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特許7474874板状加工物から加工物部品を生成するための方法、並びにデータ処理プログラム、及び前記加工物部品を生成するための加工機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】板状加工物から加工物部品を生成するための方法、並びにデータ処理プログラム、及び前記加工物部品を生成するための加工機
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20240418BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20240418BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B23K26/70
B23K26/38 A
B23K31/00 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022572463
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2021064355
(87)【国際公開番号】W WO2021239952
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】20177122.7
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン エス・エー プルス コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Werkzeugmaschinen SE + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, 71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ラウシャー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ライヒレ
(72)【発明者】
【氏名】デニス ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】グイド シェーンハルト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブンツ
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501886(JP,A)
【文献】特開平10-146671(JP,A)
【文献】特開2005-319969(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088494(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/70
B23K 26/38
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機(11)、特にレーザ加工機において板状加工物(12)から加工物部品(14)を生成するための方法であって、
前記板状加工物(12)は、加工物支持体(15)上に位置決めされて、クランプ装置(20、21、22、23)によって前記加工物支持体(15)に対して保持され、
複数の加工物部品(14)は、加工ビーム(13)を用いて前記板状加工物(12)から切り出され、
前記加工ビーム(13)は、加工ヘッド(25)によって前記加工物支持体(15)に対して移動され、及び/又は前記板状加工物(12)は、前記クランプ装置(20、21、22、23)によって前記加工物支持体(15)に対して移動され、
前記板状加工物(12)を加工して前記加工物部品(14)を生成するための切断工程は、前記板状加工物(12)のための弛緩ステップによって少なくとも1回中断され、
前記弛緩ステップ中に、少なくとも1つのクランプ装置(20、21、22、23)は、前記板状加工物(12)を弛緩させるために解除され、前記板状加工物(12)の前記弛緩に続いて、前記切断工程が継続される前に、前記少なくとも1つのクランプ装置(20、21、22、23)が閉じられる、
方法。
【請求項2】
前記板状加工物(12)を加工するための前記切断工程中の弛緩ステップの数は、前記板状加工物(12)から生成すべき加工物部品(14)の数、前記板状加工物(12)の材料厚さ、前記加工物部品(14)の大きさ及び/又は前記加工ビーム(13)の出力に応じて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記切断工程は、加工物部品(14)を完全に切断するための切断ステップの後であって、後続の加工物部品(14)を切断するための次の切断ステップの開始前の、前記弛緩ステップのために中断される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記板状加工物(12)は、複数のクランプ装置(20、21、22、23)によって側縁部(24)に沿って保持され、前記板状加工物(12)の部分領域の前記弛緩のために、前記側縁部(24)に沿った前記クランプ装置(20、21、22、23)は外側から内側に次々と解除され、前記複数のクランプ装置(20、21、22、23)の少なくとも2つは閉じたままであり、前記板状加工物(12)は固定して保持され、その後、前記板状加工物(12)の前記部分領域の前記弛緩に続いて、開いたクランプ装置(20、21、22、23)は内側から外側に再び閉じられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記板状加工物(12)は、3つのクランプ装置(20、21、22)によって側縁部(24)に沿って保持され、前記板状加工物(12)の前記弛緩のために、まず、1つの外側クランプ装置(20;22)が開閉され、その後、反対側の外側クランプ装置(22;20)が開閉される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記板状加工物(12)は、4つ以上のクランプ装置(20、21、22、23)によって側縁部(24)に沿って保持され、前記板状加工物(12)の前記弛緩のために、まず、前記板状加工物(12)の一方の半部における外側クランプ装置(23)が開かれ、続いて、前記外側クランプ装置(23)に隣接する少なくとも1つの内側クランプ装置(22)が開かれ、2つのさらなるクランプ装置(20、21)又は前記開いたクランプ装置(22、23)と反対側にある前記板状加工物の他方の半部からの前記クランプ装置は閉じたままであり、その後、まず、前記内側クランプ装置(22)、次いで、さらに外側の前記クランプ装置(23)が閉じられ、この動作は、前記板状加工物(12)の反対側で繰り返される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記板状加工物(12)の材料厚さが4mm以下である場合の弛緩ステップの数は、前記板状加工物(12)の材料厚さが4mm以上である場合よりも多い、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
500mmを超える辺長さを有し、及び/又は周囲の矩形の前記辺長さの互いに対する比が2:1よりも大きい細長い形状を有する、加工物部品(14)を切断する動作前及び/又は後に、弛緩ステップは実行される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記板状加工物(12)から生成すべき前記加工物部品(14)は、行(41)と列(42)で組み込まれており、前記クランプ装置(20、21、22、23)に隣接する行を形成する加工物部品(14)の前記切断工程中に、少なくとも1つの弛緩ステップは、少なくとも2つの加工物部品の最終的な切断に続いて実行される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記板状加工物(12)は、クランプ装置(20、21、22、23)によって側縁部(24)に沿って保持され、前記クランプ装置(20、21、22、23)から離れた前記板状加工物(12)の半部に、特に、前記クランプ装置(20、21、22、23)から離れた前記板状加工物(12)の3分の1に位置する加工物部品(14)を切断する工程は、弛緩ステップなしに実行される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
加工物支持体(15)と、前記加工物支持体(15)上に位置決めされた板状加工物(12)を把持するためのクランプ装置(20、21、22、23)と、加工ヘッド(25)を通して前記板状加工物(12)上に導かれる加工ビーム(13)を生成するためのビーム源(36)とを備えた加工機、特にレーザ切断機の機械コントローラ用のデータ処理プログラムであって、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法を実行するための機械は、データ処理プログラムによって作動させることができる、データ処理プログラム。
【請求項12】
加工物支持体(15)と、前記加工物支持体(15)上に位置決めされた板状加工物(12)を把持するためのクランプ装置(20、21、22、23)と、加工ヘッド(25)を通して前記板状加工物(12)上に導かれる加工ビーム(13)を生成するためのビーム源(36)とを備えた、前記板状加工物(12)から加工物部品(14)を生成するための加工機であって、前記加工物部品(14)は、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法に従って、前記板状加工物(12)から生成することができる、加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工機において板状加工物から加工物部品を生成するための方法、並びに加工機のコントローラ用のデータ処理プログラム、及び板状加工物から加工物部品を生成するための加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)では、加工機、特にレーザ切断機が開示されている。この加工機は、加工物支持体と、加工物支持体上に位置決めされた板状加工物を把持するための複数のクランプ爪とを有する。さらに、加工ビームを生成するためのビーム源が設けられる。加工ビームは、板状加工物から加工物部品を切り出すために、加工ヘッドを用いて板状加工物上に導かれる。加工物部品を生成するために、好ましくは、レーザビームが使用される。この加工機の場合には、板状加工物が、加工物支持体上をX軸線に沿って移動可能であり、加工ヘッドが、加工物支持体に対して加工物支持体の上方をY軸線に沿って移動可能であることが実現される。
【0003】
(特許文献2)では、加工物部品を生成するための、板状加工物から加工物部品を切り出す及び/又は打ち抜くためのさらなる加工機が開示されている。この加工機では、異なる機械概念が提供される。加工ビームを照射するための加工ヘッドは、静止しており、板状加工物は、クランプ装置によって加工物支持体に沿ってX及び/又はY方向に移動される。
【0004】
代替的に、板状加工物が、前記加工物支持体上に載置されて保持され、加工ヘッドが、加工物支持体の上方をX及びY軸線に沿って加工物支持体に対して移動可能である、機械概念も知られている。
【0005】
加工ビーム、特にレーザビームを用いて加工物部品を生成するための板状加工物の加工中に、切断工程による入熱に起因して板状加工物に歪みが生じ得る。これにより、板状加工物がカールし得る。次に、これにより、切断すべき加工物部品が、切断工程中に突然に跳ね上がるか又は跳ね下がることがあり、いわゆる不完全な切断動作が生じる。このことは、加工物部品が板状加工物又は薄板骨格から完全に分離されず、もはや加工物部品を板状加工物から取り外すことができないことを意味する。そのような不完全な切断動作が生じなくても、切断された加工物部品を板状加工物から取り外すことができないので、板状加工物の歪みが生じることがある。
【0006】
(特許文献3)では、レーザビームを用いて板金素材を生成するためのレーザ切断装置が開示されている。レーザ切断装置には、コイルから金属板が供給され、前記金属板は、応力のない状態で延伸装置を用いて変形させる。金属板を形成する金属の降伏点を超えるように引張応力が加えられた、前記延伸された金属板は、次に、板金素材を切断するためにレーザ切断装置に供給される。したがって、延伸された金属板が切断工程に供給される。切断工程中に、金属板は、多くても1つのクランプ装置によって保持されるか、又は金属板の切断中に、クランプ装置のクランプ接続が、解除されることさえある。
【0007】
しかしながら、板状加工物からの加工物部品の寸法的に安定した生成のために、加工機の加工物支持体上の載置平面での板状加工物の回転が防止されるように、板状加工物をクランプしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2015/091347号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第2008736号明細書
【文献】独国特許出願公告第102015217015号明細書
【文献】独国特許出願公開第102011051170号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、板状加工物への入熱によって生じる歪みを低減するために、板状加工物から加工物部品を生成するための方法、並びにデータ処理プログラム、及び加工機を提案するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、板状加工物から加工物部品を生成するための方法によって達成され、板状加工物を加工して加工物部品を生成するための切断工程は、弛緩ステップによって少なくとも1回中断され、弛緩ステップ中に、少なくとも1つのクランプ装置は、板状加工物を弛緩させるために解除され、板状加工物の弛緩に続いて、切断工程が継続される前に、少なくとも1つの解除されたクランプ装置が再び閉じられる。この方法は、具体的には、少なくとも1つの弛緩ステップを実行するための、切断工程の短時間の中断によって、加工機の生産力が僅かな程度しか低下しないことを可能にする。しかしながら、これにより、切断ビーム、特にレーザビームによる入熱、前記入熱は、切断精度及び/又は工程の信頼性に特に悪影響を及ぼす、に起因する板状加工物の歪みを低減するか又はなくすことが可能となる。それにより、加工物部品の生成での高い寸法精度も得ることができる。加えて、加工物部品、特に比較的大きな加工物部品の切断中の不完全な切断動作を回避できることが分かった。
【0011】
原則として、弛緩ステップによって生じる切断工程の中断を可能な限り短くすることが有利である。弛緩ステップに必要な時間は、クランプ装置を解除するのに及び閉じるのに必要な時間に大きく依存する。空圧又は油圧クランプ装置が使用される場合、弛緩ステップに必要な最小時間は、例えば、クランプ装置によるそれぞれの荷重の解除及びその後の一定のクランプ圧力での荷重の印可に必要な時間によって制限される。クランプ装置の解除又は開放(例えば、より低いクランプ圧力閾値未満への降下)とその後の完全な閉鎖(例えば、所要のクランプ圧力への到達)とに必要な時間は、5秒未満、好ましくは3秒未満とすることができる。
【0012】
板状加工物を加工するための切断工程中の弛緩ステップの数は、板状加工物から生成すべき加工物部品の数、板状加工物の材料厚さ、加工物部品の大きさ及び/又は加工ビームのレーザ出力に応じて有効にされることが好ましくは実現される。その結果、これらのパラメータを考慮に入れて加工機の生産力を最適化することができる。
【0013】
実際には、板状加工物から加工物部品を切り出す際の弛緩ステップの数、及び加工工程中の各弛緩ステップの時間は、例えば、機械操作者による目視評価に基づいて決定することができる。加工物は、熱による歪みによって変形し得る。操作者は、板状加工物の限界変形(例えば、限界湾曲)に気付くとすぐに、例えば次のステップが実行される前に、弛緩ステップが直ちに実行されていると判断することができる。このように、板状加工物全体の加工中に一定数の弛緩ステップが生成される。弛緩ステップの数及び時間は、操作者がもはや工程に介入する必要がないように、後続の同一の加工工程のために記憶し、事前にプログラムすることができる。
【0014】
代替的に、加工工程は、加工物部品が切り出されるときの加工物部品の変形を検出する対応するセンサ装置によって監視することもできる。変形が所定の限界値(例えば、一定量の加工物の湾曲)を超えた場合、弛緩ステップが次の可能な時点又は別の好適な時点で自動的に実行される。
【0015】
加工物の限界湾曲は、この領域ではレーザビームがもはや加工物を完全に切断せずに、不完全な切断動作が発生するような状態で、加工物と切断ヘッドとの間の距離を局所的に変化させ得る。湾曲した加工物と切断ヘッドとの衝突が発生することもある。
【0016】
有利には、切断工程は、加工物部品が完全に切断された後であって、後続の加工物部品を切断するための次の切断ステップの開始前に、中断される。したがって、弛緩ステップは、2つの連続する切断ステップの間に実行される。次いで、それにより、切断された加工物部品の高い寸法精度を得ることができる。
【0017】
弛緩ステップを実行するときに、板状加工物が、複数のクランプ装置によって側縁部に沿って保持され、板状加工物の部分領域の弛緩のために、クランプ装置が、外側から内側に次々と解除され、板状加工物を固定して保持する複数のクランプ装置の少なくとも2つが閉じたままであり、その後、板状加工物の部分領域の弛緩に続いて、クランプ装置が内側から外側に再び閉じられることが好ましくは実現される。その後、板状加工物のさらなる部分領域の弛緩のために、板状加工物の反対側から開始して、この動作を繰り返すことができる。したがって、板状加工物の各面側から弛緩を行うことが可能である。同時に、板状加工物は、弛緩ステップの間、少なくとも2つのクランプ装置によって常に保持される。これにより、板状加工物をクランプ装置に対して変位させることも回転させることもできないので、高い寸法安定性がもたらされる。
【0018】
板状加工物が、例えば3つのクランプ装置によって側縁部に沿って保持される場合、板状加工物の弛緩のために、1つの外側クランプ装置を開閉することができ、その後、反対側の外側クランプ装置を開閉することができる。したがって、中央クランプ装置は永久にクランプ位置に留まり、別法として、2つの外側クランプ装置の一方も追加的に加工物を固定された状態に保つ。
【0019】
方法のさらなる好ましい実施形態によれば、板状加工物が4つ以上のクランプ装置によって側縁部に沿って保持され、板状加工物の弛緩のために、まず、板状加工物の一方の半部における外側クランプ装置が開かれ、続いて、外側クランプ装置に隣接する少なくとも1つの内側クランプ装置が開かれ、その後、逆順に再び閉じられ、その間、2つのさらなるクランプ装置又は板状加工物の他方の半部におけるクランプ装置が閉じたままであることが実現される。次いで、この動作は、加工物の反対側の半部で繰り返される。結果として、外側から内側へのクランプ装置の開放及び内側から外側へのクランプ装置の閉鎖を作動させる。最適な弛緩を得ることができる。
【0020】
例えば、外側クランプ装置をそれぞれ約2.5秒間にわたって開くことができる。それぞれの外側クランプ装置が開いている間に、いずれの場合にも、内側クランプ装置を約1秒間にわたって開くことができる。第1のクランプ装置の開放の開始から、第2の外側クランプ装置の完全な閉鎖(例えば、所定のクランプ圧力に達する)まで、4つのクランプ装置でのそのような弛緩動作は、約6秒かかる可能性がある。
【0021】
弛緩ステップの数は、材料厚さに応じて有効にすることができる。有利には、4mm以下の板状加工物の加工時の弛緩ステップの数は、4mmを超える材料厚さの板状材料の場合よりも多い。板状材料の材料厚さが厚いほど、入熱時に起こる変形が小さくなる。結果として、弛緩ステップの数を低減することができる。
【0022】
さらに、500mmを超える辺長さ、及び/又は周囲の矩形の辺長さの互いに対する比が2:1よりも大きい、細長い形状を有する加工物部品の場合には、弛緩ステップが、加工物部品を生成するための切断ステップの前に実行されることが好ましくは実現される。代替的又は追加的に、弛緩ステップはまた、加工物部品を生成するための切断ステップの後に実行することもできる。加工物の変形が、細長い加工物部品の切断中に特に悪影響を及ぼすので、細長い加工物の切断前に、加工物の歪みを低減することが有利である。加えて、そのような細長い加工物部品を生成するための長い加工時間によって、弛緩ステップによって低減するに値する歪みをもたらし得る入熱が増加する。
【0023】
方法のさらなる有利な実施形態では、板状加工物から生成すべき加工物部品は、行と列で組み込まれ、クランプ装置に隣接する行を形成する加工物部品の切断工程中に、少なくとも1つの弛緩ステップが、少なくとも2つの加工物部品の最終的な切断に続いて実行される。
【0024】
方法のさらなる好ましい改良形態は、板状加工物がクランプ装置によって側縁部に沿って固定されたときに、クランプ装置から離れた半部に、好ましくは板状加工物の離れた3分の1に位置する加工物部品を切断する工程が、弛緩ステップなしに実行されることを実現する。クランプ装置から離れたこれらの領域では、弛緩ステップなしでも、高度な切断精度及び工程の高い信頼性を可能にし、その一方で、加工物がクランプ装置により近接して位置する場合には、1つ又は複数の弛緩ステップが必要となることが判明した。
【0025】
さらに、本発明の根底にある目的は、加工機のコントローラ用のデータ処理プログラムによって達成され、このコントローラは、先に説明した実施形態の1つによる方法を実行するために機械を作動させる。
【0026】
結果として、複数の加工物部品を生成するための板状加工物の加工を、加工機によって自動的に実行することができる。追加的又は代替的に、データ処理プログラムで定められた数の加工物部品の切断後でも、操作者への弛緩ステップを実行する要求が生じる場合がある。操作者は、弛緩ステップを実行すべきかどうか、又はこの時点ではまだ必要でないかどうかを決定することができる。操作者が、機械コントローラにおいて、加工物部品の数を設定できるデータ処理プログラムでは、工程ステップを追加的に提供することもでき、その後、特に切断が、データ処理プログラムによって提供される弛緩ステップの数が十分ではないように思われる非常に複雑な加工物部品を伴う場合に、弛緩ステップが実行される。
【0027】
さらに、本発明の根底にある目的は、板状材料から加工物部品を生成するための加工機、特に、先に説明した方法ステップの1つに従って板状加工物から加工物部品を生成できる、レーザ切断機によって達成される。
【0028】
以下、本発明及び本発明のさらに有利な実施形態及び発展形態について、図面に示す例に基づいて、より詳細に記載し説明する。記載及び図面から収集できる特徴は、それ自体で個別に、又は本発明による任意の組み合わせでの複数として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】板状加工物から加工物部品を生成するための加工機の斜視図を示す。
図2】弛緩ステップを説明するためのクランプ装置を伴う板状加工物の概略図を示す。
図3】弛緩ステップを例示するための代替的な数のクランプ装置を伴う板状加工物の概略図を示す。
図4図3に示す変形例による弛緩ステップの例示的な時系列図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、例として、板状加工物12から加工物部品を生成するための加工機11を示す。加工物部品14は、分離加工動作によって、特に加工ビーム13を用いて板状加工物12から生成される。加工機は、加工ビーム13としてのレーザビームで加工物部品14をレーザ切断するためのレーザ加工機の形態とすることができる。加工物部品14の切断加工のために、加工ビーム13はまた、プラズマビームであり得る。
【0031】
加工中に、板状加工物12は、例えば、互いに隣接して配置され、間隙18が形成された状態で、間隔をおいて配置された2つの加工物支持面16から形成された加工物支持体15上に載置される。加工物支持体15は、図1に示すXYZ座標系のXY平面と一致する載置平面Eを有する。
【0032】
複数のクランプ装置20、21、22、23は、具体的には図示しない、駆動部を有する、取扱装置19を用いて作動させる。クランプ装置20、21、22、23を用いて、板状加工物12は、加工物支持体15上で移動方向Xに変位させ、所定の加工位置まで移動させることができる。クランプ装置20、21、22、23は、好ましくは、板状加工物12の側縁部24に沿って係合するクランプ爪として構成される。代替的に、板状加工物12をX方向に移動させるか又はX方向への板状加工物12の移動を補助するために、出願人による(特許文献4)で説明されているように、加工物支持体15自体が例えば1つ又は複数の回転するコンベヤベルトの形態の移動装置として構成されることを実現することもできる。
【0033】
加工物支持体15の加工物支持面16間にある間隙18は、好ましくは加工ヘッド25の移動経路全体にわたってY方向に延び、この加工ヘッド25は、加工ビーム30を板状加工物12と位置合わせして板状加工物12上に集束させる。加工ヘッド25は、固定架台27上の、移動装置としての役割を果たす、被駆動キャリッジ26を用いて案内される。加工ヘッド25は、間隙18の上方をY方向に移動可能であるように作動させる。図示の例では、加工ヘッド25はまた、追加的に、間隙18内をX方向に制御された方式で移動可能とすることもできる。この目的のために、キャリッジ26は、例えば線形駆動装置の形態の、追加の移動装置28によって制御された方式でX方向に移動させることができる。相互に構築された移動装置26、28の助けによって、加工ヘッド25は、間隙18内の所望の切断位置においてX方向とY方向の両方向に位置決めすることができる。加工ヘッド25はまた、加工ヘッド25の加工ノズル29と加工物表面との間の距離を調整するために、任意選択的に、第3の移動方向(Z方向)に沿って変位させることもできる。
【0034】
各々が、間隙18の幅にわたって延びるとともに、間隙内を制御された方式でY方向に且つ互いに独立して移動可能である、2つの支持キャリッジ31、32が、間隙18内に配置される。加工ビーム13から離れた支持キャリッジ31、32のそれぞれの端部には、それぞれの被覆要素33、34が設けられ、この被覆要素33、34を用いて、間隙18が閉鎖される。加工ビーム13は、ビーム源36、特にレーザ源によって生成され、具体的に図示しない、ビームガイドによって加工ヘッド25に供給され、加工ヘッド25を通して出力される。
【0035】
クランプ装置20、21、22、23によって保持され、加工物支持体15上に載置される、板状加工物12の加工中に、例えば、板状加工物12に歪みが生じるのを回避するために、次の加工動作が実行される。
【0036】
分離加工動作によって板状加工物12から加工物部品14を生成するための方法の第1の実施形態について、図2を参照してより詳細に説明する。
【0037】
板状加工物12は、細長い矩形状を有する。板状加工物12は、板状加工物12の一方の側縁部24、特に長い方の側縁部に沿って、例えば、3つのクランプ装置20、21、22によって保持される。3つのクランプ装置20、21、22の係合は、例えば側縁部24の長さが2400mmまでの、より小さな板状加工物12の場合に行われる。加工物部品14は、例えば、6つの行41と4つの列42で組み込まれる。開始点44から開始して、加工物部品14は、時計回り方向又は反時計回り方向に切断され、加工ビーム13が再び開始点44に達するまで、加工ビーム13によって切断間隙45が導入される。開始点44において、加工物部品14を板状加工物12に接続するミクロジョイントを形成することができる。また、加工物部品14を板状加工物12から完全に分離することもできる。
【0038】
板状加工物12を加工するための切断工程中に、1つ又は複数の加工物部品14は、加工ビーム13を用いて切断される。板状加工物12への入熱によって生じる歪みを低減するために、加工物を切断するための2つの切断ステップ間の加工物を加工するための切断工程中に、弛緩ステップが少なくとも1回実行される。かかる弛緩ステップの手順を以下に説明する。
【0039】
例えば、まず、クランプ装置20に割り当てられた板状加工物12の部分領域が弛緩できるように、第1の、すなわち外側のクランプ装置20を開くことができる。2つのさらなるクランプ装置21、22は、板状加工物12の位置及び向きを維持するために閉じたままである。第1のクランプ装置20に割り当てられた板状加工物12の1つの部分領域が弛緩した後、このクランプ装置20が閉じられる。その後、板状加工物12の反対側に設けられた第3の、すなわち外側のクランプ装置22が開かれる。第3のクランプ装置22に割り当てられた板状加工物12の部分領域が弛緩した後、クランプ装置22が再び閉じられる。そして、例えば板状加工物12に対する3つのクランプ装置20、21、22の場合の弛緩ステップが終了する。この弛緩ステップでは、中央のクランプ装置21は、永久に閉じたままである。
【0040】
かかる弛緩ステップは、例えば、第1及び/又は第2及び/又は第3の行41における1つ又は複数の加工物部品14が加工される度に実行することができる。弛緩ステップはまた、加工物部品14が列42において生成される度に行うこともできる。加工物部品14が列42に沿って生成されるときに、加工物部品14がクランプ装置20、21、22に次第に近接するにつれて、弛緩ステップの数が次第に増加する。
【0041】
図3は、側縁部24の長さが例えば2400mmを超える板状加工物12の概略図を示す。この場合、少なくとも4つのクランプ装置20、21、22、23が側縁部24に係合する。板状加工物12がそのような大きさを有する場合、弛緩ステップは、例えば、次のように行われる。
【0042】
クランプ装置20、21、22、23は、少なくとも1つの加工物部品14の生成中に板状加工物12をクランプする。弛緩ステップは、1つの加工物部品14が完全に切断された後に、少なくとも1つの次の加工物部品14が切断される前に開始される。まず、最も外側のクランプ装置、例えばクランプ装置23が開かれる。次いで、隣接する内側クランプ装置22が開かれる。その結果、クランプ装置22、23に割り当てられた板状加工物12の部分領域を弛緩させることができる。その後、開いたクランプ装置22、23が内から外に閉じられ、すなわち、まず内側クランプ装置22、続いて外側クランプ装置23が閉じられる。結果として、例えば、板状加工物12の右半部が弛緩する。クランプ装置20、21は、先に説明した弛緩ステップの第1の段階では、閉じたままである。
【0043】
その後、この手順は、板状加工物12の左半部に対して実行される。すなわち、まずクランプ装置20が、続いてクランプ装置21が開かれ、その間、クランプ装置22及び23は閉じたままである。次に、クランプ装置21及び最後にクランプ装置20が再び閉じられる。その後、弛緩ステップの第2の段階、したがって弛緩ステップ全体が終了する。
【0044】
例えば、5つ、6つ又はそれ以上のクランプ装置が板状加工物12の側縁部24に係合する度に、弛緩ステップを実行するための類似の手順も提供される。外縁部から中央に向けてのクランプ装置の連続的な開放は、少なくとも2つのクランプ装置が弛緩ステップ中に常に閉じた状態に保たれる程度に行われる。
【0045】
図4は、図3に関連して説明した変形例による弛緩ステップ中のクランプ装置20、21、22、23の開放(又は解除)及び閉鎖の時系列を示す。図の上半分には、各クランプ装置20、21、22、23の弛緩ステップの継続時間(秒単位の時間)にわたるクランプ圧力プロファイル(hPa単位)が示されている。下半分には、それぞれの圧力曲線20a、21a、22a、23aに対応するセンサ信号20b、21b、22b、23bが示されている(値「0」は、それぞれのクランプ装置20、21、22、23の閉じた(所望)状態を表し、値「1」は、開いた(所望)状態を表す)。
【0046】
クランプ圧力が所定の値(図示の例では5000hPa)未満に低下した場合には、それぞれのクランプ装置が開かれているか又は解除されているとみなすことができる。したがって、クランプされた板状加工物の歪みを解消するために、必ずしもクランプ装置20、21、22、23の全てが完全に解除される(すなわち、クランプ圧力=0である)必要はない(この例では、内側クランプ装置21及び22のクランプ圧力は、いずれの場合にも、0まで低下しない)。
【0047】
第1の段階からのクランプ装置22、23のクランプ圧力が最小クランプ圧力(例えば5000hPa)を超えるとすぐに、弛緩ステップの第2の段階を開始することができる。弛緩ステップ中には板状加工物12を移動させないので、板状加工物12を確実に固定するためには、切断動作中よりも低いクランプ圧力で既に十分である。
【0048】
弛緩ステップは、クランプ装置20、21、22、23の各々のクランプ圧力が動作に必要な所望の値(例では9300hPa)に再び達した場合に終了する。
【符号の説明】
【0049】
12 板状加工物
13 加工ビーム
14 加工物部品
15 加工物支持体
16 加工物支持面
18 間隙
19 取扱装置
20 クランプ装置
20a 圧力曲線
20b センサ信号
21 クランプ装置
21a 圧力曲線
21b センサ信号
22 クランプ装置
22a 圧力曲線
22b センサ信号
23 クランプ装置
23a 圧力曲線
23b センサ信号
24 側縁部
25 加工ヘッド
26 移動装置
27 固定架台
28 移動装置
29 加工ノズル
30 加工ビーム
31 支持キャリッジ
32 支持キャリッジ
33 被覆要素
36 ビーム源
41 行
42 列
44 開始点
45 切断間隙
E 載置平面
X 移動方向
図1
図2
図3
図4