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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】導電塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240418BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20240418BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20240418BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/24
C09D7/62
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023000001
(22)【出願日】2023-01-01
(62)【分割の表示】P 2018202886の分割
【原出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2023033362
(43)【公開日】2023-03-10
【審査請求日】2023-01-02
(31)【優先権主張番号】P 2017211520
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311010475
【氏名又は名称】KJ特殊紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】古川 朋史
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特許第7206026(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、非金属の母材表面を金属で被覆した金属被覆体を2質量%以上80質量%以下、およびカーボンナノチューブを0.002質量%以上10質量%以下含有した導電塗料であって、
前記金属被覆体の周囲を前記カーボンナノチューブの結着層で覆い、該金属被覆体同士が該結着層により結着されており、
前記金属被覆体は、少なくとも銀と銅のいずれか一方を含んだものであり、
前記カーボンナノチューブは、平均直径20nm以下のものであり、
前記金属被覆体100質量部に対する前記カーボンナノチューブの質量比が0.1以上20以下であることを特徴とする導電塗料。
【請求項2】
少なくとも、非金属の母材粒子表面を金属で被覆した金属被覆粒子を2質量%以上80質量%以下、およびカーボンナノチューブを0.002質量%以上10質量%以下含有した導電塗料であって、
前記金属被覆粒子の周囲を前記カーボンナノチューブの結着層で覆い、該金属被覆粒子同士が該結着層により結着されており、
前記金属被覆粒子は、真密度が2.0g/cm以上4.5g/cm以下且つ平均粒子径が2μm以上20μm以下であることを特徴とする導電塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを用いた導電塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェアラブルデバイスの用途拡大により、柔軟性を有する導電体の需要が高まっている。
【0003】
このような導電体として、柔軟性を有する基材(例えば、糸、布、紙、不織布、フィルム)に導電塗料を、含浸または塗布したり、印刷することによって得られたものが知られている(例えば、特許文献1~3等参照)。
【0004】
しかしながら、従来の導電体は、高い導電性と良好な柔軟性の両方を兼ね備えているとは言い難い。
【0005】
例えば、特許文献1記載の導電部は、単位面積・単位質量当たりで見れば、カーボンナノチューブがメインであり、金属材料がサブであることから、導電性糸の電気抵抗は、最も低いものでも3Ω/cmである。しかも、柔軟性については詳しいデータが掲載されておらず、高い導電性と良好な柔軟性の両方を兼ね備えているとは言い難い。
【0006】
特許文献2記載のカーボンナノチューブを含有する柔軟導電材料の体積抵抗率は、最も低いものでも7×10-2Ω・cmもあり、ウェアラブルデバイス等の導電部に用いるには、導電性があまりにも低すぎる。
【0007】
また、特許文献3記載のカーボンナノチューブを含有する伸縮性導電体塗布物は、最も表面抵抗率が低いものが1.1Ω/□であり、厚みが3μmであることから体積抵抗率に換算すると3.3×10-4Ω・cmになる。一方、表面抵抗率の変化率は、200%未満を一つの基準にしており、具体的数値は不明であるが、200%という基準値からして値が高く、柔軟性が良好であるとは到底思えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6007350号公報
【文献】特開2013-35974号公報
【文献】特開2016-35883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高い導電性と良好な柔軟性の両方を兼ね備えた導電体を得ることができる導電塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決する本発明の第1の導電塗料は、
少なくとも、非金属の母材表面を金属で被覆した金属被覆体を2質量%以上80質量%以下、およびカーボンナノチューブを0.002質量%以上10質量%以下含有した導電塗料であって、
前記金属被覆体の周囲を前記カーボンナノチューブの結着層で覆い、該金属被覆体同士が該結着層により結着されており、
前記金属被覆体は、少なくとも銀と銅のいずれか一方を含んだものであり、
前記カーボンナノチューブは、平均直径20nm以下のものであり、
前記金属被覆体100質量部に対する前記カーボンナノチューブの質量比が0.1以上20以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の導電塗料によれば、前記金属被覆体によって高い導電性を確保し、前記カーボンナノチューブが、良好な柔軟性を発揮しつつ該金属被覆体を結着する機能を果たし、高い導電性と良好な柔軟性の両方を兼ね備える。
【0012】
上記目的を解決する本発明の第2の導電塗料は、
少なくとも、非金属の母材粒子表面を金属で被覆した金属被覆粒子を2質量%以上80質量%以下、およびカーボンナノチューブを0.002質量%以上10質量%以下含有した導電塗料であって、
前記金属被覆粒子の周囲を前記カーボンナノチューブの結着層で覆い、該金属被覆粒子同士が該結着層により結着されており、
前記金属被覆粒子は、真密度が2.0g/cm以上4.5g/cm以下且つ平均粒子径が2μm以上20μm以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の導電塗料によれば、前記金属被覆粒子によって高い導電性を確保し、前記カーボンナノチューブが、良好な柔軟性を発揮しつつ該金属被覆粒子を結着する機能を果たし、高い導電性と良好な柔軟性の両方を兼ね備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い導電性と良好な柔軟性の両方を兼ね備えた導電体を得ることができる導電塗料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本技術的思想の導電体の一実施形態の導電体を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)で5kVの加速電圧を用いて1000倍まで拡大した二次電子画像である。
図2図1に示す本実施形態の導電体を、電界放出型走査電子顕微鏡で5kVの加速電圧を用いて3000倍まで拡大した二次電子画像である。
図3図1に示す本実施形態の導電体を、電界放出型走査電子顕微鏡で5kVの加速電圧を用いて10000倍まで拡大した二次電子画像である。
図4】糸状導電体を試料とした場合の、金属被覆粒子100質量部に対するカーボンナノチューブの質量比と、導電性の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本技術的思想は、金属含有粒子とカーボンナノチューブを含有する導電体及び導電塗料であり、分散状態の良好なカーボンナノチューブによって金属含有粒子同士が結着されることによって、金属含有粒子間に柔軟で強固な物理的・電気的接続が形成され、高い導電性と良好な柔軟性の両立が可能となる。
【0018】
図1は、本技術的思想の導電体の一実施形態の導電体を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)で5kVの加速電圧を用いて1000倍まで拡大した二次電子画像である。
【0019】
図1に示す導電体Cは、アクリル母材粒子を銀で被覆した金属被覆粒子の周囲をカーボンナノチューブが覆ったものである。粒子の周囲に白く見える層が銀の金属被覆層11であり、隣り合う金属被覆粒子1の間にはカーボンナノチューブ21が介在しており、金属被覆粒子1同士を結着している。
【0020】
図2は、図1に示す本実施形態の導電体を、電界放出型走査電子顕微鏡で5kVの加速電圧を用いて3000倍まで拡大した二次電子画像である。
【0021】
図2に示すように、金属被覆粒子1の周囲はカーボナンノチューブの結着層2によって覆われている。
【0022】
図3は、図1に示す本実施形態の導電体を、電界放出型走査電子顕微鏡で5kVの加速電圧を用いて10000倍まで拡大した二次電子画像である。
【0023】
カーボンナノチューブ21は、バインダー樹脂に包まれているが、この図3からは、結着層2では、バインダーに包まれたカーボンナノチューブ21同士が絡み合ったり、入り混じったりして結着していることがわかる。
【0024】
本実施形態における金属含有粒子の種類に特に制限はなく、金属を含有する粒子であればいずれも用いることができるが、母材粒子を金属で被覆した金属被覆粒子または無垢金属粒子を使用することが好ましい。粒子の形状に特に制限はなく、球状、回転楕円状、角板状、丸板状、針状、棒状、筒状、不定形状等、いずれも用いることができる。すなわち、これまで金属含有粒子と称しているものは、金属含有体と読み替えることができ(以下においても同様)、母材粒子と称しているものは、母材と読み替えることができる(以下においても同様)。粒子径にも特に制限はないが、金属被覆粒子を用いる場合は平均粒子径が2μm以上20μm以下であることが好ましく、無垢金属粒子を用いる場合は平均粒子径が5nm以上100nm以下であることが好ましい。金属被覆粒子の場合は、母材粒子を非金属にすることで軽量化することができ、無垢金属粒子に比べて大きな粒子径のものを用いることによって、導電パスが形成されやすく、得られる導電体の導電性が高くなる。しかしながら、平均粒子径が大きくなりすぎると、単位面積・単位質量当たりの金属被覆粒子の個数が減り、導電パスの数も減って、導電体抵抗の値が上昇してしまったり、金属被覆粒子が脱落し易くなったり、柔軟性が損なわれたりする。真密度にも特に制限はないが、金属被覆粒子を用いる場合は2.0g/cm3以上4.5g/cm3以下であることが好ましい。この真密度の範囲に入るように、母材粒子の大きさと金属被覆層の厚みが決定される。母材粒子の大きさが同じであれば、金属被覆粒子の真密度が低いと金属被覆層の厚みが薄く導電性は低下するものの軽量になり、反対に金属被覆粒子の真密度が高いと金属被覆層の厚みが厚く導電性は高くなるものの重たくなってしまう。
【0025】
なお、本実施形態における真密度とは、物質自身が占める体積だけを密度算定用の体積とする密度のことであり、液相置換法、気相置換法等で測定することができる。測定装置としては、マイクロトラックベル株式会社製BELPycno、株式会社セイシン企業製MAT-7000、株式会社セイシン企業製VM-100等を用いて測定することができる。
【0026】
また、金属含有粒子を構成する金属種にも特に制限はなく、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、クロム、鉛、チタン、マンガン、水銀いずれも使用可能であり、これらを単独使用、併用または合金として使用することが可能であるが、導電性の観点から、銀または銅を単独使用、併用または合金として使用することが好ましい。
【0027】
本実施形態において、カーボンナノチューブの種類も特に制限はなく、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブいずれも用いることができる。カーボンナノチューブの製法には、触媒化学気相合成法(CCVD法)、レーザー蒸発法、アーク放電法等があるが、本実施形態においては、いずれの製法で製造されたカーボンナノチューブも使用できる。コスト的には多層カーボンナノチューブを使用することが好ましい。ただし、後述するように、単層カーボンナノチューブを用いれば、多層カーボンナノチューブを用いた場合よりも質量的に少ない量で良好な導電性を得られるため、単層カーボンナノチューブを用いた場合でも使用量を抑えることができることから単層カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブよりもコスト的に劣るとは一概には言えない。カーボンナノチューブの直径にも特に制限はないが、直径の細いカーボンナノチューブの方が、直径の太いカーボンナノチューブよりも、電気抵抗が低く、柔軟性も優れるため、平均直径が20nm以下のカーボンナノチューブを用いることにより、得られる導電体の導電性と柔軟性はより優れたものになる。より具体的には、多層カーボンナノチューブを用いる場合には平均直径が5nm以上20nm以下、単層カーボンナノチューブを用いる場合には平均直径が5nm未満であることが好ましい。カーボンナノチューブの長さにも特に制限はないが、短いと金属含有粒子間の物理的・電気的接続が不十分となる可能性があるので、長さは0.5μm以上であることが好ましい。
【0028】
本実施形態において、金属含有粒子とカーボンナノチューブの質量比に特に制限はないが、金属含有粒子間の物理的・電気的接続を確保することを考慮すると、金属含有粒子100質量部に対するカーボンナノチューブの質量比は0.1以上300以下であることが好ましい。金属被覆粒子を用いる場合には、金属被覆粒子100質量部に対するカーボンナノチューブの質量比は0.1以上20以下であることが好ましく、無垢金属粒子を用いる場合には、無垢金属粒子100質量部に対するカーボンナノチューブの質量比は20以上300以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの質量比が低すぎると、金属含有粒子を結着する物理的機能が低下してしまう。また、金属含有粒子同士を電気的に接続する機能も低下してしまう。カーボンナノチューブは導電性が良好であるものの金属含有粒子と比較すると、金属含有粒子の方が導電性は高い。図2等に示すように、隣り合う金属含有粒子の間には、カーボンナノチューブ21が存在しているが、カーボンナノチューブの質量比が高すぎると、隣り合う金属含有粒子が離れすぎてしまう。すなわち、カーボンナノチューブの結着層2が厚くなってしまい、結着層2における電気抵抗の高さが作用して、導電体全体としての電気抵抗が上昇し、導電性が劣ってしまう。なお、図1図3に示す導電体は、多層カーボンナノチューブを用いたものであるが、単層カーボンナノチューブを用いた場合であっても、金属含有粒子の周囲を単層カーボンナノチューブが覆っている。ここで、金属含有粒子の周囲をカーボンナノチューブが覆うとは、カーボンナノチューブが、隙間なく覆うことに限らず、隙間が存在していてもよく、均一に存在していることが好ましい。また、単層カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブよりも平均直径が細いため、電気抵抗が低く、柔軟性も優れる。すなわち、上述のごとく、直径の細いカーボンナノチューブの方が、直径の太いカーボンナノチューブよりも、電気抵抗が低く、柔軟性も優れる。このため、単層カーボンナノチューブを用いれば、多層カーボンナノチューブを用いた場合よりも質量的に少ない量で良好な導電性を得ることができ、金属被覆粒子100質量部に対する単層カーボンナノチューブの質量比は0.1以上であればよい。なお、無垢金属粒子を用いた場合には、後述するように、導電体の製造方法が2工程に分かれ、金属含有粒子を含む層の外側に、カーボンナノチューブを含む層が形成されるため、カーボンナノチューブの質量比が高くなる。
【0029】
本実施形態における金属被覆粒子とは、母材粒子表面を金属で被覆された粒子であり、母材粒子として真密度の低い素材を選定することによって、無垢金属粒子よりも低い真密度で金属並の導電性を得ることができる。粒子径と導電性が同じであれば、真密度の低い方が同一添加質量における粒子数が多くなり導電パスを形成しやすいため、得られる導電体の導電性が高くなる。また、従来の導電材を用いた導電体と同程度の導電性を得るための添加量は少なくて済むため、導電体の軽量化が可能となりウェアラブルデバイスへの適用において有利である。母材粒子の素材に特に制限はないが、上記の観点から真密度の低い素材が好ましい。シリカまたはアルミニウムが好ましく、アクリル系、フェノール系またはスチレン系の樹脂が特に好ましい。
【0030】
本実施形態における無垢金属粒子とは、メッキ処理を施されていない金属粒子を指す。
【0031】
本実施形態における導電塗料について説明する。金属被覆粒子を用いる場合は、少なくとも金属被覆粒子を2質量%以上80質量%以下、カーボンナノチューブを0.002質量%以上10質量%以下含有し、金属被覆粒子100質量部に対するカーボンナノチューブの質量比が0.1以上20以下である導電塗料を用いることが好ましい。上記導電塗料中における金属被覆粒子及びカーボンナノチューブの濃度は、金属被覆粒子100質量部に対するカーボンナノチューブの質量比が0.1以上20以下を満たした上で導電塗料のハンドリング性を考慮した際の適切な粘度範囲内において、上記質量%の範囲内で可能な限り高濃度であることが好ましい。無垢金属粒子を用いる場合は、少なくとも無垢金属粒子を10質量%以上80質量%以下含有する導電塗料及び少なくともカーボンナノチューブを1質量%以上9.5質量%以下含有する導電塗料を用いることが好ましい。
【0032】
本実施形態における導電塗料中における金属被覆粒子、無垢金属粒子及びカーボンナノチューブは良好な分散状態にあることが好ましい。必要に応じて分散剤として、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、アルキレンマレイン酸共重合体塩からなるアニオン性界面活性剤、水溶性キシラン、キサンタンガム類、グアーガム類、ジェランガム類、カルボキシメチルセルロース等の多糖類、ポリオキシアルキレン(POA)オクチルフェニルエーテル、POAノニルフェニルエーテル、POAジブチルフェニルエーテル、POAスチリルフェニルエーテル、POAベンジルフェニルエーテル、POAビスフェノールAエーテル、POAクミルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤を一種以上用いることができる。
【0033】
本実施形態における導電塗料中にはバインダー樹脂が含有されている。バインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン・酢ビ共重合樹脂、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0034】
また、本実施形態では、上記導電塗料を、糸状基材またはシート状基材に含浸または塗布した後、乾燥することによって導電体を得る。こうして得られた導電体は、線状またシート状の電線として用いることができる。
【0035】
本実施形態における糸状基材は、導電塗料を含浸または塗布した際に塗料成分を担持できるものであれば特に制限はない。素材としてはポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセル、アセテート等の再生繊維、綿、絹等の天然繊維、いずれも使用可能であるが、軽量性、柔軟性(耐屈曲性)、強度等の観点から合成繊維1種または2種以上より構成することが好ましい。
【0036】
本実施形態におけるシート状基材は、導電塗料を含浸または塗布した際に塗料成分を担持できるものであれば特に制限はない。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルペンテン等からなる一軸延伸シート、二軸延伸シート等の合成樹脂シート、セルロース繊維、合成樹脂繊維もしくはレーヨン繊維等からなる乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、ステッチボンド法もしくはスチームジェット法等の製造方法により製造された不織布または上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗布紙、クラフト紙もしくは含浸紙等の紙類、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセル、アセテート等の再生繊維、綿、絹等の天然繊維から成る糸を製織して得られた布類を挙げることができる。
【0037】
本実施形態の導電体及び導電塗料の製造方法を説明する。
【0038】
カーボンナノチューブは、非常に凝集しやすい性質をもっているため、予め溶媒に水を用いてカーボンナノチューブを分散しておくことが好ましい。分散は、超音波ホモジナイザー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、高圧噴射式分散機、ロールミル等を用いて行うことができる。必要に応じて分散剤を添加して分散を行うこともできる。
【0039】
金属被覆粒子を用いる場合、カーボンナノチューブ分散液に金属被覆粒子を加え攪拌することで、金属被覆粒子とカーボンナノチューブを含有する導電塗料を作製することができる。必要に応じて分散剤とバインダー樹脂を添加することもできる。こうして得られた導電塗料を糸状基材またはシート状基材に含浸または塗布した後、乾燥することによって金属被覆粒子とカーボンナノチューブを含有する糸状またはシート状導電体を製造することができる。
【0040】
無垢金属粒子を用いる場合、無垢金属粒子を溶媒に分散することで無垢金属粒子を含有する導電塗料(第1導電塗料に相当)を作製する。一例として、平均粒子径5nm以上100nm以下の無垢金属粒子を10質量%以上80質量%以下含有する導電塗料を作製する。この導電塗料を糸状基材またはシート状基材に含浸または塗布した後、乾燥する(第1工程に相当)ことによって、無垢金属を含有する糸状またはシート状導電体を得る。また、カーボンナノチューブを1質量%以上9.5質量%以下含有するカーボンナノチューブ分散液(第2導電塗料に相当)も作製しておき、上記無垢金属を含有する糸状またはシート状導電体にカーボンナノチューブ分散液を含浸または塗布した後、乾燥する(第2工程に相当)ことによって、無垢金属とカーボンナノチューブを含有する糸状またはシート状導電体を製造することができる。本実施形態の導電体の製造方法によれば、無垢金属粒子を含有する第1層が糸状またはシート状導電体に形成され、その第1層の外側にカーボンナノチューブを含有する第2層が形成されることになる。完成した導電体の導電性は、第1層で確保されており、柔軟性は、第1層と第2層の両方によって決定される。すなわち、糸状またはシート状導電体に付着した無垢金属粒子の間に、カーボンナノチューブが入り込み、さらに、無垢金属粒子の外側はカーボンナノチューブによって覆われる。このため、第2層を厚くすることは可能であり、金属含有粒子として金属被覆粒子を用いた場合に比べて、金属含有粒子(無垢金属粒子)に対するカーボンナノチューブの相対的な質量比を高くすることが可能である。
【0041】
本実施形態において、糸状基材に導電塗料を含浸または塗布する方法に特に制限はないが、一例として、ロール下部を導電塗料に浸漬させた大径ローラーと、大径ローラーの回転によって回転する小径ローラーとを有する糸処理装置を用い、大径ローラーを回転させ、バイブレーターを用いて小径ローラーを微振動させながら大径ローラーと小径ローラーとの間に糸状基材を通過させる。糸状基材に担持された導電塗料のうち余分な導電塗料は、糸状基材が大径ローラーと小径ローラーとの間を通過する間に、微振動によって振るい落とされる。その後、適量の導電塗料を担持した糸状基材を乾燥させる。また、糸の柔軟性や風合いを損なわない範囲において、このような工程を複数回繰り返すことによって、より多くの導電塗料が糸状基材に担持されるようになり、得られる糸状導電体の導電性をさらに高めることができる。すなわち、金属含有粒子同士が金属含有粒子の周囲を覆うカーボンナノチューブの結着層によって結着された金属含有粒子層が、何層にも重ねて形成され、導電性をより高めることができる。
【0042】
本実施形態において、シート状基材に導電塗料を含浸する方法に特に制限はないが、導電塗料で満たされた含浸パンにシート状基材を浸漬した後、ニップローラー間に通して、余分な導電塗料を落としてから乾燥する方法が好ましい。また、シートの柔軟性や風合いを損なわない範囲において、このような工程を複数回繰り返すことによって、より多くの導電塗料がシート状基材に担持されるようになり、得られるシート状導電体の導電性をさらに高めることができる。
【0043】
本実施形態において、シート状基材に導電塗料を塗布する方法に特に制限はないが、導電塗料をワイヤーバーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーター等を用いてシート状基材に塗布した後、乾燥する方法が好ましい。また、シートの柔軟性や風合いを損なわない範囲において、このような工程を複数回繰り返すことによって、より多くの導電塗料がシート状基材に担持されるようになり、得られるシート状導電体の導電性をさらに高めることができる。
【0044】
図4は、糸状導電体を試料とした場合の、金属被覆粒子100質量部に対するカーボンナノチューブの質量比と、導電性の関係を示すグラフである。
【0045】
試料として用いた糸状導電体は、アクリル母材粒子を銀で被覆した金属被覆粒子の周囲をカーボンナノチューブが覆ったものである。カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブである。図4に示すグラフの横軸は、銀コートアクリル粒子100質量部に対するカーボンナノチューブの質量比(以下、CNT質量比という。)を表し、縦軸は、導電性を表す。この導電性は、糸状導電体の抵抗値(糸抵抗値(Ω/cm))から求めた指標であり、糸抵抗値が低かったほど高い導電性として表している。
【0046】
この図4に示すグラフから、多層カーボンナノチューブを用いた場合には、CNT質量比が5弱の糸状導電体が最も導電性が良いことがわかる。電界放出型走査電子顕微鏡を用いて各試料を観察すると、CNT質量比が5弱の糸状導電体では、隣り合う銀コートアクリル粒子が、平均すると、銀コートアクリル粒子の半径以下の距離に配置されていた。このCNT質量比が5弱の糸状導電体の観察結果は、図1図3に示す二次電子画像と似たような結果であった。また、CNT質量比が9強の糸状導電体では、隣り合う銀コートアクリル粒子が、平均すると、銀コートアクリル粒子の半径よりは長く直径未満の距離に配置されていた。さらに、CNT質量比が14程度の糸状導電体では、隣り合う銀コートアクリル粒子が、平均すると、銀コートアクリル粒子の直径程度の距離に配置されていた。これらのことから、銀コートアクリル粒子同士が離れると、導電性が低下する傾向にあることがわかる。
【0047】
一方、CNT質量比が2.5程度の糸状導電体では、CNT質量比が5弱の糸状導電体よりも導電性が低下しているが、これは、CNT質量比が低いことによって多層カーボンナノチューブによる銀コートアクリル粒子同士を電気的に接続する機能が低下し、導電性も低下していると考えられる。
【実施例
【0048】
以下に、本技術的思想の実施例について説明するが、本技術的思想はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に明示しない限り質量部及び質量%を示す。さらに、実施例及び比較例におけるカーボンナノチューブの分散処理の目安は、カーボンナノチューブの粒径がレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(MT-3300EX;日機装製)を使用して測定したメジアン径で0.10~80μmとした。
【0049】
(カーボンナノチューブ分散液1の調製)
カーボンナノチューブ(商品名NC7000、Nanocyl社製、平均直径9.5nm、長さ1.5μm)を100部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースを固形分で50部用意した。次に、溶媒として850部の蒸留水にカルボキシメチルセルロースを添加して、攪拌機で1~2分攪拌した。さらに、この水溶液にカーボンナノチューブを添加し、超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所製 US-600fcat)で分散処理を行い、カーボンナノチューブ分散液1を得た。
【0050】
(カーボンナノチューブ分散液2の調製)
カーボンナノチューブ(商品名CNTs20型、SUSN社製、平均直径20nm、長さ5~12μm)を200部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースを固形分で100部用意した。次に、溶媒として700部の蒸留水にカルボキシメチルセルロースを添加して、攪拌機で1~2分攪拌した。さらに、この水溶液にカーボンナノチューブを添加し、超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所製 US-600fcat)で分散処理を行い、カーボンナノチューブ分散液2を得た。
【0051】
(カーボンナノチューブ分散液3の調製)
平均直径21nm、長さ5~12μmのカーボンナノチューブを100部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースを固形分で50部用意した。次に、溶媒として850部の蒸留水にカルボキシメチルセルロースを添加して、攪拌機で1~2分攪拌した。さらに、この水溶液にカーボンナノチューブを添加し、超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所製 US-600fcat)で分散処理を行い、カーボンナノチューブ分散液3を得た。
【0052】
(カーボンナノチューブ分散液4の調製)
カーボンナノチューブ(商品名TUBALL、OCSiAl社製、平均直径1.6nm、長さ5μm)を2部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースを固形分で4部用意した。次に、溶媒として994部の蒸留水にカルボキシメチルセルロースを添加して、攪拌機で1~2分攪拌した。さらに、この水溶液にカーボンナノチューブを添加し、超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所製 US-600fcat)で分散処理を行い、カーボンナノチューブ分散液4を得た。カーボンナノチューブ分散液1~3に用いたカーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブであったが、このカーボンナノチューブ分散液4に用いたカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブである。ここで用いた単層カーボンナノチューブは、平均直径が1nm、長さが1μm前後である。
【0053】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を100部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を100部と蒸留水50部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を得た。
【0054】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液2の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を100部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度4.1g/cm3、平均粒子径2μm)を100部と蒸留水50部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液2を得た。
【0055】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液3の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を100部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.0g/cm3、平均粒子径20μm)を100部と蒸留水50部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液3を得た。
【0056】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液4の調製)
カーボンナノチューブ分散液2を50部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を100部と蒸留水100部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液4を得た。
【0057】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液5の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を10部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を100部と蒸留水140部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液5を得た。
【0058】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液6の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を100部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を50部と蒸留水17部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液6を得た。
【0059】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液7の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を100部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銅コートアクリル粒子、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を100部と蒸留水50部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液7を得た。
【0060】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液8の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を100部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアルミニウム粒子、真密度4.5g/cm3、平均粒子径6μm)を100部と蒸留水50部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液8を得た。
【0061】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液9の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を60部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を100部、バインダー樹脂溶液(エバファノールHA-107C、日華化学(株)製、バインダー濃度40%)を15部、蒸留水25部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液9を得た。
【0062】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液10の調製)
カーボンナノチューブ分散液3を100部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を100部と蒸留水50部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液10を得た。
【0063】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液11の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を100部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(アルミニウムコートアクリル粒子、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を100部と蒸留水50部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液11を得た。
【0064】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液12の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を100部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、真密度1.9g/cm3、平均粒子径21μm)を100部と蒸留水50部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液12を得た。
【0065】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液13の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を100部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、真密度4.6g/cm3、平均粒子径1μm)を100部と蒸留水50部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液13を得た。
【0066】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液14の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を9部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を100部と蒸留水141部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液14を得た。
【0067】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液15の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を158部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を75部と蒸留水17部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液15を得た。
【0068】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液16の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を0.5部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を5部と蒸留水245.5部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液16を得た。
【0069】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液17の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を0.25部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を2.5部と蒸留水247.25部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液17を得た。
【0070】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液18の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を50部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を200部添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液18を得た。
【0071】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液19の調製)
カーボンナノチューブ分散液2を125部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を125部添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液19を得た。
【0072】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液20の調製)
カーボンナノチューブ分散液1を47.5部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を202.5部添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液20を得た。
【0073】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液21の調製)
カーボンナノチューブ分散液2を137.5部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を112.5部添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液21を得た。
【0074】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液22の調製)
単層カーボンナノチューブを用いたカーボンナノチューブ分散液4を50部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を100部と蒸留水を100部添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液22を得た。
【0075】
(金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液23の調製)
単層カーボンナノチューブを用いたカーボンナノチューブ分散液4を2.5部ビーカーに入れ撹拌し、そこに金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、三菱マテリアル電子化成(株)製、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を5部と蒸留水242.5部を添加し15分間撹拌して金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液23を得た。
【0076】
(実施例1)
糸状基材としてポリエステル系マルチフィラメント(150d-48f-1)を用意した。これを金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1に浸漬し、120℃で1分間乾燥させ、糸状導電体を得た。この実施例1~実施例17では、金属被覆粒子が用いられている。
【0077】
(実施例2)
シート状基材としてポリエステルフィルム(E5101、東洋紡(株)製、厚み75μm)を用意した。このポリエステルフィルムのコロナ処理面に金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1をバーコートし、120℃で2分間乾燥させ、シート状導電体を得た。
【0078】
(実施例3)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液2に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例3では、金属被覆粒子の真密度が高めであり、また、金属被覆粒子の粒子径が小さめである。
【0079】
(実施例4)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液2に代えた他は実施例2と同様にしてシート状導電体を得た。この実施例4でも、金属被覆粒子の真密度が高めであり、また、金属被覆粒子の粒子径が小さめである。
【0080】
(実施例5)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液3に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例5では、金属被覆粒子の真密度が低めであり、また、金属被覆粒子の粒子径が大きめである。
【0081】
(実施例6)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液3に代えた他は実施例2と同様にしてシート状導電体を得た。この実施例6でも、金属被覆粒子の真密度が低めであり、また、金属被覆粒子の粒子径が大きめである。
【0082】
(実施例7)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液4に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例7では、カーボンナノチューブの直径が大きめである。
【0083】
(実施例8)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液4に代えた他は実施例2と同様にしてシート状導電体を得た。この実施例8でも、カーボンナノチューブの直径が大きめである。
【0084】
(実施例9)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液5に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例9では、金属被覆粒子に対するCNT質量比が低めである。
【0085】
(実施例10)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液5に代えた他は実施例2と同様にしてシート状導電体を得た。この実施例10でも、金属被覆粒子に対するCNT質量比が低めである。
【0086】
(実施例11)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液6に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例11では、金属被覆粒子に対するCNT質量比が高めである。
【0087】
(実施例12)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液6に代えた他は実施例2と同様にしてシート状導電体を得た。この実施例12でも、金属被覆粒子に対するCNT質量比が高めである。
【0088】
(実施例13)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液7に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。これまで銀で被覆した金属被覆粒子を用いていたが、この実施例13では、銅で被覆した金属被覆粒子が用いられている。
【0089】
(実施例14)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液7に代えた他は実施例2と同様にしてシート状導電体を得た。この実施例14でも、銅で被覆した金属被覆粒子が用いられている。
【0090】
(実施例15)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液8に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。これまで金属被覆粒子の母材粒子としてアクリル母材粒子を用いていたが、この実施例15では、アルミニウム母材粒子が用いられている。
【0091】
(実施例16)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液8に代えた他は実施例2と同様にしてシート状導電体を得た。この実施例16でも、アルミニウム母材粒子が用いられている。
【0092】
(実施例17)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液9に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例17では、バインダー樹脂溶液が用いられている。
【0093】
(実施例18)
糸状基材としてポリエステル系マルチフィラメント(150d-48f-1)を用意した。これを、第1導電塗料の一実施例に相当する無垢金属粒子分散液(51質量%銀ナノ粒子水分散体、三菱製紙(株)製、平均粒子径20nm)に浸漬し、120℃で1分間乾燥させた。得られた無垢金属粒子担持糸状基材を、第2導電塗料の一実施例に相当するカーボンナノチューブ分散液1を蒸留水で2倍希釈した分散液に浸漬し、120℃で1分間乾燥させ、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを150部含有する糸状導電体を得た。この実施例18~実施例22では、無垢金属粒子が用いられている。
【0094】
(実施例19)
無垢金属粒子分散液中の銀ナノ粒子の平均粒子径が5nmである分散液を用いた他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを150部含有する糸状導電体を得た。この実施例19では、粒径が小さめの無垢金属粒子が用いられている。
【0095】
(実施例20)
無垢金属粒子分散液中の銀ナノ粒子の平均粒子径が100nmである分散液を用いた他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを150部含有する糸状導電体を得た。この実施例20では、粒径が大きめの無垢金属粒子が用いられている。
【0096】
(実施例21)
カーボンナノチューブ分散液1の希釈倍率を10倍とした他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを20部含有する糸状導電体を得た。この実施例21では、無垢金属粒子に対するCNT質量比が低めである。また、第2導電塗料に相当するカーボンナノチューブ分散液におけるカーボンナノチューブの濃度も低めである。
【0097】
(実施例22)
カーボンナノチューブ分散液1の希釈倍率を1.05倍とした他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを300部含有する糸状導電体を得た。この実施例22では、無垢金属粒子に対するCNT質量比が高めである。また、第2導電塗料に相当するカーボンナノチューブ分散液におけるカーボンナノチューブの濃度も高めである。
【0098】
(実施例23)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液10に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例23~実施例34でも、金属被覆粒子が用いられており、この実施例23では、直径が大きなカーボンナノチューブが用いられている。
【0099】
(実施例24)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液11に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例24では、アルミニウムで被覆した金属被覆粒子が用いられている。
【0100】
(実施例25)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液12に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例25では、真密度が低く、粒子径は大きな金属被覆粒子が用いられている。
【0101】
(実施例26)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液13に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例26では、真密度が高く、粒子径は小さな金属被覆粒子が用いられている。
【0102】
(実施例27)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液14に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例27では、金属被覆粒子に対するCNT質量比が低い。
【0103】
(実施例28)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液15に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例28では、金属被覆粒子に対するCNT質量比が高い。
【0104】
(実施例29)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液16に代え、浸漬・乾燥の操作を20回繰り返した他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例29では、金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液(導電塗料)中の金属被覆粒子の濃度が低めであり、カーボンナノチューブの濃度も低めである。
【0105】
(実施例30)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液17に代え、浸漬・乾燥の操作を40回繰り返した他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例30では、金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液(導電塗料)中の金属被覆粒子の濃度が低く、カーボンナノチューブの濃度も低い。
【0106】
(実施例31)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液18に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例31では、金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液(導電塗料)中の金属被覆粒子の濃度が高めである。
【0107】
(実施例32)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液19に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例32では、金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液(導電塗料)中のカーボンナノチューブの濃度が高めである。
【0108】
(実施例33)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液20に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例33では、金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液(導電塗料)中の金属被覆粒子の濃度が高い。
【0109】
(実施例34)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液21に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。この実施例34では、金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液(導電塗料)中のカーボンナノチューブの濃度が高い。
【0110】
(実施例35)
無垢金属粒子分散液中の銀ナノ粒子の平均粒子径が4nmである分散液を用いた他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを150部含有する糸状導電体を得た。この実施例35~実施例42でも、無垢金属粒子が用いられている。この実施例35では、粒径が小さい無垢金属粒子が用いられている。
【0111】
(実施例36)
無垢金属粒子分散液中の銀ナノ粒子の平均粒子径が101nmである分散液を用いた他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを150部含有する糸状導電体を得た。この実施例36では、粒径が大きい無垢金属粒子が用いられている。
【0112】
(実施例37)
カーボンナノチューブ分散液1の希釈倍率を11倍とした他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを19部含有する糸状導電体を得た。この実施例37では、無垢金属粒子に対するCNT質量比が低い。また、第2導電塗料に相当するカーボンナノチューブ分散液におけるカーボンナノチューブの濃度も低い。
【0113】
(実施例38)
カーボンナノチューブ分散液1を原液で用いた他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを301部含有する糸状導電体を得た。この実施例38では、無垢金属粒子に対するCNT質量比が高い。また、第2導電塗料に相当するカーボンナノチューブ分散液におけるカーボンナノチューブの濃度も高い。
【0114】
(実施例39)
無垢金属粒子分散液の溶媒を一部蒸発させて、無垢金属粒子濃度を80質量%とした他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを100部含有する糸状導電体を得た。この実施例39では、第1導電塗料に相当する無垢金属粒子を含有する導電塗料における無垢金属粒子の濃度が高めである。
【0115】
(実施例40)
無垢金属粒子分散液を蒸留水で5.1倍に希釈することによって、無垢金属粒子濃度を10質量%とした他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを200部含有する糸状導電体を得た。この実施例40では、第1導電塗料に相当する無垢金属粒子を含有する導電塗料における無垢金属粒子の濃度が低めである。
【0116】
(実施例41)
無垢金属粒子分散液の溶媒を一部蒸発させて、無垢金属粒子濃度を81質量%とした他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを95部含有する糸状導電体を得た。この実施例41では、第1導電塗料に相当する無垢金属粒子を含有する導電塗料における無垢金属粒子の濃度が高い。
【0117】
(実施例42)
無垢金属粒子分散液を蒸留水で5.7倍に希釈することによって、無垢金属粒子濃度を9質量%とした他は実施例18と同様にして、無垢金属粒子100部に対してカーボンナノチューブを205部含有する糸状導電体を得た。この実施例42では、第1導電塗料に相当する無垢金属粒子を含有する導電塗料における無垢金属粒子の濃度が低い。
【0118】
以上説明した実施例1~42は、多層カーボンナノチューブを用いた例であったのに対し、以下に説明する実施例43及び44は、単層カーボンナノチューブを用いた例である。
【0119】
(実施例43)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液22に代えた他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。すなわち、この実施例43は、多層カーボンナノチューブを用いた実施例9を単層カーボンナノチューブに代えた実施例になり、実施例43では、カーボンナノチューブの平均直径が短く、金属被覆粒子に対するCNT質量比が低めである。
【0120】
(実施例44)
金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液1を金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液23に代え、浸漬・乾燥の操作を20回繰り返した他は実施例1と同様にして糸状導電体を得た。すなわち、この実施例44は、多層カーボンナノチューブを用いた実施例29を単層カーボンナノチューブに代えた実施例になり、実施例44でも、実施例43と同じく、カーボンナノチューブの平均直径が短く、金属被覆粒子に対するCNT質量比が低めである。また、実施例44では、金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液(導電塗料)中の金属被覆粒子の濃度が低めであり、カーボンナノチューブの濃度も低めである。
【0121】
(比較例1)
蒸留水60部に金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を40部添加し、15分間撹拌することによって金属被覆粒子分散液を得た。糸状基材としてポリエステル系マルチフィラメント(150d-48f-1)を用意し、これを金属被覆粒子分散液に浸漬し、120℃で1分間乾燥させ、糸状導電体を得た。すなわち、この比較例1では、カーボンナノチューブを一切含まない。
【0122】
(比較例2)
カーボンナノチューブ分散液1の溶媒を一部蒸発させることによって、分散液中のカーボンナノチューブ濃度を15質量%とした。このカーボンナノチューブ分散液98部に金属被覆粒子(銀コートアクリル粒子、真密度2.2g/cm3、平均粒子径10μm)を2部添加し、15分間撹拌することによって金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液22を得た。糸状基材としてポリエステル系マルチフィラメント(150d-48f-1)を用意し、これを金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液22に浸漬し、120℃で1分間乾燥させ、糸状導電体を得た。
【0123】
(評価方法)
(1)糸状導電体の線抵抗値
20℃、30%RHの恒温湿環境下で、10cmの長さの各糸状導電体サンプル10本に対してそれぞれ1000Vの電圧を印加し、測定される各糸状導電体の抵抗値の平均値を求めることにより、各糸状導電体の線抵抗値(Ω/cm)を算出した。
(2)シート状導電体の体積抵抗率
株式会社三菱化学アナリテック製ロレスタAX MCP-T370 簡易型低抵抗率計を用いてJIS K 7194-1994に準拠してシート状導電体の表面抵抗率を測定した。測定は1試験片あたり9箇所測定しその算術平均値を取って当該試験片の表面抵抗率とした。得られた表面抵抗率の値にシート状導電体の導電部の厚み(cm)を乗じることによって、シート状導電体の体積抵抗率を算出した。
(3)屈曲後の抵抗上昇率
糸状導電体またはシート状導電体を曲率半径1cmに屈曲させた後、糸状導電体については線抵抗値、シート状導電体については体積抵抗率を測定・算出し、「100×屈曲後の値/屈曲前の値-100」を抵抗上昇率とした。この値が小さいほど柔軟性(耐屈曲性)に優れた導電体と言うことできる。
(4)糸状導電体における導電部の質量
糸状導電体1mの質量を電子天秤によって測定し、得られた値に10000を乗じることによって、糸状導電体10000mあたりの質量を算出した。この値から糸状基材10000mあたりの質量(167g/10000m)を減じた値を糸状導電体における導電部の質量とした。この値が小さいほど軽量な糸状導電体と言うことができる。
(5)シート状導電体における導電部の質量
0.2m角のシート状導電体の質量(基材込)を電子天秤によって測定し、得られた値に25を乗じることによって、シート状導電体1m2あたりの質量(基材込)を算出した。この値からシート状基材1m2あたりの質量(105g/m2)を減じた値をシート状導電体における導電部の質量とした。この値が小さいほど軽量なシート状導電体と言うことができる。
(6)相対抵抗率
導電体抵抗の値(X)と、導電部の質量の値(Y)を乗じることで相対抵抗率(X×Y)を求めた。この相対抵抗率は低いほど導電性が高いことになる。
【0124】
各実施例および比較例1で得られた評価結果を、各実施例及び比較例1における諸条件とともに表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
比較例1では、屈曲後の抵抗が107Ωを越え、測定不能であった。これは、断線したものと考えられ、カーボンナノチューブが無添加であることから柔軟性が著しく劣り、断線してしまったと考えられる。また、断線前であっても導電体抵抗も高いことがわかる。これは、カーボンナノチューブが無添加であることから金属含有粒子(比較例1では銀コートアクリル粒子)が電気的に接続されず、導電パスが途切れがちとなって、得られた導電体の導電性が悪化したと考えられる。
【0127】
比較例2では、導電体における、金属含有粒子(比較例2では銀コートアクリル粒子)が占める割合とカーボンナノチューブが占める割合が、カーボンナノチューブの方が高く、導電体の状態としては、単位面積・単位質量当たりで見れば、カーボンナノチューブがメインであり、金属含有粒子がサブである。電界放出型走査電子顕微鏡を用いて観察を行うと、金属含有粒子の周囲をカーボンナノチューブが覆うといった状態ではなく、金属含有粒子が、多数のカーボンナノチューブを含むCNT層の中に点在していた。カーボンナノチューブは導電性が良好であるものの金属含有粒子と比較すると、金属含有粒子の方が導電性は高い。このため、CNT層における相対的な電気抵抗の高さが作用して、導電体全体としての電気抵抗が上がってしまい、導電性が劣ってしまっていると考えられる。
【0128】
一方、各実施例では、電界放出型走査電子顕微鏡による観察の結果、金属含有粒子の周囲をカーボンナノチューブによって覆われていることが確認できた。表1から、各実施例は、導電性と柔軟性が各比較例よりも優れていることがわかる。
【0129】
特に、金属被覆粒子を用いた実施例17では、導電部の質量が重いものの、導電体抵抗の値が最も低く、この導電体抵抗の値の低さに起因して相対抵抗率も最も低くなっている。実施例17で導電体抵抗の値が最も低かった要因としては、バインダー樹脂の添加が考えられる。バインダー樹脂は、金属含有粒子(実施例17では銀コートアクリル粒子)を密着する作用が認められ、導電体における金属含有粒子の密度が高まることで導電パスが形成されやすく、得られる導電体の導電性が高くなったと推測する。
【0130】
また、無垢金属粒子を用いた実施例18では、無垢金属粒子を用いた他の実施例よりも相対抵抗率が低く、屈曲後の抵抗上昇も適度に抑えられており、無垢金属粒子を用いた実施例の中では導電性と柔軟性のバランスが最も良い例である。これは、無垢金属粒子の質量比とカーボンナノチューブの質量比のバランスが良いことに起因すると考えられる。
【0131】
ここで、実施例1は、金属被覆粒子を用いた本技術的思想の平均的な条件における糸状導電体の実施例に相当し、実施例2は、金属被覆粒子を用いた本技術的思想の平均的な条件におけるシート状導電体の実施例に相当する。
【0132】
実施例3と実施例26はいずれも、実施例1よりも金属被覆粒子の真密度が高く、平均粒子径は小さい。このことから、母材粒子は極めて小さく、銀コート層の厚みは厚いものであることがわかる。また、金属被覆粒子が小さくかつ真密度が高いことから、同一添加質量であれば、金属被覆粒子の数が少なくなり、導電パスがうまく形成できず、その結果、実施例1よりも導電体抵抗の値が高くなっていると考えられる。さらに、金属被覆粒子が小さくなればなるほど、金属被覆粒子同士の接触抵抗が無視できなくなり、導電体抵抗の値が高くなりやすい。特に、真密度が実施例26のように4.5g/cm3を超えると、導電体抵抗の値が、実施例1の倍の値になる。ただし、実施例26であっても、金属被覆粒子に対するCNT質量比は10であって導電塗料中のカーボンナノチューブの濃度は4質量%であり、導電体抵抗の値は、CNT質量比が24であって導電塗料中のカーボンナノチューブの濃度が11質量%である実施例34よりも低く、導電性は高い。
【0133】
また、実施例5と実施例25はいずれも、実施例1よりも金属被覆粒子の平均粒子径が大きく、真密度は低い。このことから、母材粒子は大きく、銀コート層の厚みは薄いものであることがわかる。実施例5および実施例25では、平均粒子径が大きいため、単位面積・単位質量当たりの金属被覆粒子の個数が減り、導電パスの数も減って、導電体抵抗の値が上昇してしまっている。また、真密度との関係で、実施例5および実施例25では、実施例1よりも導電部の質量は軽くなっている。ただし、導電体抵抗の値の上昇が影響し、相対抵抗率は悪くなっている。特に、真密度が実施例25のように2.0g/cm3を下回ると、質量が軽くなるよりも、導電体抵抗の値が高くなることの方が目立つようになる。ただし、実施例25であっても、金属被覆粒子に対するCNT質量比は10であって導電塗料中のカーボンナノチューブの濃度は4質量%であり、導電体抵抗の値は、CNT質量比が24であって導電塗料中のカーボンナノチューブの濃度が11質量%である実施例34よりも低く、導電性は高い。
【0134】
実施例7と実施例23はいずれも、実施例1よりもカーボンナノチューブの平均直径が大きく、導電体抵抗の値は高くなっていることがわかる。また、屈曲後の抵抗上昇もやや高くなっていることもわかる。特に、カーボンナノチューブの平均直径が実施例23のように20nmを超えると、導電体抵抗の値が高くなることがわかる。これは、直径の太いカーボンナノチューブでは、同じ質量であれば、本数が少なくなり、導電パスのつながりができにくくなるためと考えられる。
【0135】
実施例9と実施例27はいずれも、実施例1よりも、金属被覆粒子に対するCNT質量比が低く、屈曲後の抵抗上昇が大きく、また、導電体抵抗の値も高くなっていることがわかる。特に、多層カーボンナノチューブを用いた場合には、金属被覆粒子に対するCNT質量比が実施例27のように1を下回ると、導電体抵抗の値が、CNT質量比が1であった実施例9に比べて0.4Ω/cmも上昇していることがわかる。これは、多層カーボンナノチューブが不足して、多層カーボンナノチューブによる銀コートアクリル粒子同士を電気的に接続する機能が低下し、導電性も低下しているためと考えられる。
【0136】
一方、多層カーボンナノチューブを用いた実施例9を単層カーボンナノチューブに代えた実施例43では、金属被覆粒子に対するCNT質量比が0.1であっても、導電体抵抗の値は、実施例9よりも良好な1.4Ω/cmである。これは、単層カーボンナノチューブは平均直径が細く、CNT質量比が0.1であっても、カーボンナノチューブの本数は十分にあり、カーボンナノチューブ不足に陥っていないからであると考える。
【0137】
実施例11と実施例28はいずれも、実施例1よりも、金属被覆粒子に対するCNT質量比が高く、導電体抵抗の値がかなり高くなっていることがわかる。特に、金属被覆粒子に対するCNT質量比が実施例28のように20を超えると、導電体抵抗の値が2.5Ω/cmを越えてしまうことがわかる。これは、相対的に銀コートアクリル粒子が減ったことにより、導電性が低下しているためと考えられる。
【0138】
実施例13と実施例24はいずれも、金属被覆層の金属の種類が銀ではなく、実施例13は銅であり、実施例24はアルミニウムである。実施例13の銅の金属被覆層は、実施例1の銀の金属被覆層と同等の導電体抵抗の値であり、屈曲後の抵抗上昇は同じである。一方、実施例24のアルミニウムの金属被覆層は、実施例1の銀の金属被覆層よりも、導電体抵抗の値がかなり高くなっていることがわかる。
【0139】
実施例15は、金属被覆層の母材粒子がアルミニウムであり、母材粒子がアクリル系樹脂の実施例1よりも、導電体抵抗の値がかなり高くなっていることがわかる。また、実施例1よりも、導電部の質量も重くなり、相対抵抗率は大きく劣る。母材粒子がアルミニウムであると、金属被覆粒子の真密度が高くなり、同一添加質量であれば、母材粒子がアクリル樹脂の場合よりも金属被覆粒子の数が減り、導電パスが形成されにくくなって、導電体抵抗の値がかなり高くなったと考えられる。
【0140】
実施例29と実施例30はいずれも、実施例1よりも、金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液(導電塗料)中の金属被覆粒子の濃度が低く、カーボンナノチューブの濃度も低い。実施例29および実施例30では、実施例1に比べて、導電体抵抗の値がかなり高くなっているとともに、屈曲後の抵抗上昇もかなり大きいことがわかる。特に、実施例30では、屈曲後の抵抗上昇が、実施例中最も大きくなっている。これは、金属被覆粒子とカーボンナノチューブの両方が不足気味のため、導電性と柔軟性がともに悪化してしまったと考える。
【0141】
これら実施例29及び実施例30は、多層カーボンナノチューブを用いた実施例であったが、実施例29を単層カーボンナノチューブに代えた実施例44では、金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液(導電塗料)中の金属被覆粒子の濃度は実施例29と同じであるのに対し、カーボンナノチューブの濃度は、一桁低い。しかしながら、導電体抵抗の値は、実施例29よりも実施例44の方が低く、優れている。これは、単層カーボンナノチューブの平均直径が細く、導電塗料中のカーボンナノチューブの濃度が一桁低くなったほど、カーボンナノチューブの本数は少なくなっていないからであると考える。
【0142】
実施例31と実施例33はいずれも、実施例1よりも、金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液(導電塗料)中の金属被覆粒子の濃度が高く、実施例1に比べて、導電体抵抗の値が高くなっているとともに、屈曲後の抵抗上昇も大きいことがわかる。特に、実施例33では、導電体抵抗の値が、実施例1の2倍になっている。これは、相対的にカーボンナノチューブが不足して、カーボンナノチューブによる銀コートアクリル粒子同士を電気的に接続する機能が低下し、導電性も低下してしまったと考える。
【0143】
実施例32と実施例34はいずれも、実施例1よりも、金属被覆粒子/カーボンナノチューブ混合分散液(導電塗料)中のカーボンナノチューブの濃度が高く、実施例1に比べて、導電体抵抗の値が高くなっている。特に、実施例34では、導電体抵抗の値が2.9Ω/cmに達している。これは、相対的に銀コートアクリル粒子が減ったことにより、導電性が低下していることと、隣り合う銀コートアクリル粒子の間隔が開きすぎてしまい、銀コートアクリル粒子の抵抗値よりもカーボンナノチューブの抵抗値の方が支配的になってきたことによるものと考えられる。
【0144】
実施例19と実施例35はいずれも無垢金属粒子を用いた例であり、同じく無垢金属粒子を用いた実施例18よりも、無垢金属粒子の平均粒子径が小さく、導電体抵抗の値は高くなっていることがわかる。無垢金属粒子も金属被覆粒子と同じく、平均粒子径が小さくなればなるほど、無垢金属粒子同士の接触抵抗が無視できなくなり、導電体抵抗の値が高くなりやすく、無垢金属粒子の平均粒子径が実施例35のように5nmを下回ると、導電体抵抗の値が2.5Ω/cmを越えてしまうことがわかる。
【0145】
実施例20と実施例36も無垢金属粒子を用いた例であり、実施例18よりも、無垢金属粒子の平均粒子径が大きく、導電体抵抗の値はかなり高くなっていることがわかる。特に、無垢金属粒子の平均粒子径が実施例36のように100nmを超えると、導電体抵抗の値が2.9Ω/cmになってしまうことがわかる。無垢金属粒子の平均粒子径が大きくなればなるほど、単位面積・単位質量当たりの無垢金属粒子の個数は少なくなってくる。このため、導電パスの数も減り、導電体抵抗の値が上昇すると考えられる。
【0146】
実施例21と実施例37も無垢金属粒子を用いた例であり、実施例18よりも、無垢金属粒子に対するCNT質量比が低くなっている。また、第2導電塗料に相当するカーボンナノチューブ分散液におけるカーボンナノチューブの濃度も低くなっている。実施例21にしても実施例37にしても、屈曲後の抵抗上昇がかなり大きく、導電体抵抗の値も高くなっていることがわかる。特に、実施例37では、実施例21に比べて導電体抵抗の値が0.5Ω/cmも上昇していることがわかる。これは、カーボンナノチューブが不足して、カーボンナノチューブによる銀コートアクリル粒子同士を電気的に接続する機能が低下し、導電性も低下したと考える。
【0147】
実施例22と実施例38も無垢金属粒子を用いた例であり、実施例18よりも、無垢金属粒子に対するCNT質量比が高くなっている。また、第2導電塗料に相当するカーボンナノチューブ分散液におけるカーボンナノチューブの濃度も高くなっている。実施例22にしても実施例38にしても、導電体抵抗の値がかなり高くなっていることがわかる。特に、実施例38では、導電体抵抗の値が2.9Ω/cmに達している。ただし、屈曲後の抵抗上昇は実施例中最も抑えられている。これは、実施例32及び実施例34の金属被覆粒子の例と同じように、相対的に無垢金属粒子が減ったことにより、導電性が低下していることと、隣り合う無垢金属粒子の間隔が開きすぎてしまい、無垢金属粒子の抵抗値よりもカーボンナノチューブの抵抗値の方が支配的になってきたことによるものと考えられる。
【0148】
実施例39と実施例41も無垢金属粒子を用いた例であり、実施例18よりも、第1導電塗料に相当する無垢金属粒子分散液における無垢金属粒子の濃度が高く、屈曲後の抵抗上昇が高くなっている。また、導電体抵抗の値は低くなっているものの、導電部の質量が重くなり、結果として相対抵抗率は劣っている。特に、実施例41では、相対抵抗率が2400を越えている。これは、真密度が無垢金属粒子よりも低いカーボンナノチューブが相対的に減ったことによるものと考えられる。
【0149】
実施例42と実施例40も無垢金属粒子を用いた例であり、実施例18よりも、第1導電塗料に相当する無垢金属粒子分散液における無垢金属粒子の濃度が低く、導電体抵抗の値が高くなっている。特に、実施例42では、導電体抵抗の値が2.5を越えている。これは、相対的に無垢金属粒子が減ったことにより、導電性が低下しているためと考えられる。
【0150】
用いたカーボンナノチューブが多層か単層かの違いによる実施例9および実施例43から、単層カーボンナノチューブであれば、金属被覆粒子に対するCNT質量比が0.1であっても、多層カーボンナノチューブを用いた実施例9(CNT質量比が1)と同等以上の高い導電性と良好な柔軟性を得ることができることがわかる。
【0151】
また、用いたカーボンナノチューブが多層か単層かの違いによる実施例29および実施例44から、単層カーボンナノチューブであれば、導電塗料中のカーボンナノチューブの濃度が0.002質量%であり、金属被覆粒子に対するCNT質量比が0.1であっても、多層カーボンナノチューブを用いた実施例44(導電塗料中のカーボンナノチューブの濃度が0.02質量%であり、CNT質量比が1)と同等以上の高い導電性と良好な柔軟性を得ることができることがわかる。
【0152】
以上説明した導電体は、
少なくとも金属含有体とカーボンナノチューブを含み、該金属含有体の周囲を該カーボンナノチューブが覆うことによって該金属含有体同士が結着されていることを特徴とする。
【0153】
上記導電体は、単位面積・単位質量当たりで見れば、金属含有体がメインであり、カーボンナノチューブがサブである。この第1の導電体によれば、金属含有体によって高い導電性を確保し、カーボンナノチューブが、良好な柔軟性を発揮しつつ金属含有体を結着する機能を果たしている。したがって、上記導電体は、高い導電性と良好な柔軟性の両方を兼ね備えたものである。
【0154】
また、
前記金属含有体が、金属含有粒子であり、隣り合う該金属含有粒子が、平均すると、該金属含有粒子の直径以下の距離に配置されていることがより好ましい。
【0155】
すなわち、カーボンナノチューブの結着層の厚さが前記金属含有粒子の直径以下であることが好ましい。言い換えれば、隣り合う金属含有粒子が直径を超えた距離まで離れてしまうと、金属含有粒子が、多数のカーボンナノチューブを含む導電部の中に点在している傾向が強くなる。カーボンナノチューブは導電性が良好であるものの金属含有粒子と比較すると、金属含有粒子の方が導電性は高い。上記導電体では、隣り合う金属含有粒子の間には、カーボンナノチューブが存在しているが、隣り合う金属含有粒子が直径を超えた距離まで離れてしまうと、カーボンナノチューブの結着層における電気抵抗の高さが作用して、導電体全体としての電気抵抗が上がってしまい、導電性が劣ってしまう。
【0156】
また、
前記金属含有体が、非金属の母材表面を金属で被覆した金属被覆体であることも好ましく、前記母材が、アクリル系樹脂からなるものであることがより好ましい。
【0157】
前記金属被覆体であることによって、導電体全体が軽くなる。
【0158】
また、
前記金属が、少なくとも銀と銅のいずれか一方を含んだものである態様も好ましい。
【0159】
ここで、前記金属は、銀100%のものであってもよいし、銅100%のものであってもよいし、銀を含んだ合金であってもよいし、銅を含んだ合金であってもよいし、銀と銅の両方を含んだ合金であってもよい。
【0160】
この態様によって、導電性がさらに向上する。
【0161】
また、
前記金属被覆体100質量部に対する前記カーボンナノチューブの質量比が0.1以上20以下である構成も好ましい。
【0162】
また、
前記金属含有体が、非金属の母材粒子表面を金属で被覆した金属被覆粒子であり、
前記金属被覆粒子の真密度が2.0g/cm3以上4.5g/cm3以下且つ該金属被覆粒子の平均粒子径が2μm以上20μm以下である構成も好ましい。
【0163】
この構成によって、同じ質量でもより多くの金属被覆粒子を含ませることができ導電性が向上する。
【0164】
また、
前記カーボンナノチューブの平均直径が20nm以下であることも好ましい。
【0165】
直径の細いカーボンナノチューブの方が、直径の太いカーボンナノチューブよりも、電気抵抗が低く、柔軟性も優れるため、前記平均直径が20nm以下であれば、得られる導電体の導電性と柔軟性はより優れたものになる。
【0166】
以上説明した、導電体の第1の製造方法は、
本発明の第1又は第2の導電塗料を糸状基材またはシート状基材に含浸又は塗布した後、乾燥することによって導電体を得ることを特徴とする。
【0167】
導電体の第1の製造方法によれば、線状またシート状の電線を得ることができる。
【0168】
また、上記導電体において、
前記金属含有体が、平均粒子径5nm以上100nm以下の無垢金属粒子であり、
前記無垢金属粒子100質量部に対する前記カーボンナノチューブの質量比が20以上300以下であってもよい。
【0169】
以上説明した、導電体の第2の製造方法は、
少なくとも平均粒子径5nm以上100nm以下の無垢金属粒子を10質量%以上80質量%以下含有する第1導電塗料を糸状基材またはシート状基材に含浸または塗布した後、乾燥する第1工程と、
前記第1工程を実施することで得られた糸状導電体またはシート状導電体に、少なくともカーボンナノチューブを1質量%以上9.5質量%以下含有する第2導電塗料を含浸または塗布した後、乾燥する第2工程とを有し、
前記第2工程は、乾燥後に、前記無垢金属粒子100質量部に対して前記カーボンナノチューブの質量比が20以上300以下となるように前記第2導電塗料を含浸または塗布する工程であることを特徴とする。
【0170】
導電体の第2の製造方法によれば、前記第1導電塗料の層の外側に前記第2導電塗料の層が形成されることになる。完成した導電体の導電性は、前記第1導電塗料の層で確保されており、柔軟性は、前記第1導電塗料の層と前記第2導電塗料の層の両方によって決定される。すなわち、前記第1工程で糸状基材またはシート状基材に供給された、隣り合う前記無垢金属粒子の間に、前記第2工程で供給された前記第2導電塗料のうちの前記カーボンナノチューブが入り込み、さらに、該無垢金属粒子の外側は該カーボンナノチューブによって覆われる。導電体の第2の製造方法によっても、高い導電性と良好な柔軟性の両方を兼ね備えた導電体を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
以上説明した導電体及び導電塗料は、柔軟性を有し導電性に優れているので、ウェアラブルデバイス等の導電部に用いることができる。
【符号の説明】
【0172】
C 導電体
1 金属被覆粒子
11 金属被覆層
2 結着層
21 カーボンナノチューブ
図1
図2
図3
図4