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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】油調用魚介類冷凍食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20240418BHJP
   A23B 4/08 20060101ALI20240418BHJP
   A23L 7/157 20160101ALI20240418BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20240418BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240418BHJP
   A23L 17/40 20160101ALN20240418BHJP
【FI】
A23L17/00 A
A23B4/08 D
A23L7/157
A23L35/00
A23L5/10 E
A23L17/40 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023022025
(22)【出願日】2023-02-15
【審査請求日】2023-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003274
【氏名又は名称】マルハニチロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇根 雄太
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-037425(JP,A)
【文献】特開平10-117703(JP,A)
【文献】特開2015-149961(JP,A)
【文献】特開2011-167159(JP,A)
【文献】特開平09-047218(JP,A)
【文献】特開2022-177486(JP,A)
【文献】特開平06-181680(JP,A)
【文献】特開2016-104005(JP,A)
【文献】特開2018-064520(JP,A)
【文献】特開2007-143513(JP,A)
【文献】特開2021-045078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 4/08
A23L 15/10
A23L 17/00
cookpad
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加熱の魚介類と、
前記魚介類に含有される酢酸ナトリウムと、糖アルコールと、
前記魚介類を被覆し、該魚介類に由来しない液状油脂と、
前記液状油脂で被覆された前記魚介類を被覆する衣を有し、酢酸ナトリウム及び糖アルコールが魚介類の内部に存在するとともに、酢酸ナトリウムが魚介類の表面全体に付着し、且つ、液状油脂及び前記衣が魚介類の表面全体を被覆する、油調用魚介類冷凍食品。
【請求項2】
前記魚介類が、その内部に該魚介類に由来しない有機酸を含有する、請求項1に記載の油調用魚介類冷凍食品。
【請求項3】
前記衣が、pHが5.5~7.5のバッターを含む、請求項1又は2に記載の油調用魚介類冷凍食品。
【請求項4】
前記バッターが、更に有機酸及び/又は有機酸塩を含む、請求項3に記載の油調用魚介類冷凍食品。
【請求項5】
前記バッターが硬化油脂又はワックスで被覆された有機酸を含む、請求項4に記載の油調用魚介類冷凍食品。
【請求項6】
前記衣が更にパン粉を含有し、該パン粉が有機酸及び/又は有機酸塩を含む、請求項1又は2に記載の油調用魚介類冷凍食品。
【請求項7】
前記魚介類が糖アルコールを含有する、請求項1又は2に記載の油調用魚介類冷凍食品。
【請求項8】
未加熱の魚介類と、該魚介類を被覆する衣とを有する油調用魚介類冷凍食品の製造方法であって、
前記魚介類を魚介類に由来しない液状油脂及び糖アルコールを含み酢酸ナトリウムを2.0質量%以上含む浸漬液に浸漬させ、その後、バッターで被覆する、油調用魚介類冷凍食品の製造方法。
【請求項9】
前記浸漬液として、前記魚介類に由来しない有機酸を含有する浸漬液を用いる、請求項8に記載の油調用魚介類冷凍食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油調用魚介類冷凍食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の日持ちに関する要求はますます高まっており、これは揚げ物製品にも当てはまる。日持ち剤としては、酢酸ナトリウムやフマル酸等の有機酸や有機酸塩が広く使用される。揚げ物食品では、従来、バッターで被覆させる前の浸漬処理に用いる浸漬液に日持ち剤を添加して油調品の日持ちを向上させることが行われている(例えば特許文献1)。また、特許文献2には、魚介類の浸漬液に液状油脂を添加することで歩留まり向上や食感向上を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-261305号公報
【文献】特許第7117417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、食へのコスト意識はますます高まっており、このため、日持ちへの要望はますます高まっている。具材にバッター等の衣を付して冷凍する油調用魚介類冷凍食品は、店舗で油調されて販売されるが、その際に日持ちすることが求められる。
バッター、打ち粉や具材の前処理のための浸漬液に日持ち剤を多く用いれば、得られる油調食品の日持ちを向上させることができる。しかしながら、日持ち剤の多用は呈味悪化等の食品の質の低下、コスト増大、消費者に対するイメージの悪化等を招く場合があり、日持ち剤の量を増加せずとも日持ち効果を高めることができる技術が求められている。
【0005】
本発明の課題は、油調用魚介類冷凍食品において、効果的に油調後の日持ちを向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために見出されたものであり、未加熱の魚介類と、前記魚介類に含有される酢酸ナトリウムと、
前記魚介類を被覆し、該魚介類に由来しない液状油脂と、
前記液状油脂で被覆された前記魚介類を被覆する衣と、を有する、油調用魚介類冷凍食品を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、魚介類と、該魚介類を被覆する衣とを有する油調用魚介類冷凍食品の製造方法であって、
前記魚介類を該魚介類に由来しない液状油脂と酢酸ナトリウムを含む浸漬液に浸漬させ、その後、バッターで被覆する、油調用魚介類冷凍食品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、油調後の日持ちが良好な油調用魚介類冷凍食品に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明は、未加熱の魚介類と、前記魚介類に含有される酢酸ナトリウムと、
前記魚介類を被覆し、該魚介類に由来しない液状油脂と、
前記液状油脂で被覆された前記魚介類を被覆する、衣と、を有する、油調用魚介類冷凍食品である。
【0010】
本発明者は、未加熱の魚介類に衣を付して冷凍する油調用魚介類冷凍食品において、日持ちを向上させる技術について鋭意検討した。その結果、衣で被覆する前の未加熱状態の魚介類を、酢酸ナトリウムと共に液状油脂を含む浸漬液に浸漬させることで、液状油脂を用いない場合に比較して、効果的に日持ち効果を高めることができることを見出した。
この理由は明確ではないが、以下が考えられる。
魚介類冷凍食品の製造過程では、液状油脂を含有せずに酢酸ナトリウムを含む浸漬液で浸漬処理をした後にバッター(更に必要に応じてパン粉)を付して冷凍した場合、酢酸ナトリウム等の存在に起因して、冷凍中の魚介類細胞の脱水や解凍時のドリップの滲出が起こりやすい。それゆえに上記の魚介類冷凍食品において、冷凍及び解凍中に魚介類→バッター→(パン粉がある場合は)パン粉へと油調食品表面への水分移行及びそれに伴うアミノ酸等の有機物を含む水分移行が生じやすい。この水分移行に起因して、衣の水分活性が増加するほか、その水分や有機物等が、衣に存在する耐熱菌の栄養源となる。これらの理由から酢酸ナトリウムを用いているにも拘らず、細菌が繁殖しやすい状態になるとみられる。これに対し、本発明では液状油脂で魚介類を被覆することで、冷凍及び解凍過程で魚介類からの水分や有機物の移行を抑制でき、これにより細菌の繁殖を抑制し、酢酸ナトリウムによる日持ち効果を十分発揮できるようになると考えられる。
【0011】
本発明で用いる魚介類としては、魚類、貝類、甲殻類、頭足類等が挙げられる。魚類としては、アイナメ、アカハタ、アカウオ、アジ、アナゴ、アユ、アンコウ、イサキ、イトヨリ、イワシ、イワナ、ウナギ、エイ、エソ、オコゼ、カイワリ、カサゴ、カジカ、カジキ、カツオ、カトラ、カマス、カレイ、カワハギ、カンパチ、キス、キンキ、キビナゴ、グチ、コチ、コクレン、サケ(アトランティックサーモン、トラウトサーモン、ギンザケを含む)、サバ、サメ、サンマ、サワラ、サヨリ、ソウギョ、ハクレン、パンガシウス、ヒラメ、ドジョウ、スズキ、タラ、タイ、タチウオ、トビウオ、ドジョウ、ナイルテラピア、ナマズ、ニシン、ニジマス、ハゼ、ハタ、ハモ、ヒラメ、ヒラマサ、フグ、フナ、ブリ(ハマチ、イナダ、メジロ等の成長名・季節名を含む)、ホッケ、ホキ、ムツ、マグロ、マゴイ、ミルクフィッシュ、メバル、ママカリ、ヤマトゴイ、ロフーなどが挙げられる。貝類としては、カキ、シジミ、アサリ、ホタテガイ、アカガイ等が挙げられる。甲殻類としては、エビ、カニ、シャコが挙げられる。頭足類としてはイカやタコが挙げられる。
【0012】
中でも甲殻類、特にエビを用いることが液状油脂と酢酸ナトリウムとを組み合わせたことによる本発明の日持ち向上効果を高めるために好ましい。
【0013】
未加熱とは、例えば60℃以上の加熱処理が施されていないことを指し、50℃以上の加熱処理が施されていないことが好ましい。
【0014】
魚介類は、酢酸ナトリウムを含有する。これにより、日持ち効果を有するものとなる。
【0015】
魚介類に酢酸ナトリウムを含有させるには、バッターを付着させる前、ただし打ち粉を使用する場合には打ち粉を付着させる前に、酢酸ナトリウムを含有する浸漬液に魚介類を浸漬すればよい。当該浸漬液に液状油脂を含有させることが好適であり、それにより、魚介類に酢酸ナトリウムを含有し、且つ液状油脂に被覆されたものとなる。
【0016】
本発明において、魚介類は魚介類に由来しない液状油脂に被覆されている。後述する比較例1に示す通り、浸漬液に酢酸ナトリウム等の日持ち剤を含有させるのみでは日持ち向上効果が十分ではないところ、本発明では魚介類に由来しない液状油脂を用いることで、液状油脂を用いない場合に比して油調用魚介類冷凍食品の油調後の日持ちを大幅に向上させることができる。魚介類は、その全体が液状油脂に被覆されている必要はなく、一部の被覆であってもよい。未加熱の魚介類を液状油脂に被覆させるには、液状油脂を含有する浸漬液に未加熱の魚介類を浸漬させればよい。本発明者は、魚介類を液状油脂で被覆させることで、冷凍及び解凍時において魚介類から水分や有機物が滲出することが抑制されるか又は水分や有機物が滲出しても油調食品の表面への当該水分や有機物の移行が抑制される可能性があると考えている。例えば後述する実施例3のように、本発明によれば、バッターに日持ち剤を添加せずとも、油調後の日持ちを向上させることができる。
【0017】
液状油脂は25℃で液状を示す油脂である。本発明で用いる液状油脂の具体例としては、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、アマニ油、パーム油の分別低融点部、オリーブ油、ごま油が挙げられる。液状油脂としては、大豆油、菜種油、綿実油又はコーン油が、風味や食味の点で好ましく挙げられる。液状油脂の上昇融点は20℃以下が好適であり、10℃以下がより好適である。
上昇融点は、例えば日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)1996年版、2.2.4.2-1996、上昇融点の測定方法により融点温度を決定することができる。
【0018】
本発明の油調用魚介類冷凍食品は、魚介類が魚介類に由来しない有機酸を含有することが好適である。魚介類が酢酸ナトリウムに加えて有機酸を含有する場合、日持ち向上効果を発揮させやすい一方、冷凍及び解凍の間に、魚介類から水分等のドリップが一層滲出しやすい。これに対し、本発明では、有機酸を魚介類に含有させても、液状油脂で魚介類が被覆されていることで有機酸及び酢酸ナトリウムの存在に起因した魚介類からの滲出水分等の移行を抑制でき、一層効果的に日持ちを向上させることが可能である。有機酸としては、酢酸(氷酢酸を含む)、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、ソルビン酸等が挙げられ、日持ちや身質の点から、酢酸、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸から選ばれる一種以上が好ましい。バッターに被覆させる前の浸漬処理により魚介類に含有させる有機酸は、日持ち向上効果を発揮させやすい点から、ワックス又は硬化油脂に被覆されていないことが好ましい。具体的には、当該有機酸は、魚介類と接触させる前に、加熱されたワックス又は硬化油脂と接触する工程を経ていないことが好ましい。ワックス又は硬化油脂の具体例は後述する。
【0019】
魚介類に魚介類に由来しない有機酸を含有させるには、バッターを付着させる前、ただし打ち粉を使用する場合は打ち粉を魚介類に付着させる前に、有機酸を含有する浸漬液に魚介類を浸漬すればよい。当該浸漬液に前記の液状油脂を含有させることが好適である。
【0020】
本発明では、魚介類に糖アルコールを含有させることが更に一層を焦げ抑制効果を高める点で好ましい。糖アルコールとしては、還元麦芽糖、還元水あめ、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、キシロビイトールが知られているが、還元麦芽糖、還元水あめを用いることが浸漬効率の点で好ましく、還元水あめを用いることが、食味の点で最も好ましい。
【0021】
なお、還元水あめとは、単糖から多糖までの糖アルコールの混合物であり、澱粉を酸や酵素で加水分解することにより得られる水あめを原料とし、水素添加によって水あめのグルコース末端を還元することにより製造される単糖の糖アルコール及び多糖の糖アルコール混合物の総称である。一般に還元水あめは、原料となる水あめの糖化度により分類され、糖化度の高い水あめを原料としたものを高糖化還元水あめ、糖化度の低い水あめを原料としたものを低糖化還元水あめ、中間のものは中糖化還元水あめがあり、本発明において還元水あめを用いる場合、いずれの還元水あめも用いることができ、特に制限されない。
【0022】
魚介類に糖アルコールを含有させるためには、糖アルコールを含有する浸漬液に魚介類を浸漬させればよい。当該浸漬液に液状油脂も含有させることができる。また糖アルコール及び液状油脂を含有する浸漬液に魚介類を浸漬させた場合、魚介類の表面に糖アルコールが付着し、糖アルコール及び液状油脂で被覆された魚介類が得られると解される。
【0023】
魚介類はその他、酵母細胞、アルカリ剤、塩化ナトリウムを含有していてもよい。酵母細胞とは酵母の内容物を除去した後の酵母細胞を用いることができる。「酵母の内容物を除去した後」の例としては、酵母エキスを抽出した後が挙げられる。酵母の内容物を除去した後の酵母細胞の例としては、酵母細胞の細胞壁、細胞膜等の酵母の骨格部分が挙げられる。アルカリ剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、貝殻焼成カルシウム等が挙げられる。
【0024】
本発明の油調用魚介類冷凍食品は、液状油脂で被覆された魚介類が更に衣で被覆されている。衣としては、通常バッターを用い、バッターに加えて更にパン粉を用いてもよい。
【0025】
バッターは、穀粉及び澱粉から選択される少なくとも一種に、水性液を混合させて得られる。水性液としては、水等が挙げられる。バッターには必要に応じて卵類を添加してもよい。バッターの調製にあたっては、穀粉及び澱粉から選択される少なくとも一種に対して加水率80~300質量%としたものを用いることが好適である。穀粉としては小麦粉、米粉等を用いることができ、小麦粉が好適である。澱粉は加工澱粉であっても未加工澱粉であってもよい。以下、澱粉と穀粉とを総称して「澱粉類」ともいう。
【0026】
バッターは、日持ち剤を含有することが好ましく、これにより、得られる油調食品の日持ち効果を一層高めることができる。バッターに添加する日持ち剤としては、日持ち向上の点から有機酸塩が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸(氷酢酸を含む)、フマル酸、コハ ク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、ソルビン酸等のアルカリ金属塩が挙げられ、具体的にはナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。なかでも、酢酸ナトリウムを含有すると日持ち向上効果が高い点で好ましい。バッターが有機酸塩を含有する場合、有機酸塩の含有量としてはバッター中、0.4~5.0質量%が好ましく、0.5~3.0質量%がより好ましく、2.0質量%以上であってもよい。
【0027】
バッターは、日持ち剤として、有機酸塩に加えて、又は換えて、有機酸を含有することが好ましい。有機酸としては、魚介類に含有させる場合の有機酸の例として上記で挙げたものが挙げられる。好適な有機酸としては、日持ちや身質の点から、酢酸、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸から選ばれる一種以上が好ましく、フマル酸、酢酸、リンゴ酸から選ばれる一種以上がより好ましく、とりわけ、特にフマル酸が油調時以後、pHを速やかに下げ、日持ち効果が高い点で好ましい。
【0028】
バッターは、有機酸として、ワックス又は硬化油脂で被覆された有機酸を含有することが好ましい。本発明者が検討したところ、有機酸を含むバッターを魚介類と接触させて冷凍させると油調時に衣表面がところどころ焦げる現象が生じやすい。これは、バッターが有機酸を含有すると、該有機酸の存在等に起因して、冷凍及び解凍時に魚介類からアミノ酸を含む水分が油調用魚介類冷凍食品の表面に移行しやすく、それにより油調時にアミノ酸とパン粉やバッター中の糖分とがメイラード反応を起こすためとみられる。またバッターのpHが低いと、冷凍保管中のバッターの脱水(離水)も起こりやすいことも、水分移行のしやすさに影響するとみられる。これに対し、バッターにワックス又は硬化油脂で被覆された有機酸を含有させると、有機酸の存在に起因したpHの低下が抑制されることにより、冷凍及び解凍時にアミノ酸を含む水分が油調用魚介類冷凍食品の表面に移行することが抑制され、バッターに有機酸をそのまま添加した場合に比して、油調時の焦げを抑制できると考えられる。
【0029】
また魚介類を液状油脂で被覆することは、バッターにワックス又は硬化油脂で被覆された有機酸を含有させることと組み合わせることで、油調済み食品の表面の焦げ防止効果を効果的なものとすることができる。このことは、後述する実施例1にて日持ち効果に優れることからも示される。バッターが有機酸と有機酸塩等の日持ち剤を含有する場合、冷凍及び解凍中に魚介類の水分及び水分中のアミノ酸が食品の表面に移行しやすい。この場合も、冷凍後の魚介類食品を油調すると表面に移行したアミノ酸がバッター中の粉及びパン粉に含まれる糖分とメイラード反応を起こすことにより褐変する。これに対し本発明では、魚介類を液状油脂で被覆させることによって、冷凍及び解凍中の魚介類に由来する水分移行が効果的に抑制され、効果的に油調時の焦げ防止を図ることができる。
【0030】
ワックスとしては、カルナウバロウ、コメヌカロウ、カンデリラロウ、ミツロウ、サトウキビロウ、モクロウなどが挙げられる。これらの中でも、臭気が少ない点で、カルナウバロウが好ましい。硬化油脂としては、菜種硬化油、大豆硬化油、パーム硬化油、牛脂硬化油、やし油硬化油、魚油硬化油等が挙げられる。ワックス及び硬化油脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、本発明では、焦げ防止効果の容易性の点から、ワックスを用いることが好ましく、とりわけライスワックスを用いることが好ましい。
ワックス及び硬化油脂は融点が65℃以上であることが焦げ防止の点で好ましく、70℃以上であることが焦げ防止効果が高い点で好ましい。
【0031】
有機酸のワックス又は硬化油脂による被覆は、特に限定されず、スプレードライ法、コーティングパン法、気中懸濁被覆法、真 空蒸着被覆法、静電的合体法、融解分散冷却法等の公知の方法により行うことができる。
【0032】
ワックス又は硬化油脂に被覆された場合又は被覆されていない場合のいずれにおいても、バッターにおける有機酸の含有量は0.03~2.0質量%が好ましく、0.05~1.0質量%がより好ましく、0.2質量%以上であってもよい。
【0033】
またワックス又は硬化油脂に被覆された有機酸を用いる場合、ワックス又は硬化油脂で被覆された有機酸の量100質量部中、ワックス又は硬化油脂の含有量は3.0~15.0質量部が好適であり、5.0~10.0質量部が好適である。
【0034】
日持ちの点から、バッターで被覆する前に魚介類に打ち粉をふる場合は、打ち粉中に有機酸及び/又は有機酸塩を含有させると、日持ちの点で一層好ましい。有機酸塩及び有機酸としては、バッターにおける有機酸塩及び有機酸とそれぞれ同様のものが挙げられる。打ち粉中に有機酸を含有させる場合、0.1~2.0質量%含有させることが好ましく、0.3~2.0質量%含有させることもより好ましい。打ち粉中に有機酸塩を含有させる場合、1.0~5.0質量%含有させることが好ましく、2.0~4.0質量%含有させることもより好ましい。本発明において打ち粉における有機酸及び/又は有機酸塩をこのように少ない量とすることは、得られる油調食品における焦げを一層防止できる点や喫食の際の酸味低減の点で好ましい。
【0035】
更に、バッターからなるバッター層における魚介類と反対側に付着させるパン粉に酢酸ナトリウム等の有機酸塩及び/又は有機酸塩を含有させると、特に日持ち効果を高めることができる。特にパン粉に有機酸塩として酢酸ナトリウムを含有させることが好ましく、とりわけ、パン粉に酢酸ナトリウムと有機酸を含有させることが好ましい。
【0036】
パン粉に有機酸塩を含有させる場合、乾燥パン粉の場合、有機酸塩を0.2~4.0質量%含有させることが好ましく、0.4~2.0質量%含有させることもより好ましい。パン粉は生パン粉の場合、有機酸塩を0.1~3.0質量%含有させることが好ましく、0.3~1.4質量%含有させることもより好ましい。
【0037】
またパン粉に有機酸を含有させる場合、パン粉が乾燥パン粉の場合、有機酸を0.02~0.5質量%含有させることが好ましく、0.05~0.2質量%含有させることもより好ましい。またパン粉が生パン粉の場合、有機酸を0.01~0.3質量%含有させることが好ましく、0.03~0.15質量%含有させることもより好ましい。
【0038】
パン粉に含有される有機酸はフマル酸であることが油調時以後、pHを下げて日持ち効果が高い点で好ましい。
【0039】
パン粉における有機酸塩及び有機酸の量は以下の方法で測定できる。以下では有機酸塩の量として酢酸ナトリウムの量の定量方法を記載し、有機酸の量としてフマル酸の定量方法を記載するが、他の有機酸や有機酸塩も下記方法及び技術常識に基づいて測定することができる。
【0040】
(酢酸ナトリウム量測定方法)
パン粉を所定量(3~5g)を測り取り、ここに5mlの5%過塩素酸水溶液と適量の水とを加え、10分間振とうして酢酸を抽出する。その後、50mlに定容して、ろ過し、得られた液を必要ならば希釈した後、下記条件のHPLC測定に供する。得られた酢酸(根)の量から酢酸ナトリウム量を換算する。
HPLC測定条件
HPLC:島津製作所社製 LC-20AD
カラム:Shodex-RSpak KC-811×2、φ8.0mm×300mm(昭和電工社製)
カラム温度:40℃
検出器:紫外可視吸光光度計 SPD-20AV(島津製作所社製)
移動相:3mmol/L、過塩素酸
反応液:0.2mmol/L ブロモチモールブルー含有 15mmol/L りん酸水素二ナトリウム溶液
流量:移動相 1.0ml/min、反応液 1.4ml/min
測定波長:445nm
注入量:20μL
【0041】
(フマル量測定方法)
有機酸がフマル酸である場合は、上記(酢酸ナトリウム量測定方法)と同様の方法にて測定試料を得て、下記の条件のHPLCに供することより測定できる。
HPLC:島津製作所社製 LC-20AD
カラム:Shodex-RSpak KC-811×2、φ8.0mm×300mm(昭和電工社製)
カラム温度:40℃
検出器:紫外可視吸光光度計 SPD-20AV(島津製作所社製)
移動相:3mmol/L、過塩素酸
流量:移動相 1.0ml/min
測定波長:220nm
注入量:20μL
【0042】
なおパン粉は、原料パンとして、ワックス又は硬化油脂で被覆された有機酸をパン生地に添加する工程を経て製造されたことが好ましい。当該工程によれば、ワックス又は硬化油脂で被覆された有機酸により酵母の発酵が阻害されないという利点を有する。
【0043】
パン粉は入手しやすさや焦げ防止効果を高める点から、原料粉(液体以外の成分)中の糖類含量が5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であってもよく、0.8質量%以下であってもよい。後述する各実施例では、パン粉として糖分含量が0.8質量%以下のものを用いた。ここでいう糖類とは、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、還元水飴、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
次いで、本発明の油調用魚介類冷凍食品の好適な製造方法について説明する。本製造方法は、魚介類と、該魚介類を被覆するバッターを含む衣とを有する油調用魚介類冷凍食品の製造方法であって、
前記魚介類を該魚介類に由来しない液状油脂と酢酸ナトリウムを含む浸漬液に浸漬させ、その後、バッターで被覆する。
【0045】
浸漬液における液状油脂の量は、浸漬液中、5.0質量%以上であることが、焦げ防止抑制しやすさや食感向上の点で好ましく、20.0質量%以下であることが、それ以上液状油脂量を増加させても焦げ防止が得られないことに基づく経済性の点で好ましい。その観点から、浸漬液中、液状油脂の量は、8.0質量%以上16.0質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
浸漬液が糖アルコールを含有する場合、その量は、浸漬液中、5.0質量%以上であることが、焦げ防止させやすさや浸漬効果の向上の点で好ましく、20.0質量%以下であることが食味の点で好ましい。その観点から、浸漬液中、糖アルコールの量は、8.0質量%以上16.0質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
浸漬液が、有機酸を含有する場合、その量は、浸漬液中、0.05質量%以上であることが日持ち向上や浸漬効果の向上の点で好ましく、2.0質量%以下であることが焦げ防止のしやすさや食味の点で好ましい。その観点から、浸漬液中、有機酸の量は、0.08質量%以上1.8質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0048】
浸漬液における酢酸ナトリウムの量は、浸漬液中、2.0質量%以上であることが、日持ち向上や浸漬効果の向上の点で好ましく、7.0質量%以下であることが焦げ防止のしやすさや食味の点で好ましい。その観点から、浸漬液中、有機酸の量は、3.0質量%以上6.0質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以上5.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0049】
酵母、アルカリ剤、食塩の量は食感等の効果から、合計で、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上4.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0050】
浸漬液の液媒は水が好適である。浸漬液中、有機酸、酢酸ナトリウム、糖アルコール、液状油脂及び水以外の量は、合計で、45.0質量%以下であることがより好ましく、35.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0051】
浸漬液のpHは20.0℃で5.0~6.0であることが日持ち向上効果や浸漬する魚介類の硬化抑制(たんぱく質の酸変性の抑制)の点で好適であり、20.0℃で5.2~5.8であることがより好適である。
【0052】
浸漬液に魚介類を漬け込む際には、例えば魚介類100質量部に対し、浸漬液の使用量が70.0質量部以上150.0質量部以下であることがバラツキなく浸漬できる点で好ましく、より好ましくは80.0質量部以上120.0質量部以下である。
【0053】
魚介類を浸漬液に浸漬させる温度としては、未加熱の魚介類の劣化防止の点や漬け込み効率の点から、1℃以上10℃以下が好適である。また魚介類の生肉を浸漬液に浸漬させる時間としては、焦げ防止、及び食感改善の点及び生肉の劣化防止の点から、0.5時間以上3時間以下が好ましく、1.0時間以上2.5時間以下がより好ましい。
【0054】
上記の方法で得られた浸漬後の未加熱の魚介類は液状油脂に被覆されたものであり、バッターに浸漬させて、バッターに被覆させる。バッターのpHは通常、20.0℃で5.5~7.5であることが好適であり、焦げの防止等の点から、5.9~7.0であることが特に好適であり、6.0~7.0であることが最も好適である。好適には打ち粉をバッターによる被覆前に付着させることが好適であり、バッターに被覆させた後にパン粉により被覆することが好適である。このようにして得られた製品は冷凍される。
【0055】
パッケージにより包装する場合、パッケージの素材としては、合成樹脂フィルムが挙げられ、例えば、VDC/MA(塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体)、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PA(ポリアミド)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、PET(ポリエチレンテフタレート樹脂)及びこれらの1又は2以上の複合材が挙げられ、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリプロピレン又はこれらの複合材であることが破れにくさや保存性等の点で好ましい。密封方法としては、例えば、含気包装、脱気包装、真空包装が挙げられる。
【0056】
本発明において得られた加工食品は適宜油調される。油調は冷凍状態のまま行われることが油ちょう後の品位の安定化及び一層の焦げ防止の点で好適である。
【実施例
【0057】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。なお、表1に記載の「%」は特に断らない場合「質量%」を意味する。
【0058】
(実施例1)
(1)浸漬液の調製
還元水あめ10質量%、液状油脂10質量%、日持ち製剤No.1を5質量%、酵母製剤1質量%、食塩1質量%、重曹0.2質量%、水72.8質量%を混合し、浸漬液を調製した。
・日持ち剤No.1としては、組成が酢酸ナトリウム86質量%、氷酢酸9質量%、DL-リンゴ酸2質量%である製剤を用いた(粉末状、残部は二酸化ケイ素、乳化剤、食品素材。
・酵母製剤としては富士食品工業株式会社製の酵母細胞パウダーである商品名「モイステックス」を用いた。モイステックスは、酵母細胞から酵母エキスを抽出した後の菌体(酵母細胞の細胞壁、細胞膜等の酵母の骨格部分)を加熱殺菌し、乾燥したものを用いた。
・液状油脂としては、サラダ油(原料:菜種油)を用いた。
・還元水あめとしては、ウエノフードテクノ社製MU-45を用いた。
【0059】
(2)浸漬処理
未加熱のバナメイエビに対し、当該エビ100質量部に対して100質量部の量の浸漬液を混合し、浸漬液にエビを浸漬させた。浸漬液のpHは20℃で5.2~5.8であった。浸漬状態のエビを2時間、10℃で静置した。
【0060】
(3)衣による被覆
浸漬液に浸漬させた後のエビを金ザルの上にあけ、3分間液切りを行った。その後、エビに打ち粉を付着させ、次いで、日持ち剤添加後のバッターに浸漬させて付着させた後、パン粉を付着させて-30℃で冷凍させて油調用魚介類冷凍食品を得た。
・打ち粉として、澱粉に、日持ち剤No.1を3質量%添加したものを用いた。
・バッターとして、澱粉類(澱粉と小麦粉との配合質量比率1:1の混合物)を100質量部及び水150質量部を混合したものを用いた。当該バッターに日持ち剤No.2を3質量%添加した。バッターのpHは表1に記載した。
・日持ち剤No.2としては、酢酸ナトリウム84質量%、フマル酸10質量%、ライスワックス0.8質量%を含有し、フマル酸がライスワックス(融点70℃以上)に被覆された製剤を用いた(粉末状、残部は食品素材)。
パン粉として、日持ち剤No.2を添加して製造したパンを粉砕したパン粉(生パン粉)を使用した。パン粉中のフマル酸量の分析値は0.07質量%、酢酸(根)量の分析値は0.51質量%(酢酸ナトリウム換算0.7質量%)であった。
【0061】
(実施例2)
バッターに添加する日持ち剤として、日持ち剤No.2の代わりに日持ち剤No.1を用いた。その点以外は実施例1と同様として、油調用魚介類冷凍食品を得た。
【0062】
(実施例3)
バッターに、日持ち剤を添加しない以外は実施例1と同様として、油調用魚介類冷凍食品を得た。
【0063】
(比較例1)
浸漬液の調製において還元水あめ、液状油脂を用いず、その分、水を92.8質量%に増量した以外は、実施例3と同様とした。
【0064】
(評価)
20日間冷凍させた冷凍食品について、10℃で2日間解凍し、-30℃で再凍結したものを冷凍状態から、170℃で3分間油調してエビフライを得た。得られたエビフライについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
<日持ちの評価方法>
エビフライを油調後アルミホイルで覆った状態で5分間放冷した後、滅菌袋に移し替えた。移し替えの時点を初発とし、初発の時点で滅菌袋に移し替えて25℃に保持した状態で48、72時間後経過した各時点の一般生菌数を食品衛生検査指針が定める一般生菌数検査により求めた。具体的には、エビフライ中において、複数個所から少しずつ切り取った合計25gを量り採り、ストマッカー処理用の滅菌袋などに移した。希釈水としてリン酸緩衝液を用い、この希釈水225mlを加え、ストマッキングした。ストマッキング後の試料液を試料源液として、順次10倍段階希釈液を調製した。調製した試料液1mlに標準寒天培地15-20mlを入れて混釈し、インキュベーターで、35±1℃、48時間まで培養して生菌数をカウントした。標準寒天培地2連の平均値を表1に示す。
(評価基準)
A:初発、48、72時間経過後のいずれの菌数も1000cfu/g未満。
B:初発、48、72時間経過後のいずれかの菌数が1000cfu/g以上であるが、初発、48、72時間経過後のいずれの菌数も10000cfu/g未満。
C:初発、48、72時間経過後のいずれかの菌数が10000cfu/g超であるが、初発、48、72時間経過後のいずれの菌数も100000cfu/g未満。
D:初発、48、72時間経過後のいずれかの菌数が100000cfu/g超。
【0066】
<外観評価>
(目視評価)
得られたエビフライについて、外観に焦げ感を感じるか否かを下記基準にて評価した。
A:外観に焦げを視認せずキツネ色で良好な色味である。
B;ところどころ外観に焦げ色を視認でき、色むらがある印象である。
結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示す通り、浸漬液に液状油脂を用いた実施例1~3の油調用魚介類冷凍食品は、解凍及び冷凍を経る日持ちに不利な条件においても、油調後の日持ちに優れている。これに対し浸漬液に液状油脂を用いない比較例1は、日持ちに劣る結果となった。
【0069】
(焦げ色面積率(%))
実施例1及び実施例2について下記評価を行った。
ビジュアルアナライザー(IRIS、Alpha MOS社)を用いて焦げ色の面積率を評価した。高解像度CMOSセンサーにおいてレンズとしては、Basler Lens C125-1218-5M-P f12mmを用いた。サンプルトレイとしては標準白色トレイを用いた。照明条件としては、LED上下照明とした。装置内にエビフライを置き、少しずつずらしながら1匹につき3回、3匹分撮影した。得られた画像について、表面の構成色のうち焦げ色に該当するカラーコード#2128(R:136、G:88、B:8、L*:41.982、a*:16.140、b*:47.807)の色の面積率(エビフライ画像中、%)を求めた。n=9(=3回×3匹分)の平均値は、実施例1で0.09%.実施例2で0.14%であった。

【要約】
【課題】油調したときの日持ちが良好な油調用魚介類冷凍食品を提供する。
【解決手段】未加熱の魚介類と、前記魚介類に含有される酢酸ナトリウムと、
前記魚介類を被覆し、該魚介類に由来しない液状油脂と、
前記液状油脂で被覆された前記魚介類を被覆する衣と、を有する、油調用魚介類冷凍食品。前記魚介類が該魚介類に由来しない有機酸を含有することが好ましい。前記衣がpHが5.9~7.0のバッターを含むことも好ましい。当該バッターが、更に有機酸及び/又は有機酸塩を含むことも好ましい。
【選択図】なし