間内の当該セルの性能指標の平均値である。
【0127】
つまり、利用可能なサブネットに異常が発生するまでの所定期間内のセルの性能指標の平均値は当該セルの予測性能指標とする。例えば、異常発生前15日間の、異常発生時と同じ時間帯におけるセルの性能指標の平均値を、セルの予測性能指標としてよい。
【0128】
このような場合、サブネットの予測性能指標は、実際には、上記時間内のサブネットの性能指標の平均値でもある。
【0129】
もちろん、経験的に人為的に設定するなどの方法を用いてサブネットの各セルの予測性能指標を決定することも可能であることは理解されるべきである。
【0130】
いくつかの実施例では、図6に示すように、サブネットの各セルの異常寄与度に基づいて、少なくとも1つのセルが故障セルであると決定するステップS102は、ステップS1025とステップS1026を含む。
【0131】
S1025:異常寄与度が正の全てのセルの異常寄与度に基づいて、正の値である第3閾値を決定する。
【0132】
S1026:異常寄与度が第3閾値を超えるセルが存在する場合、異常寄与度が第3閾値を超える全てのセルが故障セルであると決定し、異常寄与度が第3閾値を超えるセルがない場合、異常寄与度が最大となる最初から2番目の所定ビット分のセルが故障セルであると決定する。
【0133】
前述のように、サブネットの各セルの異常寄与度は、当該セルと異常との相関度を示す相対値に過ぎず、サブネットの各セルの異常寄与度そのものだけでは、何個のセルを故障セルとすべきかを直接決定することはできない。
【0134】
そのため、異常寄与度が正の全てのセル(即ち、異常を引き起こす可能性のある全てのセル)の異常寄与度に基づいて第3閾値を算出し、異常寄与度が該第3閾値を超えるセル(存在する場合)が故障セルであると決定してもよい。
【0135】
もちろん、実際に異常寄与度が第3閾値を超えるセルがない場合、異常は複数のセルの普遍的な問題に起因していると考えられ、異常寄与度が最大となる特定のセル(即ち、最初から2番目の所定ビット分のセル)のセル(即ち、全てのセル)を直接故障セルと決定することができ、例えば、異常寄与度が最大となる10個のセル(即ち、2番目の所定ビットは10ビット)を故障セルとして選択することができる。
【0136】
いくつかの実施例では、第3閾値は、以下の式により計算される。
第3閾値=異常寄与度が正の全てのセルの異常寄与度の平均値+k*異常寄与度が正の全てのセルの異常寄与度の標準偏差。
【0137】
ここで、kは0よりも大きい値である。
具体的な形態としては、異常寄与度が正の全てのセルの異常寄与度の平均値と標準偏差を求め、平均値に一定の倍数の標準偏差を加算したものを上記第3閾値としてもよい。
【0138】
例えば、異常寄与度が上記平均値に3倍の標準偏差を加算したもの(即ちk=3)を超えるセルを故障セルとすることができる。
【0139】
もちろん、上記第3閾値のアルゴリズムは例示的なものにすぎず、その具体的な計算方法は異なっていてもよいことが理解されるべきである。例えば、第3閾値は、異常寄与度が正の全てのセルの異常寄与度の平均値に等しくてもよい。
【0140】
例えば、数値型性能指標の異常について故障セルを決定する具体例を以下に示す。
あるLTEネットワークのサブネット370400において、2019-12-09 21:00の時刻で、ユーザープレーンのアップリングデータ量の数値型性能指標が異常であると仮定する。
【0141】
まず、サブネットの各セルの異常寄与度を以上のように計算し、正の異常寄与度を残して順位付けすると、以下の結果が得られる。
【0142】
【表3】
【0143】
さらに、以上の異常寄与度が正のセルの異常寄与度の平均値と標準偏差を決定し、即ち、以下を決定する。
【0144】
第3閾値=平均値+3*標準偏差=0.018652。
これにより、異常寄与度が0.018652を超えるセルを故障セルとしてもよい。
【0145】
本開示の実施例では、数値型性能指標と比率型性能指標とに異常が発生した場合に、故障セルを決定する具体的なアルゴリズムが異なることが分かる。
【0146】
したがって、図7に示すように、論理的には、本開示の実施例では、サブネットの性能指標が異常であるか否かを判断するために、サブネットの性能指標を取得する必要があり、異常が発生した場合、第1閾値範囲を超える性能指標が数値型性能指標であるか、比率型性能指標であるかを判断してから、対応する方法で処理する。
【0147】
このうち、数値型性能指標と比率型性能指標に対応するアルゴリズムの違いは、主に次のとおりである。
【0148】
(1)セルの異常寄与度の計算方法が異なる。これは、サブネットの比率型性能指標が、当該サブネット中の各セルの比率型性能指標の和に等しくないため、各セルの比率型性能指標を加算することで計算できないためである。
【0149】
(2)数値型性能指標の異常に対応する計算には、「指標品質不良セル」をフィルタリングするステップは含まれていない。これは、数値型性能指標に対する異常寄与度算出過程では、セルの履歴性能指標(予測性能指標)が考慮されているのに対し、比率型性能指標に対する異常寄与度算出過程では、異常時の各セルのデータのみが考慮されているため、数値型性能指標に異常が発生した場合、履歴的に性能指標が悪かったセル(指標品質不良セル)を別途フィルタリングする必要がなくなる。
【0150】
このように、本開示の実施例では、数値型性能指標と比率型性能指標のそれぞれについて、故障セルを決定するための異なる具体的なアルゴリズムが提案されており、それぞれのアルゴリズムは対応する性能指標に特に適用され、それによって、様々な性能指標に対して、正確な故障セルを得ることができる。
【0151】
また、本開示の実施例は、人間の介入を必要とせず、人為的要因に影響されずに、完全自動化方法で実現することができるので、高速、インテリジェントかつ正確である。
【0152】
第2態様では、図8に示すように、本開示の実施例は、
1つ又は複数のプロセッサと、
1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、上記いずれかの故障セルの識別方法を1つ又は複数のプロセッサに実現させる1つ又は複数のプログラムが記憶されたメモリと、
プロセッサとメモリとの間に接続され、プロセッサとメモリとの情報交換を可能にするように構成される1つ又は複数のI/Oインタフェースと、を含む電子機器を提供する。
【0153】
その中で、プロセッサはデータ処理能力を有するデバイスであり、中央処理装置(CPU)などを含むが、これに限定されない。メモリはデータ記憶能力を有するデバイスであり、ランダム・アクセス・メモリ(RAM、より具体的には、SDRAM、DDRなど)、読み取り専用メモリ(ROM)、充電消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ(FLASH)を含むが、これらに限定されない。I/Oインタフェース(読み書きインタフェース)はプロセッサとメモリの間に接続され、メモリとプロセッサの情報交換を可能にし、データバス(Bus)などを含むが、これに限定されない。
【0154】
第3態様では、図9に示すように、本開示の実施例は、プロセッサによって実行されると、上記いずれかの故障セルの識別方法を実現するコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
【0155】
当業者であれば、上記で開示されたステップの全部又は一部、システム、装置の機能モジュール/ユニットが、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、及びそれらの適切な組み合わせとして実装されてもよいことを理解できる。
【0156】
ハードウェアの実施形態では、上記説明に記載された機能モジュール/ユニット間の区分は、必ずしも物理的な構成要素の区分に対応するものではなく、例えば、1つの物理コンポーネントが複数の機能を有していてもよいし、複数の物理コンポーネントが協働して1つの機能又はステップを実行していてもよい。
【0157】
物理コンポーネントの一部又は全ては、中央処理装置(CPU)、デジタル信号処理装置又はマイクロプロセッサなどのプロセッサによって実行されるソフトウェアとして、又はハードウェアとして、又は特定用途向け集積回路のような集積回路として実装され得る。このようなソフトウェアは、コンピュータ記憶媒体(又は非一時的媒体)及び通信媒体(又は一時的媒体)を含むことができるコンピュータ読み取り可能な媒体上に配布することができる。当業者に周知のように、コンピュータ記憶媒体という用語は、情報(例えばコンピュータ読み取り可能な指令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータ)を記憶するための任意の方法又は技術において実装される、揮発性及び不揮発性の、取り外し可能な、及び取り外し不可能な媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、ランダム・アクセス・メモリ(RAM、より具体的には、SDRAM、DDRなど)、読み取り専用メモリ(ROM)、充電消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ(FLASH)、又は他の磁気ディスクメモリ;読み取り専用コンパクトディスク(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、又はその他の光ディスクストレージ;磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置;所望の情報を記憶するために使用され、コンピュータによってアクセスされることができる他の任意の媒体を含むが、これらに限定されない。さらに、当業者に周知のように、通信媒体は、通常、コンピュータ読み取り可能な指令、データ構造、プログラムモジュール、又は搬送波や他の送信機構のような変調データ信号中の他のデータを含み、任意の情報配信媒体を含んでもよい。
【0158】
本開示の実施例では、異常が発生した場合のサブネット及びセルの性能指標(言い換えれば、全てのセルのパラメータ統計量)に基づいて、サブネットの各セルの異常寄与度、即ち、サブネットの各セルが該異常を引き起こす可能性を決定する。これにより、本開示の実施例の方式は、単にサブネットの各セルの性能指標自体に基づいて異常寄与度を決定する関連技術と比較して、異常寄与度に基づいて故障セル(即ち、実際に異常を引き起こしたセル)をより正確に決定することができ、その後のネットワーク最適化を的確に行い、ユーザエクスペリエンスを改善することに有利である。
【0159】
また、本開示の実施例は、人間の介入を必要とせず、人為的要因に影響されずに、完全自動化方法で実現することができるので、高速、インテリジェントかつ正確である。
【0160】
本開示は、例示的な実施例を開示しており、特定の用語を使用しているが、それらは、一般的な例示的意味としてのみ使用され、解釈されるべきであり、限定の目的では使用されない。いくつかの実施例では、当業者にとって明らかなように、特に断らない限り、特定の実施例と組み合わせて説明される特徴、特性、及び/又は要素は、単独で使用されてもよく、又は他の実施例と組み合わせて説明される特徴、特性、及び/又は要素と組み合わせて使用されてもよい。したがって、当業者が理解できるように、添付の特許請求の範囲によって明らかにされた本開示の範囲をずれることなく、様々な形態及び詳細の変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9